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米陸軍ヘリは無人化でなく自動化推進の方向か!? [Joint・統合参謀本部]

ヘリ操縦者をなくす方向ではなく
自動操縦部分を拡大し操縦者負担軽減方向

S-70 2.jpg10日付military.comは、ヘリコプターの自動化システム開発を担当するシコルスキー自動化部長にインタビューし米陸軍の主力ヘリであるUH-60 Black Hawkの原型となるS-70における無人化や自動化への取り組みついての同部長の話を紹介しています

大きくシコルスキー社(ロッキード社の傘下にある)はS-70で大きく2つの方向を目指しており一つは現存機に軽易に組み込んで自動化を推進するシステム開発で、もう一つは操縦者に多様なレベルの自動操縦オプション機能を提供し、搭乗員が任務遂行に一層集中することを可能にするシステムだということです

S-70 3.jpg米空軍が無人機を、偵察から攻撃まで多様に活用するのとは異なり地上部隊は、完全に自立的に無人機として飛行できるヘリを作るが、あくまでも操縦者が機体に搭乗して機体と共に飛行して任務遂行することを前提としており、飛行部隊所属の操縦者数削減にはつながるようですが、無人ヘリでの任務遂行は念頭にないようです

またヘリの自動操縦に関しては、DARPAも含めた複数の研究プロジェクトが走っており、互いに連携しながら研究を進めているそうで、S-70開発の一つの山である完全無人飛行は2020年度中を予定しているとのことです

10日付military.com記事によれば
シコルスキーが開発しているS-70は、世界各国の軍で使用されるUH-60 Black Hawkやその派生型機につながるものであるが、同社の自動化部長であるIgor Cherepinsky氏によれば、2020年中には自動化ソフトやセンサーを充実させて完全自立飛行を行う予定である
S-70.jpg●同部長は「我が社は世界に向け、地上からの無人自立飛行を2020年に披露する」と述べ、同社テストパイロットは「有人飛行がオプションとして可能なS-70は、既に約55時間の飛行を行い、今までに速度150ノットの飛行まで確認済である」、「今後のカギは、100%有人操縦から、100%自動操縦までの段階的な自動化レベル移行を円滑に行うことである」と現状を語った

2018年5月29日に自動操縦キットをUH-60Aに搭載して飛行試験を開始して以来、技術者たちはヘリの「fly-by-wire system」や飛行コントロールシステムに様々な能力強化を重ねてきたが、現在は指示した高度に移行して維持することを様々なパターンで試験していると、同テストパイロットは説明した
●Cherepinsky部長は「目的は操縦者が任務に集中できるように様々なオプションを提供することであり、自動化システムが操縦者にとって代わることではない」と説明しつつ、同時に米軍や海外顧客には、この自動化システム導入で、少ない操縦者で部隊運用が可能なシステムだとも述べた

●同社はまたS-76Bを使用して別のSARA(Sikorsky Autonomy Research Aircraft)計画を進め、「MATRIX」とのソフトウェアを開発しており、これはFAAとの連携して軍民両用の固定翼と回転翼両方への応用(輸送機と旅客機両方)を狙っていると同部長は述べ、電線や森林やビルや悪天候を想定した困難な飛行を想定したものであるとも説明した
MATRIX.jpg●そしてこのSARAやMATRIXの教訓を、DARPAが進めシコルスキーも参画するAircrew Labor In-Cockpit Automation System (ALIAS) 計画の知見も併せ、S-70計画に投入融合し、柔軟に切り替え可能な自動操縦を追求していると同部長は説明した

●また同部長は、「このシステムは将来の機体への投入だけでなく、現有システムへの導入を強く意識して取り組んでおり、更に軍民両方の世界で利用可能なシステムを追求している」と説明した
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障害物がない高度を飛行する米空軍機とは異なり、障害物や敵の脅威も多い低空を飛行するヘリコプターでは、無人機や自動操縦に対する向き合い方が異なるのだと学びました

一方で、地上部隊でも、ヘリ操縦者ポストが自動化や無人機導入で削減されることに抵抗する勢力がいるんだろうと想像をたくましく致しました

陸上自衛隊では飛行手当をもらっているヘリ操縦者やヘリ搭乗員は、地上勤務の歩兵や砲兵や機甲部隊兵からのやっかみが激しく、日陰者扱いされていると聞いていますが、無人化や自動化促進の話はあるのでしょうか???

様々な無人ヘリ研究開発
「前線海兵隊に無人ヘリで迅速物資補給へ!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-11-13
「映像:MQ-8の着艦試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-25
「超小型無人ヘリが偵察用に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-02-07
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IS指導者殺害に最も貢献したのは特殊作戦犬 [Joint・統合参謀本部]

米軍は名前写真を秘匿意図も大統領が写真公開
ベルギー・マリオン種の犬
同作戦の米軍側で唯一の負傷メンバーも既に回復

Belgian Malinois3.jpg28日付Military.comは、IS指導者のバクダティー容疑者を自爆に追い込んだ作戦に関し、「驚くべき大きな仕事をした」米軍特殊部隊所属の「犬」の写真をトランプ大統領が公開したと伝え、名前は非公表との特殊作戦犬の写真を掲載しています

トランプ大統領がBelgian Malinoisとの種類の犬の写真をツイッターで公開した2時間前には、10月1日に就任したばかりのMilley統合参謀本部議長が、犬の活躍を讃え作戦で唯一負傷した作戦メンバーだと紹介しつつ、一方で犬の名前や写真を公開しないと明言していたところでした。

2011年にビンラディンを殺害した作戦の際も、「Cairo」との名前の特殊作戦犬の大活躍が報じられ、犬が装着していた無線機や暗視カメラ付きの特殊ベストまで大きな話題となりましたが、今回は犬を巡って大統領と米軍の意思不統一が明らかとなった形です

とはいえ、「tremendous duty:驚くべき大きな仕事」を果たし、名誉の負傷(軽症で今は復帰)を負った「メスのBelgian Malinois」は立派なので、ご紹介したいと思います

28日付Military.com記事によれば
Baghdadi trump.jpgメスのBelgian Malinois種で名前非公開の犬が、IS指導者であるバクダティー容疑者をトンネルの奥に追い込み、自爆に追いやった作戦で、夜間における同容疑者の追跡と追い詰めに多大なる貢献をした模様
●トランプ大統領がツイッターで写真を公開した同作戦で唯一負傷したメンバーである犬は、名前は引き続き非公表であるが、既に負傷箇所も回復し、犬のトレーナーと共に任務に復帰している

●大統領は「IS指導者の追跡と殺害に素晴らしい仕事をした犬の写真を公開することにした」とツイートし、犬の写真を配信した
関係者によれば、特殊作戦犬は夜間の2時間に及ぶ作戦の中で、複数のトンネルで構成されたアジトの内部で同容疑者を追跡し、最後には出口のない一つのトンネルに同容疑者を追い込んだ。その後同容疑者は「人間の盾」として共に行動していた3名の子供を巻き添えに、自爆ベストを起爆して死亡した

28日にトランプ大統領が犬の写真を公開するツイートを行う2時間前に、Milley統合参謀本部議長は、軽い負傷を負った犬は既に回復し、引き続き作戦地域にとどまって任務を継続していると語っていた
Cairo.jpg●そして「我々は犬の写真も名前も何も公表しない」「犬に関する情報を秘匿する」と統合参謀本部議長は語っていた

●今回の作戦に使用されたBelgian Malinois種は、2011年の対ビンラディン作戦に使用され、仕掛け爆弾の探知やビンラディンの追跡に貢献した犬(名前Cairo)と同じ血筋である
2011年当時の作戦では、犬は双方向無線などを装備した特殊ジャケットを装着していた
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犬が特殊ジャケットを装着している解説図は、2011年のビンラディン作戦当時に流布していた特殊作戦犬「Cairo」の装備の説明図です

恐らくこのような情報が出回った結果、過激派やテロリストたちが何等かの対策を行った形跡が見られたことから、今回Milley統合参謀本部議長は犬に関して一切の情報提供を行わない方針だったのでしょうが、自らの成果をアピールしたい、話題を提供したいトランプ大統領に「犬の写真公開」で押し切られたのでしょう

子供3名を「人間の盾」として引き連れ、自爆に巻き込んだのが真実だとすれば、やっぱり理解できない人ですねぇ・・・ISの人は・・

ビンラディン襲撃作戦を様々な側面から紹介した当時の記事
「ビンラディン作戦と犬の装備」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2011-05-03

動物と軍事作戦
「イルカで機雷探知」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-08-02
「米露がイルカ兵器対決?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-23

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米空軍が軽攻撃機2機種を試験購入公式発表 [米空軍]

戦闘コマンドと特殊作戦コマンドが1機種づつ
2-3機づつ、2020年初頭には契約完了

light-attack.jpg25日、米空軍が2年以上検討を続けているプロペラ軽攻撃機について飛行デモ試験などを行ってきた4機種から2機種(A-29 Super Tucano とAT-6 Wolverines)を2-3機づつ購入する契約を2020年までには結ぶと発表しました

2018年初に4機の候補機種のデモンストレーション飛行の場を設けたプロペラ機ですが、データリンクを供え、精密誘導兵器を運用し、グラスコックピットで・・・等々のハイテクプロペラ機で、同盟国等のニーズが高い対テロや国境警備用に活躍が期待されています

