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巡航ミサイルから米本土を守るため3つの提言 [安全保障全般]

具体策というより取り組み方についての提言
シンクタンクFDD(Foundation for Defense of Democracies)

FDD.jpg29日、シンクタンクFDD(Foundation for Defense of Democracies)が短いメモを発表してDefense-Newsもこれを掲載し9月に行われたサウジ石油施設への巡航ミサイル攻撃を米国は真摯に受けとめ、米本土が直面するこの深刻な脅威に対し、まず取り組むべき事項として3点を提言しています、

提言ではまず、9月のサウジ石油施設への巡航ミサイルや無人機による攻撃を、米国ではサウジの脆弱性を暴露した事案として扱われているが、サウジが保有している、又はサウジに展開している米国製航空システムが対処に失敗した事実を無視した誤りだと指摘しています

CM.jpgそして、現在の米本土防衛が弾道ミサイルに対する防衛に焦点を当て、限定的な数量のICBM等に対処する体制整備が進む一方で、米本土の都市を巡航ミサイルが攻撃した際の防御を念頭に置いていないことを問題視しています

また、高高度を弾道を描いて飛来する探知追尾しやすい弾道ミサイルとは異なり、低高度を飛翔する巡航ミサイルは地上配備レーダーで探知困難であることから、北米コマンド司令官(前太平洋空軍司令官)も「米本土は聖域ではない」「米国民と米国が危機にさらされている」危機感を訴えている所ですが、提言はまず米国防省に巡航ミサイルの探知追尾体制構築を求めています

とりあえず3つの提言を簡単にご紹介します
(29日付Defense-News記事より)
●まず第一に担当責任者を定めよ
---まず国防省内で米本土を巡航ミサイルから防御する責任者を明示し、関連するセンサーや迎撃手段、指揮統制システム等に関する意思決定が可能な立場を与えよ  
---この責任者任命により、弾道ミサイル防衛と巡航ミサイル防衛の融合を促進することが出来る

●第2に、米議会は探知用宇宙配備センサー配備を支援せよ
---米議会は、米本土に狙いを定める先進の巡航ミサイルや他のミサイルを探知・追尾、そして究極的には破砕するための宇宙配備のセンサーを、遅滞なく展開配備できるよう支援せよ

●最後に、積極的に同盟国を巻き込め
---米国防省は、遅滞なく最新の巡航ミサイル防衛システムを米本土及び米軍展開地域に配備するため、優れた同盟国等とのパートナー関係構築を積極的に追及すべき
---これまでも「Five Eyes agreement」により情報共有で特別な関係を築いてきた英、加、豪、NZは、機微な技術情報を共有して装備開発を協力推進する候補として有力だろう。巡航ミサイルを開発協力のスタートとすればよい
---イスラエルも有力候補だ。既にミサイル防衛システムアローやDavid’s Slingの米との共同開発を通じて、その技術力は証明済みであり、実戦経験もある国であることからも重要な国だ

FDD Bowman.jpgFDD Gabel.jpg巡航ミサイル対処は、これまでも専門家の間で困難だと指摘されてきたが、今回のイランによるサウジ攻撃はその脅威を現実のものとした。これを見たロシアや中国は、米本土や海外の米軍展開基地への巡航ミサイルでの奇襲攻撃が有効だと理解し、巡航ミサイル攻撃を企てる可能性が高まったと考えるべき

●米国防省は本年年初に発表した「Missile Defense Review」で、「先進型巡航ミサイルは米本土の対する脅威になりつつある(are on the horizon)」と表現していたが、サウジへの攻撃の成功で、脅威はより近づいたと考えるべきだろう
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同盟国の部分で、日本の名前が出て来ませんが、技術的にも、政策面でも、やる気の面でも、期待できない国だとの冷徹な判断でしょうか。日本にとって極めて大きな脅威だと思いますが・・・

米議会が宇宙配備センサー群に予算をつけて協力し、同盟国の英知を結集して巡航ミサイル防衛システムが構築可能になったとしても、巡航ミサイル1発を迎撃するために、その10倍100倍のコストが必要な気がします

提言をまとめたのは、FDDの中堅研究者(Bradley Bowman氏とAndrew Gabel氏:写真上)とお見受けしましたが、この辺りはどのようにお考えなのでしょうか?

