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米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ [米空軍]

恐らく中東です
ビーム兵器ではなく電磁波で回路を瞬時に破壊
レイセオン製のPHASER system

PHASER.jpg24日付popularmechanics.comが、23日に米国防省が米議会に対し、高出力マイクロ波(HPM:High Power Microwave)を使用して小型無人機の群れを撃退可能なレイセオン製の「 PHASER system」購入を通知し、海外の実環境で1年間程度試験する方向だと報じています

サウジ石油施設が20以上の無人機や巡航ミサイルで攻撃を受け危機感高まるタイミングですが、 PHASER system自体は長年研究されてきたエネルギー兵器の一つで、プロトタイプ試作結果に米空軍が満足して実環境アセスメント(a year-long assessment)に入るタイミングが偶然一致したというのがレイセオン社の説明です

このPHASER systemはエネルギーをレーザーのようにビームにして照射し、一定時間目標にビームを当て続けて熱で対象を破壊するタイプではなく高出力マイクロ波をストロボのように短時間照射し、無人機の電子回路を瞬時に破壊または一定時間機能不全にすることから、無人機の群れに対処可能とされています

RQ-11 Raven.jpgただし人間が持ち運びできる程度の小型無人機(写真のRQ-11 RavenやScanEagle程度まで )が高度1000m以下程度を比較的低速で飛行する場合にのみ有効な射程範囲で、他の無人機防空手段と併用して「多層的な防御網」を構築する一手段と捉えられているようです

また、残念ながら巡航ミサイルに対しては効果が期待できないと、米空軍もレイセオンも判断しているようです。巡航ミサイルは速度が速いからかもしれません

ScanEagle.jpgご紹介する記事は、米空軍所属時から今まで40年間このHPMに取り組んできたレイセオンの担当者の話が中心で、多少差し引いて考える必要があるかもしれませんが気になるのは、「まだ公にできない、別の防御的な応用先がある」と語っているところですが・・・



レイセオン社Don Sullivan技術者などによれば
米空軍は約180億円を投じてPHASER systemのプロトタイプを作成し、米国外の未公開の場所で約一年間のアセスメント試験を行い、試験は2020年12月20日までに終了すると議会に23日通知した。
●米空軍は同システム以外にも複数の指向性エネルギー兵器の試験購入を進めており、北朝鮮、アフリカ、ウクライナ、そして中東など、敵の無人機脅威が高まっている複数の場所や基地でのアセスメント試験を予定している

PHASER2.jpg●米空軍のアセスメント試験責任者は「今回の議会通知は、最近の2-3の事案を受けてのことではなく、過去数年間に顕在化したニューズを受けての施策である」と説明しする一方で、「ホワイトサンズ演習場で試験を行っていたタイミングとぴったり」とレイセオンのSullivan氏は語っている
●ただDunford統合参謀本部議長が20日に、特定の装備品名には触れずに、米国は中東地域の防空を強化すると発言し、「サウジと協議中」と言及したところである。

●PHASER systemが対処可能な目標は、重量30㎏以下、飛行高度1200-3500フィート、速度100-200ノットで、RQ-11 Ravenや大きくてもScanEagleクラスの無人機である
●従って、あくまでPHASER systemは多層防御アプローチの一翼を担うもので、ビーム兵器を含む多様な防御手段を組み合わせて無人機脅威に対処する構想の一部である

●PHASER systemは高出力マイクロ波を使用し、熱で対象を破壊するのではなく、莫大なエネルギーを相手システムの回路にぶつけて破壊または機能停止にする原理であり、対象への効果は瞬時に発生(マイクロセカンド以内の時間)する。従ってレーザー兵器のように一定時間目標に照射し続ける必要がないストロボのような照射でOK
実際の運用では、まずレーダーで探知し、次にカメラやたセンサーで確認し、それら追尾情報を基にPHASER systemが目標無人機を指向しで高出力マイクロ波を発射する流れとなる

PHASER3.jpg米空軍要員は既に同システムの教育訓練を受け、演習で実際に無人機を撃墜しており、この結果が同システムを購入して海外の実環境でアセスメント試験を行う決断に導いた
●Sullivan氏は「既に複数の回転翼と固定翼の無人機の同時撃墜に成功している」と説明し、「過去にはマイクロ波兵器がその広い指向性から、無差別に味方にも損害を与える事もあったが、無人機の群れ使用が一般的となってきた現代においては、物理的兵器のように弾切れがないことと共に、マイクロ波のこの欠点が強みとなっている」とも言及している

無人機対策以外にも、だれも公には語らないPHASERの使用法があるようで、それは防御目的での使用法だとSullivan氏は認めたが、「秘密事項であるため、無人機対処以外の応用については語ることを許されていないので言及できない」と語った
●Sullivan氏は死屍累々の指向性エネルギー兵器開発を振り返りつつ、最近のエレクトロニクス技術やsolid-stateレーザー技術の発達により、エネルギー兵器の実用化が近づいてきたと語り、2021年に艦艇運用を予定する米海軍の Laser Weapon System (LaWs)や、2022年の運用開始を予定する米陸軍のhigh-energy laser weaponを例に挙げた
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PHASER systemがどの程度の指向性があり、周囲への影響をどの程度局限できるのかが気になります

ネットで検索すると、動画を含めた様々な説明資料が見つかりますので、ご興味のある方はどうぞ。でも、日本のように人口が密集している国や地域での使用にはリスクがあるような気がします

2016年公開の試験映像:当時は陸軍が試験を


エネルギー兵器関連
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
「F-15用自己防御レーザー試験」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-04
「エネルギー兵器での国際協力」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-27
「エネルギー兵器とMD」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「レーザーは米海軍が先行」[→]https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24

「無人機に弾道ミサイル追尾レーザー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-17-1
「私は楽観主義だ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23
「レーザーにはまだ長い道が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-18
「AC-130に20年までにレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06

国防省高官がレーザーに慎重姿勢
「国防次官がレーザー兵器に冷水」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12
「米空軍大将も慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24

夢見ていた頃
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1
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米空軍電子戦EW改革の方向性を語る [米空軍]

1月にまとめたEWレビューを副参謀総長が語る
4月に紹介したACC司令官とは少し異なる切り口で

Wilson3.jpg18日、Stephen Wilson米空軍副参謀総長がDefense-News単独インタビューで2018年から特別チーム(ECCT:Enterprise Capability Collaboration Team)が1年がかりで取り組み今年1月にまとまった「電子戦レビュー」が示す方向性について語りました。

同レビューの内容については公になっている部分は少なく、今年4月16日に空軍戦闘コマンド(ACC)司令官が講演で内容に触れたところ、記者団から追加情報を求める声が殺到して大騒ぎになりましたが、米空軍側は講演内容以外については答えられないとの姿勢で終始一貫しており、それ以後、追加情報を耳にすることはありませんでした

EW.jpg「電子戦レビュー」は同副参謀総長が2017年に打ち出し、2018年にDavid Gaedecke准将をトップとする前述ECCTを組織して検討させ、2019年1月に結果が米空軍首脳に報告されたもので、米空軍の電子戦取り組みは「あまりにも縦割りで進められ、顕在化している新たな脅威に対応できていない」と厳しく指摘している模様です

米空軍に限らず、末尾添付の電子戦関連記事をご覧いただければわかるように、911以降、米軍が対テロ作戦に20年近く集中し、約20年間にわたり電子戦を片隅に追いやって過ごした結果、今になってロシアや中国の電子戦能力に直面して「米軍全体が呆然と立ちすくんでいる」状態にあります

そんな中での米空軍電子戦レビューに関する貴重なお話ですので、まず4月のACC司令官講演の概要から復習し、後にWilson米空軍副参謀総長インタビューをご紹介します

復習:ACC司令官Holms大将の講演(4月16日)
ECCTが提言した主要な3点や関連事項について説明。提言を実現する具体的な時期や要領等については言及せず

●まず電磁優位確保の責任者を空軍司令部におく
Holmes2.jpg---空軍司令部内に「EMS Superiority Directorate」を設け、将官をトップにつけ、空軍内のEWの優先投資事項を見極めさせる
---担当範囲には、無人デコイのMALD、F-15CやF-15E搭載のEPAWSS電子戦システム、ALQ-131電子自己防御装置、光電赤外線センサーF-35のEOTS、先進スナイパーポッド等々があるが、サイバー攻撃やサイバーモニターシステムが所掌範囲かは不明

●次に、バラバラな電磁優位活動を一つの組織に融合
---米空軍内の電子戦取り組みをまとめるマルチドメイン組織を設置し、ソフト開発などを集約する。本組織は迅速な脅威への対応を実現するため、「machine-to-machine」認知連鎖や適応をリアルタイムで追及し、勝利のため連携した「分散型システム:distributed systems」を敵電子優位システムを撃破するために展開する

●更に、米空軍内の電子線魂を再活性化
---米空軍司令部の電子戦部門長を先頭にして、米空軍全体に電磁優位魂(EMS warrior ethos)を醸成するため、空軍全体を対象とした教育訓練プログラムを構築する。なぜなら情報作戦は電子戦担当者だけでなく米空軍全兵士が関わる戦いだからである
---米空軍のEWに関わっていた者は、10年以上にわたり、米空軍の電子線活動が縦割りで、中露の脅威に対し不適切な状態にあると不満を訴えてきた

●その他、電子専用機で1999年に退役したEF-117のような機体を導入するつもりはないと述べ、「米空軍は今、分散型システム(distributed systems)を追及している」と説明。一方で、突破型の電子攻撃プラットフォームを将来導入する可能性について否定せず、次世代制空のためのシステム検討の中で吟味されると表現

Wilson米空軍副参謀総長インタビュー
●空軍司令部A5/8内に専任「Directorate」設置
Wilson4.jpg---空軍内でバラバラに行われている検討をまとめるため、米空軍司令部A5/8内に専任「Electronic warfare Directorate」設置し、トップにECCTを率いたGaedecke准将をつける
---この新部署は、空軍内メジャーコマンドと他軍種との連携を図り、空軍内と米軍全体のEW事業の整合を図る。装備品の視点だけでなく、各階層に対し今後必要になる膨大な規模と量の教育訓練を統制し、クロスドメイン作戦に欠かせない電磁スペクトラム戦を支配する基礎を確立する

●EWシステムを柔軟ソフト更新対応に変革
---新たなEW脅威が特定されたなら、迅速に対応ソフトウェアーを再プログラムして対応できるようなEWシステムへの更新を推進する。めまぐるしく変化する脅威に対応するハードをここに作成していたのでは敵に対応できないので、迅速なソフト更新で対処可能な体制とシステムを構築する
---認知EW(cognitive EW)の世界に入ろうとしている。AIを搭載したEWシステムで、敵の出方を前線で把握して、前例の無い敵EWにも迅速に柔軟に対応する体制を目指す