軽攻撃機の導入検討は、対テロ作戦など対空脅威の厳しくない環境では、F-16やF-35など運用経費がかさみ機体の維持整備が大変な機体より、安価なプロペラ機が向いているのでは・・・との発想から生まれたものですが、アフガン空軍が米空軍の支援を受け運用実績を挙げていることで、関心が急速に高まっているようです

購入後は2機種を別々の所属の異なる2つの部隊に置き、2つの機種に別々の視点から試験や戦術検討や運用検討を行うことで、2機種から1機種を選ぶ方向なのか、2機種とも活用する方針なのか良くわかりませんが、今年3月に空軍参謀総長は「購入機種決定や要求性能決定時期を、2022年から24年ごろに設定」と議会で証言していますので、それくらいの時間感覚で検討が進むのかもしれません

候補となった機体の製造企業は、これまで手弁当で米空軍の要請を受けてデモ試験飛行や情報提供に2年以上応じてきたこともあり、少なくとも選ばれた2企業は「ほっと一段落」し、将来のまとまった機数購入に希望を繋いだようだ・・・と記事は伝えています

25日付Defense-News記事によれば
AT6LGB.jpg●米空軍発表によれば、AT-6 Wolverines契約は年末までに行われ、機体は戦闘コマンドACCの戦術開発部隊があるネバダ州ネリス空軍基地に配備される。そしてAT-6は「軽攻撃機の戦術戦法や運用法開発を行い、併せて輸出可能な相互運用性を改善する戦術ネットワーク検討も行う」とされている。
●一方、アフガン空軍用に既に米空軍と契約企業が訓練を行っているA-29 Super Tucanoは、2020年初までに契約して空軍特殊作戦コマンドSOCに所在するフロリダ州Hurlburt Field空軍基地に配属され、「急増するパートナー国等からの軽攻撃機ニーズ応えるため、教官操縦者養成プログラム開発に使用される」と紹介されている

Goldfein空軍参謀総長は声明の中で、「米空軍の焦点は、同盟国等が直面する過激派対策や国境対処の課題を支援するため、軽攻撃機をどのように活用できるかを検討することにある」、「米議会の許しを得て可能となった、ここ数年の残予算を使用した少数機を使用する試験機会を活用し、パートナー国と協力しながら、購入しやすい価格の小型軽攻撃機の有用性を段階的に確認していきたい」と述べている
Super Tucano.jpg●機体購入予算は、2018年度余剰から70億円、2019年度余剰から110億円、2020年度予算からは40億円程度を拠出したい意向で議会の理解も得られている模様

今年3月に空軍参謀総長が2機種少数購入の方向性を示した際は、議会内部に優柔不断な空軍の姿勢に批判があり、共和党のJerry Moran上院議員は「米空軍は既に300機の軽攻撃機導入の必要性をまとめた報告を作成しており、結論先延ばしは空軍が精神分裂症に陥っている証拠である」と批判している
●これに対し空軍参謀総長は「通常の機種選定や要求性能検討には5-10年が必要であり、判断な種々のデータ収集に必要な期間だ。空軍はまだ2年しか使っていない」と説明していた
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light-attack 2.jpg「情報共有ネットワーク」の構築も重要な役割となっているようでこのあたりの能力や活用法についても注目です

アフガン空軍用に調達して操縦者や整備員教育の実績があるA-29はそのまま要員養成用に使用し、新装備をAT-6で試しつつ、戦法や運用法確立に使用する方向のようですが、AT-6に拡張性があるということなのでしょうか???

最終的に1機種に絞る前に、協力してくれた2企業にそれなりの「分け前」を配分するんでしょうか? 良くわかりませんが・・・

「アフガン軽攻撃機の要員養成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-01

軽攻撃機の関連記事
「軽攻撃機2機種をお試し購入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-16
「米空軍2019年の選択4つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-28
「アフガン軽攻撃機がPGM使用」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-2
「米空軍の軽攻撃機選定は?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-03-1

「軽攻撃機の第一弾確認終了」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-07
「米空軍が300機導入に賛成!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-21
「米空軍が検討を開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-07

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米空軍が72年ぶりの昇任審査制度変更へ [米空軍]

全職域まとめて評価から6つの区分別に評価へ
2020年3月の中佐昇任者選抜から適用へ

promotion.jpg21日付各種軍事メディアは、米空軍が72年ぶりに昇任審査制度を見直し2020年3月の中佐昇任者選抜から、全職域まとめて評価から6つの区分別に評価する方式に変更すると報じました

72年ぶりということは、1947年に米空軍が創設されて以来初めての大きな改革ということですが、これまでパイロット、サイバー、情報、広報、調達など様々な職域の士官をまとめて比較して昇任者を選抜していたものを、6つのカテゴリーに分け、各カテゴリーごとに選抜する方式に変更するとのことです

各カテゴリーへの昇任者数の割り振りをどうするのか、差をつけるのか、各カテゴリーごとの昇任者選抜における評価要素がどの様に異なるのか、などは現時点で明らかにされていませんし、変更の背景についても担当高官から細部は語られていませんが、徐々に漏れ聞こえてくるのでしょう・・・

promotion 3.jpg米空軍司令部の人事管理部長が「100%確実なのは、新たな方式が100%完璧な方法とは言い切れないことだ」と述べ、新方式導入後も各種の意見やフィードバックを参考に見直しを進めていくことを明らかにしており、一つの挑戦と言えるでしょう・・

兵器システムの複雑化、任務の複雑化細分化に伴い、米軍兵士の一体感を維持するのが難しい環境になりつつある中、カテゴリーごとの昇任評価の扱いを巡って、様々な噂が乱れ飛び、職域間の対立や気持ちの乖離を生みそうな改革ですが「お手並み拝見」とまいりましょう

21日付米空軍協会web記事によれば

評価単位となる6つのカテゴリー()内は職域番号AFSC
●Air operations and special warfare:
all conventional (11X) and remotely piloted aircraft pilots (18X), along with combat systems (12X), air battle manager (13B), special tactics (13C), combat rescue (13D), and tactical air control party (13L) officers
●Nuclear and missile operations:
nuclear and missile operations (13N) officers

●Space:
Space operations (13S) and astronaut (13A) officers
●Information warfare:
cyber operations (17X), intelligence (14N), operations research analyst (61A), weather (15W), special investigations (71S), information operations (14F), and public affairs (35X) officers

●Combat support:
airfield operations (13M), aircraft maintenance (21A), munitions and missile maintenance (21M), logistics readiness (21R), security forces (31P), civil engineering (32E), force support (38F), contracting (64P), and financial management (65X)
●Force modernization:
chemists (61C), physicist/nuclear engineers (61D), developmental engineers (62E), and acquisition management (63A) officers 

新たな評価方式に関する関係高官の説明
Kelly4.jpg●このような細分化したグループでの評価は、これまで医者など医療関係者、法務関係者、十軍牧師などでそれぞれ行われていたが、これを一般士官にも適用したもの
●新たな方式は今年5月に概案がまとめられ、概案を各部隊に提示して意見を求めるとともに、米空軍司令部の Brian Kelly人事管理部長が米国内外の14か所を訪問して様々な意見を聴取した

●Kelly中将は現場訪問で得た意見について、様々な観点からの意見があり、それぞれに重要なポイントを突いてはいたが、一つの側面しか見ていないものや逆の立場からの意見が同レベル存在するなどの状況であったと振り返り、結果として5月にまとめた案を変更していないと説明した
●一つ付け加えた施策として、昇任審査会での議論の参考や準拠となる、高く評価すべき教育・訓練・経験などをまとめた「Career Field Briefs」なるガイドブックのようなものを、1今年2月か来年1月に発行することにした、と同中将は述べた

●また空軍省の人事制度担当次官補代理のManasco氏とKelly中将は、今回の制度改正の背景として、リーダーシップ能力を求めるにしても、操縦者や戦闘管理担当士官に求めるものや経歴の中で養われるのは、兵たんや施設担当士官が身につけるものとは必然的に異なり、同じ土俵で評価するのは難しいからだと説明した
promotion 2.jpg●そしてその職域にあった独自のスキルを身につける事を評価し、より似通ったカテゴリーのグループ内で比較評価することで、各カテゴリーに求められる士官が育っていくとの考え方に基づくものだと両高官は説明した

●更に選考プロセスの透明化を図るため、空軍長官名で毎年発行する「Memorandum of Instruction:評価選考の指針」を作製し、職域に拘わらず各階級に求める、能力や性格などについて明らかにするとも同中将は説明した
●もちろん、例えば広報担当士官(public affairs)と、サイバーや情報担当士官を同グループで評価することが最適化であるとは言えないが、従来の全員を横並びに評価する方式よりは改善されると両高官は説明した
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まだまだ表面的な説明で、評価される側、昇任時期を迎える士官たちの立場からすると、「?」が3つ4つ頭に浮かぶ内容ですが、部隊の士気に大いに影響する変化ですのでとりあえずご紹介しました

promotion 4.jpg同じ調達担当士官でも、また同じ整備担当士官でも、戦闘機部隊所属とミサイル部隊所属を同列に評価可能なのか、「air battle manager」と「Space operations」は違うカテゴリーなのか・・・などなど、いくらでも突っ込みどころがあり、評価される方は議論百出なのでしょうが・・・・

直接的な背景には、例えば民間企業との奪い合いになるサイバー専門家を高い処遇で採用確保するためにこの方式を考えたのであれば、同じカテゴリーの気象や特別捜査官などは昇任率が極めて困難になるような気がしますが・・・

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国防次官がミサイル2000発と空母1隻の有効性比較 [米国防省高官]

考えれば考えるほど西太平洋では中国優位
ただ国防次官が問題提起で議論活発化か?

