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米空軍がパイロット採用の身長基準を柔軟に運用 [米空軍]

162.5㎝~195.6㎝の基準外の人も柔軟に採用
最低で150㎝、最高で205.7㎝の受け入れ実績あり

pilot height.jpg15日付military.comは、米空軍が操縦者不足に対応するため、また意欲あるパイロット希望者を最大限戦力として活用するため2015年に時のJames空軍長官が認めたパイロット採用の身長基準の例外規定に、より多くの希望者に挑戦してほしいとの米空軍幹部発言を紹介しています。

冒頭でご紹介したように、米空軍は現在「shorter than 5'4" or taller than 6'5"は基準外で、64-77 inchesの間(162.5㎝~195.6㎝)を受け入れ基準.」としていますが、2015年に例外を認めるようになってから、223名の応募があり、その87%を詳細な検査を経てパイロットコースに受け入れたとのことです

もちろん「例外規定」を利用してパイロット訓練が認められた場合でも、全ての機種への挑戦が認められるわけではなく操縦席のサイズや操縦ペダルの位置や外部視界の確保具合などを希望者の身体特性と機種ごとに精査し、対象機種を限定するようです

pilot height2.jpg2015年以降の記録では、最低で150㎝、最高で205.7㎝の受け入れ実績があるとのことで、米空軍の懐の深さを感じますが、具体的な機種までは公開されていないようです

米国の国家統計によれば、20~29歳の米国女性の場合、パイロット基準の「162.5㎝~195.6㎝」未満の身長の人が43.5%を占めるそうで、特に女性の応募を期待しての2015年の例外規定設置だったようですが、米空軍は正式に身長基準を現在「5’4”=162,5㎝」から「5’3”=160㎝」に引き下げることも検討しているようです

もちろんむやみに身長基準を緩和するのではなく、先にも触れたように、詳細に応募者の身体特性を様々に測定し、機体のサイズも詳細に把握して適合性をチェックしているようで、その努力には頭が下がると同時に、操縦者不足(民間への流出)問題が深刻なことを伺わせます

15日付military.com記事によれば
●米空軍教育訓練コマンドの操縦者養成を担う第19空軍司令官Craig Wills少将は、操縦者不足への対策を夏に再検討する中で「明らかになったことは、我々が考えていたよりも、身長基準がパイロット希望者が応募を断念する要因として、他に比して極めて大きな原因だったという点である」、「単に身長の問題で応募しなかった者が多数いたということだ」と新たな気付きについて語った
pilot height3.jpg●そして「例外規定の存在を、パイロット募集のプロセスで周知する事を怠ってきた。この例外規定を広く知ってもらう必要性を感じている」と語った

●同少将は例外規定の具体的適用に関し、全ての航空機のコックピットをレーザー測距機であらゆる側面から測定し、例外規定での応募者が対応可能かの見極めに使用していると説明し、
●同時にパイロット応募者の身体測定データ(おしりから膝までの長さ、膝からくるぶしまでの長さなどなど詳細な人体測定数値、unctional reach, wingspan, body mass, weight-to-height ratio, waist-to-hip, hip-to-knee and more・・)を機体データと照合するソフトに投入して、単に身長だけでない各個人の適合性判断に活用すると説明した

米空軍士官学校やROTCコースでパイロット志望の学生は、通常のパイロット基準で不合格になった場合、自動的に「例外規定」での審査プロセスに入るように仕組みを見直し、新プロセスは米空軍医務官が監督する流れとなっている
pilot height4.jpg●また、「例外規定」でパイロットコースに進む場合は、対象機種を限定することになり、例えばF-15に乗るためには、その訓練過程で操縦する必要があるT-1ジェット練習機なども操縦可能な身体特性を満たす必要があるし、新たな初等練習機T-7Aが導入されれば、より基準が緩和できる可能性がある

●同少将は改めて、パイロット採用数を確保するために基準を緩和しているのではなく、能力と意志がある者がその力を生かせる体制を目指している」と強調し、「例外規定」の審査は厳しく、仮に同じ身長でも、手足の長さや同と足の長さのバランスにより合格するものと不合格が生じると説明した
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最も低くい採用者で150㎝、最高で205.7㎝の受け入れ実績があると言うことですが、基準「162.5㎝~195.6㎝」から上下10cm以上の幅を受け入れている懐の深さに感心します

操縦服やヘルメットの準備など、様々な派生的に対応が必要な事項があると思いますし、出産と産休という空白期間の可能性がある女性の活用をここまで踏み込んで取り組んでいる姿勢も驚きです

米空軍のパイロットと交流の機会がある方は、話題の一つとして取り上げて頂き現場の実態を尋ねてみてはいかがでしょうか

米空軍パイロット不足関連
「操縦者不足緩和?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
「下士官パイロット任務拡大?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10
「世も末:幕僚勤務無し管理検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-20

「トップガン続編の予告編」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-20-1
「ロボット操縦の旧式セスナが初飛行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-20
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5G企業とGPS関係者がLバンド電波巡り激突中 [エスパー国防長官]

国防長官が米通信会社の電波申請を阻止へ
5G通信衛星用にLバンド電波申請もGPSに干渉の恐れ

Ligado 5G 3.jpg21日付C4INetは、米国の大手民間通信企業Ligado Networksが2018年10月に打ち出した衛星を利用した5Gネットワーク構築構想に関し同社がFCC(連邦通信評議会:Federal Communications Commission)に申請しているLバンド「40MHz」使用について、エスパー国防長官やGPS関連団体がGPS信号との干渉を懸念し、FCCに申請を認めないよう要請していると報じています

次世代通信を担う「5G」は、中国ファーウェイを先頭に各国各社がその導入利用にしのぎを削っているところで、8月には国防省の技術担当次官が「5G関連の試験場所に困っている米企業に、国防省の演習場や試験場を貸し出す用意がある」と全面支援姿勢を示すなど、「国を挙げて」の雰囲気があります

一方で10月には戦略コマンド司令官の「5Gの普及に伴い、限られた電波を巡る官民の争奪戦に懸念」と発言し、「5G」が利便性と安全保障の隙間で難しい問題を提示していることをご紹介したところでした。

これについて突っ込む知見がありませんが、とりあえず本日は、エスパー長官を巻き込んだ米企業の5Gネットワーク構想を巡るゴタゴタをご紹介します

21日付C4INet記事によれば
Ligado 5G.jpg2018年10月にLigado Networksが、5G技術を搭載した通信衛星を打ち上げて、地球規模の5Gネットワークを構築する構想を発表したが、この計画はFCCに申請された後に停滞している。
●同社の構想では、Lバンド「40MHz」帯の電波を使用することになっているが、GPSの使用する電波帯と近いことから懸念が広がっているのだ

GPSは軍事用に開発されたものだが、今ではスマホやクレジットカード決済までその電波を利用しており、経済社会生活の基盤を形成しているといっても過言ではない
●同社の申請を受け、2018年12月には、GPSの利用を国家レベルで調整する「National Executive Committee」が、同社の申請許可に反対する答申を出している

●この答申を受け、今年4月に当時のShanahan臨時国防長官もFCCに書簡を送り、同社の申請を認めないよう要請している

Ligado 5G 2.jpg●そして今回、18日付でエスパー国防長官もFCCにレターを送り、「Ligado Networksに申請された電波使用を認めることは、国家としての電波利用に対し、多くの未知の課題を突き付け、リスクを負わせることになる。独立機関による科学的な試験やデータは、Ligado社システムが、GPS機能を低下させ大規模な混乱を招く可能性を示している」と指摘している
●そして「私はFCCが同社の電波使用申請を拒否し、当該システムが展開されないことを要求する」とレターを結んでいる

●この状況にLigado NetworksのCEOであるDoug Smith氏は不満を示し、6月に「過去3年半にわたって、我が社は産業界や政府機関と協力してプランを協議してきた。我々は試験、分析、検討会、ミーティングに何度も参加し、当初計画を見直す等して懸念の払しょくに努力してきた。我々は忍耐強く、更なる投資が許されることを待ちわびており、それは米国が死活的に待ち望んでいるものでもある」との声明を出している
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Ligado 5G 4.jpg気になるのは、仮に米企業「Ligado Networks」の申請がFCCに却下されたとしても、中国やロシア企業が好き放題電波を使用して5G利用を進め、GPS機能を邪魔するようなことが発生しないかということです。

又は民間企業が利便性優先の宣伝攻勢で民意を動かし、安全保障用の電波利用が制約を受ける事態となり、中国やロシアを利する方向に西側社会が傾かないかと懸念しています。

デジタル革命も、IT革命も、これ以上進むと生物としての人間の仕組みにまで影響を与え、生態系にまで悪影響を与えるのでは・・・・と年寄りの頭で心配になります

5GとGPSに関する記事
「戦略コマンドが5Gとの電波争奪に懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-27
「5G試験のため民間に演習場提供案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-14
「GPSが30日間停止したら」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-18
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NATO70周年の首脳会合は葬式の様相に? [安全保障全般]

70周年記念の祝福には程遠く・・・
当たり障りのない分野のテーマで時間を過ごすのか

NATO70.jpg16日付Defense-Newsは、12月2-3日にロンドンで開催される70周年の節目のNATO首脳回会合についてAaron Mehta副編集長(国防省主任特派員)による「見通し」記事を掲載し本来なら「世界で最も成功を収めた無血同盟」と一時は称賛されたNATOの功績を振り返り、将来の役割を論じる会議になるはずが、NATOの「葬式」のような雰囲気になりかねないと現状を伝えています