●ソフト重視姿勢を多様な取り組みに拡大
EW2.jpg---米空軍は上述の「software-centric approach」を拡大して多用なEW計画と連携して推進
---依然として多様な部署の多様な関係者がバラバラにEWに取り組んでおり、これらの相互連携を増すことで大きな改善効果が期待出来る。互いに学んで、より大きな学びを。
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4月のACC司令官講演と重複する部分も多いのですが、少し表現を変えたり、視点を変えて表現する副参謀総長の表現から「電子戦レビュー」を想像していただきましょう

約20年間、電子戦を真剣に扱ってこなかったとなると、少尉に任官してから大佐に昇進するまで電子戦に真摯に取り組んでこなかったということで、基本的な知識や行動パターンも身に付いていない根本的なレベルの問題です

ですから「教育訓練」を多様な階層レベルで大規模に行う必要があるということです。教える人もいないのが現状かもしれません。

EW関連の記事
アクセス数が多い記事ばかりです。是非チェックを!
「ACC司令官が語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-19
「米空軍がサイバーとISRとEwを統合」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3
「電子戦検討の状況は?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-13
「エスコート方を早期導入へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27

「米空軍電子戦を荒野から」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1
「ステルス機VS電子戦攻撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12

「EA-18Gで空軍の電子戦を担う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-08
「空軍用に海軍電子戦機が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-09
「緊縮耐乏の電子戦部隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-29-1
「MALDが作戦可能体制に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-29-1

ロシアの電子戦に驚愕の米軍
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

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細部不明も米海軍FA-18は稼働率8割達成 [Joint・統合参謀本部]

中東で酷使のFA-18:にわかに信じがたいが
昨年10月には5割だったのに・・・
外部アドバイザー招き民間機の手法導入とか

FA-18.jpg24日、米海軍が当時のマティス国防長官が昨年指示した「主要な戦闘機稼働率を2019年度末までに8割にせよ」に関し期限の9月30日を前にしてFA-18E/FとEA-18Gが達成したと発表しました

米海軍が公式声明で「稼働率8割」と発表するのですから嘘はないのでしょうが、2018年10月時点で「稼働率5割」だったものが、そんなに簡単に本当に8割を達成できるのか???との疑念たっぷりにmilitary.com記事を読んだのですが、その理由が良くわかりません

米海軍幹部は「Naval Sustainment System(NSS)-Aviation program」を導入し、「軍需産業外から専門家:expertise of the outside industry」を招聘し、米海軍が一丸となって取り組んだと説明していますが、疑い深いまんぐーすは「老朽化機体を早期破棄して計算の母数を減らしたのでは疑惑」を払しょくできていません

とりあえず24日付military.com記事によれば
Miller.jpg米海軍航空戦力チーフのDeWolfe H. Miller中将米海軍発表で、「FA-18E/FとEA-18Gはそれぞれ稼働率8割以上の基準を満たし、本声明発表時点で、それぞれ343機と95機が即時実戦展開可能なPMAI(primary mission aircraft inventory)としてカウントできる状態にある」と述べている
●そして「この状態は、一年にわたる米海軍航空関係者の取り組みの結果であり、Naval Sustainment System-Aviation programに関係者が真摯に取り組んだ成果である」と説明し、「米海軍兵士と文民職員、そして軍需産業関係者の信じがたいほどの努力を誇りに思う」と述べている

●また「過去約10年間に渡り、FA-18稼働機数は250-260機だったが、今ではFA-18を320機を稼働態勢で維持できるまでに改善し、目標であったFA-18を341機とEA-18Gを93機を達成できるまでになった」と述べ、FA-18を電子戦機に改良したEA-18Gも本プログラムの対象で改善されたと説明した
●「Naval Sustainment Systemの開発と遂行で、過去10年間見ることが出来なかったような稼働機数の数字を目にすることが出来るようになった」、「この数字は信じがたいもので、関係者の改善への情熱が湧きあがった結果である」とまで表現している

●「Naval Sustainment System-Aviation program」が従来と異なる点について同中将は、「国防省高官レベルのサポートの基、軍需産業以外から専門家を招いてNSSプログラムに投入したこと」を挙げ、「これにより国防省の政策や規則の変更要求も可能だとの信じることが出来た」、「民間航空業界で証明済みのbest practicesシステムを、国防省の完全な支援を得て導入推進できた」と説明した

Miller2.jpg●Miller中将は、投入された専門家はFA-18関連の「fleet readiness centers」をまず訪れ、米海軍関係者と共に維持整備システムの非効率を洗い出していった
大西洋地域米海軍航空司令官であるRoy Kelley少将は、最近は機体の稼働率が低いことから訓練演習を含めた飛行が十分でなかったが、2019年度はここ数年で初めて予算で割り当てられた飛行時間を完全に使用することが出来たと、現場部隊の即応体制向上に稼働率アップが大きく寄与していると説明した

2015年時点で米海軍は545機のFA-18E/F型機を保有していたが、その当時の稼働機数(PMAI)は記録がない
2018年10月のCSISでの討議でMiller中将は、FA-18の稼働率は約5割で約260機が稼働機数だと述べ、稼働率達成には少なくとも341機の稼働機数が必要だと説明していた

米海軍関係者は、この維持整備施策NSSを今後も推進し、高い即応態勢維持に努めると語ったが、マティス前長官が求めていたF-35の稼働率8割については触れなかった
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EA-18G.jpg2018年10月にFA-18の稼働率5割で稼働機数約260機だとすると、保有機数約520機で、2015年の保有機545機から老朽減耗で減少したと理解できますが、「稼働率8割達成には少なくとも341機の稼働機数が必要」と言われると、保有機が約463機となり、母数が良くわかりません

それにしても、「国防省高官レベルのサポートの基、軍需産業以外から専門家を招いてNSSプログラムに投入したこと」で稼働率が劇的に改善したなら、米空軍でも考えるべきでしょう。

米空軍はF-22はステルス塗装維持のために維持整備に時間が必要F-35は任務所用が多くて維持整備に時間が掛けられない・・・などの理由で稼働率8割が達成できないと言い訳していましたが、米海軍方式は導入できないのでしょうか? 

また、民間航空会社の手法とはどのような手法でしょうか? とっても気になります

主要戦闘機の稼働率を8割にせよ関連記事
「米空軍はF-16のみ達成可能」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-09-06
「戦闘機稼働率8割への課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-09
「マティス国防長官が指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-11

「B-1爆撃機の稼働機一桁の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-05
「2Bソフト機は稼働率4割台」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-1
「2/3が飛行不能FA-18の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-07
「世界中のF-35稼働率は5割」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-3
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太平洋空軍基地の防御困難性を語る [Joint・統合参謀本部]

専門家「中国軍が太平洋空軍戦力を殲滅するのは簡単」
米軍既存の防空能力では対応不可能

Brown.jpg20日、米太平洋空軍司令官Charles Brown大将がAFA航空宇宙サイバー会議で講演し中国軍の攻撃から航空戦力を守るため西太平洋の各地に戦力を分散させても、現状では中国の多様な攻撃兵器から航空基地や所在戦力を守る能力はなく、また米軍内部の任務分担(roles and missions)も再検討する必要があると語りました

米軍は太平洋軍作戦エリアで、「作戦面で打たれ強く、地理的に分散し、政治的に持続可能な」体制をスローガンに、少なくとも5年以上取り組んでおり、「地理的分散」のためグアム周辺のサイパンやテニアンなどの活用訓練を進め、最近ではエスパー国防長官が新たな基地基盤の設置にまで言及しています

Andersen AFB.jpg一方で政治的な持続可能性」は中国への経済依存が進む西太平洋地域で難しい状況にあり、「作戦面での打たれ強さ」は、グアム島米軍事施設の抗たん性強化等が行われていますが、中国の弾道・巡航ミサイルや長距離爆撃機、超超音速兵器開発などの急速な発達により、「弱さ」が増している状況にあります

更に言えば、サウジの石油施設がドローンやミサイルで「あっさり」大被害を受けた事例を見るまでもなく、大規模で複雑な地上システムに依存する航空戦力や航空基地は、残念ながら広大な中国大陸に配備され増強されている兵器を前に無力感が増しているのが現実です

20日付米空軍協会web記事によれば
●20日、AFA航空宇宙サイバー会議に参加中のBroun太平洋空軍司令官は記者団に、今後アジア太平洋地域で戦力を分散させて運用する方向にあるが、分散先の設備不十分な簡易基地の防衛について米軍全体で任務分担を再調整する必要があると語った
●そして、小型無人機から弾道・巡航ミサイル、更には超超音速兵器にまで至る様々な脅威から基地を守る部隊を保有する必要があると訴え、このための議論を全米軍を巻き込んで始まっており、特に同様の兵力分散モデルを考えている海兵隊が防空能力に関する問題意識が高いと説明した

Key West agreement.jpg●また、現在の米軍内の任務分担は1947年の「Key West agreement」に基づくもので、陸軍が地上部隊の防御を、空軍が経空脅威を担うことになっているが、当時は巡航ミサイルも無人機も脅威の想定に含まれてはいないと現状にも触れた
●同会議の別のパネル討議では、太平洋陸軍幹部と米空軍司令部幹部にミッチェル研究所のMark Gunzinger氏が登壇し、長距離精密誘導兵器に対しては聖域はなく、防御は米本土においても必要で、防御手段を保有する必要を指摘した

Gunzinger.jpg●陸軍と空軍幹部は、「Key West agreement」を過去のものとして再構築し、現在はまだ存在しない統合の指揮統制要領をもっと積極的に議論する必要があると述べた
Gunzinger氏は中国軍がアジア太平洋の米空軍基地を攻撃して戦力の大部分を殲滅するのは容易なことだと断言し、少数の基地に戦力を集中している点や、戦力を分散する準備も出来ていない点を厳しく指摘した

●また同氏は、米陸軍には米空軍基地を防御する能力はないことから、米空軍がその役割を担って備えるべきだと主張し、Brown司令官も米陸軍現有の防空システムはTHAADにしてもペトリにしても大きく重いことから分散先への空輸が容易ではなく、展開しても設置に時間を要すると問題点を指摘した
high-powered microwave.jpg●これらを踏まえBrown太平洋軍司令官は、輸送に負担のない「高出力microwave」や他のシステム導入を検討し、我々の考え方を変える必要があると述べた

一方で同司令官は新防空システムの導入検討の予定について言及を避け、「全ては予算の問題だ」と空軍首脳部で予算は配分に関する議論が行われていると説明した
●そして太平洋空軍は米空軍研究所AFRLと協力し、空軍「Warfighting Integration Center」の如何に基地防衛を改革していくかとの検討の今後について検討していると述べた
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DF-21.jpgBrown太平洋軍司令官から、「maybe high-powered microwave or other systems that don’t need a lot of lift」との新兵器への言及がありましたが、そんなものが近未来に実現できるとは考えにくく米空軍が戦闘機や戦闘爆撃機や爆撃機に拘り続ける限り解決法はないような気がしてなりません

