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5か月経過も米空軍の先進集中開発項目未定 [米空軍]

4月発表の「新科学技術戦略」で決めたのに
空軍研究所組織横断で取り組むと決めたのに

Bunch.jpg9月16日、米空軍研究所AFRLを所掌する米空軍Materiel Command司令官Arnold Bunch大将にDefense-Newsが独占インタビューを行い今年4月に鳴り物入りで発表された米空軍の「new science and technology strategy:新科学技術戦略」の進捗状況について質問し、同戦略の柱の一つである「先進的で前衛的な道を切り開く新しい研究開発プログラム(vanguard programs)」が未だ定まっていないと明らかにしています

この「先進的で前衛的な道を切り開く新しい研究開発プログラム(vanguard programs)」は、米空軍研究所AFRLの資源配分を再整理し、2割のAFRL資源を投入し、AFRLの知恵を組織横断的に通出して短期間に成果を得ようとする試みです

4月の発表された米空軍の「新科学技術戦略」では、以下の5つの「革新的:transformational」成長をもたらす分野を示し、空軍として注力することを明らかにしています
autonomy;
next-generation weapons like hypersonics and directed energy;
resilient information sharing;
distributed sensing;
machine learning that can speed up decision-making

vanguard.jpgですから、「vanguard programs」も5つのエリアに関連する具体的な研究開発項目を絞って取り組むはずですが、5か月経過しても音無で、更にBunch大将は「決定を急がない」ともインタビューで述べています

最近の米空軍幹部の各種発言から想像すると、予算不足が明確になり、空軍参謀総長が中心となって資源配分優先順位議論を行っている最中で、その結論が出るまで研究開発の優先順位を決められない状態になっていると考えられますが、とりあえずBunch大将の話をご紹介しておきます

26日付Defense-News記事によれば
●4月に公表された「新科学技術戦略」では、米空軍研究所AFRLの資源を再構築し、AFRLの2割勢力を複数の「vanguard programs」に投入し、AFRLの英知を「飛躍が予期される技術分野」に持ち寄り、迅速なプロトタイプや実験により推進することを求めている
Bunch2.jpgしかし5か月間経過した現在でも、米空軍として「先進的で前衛的な道を切り開く新しい研究開発プログラム:vanguard programs」を決められずにいる

●しかし、AFRLを配下に置くArnold Bunch米空軍Materiel Command司令官は、「何月何日までにvanguard programsを決定する、といったやり方では進めない」、「急いではいない」と述べ、AFRLはどの様にvanguardを選定して管理すて行くかを引き続き検討していると説明するにとどめた
●現在AFRLは、研究分野ごとに7つの部門に分かれているが、「vanguard programs」が縦割りでない組織横断的な英知結集を狙っていることから、新たにvanguard用の「program office」を設けて、各既存部門からの情報や協力を柔軟に得られるような役割を持たせることも検討していると、同司令官は述べた

vanguard3.jpg●また同司令官は、vanguard用の「program office」に米空軍の調達専門要員を配置し、研究開発初期段階から装備化に向けた成熟を支援する体制を整えることも検討していると説明した
●更に同大将は、このような特別な「program office」設置により、AFRL内の競争を促進することにつなげ、技術革新を刺激したいとも述べた。「我々は敵対国と競争しているが、同時にAFRL内でも競い合ってほしい。進歩を示し、新たな地点に到達しなければならない。前線兵士のニーズに焦点を当て、結果を出さなければならない。そうでなければ、米空軍の資源は他に配分されてしまう」とも表現した
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Bunch司令官が最後に「結果を残さなければ、資源が他に配分されてしまう」と危機感を述べていますが、先日は戦闘機族のボスであるACC司令官Holmes大将も同様の危機感を述べ、米議会スタッフに次世代制空システムへの予算配分の重要性を説明に回っていると説明していたところです

米空軍は主要装備の更新時期を一度に迎えています
F-35、B-21、KC-46、次期練習機(T-38後継のT-7)、次期ICBMなどの調達や研究開発の波が2020年代に押し寄せ、良く見てもわずかな伸びしか期待できない国防予算に収まりきらないことは火を見るより明らかです

米海軍も次期空母フォード級や次期戦略原潜SSBNの導入が同時期に進むことから、なおかつ価格が2倍に跳ね上がっていることから、国防省全体で優先順位の議論が求められています。