コスト面の議論は後の話で、サウジへの攻撃を「他人事」のように受け止めている米国の雰囲気への警鐘と捉えるべきでしょうか・・・・

FDDの関連webサイト
https://www.fdd.org/analysis/2019/10/29/3-ways-america-can-fix-its-vulnerability-to-cruise-missiles/

ミサイル防衛関連の記事
「ミサイル防衛見直し発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-19
「グリフィン局長の発言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-1
「米ミサイル防衛の目指すべき道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「BMDRはMDRに変更し春発表予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24-1

最近話題の記事
「空母1隻とミサイル2000発とどっちが脅威?」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-20
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ロシアのトルコへのSU-35戦闘機売込は大詰め!? [安全保障全般]

2個飛行隊分、48機程度購入か?
100機購入予定だったF-35の残りの穴埋めは国産開発で?

SU-35 5.jpg28日付Defense-Newsはトルコ情報筋の話として、プーチン大統領がトルコ大統領に直接売り込んでいた最新型第4世代機SU-35に関し2個飛行隊分約48機の購入交渉が「かなり成熟」「かなり進んだ段階」「契約は遠くないように見える」と報じました

またロシア側はトルコに売り込んだ高性能地対空ミサイルS-400の例にならい、かなり価格面でトルコ側に良い条件を提示した模様だとも伝えていますが、トルコ側は、トルコ国産戦闘機の開発をかねてから希望しており、ロシア側に「技術移転」を求めているとも同報道は示唆しています

ちなみに、8月末にトルコ大統領がロシアの航空ショーを訪れた際プーチン大統領は、自称ステルス機のSU-57の輸出型と、SU-27フランカーの最新型であるSU-35を売り込んだようですが、トルコは第4世代機のSU-35に興味を示したようです

Su-35 3.jpgシリア北西部からの米軍の突然の撤退に始まり、トルコ軍の同地域への侵攻とクルド人の悲劇、米国とトルコの何らかの手打ち、トルコとロシアの接近密談(?)・・・などなど、トルコの現在位置が注目を集める中、S-400につづき主力戦闘機をトルコがロシアから輸入するとなると、NATOの中でのトルコの位置づけがますます気になるところです

28日付Defense-News記事によれば
匿名希望のトルコ政府高官は、トルコとロシア政府関係者によるロシア製SU-35戦闘機の購入に関する協議について、「交渉は一歩進んだ段階にある(advanced stage of negotiations)」と語った
●同調達関連高官は「協議はかなり成熟している」と匿名を条件に表現し、「契約は遠くないように見える」ともDefense-Newsに語った

Turkey Su-57.jpg●仮にトルコがロシアから戦闘機を購入することになれば、8月にトルコに輸出されたS-400高性能地対空ミサイルシステムに続く主要軍事兵器の提供となり、NATO諸国の神経を逆なですることは間違いない
●同匿名トルコ高官は、今後の交渉過程で購入機数は変化する可能性があるが、トルコは2個飛行隊分約48機を購入する可能性がある、とも語った

別の航空軍需産業専門家は、ロシア側は有利な価格を提示したS-400の例にならい、SU-35にもお買い得な価格を提示すると推測しており、1機55-77億円を提示するのではないか見ている
●ちなみに2セットのS-400システムを、ロシアはトルコに約2800億円で売却したと言われている

●ロシアからS-400を購入したことでF-35計画から除外されたトルコは、初めての国産戦闘機開発に着手し、2023年の初飛行を目指していると言われているが、専門家らは「非現実的な目標だ」と見ている
●匿名のトルコ高官は、SU-35購入は市販品購入になるだろうが、トルコはロシア側がトルコ国産戦闘機開発を支援して、技術移転に同意してくれることを期待している、とも語った
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SU-35 4.jpgトルコはF-4やF-16戦闘機の後継として、F-35を100機購入予定でしたから、2個飛行隊分(約48機)のSu-35を購入しても機数が不足するはずです。