空母を中心に据える米海軍にも言えることかもしれませんが、このままでは、「ゆで蛙」になってしまいますよ・・・・

自衛隊の皆様に置かれましては、上記の米空軍幹部や専門家の話を契機として、真摯な気持ちで戦闘機中心の防衛力整備について改めて再考いただきたいと思います

「アジア太平洋地域で基地増設を検討中」
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-28

マルチドメインの関連
「対中国で米軍配置再検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1
「射程1000㎞の砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「RIMPACで日米陸軍が訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16

「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

A2AD中国軍事力関連の記事
「空母キラーDF-26の発射映像」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-31
「射程1800㎞の砲を米陸軍に」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「DIAが中国軍事力レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-17

「H-20初飛行間近?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-13
「イメージ映像:中国軍島嶼占領」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-06
「驚異の対艦ミサイルYJ-18」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-30

米空軍の西太平洋対策
「担当空軍司令官がACEを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「岩田元陸幕長の発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09 

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13

グアム島の抗たん化対策
「被害復旧部隊を沖縄から避難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-28-1
「テニアンをグアムの代替に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16-1
「グアム施設強化等の現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-1

「グアムの抗たん性強化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30-1
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1
「グアム基地を強固に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12

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明暗:空中給油機MQ-25初飛行KC-46実戦投入3年無理 [Joint・統合参謀本部]

初の空母艦載無人機MQ-25は地上で初飛行
一方KC-46重大不具合の解決策未だ見えず

共にボーイング社が担当する2つの明暗分かれる米海軍と米空軍の空中給油機事業についてご紹介いたします。

MQ-25 first2.jpg明るい方は、米海軍が当初運用開始予定だった2024年を前倒しするよう現場にはっぱをかけている、初の空母艦載無人機で空中給油機となるMQ-25で、19日にセントルイスの空港から初のテスト飛行を行い、約2時間の遠隔操縦フライトに成功したとのニュースです

暗い方は、2年以上運用開始が遅れている米空軍の最重要事業の一つKC-46空中給油機に関してで、運用を担当する米空軍輸送コマンド司令官が辛辣にボーイングを批判し「8か月経過しても課題解決につながる対策を提示してこない」、「ボーイングへの圧力を強める」と表現し、少なくとも3年は実戦に投入できないと怒りを爆発させたにゅーすです

KC-46A.jpgKC-46の4つの重要不具合の中で特に司令官が問題視したのは、給油装置操作員が使用する相手機と給油ブームを確認する映像システムRVSで、太陽光などの光の確度によっては相手機が良く確認できないとか、相手機との距離感がうまくつかめずに相手機に給油ブームをぶつける等の不具合が出ている件です

気になったのはボーイング社の幹部の発言「システムの完成レベルの認識において、両サイドに誤りがある(Maybe we had some fault on both sides defining what the system should look like)」で、ボーイング側が開き直る恐れを感じさせる点です

明るいMQ-25初飛行の話題から
(19日付Defense-News記事)
●19日付のボーイング社発表によれば、同日同社が米空軍とプロトタイプ開発契約を結んでいる4機のMQ-25の内の1機が、セントルイスのMidAmerica St. Louis空港から約2時間の初飛行に予定通り成功した
MQ-25 first.jpg●ボーイング社は発表で、「当該機は自律的に飛行場内をタクシーして離陸し、事前にプログラムされたルートを予定通り飛行して、航空機の基本飛行性能と地上管制システムの能力が問題ないことを証明した」、「米海軍との協力により、初の空母艦載無人機としてのプロセスを」と述べている

●同機は機種選定の上、2018年8月にボーイング社提案が採用され、5年後の2024年に初期運用態勢を達成する前提で、約900億円で設計&開発&最初のプロトタイプ4機製造を行う契約が結ばれています。また現時点で総経費約1.5兆円で72機を導入する想定となってる
●具体的な要求事項は明らかなっていませんが、同機は空母から500nm離れた場所で、14000ポンドの給油が可能な性能が求められ、同機導入によりFA-18の戦闘行動半径は現在の約450nmから追加で300~400nm延伸し、700nmを超えると言われる

暗い話題KC-46の実戦投入はす少なくとも3年後?
(18日付米空軍協会web記事)
Miller Maryanne.jpg●18日、米空軍輸送コマンド司令官のMaryanne Miller大将(女性)は、AFA航空宇宙サイバー会議の会場で記者団に対し、「米空軍が機体受領を始めてから8か月が経過するが、ボーイング社から全ての要求事項を満たすような解決法の提示を一度も受けていない。今後2か月程度の間に解決策が提示されると期待している」、「米空軍としてボーイングへのプレッシャーを強めていく」と述べ、
●一方で今後少なくとも3年程度はKC-46の実戦投入が難しいと判断されることから、「現有のKC-135空中給油機の退役時期を延期してもらうよう米空軍と協議している」と同司令官は述べ、米輸送コマンド司令官も「KC-46の遅れにより、28機程度のKC-135の退役時期を遅らせる必要がある」とコメントしている​

●Miller司令官は、ボーイングが満たせていない9項目の要求事項があり、米空軍との協力で内7項目については進展があったが、残り2項目、RVSの操作員用モニターの鮮明さ(視力)と距離感把握の2点で解決策が見えず、給油ブームと相手機の距離感把握を困難にしていると現状を訴えた
Miller Maryanne2.jpg●そして同司令官は「ボーイング側は9項目すべてを満たす必要性を認識している」と述べ、全てを満たすまで解決をボーイングに求めていくとして「プレッシャーを強める」と記者団に明言した

ボーイングのKC-46営業上級責任者のMike Hefer氏は、「どの様にRVSを改修して要求事項を満たすかに関し、米空軍から青信号を得た。前進する方向は明確になった」と語る一方で、「システムの完成レベルの定義において、両サイドに誤りがある(Maybe we had some fault on both sides defining what the system should look like)」とも表現しており
●最近発覚した貨物拘束装置のアンロック問題についてHefer氏は、実際に貨物が機内で移動するような事態にはなっていないと強調し、暫定措置として貨物をストラップで固定して貨物搭載試験が可能な状態にKC-46を戻し、その間に根本原因を突き止めて恒久対策を明らかにすることを米空軍に提案していると説明した

●ボーイングから納入されたKC-46機体内に部品や工具やごみが残置されていた問題についてMiller司令官は、「最近納入を受けた19機目の機体で問題がないことが確認できた。対策が講じられたと確信している」と述べる一方で、「国防省と米空軍で引き続き監視していく」と述べた
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KC-46 RVS.jpgKC-46も、3度も機種選定をやり直したゴタゴタの後は、開発フェーズで途中まで順調でした。それが開発後半になってトラブル続きです

余計な心配であることを祈りますが、MQ-25には順調な道を歩んでいただきたいものです

ともにボーイングが担っているというだけで不安要素いっぱいの2つの空中給油機ですが、対中国を想定した場合、極めて重要な役割を担うアセットですので、秋の青空に向かって祈りを深めてまいりましょう・・・

MQ-25関連の記事
「2019年6月の状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-04
「MQ-25もボーイングに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-01-1
「NG社が撤退の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-29-1
「提案要求書を発出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-13
「MQ-25でFA-18活動が倍に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-03
「MQ-25のステルス性は後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-27 

「CBARSの名称はMQ-25Aに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-17
「UCLASSはCBARSへ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-02
「UCLASS選定延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-05-1

「米海軍の組織防衛で混乱」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-01
「国防省がRFPに待った!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-12

KC-46関連の記事
「貨物ロックの新たな重大不具合」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-09-12
「海外売り込みに必死なボーイング」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-22-1
「米空軍2度目の受領拒否」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-1
「機体受領再開も不信感・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「米空軍がKC-46受け入れ中断」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-3
「不具合付きの初号機受領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-2
「7機種目の対象機を認定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-08-3

「初号機納入が更に遅れ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20
「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1
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今年は日本参加なし宇宙演習Schriever Wargame [サイバーと宇宙]

新たな指揮統制部署常設の必要性を教訓に
豪NZ加英も参加で欧州に焦点を
昨年日本は初参加も今年は姿見えず・・・

Schriever 20193.jpg17日付米空軍協会web記事は、新設の米宇宙コマンド司令官がAFA航空宇宙サイバー会議で、終了したばかりの「Schriever Wargame 2019」について語った内容について概要を紹介しています

今回で13回目の同演習で、米空軍宇宙コマンドが引っ張る形の統合演習ですが、近年同盟国等の参加に加え、米国防省以外の組織であるNASA、国土安全保障省、運輸省、商務省、国務省などが参加する政府機関を挙げての演習で、過去にはロケット打ち上げを担う民間企業の参加もあった演習です

宇宙で起こることを理解するには多様なソースから情報を収集しないと状況把握(SA)が出来ないし、宇宙での出来事の影響はネットを含む通信や交通機関を始め、人々の日常生活全般に影響を与えることから、多方面の関係者が頭を一つにして対応を練る必要があるとの問題認識からこのような発展を遂げたのが「Schriever Wargame」です

事柄の性格上具体的な細部が語られることはありませんが、宇宙軍創設に向けた動きが始まった中での同演習ですので、フォローしておきます

17日付米空軍協会web記事によれば
Raymond.jpg9月13日までの2週間に渡り、アラバマ州のマックスウェル空軍基地(米空軍大学所在地)で開催された第13回の「Schriever Wargame」の様子と成果について、新設の米宇宙コマンド司令官Jay Raymond大将は、加州のVandenberg空軍基地内の「Combined Space Operations Center」内に指揮統制専門の小組織(specialized command-and-control cell)を設ける必要があるとの教訓を得たと米空軍協会機関紙の取材に17日語った
●同大将は演習の概要について、「2029年を想定し、マルチドメイン作戦で戦略目的を達成しようとする高等な敵に対し、米国と同盟国が如何に協力して対応すべきかを訓練した」、「米軍欧州コマンドや米空軍宇宙コマンドに焦点を当てたシナリオを設定にした」と説明した。

●また空軍宇宙コマンドのリリースでは、「シナリオにはフル帯域の多様な脅威が含まれ、マルチドメイン作戦環境下で、文民と軍人の指導者や計画担当者や宇宙アセット運用者、更にはそのアセットに挑戦するものである」と説明している
●演習参加者は、軍用だけでなく商用や他政府機関の手段を総動員し、宇宙アセットを守るためにあらゆる手法を投入することを検討した。またその過程で情報やアセットの秘匿度や重要性を考慮しつつ、宇宙における責任ある行動を議論しつつ、宇宙からのアクションや宇宙での行動がエスカレーションにつながるか否かを見極めつつ、演習を進めた