Griffin4.jpg14日付Defense-Newsは、9月にMichael Griffin研究開発担当国防次官が講演で、「中国指導者にとって、米空母1隻と通常ミサイル2000発は、どちらが脅威だろうか?」と聴衆に問いかけて空母の脆弱性問題を提起したことを紹介し、古くて新しい議論を様々な角度から取り上げています

同次官が空母1隻と同価格だと表現した「通常ミサイル2000発」が超超音速兵器(hypersonic missiles)を指すのかは不明ですが、記事ではそのようにも取れる表現が見られます

記事では空母の中国の精密誘導兵器に対する脆弱性は否定できないが、中国本土を攻撃する「通常ミサイル2000発」が核保有国中国との紛争のエスカレーションを望まない米国にとって有効なオプションなのかと言う疑問や、紛争を局地的レベルで押さえるために多様な能力を持つ空母が必要との議論が紹介され、また「通常ミサイル2000発」を有効に活用するは目標を把握し続けるセンサー等のキルチェーンも合わせて不可欠だとの意見が紹介されています

X-51A2.jpg単純な比較は難しいとの空母擁護派の匂いがする記事全体の雰囲気になっており、記事は最後に、中国の狙いは地域限定であり、中国が台湾から日本や西太平洋への影響力確保を「ミサイル重視」で達成するという戦略には意味があるが、米国は高価な航空優勢やISRや電子戦に投資しして足場を固め、必要な戦力をまず西太平洋に送り込み、そこから活動する必要があると、米中の立ち位置の根本的な相違に言及して考えるべきだとの意見を紹介しています

中国は最近、「超超音速ミサイルでの中国本土攻撃はエスカレーションを招く」と明言して米側をけん制しており、また中国本土に対する米ミサイルの攻撃オプションを、中国側は可能性が低く、あったとしてもたいしたことは無いと見なしている可能性も高く、「通常ミサイル2000発」の効果にも疑問の声があるようです

14日付Defense-News記事によれば
Griffin2.jpgGriffin研究開発担当国防次官が9月にDefense-News主催のイベントで講演し、「仮定の問題を皆で考えましょう。中国の指導者なら以下のどちらをより脅威と考えますか。米空母1隻と同コストの中国を射程内に納める通常ミサイル2000発。これは我々が自身に問うべき質問である」と語り、聴衆に空母の脆弱性について問いかけた
●米海軍の空母に対して疑問を投げかけたこの質問は、米海軍等にとって看過することが出来ない発言だが、同時に中国本土を攻撃するという甚大な結果を生じうるハイリスクのオプションと言う点で多くの専門家が安易に受け入れられない設定である

●Griffin次官は、米空母は中国やロシアにとって重い戦力であり、仮にこの戦力が有効性を失い、我が空母を支援できなくなったら受け入れがたい損失となると述べ、更に「我々の敵は空母の重要性を良く理解し、対処策の研究開発に取り組んできている。中国は数千の数千キロ射程がある精密誘導兵器を保有しており、この現実を見つめて、将来の取り組みを考える必要がある」と語った。
Ford-Class-Carrier.jpg●この次官の発言に対し、空母の脆弱性はあるが、中国が米国の通常兵器ミサイルを脅威と感じるかは疑問だと考えている専門家もいる。また中国が超超音速兵器での中国本土の攻撃は、エスカレーションのレベルを上げるものだとの認識を明確にしていることも、ミサイルによる中国本土攻撃のオプションの微妙さを示している

●CSBAのクラーク氏は、「イランや北朝鮮ならミサイルでの本土攻撃もあるかも知れないが、核保有国中国に対してエスカレーションを招く本土ミサイル攻撃があるのか? また中国に米国がエスカレーション覚悟で米艦艇への攻撃の反撃として中国本土攻撃があると認識させることが可能なのか疑問だ」、「ミサイル2000発も抑止力としての価値は低いのではないか」と見ている
●またクラーク氏は、「超超音速兵器はオプションとして保有したいが、その効果は小さい。その兵器を保有したとしても、多数を保有できないことから効果は限定的だ」、「中国は言うだろう。中国は大きいし、防御システムで吸収も出来るだろうから、効果は限定的だと」と述べている

●ブルッキングスのMichael O’Hanlon氏は、同次官の考え方は紛争がハイエンドレベルになってしまった後には当てはまるが、我々はまずハイエンド紛争になる事を防ぎ、小規模紛争で終結させることを考えるべきだと述べ、全面紛争状態のみを考えるべきではないと語った

ford-class-cvn-78.jpg●CSISのKarako氏は、装備品に偏りがちな議論に警鐘を鳴らし、「ハワイから大量のミサイルを発射するというが、中国の目標は移動するかもしれないし、目標情報システムも整備してキルチェーンを確立する必要もある」と述べ、単純な2者択一議論に釘を刺した
●また同氏は「中国の狙いは地域限定であり、中国が台湾から日本や西太平洋への影響力確保を「ミサイル重視」で達成するという戦略には意味があるが、米国は高価な航空優勢やISRや電子戦に投資しして足場を固め、必要な戦力をまず西太平洋に送り込み、そこから活動する必要があり、米中の立ち位置の根本的な相違を踏まえて考えるべきだ」とも述べた
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「ミサイルが完全じゃないから空母が必要」との議論では脆弱で高価な空母への投資を議論するには不十分だと思いますが、一つの視点としてご紹介しました。

まぁ・・・米国も「無い袖は振れない」ので、限られた予算の配分議論になった時、米国の国益や利害をまず優先するとなれば、空母でなく「通常ミサイル2000発」で抑止力少しアップを狙うのかもしれません。この場合、日本など極東の同盟国にはつらい話になりますが・・・

米空母が中国のミサイル1発で活動停止に追い込まれたら、この議論は一般民衆を巻き込んでその時点で完結するような気もします

レモンサワーでぼんやりした頭にはこれ以上の考察は難しいのですが、日本は日本で、戦闘機への投資も含め、よぉーーーーく考える必要がありましょう。

空母の脆弱性問題
「米海軍トップに議会が詰問」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-07

米空母の話題
「空母1隻削減案に揺れる」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-29
「スミソニアン空母映像4つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-20
「空母群が温故知新訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-25
「空母艦載給油機のRFP発出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-13

「映像で学ぶ:米海軍空母」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-25
「艦載機燃料タンクの振動問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-29
「空母フォード:3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「解説:電磁カタパルトEMALS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

超超音速兵器関連の記事
「米空軍も取り組み本格化」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-16
「ミサイル防衛見直し発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-19
「ロシアが超超音速兵器試験に成功」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-27
「日本に探知追尾レーダー配備?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-24
「LRDRレーダー開発が順調」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-10
「グリフィン局長の発言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-1
「米ミサイル防衛の目指すべき道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「BMDRはMDRに変更し春発表予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24-1
「米空軍が1千億円で」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-1
「同兵器は防御不可能」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-21-1
「ロシアが新型核兵器続々開発と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-1
「中国が超超音速兵器で優位」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-27-1

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F-35の能力確認試験は更に13ヶ月以上延長へ [亡国のF-35]

本格フル生産も更に延期へ
この状態にもロッキードは能天気なコメント

lord.jpg18日、Ellen Lord米国防省調達兵站担当次官が記者会見を行い、2019年末までに終了する計画だったF-35の初度運用評価試験IOT&E(initial operational test and evaluation)が、最大能力を評価するシュミレーションの準備が遅れていることから終わりが見えず、同試験の結果を見て判断されるフル生産体制への移行決断時期が、13ヶ月延期されて2021年1月まで遅れると認めました

この初期運用評価試験IOT&Eは、当該装備開発の成熟度を国防省として最終的に判断し、量産を許可するかを判断するものですが、準備が遅れているJSE(Joint Simulation Environment)は、F-35の能力を最大限に発揮させるための脅威環境を実環境では再現しにくいことから準備される模擬環境で、F-35を1機「FIAB(F-35 In-A-Box)」という専用の環境におく準備を言うようですが、この体制が整わないようです

もともと初期運用評価試験IOT&Eの開始時期自体が2018年9月から同年12月まで遅れた時点で、2019年夏までに試験を終了するのは困難だろうと多くの専門家が予想していましたが、2020年度予算に間に合うようにしたいとの政策的配慮から、国防省F-35計画室がいつものように強がりを言い続けて今日に至っていたわけです

F-35hardpoints.jpg今年度も既に1年間で130機を製造するペースで、量産ペースとなる1年160機に十分近づいており、要求性能が確認できないまま見切り発車で機体をバコバコ作ることがなし崩し的に行われており、量産判断にどんな意味があるのか「?」な無気力感が漂う今日この頃ですが、後に発生する改修費用を無視するような狂気の沙汰が続いている状況です

また量産許可が下りても、維持経費も含めたF-35経費が高止まりしていることから米空軍もF-35調達ペースを安易に上げられないジレンマに苦しんでおり、戦闘機数を維持するためF-15最新型を今更調達する苦悩の決断をした次第です

18日付Defense-News記事によれば
Ellen Lord次官は記者会見で、初期運用評価試験IOT&E結果を踏まえて行う量産判断(Milestone C)は予定の2019年末には出来ず、13ヶ月ほど延期せざるを得ないと認めた
●F-35は、JSE(Joint Simulation Environment)環境下で高い脅威環境での能力評価を行う必要があるが、JSEの準備が遅れているのが延期理由だと同次官は説明した