簡単に国産戦闘機が完成するとは思えず、トルコ大統領にトルコ空軍は振り回されているのでしょう。

トルコのS-400導入に関し、トルコを厳しく非難せず、オバマ政権がパトリオットを売らなかったからだと米国内に説明したトランプ大統領ですが、米軍の北西シリアからの撤退やトルコ軍の侵攻、ロシアとトルコの接近の中で、この動きをどう見るのでしょうか? 第4世代機だから「気にしない」のでしょうか?

「プーチンがトルコ大統領にSu-57Eを売り込み」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-28-1

米トルコ関係
「トルコの代わりに米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
「米がトルコに最後通牒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09
「6月第1週に決断か」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-23
「トルコが米国内不統一を指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-2
「もしトルコが抜けたら?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-21

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衛星で目標情報をリアルタイムに地上部隊へ [サイバーと宇宙]

衛星はMDや宇宙SAのためだけではない
リアルタイムでの地上目標情報も第3の焦点

Kestrel Eye.jpg10月25日付C4INetは、同16日に開催された米陸軍協会総会での宇宙開発庁Derek Tournear長官らの発言を踏まえ衛星のセンサー能力を一般に強調されるミサイル防衛MDや宇宙状況把握SSAだけでなく、地上目標のリアルタイム状況把握に活用して地上部隊に提供しようとする取り組みについて紹介しています

「Kestrel Eye」計画と呼ばれるこのプロジェクトは、宇宙開発庁幹部が「超超音速兵器の防御」ほど「セクシー」ではないが、米陸軍が衛星センサーにもっとも期待する事項だと語るプロジェクトです。

「Kestrel Eye」は低軌道衛星のネットワークと衛星と地上施設を結ぶ多層システムで構成され、単に衛星画像を地上部隊に迅速に提供するだけでなく、AIなどを活用して怪しげな移動目標を自動で識別・追尾することまで目指しているようです

何時ごろの完成を目指すのか、どんな課題があるのか等、計画の細部には言及がありませんが、衛星の情報をリアルタイムで地上で活用できれば、あらゆる作戦の遂行に活用できるでしょうから、今後の展開に期待しつつご紹介いたします

25日付C4INet記事によれば
Kestrel Eye2.jpg米陸軍のニーズの一つに、見通し線外の目標情報をタイムリーに入手することがあるが、宇宙に所在する衛星のセンサーが、ミサイル防衛や宇宙監視だけでなく、一刻を争う(time-sensitive)地上目標情報を地上の戦士のためにリアルタイムで提供するため、宇宙開発庁(SDA:Space Development Agency)と米陸軍が協力して取り組んでいる
宇宙開発庁(SDA)は現在、3つの分野に注力している。一つは超超音速兵器や弾道ミサイルの追尾、2つ目は宇宙の状況認識を高めるための取り組み、そして3つ目が一刻を争う地上脅威目標の探知追尾である

SDAのDerek Tournear長官は10月16日の米陸軍協会総会で、「超超音速兵器の防衛ほどセクシーではないが、一刻を争う地上脅威目標の探知追尾は米陸軍が影響を受け重要視している分野であり、SDAと緊密に連携している」、「これはトラック程度以上の大きさの目標情報を地球上全域で探知追尾し、リアルタイムで米陸軍の兵器システムに提供すること目標にするシステムである」と語った

Kestrel Eye4.jpg「Kestrel Eye」計画と呼ばれるこのプロジェクトは、低軌道衛星のセンサーで戦場画像を捉え、リアルタイムで前線兵士に提供することを狙いとし、多層システムから構成される
●まず、衛星群の自動目標認識追尾技術で画像を生成し、次に本システムの柱となる衛星群と地上施設を結ぶ「トランスポート層」に送られ、そこで複数の情報が融合されて目標照準用のデータが生成される