Schriever 20192.jpg●同大将は、「もっとも大きな教訓は、宇宙においてコアリションやパートナー国が如何に重要かを再認識できたことである」、「同盟国等の重要性については、これまでも同演習で学んできたが、より協力になりつつあることも明らかにすることができた。そしてまた、我々の焦点は紛争抑止にあるべきとの点も明確になった」とも表現した
豪NZ加英や米国の27もの関連組織から約350名が参加した演習であったが、宇宙軍の創設に向け最近整理された米宇宙コマンドとNROの関係を試す意味でも重要な訓練となった

●同大将は最近、紛争が激しさを増す状態になったなら、NROは宇宙コマンド司令官の配下に入り、一元指揮の元で情報コミュニティーの衛星や宇宙アセット防御に尽くすことになると述べているが、具体的にどのような状況でその形態に移行するかには触れなかった
●「新たな合意の枠組みは、紛争の流れの中で統一された作戦行動を行うことを目的としている」、「合意は公式な指揮権の移譲でも、指揮関係の変更でもないが、NROと宇宙コマンドのより強力なパートナーシップを形作るものである」と説明した
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Schriever 2019.jpg米軍宇宙組織と情報コミュニティーの元締めであるNROの仕切りが、宇宙軍成功の大きな鍵となっているようですが、抽象的なRaymond米宇宙コマンド司令官の言葉でご紹介しました

このような米国内でも新たな仕切りも演習のテーマであったことから、日本には参加の機会がなかったのかもしれません。断ったのか、招待されなかったのかは不明ですが、今回が欧州中心のシナリオで、昨年10月はアジア太平洋が舞台だったことも関係あるかもしれません

昨年10月には、自衛官だけでなく、防衛省、外務省、内閣府、内閣衛星情報センター、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などのメンバーがチームとして参加したのですから大きな転機でした。ちなみに豪NZ加英は昨年も今年もしっかり参加していますが・・・

Schriever Wargame関連の記事
「日本初参加の2018年の同演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-25
「米国が日本を誘う・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-3
「日本は不参加:米軍宇宙サイバー演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-14-1
「欧州を主戦場に大規模演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-11
「Schriever Wargame」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19
「サイバーと宇宙演習の教訓1」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「サイバーと宇宙演習の教訓2」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02

宇宙での戦いに備え
「同盟国にも訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-2
「アジア太平洋での宇宙作戦が困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-10-1
「米高官が不審な露衛星を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-15

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「戦後初」米空軍トップがベトナム訪問 [安全保障全般]

戦後44年を経て、父が戦った地を訪問
1995年に国交回復も空軍トップ訪問は戦後初
今の米軍首脳の親はベトナム経験者なんだと気づきました

Gold  Vietnam.jpg12日付米空軍公式web記事が、8月19日の週に米空軍参謀総長としてベトナム戦争後に初めてベトナムを訪問したGoldfein大将と、同行しているBrown太平洋空軍司令官の「感慨深い」同地訪問を伝えています

もちろん米空軍トップとしては少なくとも44年ぶりのベトナム訪問で、またトランプ大統領が強く問題視している米ベトナム貿易不均衡で両国間がギクシャクな中での訪問のですので、それだけで十分「感慨深い」のですが、特に二人の米空軍首脳にとっては、父親が命をかけて戦い、その様子を父親から聞いて育った世代として特に印象深いものだったと記事は紹介しています

父親が操縦するF-4や輸送機から見たであろう通称「Red River Valley」や、故マケイン上院議員らが収容され拷問を受けた「Hanoi Hilton」など、父親世代が敵として戦った北ベトナムの様子を目の当たりにしつつ、40年以上を経て変化した国際環境をベトナム軍関係者と共通の認識に立って語る機会を得るたことは、米空軍大将の二人にとって「感慨深い」ものであったろうと思います

具体的な軍事協力の話が紹介されているわけではありませんが現在の米軍首脳にとっての「ベトナム」を考えさせる記事ですので、少し「センチメンタル・ジャーニー」ですがご紹介しておきます。

12日付米空軍公式web記事によれば
Gold  Vietnam2.jpg●フィリピンからベトナムに移動する機内からGoldfein空軍参謀総長は、彼の父親がF-4戦闘機の操縦席から見たと聞いている泥で赤く染まった大きな川の流れ「Red River Valley」を見つめていた。
●参謀総長に同行していたBrown太平洋空軍司令官も、彼の父が特殊情報作戦兵や輸送部隊兵として2度にわたり戦ったベトナムの様子を感慨深く上空から眺めつつ、まだ若かった父親が戦場に向かった当時の思いに思考をめぐらせていた

●Goldfein参謀総長世代には、特に米軍兵士第2世代にとってベトナムは、戦後44年が経過し、国交回復25年を迎えても特別な思いが伴う場所である。また戦後初の米空軍トップ訪問を、ベトナム側がどのように考えているかも両大将は予想できなかった
●しかし心配は杞憂だった。参謀総長は「本当に誠実で暖かなもてなしだった」と語り、太平洋空軍司令官は「ベトナム戦争時の捕虜の扱いとは正反対の歓迎をベトナム側から受けた」と表現した。

Gold  Vietnam3.jpg2007年にWTOに加盟したベトナムは、米国にとって16番目の貿易相手国であり、インドネシア、マレーシアと並び地域情勢を考える上での重要な「strategic partnership」国であり、国際法や国際秩序を尊重し、航行の自由など共通の原則や価値観を共有する国である
●軍事分野では、ベトナム人民軍空軍(Vietnam People’s Air Force)などと毎年複数の演習や訓練を行い、2国間や多国間の相互運用性強化に努めているところである

●参謀総長はベトナム側との会談を振り返り、「戦いあった戦士の第2世代である我々は、その後の時の流れをかみ締めつつ、両国関係について語り合った」「両国の貿易不均衡が関係発展を一時足踏みさせることはあるが、中国の地域への影響力拡大は、両国の戦略的利害関係を接近させる」と表現し、
●「ベトナム戦闘時の負の遺産であるダイオキシン除去の問題についても率直に意見交換し、また、遺骨帰還への取り組みについても話し合った」と触れ、Brown大将は「先立つフィリピン訪問も含め、国家の安全保障を確保する取り組みがますますwhole-of-government体制で求められることを認識した」と語った

Hanoi Hilton.jpg●一連の会談の合間に両大将は、宿泊するホテルからもその悪名高かった赤い屋根が見えるかつての捕虜収容所「Hanoi Hilton」を訪れた
●今回の海外訪問中に捕虜経験者の回想録を読んでいる参謀総長は「故マケイン議員らが過ごした独房の前に立つと、超現実的な感覚に囚われ心動かされる」、太平洋空軍司令官は「私はほんの数分コンクリート製の独房を経験しただけだが、劣悪な環境下で何年もの時間を過ごした米軍捕虜がいたことを考えると、身の引き締まる思いだ」と述べた
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一つの疑問は訪問からなぜ3週間も経過した9月12日に、この記事が米空軍公式webサイトに掲載されたかです。べトナム側の了解を得る必要があったのでしょうか? 両大将の行動は、8月16-22日の間に、フィリピン、ベトナム、豪州を巡るもので、なぜ掲載までにこれほど時間が必要だったのか不明です。

Trump1.jpg記事には「trade imbalance could temporarily stall progress」との表現があり、まさかホワイトハウスまでお伺いを立ててから掲載したのか?・・・なんて邪推してしまいます

先日ご紹介した「軍事クーデター」関連の人権問題で関係停滞のタイではありませんが、南シナ海をとりまく重要パートナーであるべきはずのベトナム(それも貿易額16番目)と貿易不均衡で揉めている場合でしょうか?

ベトナムと米国関係
「戦争後初:米空母がベトナム訪問へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-24
「米国武器フル解禁発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-21
「2015年カーター長官訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-02
「武器輸出緩和発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-13-2
「ベトナムへ武器輸出解禁か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-28

「50年ぶり米軍トップが訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-16
「ベトナムと中国と関係改善の兆し?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-28

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故障で空母なしの空母戦闘群が任務出撃 [Joint・統合参謀本部]

空母トルーマンが電気系統故障で帯同できず
代替空母派遣の余裕なく、巡洋艦らのみで(中東へ)出撃

Truman.jpg13日付Military.comは、空母トルーマン空母戦闘群が「空母なし」4隻のミサイル搭載艦のみを中心とした戦力で任務に出発したと報じています

空母トルーマンについては、今年3月には寿命を約25年残して早期退役させ、高額な中間解体修理(原子炉への燃料補給を含む)経費を次期空母Ford級建造に転用するとの案を米海軍と国防省でまとめて予算案として提出しましたが、議会やホワイトハウスの大反対を受けて引き続き任務継続となった空母です

また、7月にイラン人の血が流れるKavon Hakimzadeh大佐が艦長に就任したことでも話題を集めた空母で、(中東!?)派遣への準備が完了したと艦長自らが語るインタビュー記事をご紹介したところでしたが、8月に電気系統のトラブルが発覚し、米海軍が全力で修理に当っているようですが、このたびの出撃には間に合わなかったようです

これまでであれば、少し遅れて予備の空母戦闘群を派遣するとか、任務遂行中の空母群の任務期間を延長するとかで対応していたのですが、予算不足から部品調達の遅れや艦艇の老朽化、海外派遣の長期化などが重なり、艦艇修理・整備の滞留・遅延が慢性化かつ悪化しており、「全く余裕などない」状況が今回の空母なし派遣の背景にあります

13日付Military.com記事によれば
空母トルーマン空母戦闘群が東海岸の各地から任務地に向け出航を開始したが、通常とは異なり、一つ欠けているものがある・・・空母トルーマン自体である
Industrial Base2.jpg空母戦闘群(CSG)から空母が抜けたことで、SAG(surface action group)として出撃した戦闘群を構成するのは、ミサイル巡洋艦Normandyと、ミサイル駆逐艦Lassen, Forrest ShermanとFarragutの計4隻である

●同空母群が所属する第2艦隊司令官のAndrew Lewis中将は、この任務派遣は米海軍の柔軟な戦力運用能力を示すものだとの声明を出しているが、米海軍協会とのインタビューでは、当初「ユニーク」な展開と報じられた今回の編成を「不運なこと」と語っている
●しかし同時に同中将は「誰もこのような編成での派遣を望んでいない」、「しかし現実の世界の中で対応を望まれている。我々は大きな戦力を保有しており、保有戦力は時間通りに派遣される。そして空母トルーマンが復帰した時には更に強化される」と苦しい説明をしている