F-35-lineUp.jpg●そして同次官は、国防省F-35計画室に対し、遅れを踏まえた量産判断までの修正計画をまとめるよう今週初めに指示したと語った。この延期が新たなコスト上昇を招くのかは明らかにされていない
●同次官は現状について、「JSE準備は順調ではないがIOT&Eの極めて重要な部分であり、国防省IOT&E室長のBehler博士と緊密に協議している。関係者は良い仕事をしているがJSEは欠くことが出来ない」と語った

●9月に軍事メディアが、JSEにF-35とそのセンサーや兵器群を組み込む「FIAB:F-35 In-A-Box」開発にロッキード社が遅れていると報じ、噂されていた試験の遅れが具体的に明らかになった
ロッキード社は今後の生産増への対処能力に自信を示した声明を発表し、「Lord次官が明らかにしたように、F-35は素晴らしい成果を顧客に提供しており、わが社は引き続き生産をアップし、機体の向上に努め、維持体制を改良していく」、「今年の生産目標は131機で順調に進んでおり、来年の140機生産に向けても順調である。我々はF-35計画に関連する全ての関係者がフル生産体制の準備が整い、顧客のニーズに応える準備が出来ていると自信を持っている」と述べた
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F-35 clear2.jpg試験の遅れのことなど、まるで気にしていないようなロッキードの声明に腹が立ちますし、これら全ての遅れは見え見栄なのに、最後まで遅れを認めない国防省側にも不誠実さを感じます。
国防省や米空軍は、このような大きなプロジェクトを1社に独占させてしまったことが間違いだったと「あきらめている」様にも見えます。

それでもこの反省を踏まえ、米空軍は次期制空機に関し、機種選定による1機種大量生産ではなく、複数企業が独自機体を長期契約更新しつつ保持、5年毎に最適なものに乗り換えなどの新たな構想を打ち出し、計画検討室長に45歳の調達幹部を指名したところです。

F-35の調達計画を、米空軍や米軍はどこまで守り続けられるのでしょうか? 
国防省高官が、空母1隻の予算で中国を攻撃可能な長射程ミサイルを2000発購入可能だと発言し、現在の脅威環境での空母の重要性に疑問を呈したようですが、戦闘機の位置づけに議論が及ぶのも時間の問題だと思います

F-35の能力評価試験関連
「F-35の量産判断試験IOT&Eは大丈夫?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-10-21
「F-35最終試験は1年遅れでも計画通りは不可能」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-02-17

米空軍は次期制空機調達に新構想
「米空軍が次期戦闘機検討でギャンブル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05

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ロシアTU-160爆撃機が南アフリカ展開へ [安全保障全般]

アフリカ大陸への関与拡大の一環として
ソチでの初のRussia-Africaサミット開催に合わせるように

Tu-160 2.jpg21日、南アフリカ国防省がロシア軍戦略長距離爆撃機や大型輸送機を同国に招待したと発表し22日にもTu-160 Blackjack戦略爆撃機2機がヨハネスブルグ北約60kmの「Waterkloof」空軍基地に到着するようです

アフリカ大陸を「最後のフロンティア」と見なす各国の覇権争いが激しさを増す中、ロシアも「中国に見習って」アフリカへの影響力強化の一環として軍事協力強化を図っていると軍事メディアは紹介していますが、2016年に一度計画されながらシリアでの軍事作戦が忙しくて仕切りなおしになっていた爆撃機派遣だそうです

Russia-Africa.jpg冒頭でご紹介したように時を同じくしてロシアは23-24日に初の「Russia-Africa Summit」をソチで開催(エジプト大統領と共催)してアフリカ諸国の取り込みに懸命で、その結果か過去10年間でアフリカ諸国とロシアとの貿易額が4倍に拡大し、軍事面でもロシアは2015年以降にアフリカ諸国と20以上の軍事協定に合意しているようです

表面上確認できるものだけでなく、ウクライナでロシアが用いた不正規戦闘員や「little green men」や「民間軍事会社」のアフリカ大陸での活動活発化も米国の懸念となっており、大陸全体の経済成長に合わせるように、情勢は厳しさを増しているようです

21日付Military.com記事によれば
Tu-160 3.jpg●南アフリカ国防省はTU-160のほかに、Il-62旅客機(兵員輸送機)やAn-124大型輸送機も招待したと21日明らかにし、22日までに同国に展開すると発表した
ロシアは同じタイミングの10月23から24日間に、初の「Russia-Africa Summit」をソチでエジプトと共催する形で実施し、47名のアフリカ諸国元首や高官の参加を得てロシアとの2国間関係を強化することになっている

●21日、プーチン大統領は本サミットやアフリカとの関係強化の背景について、「米国など西側諸国は、アフリカ大陸の資源に対し、正当な対価や補償なしに優位な立場を得ている」と厳しく非難し、「西側諸国が圧力や恫喝や恐喝でアフリカ諸国を利用している」と西側諸国の不当性を訴えた
●そしてプーチンは、「今こそロシアが、アフリカの虐げられた諸国に対し、前提条件のない経済的解決策を提供する時である」と国営メディアを通じて訴えた

Russia-Africa 2.jpg●このようなロシアの動きに米国は懸念を強めており、Stephen Townsend米アフリカコマンド司令官は4月に上院軍事委員会で、特にロシアの傭兵のような「不正規兵」「民間軍事会社」の動きに警戒感を示していた
●同司令官は「ウクライナでも活動したロシアの民間軍事会社Wagner Groupのような傭兵が、正規軍が従うルールを省みない行動をとることを心配している」と述べ、ハイブリッド戦がアフリカ大陸で展開されることへの懸念を示した
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中国を見習って・・・と紹介される辺りが国として右肩下がりのロシアの悲しさですが、西側への嫌がらせへの情熱だけは失っていないようなので注意が必要です

日本でラグビーW杯を盛り上げてくれている南アですが、同大会や台風や即位の礼で日本のメディアが埋め尽くされている間にも、ロシアや中国の浸潤が粛々と進んでいるようです。

秋のこの季節は祝日や祭日が多く、ぼんやり気味の頭はトランプ大統領がらみのニュースだけでいっぱいにもなりますが、チマチマとその他のニュースも拾って行きたいと思います

対露の各種動き
「対露の大規模機動展開演習を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08-1
「オープンスカイズ条約から離脱か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-10
「ハイブリッド情報戦に備え」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-05

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米空軍によるアフガン軍操縦者養成は順調 [米空軍]

今日はおめでたい日ですので、数少ない良いニュースを
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A-29軽攻撃機操縦者30名と整備員90名要請済
大統領任命の監査組織SIGARが米空軍の教育を高評価

A-29 USAF.jpg7月29日、アフガニスタン復興支援の監査を担当するSIGAR(Special Inspector General for Afghanistan Reconstruction:トップは大統領が指名)が監査報告書を発表し米空軍によるアフガン空軍A-29部隊の育成が順調で、アフガン国防力強化に貢献していると高く評価した模様です

米軍が関与する外国軍育成は概して成果が良くなく、イラク陸軍の例だと、数百人養成して10人程度しか残らなかったとか、与えた武器が横流しされたとか・・・散々な結果しか残っていませが、アフガン空軍の場合は順調なようです

記憶が明確ではありませんが、養成した操縦者が民間航空会社に流れて問題化・・・といった記事を読んだような気がしましたが、他の国だったでしょうか??? ここはSIGARの報告書ですので信じておきましょう

アフガン空軍のこれまで
A-29 la.jpg●2001年には存在していなかったアフガン空軍を、多くの労力と資金を投入して育成し、2013年7月に女性操縦者養成、2015年8月に攻撃ヘリMD-530で初の航空攻撃、2016年4月にはプロペラ軽攻撃機A-29でも初攻撃を記録するなどニュースを提供してきた

●また2018年3月には、A-29軽攻撃機で初のレーザー誘導爆弾攻撃を成功させ、当時で既に毎日100ソーティー程度の飛行を実現し、多国籍軍の空爆の10%を担っている
2018年春時点でアフガン国内に12機のA-29 を保有し、米国内に訓練用で9機を保有。追加は発注機体も含め、26機体制を整備中

30日付米空軍協会web記事によれば
SIGARの報告書は、「米国内で行われている操縦者と整備員養成教育は、アフガン空軍の質的能力向上につながり、アフガン要員のプロ意識の改善にも貢献している」と評価を記述し、具体的にこれまでA-29軽攻撃機操縦者30名と整備員90名を養成したと記している
A-29 af.jpg米国内での要員養成はジョージア州のMoody空軍基地で行われているが、米国内教育訓練が終了してアフガンに帰国後も、米国人アドバイザーが現地状況に応じた指導や具体的な作戦行動に関して指導を行っている

●また同報告書は、訓練の質自体も向上しており、帰国後の訓練も経て、88%のレーザー誘導兵器を半径1m以内に着弾させるまでに至っていると記載している
●そして報告書は「米空軍による米国内でのアフガン空軍A-29操縦者養成は、アフガン帰国後のフォローアップ訓練との連携性も含め、最高のレベルにあることを証明している」とまで表現している

●2018年12月に国防省監察官が公表したレポートでも、米国や他の西側諸国内で訓練を受けた飛行要員は、そうでない要員に比し、操縦技量の向上や組織内での昇任速度がより速いと評価されている
●SIGAR報告書も、アフガン空軍が今後も任務遂行能力を高めて維持するには、アフガン駐在の操縦及び整備アドバイザーを含めた体制を今後も継続することが重要だ、と記している