注目の指導者としては、まず前回の同首脳会合で加盟国による負担の分担が不十分だとNATO脱退も示唆したトランプ大統領です。

トランプ大統領は最近の英国ラジオ番組で、「NATOの欧州同盟国は十分な負担をしていない。そんな国が20カ国以上ある。英国は国内総生産(GDP)の2%というNATO目標を満たしている。米国はその2倍(4%)も軍事費を支出しているのに、ドイツは1.2~1.3%しか軍事費を支出していない。ドイツはエネルギーのパイプラインを敷設するためにロシアに巨大な資金を支払っているのに、なぜ米国がドイツをロシアから守らなければならないのか」 と不満を隠そうともしません

次に、NATOに防空を依存していながらロシア製の高性能地対空ミサイルの導入を開始したトルコ大統領が挙げられますが、更に最近の英エコノミスト誌とのインタビューに「NATO加盟国を守るのに、もはや米国に頼ることはできない」、「現在、私たちが経験しているのはNATOの脳死だ」と語り、更に「欧州は絶壁の端に立っており、地政学的なパワーとして戦略的に考え始める必要がある。そうしなければ運命を制御できなくなる」とまで語ったマクロン仏大統領など、不協和音の音源には事欠きません

NATO702.jpg仏大統領は、米国のイランとの核合意から離脱や中東への姿勢に不信感を強めているのですが、「歴史の悪魔はカオスを引き起こし、死をもたらそうと手ぐすね引いている。歴史は時に不吉な歩みを繰り返す恐れがある」、「今、目を覚まさないと、長期的に見て欧州は消滅するか、少なくとも運命をコントロールできなくなるリスクがかなりある」とまで言及して危機感を訴えているところです

加えて開催国である英国は経費支出の面では優等生ですが、EU離脱を巡るゴタゴタで12月9-12日に総選挙が予定されており、ジョンソン首相の立場は微妙で、発言力にも限界がある状態です、

そんな今回のNATO首脳会議に関し、過去係わったことがある人達は「ロンドンの会議に係わりが無くてうれしい」と正直な気持ちを語り、「揉めることのない議題」が取り上げられるのでは・・・と想像しています

16日付Defense-News記事によれば
前NATO米国大使であるAlexander Vershbow氏は、「英国とEU諸国の関係を巡って雑音がこだます英総選挙が数日後に控えたロンドンでは、NATO会議で前向きな議論があっても埋没してしまうだろう」と述べ、米NSCの前欧州ロシア部長であるRichard Hooker氏は「会合のタイミングは不幸としか言いようがない。円滑な会議と参加する首脳たちの笑顔が多くみられるとは考えにくい」と語った
NATO704.jpg●下院軍事委員会のRuben Gallego議員(民主党)は、「NATOの機能不全を示す場となるだろう。そしてその結果として米議会は、米国防省が要求しているNATO活動を支えるEuropean Deterrence Initiativeへの予算確保は一層難しくなる」とコメントし、「ドラマは期待できないし、全てが本当に退屈な会議になるだろう」と述べた

●このように加盟国間の政治的対立が表面化する中、NATO首脳会議での議題は、より議論がまとまりやすい対ロ・対中を意識した戦術的または技術的な協力が選ばれるのではないかと見られている
前英国NATO大使のEdward Ferguson氏は、「ハイブリッド戦への対抗手段を準備・抑止・防御の視点から増やすため、強靭さを強化し、警報発出を改善するなどの合意を目指すのでは」と述べ

●また、2016年の首脳会議でサイバーを陸海空に加えて4つ目のドメインとすることに同意したように、今回は宇宙を5つ目のドメインとすることに同意する可能性や、NATOとしてどのように人工知能AIに投資していくかを取りまとめたり、「5G」をどの様に安全安心な次世代ネットワークとして活用するかを討議する場にするのではないかと語った
●更にRAND研究所のMarta Kepe研究員は、「軍事機動力:Military mobility」も大きな議題となろうとの見方を示し、特に非軍事部門の役割の重要性についてより理解や議論が進むことを期待していると述べ、軍民の協力強化がNATO-EUや他の枠組みで議論が深まることがを期待するとの考えを示した
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NATO703.jpg最近のトランプ大統領の「ウクライナ疑惑」を巡る米議会の動きからすると、NATO首脳会議でトランプ大統領は国内向けに強い姿勢を見せる必要があると思われ、欧州加盟国を厳しく非難しつつ負担増を求めていくものと考えられます

一方で英国のEU離脱問題に振り回されている欧州諸国は、移民問題や財政問題で足元が揺らいでいることから、米国との妥協点を簡単に見いだせるとも考えにくく、ロシアやトルコが行動の自由度を高める中で、何ら具体的な策に合意できず、中国に対するNATOとしての姿勢を打ち出すことも難しいのでしょう・・・

せめてクリスマスをNATOの任務で戦地で過ごす兵士たちに、感謝と激励のメッセージくらい出してほしいものです・・・

ドイツ戦闘機議論とNATO
「独トーネード後継に核任務絡みでFA-18優位!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2

「アイスランドにB-2爆撃機」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-30

米トルコ関係
「ロシアがトルコにSU-35売り込み」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-29
「トルコの代わりに米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
「米がトルコに最後通牒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09
「6月第1週に決断か」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-23
「トルコが米国内不統一を指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-2
「もしトルコが抜けたら?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-21
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米国がOpen Skies条約の脱退意向を伝達 [安全保障全般]

欧州加盟国に対し11月中旬の会議で
一応は他加盟国の意見を聞く姿勢も・・・
来年1月に米国は最終決定するとか・・

Open Skies2.jpg21日付Defense-Newsは、米政権高官から独占入手した情報として11月11日の週に米国の代表団がブラッセルでの会議でNATO加盟国にOpen Skies条約が既に有効性を失い有害だとの米国の分析結果を提示して脱退の意向を示し、関係国の意見を求めるとの姿勢を示したと報じました

この米国の脱退意図説明の動きは10月から各種チャネルで始まっており、米国は来年1月までは最終決定しないとの意向を関係国に示しつつ意見を聞く姿勢を見せてはいますが、脱退の最終判断をする際に米議会から「国際社会との対話をすっ飛ばした一方的な脱退」との批判を浴びないためだと記事は推測しています

現在米露を始め34カ国が加盟する同条約(Treaty of Open Skies)の経緯は古く、1955年にアイゼンハワーが基本理念を提唱しましたが冷戦激化で実らず、1989年に父ブッシュが再び持ち出し、1992年3月にNATOと旧 WTOの 25ヵ国が調印して条約が成立しましたが、実際の相互査察飛行は2002年になって実現したという代物です。

Open Skies.jpg条約に基づく査察飛行は、条約調印国の全領土上空からの査察を対象とし、年間の査察回数は査察を受けた回数認められ、査察用航空機やセンサーは相互に協議して合意の上実施、査察結果は共有データとする、などの原則に沿って行われることになっています

米国は商用衛星の高性能化で航空機による相互査察飛行の必要性が失われる中、ロシアが一部地域の査察飛行を拒否したり、査察飛行を悪用したりしていると指摘し、WSJ紙によればトランプ大統領は脱退を進めるよう指示する文書に10月に署名した模様です

欧州加盟国は貴重な軍備管理の枠組みだとして存続を求め、マティス前長官も在任時は「存続派」だったようですが、米国内は賛成反対が入り乱れており、議会も党派を超えて賛否が拮抗しており、トランプ大統領を動かす勢いはない模様です

21日付Defense-News記事によれば
OC-135.jpg●ブラッセルでのNATO会議で本件を取り上げた米国代表団は、国防省、統合参謀本部、国務省、NSCの中級幹部で構成され、以下のような要旨で説明した
●「以下が同条約に関する米国の立場である。同条約は米国の安全保障上危険なものであり、何も得るものがない。皆さん加盟国も得るものがないだろう。そこで米国はINF全廃条約から脱退したように、Open Skies条約から脱退する意向である。米国内での同条約の意義分析や検討は終了している

同会議では結論には至らず、欧州からの会議参加者は、冷や水を浴びせられたような表情で、米国からの意見提示を耳にしていた
ロンドンでのNATO首脳会議を直前に控え、欧州諸国は議会も含めて同条約継続の意向を米側に示していたが、米国側の意見提示は淡々と行われた

OC-135B.jpg欧州加盟国は一般に、核保有国である米露の対話の機会を設け、透明性確保のチャネルを提供する同条約は有意義だとの姿勢で、スウェーデン国防相はエスパー国防長官に対しレターを送付し、「同条約はロシアを含めた現状維持の役割を果たし、違反を抑制する枠組みを提供している。同条約は残存する数少ない欧州安全保障の枠組みである」、「他国の違反を脱退の理由にするのではなく、違反を止めさせる条約として機能させたい」と訴えている
●また英、仏、独の駐米大使がそろってホワイトハウスを訪問し、同条約からの脱退を考え直すようにデマルシェを行っている。

●条約に批判的な者は、ロシアがカリーニングラードやグルジア周辺の査察を拒否していることや、禁止されている査察目的地にまでのルート上で、ポーランド駐留米軍の位置や装備の偵察に利用していると指摘している
●米側からのブラッセルでの説明後、欧州側がどの様に対応するのか明確になっていないが、米側の姿勢はもう固まっていて意見伺いはポーズに過ぎないとか、欧州の軍事努力不足を批判する材料にされるのではと懐疑的な国もあるようだ

偵察の技術的には、天候が悪い環境でも、航空機であれば雲の下を飛行して査察が可能であり同条約の利点だと主張する者もいるが、多様な偵察手段を持つ米国を説得する材料にはならないだろうと言われている
OC-135B2.jpg●米国内では、同条約に基づく査察飛行に使用するOC-135Bの後継機予算約140億円(2019年度予算:2機分)が議論の対象となっており、手ごろな民間旅客機タイプに手持ちのセンサーを搭載する予算案が、更なる投資を求める条約維持賛成派と反対派の両方から批判を受けている