●同中将はまた、ちなみにSAGが東海岸から派遣されるのは13年ぶりだとも付け加えた

米軍のリーダーたちは、地域戦闘コマンド司令官からの要求に応えるだけの空母を準備できていないと認識しており、春にはJoseph Votel中央軍司令官が議会で証言し、米海軍が埋められないギャップは同盟国で埋め合わせてほしいと関係国に要請していると述べている
Industrial Base.jpg●過去に同様の空母の故障等が発生した場合、予備空母を代替として派遣していたが、東海岸にある米海軍用の艦艇修理・補修施設はこなし切れていない仕事が山済みとなっており、予備を準備できるような状態にはない

●この艦艇維持整備の問題は、新型の空母Fordの任務展開までも遅らせる事態となっている
空母トルーマンなしで派遣されたSAG指揮官であるJennifer Couture大佐は、「我々のSAGを構成する艦艇群は任務遂行の準備が出来ており、多様な任務要請に同盟国などと協力して対応可能で、世界中の安全保障と海洋安定に貢献できる」と語った
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ソ連崩壊とその後に起こった平和の配当議論と「戦力調達の空白」が生んだ現有装備品の高齢化、また近年の強制削減に起因する国防予算の実質減少、更に装備品の価格高騰による維持整備費へのしわ寄せ等々により、米軍装備の稼働率低下は目を覆うばかりです

米空軍も同様で、50機以上保有するB-1爆撃機の稼動機数が「一桁」台だとか、時の国防長官が指示した主要戦闘機4機種の稼働率8割確保を、1年後の今年9月に達成できるのが僅か1機種(恐らくF-22とF-35とFA-18は5割以下だと思います)だとか・・・深刻な状況です

加えて20年近く延々と続く実戦の継続で疲弊する装備品、トランプの独断でこちらも老朽化が激しい米軍施設の米軍施設更新費を削ってメキシコとの壁に充当など、現場の士気をそぐ政治判断も追い討ちをかけ、米軍の土台は揺らいでいます・・・対中国どころではない気がします・・・

空母トルーマン関連
「空母トルーマン艦長に元亡命イラン人」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-15
「空母トルーマンの25年早期退役案で紛糾」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-29
「空母関連の映像4つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-20

艦艇修理の大問題
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09
「優秀な横須賀修理施設」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-05
「軍需産業レポート2019」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-28
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-1

空軍装備品の稼働率急降下
「稼働率8割達成はF-16のみ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-09-06
「戦闘機稼働率8割への課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-09
「マティス国防長官が指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-11
「B-1爆撃機の稼働機一桁の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-05
「2Bソフト機は稼働率4割台」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-1
「2/3が飛行不能FA-18の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-07

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タイが中国製着上陸部隊輸送艦を契約 [安全保障全般]

中国製戦車や装甲車を保有し、潜水艦も購入
タイの軍事クーデター(2014年)で米国が冷たくするから

Type 071E.jpg12日付Defense-News記事によれば、9日北京で、左写真が示す最新の中国製着上陸部隊用輸送艦(amphibious transport)購入契約の署名式が行われタイ海軍が25000トンの最新鋭艦艇を中国から購入することになったようです

購入が決まったのはType 071Eで、中国海軍が既に6隻保有し、更に2隻を建造中のType 071(Yuzhao LPD)の輸出バージョンで、中国軍webサイトは「輸出用E型は、Type 071に最新の能力向上を複数施したもので、総合力でType 071よりも強力で技術的にも進んでいる」と紹介しているようです

米国からすれば、タイは常にアジアの重要な同盟国として名前が挙がる国で、シャングリラダイアログの米国防長官演説でも必ずタイに言及する習わしとなっていますが、冒頭でご紹介したように中国との地理的近接性や経済関係からタイも中国を無視できず、既に中国製の戦車や装甲車を導入し、潜水艦まで購入することになっています

またタイ軍と中国軍は定期的に「Falcon Strike exercises」演習を行っており、最近も中国空軍のJ-10戦闘機とAWACSがタイ北部の空軍基地に展開し、タイ海空軍との演習を行ったところです

12日付Defense-News記事によれば
Type 071E 3.jpgタイ海軍がいつ同艦艇を入手できるのか等についてタイ海軍は明らかにしていないが、タイの地元紙は以前、建造には3年を要すると報じていた。価格については1500億円から2400億円との数字が報道されているが、明らかになっていない
●Type 071Eの原型であるType 071は、全長約200m、排水量2500トンで、ボバークラフト式の兵員輸送艇を4隻と、2隻の強襲揚陸艇を装備し、ヘリ4機を格納輸送でき、着上陸兵士6-800名を輸送できる性能を持っているので、 Type 071Eは少なくとも同等以上の能力を持つと考えられる

●タイは、同艦艇の2つのヘリパッド等を活用し、同艦艇をHADR(人道支援と災害救援)に使用し、有事には着上陸作戦に使用すると説明している
タイが現在保有する同種の輸送艦艇は、全長約140mのシンガポール製艦艇で、2012年から運用を開始している。ちなみに同海軍はヘリ空母HTMS Chakri Naruebetも保有して運用している
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Type 071E 2.jpg背景には2014年のタイ軍事クーデター以降、オバマ政権下の米国がタイに冷たくしたことも潮目となり、2015年7月に中国製潜水艦3隻(2000トン級のType 039A Yuan級攻撃潜水艦)購入の発表(最終決定は2016年末)し、タイが全方位外交(米国離れ)に向かっている現実があります。

タイ北部のウタパオ海軍飛行場に米軍が、災害対処用の物資を事前集積したいと申し出たら、タイ側が断ったとの話が数年前ありました。兵器の集積ではなく、災害対処資材でもこの塩対応です・・・

また、日本企業の進出が盛んなタイですが、日本の外食産業が進出しても、華僑のコミュニティー力に押され、中華系の外食チェーンに負けが続いているとの報道も見た覚えがあります

防衛大学校には早くからタイの留学生が入港しており、確かタイ海軍司令官になった人材も出ているのですが、今の留学生当たりの話を聞くと、中国と米国の比重は「50対50」とはっきり答えるようで、「日本ほど単純ではない」と説明してくれるようです。

トランプ政権の姿勢は把握していませんが、ちょっと巻き返さないと・・・南シナ海に面するタイですらこの状況ですから・・・

米タイ関係を考える記事
「タイ軍が中国製潜水艦に続き戦車を追加購入へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-05
「2015年7月の中国潜水艦導入発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-13
「米タイ軍事関係50年ぶりの仕切り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-16

南シナ海関連記事
「初のASEAN海軍との共同訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-09-03
「F-35搭載艦が初の南シナ海航行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-07
「2020年米陸軍が南シナ海機動展開演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-30
「中国空母で夜間離発着訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-01

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KC-46に貨物ロックの新たな重大不具合発覚 [米空軍]

貨物や乗客を乗せるな指示発令
貨物を止めるロックが飛行中に解除事案が続出

KC-46A 2.jpg11日付Defense-=News等複数の軍事メディアが、数々の不具合で試験や本格運用開始が2年以上遅れている米空軍の次期空中給油機KC-46に新たな最高レベル(Category 1)の不具合が発覚し、「同機に貨物や乗客を乗せるな」指示が出たと報じています

ちなみにKC-46Aは空中給油機ですが、空いたスペースは貨物や人員の輸送に活用できるようになっています

米空軍は現在までに18機を受領していますが、現時点でも3つの最高ランク不具合を抱える状態の機体でIOT&E(initial operational test and evaluation)の準備試験を継続中です。

ちなみに、3つの重大不具合の解決には数年必要と言われており、最高レベル(Category 1)の不具合を抱えたまま、なし崩し的に運用を開始するイメージで事が進んでいる状態にあります

KC-46A 3.jpg今年に入ってからも、機体組み立て作業時に「残置」された部品や工具や布や包装紙などが機体内部から次々見つかり、米空軍が3月と4月に2回も「機体引き取り拒否」しましたが、一向に「機内放置異物」がなくなる気配はなく、また試験を進める必要から全機体の完全チャックには時間がかかると空軍も妥協せざるを得ない状況です。

このように、ボーイングへの米空軍の不信感は高まるばかりの中、新たに「Category 1」不具合が確認されたことで、再び試験に遅れが出る恐れが囁かれ始めました。日本も購入する重要な空中給油機ですので、フォローしておきます

11日付Defense-=News記事によれば
今秋から開始される予定のIOT&E(initial operational test and evaluation)に先立つ諸確認のため、海外運航試験を行っていた1機のKC-46Aで、搭載貨物を飛行中に動かないよう固定する拘束装置のロックが、飛行中に解除されアンロック状態になる不具合が複数個所で確認された
●これを重大な不具合事項と判断した米空軍は、「Category 1」レベルの不具合と評価し、KC-46Aの貨物室に貨物や人員を搭載して輸送することを禁止するとの指示を発出した

KC-46A.jpg搭載貨物拘束装置がアンロック状態になったケースでも、当該貨物のすべてのロックが解除されたわけではなく、複数の一部のロックが解除されただけで実際に貨物が機内を移動したりするには至らなかったが、飛行前の貨物搭載作業時に複数の搭乗員で貨物固定作業とロック状態確認を行ったにもかかわらず、複数のロックが解除状態になる事象が確認されたことから重大事象と評価された
●このようなアンロック事例が確認されたのは当該機1機のみで他のKC-46Aではこれまで確認されていないが、仮にロック解除で飛行中に貨物や人員座席が機内を動くようなことになれば、人員のけがや機体の損傷、更に機体重量バランスの急激な変化で飛行自体が危険にさらされる恐れがある

米空軍輸送コマンド報道官は「ボーイング社と協力しつつ原因究明と対策に取り組んでいるが、問題解決まで、我々は乗員と機体の安全を冒すことはできない」と述べ、貨物や人員の輸送禁止指示を説明した
●また「問題が発生した複数の区間のフライトで、搭乗員は完全に拘束装置を貨物にセットし、ロックして十分に確認行為を行ったことが確認されており、にもかかわらず飛行中にアンロック状態に複数の装置がなったことを重大視している」とも説明した

●米空軍は、当該アンロック事象は当該機体のみで確認された事象だが、他の機体でこの問題が発生する可能性を否定できないとして、KC-46A全機への指示を出すことにした
●同報道官は、「KC-46Aは空中給油と共に、患者空輸と空中での治療を行うaeromedical evacuation任務を担っており、患者は輸送用の担架やベッドが安心して固定できないと、求められる任務を果たせない」とも表現した

●ボーイング社は本問題の発生を認め、「米空軍と協力しつつ、本事象の根本原因を究明している。搭乗員と機体の安全は最優先事項であり、原因が究明されたなら、直ちに対策を実行する」と声明を発表している

現在残っている他の3つの「Category 1」不具合
KC-46A RVS.jpg●給油ブーム操作員が、給油ブームの操作や相手機の状態を確認する映像表示システム(RVS)に、太陽の方向など特定の条件下で、操作員に誤解を与えたり操作を誤る可能性がある。ボーイングは包括的なハードとソフト両面での改修に同意しているが、米空軍は問題解決に3-4年は必要だろうとみている