Esper3.jpgこんな話は10年前から言われていたことですが、今の今まで放置されてきました。エスパー国防長官は「夜の集中検討会:Night Court」を開催して結論を得る覚悟ですし、各軍種も2021年度予算案をまとめる年末に向け、ぎりぎりの選択を迫られているのでしょう

米国防省と米軍は優先順位の決断を迫られている
「エスポー長官無駄計画削減の決意」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-31
「ACC司令官が制空投資削減を危惧」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-21

「PCA価格はF-35の3倍?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15
「NKのおかげSSBNに勢い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-2
「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20 

「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09
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米空軍が次期戦闘機検討でギャンブルを!? [米空軍]

機種選定による1機種大量生産ではなく
複数企業が独自機体を長期契約更新しつつ保持
5年毎に最適なものに乗り換え

Roper2.jpg2日、米空軍の革新的調達推進役であるWill Roper次官補が次期制空機構想の方向性を発表し「Digital Century Series」なる「複数のジェット機」を並行開発する従来とは全く異なるコンセプトを打ち出し、パイロットでないDale White大佐(推定45歳:調達幹部)を長とする「Program Executive Office for Advanced Aircraft」をWright-Patterson空軍基地に立ち上げました

従来の戦闘機開発は、米空軍司令部内に戦闘機パイロットを中心とした検討室を作り、次期戦闘機の要求性能を固めて候補企業に提示し、複数の企業からの提案を評価して1つの機種に絞り、その機種を1000機以上、能力向上を行いつつも20年程度製造を継続するというものでした

しかし今回の基本的考え方は、脅威環境を踏まえて要求性能を検討するのでしょうが、複数の企業と対話しながら、コストを抑えつつ迅速にリスク低く実現可能かを見極め、継続的な革新が可能かや、ソフト更新対応を重視し、構想から5年以下程度で実用化のイメージです。

NGAD5.jpgまた複数企業が並行して開発をを行い、ある段階で最も実現可能な1機種に大量でない小規模機数を製造させるが、1機種を製造開始した後も、他企業の他機種も契約を継続して設計を更新させ、5年程度の周期で脅威環境に最適な機種を再び選んで小規模機数を製造させる考え方です

ただし、まだまだ今回のアプローチ手法は「やわやわ」な様で、新設「Program Executive Office」の最初の仕事は、上記のような「Digital Century Series」なる複数機種を並行存続させる考え方が実現可能か、また複数機種並行存続にどの程度コストが必要かを含む「調達戦略」を9か月以内にまとめる事になっています。

Roper次官補は、「このような世界(this universe)に到達する道筋を、White大佐が見つけてくれることに最上級の自信を持っている」と「Program Executive Office」発足式典で述べたようですが、この表現からして異次元な感じです

Dale White大佐(推定45歳)とはどんな人?
(日本で同様のポストが思い浮かびません)
White.jpg一般大学出身の調達幹部。初級士官課程を成績優秀者として卒業し、ニューメキシコ大学でMBA取得。米海兵隊指揮幕僚大学を成績優秀者として卒業。大佐昇任時期は同期生でトップクラス
●その経歴のほとんどは米空軍マテリアルコマンドで宇宙、サイバー、航空機など多彩な兵器システムの兵站面のマネジメントを仕切る。現在は米空軍ライフサイクル管理センターでISRと特殊作戦軍のProgram Executive Officer (PEO)、その前は空軍省の緊急戦力造成室でB-21のProgram Directorでこの時にRoper次官補の部下だったと考えられる
●その他、米空軍研究所宇宙ミサイルセンター、空軍省調達担当次官室などで、一貫して兵器システムの「producing, testing, modifying, fielding, and supporting」を担当

Roper次官補は同Office発足式典で
White2.jpg●White大佐は、このプログラムを枠に囚われない思考に基づき(based on his out-of-the-box thinking)導くために選ばれ、このプログラムを導くに必要な軍需産業を理解する専門能力を持った者として期待されている
●このプログラムは、軍需産業にとっても良いものでなければ成立しないが、同時に継続して技術革新を導き、より小型で速く機敏なものを追及する。担当企業は1000単位の製品を作る企業であることは必ずしも必要ない。このような世界(this universe)が存在する道を、この大佐が見つけてくれることに、最上級の自信を持っている