トランプ大統領の出身母体である共和党内でも意見は分かれており、米国の態度が決定されると言われる来年1月までの間に、様々な駆け引きが予想される
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閉鎖的なロシア圏と、SNS等ITツールの拡散でますます可視化が進む西側とでは、この種の条約を公平に運用することが難しいのではないかと思います。
欧州条約締結国の気持ちもわかりますが、米側からすれば失うものが多いとの指摘に反論することは難しい気がします

MinutemanⅢ2.jpg仮にOpen Skies条約から米国が脱退した後は、次の大きな焦点は新START条約が10年間の有効期限を迎える2021年2月5日になります。

トランプ大統領は新START条約を、「オバマ時代の悪いディールだ」と呼び、中国も含めた米中露の3カ国で核兵器管理の合意を追及すべきだと発言しており、ロシア側もミサイル防衛の整備でロシアに不利な条約だと破棄をちらつかせています。

Open Skies条約関連の記事
「米がOpen Skies条約の脱退へ!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-10
「OC-135Bらは後継機無しの方向?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-28-1
「OC-135Bらの維持がピンチ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-08-1

新START関連の記事
「Esper新長官アジアへ中距離弾導入と新STARTの運命」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-04

ロシアの違反が発端:INF全廃条約の失効関連経緯
「トランプが条約離脱発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「露は違反ミサイルを排除せよ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-06
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15

米国核兵器を巡る動向
「次期ICBMのRFP発出」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-18
「今後10年の核関連予算見積が23%増」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26
「核兵器輸送がNo2任務」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-11
「ついにINF条約破棄へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「サイバー時代の核管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02
「リーク版:核態勢見直しNPR」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13
「議会見積:今後30年で140兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02-1

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米国防省が「イランの軍事力」レポート初発表 [安全保障全般]

中国及びロシアに続く3か国目の対象がイラン
来年10月の国連制裁切れで中露が武器輸出を狙う

Iran Military Power.jpg19日、米国防省がイランを対象とした初めての軍事力レポート「Iran Military Power」を発表し実際に取りまとめたDIA(Defense Intelligence Agency)関係者が説明ブリーフィングを行った模様で、様々な軍事メディアがその概要を取り上げています

このレポートは、中国とロシアを対象とした「軍事力レポート」に続く3か国目のレポートで、米国が中東情勢のカギを握るイラン軍事力動向に注目し、それを世界に知らしめようと力を入れている様子が伺えます

約120ページの同レポートはざっくり言えばイランはユニークな3本柱で抑止力を構築し、ペルシャ湾岸地域での覇権を確立しようとしていると分析し、3本柱として弾道ミサイル、多様で大きな沿岸海軍戦力、そして特殊部隊と近接国の親派勢力への支援挙げています

Iran Military Power2.jpgまた、核兵器は未開発だが、米国が懸念する活動は続いており、またICBMに利用できる規模のロケット技術を衛星打ち上げを通じて蓄えつつあると警戒しています

更に懸念として2020年10月に国連決議に基づくイランへの武器禁輸が期限切れとなるため、この制裁が延長されない限り、中国やロシアから最新兵器が一挙に流入する可能性を示しています

日本の新聞なども取り上げると思いますが、メモ程度に取り上げておきます

各種米軍事メディアによれば同レポート概要は
●イランはイスラエルを上回る短距離及び中距離弾道ミサイル戦力を構築し、老朽化が進む航空戦力を補って、周辺敵対諸国や米国を抑止して脅威を与えている
●地域の覇権国を狙うイランは、大部分の通常兵器輸入を禁じた国連の制裁決議によりその野望をくじかれているが、2020年10月の同制裁期限切れを狙って、数年前からロシアと中国が戦闘機や戦車の売り込みを開始している

Iran Military Power4.jpg防空兵器については、ロシアがS-300地対空ミサイルを提供して、近代的な防空体制の一歩を踏み出しており、これに国産のSAMを加え、SAMで国土の6割をカバーする防空網を整備している
●2018年5月に米国が「核合意」から離脱した以降、イランは制裁を解除しない限り核燃料濃縮を制限を超えて行うとしている

●イランは海外派遣戦力の造成を考えているが、現時点では正規・非正規のパートナーを支援することに焦点を当て対外影響力を行使しており、その先はイラク、シリア、イエメン等で、軍事協力合意との形では、更にAfghanistan, Belarus, China, Oman, Russia, South Africa and Venezuela,と協力関係を明文化し、対外支援の資としている
●またイラン海軍は。中国沖、南アフリカ沖、地中海で他国との共同作戦に参加している

DIA長官のRobert Ashley陸軍中将は同レポートの序文で、イランは革命後の40年間、継続して米国に対抗し、米国の中東でのプレゼンスに反対し、イスラエルへの米国の支援を敵視ししてきたと表現している。
Iran Military Power3.jpg●そして、イランはサダムフセイン亡き後のイラク、内戦状態のシリアやイエメンで、上手く立ち回って影響力を行使しており、2003年から11年の間に命を落とした米軍兵士の603名は、イラクからの兵器で被害にあったと記している

●更にイランは、米国が中東で戦力を増強している中でも、中東地域に「米国は中東への関心をなくし、関与から逃れようとしている」との誤情報の宣伝活動に従事している
●イランの軍事組織は2重構造となっおり、約42万人の陸海空防空軍と、約19万人と言われている革命防衛軍である。同レポートは、この2重構造と近代兵器の入手困難さをイラン軍の弱点としている

●一方でイラン軍の脅威の源泉は、大規模な弾道ミサイル部隊、ペルシャ湾岸を主とした沿岸海軍力、そして近隣パートナー国と親派の組織との連携である。
●結果として、イランの「戦い方」は、通常選を避け・抑止し、地域での安保目的をプロパガンダや心理戦や不正規戦を通じて前進させることを追求する手法である

Iran.jpg●イランの兵器入手先は、ロシア、中国、北朝鮮、ベラルーシ、ウクライナであるが、特にロシアとイランの軍事協力が近年飛躍的に大きくなっており、シリアのアサド政権支援面でも両国の協力が顕著である
複数の国と軍事協力合意を結んでいる結果として、イランは弱小なパートナー国に小規模な部隊(地上部隊、空輸部隊、無人機部隊など)を送り込み、大きな作戦を支援している

●他に米国が懸念している分野として、イランが立ち上げつつある衛星打ち上げ計画があり、長距離弾道ミサイルやICBMにそのまま転用できるものとして米情報機関がその動向に関心を寄せている
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より細かい説明記事には、20日付米空軍協会記事などがあります→
http://www.airforcemag.com/Features/Pages/2019/November%202019/DIA-Clock-is-Ticking-on-Iran-Gaining-More-Military-Power-When-Embargo-Expires.aspx

Iran2.jpg冒頭で触れたように、米国防省が発表する軍事力レポートは、中国と2017年に復活したロシアに続き、イランで3か国目です。それだけイランの脅威を世界に訴えたいのでしょうし、中東の不安定化で米国が受ける影響が大きいということでしょう

2020年10月に「UN Security Resolution 2231」が失効した後に、何らかの追加制裁が可能なのか、中露が反対して制裁が解除される可能性が高いのか把握していませんがトランプ大統領の個人的な感情で「イラン核合意」から離脱したことで、パンドラの箱を開けてしまったのかもしれません。

イランと日本は伝統的に良好な関係のベースがありますし、穏健なイスラム世界の構築をイランがリードしてくれるように働きかけたいところですが、世界が逆方向に加速しているようです

「空母トルーマン艦長にはイラン人の血が」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-15

「S-400絡みで湾岸諸国へのF-35売り込み停滞」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-13

米国防省「中国の軍事力」レポート関連記事
「2019年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-06
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1
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F-35の問題点を米議会で国防省が証言 [亡国のF-35]

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稼働率が上がらないのはキャノピー調達問題?
ALISのデータ共有について国防省とL社が激突中

F-35 clear2.jpg13日に下院航空戦力小委員会で行われたF-35に関する公聴会で米国防省の主要関係者(調達担当次官、F-35計画室長、試験評価局長など)が証言し、F-35の稼働率が上がらない主要なボトルネックや、維持費高止まり対処に苦悩する国防省と維持整備関連データをALIS内で囲みこもうとするロッキード社間の対立などが明らかにされています

巷ではF-35価格が最新のロット契約で90億円を切ったとか、明るそうな話題が流れていますが、維持費が第4世代機の倍以上で、未成熟な機体への追加改修費が必要なことから、「亡国のF-35」であることに何ら変化がないことを忘れてはなりません。

本日は議会でのやり取りから、最近は「犬も食わない」と言われているF-35の現在位置をかいつまんでご紹介いたします。なお、同じ国防省でも、Lord調達担当次官やFickF-35計画室長は立場上「F-35擁護派」で、試験評価局長は第3者的な視点(付度ゼロ)で冷徹に現実を評価する人物で、「F-35に関する過去の発言は全て正しかった」とまんぐーすが認識している人です

稼働率が上がらない元凶はキャノピー問題?
Behler2.jpgRobert Behler試験評価局長は、単純にF-35が目標としている稼働率を満たせないのは、「計画よりもよく壊れ、修理に予定よりも時間が必要だからだ」と証言し、マティス前長官が示した稼働率8割の目標設定をクリアできなかった背景を述べた
一方でF-35擁護側のF-35計画室長Eric Fick中将は、海外に派遣された部隊は一時的に稼働率が向上することがあると述べ、春から10月までUAEに展開した「第388戦闘航空団の部隊は、4月段階の72%稼働率から、帰国時には92%に回復していた」と説明した

●そしてFick中将は、稼働率向上を妨げている主原因として、キャノピーのステルスコーティング劣化を修復する物品の調達が滞っていることを挙げた
●この点に関してはエスパー国防長官も7月に触れ、「F-35のキャノピー関連調達の不足が稼働率アップの主要な障害となっている」と上院軍事委員会への証言で明らかにしていた