A-29 Afghan.jpgしかし、米国は米国内でのアフガン要員訓練を縮小する方向で、2021年には米国内での訓練を止め、アフガン国内での訓練に移行する計画である。一方で、A-29を製造するSierra Nevada社は、今年4月に2024年までの操縦教育契約を45億円で受注している
●ジョージア州Moody基地でのアフガン要員養成は2015年に始まり、当初は2017年に終了する計画だったが、アフガン空軍に追加で6機を供給することとなり、追加で要員養成を行っているところである
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いくら公的機関による監査とはいえ、ここまで高い評価をすることは珍しいと思いますので、アフガン空軍の皆さんの士気が高いのでしょう

プロペラハイテク攻撃機A-29の使い勝手も良く、成果が目に見えて、部隊が好循環で回っているのかもしれません。いやそれよりも、アフガンの人々の本来持っている資質が高いのかもしれません

Dunford55.jpg2016年にダンフォード統合参謀本部議長から、「米空軍は地元軍育成に本気で取り組んでいるのか? やる気はあるのか? 空軍に入っている私の甥に聞いたが、優秀な人材は支援担当部隊には配属されず、選ばれた者の士気が低いらしいじゃないか? やる気あるのか?」と、ボロクソに注意された前科のある米空軍です。巻き返したのかもしれませんし、外注に金をかけたのかもしれません

ご参考の記事
「アフガン空軍機がレーザー誘導爆弾初使用」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-2
「米空軍は外国軍教育を重視せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-29
「アフガン空軍に女性操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-31-2
「朝鮮半島の戦いは汚い戦いに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-10
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新設第16空軍の重要任務は2020年大統領選挙対策 [米空軍]

米空軍のサイバーとISR部隊が合併
電子戦部隊も気象部隊も
情報融合で敵情を把握し迅速に対応へ

16th Air Force.jpg11日、米空軍が2年前から準備を進めてきた第24空軍(サイバー担当部隊)と第25空軍(ISR+EW電子戦担当部隊)の合併改編式典が行われ新たに第16空軍が「情報制圧組織:“information dominance” organization」として編成されました

サイバー空間での情報と、写真・映像・電磁スペクトラムからの情報を総合的に組み合わせて新たなインテリジェンスを生み出し、敵情を迅速に把握して地域コマンドや機能コマンドに提供し、併せて攻撃的な作戦もサイバー空間や電磁スペクトラム領域で行う任務を担うことが期待されています。最後になって世界的なセンサー網を保有する気象部隊も配下に入れる決断もあり、意気込みが伺えます

Haugh.jpg第16空軍の指揮官Timothy Haugh中将も異例の出世で、今年3月末までは准将だったのが、4月に少将に昇任し、更に9月26日には第16空軍司令官になるため議会の承認を得て中将にまで昇任して11日の新編式を迎えた人物です

ご経歴からは、ISRとサイバー両分野で多様なポストを経験した「他に得がたい人材」であることが伺えますが、表現は悪いですがいわゆる「おたく揃い」のサイバーとISR部隊をまとめて機能させるには、実務や組織を知る指揮官の強力なリーダーシップが欠かせないとの判断でしょう

そんな第16空軍ですが、新編指揮に参列した統合の米サイバーコマンド副司令官が「2020年大統領選挙対策が重要な任務になる」とその働きに期待する祝辞を述べており、大きな注目を集めています。

14日付米空軍協会web記事によれば
16th Air Force2.jpg第24空軍(サイバー担当部隊)と第25空軍(ISR+EW電子戦担当部隊)の融合により、米国防省全体がデータ及びデジタル指向認知に向かう中、米空軍はデジタル世界で何が起こっているのかをより明確に把握し、より容易に悪者から我を守って攻撃できることを目指し、バラバラだったRQ-4からRC-135までの多様なアセットと情報処理分配システムの「コラボ」の道を切り開く

●Goldfein空軍参謀総長は「今日から第16空軍は情報ドメインにおける思考のリーダーだ。統合部隊指揮官と米空軍部隊にかつてないレベルの能力を提供してくれる」、「敵が我々の部隊身辺の動きと活動を見て正しく評価したならば、軍事力による国家目的達成を考え直すだろう」と語った
●また参謀総長は米海軍も同様の動きをしていることを意識しつつ、国防省全体で情報融合を進める方向にあると語った

Haugh新第16空軍司令官は、わが部隊はサイバーや電子スペクトラム空間で誰が悪さを働いているのかを迅速に突き止め公にすることで紛争抑止に貢献すると述べ、陸海空ドメインに比して匿名性が高いドメインでの抱負を語り、「他の統合部隊とも協力し、敵の悪事を暴く力で敵の行動を明らかにする機会を拡大し、敵の能力を拒否して行きたい」と語った
16th Air Force3.jpg●第16空軍の隷下に入る各部隊の指揮官も記者団に対し抱負を語り、例えば「敵の統合防空システムIADSについて、味方に迅速により正確な情報を提供して作戦の道を切り開きたい」、「ISRとの連携強化でサイバーの弾薬を活用する」、「開発中の電子戦ツールで、友軍を敵目標により近づけることが可能になる」、「ISRやサーバー(SNS含む)を活用して、敵エリアの気象状況把握能力を向上する」などと語った

●テキサス州ラックランド空軍基地での新編指揮に参列した統合の米サイバーコマンド副司令官Ross Myers海軍中将は祝辞で、2018年の米中間選挙で米空軍サイバー部隊が米欧州コマンドのサイバー戦対処を大いに助けてくれた事を讃えた後、「2020年大統領選挙対策が重要な任務になる」と述べ、米サイバーコマンドが第16空軍と共に来年の大統領選挙を大きな任務として捉えていることを示唆した。
●そしてMyers海軍中将は、「選挙におけるサイバーセキュリティー任務は2020年大統領選挙が終わりではなく、今後我々にとって永遠の任務となるだろう」と表現した
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CyberPolicy2.jpg2020年の大統領選挙に対する外国勢力の「情報操作」や「誘導工作」に対処することに、米サイバーコマンド幹部が明確にコミットすると明らかにしました

かつてオリンピックは「アマチュアの祭典」と呼ばれ、各競技でプロとアマチュアの選別が厳格でしたが、今やそんな話が嘘のようにプロ参加が当たり前となっていますが、かつて軍事組織が国政に絡むことを避けてきたのが嘘のように、大統領選挙の防御を米軍が担う次代になりました

五輪の世界でもそうですが、アマチュアだけでは、または米軍以外では、まともなレベルの競技や選挙防衛が出来ない時代になったと言うことでしょう。

それにしても、Haugh新第16空軍司令官は推定51歳の中将です。活躍をご祈念申し上げます

第16空軍の指揮官Timothy Haugh中将の経歴
https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/1286007/major-general-timothy-d-haugh/

第16空軍の関連記事
「遅延中、ISRとサイバー部隊の合併」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-24
「米空軍がサイバー軍とISR軍統合へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3

米大統領選挙や英国のEU離脱国民投票を始め、多様な事例や各国の取り組みを紹介する良書
「ドキュメント誘導工作を読む」
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1

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独トーネード後継に核任務絡みでFA-18優位!? [安全保障全般]

FA-18とタイフーンが戦う中で
米国がタイフーンの核任務承認に時間必要と
NATO規定の核兵器運搬任務を担う必要性に縛られ

Tornado2.jpgあくまでもドイツ紙「Süddeutsche Zeitung」の報道ですが、約80機のドイツ空軍トーネード戦闘機の後継争いで競い合うユーロファイターとFA-18に関し、米国から核爆弾搭載能力承認に必要な時間について、ユーロファイターにはFA-18よりはるかに長い3-5年が必要との回答があり、FA-18が後継選定レースで優位になったようです

ドイツのトーネードが担っている米国戦術核兵器の搭載任務は、NATO作戦における象徴的な任務分担ですが、核戦争に巻き込まれる等の懸念からドイツの前政権は極力触れないよう画策し、トーネードの延命とFA-18又はユーロファイターとの共存を検討してきたようですが、老朽化が進み部品確保が困難なトーネード維持は現場に大きな負担となることから難しい選択の様です

今年年初までは、F-35も後継候補に含まれていたようですが、仏独宇スペインで2040年を目指し第6世代機開発( Future Combat Air Systems)を開始したこともあり、それへの影響を避けるため、「つなぎ機種」として第4世代機に後継対象を絞ったと言われています

4日付Defense-News記事によれば
FA-18 2.jpgFA-18とタイフーンに絞られた機種選定の結果は2020年初めに出ると予期されているが、ドイツ紙はドイツ国防省が米国防省から、タイフーン戦闘機が核兵器搭載承認を受けるのに必要な期間が3-5年で、米軍内では既に核兵器搭載承認を得ているFA-18よりはるかに長いとの情報を得たと報じ
●この報道に対し、独国防省報道官は直接のコメントを避け、米国とドイツ国防省関係者間で継続して本件を協議していると述べるに留まった

ドイツ国防相Annegret Kramp-Karrenbauer女史は9月に米国を訪問し、「我々は本件の扱いについて、協力して取り組む」と述べ、トーネードの担ってきた役割の中断が最小限になるように望むとも表現しつつ、トーネード後継スケジュールには時間的余裕が無いとも語った
タイフーン側関係者は仏独スペイン共同開発の第6世代機(Future Combat Air Systems)に円滑に移行するには、ドイツはユーロファイターを選択すべきだし、欧州全体の経済にも大きく貢献できると述べた