上記RVSの不具合から、給油用ブームで相手機の機体表面に「ひっかき傷」を生じさせるケースが多数発生し、特にステルス機のステルス塗装への影響が問題となっている
●米空軍が後出しで要求事項に加えたものでボーイングの責任ではないが、A-10に給油ブームを差し込む勢いが不足していることから、約600億円を追加投資してブームにアクチュエーターを追加する
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今年5月の記事で米空軍以外に日本しか買い手がいないKC-46の海外売込みにボーイングが必死だとご紹介しましたが、再びの逆風ということでしょうか・・・

KC-46A.jpgしばし様子見ですが、航空自衛隊の皆様もご注意ください不断開けない翼の中とか、機内の空間とか・・・日本にとって空中給油機は重要ですから

KC-46関連の記事
「海外売り込みに必死なボーイング」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-22-1
「米空軍2度目の受領拒否」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-1
「機体受領再開も不信感・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「米空軍がKC-46受け入れ中断」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-3
「不具合付きの初号機受領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-2
「7機種目の対象機を認定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-08-3

「初号機納入が更に遅れ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20
「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1
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英戦闘機開発にイタリアも参加へ [安全保障全般]

追記:10日夕刻、英と伊が共同開発の政府間合意文書に署名
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戦闘機Tempest開発にスウェーデンに続いて
独仏スペイン連合に対抗し第6世代機機開発
DSEIの会場で発表の模様  

Tempest UK.jpg10日付Defense-Newsは、10日から13日の間、ロンドン郊外で開催されている兵器見本市DSEI(Defence and Security Equipment International)で英国が2018年7月に開発開始を打ち出した第6世代機Tempest開発計画に、スウェーデンに続いてイタリア参加が発表されると報じています。英伊の政治関係が微妙なため発表のタイミングが微妙になっているとも伝えていますが・・・

欧州では、2018年4月に独仏が第6世代機の共同開発を発表して他の参画国を募集し始め、スペインが参加を表明していますが、3か月遅れの2018年7月に英国国防相が負けじとTempest開発計画を発表し、今年の7月18日にスウェーデンが英国との共同開発に署名しているところです。また、日本やトルコにも英国からお誘いが来ているようです

ちなみに独仏スペイン連合はFCAS(Future Combat Air System)との呼び名の元、Airbus社とDassault社がリードする形となっており、英国側チームはBAEシステムズやロールスロイス、仏のMBDAそしてSaabなど欧州企業が参加することになっており、欧州を2分する形となっています

英戦闘機産業の年間売上高は60億ポンド超で、過去10年間の防衛輸出額の8割以上を占める重要分野であり、EU離脱で英製造業の先行きに不透明感が漂うなか、重点分野として独仏に負けられない戦いですが、併せて英空軍の主力「ユーロファイター・タイフーン」の後継として、2035年(2040年との報道も)までに実戦配備を目指し、計画の初期段階として20億ポンド(約3000億円)を投入するとしています

第6世代機Tempestのイメージは(各種報道より)
Tempest UK2.jpgTempestは無人飛行が可能になる模様だ。さらに、スウォーミング(群れ飛行)技術によって複数のドローンを制御するほか、レーザーに代表されるような指向性エネルギー兵器を装備する。
指向性エネルギー兵器への大容量の電力供給を実現すべく、ロールスロイスが革新的なガスタービンを開発するという報道も一部に出ている。
複雑なデータネットワークとクラウド技術を活用し、兵器とセンサーを結びつけるコンセプトも打ち出されている
(ちなみに、仏独スペイン連合の次世代機もドローンの遠隔操作機能を搭載予定と報道されており、米空軍の検討方向と非常に似ています)

10日付Defense-News記事によればイタリアは
10日午後の段階で、関係高官は、英国とイタリア政府との間でどのような形式の発表がなされるのか不透明であると語り、英伊間の波風の多い政治情勢が不透明感の原因だとコメントしている
●恐らくDSEI期間中に、両国の国防相が共同声明文書をイベントを開催して発表することになるだろうとも同高官は述べている

Tempest UK3.jpg国家間の協力関係確立はまだ成立していないが、既に企業レベルでは協力が始まっており、例えばイタリアのLeonardo社はセンサーやアビオニクス分野で協力することを昨年発表している。仮に国家間合意が成立した場合、この企業協力が変化するかは不明である
関係者の間では、イタリアの関与具合がスウェーデンを超えるのではないかとの噂もあり、DSEIでどこまで明らかのなるか注視されている

7月の記者会見でSaab社のCEOは、「我が社にとって、短期的なTempest計画参加の目的は、我が社製グリペン戦闘機の能力向上に役立てる事だ」、「現代の戦闘機は75%ソフトウェアで成り立っており、ハードの変更なく能力向上が可能だ」と表現していた
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欧州の第6世代機開発については2018年4月に独仏の計画をご紹介して以来放置していたのでイタリアの行く先は不確かながら、Tempest開発計画を切り口に現状をご紹介しました

2035~2040年頃に、戦闘機がどの様な位置づけを維持しているのかはなはだ疑問ではありますが、英国のEU離脱が避けられそうもない混乱にEUが突き進む中、「独仏スペイン」 VS「 英伊スウェーデン」の戦いが勃発しているということです

いずれの陣営も、本当に開発資金がねん出できるのか?・・・との点が本当の関心事かと思われますが、とりあえずご紹介まで・・・

欧州の戦闘機関連話題
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
「独の戦闘機選定:F-35除外も核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28

米空軍の次世代制空機検討PCA
「NGAD予算確保に空軍苦闘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-21
「PCA価格はF-35の3倍?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15
「秋に戦闘機ロードマップを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-22
「PCA検討状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-12
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08

「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「F-35にアムラーム追加搭載検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-28

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静止軌道を移動する怪しげなロシア衛星を巡って [サイバーと宇宙]

衛星運用に関する国際規範がない中での疑心暗鬼
他国の静止衛星を渡り歩くように接近する露衛星への懸念

Russian Luch.jpg3日付C4ISRnetが、2014年9月にロシアが打ち上げた静止衛星軌道を渡り歩いて他国の衛星に接近する奇妙な衛星「Luch(Olymp)」を取り上げ少ない情報や専門家の意見からその用途を推測し、あわせてこのロシア衛星が提起する宇宙に関する規範が存在しない問題を紹介しています

ロシアだけでなく、米国も中国も同様の能力を持つ衛星を宇宙空間に保持しているようですが、米国は怪しげなロシア衛星のような行動はせず、中国衛星は中国の他の衛星にのみ接近していることから問題視されていないようですが、潜在的な能力は各国保有しているようです

怪しげな動きのロシア衛星については昨年8月と10月に、米国務省の軍縮担当次官補が軍縮会議や国連本部の会合で取り上げて問題視していましたが、その際取り上げられた衛星と同じものなのかはっきりしません。(国務次官補指摘の衛星は2017年に打ち上げとのことですから、異なるかもしれません)

「再び同高官が指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-26
「米国務省高官が怪しげな露衛星を指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-15

衛星通信会社Intelsatの衛星への接近事例が多いとの指摘があり、通信情報を傍受(盗む)しているのでは・・・との懸念があるようですが、良くわからないし、調べるすべもないのが現状の様ですが、知識不足の宇宙のことですので、とりあえずご紹介しておきます

3日付C4ISRnet記事によれば
Russian Luch2.jpg2014年9月に打ち上げられたロシアの秘密衛星「Luch(Olymp)」は、静止衛星軌道にある他の衛星に目的不明の接近を繰り返しており、衛星運用関係者の間で懸念が広まっている
静止衛星は、互いに干渉や衝突を避けるため、相互にそれなりの間隔をとって打ち上げされるが、ロシアはこの慣行を無視し、他の商用や政府所有の衛星軌道をわらり歩くような行動をしている

●このロシア衛星は、理論的には接近した衛星から発信される情報や当該衛星に向けて地上や他衛星から発信された情報を傍受することが可能であるが、地上から22000マイルも離れた場所での出来事であり、公開情報も少なく、何が行われているかは判然としない
衛星情報を収集して公表している「TS Kelso of CelesTrak社」の8月27日付レポートによれば、同ロシア衛星は現在、Intelsat17衛星に接近している

同社は通常衛星の軌道上の変化を追っているが、衛星「Luch(Olymp)」に関してはいつも軌道間を渡り歩いているので、その動きが止まった時に注意喚起を行っている。他の専門機関のレポートによれば、同ロシア衛星は過去5年間に17回異なった経度の静止軌道に移動している
●ロシア政府は衛星「Luch(Olymp)」について何の情報も公開せず、将来計画についても関係者は議論しない姿勢を取っている。西側の衛星企業がロシア側に問いただしても、意味のある返答は得られない状態が続いている

CSISのTodd Harrison航空宇宙プロジェクト部長は
Todd Harrison.jpg米国でさえも、上空4万km以上にある衛星「Luch(Olymp)」については、最先端の望遠鏡から得られる情報も限られており、継続的にその行動を監視することで情報を得るしかない
●これまでの観測からは、静止軌道上の衛星を渡り歩いており、何らかの衛星チェックやデータ収集と見られる。他の衛星の接近観察やデータ収集が、直ちに攻撃的とか不安定化を招くわけではない。しかしロシアのような国が行っていることには当然懸念がある

唯一のあり得そうな対策は通信の暗号化である地上や他の衛星との全ての通信を暗号化することである。通信を暗号化せずに安心しているようではだめ
ただ当該ロシア衛星の動きをみていると、より大きな地政学的動きが背景にあるようにも思えるが、何の連絡もなく他の衛星に接近することは大きな災害へのレシピとも言え、非常に懸念している

Secure World基金のBrian Weeden計画部長は
Weeden.jpg●米国から見て中露の動きは、情報収集と宇宙状況把握の2つの活動に興味を持っていることを示しているようにみえる。当該ロシア衛星に関しては、電子情報収集を行っていると推測している
●また衛星「Luch(Olymp)」は、打ち上げ当初は何か月も一か所の軌道に滞在していたが、最近は移動間隔が短くなっている

接近対象の衛星の種別から見ると、全ての接近事例を把握しているわけではないが、衛星通信大手のIntelsat社の衛星に接近している事例が多い。本件に関しIntelsat社からコメントは得られなかった

●いずれにしても、地上から遠く離れたところでの出来事で、各衛星の運用者が全く同じデータを元に衛星の位置把握を行っているわけではないので、衛星が接近することは不測の事態を招くリスクを格段に高める
別の大きな問題は、現存する法的枠組みでは、ロシアにこのような行動を止めさせることが困難である。このような衛星活動に適応できる広く共有された規範が国際的に存在しないのだ