13日の公聴会は、米国政府の会計検査院が13日に新たなレポートを出し、重ねて国防省に対し、血税浪費を生んでいるF-35計画改善を求めたことを受け開かれたもので、22ページのレポートの指摘事項の大半が4月のレポートから変化なく、改善が遅々として進んでいないことが明らかになったことが契機となっている
●会計検査院は最新のレポートで、「国防省のF-35調達費は約45兆円を超えることが見積もられ、更にその維持費が別に110兆円を超える状態となっている。国防省はF-35の稼働率向上を図る過程で、長期間にわたる維持経費の許容可能性について吟味し、その改善を求められている」と指摘している

世も末:ALISデータへのアクセス権でL社と対立
Lord2.jpg国防省とロッキード社は、F-35の維持整備を管理するALIS(自動兵站情報システム)の問題を解消するため、2020年9月までに再出発の新バージョンを部隊に投入すると明らかにしているが、国防省がALISシステム内のデータにどれだけアクセス可能かに関し、両者は激しく対立している
●国防省は維持費の度重なる高騰を受け、ロッキード社に不信感を強めており、ALISを管理することで入力されるデータをロッキード社が独占することを危惧し、国防省がより多くALISを管理できるようロッキードに要求していると、下院公聴会でフラストレーションを議員らにあらわにした

ALISの設計当時のコンセプトでは、ロッキード社が「知的財産」について一元的にコントロールすることになっており、ロッキードが整備計画や部品、兵站全般など主要な側面を管理するが、ALISのこれまでのトラブルとロッキードへの不信感から、このままでは維持整備費の高止まりが避けられないとの危機感が国防省側にある
Lord調達担当次官は、「新しいALISのアルゴリズムは現存する全てのデータにも適応し、引き続きロッキードと必要なプロセスを進めていく」と述べた後、「しかし、知的財産に関する理解に関し、米国政府が支出して構築したシステムへのアクセスがどこまで可能かについて明確にする必要がある」とロッキードとの見解の違いに言及した

Fick.jpgF-35計画室長も、ロッキードの知的財産権に関する主張には馬鹿げたものであり、国防省が仕事をするのに必要なデータへのアクセスを確保することは極めて重要だと訴えたが、これまでのところ、知的財産権の壁に阻まれ、国防省の要求は跳ね返されている
●同室長は更に「現在国防省は、知的財産権で何が守られているかを確認し、必要な部分へのアクセスが可能かどうかを明確にすることに取り組んでいる。このアクセス権追求は極めて重要だ」と語った

Lord次官は、「我々にとっての課題は、ALISの多くのデータやデータ処理がロッキードのコンピュータで扱われることであるが、新しいALISでは国防省のアクセスを確保することが必要だ」、「何がロッキードのデータで、何が政府のデータかの争いを鎮めて明確にすることだ」と決意を語った
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ALISのデータとか、知的財産権とか、問題の具体的な中身がさっぱりわかりませんが、唖然とするレベルの話であることは確かでしょうロッキードは何を考えているのか、何を隠そうとしているのか・・・と呆れてものも言えません・・・

F-35-eglin.jpg「亡国のF-35」を生み出したロッキードの「守銭奴」ぶりと、それを許した米国産軍複合体の暗部を記憶にとどめておくべきでしょう。737MAXで多数の死傷者を出し、そのブラックぶりで労働者から内部告発が相次ぐボーイングも同じ穴の「ムジナ」です

話題は全く変わりますがF-35に関して個人的に、ロシア製S-400のレーダー覆域内で飛行させたくないとの米国からの圧力があれば、日本のF-35の日本海や東シナ海での平時の活動(対領空侵犯措置や訓練)に大幅な制約が課せられるのではないかと懸念しております。大丈夫ですかねぇ・・・。「ロシアや中国の偵察機のそばを飛行させるな」とか、突然米側から言われたりして・・・

F-35維持費の削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

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細々と米軍と中国軍がハワイで共同訓練実施中 [Joint・統合参謀本部]

両軍から各100名程度が
火山噴火想定の災害対処訓練

disaster exchange.jpg18日付Military.comは、11月18日から26日の間で行われている中国陸軍と米陸軍との災害対処交流(共同訓練・活動?)「isaster management exchange」を取り上げ政経軍事全ての面で冷ややかな状況にある米中関係の中で、細々と続けられている軍事交流の様子を伝えています

このほかにも記事によると、3月に米空軍大学の大佐クラスの学生が中国空軍基地を訪問し、5月に中国空軍の士官20数名をハワイのヒッカム米空軍基地で受け入れたりしているようで、公式にも「引き続き中国との軍事関係維持にコミットしている。対話や双方が興味のある災害対処や人道支援分野でのコーディネーションでの関与などに取り組んでいる」と報道官が述べています

disaster exchange3.jpgもちろんトランプ大統領が対中貿易赤字の改善を訴えて制裁を課し、ペンス副大統領が中国を厳しく非難し対処を主張する演説を繰り返し統合参謀本部議長が「軍事的な意味での敵ではないが、strategic competitorだ」と13日に東京で語り、太平洋軍司令官が「WW2で米国が確立したルールに基づく国際秩序を、中国が損なおうとしている」と語り、太平洋陸軍司令官が「インドーアジア太平洋地域では、全てが中国関連の問題であり、中国は脅威だ。中国が生み出す環境に対応するため、米陸軍は新たな戦闘戦略を必要としている。中国は当地域を支配しようとしている」と述べるような両国関係ですが、

本日は「細々」な訓練の様子を、断片的にご紹介します

18日付Military.com記事によれば
中国は、2014年と2016年の環太平洋海軍演習RIMPACに招かれたが、2018年には参加を許されなかった。そして2018年の同演習に中国は電波情報収集艦を派遣して、演習参加国の顰蹙を買った
隔年の同演習は2020年にも計画されているが、演習準備を担当する第3艦隊司令部のスタッフは、「中国はRIMPACの計画プロセスに含まれていない」と述べ、2020年も招待されない方向である

disaster exchange2.jpg米中軍事関係が減少傾向にある中で、例外的に実施されているのが、ハワイでの「disaster management exchange」である。
この交流は、米軍の「Pacific Resilience」計画の一環として行われるもので、大規模災害発生時に、米軍がパートナーを支援できるように準備するためのものである

この交流は今年で15回目を迎え、毎年両国が相互に相手国を訪問して実施しており、昨年は米太平洋陸軍部隊が中国の南京を訪れ訓練を行っている
キラウエアキャンプで実施された今年の訓練には、両軍から約100名づつが参加し、仮想の国の火山噴火を想定して、多国籍部隊の支援調整所が設けられた状況下で両軍が連携しながらの災害対処を行っている
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disaster exchange4.jpg記事は最後の部分で地域専門家の言葉を紹介し、「アジア諸国には、中国と関わらないとの選択肢はない。中国はそこに存在し、そこに居続けるので、どの様に対処するかを考える必要がある。中国を封じ込めることはできないし、対抗することも難しい。そこに中国は居座り続けるのだ。これがアジア諸国の受け止めであるが、米国はまだ完全にこれを受け止められていない」と結んでいます

香港のデモへの世界の対応を見ていても、「口先介入」を超えるものはありません。さみしいですが、これが現実のようです。この分野では、トランプのディールのみがかすかな希望です

中国軍事関連の記事
「中国70周年軍事パレード」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-02
「米軍試験場を5G試験に提供する」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-14
「米軍トップが中国脅威を議会で語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-14-1
「2019年中国の軍事力レポート会見」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-06
「中国が続々SLBMやSAM試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-12-26
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米空軍が情報共有アプリ「Omnia One」提供間近? [米空軍]

「Uber」や「FlightAware」のアプリを参考に

Uber USAF3.jpg7日付米空軍協会web記事は長年の懸案だったF-22とF-35の新型データリンクを米空軍が12月から投入(試験?)開始することや、陸海空サイバー宇宙ドメインを包含する指揮官から前線兵士レベルまでの統合使用を念頭に置いた「作戦情報共有アプリ:Omnia One」の提供構想があると紹介しています

F-22とF-35の間のデータリンク問題は、「何でそんな問題が設計段階で放置されていたのか???」と唖然とするばかりの問題ですが、2017年当時の報道では、何とか仲立ち機材を使用し「Link-16」を通じたデータ共有を可能にするレベルの解決案でした。

12月に投入される装置は「保全上安全で暗号化されたデータリンク:secure, encrypted data link」で「4か月ごとにアップグレード」される様で、タイプの異なる2機種のデータを翻訳する機能を備えているそうです

Uber USAF.jpg先日もご紹介した衛星、ISRアセット、中継アセット、指揮所、陸海空部隊の兵器、サイバー&電子戦部隊などを「リアルタイムで連接」し、「キルチェーン」に人間を極力介在させずに瞬時の脅威対処を実現しようと、またその分野で米空軍の存在意義をアピールしようと米空軍は資源の再配分を計画しているところです

そんな動きの中から本日は「作戦情報共有アプリ:Omnia One」の提供構想を取り上げ、その実現に関し「世代間の思考パターンギャップ」を問題視する日系のクマシロ空軍准将(米空軍司令部A-5統合インテグレーション課長)のお話などをご紹介します

7日付米空軍協会web記事によれば
Uber USAF2.jpg●7日、米空軍の先進戦闘管理システム設計責任者であるPreston Dunlap氏は、軍事メディア主催のイベント講演し、米空軍が陸海空サイバー宇宙ドメインを包含する「作戦情報共有アプリ:Omnia One」の初期型を提供する計画だと語り、空軍アセットの情報を共有するレベルの現状を打破する構想を明らかにした
●そして「Omnia One」について、「Uber」や「FlightAware」のアプリのような発想のもので、アプリ画面上で特定の海軍艦艇をクリックすれば、その航跡、行動予定、搭載兵器や貨物などなど、作戦計画や遂行に必要な情報が入手できるイメージを持つものだと語った