Eurofighter2.jpgまた「後継選定に時間的余裕が無い」と発言したドイツ国防相に対し、トーネードの退役には10年程度の時間がまだあり、機種選定を急ぐ必要性はどこにもないと述べ、ドイツ紙報道の核兵器任務に必要な認証手続きの時間は十分にあると主張している
●タイフーン製造のエアバス社報道官はDefense-Newsに対し、トランプ政権が「米国ファースト」の強硬な姿勢で米国製を売り込んでくることは予期しているが、「我々にとっては、状況に変化はない」と述べた
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新しく就任したばかりのドイツ国防相が、なぜ「後継選定はtight scheduleだ」と述べたのか不明ですが、米国から急がされているのかもしれません

F-18-2.jpg一方のユーロファイター側は、トランプさえいなくなれば、欧州側のもの・・・と考えているのでしょう・・・


欧州経済も正念場でしょうから、簡単には戦闘機を譲れないのでしょう

ドイツと戦闘機関連記事
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2

戦術核兵器とF-35等
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06
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米陸軍射程1000nmの砲開発の第一関門間近 [Joint・統合参謀本部]

砲弾1発が5000万円程度以下ならOK
2023年にプロトタイプ完成目指して

strategic canon.jpg16日付Defense-Newsが、中国等のA2AD網突破を企図した米陸軍の「射程1000nmの戦略cannon」開発について米陸軍の担当幹部や米陸軍参謀総長の発言を取り上げ、2023年にプロトタイプによるデモで装備化を最終判断するという計画の一環として、近々第一関門の試験を行うと紹介しています

担当の米陸軍幹部によれば、日進月歩で進化して脅威が大きくなる中国などのA2AD能力を突破する能力として、米陸軍は「超超音速兵器:Hypersonic Weapon」と「射程1000nmの戦略cannon」の研究開発に取り組んでいるが、「超超音速兵器」は成功しても高価になることが予想され、一発の価格がそれほどでもない「戦略cannon」に期待することろ大ということらしいです

近々試験を実施する第一関門(first gate)の試験(early ballistic tests)の他にも、いくつも関門があり、米陸軍が破産しない程度のコストに収まり、かつ期待する効果が得られるかは現時点で見えないようですが、対中国やロシアにおける米陸軍の存在を示す意味でも、マルチドメイン作戦での米陸軍の地位を確保するためにも、極めて重要な位置づけを担う米陸軍の「top priority」事業となっているようです

今年1月にご紹介した本件の記事第一弾に続く続報です
「射程1000nmの砲開発」https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1

16日付Defense-News記事によれば
strategic canon2.jpg●米陸軍の長射程精密攻撃近代化の責任者John Rafferty大佐は、中国やロシアが防御技術に多くの投資を行い、長射程防空システムや沿岸防御システムなど多重多層な防御兵器と、隙間の無い見通し線外を含む遠方監視レーダーシステムを整備する中、その対処はますます困難になりつつあると現状認識を述べ、
「米軍の最も高性能の航空機や艦艇でさえも、アクセスの困難に直面しつつある」、「このような多層な敵の長射程防御能力は根本的な問題を突き付けているが、対処法の一つに、敵のA2AD網を突破して敵のネットワークを破砕し、我が統合戦力に対処の機会を提供するする地対地火力が考えられる」、「射程距離が最も重要になる」と説明した

●そして同大佐は、米陸軍が最優先事業の一つとして取り組む射程1000nmの「戦略的長射程Cannon」の第一関門の試験である「early ballistic tests」を、間もなくバージニア州にある米海軍Dahlgren試験場で行うと語った
●また、「戦略的長射程Cannon」は2023年にプロトタイプによるデモンストレーションを予定し、その結果をもって正式な事業化を決定する計画だと同大佐は説明した

米陸軍は長射程能力獲得のため、「超超音速兵器:Hypersonic Weapon」にも取り組んでいるが、極めて高い技術を要することから、恐らく十分な数量を確保できないと考えられており、そこで短納期でも20発調達可能であろう「戦略的長射程Cannon」が重要になるとも同大佐は述べ、
●更に米陸軍にとっては、今後の開発の幾つかの関門において、その破壊力とコスト面において目標を達成出来るかを吟味することになるとし、「量と価格と破壊力が最も重要な評価側面となる」とコメントしている

McConville.jpg●10月1日に就任したばかりのJames McConville米陸軍参謀総長は就任後のインタビューで、「戦略的長射程Cannonが開発できれば、1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイントで、そこが気になっている。性能とトレードオフの関係にあるコストが課題だ」、「米陸軍は革新に挑むが、段階ごとに成果を確認し、目標が達成できなければ進めない」と語っている
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ちなみに射程1000nm(1852㎞)と言うと、おおよそ東京から上海までの距離になります。
第一列島戦から中国大陸が約900㎞の500nmですから、第一列島戦の倍の距離、南シナ海でいうと・・・フィリピンのマニラとベトナムの最短距離が1200㎞、バンコクからシンガポールが1500㎞くらいの感覚です

strategic canon3.jpg何段階も関門があるようですが、技術的にどの様な物かよくわかっていないので、これ以上のコメントはできません。悪しからず
統合参謀本部での期待がどの程度なのか聞きたいところです

1発の価格に関して陸軍参謀総長が語った原文は、「If we are able to develop the strategic, long-range cannon system, the rounds may be only $400,000 or $500,000 compared to multimillion-dollar rounds. Cost does matter, and we are concerned about cost. There are some, definitely, physics challenges in doing these types of things, and that is the trade-off」です。

本件の記事第一弾
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1

米陸軍関連の記事
「米陸軍が欧州で2020年大規模機動演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08-1
「米陸軍は南シナ海でも大規模機動展開演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-30
「米国防省2トップが陸軍出身に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-20
「3軍長官が士官学校問題議論」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「RIMPACで日米陸軍が訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16

地上部隊にA2AD網を期待
「RIMPACで日米陸軍が訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

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米本土から欧州に2万人展開の「Defender 2020」演習 [Joint・統合参謀本部]

来年2月から機動展開開始
4-5月に欧州でメイン戦闘演習6月撤収

Defender 20201.jpg7日付Defense-Newsは、来年2月から6月にかけ実施される冷戦後最大規模の米陸軍機動展開演習「Defender 2020 in Europe」について欧州米陸軍司令官Chris Cavoli中将が語る様子を報じています

米陸軍が米本土から大規模に機動展開することを演練する演習「Defender 2020」は、太平洋軍エリアでも来年計画されており、1個師団司令部と数個旅団が南シナ海対処シナリオに基づき、フィリピンやタイを中心とした復う数の地域諸国に展開して演習する計画となっており、この欧州版が「Defender 2020 in Europe」です。

しかし欧州版は太平洋版に比して規模が大きく、1個師団以上の2万人を米本土から移送し、ドイツやポーランド、バルト3国や東欧諸国、グルジアや北欧諸国にも展開させるもので、冷戦時に大規模に行われていた「Reforger 演習」がドイツだけに戦力を集中展開し、恐らく「フルだギャップ」防衛に備えた演習だったのに対し、広く対露正面を意識した点で極めて挑戦的な演習と言えましょう

Defender 20202.jpg欧州米陸軍司令官が、「従来のSaber Guardian演習などが戦術的な演習だとすれば、Defender 2020は戦略的なレベルの演習だ」と語っているように、特に輸送面などの兵たん面で、欧州関係国との連携が大いに試される演習となりそうです

3月末に太平洋地域の「Defender 2020」をご紹介した際は、太平洋陸軍司令官から時期についての話がありませんでしたが、欧州が2020年前半だとすると、太平洋では2020年の後半かもしれませんね

7日付Defense-News記事によれば
●Chris Cavoli欧州米陸軍司令官は、師団規模の米陸軍部隊を、米本土の基地から米国の港に移動させ、欧州の港に運び、そこから陸路を東欧州全域に、つまりドイツ、ポーランド、東欧、北欧諸国に移動させる演習だと独占インタビューで語った
●米陸軍はこれまで、太平洋軍エリアでの「Defender 2020 in the Pacific」については語ってきたが、欧州での同演習についてはほとんど明らかにしてこなかった

Defender 20204.jpg2014年にロシアがウクライナに浸潤して以降、それまで削減傾向にあった他国での米陸軍プレゼンスを見直し、米本土所在部隊を増やす傾向は変わらないが、欧州地域での戦力維持にも配慮し、また関連装備の前方備蓄を積み上げてきた
●また、「brigade combat team」や陸軍航空旅団を9ヶ月ローテーションで戦力を展開させる手法を講じてきた。しかし今回の2万人規模を米本土から機動展開させる演習は、全くこれまでとは異なる大きな挑戦であると、同司令官は語った。

●これまでも緊急展開の重要性に鑑み、「Saber Guardian」などの演習で部隊展開を訓練してきたが、これらはあくまでも戦術的な訓練であり、「Defender 2020」は戦略的対応力を試すものとなると同司令官は表現した
●また、何千もの単位の部隊が移動するとなれば、輸送インフラのほか、効果的な連携や受入国からの支援が欠かせなく、地域の同盟国・パートナー国の取り組みを訓練してもらうことにもなるとも語った

●例えば、戦術レベルの演習では、ハンガリーに国内の部隊移動全体を調整する部署を設けてもらったし、ドイツには欧州全体を機動展開する部隊の統合調整所を設置してもらったこともある
Defender 20203.jpgこのような取り組みが「Defender 2020」では各所で期待され、緊急事態の際に必要な円滑な部隊移動を支援する訓練となる事を期待している