また9月にRoper次官補は
従来のように、単一の非常に素晴らしい航空優勢獲得用アセットを製造する企業を選定するのではなく、新たなコスト削減技術(ソフト開発、オープンアーキテクト、デジタル開発等)で複数の戦闘機開発に投資したい
●米空軍は、その中から最も実現可能な機体の提供企業を1つ選んで小規模の製造を依頼するが、他の企業とも契約を継続し設計更新を続けてもらう

NGAD4.jpgこの方式の利点は企業間の競争を増し、最新技術を搭載した戦闘機を約5年ごとに送り出す能力を強化する点にある。企業側が考える可能なことと、わがチームが提言してくれることに基づき、どの程度の間隔で新型機を送り出すかのリズムをセットする必要がある。今は5年毎を想定しているが、違うかもしれない。もっと早ければよいが、5年でも現状と比較して遥かによい
新設「Program Executive Office」の最初の仕事は、上記のような「Digital Century Series」なる複数機種を並行存続させる考え方が実現可能か、また複数機種並行存続にどの程度コストが必要かを含む「調達戦略」の初期報告を6ヵ月後に、最終報告を9か月以内にまとめる事である

White大佐は式典で
●わがチーム前に立ちはだかる任務はタフなものである。しかしその任務は、わが国が世界の舞台で確固たる地位を維持するために「must-do」なものである
我々はもはや、かつて保持していた世界のスーパーパワーの地位を約束されていない。そして今、我々は米国の今日を築いた要素の根元に立ち返り、学び直さなければならない
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NGAD6.jpgWhite大佐はPEO Advanced Aircraftとして、戦闘機の機体だけでなく、NGAD(Next Generation Air Dominance)の一部をなす多くのサブシステム開発も監督下におくことになっているようで、NGAD計画には、並行して多くの新兵器やエンジンやミッションシステム開発が盛り込まれているようです

戦闘機パイロット族はこの動きをどのように見ているのでしょうか? 「当分泳がしておけ」、「そのうち自由に操ってやる」などと考えているのでしょうか? 最後にご紹介した、White大佐の強烈な使命感と危機感を、戦闘機パイロット族はどのように感じるのでしょうか?

結構衝撃的な話ですが、米空軍参謀総長やACC司令官のHolmes大将あたりの決意の程を確認したいものです。

Col. Dale White大佐の経歴
→ https://www.wpafb.af.mil/Welcome/Biographies/Display/Article/1585290/colonel-dale-r-white/

「戦闘機族のボスがNGAD予算を危惧」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-21

米空軍の次世代制空機検討PCA
「PCA価格はF-35の3倍?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15
「秋に戦闘機ロードマップを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-22
「PCA検討状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-12
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08

「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「F-35にアムラーム追加搭載検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-28

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マルチドメイン指揮統制MDC2に必要なのは? [米空軍]

ここでも「Uber」が一つの目指すべき姿と・・・
6つの取り組み中分野を挙げて現在位置を

MDC2.jpg9月17日、AFA航空宇宙サイバー会議で「マルチドメイン指揮統制MDC2」ビジョンとのパネル討議に登壇した3名の空軍幹部や専門家が、Goldfein空軍参謀総長の肝いりで進められているMDC2の目指す方向と現在の取り組み、更には未着手の課題等について語りました

マルチドメイン指揮統制MDC2とは高い能力を備えた相手と高烈度紛争を戦う場合、サイバー戦や電子戦が常態の混乱の中で、高性能の兵器が多数飛び交うような状況が予想される複雑な環境の中でも、前線から司令部勤務者までもが情報をリアルタイムに円滑に共有し、迅速適切な意思決定を可能にし、それを多様なドメインを包括して統合で可能にすることを目指すものです

この分野は、かつて米空軍がE-8C(JSTARS)を用いて局所的なエリアでリードした経緯があり、米空軍が将来の米軍でイニシアチブを握るために積極的に取り組んでいるものです。空軍がどの程度統合レベルで調整しているのか明確ではありませんが、実態として戦場データネットワークは航空アセットを支える米空軍が中核にならざるを得ない側面があり、米空軍の姿勢は正しいと思います。