●まだ「Omnia One」は検討初期段階にあり、目指す高速キルチェーンネットワークにどのように融合させるかに焦点を当てて検討しているが、使用者の世代によって情報認識のパターンが異なることから、どのように情報を提供するのが最適かが悩みの種となりつつあるとも述べた

Kumashiro.jpg●同じく講演したクマシロ空軍准将(米空軍司令部A-5統合インテグレーション課長)は、「どの様な情報が意思決定に必要か」を考える一方で、ミレニアム世代とベビーブーム世代とでは、バーチャルリアリティーを好むのか、伝統的なマイクロソフトオフィスのような形式が良いのか異なるので、どの様にユーザーを想定してシステム構築を図るのかを真剣に考える必要がある、と状況を説明した
●そしてこのようなアプリタイプの形式導入により、地下の作戦室からだけでなく、どこならでも仕事を行えるようになるとも表現した
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「Uber」や「FlightAware」のアプリを使用したことがない旧世代のまんぐーすですので、「作戦情報共有アプリ:Omnia One」のイメージが正しいのか全く自信がありません

恐らく、前線兵士や指揮官がタブレットのようなもので、陸海空サイバー宇宙ドメインを包含する最新の状況を把握でき、指揮統制もある程度可能にするような姿を追求しているのかなぁ・・・と想像しています

米空軍資源再配分の最重要分野は「つながる」投資
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-08

日系クマシロ空軍准将がご活躍
「マルチドメイン指揮統制MDC2に必要なのは?」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24

米空軍のMドメイン指揮統制検討
「米空軍がマルチD指揮統制演習を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-25
「指揮統制改革に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09
「3つの取り組み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-18
「宇宙サイバー演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-14-1
「空軍に新コンセプト期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
「米空軍の重視事項3つ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13

世代間や機種間リンクの記事
「世代間&5世代機間リンク」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-08-24
「Red-FlagでF-22リンク問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-02
「世代間リンクに対策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-10
「世代間リンクが鍵」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-18-1
「5世代と4世代機の融合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-08
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湾岸諸国がS-400を購入したらF-35売却は? [亡国のF-35]

UAEへのF-35売却交渉が先送り?
ロシアの湾岸への兵器売込みとイスラエルへの配慮の2重苦

F-35-eglin.jpg12日付Defense-Newsは、2017年のドバイ航空ショーでは米国がUAEとF-35売却交渉を開始するとの噂でもちきりだったが17日から始まる今年の同航空ショーではその話題では盛り上がりそうもないと報じ、背景にロシアが湾岸諸国に高性能地対空ミサイルS-400を強力に売り込んでおり、S-400を購入したトルコへのF-35売却を中止した悪夢の再来が懸念されるからだと紹介しています

またイスラエルの軍事優位を担保するため湾岸諸国へのF-35売却は困難との見方に対しては、細部のスペックでイスラエル提供機体の優位を確保しておけば、対ISや対イランを理由に湾岸諸国へのF-35売却は不可能ではないとの見方を紹介しています

米国の同盟国であるサウジなど湾岸産油国が、実際にどれほどロシア製S-400を購入する可能性があるのか記事からははっきりしませんが、プーチン大統領は相当力を入れており、「第2のトルコ」獲得を狙っているようです

12日付Defense-News記事によれば
GCC.jpg2年前の2017年ドバイ航空ショーでは、F-35の湾岸諸国への売却を検討する機は熟したと米側が考えているとのうわさが飛び交い、最も可能性が高いUAEとの交渉開始が明らかになるのではとの話で会場は持ちきりだった
しかし17日から21日に行われる同航空ショーの会場ではそのような噂は出そうもないし、2国間の話の進捗も全く不明である。そしてこの変化は、トルコによるロシア製S-400購入によるF-35売却中止の悪夢が、米側関係者を臆病にしているからだと言われている

●軍需産業に詳しい航空コンサルタントのRebecca Grant女史は、米国が湾岸諸国へのF-35売却を進めたい理由は2つあり、一つはイスラム過激派(ISなど。イランは?)対処で協力関係にあるUAE、サウジ、バーレーン、カタールなどに戦力を提供したいとの思いで
もう一つは現在可能性が検討されているF-35による弾道ミサイル迎撃能力を湾岸諸国に提供するオプションを考慮してのことだと解説したが、一方でトルコのS-400購入を巡るゴタゴタで、UAEとの交渉は3-5年阻害されるとも語った

S-400.jpgロッキード社は以前から、湾岸諸国への売却もF-35全体計画の「皮算用」に含めており、現在確実性が高い3200機程度の生産数を、目標である4600機レベルに引き上げるための不可欠な顧客だと見なしている
5月にロッキードCEOのMarillyn Hewson女史は、「中東諸国の間にはF-35を求める声があり、いつかのタイミングで、F-15やF-16で前例があるように、米国は中東諸国にもF-35技術を提供することになろうと考えている」と述べている

一方でロシアの湾岸諸国への兵器売込みは活発で、ロシア国営メディアは、イランからの脅威に備え、ロシアとカタール間のS-400売却交渉が「advanced stage」にあると報じ、同時にサウジとの交渉も始まっていると報じ、
プーチン大統領が9月に語った「希望する国の自衛のため、我が国はサウジに助けの手を差し伸べる用意が出来ている」、「イランが過去S-300をロシアから購入したように、またトルコがS-400を購入したように、サウジ政府の懸命な決断を期待する」との言葉を紹介している

S-400 3.jpg●別の米国専門家は、「戦車や大砲をロシアから購入しても米国は問題視しないだろうが、S-400導入となれば忍耐の限界を超えるだろう」と述べつつ、湾岸諸国が互いに近接していることから、「湾岸地域の1か国でもS-400を購入することになれば、湾岸諸国全体のF-35購入の障害になろう」と見ている

●ただ前出のRebecca Grant女史は、「例え湾岸諸国がS-400を購入しても、湾岸諸国に売却するF-35の機微な性能部分のハードやソフトのグレードを下げて、対象国に応じて提供することで、F-35を提供するオプションがある」と主張している
トルコのS-400購入事案が起こる前は、イスラエルへの配慮からアラブ諸国へのF-35売却が困難ではないかとの懸念を示す声もあったが、この懸念に対しても、F-35能力向上バージョンやステルス性のレベルに差をつけることで、イスラエルの優位を保ち理解を得られるとの見方が広まりつつあった。ただし、S-400との関係は秘密保全上の配慮から来るものであり、別の観点の問題である
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F-35による弾道ミサイル迎撃についてはF-35搭載センサーで目標の探知追尾が可能か、F-35搭載可能な迎撃ミサイルが開発できるかの検証が続いているようですが、湾岸諸国への輸出関連で話題になるとは思いませんでした

F-35-Turkey.jpg米国はF-35の運用に軍事情報保護の観点から注意をしているようですが、極東ロシアにS-400が配備されたら、捜索レーダーは4-500㎞の覆域があるようですから、ウラジオストック沖合の日本海では、航空自衛隊F-35の飛行に制約が課せられるかもしれません

また情報収集能力を備えたロシアの爆撃機や情報収集機が日本領空に接近した場合、日本のF-35による対領空侵犯措置が制限される可能性があるのでは・・・・と心配になってしまいます。もちろん中国正面でも同様の懸念が生じます

米トルコ関係
「トルコの代わりに米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
「米がトルコに最後通牒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09
「6月第1週に決断か」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-23
「トルコが米国内不統一を指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-2
「もしトルコが抜けたら?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-21
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今そこにあるサイバー脅威は中露からではない [サイバーと宇宙]

ロシアや中国への過度の注目が懸念材料
もっとも今活発なのは中小アクターだ
断片的な記事ですが・・・

CyberCon 2019.jpg14日付FifthDomeinが12日に開催された「CyberCon2019」でのパネル討議を取り上げ日々のサイバー脅威と向き合い対処に追われる関係者や研究者の声を紹介し、中国やロシアとの本格紛争に備える動きの中、サイバー分野でも中国やロシアの脅威に注目が集まっており間違いとはいえないが、サイバーが本来「貧者のツール」的な性格を持つ手段であり、今現時点で「観測される大部分のサイバー活動が中小アクターによって行われている」現実を忘れてはならないと警鐘を鳴らしています

匿名の世界で、大きなハードウェア投資が不要で、闇の世界に金で動く怪しげな専門家やオタク戦士がうごめく世界のようですから、サイバードメインで「今そこにある危機」が、記事が指摘する「minor or middle powers」から生み出されているとの指摘は重いものがあります

事柄の性格上、抽象的な部分が多い記事ではありますが、「中小アクター」が調査研究段階から作戦活動段階にレベルアップし、今年に入って活動を本格化させているような表現や、北朝鮮以外にも具体的なの国名も挙げられており、色々な闇の世界を創造させる内容です。

14日付FifthDomein記事によれば
Valeriano.jpg米海兵隊大学の軍政チェアーで米国サイバー評議会のメンバーであるBrandon Valeriano氏は、「サイバー関連の世の関心が、国家防衛戦略NDSの影響もあり、中国やロシアに過度に集中していることが最大の問題だ」と述べ、「変化しつつあるサイバー戦も現在位置を見ている我々からすると、中露など大国ばかりに注目が集まっていることが心配であり、この紛争ドメインの現実を見つめる必要があると思う」と危機感を訴えた
●そして、サイバーは、小さな国力のない国が、大きな国防投資をすることなしに国益を追求できる手段だとの原点を再度強調し、例えば北朝鮮は制裁を無効化してハッキングで得た資金で軍事力強化に当てる活動を行っており、イランや他の中東国家も最近数ヶ月でサイバー作戦に加わるようになってきていると最新動向を説明した

