湾岸諸国がS-400を購入したらF-35売却は? [亡国のF-35]
UAEへのF-35売却交渉が先送り?
ロシアの湾岸への兵器売込みとイスラエルへの配慮の2重苦
12日付Defense-Newsは、2017年のドバイ航空ショーでは米国がUAEとF-35売却交渉を開始するとの噂でもちきりだったが、17日から始まる今年の同航空ショーではその話題では盛り上がりそうもないと報じ、背景にロシアが湾岸諸国に高性能地対空ミサイルS-400を強力に売り込んでおり、S-400を購入したトルコへのF-35売却を中止した悪夢の再来が懸念されるからだと紹介しています
また、イスラエルの軍事優位を担保するため湾岸諸国へのF-35売却は困難との見方に対しては、細部のスペックでイスラエル提供機体の優位を確保しておけば、対ISや対イランを理由に湾岸諸国へのF-35売却は不可能ではないとの見方を紹介しています
米国の同盟国であるサウジなど湾岸産油国が、実際にどれほどロシア製S-400を購入する可能性があるのか記事からははっきりしませんが、プーチン大統領は相当力を入れており、「第2のトルコ」獲得を狙っているようです
12日付Defense-News記事によれば
●2年前の2017年ドバイ航空ショーでは、F-35の湾岸諸国への売却を検討する機は熟したと米側が考えているとのうわさが飛び交い、最も可能性が高いUAEとの交渉開始が明らかになるのではとの話で会場は持ちきりだった
●しかし、17日から21日に行われる同航空ショーの会場ではそのような噂は出そうもないし、2国間の話の進捗も全く不明である。そしてこの変化は、トルコによるロシア製S-400購入によるF-35売却中止の悪夢が、米側関係者を臆病にしているからだと言われている
●軍需産業に詳しい航空コンサルタントのRebecca Grant女史は、米国が湾岸諸国へのF-35売却を進めたい理由は2つあり、一つはイスラム過激派(ISなど。イランは?)対処で協力関係にあるUAE、サウジ、バーレーン、カタールなどに戦力を提供したいとの思いで
●もう一つは、現在可能性が検討されているF-35による弾道ミサイル迎撃能力を湾岸諸国に提供するオプションを考慮してのことだと解説したが、一方でトルコのS-400購入を巡るゴタゴタで、UAEとの交渉は3-5年阻害されるとも語った
●ロッキード社は以前から、湾岸諸国への売却もF-35全体計画の「皮算用」に含めており、現在確実性が高い3200機程度の生産数を、目標である4600機レベルに引き上げるための不可欠な顧客だと見なしている
●5月にロッキードCEOのMarillyn Hewson女史は、「中東諸国の間にはF-35を求める声があり、いつかのタイミングで、F-15やF-16で前例があるように、米国は中東諸国にもF-35技術を提供することになろうと考えている」と述べている
●一方でロシアの湾岸諸国への兵器売込みは活発で、ロシア国営メディアは、イランからの脅威に備え、ロシアとカタール間のS-400売却交渉が「advanced stage」にあると報じ、同時にサウジとの交渉も始まっていると報じ、
●プーチン大統領が9月に語った「希望する国の自衛のため、我が国はサウジに助けの手を差し伸べる用意が出来ている」、「イランが過去S-300をロシアから購入したように、またトルコがS-400を購入したように、サウジ政府の懸命な決断を期待する」との言葉を紹介している
●別の米国専門家は、「戦車や大砲をロシアから購入しても米国は問題視しないだろうが、S-400導入となれば忍耐の限界を超えるだろう」と述べつつ、湾岸諸国が互いに近接していることから、「湾岸地域の1か国でもS-400を購入することになれば、湾岸諸国全体のF-35購入の障害になろう」と見ている
●ただ前出のRebecca Grant女史は、「例え湾岸諸国がS-400を購入しても、湾岸諸国に売却するF-35の機微な性能部分のハードやソフトのグレードを下げて、対象国に応じて提供することで、F-35を提供するオプションがある」と主張している
●トルコのS-400購入事案が起こる前は、イスラエルへの配慮からアラブ諸国へのF-35売却が困難ではないかとの懸念を示す声もあったが、この懸念に対しても、F-35能力向上バージョンやステルス性のレベルに差をつけることで、イスラエルの優位を保ち理解を得られるとの見方が広まりつつあった。ただし、S-400との関係は秘密保全上の配慮から来るものであり、別の観点の問題である
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F-35による弾道ミサイル迎撃については、F-35搭載センサーで目標の探知追尾が可能か、F-35搭載可能な迎撃ミサイルが開発できるかの検証が続いているようですが、湾岸諸国への輸出関連で話題になるとは思いませんでした
米国はF-35の運用に軍事情報保護の観点から注意をしているようですが、極東ロシアにS-400が配備されたら、捜索レーダーは4-500㎞の覆域があるようですから、ウラジオストック沖合の日本海では、航空自衛隊F-35の飛行に制約が課せられるかもしれません
また情報収集能力を備えたロシアの爆撃機や情報収集機が日本領空に接近した場合、日本のF-35による対領空侵犯措置が制限される可能性があるのでは・・・・と心配になってしまいます。もちろん中国正面でも同様の懸念が生じます
米トルコ関係
「トルコの代わりに米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
「米がトルコに最後通牒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09
「6月第1週に決断か」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-23
「トルコが米国内不統一を指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-2
「もしトルコが抜けたら?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-21