23日付米空軍協会web記事によれば
5G-2.jpg●米空軍先進戦闘管理システム構築責任者のPreston Dunlap氏は求めるMDC2を、民間白タク配車サービスの「Uber」を一つの理想モデルとして挙げつつ、「スマホやタブレットのアプリのように活用でき、自分や近傍の味方の位置を把握でき、各端末の情報を途切れなく、多様なネットワーク(cellular, Wi-Fi, bluetooth, 3G, 4G, 5Gなど )で共有出来るようなもの」と表現し
●また「接続の回線密度に拘わらず、AIや機械学習アルゴリズム機能によって適切に接続され、(Uberが)人と車を結びつけるように機能するMDC2」と表現してイメージを説明した

●そして(Uberのように)、参加者が画面上で近傍の情報を把握でき、それらの戦力を一つの作戦目的のため導けるようなシステムをイメージしていると語った
●「(Uberが)一般社会で我々のために機能しているように、我々の能力を瞬時のうちにあるべき方向・時間・目標に導き、航空機や潜水艦や戦車や衛星や地上兵士を結び付けたいのだ」と語った

●そして米空軍が取り組んでいる6つの取り組み分野を説明した
sensors that can tie information together across classification levels;
the need to get data off of those sensors;
security and data management;
getting data to the right place; crunching data with AI;
reacting with munitions or other effects accordingly;
and reworking the targeting and attack process if needed.

Kumashiro.jpg●米空軍統合戦力融合部長Dave Kumashiro准将は、MDC2を実現するにあたり重視する困難な点に触れ、前線のユーザーの立場に立って如何に使い勝手を良くするか、また皆が新たな脅威に直面した際に、理解でき直ぐに行動に結び付くような言葉や表現を統合システムに導入すること等に言及して説明した
●また、まだ手つかずの課題の例として、システムとして柔軟性や機敏さを追求するものの、軍ネットワークがサイバー攻撃を受けた場合の対応等を挙げた

●元上院スタッフで関連軍需産業部長であるChris Brose氏は、各軍種の上層部はMDC2の重要性を理解して取り組むだろうが、本当に必要なのは、前線レベルの兵士の意見を持ち寄ってボトムアップの変革に結び付けることだと主張し、その間に横たわる軍事官僚制の壁の存在を危惧した
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米空軍の6つの取り組みも訳そうとしたのですが、的外れな当てつけ翻訳になりそうだったので、原文をコピペしました

cyber1-82e9c.jpgGoldfein空軍参謀総長の肝いりなので、これまでも「ちまちま」と取り上げてきましたが、これまでよりは少しは具体的かと思いましたので、ご紹介いたしました。

それにしてもRoper次官補といい、皆さん「Uber」の配車システムがお好きの様で・・・使ったことないので偉そうには言えませんが・・・ 。熊代准将(Kumashiro准将)がんばって下さい

米空軍のMドメイン指揮統制検討
「米空軍がマルチD指揮統制演習を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-25
「指揮統制改革に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09
「3つの取り組み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-18
「宇宙サイバー演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-14-1
「空軍に新コンセプト期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
「米空軍の重視事項3つ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13

マルチドメインの関連
「太平洋軍司令官が米議会にお願い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-29
「対中国で米軍配置再検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1
「射程1000㎞の砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「RIMPACで日米陸軍が訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16

「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

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報道寄せ集め:中国建国70周年軍事パレード [中国要人・軍事]

米国が予算不足で新兵器開発が滞る中

China Ji.jpg中国は1日に建国70年を迎え、北京中心部の天安門広場で午前中、軍事パレードを行いました。

いろんな表現で報道されていますが建国記念日では60周年の2009年以来の軍事パレードで、他の機会の軍事パレードも含め過去20年間で最大の軍事パレードだったとの表現も見られ、陸上戦闘部隊の装具、自動小銃から戦略核ミサイル、空軍の作戦機に至るまで、幅広い分野で新型の兵器・装備を披露するというアピール度の強いものとなりました

2012年に習指導部発足後、軍事パレードは「抗日戦争勝利70周年」の2015年、軍創設90周年の2017年に続いて3回目で、江沢民及び胡錦濤国家主席は各1回しか軍事パレードを実施して事と比較すると、習主席にとって3回目の軍事パレードは「武力を重視する習氏の政治姿勢」の表れとも表現されています