●また、現在日常的に行われているサイバー作戦の大部分が「中小アクター:minor or middle powers」によるもので、具体的にはUAE、カタール、フィリピン、ベトナムであると言及した
●更に、中国やロシアとの直接紛争の危機は差し迫った状況にはないが、シリアや湾岸地域では事態がエスカレートしつつあり、その点を危惧しているとも付け加えた

Caltagirone.jpg民間サイバーセキュリティー会社「Dragos」の脅威分析担当Sergio Caltagirone副社長は、「中東は今、多くの組織や国家が入り乱れてサイバー作戦を開始する場となっており、活発な能動的な活動エリアになっている。中小アクターが調査研究段階から作戦活動段階にレベルアップしてきている」と状況を表現した
●同副社長は、それらのサイバー作戦の多くは、中東地域の他国の影響を削ぐ目的であったり、他国への自国の意図を発信するものであったり、原油市場での価格操作を目的としたものだと説明した
////////////////////////////////////////////

「フィリピン、ベトナム」が気になります。中国と戦ってくれていると考えたいところです。また、もしそうならば、日本は防衛交流の機会を通じ、両国から教訓を学びたいところです

cyber1-82e9c.jpg加えて、中東諸国内の争いは別として、北朝鮮のような「中小アクター」の標的となっている攻撃対象が気になります。日本が主要な被害者となって「知的財産」や「老後の資金」や「庶民のたくわえ」が強奪されていないか気になるところです

まんぐーすの身の回りでも、偽サイトに誘導するような怪しげなメールや「仮想通貨」を要求する脅迫メールを日常的に目にするようになり、その頻度が加速度的に増えていることに静かな脅威を感じております

最近のサイバーの世界を考える記事
「ハイブリッド情報戦に備えて」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-05
「ドキュメント誘導工作」を読む→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1
「サイバーとISR部隊が統合して大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19

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米空軍F-35部隊が初派遣の中東から帰還 [亡国のF-35]

約6か月間のUAEへの派遣
派遣機数や人員規模は非公開
初の実戦は4月30日のIS攻撃

F-35 Hill Home.jpg4日付米空軍協会web記事によれば、米空軍F-35として初めて作戦地域に派遣され実任務も遂行したF-35派遣部隊が11月1日、派遣先UAEのAl Dhafra基地から母基地のユタ州Hill空軍基地に帰還し、部隊や家族の熱い歓迎を受けました

派遣された機数や兵員数は公開されていませんが、4月15日にUAEに到着し、2週間後の4月30日にはIS地下トンネルや兵器庫をJDAM攻撃して初実戦任務を2機編隊で遂行して新たな歴史を開いた米空軍F-35の初派遣部隊でした

4月9日には、航空自衛隊三沢基地のF-35Aが世界中の同型機で初めて墜落事故(海上に墜落)を起こし、事故原因が発表されない段階の事故後わずか1週間後に長距離飛行を伴う戦闘地域への初展開を行ったことから、「4月9日の墜落事故の原因として、早い段階で機体異常は排除されていたのでは・・・」と邪推いたしましたが、後の事故報告書で「バーディゴ・空間識失調」が原因とされたところです

本日はF-35について「ぐだぐだ」言わずに淡々と事実をご紹介し、主に飛行隊レベルの「Heart Warming」な帰国歓迎の模様を写真でご紹介いたします

4日付米空軍協会web記事によれば
F-35 Hill2.jpg●UAEに派遣された第388戦闘航空団第4飛行隊と予備役である第419戦闘航空団第466飛行隊の操縦者や同飛行隊の整備員たちは、対ISの近接航空支援任務や地域全体での抑止戦力としての任務を遂行し、11月1日に帰還した
●この約6か月間の派遣中、対IS攻撃等のほかに、英空軍やイスラエル空軍のF-35と「Exercise Tri-Lightning」との演習などにも参加した

●この米空軍F-35部隊の派遣は、米海兵隊F-35Bが2018年に中央軍エリアに派遣されたのに続いて、米軍として2回目のF-35派遣となった
第4飛行隊のJoshua Arki飛行隊長は「我々は米空軍「F-35が、他の戦闘機と肩を並べてテーブルに着くことが出来ることを示すことが出来た」、「我が友好国や敵に対し、命令を受ければ米空軍F-35Aが任務遂行可能な状態にあることをデモンストレーションすることが出来た」と帰国後語っ

注 F-35が実戦投入されたのは、2018年5月のイスラエル空軍機、2018年9月の米海兵隊機に続くもので、2016年8月に米空軍がF-35の初期任務態勢確立IOCを宣言してから2年8か月を経て初めての実戦投入であった

●ちなみに、今回のF-35A帰国に当たり、第5世代機が交代で中東に派遣されたとの発表はなく、英国の米空軍基地からF-15Eが10月中旬に同じUAEのAl Dhafra基地に派遣されたとの発表があったのみである
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F-35 Hill3.jpg揚げ足を取るつもりはありませんが飛行隊長(中佐)のコメントは、米空軍の本音のような気がします。

「他の戦闘機と肩を並べてテーブルに着くことが出来ることを示す」、「我が友好国や敵に対し、命令を受ければ米空軍F-35Aが任務遂行可能な状態にあることをデモする」ことが一番の目的であったように思います

米空軍幹部はF-35の稼働率が上がらない理由として、任務需要が高く、修理や整備に時間をかけて稼働率を上げる技官が不足するほど「引っ張りだこ」と説明していますので、そのようなのかもしれませんが、無理のない平易な任務からこなしている状態だろうと推測いたします

再び会計検査院が「F-35を何とかしろ」レポートを出し、13日には国防省首脳がロッキードへの不満を議会でぶちまけける「大荒れ公聴会」があったようですが、その件は来週ご紹介します・・・

Hill空軍基地の関連webページ
https://www.hill.af.mil/News/Article-Display/Article/2008193/hill-airmen-return-from-first-f-35a-combat-deployment/ 

米空軍F-35の中東初派遣と活動
「米空軍F-35が初実戦投入で攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-01
「米空軍F-35Aが中東初展開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-16-1
「海兵隊F-35が初実戦投入」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-28-1
「イスラエルが世界初実戦投入」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26
「米空軍F-35部隊がIOC宣言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-28 
「米空軍F-35と英イスラエルF-35が訓練」→ https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-04

F-35維持費の削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02

「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

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CSISが3つの米空軍将来体制研究の無人機活用に苦言 [Joint・統合参謀本部]

米議会委託のマイター、CSBA、米空軍の分析に対し
(米空軍に付度して)無人機活用提言が不十分と

CSIS Harrison.jpg29日、CSISのTodd Harrison上級研究員(前CSBA研究員)が、米議会の委託を受け「米空軍の将来体制」を検討した3つの機関(マイター、CSBA、米空軍)無人機活用に関する提言部分に苦言を呈し、安価で稼働率が高い無人機活用への姿勢が不十分だと主張しました

3つの機関の分析報告がいつ行われたのか把握していませんが、米空軍は当事者であり、マイターは国の予算で活動するコンサルで、CSBAは独立系だと理解していますが、CSBAも含めて無人機活用に消極的だとの苦言は、予算分析の専門家であるHarrison上級研究員ならではの視点かもしれません

特に無人空中給油機や無人機ウイングマンの活用をHarrison上級研究員は主張しているようですが、そんなご意見の一部をDefense-News記事からご紹介します

29日のCSISイベントの模様と同研究員の主張
https://www.csis.org/events/air-force-future 

29日付Defense-News記事によれば
Harrison.jpg米空軍が飛行部隊数を増やす構想を掲げている中で、議会委託で「米空軍の将来体制」を検討した3つの機関(マイター、CSBA、米空軍)の提言を評価するイベントを開催したCSISのTodd Harrison上級研究員は、低コストで稼働率が高い無人機を、有人機の代替として活用する検討が不十分だと不満を表明した
3つの機関の検討提言は全般に、米空軍が現在保有する無人機の維持を支持しているが、Harrison氏はMQ-9やRQ-4無人機の低い運用コストや高い稼働率を例示し、空軍の将来体制検討ではもっと無人機活用を考えるべきだと訴えた

●Harrison氏は「有人機から無人機に移管していく任務についての工程表ロードマップが必要だし、無人機の新たな運用コンセプトも必要なはずだ」と、3機関の提言が不十分だと示唆した
●また「私は特にコスト面と稼働率面から無人機活用拡大を推奨したい。無人機は他の米空軍アセットに比べて、ずば抜けて両面で好成績を残しており、我々この利点を最大限に活用して応用範囲を広げるべきだ」と説明した

MQ-9-3.jpg●具体的に同研究員は、MQ-9の稼働率は90%近く、より高度な装備であるRQ-4でも75%程度の高い値を維持していると述べ、飛行時間当たりの維持費でも、米空軍のすべてのアセットの中で最低レベルの低コストを維持していると付け加えた

米空軍の研究提言は飛行隊数を現状より70程度増やして386個にする構想を踏まえ、無人機攻撃部隊を2個増やすことは記載されているが、どの様な攻撃機か触れておらず、指揮統制やISR用に22個飛行隊を増強すると提言しているが、具体的にどのようなニーズを指しているのか、また無人機活用の可能性については触れていない
マイターとCSBAの提言は、MQ-9とRQ-4を現有規模で維持することを主張し、CSBAは更に攻撃と電子戦攻撃用にMQ-Xとのステルス無人機の導入を提言している

XQ-58.jpg●このように3つの機関の提言は全般に無人機を支持しているものの、2030年の米空軍体制への提言にもかかわらず、2021年度予算への無人機予算増額や具体的提言を必ずしも含んでいないことにも不満を示した

●Harrison氏は加えて、「それが直ちに起こるとは思わないが、無人機活用拡大は必要なことだ。その変化の一部は米空軍内の文化を変える事であり、戦略的思考でどんな任務を無人機担わせるかを、米空軍に考えさせることでもある」とも述べた
●そして「無人機が今日の任務を担うまでもにも様々な事があった。組織的な抵抗に長い間さらされてきた。しかし無人機は自らその有用性を証明してきた。彼らは過去20年間の戦いにおいてその価値を証明したのだ」と語った