Russian Luch3.jpg宇宙において、どの様な行動が正常か? どのような行動なら責任ある行動と言えるのか? 他の衛星に接近しすぎとは、どのくらい近づいた場合なのか? などなど判断基準がないのだ
衛星「Luch(Olymp)」のような行動を縛る枠組みがない背景の一つは、ロシアだけがこのような能力の保有者ではないためである。米国は「Geosynchronous Space Situational Awareness Program」の中で、Luch(Olymp)」のような行動が可能な衛星を保有しているし、中国も同様であるが、中国の場合は自国の衛星にのみ接近しており話題になっていないだけである
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上記のロシア衛星と関係はありませんが、欧州宇宙機関(ESA)が3日、ESAの地球観測衛星が米企業スペースXの通信衛星と衝突する恐れが生じたため、高度を変えて緊急回避させたと発表しており、宇宙での衛星近接は「そこにある危機」になりつつあるようです

上記事案でのスペースXの衛星は、1万2千基で地球全域をカバーする計画の第1弾として5月に打ち上げた60基のうちの一つで、同様の衛星群構想は他の企業も構想しており、宇宙が混雑して人の操作による回避が追いつかなくなる事態が懸念されているようです。

ついでにESAは、「人工知能(AI)技術などを使って自動で回避させる新たな仕組みが必要だ」としているらしいです。

米国務次官補が国連等で指摘した露衛星の不審な動き
「再び同高官が指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-26
「米国務省高官が怪しげな露衛星を指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-15 

宇宙アセットへの脅威分析
「別のレポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-15
「CSISレポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-14-3

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結局稼働率8割はF-16だけが達成見込み [米空軍]

マティス前国防長官の思いだったのに気合入らず?
米空軍作戦部長の言い訳をお聞きください
(海軍FA-18は恐らく5割を大きく割り込み

F-22Hawaii3.jpg4日、米空軍作戦部長のMark Kelly中将が講演し、昨年10月に当時のマティス国防長官から指示された「主要戦闘機の稼働率を8割以上に回復させよ。2019年度末(2019年9月末)までに」について、米空軍で達成可能なのはF-16だけだと明らかにしました

マティス国防長官が指示した主要戦闘機とは、空軍のF-16、F-22、F-35、そして海軍のFA-18で、2017年の各機種の稼働率は以下の通りでした
・ F-16C 786機 70%
・ FA-18 546機 約半分
・ F-22  187機 49%
・ F-35A 119機 54%

昨年12月にも同作戦部長は本件ついて語り
Kelly2.jpg●米空軍は必要な資源投入を行っている。既に整備員の不足解消には目途が立っている。一方で機体で部品確保が難しく、現状では必要数の半分の部品確保しかできていない
●また、ステルス機のF-22やF-35は、整備で機体内部の作業を行った後に、機体表面のステルスコーティングを「切り貼り」する必要があり、整備時間が長くなって稼働率を悪化させている。「通常6-7時間を機体表面の処理のために要している」と語り、稼働率アップの難しさを強調した

F-16に関しては、既に相当改善できており、目標の81%に近いレベルにきている。しかしステルス機については多くの整備所用を抱えていると認めた
整備員不足については、数の面では対応ができつつあるが、新しい整備員の技量向上には時間が必要であり、現時点では整備員数の増加が整備時間短縮に直接結びついていないと認めた

逆に、新しい整備員の現場での教育や監督にマンアワーととられ、短期的には負担となっている。1日12時間勤務のような状態がまだ続いている。整備員たちの滅私奉公(service before self)精神に依存しているのが現状だと認識している

9月5日付Military.com記事によれば同中将は
Kelly.jpg●Mark Kelly作戦部長は「2019 Defense News Conference」で、前国防長官が定めた稼働率基準を9月末までに満たせる主要戦闘機はF-16のみであると述べ、「正規軍のF-16は既に8割以上あり、州軍機も8割を達成できる見込みである」と説明した
●しかしF-22とF-35に関しては、それぞれの機種の異なる理由で8割の基準を満たすことはできないと述べ、F-22はステルス性維持のために多大な整備労力を要しており、F-35は依然として部隊立ち上げ段階であるが、中東への展開など前線ニーズや訓練参加ニーズが高い状態が続き、稼働率を上げるのが困難となっている

●昨年10月に当時のマティス長官から指示を受けて以来、米空軍は様々な観点から稼働率を左右する要因を分析し改善を図り、その過程で問題の所在や将来成すべきことを多く学んだ
●その上で極論を述べれば、主要戦闘機の飛行を停止すれば稼働率を上昇することが出来るのだが、現在の情勢ではそれは許されず、より多く飛行することを求められているのが現実である

8月にHolms戦闘コマンド司令官はF-22に関し
Holmes.jpgF-22のステルス機体表面処理施設を増やせば稼働率向上に貢献するだろうが、昨年のハリケーンでF-22要員教育部隊のフロリダ州Tyndall基地が壊滅的なダメージを受け、操縦や整備教育が継続できなくなっているほか、ステルス機体表面処理が出来なくなったのが大きな痛手

Tyndall基地のF-22は、分散してアラスカ、ハワイ、バージニア州Langleyの基地にとりあえず移動させたが、米議会はLangley基地に教育部隊を移動させよとしている。しかしLangley基地には十分なステルス機体表面処理施設がない点が問題である
●そこで米空軍はジョージア州の契約企業の施設を利用したり、ニューメキシコ州のHollomanの施設を再開することを検討している
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稼働率8割というのは高い目標で、当初から専門家で可能だと主張していた人はいませんでした

この指示が出た際、一部の専門家からは、稼働率は「使用可能機数と保有機数の比率」だから故障の多い老朽化機体を破棄して計算上の稼働率を上げるぐらいしか手段はない・・・との「裏技・奥の手」案も出ていたくらいです

しかしマティス長官は恐らく、米空軍や海軍内には数々の無駄があり、これを主要戦力の稼働率アップという誰にでも理解しやすい目的を示して是正させ、資源の再配分に結びつけることを促したのだと理解しています

F-35 clear.jpg結果としては、米空軍を支配しているはずの戦闘機族でさえも「辣腕」を発揮することが出来ず、資源配分のシェアに手を出せず、ほとんど実質的な改革に着手できなかったと言うことでしょう

もちろん、整備員の量と質の急激な改善や、ステルス表面処理施設の緊急増設は可能な選択肢ではありませんが、稼働率アップを目指す過程で「問題の所在や将来成すべきことを多く学んだ」との言葉を信じ、エスパー国防長官が新たに挑む決意をした「旧思考の事業中断検討」と「将来のための事業への再投資」に取り組んでいただきたいと思います

「エスパー長官がスクラップ&ビルドに強い決意」
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-31

「主要戦闘機の稼働率を8割にせよ」関連記事
「戦闘機稼働率8割への課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-09
「マティス国防長官が指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-11

「B-1爆撃機の稼働機一桁の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-05
「2Bソフト機は稼働率4割台」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-1
「2/3が飛行不能FA-18の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-07
「世界中のF-35稼働率は5割」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-3
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米国防省AI研究開発は2020年に突破口を [米国防省高官]

2019年から予算倍増の勢いで成果を追求
具体的な研究対象のAI応用分野をあげて説明

Shanahan J.jpg8月30日、2018年6月に米国防省が設立した「JAIC:Joint Artificial Intelligence Center」のセンター長を務めるJack Shanahan中将が記者会見で必要な人材や予算がある程度整う2020年度には、同センターとして初めて複数の「技術的なbreakthrough」を米軍にもたらすことが出来るだろうと楽観的に語り、実際に取り組んでいる具体的分野を紹介しました

2019年1月からセンター長を務めている同中将ですが、それ以前は、無人機等から大量に提供される映像情報(full-motion video)の分析にAI記述を導入する「Project Maven」の責任者として、ディープラーニング技術の活用をリードしていたということです

中国が膨大な資金と人材を投入し、併せて西側先進国やIT企業から最新AI技術を手段を選ばず入手する中米国内には「負けつつある」との強烈な危機感があるようですが、同センター長は米議会で予算審議が行われている最中でもあるため、明るい未来を語っています

31日付C4ISRnetのweb記事によれば
Shanahan J2.jpg●同センター長は、米国防省が大きな規模でAI技術を導入して既存技術と融合することを加速するため、人材確保や予算確保に努めていると述べ、単なる製品提供だけでなく、戦略計画、政策分析プランニング、情報分野などなどにも貢献していきたいと抱負を語った
●また、「昨年の今頃は、ほんの一握りの人のほかは、予算も恒久的に使用できる場所も無かったし、2019年度予算も今年の3月に入ってやっと使用可能な体制が整ったような状況だった」、「しかし今では、60名の研究員等や施設を確保し、既にいくつかのAI関連技術を国防省内に提供しつつある」と現在位置を説明した

●そして「まだ未確定ながら、しっかりとした2020年度予算要求も行うことが出来た」、「2019年度予算は約100億円であったが、2020年度予算には約290億円を要求した」、「2020年度予算はホワイトハウスにより230億円まで絞られ、現在議会では180億円から230億円の間で議論されている」と状況を語った
●ただ来年度の予算案に振れ幅がある中でも同センター長は、「米国防省内へのAI技術提供という点では、2020年がブレークスルーの年になるだろうと楽観視している」と明確に述べた

そして同センターが取り組むAI技術開発を挙げ、
Predictive maintenance for the H-60ヘリ
●洪水と山火事を念頭にしたHADR
Cyber sensemaking(焦点はevent detection, user activity monitoring network mapping)
Information operations
●Intelligent business automation

上記の他にも、2020年度の優先事項として「AIによる maneuver and fires」を挙げ、戦闘行為に直結する
operations intelligence fusion,
●joint all domain command and control,
●accelerated sensor to shooter timelines,
autonomous and swarming systems,
target development and operations center workflows.

Artificial Inte.jpg●同センター長は、上記の中の2-3個のプロジェクトで、10月以降の半年のうちに何らかの進展が期待できると述べた。
●また「プロトタイプレベルやひらめきレベルのAI技術を、大きな規模で迅速に現場で生かせるようにするにはまだ長い道のりがあるが、急ぐ必要なあるという点で、私の問題認識は明確だ」とも強調した
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ドメイン融合を見据えた情報処理から指揮統制の迅速化、無人システムの制御、センサーからシューターへの情報分析・伝達の迅速化などに加え、異常気象がもたらす災害対処HADRにも応用が検討されているようです

Dunford.jpgそれでも予算規模が300億円にも満たないとのこと・・・。大丈夫なんでしょうか? 