衛星情報の利用者からの要求に基づき、細部のデータ処理やデータ融合は地上施設でも行われるが、処理結果は「トランスポート層」とも共有され、自動探知追尾にも生かされる
●「トランスポート層」と地上施設のいづれで生成されたものであっても、使用可能なレベルの目標情報は前線部隊にLink-16やその他の方法で直ちに提供される。説明すると複雑だが、これら全てのプロセスは瞬時に遂行される

SDAは衛星センサー群のデータを目標照準情報に処理して前線に提供する「トランスポート層」開発を担当するが、センサー群は他組織が担当して開発している。
●SDA長官は「センサー開発担当組織と緊密に連携し、トランスポート層と隙間のないシステム構築で、前線兵士に宇宙からの情報をリアルタイムで提供することを目指している」と語った。

●なおSDA長官は9月に記者団に対し、「トランスポート層」デモの提案要求を間もなく発出すると語っていた
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Kestrel Eye3.jpgこれが出来れば便利ですよねぇ・・・多数の衛星が必要な機がしますが、写真からすると、比較的小型の衛星を短い周期で必要な場所に打ち上げ続けるのでしょうか?

「地上目標」、恐らく「海上目標」とも言い換えられるのでしょうから、東シナ海や南シナ海を侵攻する中国海上戦力のターゲティング(目標照準)にも活用できることを期待したいと思います。南西諸島の山や森林に隠した対艦ミサイルでやっつけてやりましょう!!!

「While it’s certainly not as sexy as hypersonics defense,」とSDA長官は語っていますが、「セクシー」との単語の使用法として参考に致しましょう。それから「Kestrel」とは、「チョウゲンボウ」との鳥の名前です

「サイバーと宇宙」カテゴリーの記事(167本)
https://holyland.blog.ss-blog.jp/archive/c2302888136-1

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刺激少ないISRアセット輸出で同盟強化を [安全保障全般]

台湾への近代化F-16である「V型」輸出は刺激が強いが・・・

US China.jpg7月19日付Defense-News記事は、6月に米国防省が発表した「Indo-Pacific Strategy Report」に沿って米国は中国の浸透に対抗して地域諸国との関係強化や関与維持を進めようとしているが、戦闘機のような攻撃型兵器の提供は刺激が強いが、ニーズも高く、関係国との協力強化にもつながるISRアセットの輸出は効果的だと論じています

特に中国と深い経済関係を持ち、中国華僑の役割がアジア諸国で無視できない現状を踏まえれば、中国と国力面で圧倒的な差がある東南アジアの国々の場合、冷戦時の米側とソ連側のような明確なブロック分けが難しく、米国との安全保障上の関係強化にもデリケートな扱いが求められるでしょう

戦闘機やミサイルや艦艇のように目立たないため、なかなか取り上げられない側面でもありますので、断片的で、噂レベルのものもありますが、ご紹介しておきます

19日付Defense-News記事によれば
US China2.jpg今年3月後半、2機の中国軍機が中国と台湾の境界線を越えて台湾側に侵入し、約12分間にわたって台湾領空を飛行した。これは2011年以来初の事象であった。また今年5月には、台湾海峡で中国軍が実弾演習を行うなど、対中間の軍事緊張が高まっている
●このような中台間の最近の緊張は、台湾空軍F-16A/B型を改良したF-16V型の提供が開始されたことや、台湾への約2000億円相当の国防装備品を米国から追加供給することが議論されたことが背景にある。なお追加供給はトランプ政権が6月に決定している

台湾への戦闘機改修や武器輸出のような関係国支援の手法は、中国のような国に対して刺激的なものとなるが、直接的でないより微妙な手法をミックスして考える方法もある
ISR能力強化のアセットを米国から関係国に提供するのはそんな手法の一つで、米国との関係深化や関係国の能力強化の潜在的「sweet spot」でもあり、また「グレーゾーン」事象の把握が困難な同地域で極めて需要が高いアセットがISRアセットである