MQ-25.jpg無人機に期待できる分野としてHarrison氏は、米海軍が導入するMQ-25A空母艦載無人空中給油機を取り上げて空中給油を推奨し、米空軍が次期空中給油機でカメラ映像で給油操作員が対象機への給油操作を行う仕組みの導入を、あるべき方向だと称賛した
●更に同研究員は、無人機の群れでの活用やウイングマンとしての活用も低コストな無人機の将来を考える上で重要だと語り、損耗が予期される分野への応用を推奨した
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温故知新・・・過去記事より

カートライト統合参謀本部副議長(2011年当時当時)の主張
「次期爆撃機に有人型は不要だ!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-16-1
「誰一人として、私に爆撃機が有人である必要性を教えてくれない」、「核任務に有人型が必要だと言うなら、ICBMに有人型があるのか?」

古くて新しい議論なのかもしれませんが、CSISが写真の規模でパネリストを集めて議論する時代になったということです

世界中の空軍の方、特に戦闘機操縦者の方は、心して今後の身のふりを考えて下さい

MQ-25関連の記事
「初飛行MQ-25A」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-20
「2019年6月の状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-04
「MQ-25もボーイングに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-01-1
「NG社が撤退の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-29-1
「提案要求書を発出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-13
「MQ-25でFA-18活動が倍に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-03
「MQ-25のステルス性は後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-27 

「CBARSの名称はMQ-25Aに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-17
「UCLASSはCBARSへ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-02
「UCLASS選定延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-05-1

「米海軍の組織防衛で混乱」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-01
「国防省がRFPに待った!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-12

KC-46関連の記事
「貨物ロックの新たな重大不具合」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-09-12
「海外売り込みに必死なボーイング」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-22-1
「米空軍2度目の受領拒否」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-1
「機体受領再開も不信感・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「米空軍がKC-46受け入れ中断」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-3
「不具合付きの初号機受領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-2
「7機種目の対象機を認定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-08-3

「初号機納入が更に遅れ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20
「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1

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米空軍は弾薬庫航空機を継続検討中 [米空軍]

国防省SCOで2016年ころから検討中
B-52が有力候補も、B-1やC-17の声も
運用構想の詰めが必要な気がしますが

arsenal plane.jpg4日付米空軍協会web記事は、2016年に当時のカーター国防長官等が打ち出した「弾薬庫航空機:arsenal plane」についての検討が米空軍内の「Global Strike Command」内で引き続き行われており、同コマンド司令官が「a little bit of learning going on:継続検討中」と説明する過程にあるようだと紹介しています

「弾薬庫航空機:arsenal plane」は敵の防空網が強固になる中、敵目標近傍まで接近できるステルス機のような航空アセットの兵器搭載量が限られることから、敵目標近くまで接近して目標位置や移動状況を搭載センサー類で把握してネットワークを通じて伝達する突破型アセットとは別に、多少目標から遠方に所在しても大量に兵器を搭載した空中アセットから補完的に攻撃を行うコンセプトを持った飛行アセットです

arsenal plane3.jpg記事がオプションとして話題に取り上げているのは、ステルス機ではないが搭載量が確保できるB-52やB-1爆撃機か、C-17のような輸送機又は旅客機タイプを改良型になっています。

大型機でなければ、XQ-58のような戦闘機サイズの無人ステルス機もウイングマンとして同行して「弾薬庫航空機:arsenal plane」的な役割は果たせるのですが、米空軍の議論では既存大型機クラスを「弾薬庫航空機:arsenal plane」として議論しています

米空軍協会webサイトが取り上げたのは、9月の米空軍協会主催の航空宇宙会議の場と11月3日の記者会見で記者から質問が出て、2016年以来久々に話題になったからのようで米空軍内で議論が盛り上がっている雰囲気は感じませんが、対中国作戦を考える場合の一つのオプションですので、忘れない程度に紹介しておきます

4日付米空軍協会web記事によれば
国防省のSCO(Strategic Capabilities Office)が数年にわたり扱ってきた「弾薬庫航空機:arsenal plane」について米空軍は、今後いくつかの試験や検討を踏まえての報告を主要幹部に計画しているようである(具体的な日程等については情報は得られていないが)
arsenal plane2.jpg●「弾薬庫航空機」については、2016年に当時のカーター国防長官が「旧式の航空機を、多様な通常兵器の発射母機に改良するアイディア」として打ち出し、米空軍も2016年に説明ビデオを作成し「マルチエンジン機体で、戦闘機や無人機に伴われ、ネットワーク化された半自動兵器を搭載する機体」と解説している

●9月に開催された米空軍協会の航空宇宙総会で、GSCのTimothy Ray司令官は記者団に、構想を成熟させるためにさらに実験を計画しており、空軍上層部への報告を求められていると状況を説明していた
一方同じ会見でRay司令官は、一般にはB-52が最適な機体だと推測されているようだが、輸送機が仲間に加わる可能性もあると述べつつ、「there’s a little bit of learning going on:継続検討中」であり、「言うは易し、行うは難し」だともコメントしていた

●11月3日に米空軍報道官は本件に対し、空軍上級リーダーレベルで「弾薬庫航空機」構想をどのように扱うかについて引き続き議論していると記者団に答えた

●CSISのTodd Harrison研究員は、「輸送機で可能かと問われれば、何を搭載するかによる」と述べ、空対空兵器なら翼下に搭載する必要から輸送機の利用は困難だが、空対地兵器なら後方搭載口から投下可能だとコメントし、
arsenal plane4.jpg●「弾薬庫航空機」は必ずしもステルス機や高速機である必要はなく、大きな搭載量が必要であることから、胴体内と翼下に兵器を搭載可能で、搭載量も大きいのB-52がベターな選択だと述べている

ミッチェル研究所のMark Gunzinger研究員は、輸送機や旅客機タイプを「弾薬庫航空機」に改修するのは実行可能性が低く、また有事には輸送機需要が急増することからも、輸送機や旅客機の転換は適当ではないとの意見を述べている
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拠点(飛行場)の少ない西太平洋で、中国正面で、第一列島線や第2列島線から、如何に攻撃能力を確保するかを必死に考えた末のアイディアの一つです米陸軍の「射程1800kmの砲」もそうですし、「空母1隻とミサイル2000発の比較」も根っこは一緒です

いろんなアイディアを出して検討していく、いろんな人がアイディアを持ち寄り、知恵を絞っていく・・・。この姿勢は見習いたいものです

弾薬庫航空機の構想
「カーター長官が17年度予算案で表明」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-02-03
「弾薬庫航空機に向け改修」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-13
「同構想とB-52」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-12
「カーター長官が構想を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-10-29-1
「SCOの動き」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-09-10
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米軍のエネルギー兵器が続々成熟中 [米国防省高官]

あまり具体的ではありませんが
無人機の群れ撃退の「PHASER system」以外にも

Directed energy.jpg29日付米空軍協会web記事は、軍民様々な関係者への取材を基に、「レーザーや高出力マイクロ波など用いたエネルギー兵器が過去5年間程度で大きく成熟した」と報じ、例えば米空軍は5つのプロトタイプ試験に成功し、その内少なくとも2つを海外の前線に展開させて実戦的試験や確認を行う方向だと報じています

米空軍が来年前線に展開して試験や確認を行う「少なくとも2つ」の中の1つは、先日ご紹介した「高出力マイクロ波HPM」で無人機の群れを無効化するレイセオンの「PHASER system」ですが、他は装甲車に搭載するレーザー兵器の様です

その他、過去2年間で国防省のエネルギー兵器予算が2倍だとか、米海軍の関連予算が米空軍の予算額を上回った等の関連する話題をご紹介します「いつまでたっても完成まであと5年」と揶揄された時代は終わったのでしょうか?

9日付米空軍協会web記事によれば
ATV.jpg●10月29日の会合でエネルギ兵器推進団体(DEPS)のMark Neice理事は、2017年から19年の間に、国防省のエネルギー兵器関連予算は約580億円から1200億円に倍増し、3軍とMDA、DARPA、エネルギー兵器統合室などに配分されている、と説明した
また米海軍研究所担当者は、2019年度予算で米海軍の関連予算(290億円)が米空軍の予算額(260億円)を上回ったと説明し

米空軍研究所のエネルギー兵器担当官は「レーザーや高出力マイクロ波など用いたエネルギー兵器が、過去5年間程度で大きく成熟した」「3軍の戦場に装備品として姿を現し始めた」「好むと好まざるとにかかわらず、敵味方の両方に渡り始めている」と表現した
●同上の担当官は、「米空軍は無人機対処の5つのエネルギー兵器(4つはレーザー、1つが高出力マイクロ波)を試験し、全てが無人機を撃墜に成功した」と明らかにし、試験の細部は後ほど発表されると説明した

Directed energy2.jpg●米空軍は既に、レイセオン社から2つのレーザー兵器と1つの高出力マイクロ波兵器を調達すると発表している、最初のレーザー兵器は10月中に納入され、装甲車両ATVに搭載される
高出力マイクロ波兵器「PHASER system」は、輸送用コンテナサイズでC-130輸送機で運搬可能な装置で、2時間程度で輸送可能な状態にすることが可能なシステムで、18か月間約18億円で完成した緊急開発装備の成功事例だと言われている。(2020年初に前線に配備され、約1年間の前線実地試験が行われる予定

米空軍関係者は、レーザーと高出力マイクロ波システムがどの地域に配備されるのかコメントを避けたが、9月に発生したサウジ石油施設への無人機と巡航ミサイルでの攻撃の教訓から、中東方面と推測する者が多い