前方事前集積装備の活用もこれまでの演習から一歩踏み込み、事前集積装備や弾薬を活用し、実弾演習まで行う計画だと説明した

●司令官はまた、「Defender 2020」では、米陸軍の「JWA:Joint Warfighting Assessment 2020」など約10個の欧州での通常演習を組み込んで行うことにしていると説明した。
●更に司令官は、「Multi-Domain Operations」コンセプトを検証するため、いくつかの取り組みを組み込む予定だと述べ、試行部隊は完全には編成されていないが、現状で不足する部分は米本土から派遣される部隊で模擬するなどして、検討中のコンセプトのテストに供したいとも語った
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極めて概要の紹介になりましたが、恐らく下士官から将軍クラスまで、全く経験したことの無い大規模機動展開演習になると思われます

安全な聖域を移動する中東への派遣イメージを払拭し、敵の脅威が迫る地域への機動展開と言う「古くて新しい」演習に期待いたしましょう・・・・

「米陸軍は2020年に南シナ海大規模機動展開演習」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-30

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日本が譲渡のヘリ部品でフィリピンUH-1が復活へ [安全保障全般]

3月に譲渡したものを今頃やっと感・・・
自衛隊法の「不用装備品の無償譲渡」規定に基づ

UH-1.jpg11日付Defense-Newsは、フィリピン空軍報道官が政府系webサイトで、部品不足で故障していた同空軍保有の7機のUH-1ヘリコプター(1960年代製造)が、陸上自衛隊から3月に無償提供された部品を使用して運用可能状態に復帰すると明らかにしたと報じています

この自衛隊から他国軍への装備品や部品譲渡は、平成29年に年成立した不用装備品の無償譲渡等を可能とする自衛隊法上の規定によるもので、今回のUH-1部品譲渡が2件目のケースとなります。ちなみに1件目は、海上自衛隊のTC-90練習機を同じくフィリピンに計5機無償譲渡したケースです

UH-1の部品譲渡は、2018年6月に当時の小野寺防衛大臣とフィリピン国防相の間で合意され、2019年3月12日にフィリピン国防次官に東京で1回目の部品譲渡が行われ、2回目の部品譲渡が9月12日に行われています

TC-90.jpg譲渡された海自のTC-90は南シナ海などの海洋監視用に2018年1月から運用が開始されており、対中国能力強化のためTC-90の追加機体提供を防衛省は行う方向ですが、救難救助をメインとしつつも、対テロから災害対処、偵察活動など多様な任務が可能なUH-1の稼働率アップにも貢献することで、米国による地域同盟国の能力アップをサポートしたいところです

11日付Defense-News記事によれば
フィリピン軍報道官のAristides Galang少佐は、日本政府から譲渡されたUH-1の部品を用いて、フィリピン空軍のUH-1ヘリ7機が運用可能状態に復帰すると明らかにした
10月初旬に同空軍の第205戦術ヘリ航空団のチームが、譲渡された部品の保管倉庫をチェックし、7機を修理するのに必要な部品が揃っていることを確認した。確認した部品には、メインブレードやテールブレードのほか、ローター回転軸などの主要部品が含まれており、同部隊関係者は早速翌日に部品を部隊に持ち帰った

UH-1 2.jpgフィリピン空軍は、米軍から譲り受けた機体も含めた多数の1960年代製UH-1へリを保有しているが、最近は維持が困難になりつつあり、長期保管状態(mothballed)にしたり、故障したまま放置されている
●同報道官は、UH-1の運用体制復帰は「人道支援から災害対処、IRSや輸送や偵察活動にきわめて重要である」と述べ、まだ未利用の部品はUH-1の稼働率と即応体制を維持するために有効活用されるだろうと語った

第205戦術ヘリ航空団以外にも、第505へり航空団でUH-1ヘリが保有されており、対テロや対共産主義活動家対処にも活用されている
フィリピン軍は老朽化が否めないUH-1の維持努力にあわせ、16機のS-70i Blackhawkへり購入契約を済ませ、16機のロシア製Mi-17輸送ヘリの調達契約も間もなく行う予定と言われている
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3月に譲渡式を行った部品を、10月半ばになって現場ヘリ部隊関係者が確認したと言う「のんびり」フィリピン仕事ですが、恐らく日本から派遣されている防衛駐在官が、フィリピン空軍に速く譲渡部品を使用した成果を見せてくれとお願いしてフィリピン空軍を動かしたのではないかと推察いたします(勝手な邪推です

海自から提供したTC-60も、良く見ていないと野ざらしにされたりしないか心配になります。他国を支援すると言うことは、それくらい根気が要るということです

防衛省の関連webページ検索
https://www.mod.go.jp/j/search_r.html?q=UH-1%E3%80%80%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%94%E3%83%B3

最近のフィリピン関連記事
「比大統領は特攻隊の慰霊碑を自費で建立していた」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-11-2
「露とアジアの関係を2点から」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-23
「東南アジア3か国が共同警戒へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-18
「比が米軍に南シナ海共同警戒中止を通告!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-08

最近のアジアでの米軍動向
「「戦後初」米空軍トップがベトナム訪問」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-14
「初のASEANと米国の海洋演習AUMX開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-03
「アジア太平洋地域で基地増設を検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-28

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米国オープンスカイズ条約脱退の噂にざわめく [安全保障全般]

互いに相手国上空の飛行して監視し合う枠組み
1992年に24か国署名で2002年から開始
現在は30数か国が参加の条約

OC-135B.jpg8日付各種軍事メディアは、トランプ政権がオープンスカイ条約からの脱退を検討しているとの情報を受け民主党の主要議員らが国務長官と国防長官に対し、「政権内部でこそこそ検討するな。重要な条約だからオープンに議論すべきだ。噂されている脱退には断固反対だ」との主旨のレターを送ったと報じています

この条約(Treaty of Open Skies)の経緯は古く1955年にアイゼンハワーが基本理念を提唱しましたが冷戦激化で実らず、1989年に父ブッシュが再び持ち出し、1992年3月にNATOと旧 WTOの 25ヵ国が調印して条約が成立しましたが、実際の相互査察飛行は2002年になって実現した代物です。

条約に基づく査察飛行は条約調印国の全領土上空からの査察を対象とし、年間の査察回数は査察を受けた回数は認められ、査察用航空機やセンサーは相互に協議して合意の上実施、査察結果は共有データとする、などの原則に沿って行われることになっています

Treaty of Open Skies.jpg西側の査察は実質的に米空軍の2機の老朽機体OC-135Bが担い、ロシア側はTu-214が行っていますが、運行開始から60年以上経過したOC-135Bは故障が頻発し、2018年は一度も査察飛行が出来なかった「情けない」状況にあり、後継機や維持経費検討を巡ってオープンスカイ条約が最近話題に上ることが増えていました

最近米国が離脱した「INF全廃条約」については、ホワイトハウス、国防省、国務省間である程度のコンセンサスがあったようですが、このオープンスカイズ条約からの脱退については意見が割れている状況で、共和党内でも賛否両論あるようです

離脱派は衛星等の手段がある中、またロシアが特定地域の上空査察を拒否したりしている中、条約維持に意味はないと主張し、継続派はウクライナ上空飛行など周辺同盟国等に対する情報提供データが得られ、同盟国へのコミットメントを示すうえで重要で、また問題はあってもショートノーティスの上空飛行で得られる情報は有用と主張しています

知識不足で正確にお伝えできるか疑問ですが、話題になりそうなのでとりあえず取り上げます

8日付米空軍協会web記事によれば
Treaty of Open Skies2.jpg下院外交委員長のEliot Engel下院議員(民主党)等はレターの中で、ロシアが条約を十分に履行していないとの長年の懸念はあるものの、「ウクライナ上空での査察飛行から得られる情報は、ロシアのウクライナでの活動を把握する上で有用で、更なるロシアに侵略行為を防止するために役立っている」

●また「条約からの撤退は、大西洋をまたぐ西側同盟を弱体化させ、欧州同盟国に対して米国が安定した予測可能な同盟国だとの信頼を失うことにつながる」と訴え、条約撤退を思いとどまるよう求め、「政府機関横断的な同条約の重要性レビューと、米議会との協議を通じ、透明性ある議論」を求めると主張している

●8日、査察飛行を担当する米戦略コマンドは、査察飛行を支持する米空軍OBのDon Bacon下院議員の発言「OC-135Bによる非武装で平和的な査察飛行は、30か国以上の条約加盟国の軍事力や軍事活動を観察して貢献している」をツイートし、同条約が信頼醸成や透明性確保に貢献していると間接的に主張している

OC-135B2.jpg条約離脱派はロシアがカリーニングラード(バルト3国に隣接の飛び地)、南オセチア、グルジア周辺地域上空の査察を認めないことや、米軍査察機の乗員のロシア国内宿泊を拒否するなどの行為を条約違反と非難しているが、Engel下院軍事委員長ら条約継続派はロシアの違反行為を問題視しすぎて条約離脱の理由にしてはならないと主張している
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台風19号接近で「東京の郊外」でもちょっと緊張してきましたが、今後オープンスカイ条約も、ノーベル賞とラグビーW杯等の隙間でニュースになると思われるので取り上げました

シリア北部からの米軍撤退と言い、色々なトランプ政権の動き・・・台風19号と同様に、波風が大きそうです

米空軍の老朽情報収集機がピンチ
「OC-135Bらは後継機無しの方向?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-28-1
「OC-135Bらの維持がピンチ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-08-1
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ハイブリッドな戦いの情報戦に備えて [サイバーと宇宙]