パレードは約80分をかけ、160機以上の航空機や580の装備が天安門広場周辺で披露されたが、全ての装備は中国製で統一され、また全て実戦配備済みと説明されました

個々の装備について語る知見を持ち合わせていませんが1日夕刻FNN Primeにアップされた軍事評論家:宇垣大成氏の評価などを中心に、軍事パレードの特徴的な部分をつまみ食いでご紹介いたします

陸上部隊
DF-41.jpg熱帯雨林地域から砂漠地帯にまでの戦域に対応できるよう、異なる環境を意識した複数のパターンの戦闘服や個人装具を披露した
新型の自動小銃、15式戦車、トラック車体に155mm榴弾砲を搭載した18式自走野戦砲、直径300mm級の長射程多連装ロケット弾発射機、Z-10攻撃ヘリコプター、Z-20輸送ヘリコプターなど戦力の質の充実をアピールした

●また、米本土の全体を射程に収め、本体から分離後は各個に別々の軌道で目標に向かう核弾頭10個を搭載できる射程14000㎞以上の新型ICBM「東風(DF)41」が初公開された

海軍兵器
SSBNに搭載されている射程8000km級のJL-2 SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)のほか、大型の水上戦闘艦に搭載される通常弾頭装備で最大射程が500km級になる超音速対艦巡航ミサイルYJ-12BとYJ-18Aが、トレーラーやトラックに搭載されて行進したほか、新しいUUV(無人潜水艇)が登場

航空機
Y-20.jpg●空軍機では、大型の国産ステルス戦闘機J-20、大型輸送機Y-20、胴体下に対艦弾道ミサイルを搭載すると考えられるH-6N新型爆撃機、エンジンやレーダーの組み合わせによって軽戦闘攻撃機にもなるJL-10新型練習機、空飛ぶ電波ジャック放送局といえるY-9XZ心理戦機などが展示飛行した。
●併せて、既存の国産戦闘機J-10やKJ-2000早期警戒管制機、HY-6空中給油機、新型無人機などと合わせて、空軍力が新しい段階に進みつつあることを明らかにした。

西側が保有しない戦力
DF-17.jpg●ミサイルではICBM以外にも、大気圏内を軌道を変えながら飛翔する射程2000km級だと考えられているDF-17超超音速兵器(Hypersonic weapon)が登場した。これは、中国首脳が数年前から「米国や日本、韓国がMDを推し進めるならば、それらを国家の意思として突破し、無力化する。」と表明していたことを裏付けるものでもあり、現用のミサイル防衛網では阻止不可能だと考えられている。(米国も必死に開発を進めている

●なお中国軍では、DF-17開発途中で、早ければ来年中にも戦力化する予定だとも言われており、この兵器だけは自薦配備済みが微妙である。また次世代の新型極超音速滑空兵器の開発をも進める姿勢を見せている。
●更に、対地攻撃力を持つ新しい超音速巡航ミサイルDF-100も登場しており、ミサイル防衛が無力化されつつあるという点で、中国首脳の意思表明が実現に向けて着実に進展していると言える
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WZ-9.jpg米国を中心とした西側戦力を無力化するために考え抜かれた見事な兵器体系整備だと思います。実際に機能する兵器なのかは別として・・・

西側関係者は、中国の兵器体系の視点から、自らの弱点を改めて見直す必要があると思います

中国も景気後退で厳しいのでしょうし、西側も踏ん張りどころでしょう・・・

「2015年の中国軍事パレード」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-09-04

米国防省「中国の軍事力」レポート関連記事
「2019年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-06
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1

防研の「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1
4回:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
5回:非伝統的軍事分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-22
6回:PLA活動範囲拡大→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-09
7回:中台関係→サボって取り上げてません
8回:米中関係→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-2

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ドイツ製パッシブレーダーがF-35を150㎞追尾していた [安全保障全般]

So-netの都合で、昨日からブログのURLが変更になっています。ご注意下さい!
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以前ご紹介したHensoldt製のTwInvis
2018年4月末のベルリン航空ショーのF-35帰隊時に
なぜかF-35がデモ飛行しなかった同航空ショー

TwInvis.jpgドイツのHensoldt社が、自社製のTwInvisパッシブレーダーが2018年4月末のベルリン航空ショーに飛来した2機のステルス戦闘機F-35を約150㎞にわたって追尾したと明らかにした模様です