最近エネルギー兵器関連予算が急増している背景として、米空軍研究所担当官は、技術的な成熟にもちろん関係しているが、ロシアや中国が活発にこの分野で動いていることも背景にあると述べ、「米国が蓄積してきた技術的優位が逆転されるほどではないが、ロシアや中国は、米側には不足している失敗を恐れない文化があり、低い完成度でも前線に投入してくる傾向があるので要注意だ」と危機感を表現した
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Directed energy3.jpg注意が必要なのは、依然として弾道ミサイルや巡航ミサイルや航空機を迎撃するほど大出力エネルギー兵器が可能になったわけではなく小型の無人機を撃退する程度の出力のエネルギー兵器が可能になった程度だということです

また、飛来する空対空ミサイルのシーカーにレーザーを照射して無効化する程度の「自己防御用」レーザー視野に入っている程度かと思います

更に出力が出てくると、他の航空機や周辺への安全配慮など、運用上で詰めなければならない細部もあり、その資を得るため前線に配備していろいろ試してみるということでしょう

エネルギー兵器関連
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
「F-15用自己防御レーザー試験」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-04
「エネルギー兵器での国際協力」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-27
「エネルギー兵器とMD」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「レーザーは米海軍が先行」[→]https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24

「無人機に弾道ミサイル追尾レーザー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-17-1
「私は楽観主義だ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23
「レーザーにはまだ長い道が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-18
「AC-130に20年までにレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06

国防省高官がレーザーに慎重姿勢
「国防次官がレーザー兵器に冷水」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12
「米空軍大将も慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24

夢見ていた頃
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1
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米空軍資源再配分の最重要分野は「つながる」投資 [米空軍]

2021年からの5か年計画で4分野に3.3兆円を再配分
4分野で最重要は統合レベルでの「Connect」
「切りしろ」には言及なく、ちょっとモヤモヤですが

connectivity.jpg6日、米空軍協会主催のイベントでGoldfein米空軍参謀総長は、2021年以降の5か年計画(FYDP)におけて資源再配分(redirect)を計画する3.3兆円の4つの重点分野について語り特に将来の脅威に対処するために統合レベルでの「戦力の連接性:Connecting」への投資の重要性を訴え、産業界からの参加者には「連接性」の無い装備には興味がないとまで訴えました

資源再配分(redirect)による3.3兆円のねん出については具体的な言及がありませんが、「全ての保有装備品を対象に、2030-38年の段階で大きな貢献をする装備や計画かを問い直し、答えがノーなら装備や計画の縮小や終了検討を開始する」と説明し、予算枠の拡大が見込めないことを前提に、スクラップ&ビルドで重要な分野への投資を確保するとの考え方を明確にしています

3.3兆円を資源再配分する4つの重点分野と配分額は 
---Connect the Joint Force: $9 billion 
---Offensive and Defensive Space: $9 billion 
---Generating Combat Power: $9 billion
---Logistics Under Attack: $3 billion

・・・の4分野ですが、Goldfein米空軍参謀総長は最初の「Connect the Joint Force」について、重点的に熱く語ったようです

6日付米空軍協会web記事によれば
connectivity2.jpg●Goldfein大将は、「国防省が示した国家防衛戦略NDSを実現するため不可逆的なモメンタムを生み出すには、次年度予算が重要であるが、次のFYDPでは予算枠の増加が期待できない前提で考える必要がある」と語り、資源再配分(redirect)検討の必要性を説明した
●そして「決して素通りできない点として、デジタル化の基礎作りの重要性を強調したい。AIを活用したいなら、超超音速兵器を導入したいのなら、宇宙アセットを防御したければ、エネルギー兵器を必要な目標に指向したければ、量子コンピュータを有効活用するためには、デジタルネットワークを構築し、データクラウド体制を構築しなければならない」と訴えた

●更に「連接するのは米空軍アセットだけでなく、統合戦力である点が極めて重要だ」と述べ、最近実施した机上演習で、最も強力な敵などを想定した厳しい条件設定も拘わらず、2030-38年を想定した将来の米空軍が勝利できた鍵として、統合の指揮統制が機能した点を挙げた
●そして、例えば、衛星、F-35、B-52、イージス艦、地上の海兵隊職種作戦部隊などをすべて結び付ける事で、かつそれら連接ループのほとんどで人間の介入を廃し、キルチェーンの回転を1時間数百回の機械速度に上げる必要があるとも表現した

connectivity3.jpg4か月ごとに実施の大規模演習に合わせ行っている他軍種との連接実験の例として、今年夏の海軍艦隊との連接実験を取り上げ、共通のデータフォーマットを用い、宇宙アセットが怪しい艦艇を見つけてISRアセットに教え、ISRアセットが更なる情報を収集して識別確度を上げ、C2アセット経由で最善の攻撃アセットに目標艦艇情報を流し、流されたイージス艦が目標艦艇を攻撃した例を紹介した
●そして以上のキルチェーン内で、最初に関与する人間はイージス艦勤務者だ」と説明し、人間の関与をなくすことで機械速度のキルチェーン回転の実現と連接の重要性を説明した

●また軍需産業関係者に対して、連接できない装備や兵器の入り込む余地はなくなると述べ、仮に連接性のない装備品や兵器を提案されても受け入れられないと明言した

他の3つの重点分野について
2つ目の「Offensive and Defensive Space」については、特に非公開事項が多くて説明困難で、資源ねん出のためスクラップする事業や兵器の議会説明に骨が折れるが、「宇宙で最初に行動を起こすプレーヤーでなければならない」と表現した

connectivity4.jpg3つ目の「Generating Combat Power」については5つの「P」が重要と説明し、「敵防御網をpenetrate」「高い脅威エリアでpersist」「アセット搭乗員をprotect」「多数の存在でproliferate」「敵アセットをpunish」出来るようなアセットの導入が必要だと説明した

最後の「攻撃を受けながらの兵たん:Logistics Under Attack」は、敵が米軍の兵たんチェーン阻止を狙ってくる中、過去18年間の対テロ作戦時のように、必要な時間と場所に必要な兵站支援を得られるとの思考パターンから脱却し、兵たん確保のための投資を訴えたものである
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Goldfein米空軍参謀総長が強調した「連接性:Connecting」の重要性は、当然米軍内統合のレベルで満足できるはずはなく、同盟国アセットが「つながる」ことを求めてくるのでしょう。

自衛隊の装備品やセンサーがどの程度の「連接性」を備えているのか把握していませんが、ソフト面だけでなく、政治的許容性を含むソフト面でも詰めも必要になってくるのでしょう。

そんな中、日本とのGSOMIAを政治的取引材料のように扱っている韓国に対し、米軍や米国防省、米国安全保障関係者はどんな思いを持っているのでしょうか???

日系クマシロ空軍准将がご活躍
「マルチドメイン指揮統制MDC2に必要なのは?」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24

米空軍のMドメイン指揮統制検討
「米空軍がマルチD指揮統制演習を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-25
「指揮統制改革に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09
「3つの取り組み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-18
「宇宙サイバー演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-14-1
「空軍に新コンセプト期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
「米空軍の重視事項3つ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13
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米国防省のAI開発に規範と倫理を [米国防省高官]

強制力がない審議会の提言ですが
既にAI倫理監査官を採用済みとか・・

DIB2.jpg10月31日、米国政府の国防革新評議会(Defense Innovation Board)が国防省におけるAI開発や使用における「5つの原則:Principles」まとめて国防省に検討するよう提言しました。

日進月歩で進むAI開発ですが、ここ最近、米国防省や情報関連機関でAIシステム開発や使用に関する倫理規範(AI ethics)が必要ではないかとの問題意識が高まっており、6月には情報機関の監察官がAI開発や利用に関する説明責任を果たすための投資が不十分だと指摘し、国防省では統合AIセンターにAI倫理監察官を配置するといった動きが相次いでいるようです

AI.jpg国防革新評議会は学者や企業幹部などから構成され、座長はカーネギーメロン大学のMichael McQuade研究担当副学長が勤め、パブリックコメント募集や公聴会、専門家との討論会、机上演習などを経て「5つの原則」がまとめられたと言うことです

米国防省はこの提言をどのように扱うかを検討するため、「DoD Principles and Ethics Working Group」を設けて具体的検討を開始しているようです

その「5つの原則:Principles」とは
●人間の責任明確化
人間が適切なレベルの判断を下し、AIシステムの開発、展開、使用、および結果に対して責任を持ち続ける必要がある。
●公平性の確保
AIを使用した戦闘または非戦闘AIシステムの開発に際して、意図しない偏った思考パターン(バイアス)を回避するために、慎重な措置を講じる必要がある。

●追跡可能性
AIシステム開発において、技術やその開発プロセス、運用方法の検討開発に関して、その経緯や記録が確認できるように、透過的で監査可能な方法、データソース、設計手順と文書化などを確立しておく必要がある

●信頼性
AIシステムが明確に定義された使用領域で活動するため、システムの安全性、セキュリティ、堅牢性が、その使用領域内のライフサイクル全体で試験・保証される必要がある
●ガバナンス可能性
AIシステムは、意図した機能を果たすと同時に、意図しない害や混乱を検出して回避する能力を備えるよう、設計および設計する必要がある。
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DIB.jpg最後の「ガバナンス可能」原則の部分は、提言取りまとめの最終段階に、AIが暴走するような場合に人間がAIを非稼動にする仕組みを設ける事の重要性を強調するよう修正されたそうです。

また原則発表会見でMcQuade座長は、「国防省が真剣な取り組み事を期待し、併せて、このような原則を遵守する国として本件に関する世界的な対話を開始する機会にしてほしい」と語っています。

「ひねくれもの」のまんぐーすは、きっと中国やロシアは、「中国共産党やプーチン派の利益になるなら全てOK原則」程度のゆるい規制だろうな・・・と考えてしまいますが、AI操縦の自国の航空機から攻撃される未来は避けたいので、AI専門家の皆様にはよろしくお願いしたいところです

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