Defense News主催のインテルと安保サミットで
情報公開促進で敵の情報工作・誘導工作に対処

hybrid warf2.jpg9月4日、Defense News主催の「2019 Intelligence and National Security Summit」が開催されインテルに係る現役幹部から企業関係者まで、様々な人物が講演やパネルディスカッションに参加し、情報戦やハイブリッド戦について議論しました

ハイブリッド戦の中の情報&広報戦や誘導工作は。ロシアが2014年のクリミア半島実質併合でその威力を示し、「安価で低リスク」で有効な手法として西側の脅威となり、特に欧州諸国が対策に力を入れているところですが、このサミットでは米国関係者が議論しています

事柄の性格から断片的な内容ですが、前中央軍司令官の対テロにおける情報戦の要改善事項と併せ、ご紹介しておきます

4日付Defense News記事によれば
Gibson.jpg●ハイブリッド戦のパネル討議で、DNIの副部長であるKaren Gibson陸軍中将は、同盟国を含めた西側情報コミュニティーは、ハイブリッド戦に対抗するため、情報分析手法や分析結果についてよりオープンに公開する方向に向かうべきではないかと訴えた
●ハイブリッド戦は物理的戦力を使用せずに戦略目標を達成する有力な手段になりつつあると述べ、「我々は、情報が戦勝のための道具として、かつてないほど有効活用される様子を目の当たりにした」と脅威認識を表現した

●そして同中将は、「ITシステムにより我々はより密接につながるようになり、結果として、敵は作為した情報をSNS等を通じて正確に目標とするグループや人々に与えることが可能になった」、「今後AIの成熟により、この危険な傾向はますます加速する」と述べた
●また「敵は作為した偽情報を真実だと証明する必要はなく、疑念や疑いを拡散するだけでい」、「一方で我々は、一般国民や同盟国に、我々の情報が正しいことを確信させる必要に迫られている」とも表現した

●このような困難な環境に対応するため、同中将は、西側情報コミュニティーはより情報の秘密指定解除に取り組み、一般の公開情報伝達手段を活用し、一般社会への情報伝達能力を強化すべきであると主張した
Gibson2.jpg●そして「ワシントンDCの情報関係者の間には、より秘密程度が高く、使用に制約が多い情報ほど、優れた情報だと見る文化があるが、この文化と戦うため、情報関係者は、一般社会に情報を知ってもらってこそ大きな利益が得られることを肝に銘じるべきである」、「何のために分析レポートを書いているのか自問自答すべきだ」と訴えた

●更に同中将は、情報や分析の正確性追求と提供のタイミングのバランス考慮し、適時適切な情報提供により着意すべきだと強調した
●次の統合参謀本部議長が上院で主張した敵に混乱を与えるような情報戦ツールへの投資の必要性や、陸軍サーバーコマンド司令官が常々隷下部隊指揮官に指揮官に呼びかけている「情報戦関連部隊の名称変更」などの手法について、同中将は推奨すると述べた

中央軍や特殊作戦軍司令経験者の改善要望
退役したばかりの前中央軍司令官で特殊作戦軍司令官でもあったJoseph Votel退役大将は中東での作戦経験を基に、改善すべき情報活動について以下の4分野を挙げて同サミットで述べた

Open source intelligence
Votel.jpg対ISIS作戦では、Open source intelligence(公開情報)の活用や配分に苦闘した特にSNS上にある情報を活用することが難しく、タイムリーに前線兵士に届けることがいつもできなかった
地域の常識を踏まえた情報の真偽の見極めなど、公開情報の収集活用の改善が必要である


Sharing intel with partners
同盟国等との情報共有をより容易にする必要がある。我々だけ作戦することはなく、パートナーと共に行動するのが基本である。その際、誰の権限で情報を共有するかが課題になることがある
●信頼できるパートナートの情報共有については、現場指揮官により大きな裁量の余地を与える事が必要

Managing big data
●米軍の情報収集能力は目を見張るものがあるが、前線兵士が活用できるように処理分析することに大変苦労している。処理分析配分を戦いの速度に上げることが重要な観点である
有志連合から集まってくるイラクやシリア関連情報も膨大で、これらを処理して活用できるようにするのもチャレンジングな課題である

Boosting human intelligence
hybrid warfare.jpg地域担当メジャーコマンド司令官にとって、地域の人々が何を考え、どのような視点で物事を見る傾向があるのかを知ることは極めて重要であり、その点で「人的情報」は極めて重要である
より多くの人的情報を入手することで、必要兵力の量を削減することが可能になる。現在のHUMINT部隊はその規模でよく頑張っているが、より強化することが期待される
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敵のハイブリッド戦に於ける情報工作や誘導工作に対処するため、出し惜しみせず、従来秘密情報扱いになっていた情報も、一般メディア等を活用して一般民衆に伝えて「工作」に対抗すべき・・・とは、なるほどの考え方です

そのためには「情報コミュニティー」の文化を変える必要がある・・・との指摘にも納得です。情報分析の担当官や組織は、オタクっぽい性格を帯びて閉鎖的になりがちですから、正反対の広報部隊と連携してみるのも面白いかもしれません

白髪のGibson陸軍中将はオタクっぽい見た目の女性ですが、発想は素晴らしいと思いました

米大統領選挙や英国のEU離脱国民投票を始め、多様な事例や各国の取り組みを紹介する良
「ドキュメント誘導工作を読む」
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1
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B-1爆撃機早期退役でB-21推進検討 [米空軍]

アフガンでの低速中高度飛行多数で機体が疲弊
稼働率向上には多額な経費が必要な可能性大

B-1.jpg 9月17日、Goldfein米空軍参謀総長はAFA航空宇宙サイバー会議での記者会見で、保有機60機に対し稼働機数が「一桁」に落ちていると報じられたB-1爆撃機について触れ、稼働率向上のためにどれほどの予算が必要で、米空軍として今後B-1爆撃機をどのように扱うのが適当かを分析検討していると語りました

そして、B-1への投資を検討する際には、最優先事業の一つであるB-21爆撃機取得促進も考慮要素になると語り、B-1を早期引退させて維持整備費を浮かせ、B-21計画による必要空軍予算の膨らみを抑えることも考慮していると述べました

B-21機種選定の際、米空軍は100機調達を想定して関係企業に提案させてノースロップグラマンに担当企業を決定しましたが、爆撃機を運用するGSCの司令官は、国家防衛戦略を遂行するには他機種を含めて225機の大型爆撃機が必要だと発言しており、B-1とB-2が先に引退するとなると少なくとも140機のB-21が必要となります

米空軍幹部の中にはB-21は175機必要だと述べる者もいてF-35やKC-46と並行してB-21を調達する米空軍にとって、議会頼みだけでなく自ら費用をねん出する姿勢も求められており、そんな一つの知恵なのかもしれません

17日付米空軍協会web記事によれば
B-1 2.jpg●同参謀総長は、中国の脅威がある中、地域の同盟国が爆撃機を保有していないことから、太平洋地域での「爆撃機需要は高い状態が続いている」と述べた
●同時に多くの検討や分析を通じ、より多くの爆撃機、特にB-21が必要だとの結論が導かれており、この点について参謀総長である私も100%の革新と信念を持っており、爆撃機部隊を大きくする必要がある、とも表現した

このような全般状況を語った後にGoldfein大将は、B-1爆撃機の状況に触れ過去18年間にわたる中東での酷使、特にアフガンで重宝された多くの弾薬を搭載しての空中待機と要請に応じた迅速な地上部隊支援対応により機体に想定以上の負荷がかかったと述べた
B-1は設計上、低空を高速で飛行するため可変翼を後方にたたんで行動することを基本として製造されているが、アフガンなどでは中高度を低速で空中待機する時間が長く、可変翼を広げて飛行するため機体に想定以上の負荷・負担が生じている、と同大将は説明した

●結果として「機体に想定外の負荷が蓄積し、数年前からB-1の機体構造部分に深刻な問題が複数発生している」、「米空軍はB-1が十分な即応態勢を回復できるか、そのためのコストは負担に値するかを確認しようとしている」と参謀総長は説明した
B-1 3.jpg米空軍物資補給コマンドのArnold Bunch司令官は別の場で記者団に、B-1の構造疲労テストを数年前に開始したが、突発的なB-1の不具合事象でそのたびに中断してきたが現在は再開していると述べたが、いつ結果が出るかかは語らなかった

●参謀総長は、米空軍指導層で疲労度が高い何機かのB-1を早期退役させ、爆撃機グループへの投資に回す手段についても検討を行っており、その中には、長射程戦略兵器やB-52エンジン換装、KC-46導入ペースダウンやB-21導入加速などのオプションが含まれているとも述べた
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一番最後の部分に、「decreases our tanker requirement」との検討オプションが含まれており驚きましたが俗にいう「聖域なき予算削減検討」が米空軍内で行われているということなのでしょう。

B-1 4.jpg別の記事では、不具合が依然解消されていないKC-46は、今後3-4年は不具合解消に必要との米空軍幹部の発言も紹介されており、今後色々どんでん返しがありそうです

B-1早期引退については、「retire some of the most stressed B-1s」との表現ですから、60機全てに手を付ける検討ではないようです。

爆撃機とロードマップなど
「B-1爆撃機の稼働機一桁の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-05
「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
「2018年春のBomber Vector」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2
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