いつ、どのような形で同社がF-35のレーダー探知追尾を明らかにしたのか9月30日付C4ISRnet記事は明らかにしていませんが、関連の記事が軍事メディアで複数取り上げられていますのでご紹介します

なお同パッシブレーダーについては昨年11月に、世界が注目し、ドイツ軍が自ら試験をした後、導入する方向で進めていると以下の記事でご紹介したものです

「新型パッシブレーダーが大注目で独軍が試験へ」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-17-1

復習:Hensoldt社製のTwInvisパッシブレーダーとは
TwInvis2.jpg通常の航空機探知追尾用のレーダーは、自ら航空機の探知追尾に適した周波数の電波を発射し、目標航空機が反射する電波を探知して位置や飛行方向や速度を把握するが、このパッシブレーダーは、ラジオやTV局が発する放送用電波や携帯電話の通信電波などが目標航空機に反射したものを集めて探知追尾に活用する

世のステルス機は、航空機探知用レーダーの周波数に対して、機体からの反射を局限する形状や表面塗装でステルス性を確保するが、他の周波数に対しては必ずしもステルス性を発揮するとは限らな
●また自ら電波を発射しないパッシブレーダーは、自分の存在や位置を対象航空機や敵に知られることがない点でも、利点がある

TwInvis3.jpg一方でラジオやTV局が発する放送用電波や携帯電話の通信電波などを利用することから、目標航空機の位置特定の精度や分解能は低く、パッシブレーダーだけでミサイルなどを誘導することはできない同レーダーの大まかな探知位置に赤外線ミサイルを発射したり、他のセンサーを指向してより正確な情報を得ることに活用可能
またラジオやTV局など一般の電波が少ない地域では活用が難しい。(想像ですが、日本が東シナ海や日本海方面で同パッシブレーダーの原理を活用することは難しいかもしれません

2018年4月のベルリン航空ショーでの探知状況
同航空ショーは、ポーランドとの国境から70kmほどにあるSchönefeld Airportで行われ、ポーランドのFM放送局からの強力な放送電波も活用できたことからパッシブレーダーの機能発揮に貢献した
米国は同航空ショーをドイツ並びに欧州への売り込みの重要イベントと位置づけ、米本土から過去同機最大の11時間もの移動時間をかけて2機のF-35を派遣したが、なぜか地上展示だけでデモ飛行を行わなかった

TwInvis4.jpg当時現場では、Hensoldt社製のTwInvisパッシブレーダーの展示がやデモが急きょ決まったため、これを警戒してF-35がデモ飛行を取りやめたとの噂でもちきりだった
Hensoldt社は、F-35の帰路を狙ってTwInvisの能力を確認すべく、また米側に警戒されないよう、航空ショーの会場から機材を撤収したと見せかけ、会場から数キロ離れた「馬牧場(ポニー牧場)」に機材を移動させ、F-35の帰路離陸を待った

●管制塔とF-35編隊の無線交信から離陸を察知したHensoldt社関係者は、F-35が搭載の航空交通管制用トランスポンダーが発する信号と、TwInvisが探知する機体位置を照合しつつ、約150㎞に渡りF-35編隊を追尾した
ちなみにF-35などステルス機は航空交通路の移動の際、飛行安全を確保するためレーダー波反射装置(リフレクター: Luneburg lenses)を装着して通常のレーダーに探知されやすいようにするが、TwInvisは通常の航空機探知用レーダーと異なる周波数を活用するので、リフレクターの有無に探知能力は左右されないとHensoldt社関係者は説明している

TwInvis5.jpg●Hensoldt社がF-35の探知に成功したと明らかにしたことに関し、米国防省F-35計画室の報道官は「ノーコメント」と対応した
このF-35探知を受け、仏独スペイン共同の6世代機開発プロジェクトにおいて、ステルス性追求の程度が変化したと言われている
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物理学における電磁波の法則から理論的には可能と分かっていても、現実の世界での実現には様々な障害があった様ですが、データの処理技術やプロセッサーの進歩により、TwInvis開発が成功したとHensoldt社は説明しています

既にこの技術は中国に流れているのでしょうか。流れていると考えるのが自然でしょうねぇ・・・。

様々な制約があるパッシブレーダーですが、TwInvisを導入したと宣伝するだけで、ステルス機運用側は行動を制約されることになります。リスクは簡単に置かせませんから・・・