MQ-9 2.jpg●例えば、豪州は2018年11月にMQ-9無人偵察攻撃機の導入を表明し、インド、日本、NZも、より広範なアリアで脅威対象の活動が生起し、また脅威レベルの高いエリアでの活動も予期される中、ISRアセットへの関心を示している
米国の軍事装備輸出戦略も、ISRアセットの同盟国等への提供効果を強調しており、特に冷戦期のように米側ブロックとソ連側ブロックの区切りが明確だった時代と異なり、中国との経済的関係が深いアジアインド諸国の立場に配慮した方向性を示している

●この地域諸国の微妙な立場に関しては、今年のアジア安全保障会議でシンガポール首相が、「ブロックの区切りが不明確になりつつある情勢下、小国には難しい判断が迫られている」と訴えている
●そんな中でも、今年5月に、海洋安全保障の基礎を支える海洋監視用アセットとして、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムに34機の「ScanEagle」無人偵察機をFMSで提供することが発表されたが、微妙な地域情勢に配慮した関与手法と言える

ScanEagle.jpgインド太平洋地域での中国抑止は極めて複雑な任務で、その基礎となる米国の地域関与を示すための手法として装備品輸出は重要な手段であるが、中国を刺激してエスカレーションにリスクを負う可能性の低い、状況掌握能力をISRを通じて提供する手法は、作戦面でも、戦略面でも適当なアプローチだと考えられる
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上記はAtlantic Councilの上席研究員執筆の論考ですが、記事が主張するほど事態は単純ではなく、サイバーや電子戦までドメインを拡大すれば、ISRアセットは十分中国にとって刺激的な武器輸出でしょう

ファーウェイが提供する「5G」アセットを巡るつばぜり合いも、ISRの一翼を担う分野だと思いますが、国家間のホットな衝突にも発展しかねない機微な分野だと思います

2016年米大統領選や英国のEU離脱国民投票を巡るSNS等を通じた「情報操作」が、国家間の戦いの最前線としクローズアップされる中、ISRが「Subtle but directed」な手法ではないような気がします

米空軍ISR関連の記事
「RC,WC,OC,NC-135は後継機なしの方向」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-28-1
「米空軍が新ISRロードマップ決定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-04-3
「情報部長が中露のAI脅威を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28
「RC-135シリーズがピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-08-1
「ISR無人機の急増」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-21
「無人機要員の削減を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-25
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新戦略軍司令官がnon-kinetic兵器の統制に言及 [Joint・統合参謀本部]

Non-kineticとはサイバーや宇宙やEW戦
特に電子戦の統合レベルでの統制に言及
また5G普及に伴う周波数不足への懸念表明

Richard2.jpg24日、新戦略コマンド司令官候補であるChas Richard海軍中将(現在は海軍潜水艦隊司令官)が上院軍事委員会で証言し従来の核抑止だけで語れなくなりつつある戦略作戦の将来について、今後ますます重要になるサイバーや電子戦などの「非運動エネルギーnon-kinetic兵器」作戦の指揮統制を、戦略コマンドが実施すべきとの命題について、今後の統合演習で検証すると語りました

また「非運動エネルギーnon-kinetic兵器」の中でも電子戦EWの重要性と戦略コマンドによる統合作戦統制の必要性に言及し、更に電子戦訓練の環境整備が必要だと主張しつつ「5G」の導入などで民間分野での周波数需要が高まっているが、有事を考えて民生と軍事のバランスを良く考えて周波数配分を検討すべきと訴えました

「非運動エネルギーnon-kinetic兵器」の影響力が核兵器並みになる可能性も踏まえ、併せて各軍種がバラバラに運用している電子戦アセットを効率的に統合の視点で運用し、最大の効果を確保しようとの考え方を戦略コマンドが打ち出すとは意外でしたのでご紹介しておきます