間もなく退役するダンフォード統合参謀本部議長が、AI研究機関を中国に設けるグーグルに怒りを爆発させていましたが、そんな側面も含め、このお話だけでは、あまり喜べない気がするのですが・・・

「Dunford統参議長がグーグルに怒り」
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-23

AI関連の記事
「人工知能シミュレータ提案を募集」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-26
「AI技術を昆虫に学べ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-1
「DARPAが新AIプロジェクトを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-11-1
「中露がAI覇権を狙っている」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28
「2025年にAIで中国に負ける」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-04
「DARPA:4つの重視事項」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08
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エスパー長官が無駄装備計画中断の決意を [エスパー国防長官]

全ての国防長官が挑んで多くが道半ばで頓挫も
大統領選を前にして2021年度予算で可能なのか?
全ての困難を知りつつ、あえて挑む長官に敬意を表し

Esper3.jpg27日、エスパー国防長官が軍需産業関連団体で講演し、将来の米軍に必要な装備を前線兵士に届けるため、古いコンセプトに基づき続いている事業や装備計画を見直すことに自らが先頭に立って取り組むと明言し、陸軍長官時代に200もの諸計画や装備開発を見直し、より重要な分野に約2兆8000億円を振り向けた手腕を米国防省全体に応用する意気込みを明らかにしました

歴代の国防長官が何らかの形でこのような「レビュー」に取り組み、多くが利害絡みの議員や軍需産業やホワイトハウスなどに阻まれてきた「死屍累々」の茨の道ですが、陸軍長官就任前にレイセオン社のチーフロビイストとして「魑魅魍魎:ちみもうりょう」の世界を知り尽くしたエスパー長官が、「言うは易し、行なうは難し」を知りながら取り組みを決意したその「意気込みと男気」に敬意を表し、ご紹介したいと思います

まぁしかし、エスパー長官の発言に対する軍事メディア記事には、多方面の専門から「極めて難しい」、「忘れたほうが良い」、「関係方面からの激怒や議論紛糾を念頭に」などの悲観的なコメントが並んでいますが、「長いプロセスが必要だろう。でも将来の戦場のために」と語るエスパー国防長官の思いを伝えずにはおれません・・

28日付Defense-News記事によれば
Esper.jpg●27日、エスパー国防長官はSENEDIA会議で講演し、国防省全体で2021年度予算に向けて取り組み始めた各種装備関連プログラム見直しについて、その対象は「fourth estate(約30個存在する国防省は以下の・・Agency)」だけでなく、対中路に備えた将来への投資を阻害している旧態然としたプログラムからの資金抽出も含むものとすると決意を語った
●同長官は「fourth estateを取り掛かりとして、将来技術へ投資する資金を見つけ出す使命を私は帯びている」、「私の使命は、既に将来的な価値を失ってしまっているプログラムを見つけ、ほかの緊要で戦闘能力向上に通じる能力強化へ資金を流れを変えることである」と語った

●米国防省は8月2日に、2021年度予算編成に向け、国家防衛戦略NDSの遂行に向けた業務精査を行うため、国防省全体で取り組む「開発計画プログラム見直し」を指示する文書を臨時副長官名で発出したが、この文書はエスパー長官の強い思いから出された文書だといわれている
●同文書は「どんな改革のアイディアも、細かすぎるとか、大胆すぎるとか、異論がありすぎると言って検討を避けることはない。既存事業の必要性を精査し、その資源配分を見直し、他の必要な分野に振り向け可能な資源を見つけ出すことに焦点を当てる」と目的等を示している

Esper4.jpg●また同長官は「国防省勤務のプロたちは、次の戦いで勝利を収め、わが国の兵士を無事帰還させることだけに動機付けられている」、「軍需産業界には現存システムの改良による前進を目指す傾向があるが、将来のニーズ対応して適応していく行くことが、軍需産業基盤の強靭さを築く一番の道である」と取り組みの意義を説明した

エスパー長官は、陸軍長官時代に200もの諸計画を見直し、約2.8兆円の予算を他の優先度の高い事業に振り向ける方向性を打ち出したが、その際、陸軍省内で夜遅くまで関係者を集めて「night court」と呼ばれた検討会を重ねたことで知られている。
●記者団から、今回の見直しは大規模な「night court」と呼んでよいかと問われた長官は、「皆さんがそう呼びたいのなら、私はかまわないよ」と答え、「見直しは長い道のりになる。私は今、毎週90~120分間を本件の公式な会議に当てており、これを繰り返し続けて道を切り開きたい」と決意を語った

米メディアはこの長官の意欲を斜に構えて報じ
複数の専門家の意見を紹介
Esper6.jpg●エスパー氏が陸軍長官時代に方向性を決めたはずの見直しも、既に議会の抵抗にあっている。例えばCH-47ヘリの能力向上計画の停止を陸軍は決断したが、2020年度予算の議会審議の過程で、フィラデルフィア工場の雇用削減が地元議員を反対工作に走らせ、下院は陸軍が不要と考える予算計上の方向に動いている
大統領選を控え、政権の誰もが軍事プログラムを中断して有権者の支持を失うようなことをしたくないし、有意義な「見直し」を遂行したなら、大統領選挙後まで待つ必要がある

●エスパー長官は、細かな削減・再配分による些細な効率化には成功するかもしれないが、仮に主要な兵器計画の中断や、基地の閉鎖や、利権の排除を長官が望んでいるなら、諦めたほうが良いと思う。企業側は自社関連のプロジェクト中止の動きが見えたら、すぐに議員を動かして阻止に動き出すからである
「fourth estate」関連の見直しは既にかなりの部分で手をつけられており、今から合理化や経費削減に結び付けられる範囲は限定的ではないか

Esper5.jpg大統領選挙の結果にもよるが、2021年はエスパー長官にとって大きな決断をする最後で最高のチャンスとなる可能性はある。当時のゲーツ国防長官はF-22生産を中止させることに成功したが、ロッキードに対してはF-35計画を守るためだと説明し、早い段階からその考えを共有することでその道を開いており、参考になるかもしれない
●(強引な手法だが、)当時のラムズフェルド国防長官がコスト削減のため基地の再編閉鎖に成功した際は、関連法案に賛成しなければ、何の基地閉鎖準備や対策を行なうことなしに、一方的に基地閉鎖を行なうと議員達を脅して強行した経緯がある
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マティス国防長官という大きな存在が去った後で、Shanahan氏のゴタゴタがあり、エスパー氏にとっては突然舞い込んできたような国防長官のポストです。

それでもそれが運命なんだと受け止め、最善を尽くそうとするその姿勢に頭が下がる思いです

ふと、2015年3月に当時のデンプシー統合参謀本部議長が母港の高校生に語った言葉を思い出しました
Dempsey-brook.jpg歴史や時代の流れが、人を見つけ使命を与えるのだと思います(history will find a person)
●もし君たちが、自身の人生設計を自分のものとして、何者にも影響を受けずに実行していけると考えていたなら、それは冗談にもならない間違いです

歴史や時代の流れが人を見つけ使命を与えるのだから、君たちや君たちの家族や国家の代わりにそれを与えるのだから、君たちは備えていなければなりません
「Keep the doors open. Don’t do anything stupid to close them」--常に扉を開けておきなさい。それを閉ざすような馬鹿なことをしないように

「夢」追求のメッセージだけでなく
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-21

「Esper長官の略歴」
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-20

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戦闘機ボスが将来制空投資削減を危惧 [米空軍]

米議会で来年度予算半減を検討とか
議会は開発リスクや効果を懸念

Holmes.jpg8月20日、軍事記者団との朝食会で講演した米空軍戦闘機族のボスである空軍戦闘コマンドACC司令官のMike Holmes大将は次世代制空機(PCA:penetrating counter air)を含むより広範な将来制空確保のための「family of systems」開発予算に関し、議会関係者に重要性を説明して回っているが、疑問疑念を払しょくしきれていないと語りました

2020年度予算案を巡る議会審議が佳境を迎える中での動きですが、2030年代末までに空軍が形にしたいPCAだけでなく、PCAと並んでほとんどが秘密のベールに包まれている多様な技術開発の目的は2040年代までの制空を目指す「NGAD:Next-Generation Air Dominance」と呼ばれ、そのNGAD予算を巡る議論です

最終的には、当初$750 billionで要求した2020年度国防予算を、$738 billionまで削減することを議会が求めているようで、議会から削減を求められなくても、米空軍内で「枠」に納めるために当初要求額から削減する可能性も相当あるようですが、「戦闘機族のボス」と言われる幹部の発言ですのでフォローしておきます

20日付米空軍協会web記事によれば
NGAD2.jpg●同司令官は記者団に対し、8月の米議会休会期間を最大限に活用し、2020年度予算案に計上しているNGAD関連予算の約1000億円の必要性を議会関連スタッフに説明に回り、NGADの重要性を訴えたと語った
●そして、議会関係者間に根強く残っている予算の効率的使用に関する疑念について、「我々は将来に対する備えのため、効果的に与えられた投資を活用できる」、「議会の専門家スタッフと定期的に会い、我々のコンセプトやその必要性について協力を得られるように説明している」と語った

NGADは、2040年代までを想定した将来の制空を確実にするための大部分が秘密の広範な技術開発の取り組みで、その中にはF-22とF-35を補完する新たなステルス機を2030年代までに調達することや、より広範な複数の「family of systems」を研究開発することが含まれている
●同司令官は、敵防空網の強化が進む中でも、米空軍には引き続き敵目標に接近するプラットフォームが必要であり、NGADは敵防空兵器を回避するための手段の一つであると語った

しかし下院が打ち出した修正案では、開発リスクとその効果への疑念から、約1000億円のNGAD予算が半分の約500億円まで削減されている。
NGAD3.jpg●同司令官は引き続き議会関係者への説明説得を続ける必要があると述べる一方で、国防省全体として希望予算額より小さな予算しか得られそうにない中で、米空軍として継続してきた事業の中断など「厳しい選択」を迫られるだろうと悲観的な見方も示した

●そしてGoldfein参謀総長はまさに今、限られた枠の中で何を優先して何を後回しにするかの検討を迫られているところだと同司令官は説明した
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中国が西太平洋でA2AD戦略を展開し、「制空」の足場となる米国やその同盟国の飛行場などの作戦基盤を、各種弾道ミサイルや巡航ミサイル、更には電子戦やサイバー戦も絡めて無力化しようとする中制空の重要性は認識するものの、NGAD全体の構想をよほど明確に実現可能性を踏まえつつ描いていただかないと、資金投入は難しいのでしょう

上下院の軍事委員会メンバーには、秘密の部分もある程度説明しているのでしょうが、そのうえで疑問や疑念が絶えないようですから、よほど旧態然としたコンセプトを引きづっているか、夢のような戦いを想定しているのでしょう・・・

せめて日本を巻き込んで余計な物を買わせないよう、お願いしたいものです

米空軍の次世代制空機検討PCA
「PCA価格はF-35の3倍?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15
「秋に戦闘機ロードマップを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-22
「PCA検討状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-12
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08

「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「F-35にアムラーム追加搭載検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-28

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