「新型パッシブレーダーが大注目で独軍が試験へ」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-17-1

対ステルス関連の記事
「中国の対ステルスレーダー」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-24
「中国にステルス対処の受動レーダー出現」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-05
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12
「ステルスVS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「米イージス艦のIAMD進歩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09
「バイスタティック無人機で対処」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-26

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米空軍の無人空中配送機投資で商用にも貢献 [米国防省高官]

評判の良くない米空軍研究開発費の効用を宣伝か
衛星打上や通信衛星では空軍投資が商用発展に貢献と

Roper.jpg16日、米空軍協会航空宇宙サイバー会議で講演したWill Roper調達担当次官補は米空軍の調達力は既に衛星打上や通信衛星開発で企業能力を高めて商用分野での競争力強化に大きく貢献していると説明し、空飛ぶ無人車両での配送事業革命にも貢献することになろうと述べました

インターネットにしてもロケットの例を挙げるまでもなく、軍への投資や兵器開発が民生分野にスピンオフした事例は枚挙にいとまがないのですが、冒頭で触れたように、このような説明をしなければならないのは米軍の開発投資に対して国民や議会から懐疑的な目が向けられているからでしょう

背景はともあれ、「自動輸送システム」や「self-flying cars technology」との分野を具体的に上げ、米空軍として投資していく姿勢を明確にし、民間企業との協力で成果を出し、その果実で参加民間企業の利益にも貢献して米国経済全体に還元しようとの構想で、面白そうなのでご紹介しておきます

16日付米空軍協会web記事によれば
Roper2.jpg●Roper調達担当次官補は同会議のkeynote addressで、「米国防省の調達関係者は、軍需産業の能力のどの部分が市場価値を持っているか、またどの分野で軍需産業と協力すべきかを検討し、近未来にブームが訪れるだろうself-flying cars技術がそれにあたるのではと考えている」 と述べ

専門家の中には、地上での自動輸送システムや将来の空中自動輸送システムは、米国経済に巨万の富をもたらすだろうと予想する者がいるとも説明する一方で、無人航空機による自動輸送システムを「とってもクールなアイディアだが、安全運航の承認を取るのは極めて困難な挑戦になる」と困難な点についても触れた

●そして同次官補は、しかし戦場は特殊な環境であり、リスク許容度も異なるから、Uberのような企業が革新的な自動輸送技術をテストして実用化に突き進むことが出来る環境でもあると軍事用開発のメリットを説明した

Roper3.jpg●また「軍事の兵たん世界では安全に関してプロセスを迅速に進めることが出来る」、「米空軍の飛行(試験)時間は、予言されている都市輸送ブームに挑む企業にとって大きな価値を生むものと考えられる」、「国防マーケットを、関係企業にとっての産業基盤能力拡大に活用してくれれば素晴らしい」と表現した

●同次官補は、既に米空軍の購買能力が産業基盤能力向上に貢献している例として、衛星打上や通信衛星開発を取り上げ、衛星打ち上げでは企業に官民両用の企業力を生みだし、軍事力向上だけでなく米国全体の経済優位に貢献していると述べ、また複数の衛星プロトタイプ作成を多くの企業に行わせることで、技術基盤の拡大につなげていると説明した

●Roper次官補は「このような取り組みにかかわっている調達関係職員はヒーローだ」と表現し、「通常の人材の養成法ではないが、通信衛星に関していえば、特定のプロジェクトだけでなく、数年から数十年後を見据えた能力強化でもある」と語った
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Roper4.jpg米空軍(米軍)の兵たんに、「自動輸送システム」や「self-flying cars technology」が導入されることを期待しつつ、Uberとの共同事業が生まれることを願いつつ、他にも多数同次官補がぶち上げている事業の成功を祈りつつ、とりあえずご紹介だけしておきます


Will Roper氏の関連記事
「超超音速兵器ARRW開発本格開始」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-16
「24時間以内の緊急打ち上げへ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-01
「無人機ウイングマン構想」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-27
「調達担当者を活躍させる体制」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-16
「KC-46Aの異物問題に」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「PGM不足問題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-09
「米空軍重視の9分野」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-4
「維持費削減に新組織RSO」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-23
「ソフト調達が最大の課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-01
「F-35維持費が大問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-20-1
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26 
「無人機の群れに空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30
「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1

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