24日付米空軍協会web記事によれば
electoric warfare.jpgRichard海軍中将は上院軍事委員会で、統合参謀本部がいくつかの演習や機上演習をリードして、誰が多様な「運動エネルギーkinetic兵器」と「非運動エネルギーnon-kinetic兵器」を管理監督するのかを整理したいと証言した
●これら演習の結果は、マルチドメインやクロスドメインと言われる今後の統合作戦のあり方や、サイバー空間や電磁スペクトラム等々での新たな兵器の活用法を考える上での貴重なデータとなると同中将は語り、戦略コマンドにとっても単純な核抑止の世界から変化しつつある戦略作戦に適応し、「非運動エネルギーnon-kinetic兵器」の調和使用を司るべきかを考えるための資となると説明した

●同中将は、「電子戦について、各軍種が独自に行っている作戦を統合の視点でまとめることを開始しており、より現状に適応した全てが統合される方向に導いている」と説明した
Richard.jpg●また同中将は、「非運動エネルギーnon-kinetic兵器」の効果を通常兵器の効果と結びつけたり、相互に代替可能な形も追求しているが、これは「運動エネルギーkinetic兵器」攻撃が必ずしも最適な効果をデジタル社会において生まないとの認識に基づいているとも説明した

米軍の電子戦能力はこれまで長年経験したことが無いほど厳しい挑戦を受けており、サイバー空間や宇宙でと同様に厳しい環境に置かれているが、これに対処する訓練環境は不十分で、電磁波の割り当てに余裕がないことから十分な試験や演習が難しくなっているとも訴えた
「先進EW技術を使用した試験や演習が可能な演習場はほとんどなく、試験等が可能なはずの演習場でも、しばしば外部への電波干渉等により訓練等が中止に追い込まれている」、「このような状況から統合部隊での訓練機会が悪影響を受けている」、「シミュレーション環境の重要性が指摘され、改善投資が計画される中でも、依然として極めて限定的だ」等々と訴え

electoric warfare2.jpgそんな中でも、DARPAがシミュレーション環境開発に取り組み、国防省としても新たな電磁波環境の把握や分析手法の導入を検討しているとも説明したが、
●ただ、最近民間機関が「5Gネットワーク」開発に力を入れ、電磁波割り当ての拡大に動いており、軍事に影響を与えかねない状況となっている。連邦政府は「5Gネットワーク」導入を巡って民間企業との連携を図り、軍事活動への影響が無いよう勤めるべきだと同中将は訴えた
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最近日本政府も、「5Gネットワーク」導入推進のため、周波数の割り当てを再検討するような発表をしていましたが、総務省と防衛省は国益の観点から、十分に意見のすり合わせを行うべきと考えます

Takaichi.jpg得てしてこの手の調整は、防衛省に相談なく総務省が業界団体と話をはじめ、後戻りできなくなってから防衛省に「事後報告のように」調整するような強姦的なアプローチが見られましたが、高市総務大臣に置かれては、そのあたりをよろしくお願いいたします

それにしても、戦略コマンドが電子戦EWの統合作戦統制に乗り出すとは・・・。電子戦が単なるレーダー妨害からサイバー空間にまで影響が及ぶ可能があるからでしょうか? 時代の急速な動きを感じます

米空軍電子戦部隊の動き
「米空軍電子戦改革の方向性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-21
「米空軍がサイバーとISRと電子戦部隊を融合」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「遅延中、ISRとサイバー部隊の合併」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-24
「米空軍がサイバー軍とISR軍統合へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3

EW関連の記事
アクセス数が多い記事ばかりです。是非チェックを
「ACC司令官が語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-19
「米空軍がサイバーとISRとEwを統合」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3
「電子戦検討の状況は?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-13
「エスコート方を早期導入へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27

「米空軍電子戦を荒野から」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1
「ステルス機VS電子戦攻撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12

「EA-18Gで空軍の電子戦を担う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-08
「空軍用に海軍電子戦機が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-09
「緊縮耐乏の電子戦部隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-29-1
「MALDが作戦可能体制に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-29-1

ロシアの電子戦に驚愕の米軍
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

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