SSブログ

新設の米海軍第2艦隊はロシア潜水艦対処用 [Joint・統合参謀本部]

年末12月31日に運用態勢確立を発表
多くの関係者がロシア潜水艦対処部隊と

Lewis.jpg昨年12月31日、米海軍は昨年5月に新編された第2艦隊(2nd Fleet)が「full operational capability:完全な運用態勢」を確立したと発表しました

第2艦隊は中国やロシアの脅威を最重視すると謳った国家防衛戦略NDSが発表された2018年5月に新編され、2019年5月には「初期運用態勢:initial operational capability」を確立し、「Baltic Operations exercise」計画を担当するなどの仕事を行って来ました

この艦隊の特徴は明確な担当地域の区分が示されていないことと、通常の艦隊が1万人規模なのに対し、米海軍は公表していないものの僅か250名程度で構成されている点です。

Russian Kilo-class.jpg担任エリアについては、第2艦隊司令官であるAndrew Lewis中将や米海軍が、大西洋から北極圏だと表現していますが明文化はされていないようで、既にそのエリアを担当する他の艦隊も存在することから不不自然で、人的規模が「例外的に少ない」ことや、訓練任務が限定的であること、更に30名程度の派遣指揮統制部隊(C2F:command and control forces)を派遣する活動を行っていることから、特別な作戦を担当していると言われてきました

昨年大晦日付けの米海軍協会研究所USNIのweb記事は、米海軍の複数の関係者が、同艦隊の活動はロシア潜水艦対処作戦の指揮統制を行うことだと認めたと紹介しており、先日ご紹介した欧州米海軍司令官による「ロシア潜水艦の活動が冷戦後で最も活発になっている」発言を裏付け、ただ事ではないレベルにあることを感じさせてくれます

12月31日付米海軍協会web記事によれば
●米海軍は12月31日、第2艦隊が「full operational capability:完全な運用態勢」を確立したと発表した
Lewis2.jpg●同艦隊司令官のLewis海軍中将は、「ますます複雑化する安全保障環境の下、世界で最も海運が盛んな一つである北大西洋海域と、開かれつつある北極圏を前にし、競争がますます激しくなる中、第2艦隊は必要時にいつでも戦いえる態勢を持って国家に仕える」とコメントしている

●米海軍は公式に明らかにしていないが、同艦隊編成を命じた当時の海軍長官命令は僅か250名の人員しか配分しておらず、同艦隊が戦闘可能態勢にある部隊を前線に展開させることを任務の焦点に置き、戦力造成や訓練等には限定的な役割しか与えていない点が特徴である
具体的にはグリーンランドからアイスランドや英国にかけての地域へ、米東海岸ノーフォーク基地からの指揮統制を繋ぐ30名程度の派遣指揮統制部隊(C2F:command and control forces)を派遣する任務が中心になると考えられている

●運用態勢完全確立の声明では、「(30名程度の)派遣指揮統制部隊(C2F:command and control forces)は、Maritime Operations Center (MOC)を展開先で立ち上げ、地域情勢や作戦区域に関する基本的な指標や警報などを提供し、活動部隊の状況認識確立を助け、必要な指示を出し、司令部との連携を維持する」と任務が説明されている
第2艦隊司令官は同艦隊の指揮とは別に、NATO組織である「Joint Force Command Norfolk」の指揮官を命ぜられており、この面からも円滑な作戦運用に貢献する

Russian Kilo-class2.jpg●米海軍は第2艦隊設立の理由や背景を明確に語ろうとしないが、複数の関係者は米海軍協会に対し、第2艦隊の活動の焦点は、ロシア潜水艦対処の指揮統制を(大西洋から北極圏に及ぶ広大な)エリアで提供することだと認めている
最新のロシア攻撃原潜は、周辺海域から欧州全域の各国首都を攻撃可能な対地攻撃ミサイルを装備し、またロシアは新型の核搭載超高速魚雷を開発中といわれており、急激に活発化するロシア潜水艦対処が急務となっている

●先日も欧州米海軍司令官James Foggo海軍大将が、ロシアが潜水艦戦力を非対称戦力として重視し、継続的にその強化に投資を続け、その成果が確実に西側の脅威となりつつあると認め、潜水艦技術の優位性を西側は維持しているものの、その差は小さくなりつつあると警戒感をあらわにしていた
●また米海軍は、最近空母トルーマン戦闘群や海兵隊の着上陸群を北大西洋エリアに派遣しているが、公には公表していない
////////////////////////////////////////////

大西洋から北極圏の水面下は、人知れず大変なことになっているようです

こんなロシアを考えるには、昨年のサントリー学芸賞を受賞した小泉悠さんの『「帝国」ロシアの地政学』がお勧めです

学術的な視点と、硬軟取り混ぜた平易な解説で読ませてくれます! ついでに飯山陽さんによる「イスラム2.0」もご紹介しておきます

ロシアの動向と米軍の対応
「冷静後でロシア潜水艦が最も活発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21-1
「90日間ロシア軍機の危険接近飛行がない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-12

 

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。