ロシアの湾岸への兵器売込みとイスラエルへの配慮の2重苦
12日付Defense-Newsは、2017年のドバイ航空ショーでは米国がUAEとF-35売却交渉を開始するとの噂でもちきりだったが、17日から始まる今年の同航空ショーではその話題では盛り上がりそうもないと報じ、背景にロシアが湾岸諸国に高性能地対空ミサイルS-400を強力に売り込んでおり、S-400を購入したトルコへのF-35売却を中止した悪夢の再来が懸念されるからだと紹介しています
また、イスラエルの軍事優位を担保するため湾岸諸国へのF-35売却は困難との見方に対しては、細部のスペックでイスラエル提供機体の優位を確保しておけば、対ISや対イランを理由に湾岸諸国へのF-35売却は不可能ではないとの見方を紹介しています
米国の同盟国であるサウジなど湾岸産油国が、実際にどれほどロシア製S-400を購入する可能性があるのか記事からははっきりしませんが、プーチン大統領は相当力を入れており、「第2のトルコ」獲得を狙っているようです
12日付Defense-News記事によれば
●2年前の2017年ドバイ航空ショーでは、F-35の湾岸諸国への売却を検討する機は熟したと米側が考えているとのうわさが飛び交い、最も可能性が高いUAEとの交渉開始が明らかになるのではとの話で会場は持ちきりだった
●しかし、17日から21日に行われる同航空ショーの会場ではそのような噂は出そうもないし、2国間の話の進捗も全く不明である。そしてこの変化は、トルコによるロシア製S-400購入によるF-35売却中止の悪夢が、米側関係者を臆病にしているからだと言われている
●軍需産業に詳しい航空コンサルタントのRebecca Grant女史は、米国が湾岸諸国へのF-35売却を進めたい理由は2つあり、一つはイスラム過激派(ISなど。イランは?)対処で協力関係にあるUAE、サウジ、バーレーン、カタールなどに戦力を提供したいとの思いで
●もう一つは、現在可能性が検討されているF-35による弾道ミサイル迎撃能力を湾岸諸国に提供するオプションを考慮してのことだと解説したが、一方でトルコのS-400購入を巡るゴタゴタで、UAEとの交渉は3-5年阻害されるとも語った
●ロッキード社は以前から、湾岸諸国への売却もF-35全体計画の「皮算用」に含めており、現在確実性が高い3200機程度の生産数を、目標である4600機レベルに引き上げるための不可欠な顧客だと見なしている
●5月にロッキードCEOのMarillyn Hewson女史は、「中東諸国の間にはF-35を求める声があり、いつかのタイミングで、F-15やF-16で前例があるように、米国は中東諸国にもF-35技術を提供することになろうと考えている」と述べている
●一方でロシアの湾岸諸国への兵器売込みは活発で、ロシア国営メディアは、イランからの脅威に備え、ロシアとカタール間のS-400売却交渉が「advanced stage」にあると報じ、同時にサウジとの交渉も始まっていると報じ、
●プーチン大統領が9月に語った「希望する国の自衛のため、我が国はサウジに助けの手を差し伸べる用意が出来ている」、「イランが過去S-300をロシアから購入したように、またトルコがS-400を購入したように、サウジ政府の懸命な決断を期待する」との言葉を紹介している
●別の米国専門家は、「戦車や大砲をロシアから購入しても米国は問題視しないだろうが、S-400導入となれば忍耐の限界を超えるだろう」と述べつつ、湾岸諸国が互いに近接していることから、「湾岸地域の1か国でもS-400を購入することになれば、湾岸諸国全体のF-35購入の障害になろう」と見ている
●ただ前出のRebecca Grant女史は、「例え湾岸諸国がS-400を購入しても、湾岸諸国に売却するF-35の機微な性能部分のハードやソフトのグレードを下げて、対象国に応じて提供することで、F-35を提供するオプションがある」と主張している
●トルコのS-400購入事案が起こる前は、イスラエルへの配慮からアラブ諸国へのF-35売却が困難ではないかとの懸念を示す声もあったが、この懸念に対しても、F-35能力向上バージョンやステルス性のレベルに差をつけることで、イスラエルの優位を保ち理解を得られるとの見方が広まりつつあった。ただし、S-400との関係は秘密保全上の配慮から来るものであり、別の観点の問題である
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F-35による弾道ミサイル迎撃については、F-35搭載センサーで目標の探知追尾が可能か、F-35搭載可能な迎撃ミサイルが開発できるかの検証が続いているようですが、湾岸諸国への輸出関連で話題になるとは思いませんでした
米国はF-35の運用に軍事情報保護の観点から注意をしているようですが、極東ロシアにS-400が配備されたら、捜索レーダーは4-500㎞の覆域があるようですから、ウラジオストック沖合の日本海では、航空自衛隊F-35の飛行に制約が課せられるかもしれません
また情報収集能力を備えたロシアの爆撃機や情報収集機が日本領空に接近した場合、日本のF-35による対領空侵犯措置が制限される可能性があるのでは・・・・と心配になってしまいます。もちろん中国正面でも同様の懸念が生じます
米トルコ関係
「トルコの代わりに米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
「米がトルコに最後通牒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09
「6月第1週に決断か」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-23
「トルコが米国内不統一を指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-2
「もしトルコが抜けたら?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-21
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