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画期的:衛星が推進力衛星とドッキングで延命へ [サイバーと宇宙]

米企業がインテルサット衛星に推進力衛星をドッキング
通信衛星を約5年延命する画期的手法
安全保障関連衛星への応用を検討分析中

MEV-1.jpg26日、Northrop Grumman社のグループ企業SpaceLogistics LLCが、衛星を延命させるための衛星「MEV-1:Mission Extension Vehicle-1」を史上初めて商用衛星にドッキングさせることに25日に成功したと発表しました。

延命のためドッキングされたのはインテルサット商用通信「Intelsat 901」で、MEV-1から軌道修正等の支援を受けることで約5年間寿命が延び、また延命に貢献したMEV-1は、今後同様の衛星支援活動を15年間宇宙空間で継続する画期的な仕組みです

米国防省も、今回のSpaceLogistics LLCとインテルサットの挑戦に関心を示し、昨年7月には米空軍の「Space and Missile Systems Center」がSpaceLogistics LLCと、安全保障関連衛星にこの仕組みが応用できるか検討する契約を結んでいるようです

細かなコスト比較は明らかではありませんが、新たな衛星を打ち上げるより、この延命衛星MEV-1のような仕組みを活用することで、随分と資源の有効活用が図られると思いますし、宇宙ゴミの削減にもつながるのでは・・・と勝手に想像しております

26日付C4isrnet記事によれば
MEV-1 4.jpgMEV-1は昨年10月9日に打ち上げられ、徐々に高度約180nmの静止衛星軌道に向かって高度を上げていた。一方で支援を受けるIntelsat 901通信衛星は、昨年12月に衛星通信サービス業務から一旦外され、MEV-1の軌道まで移動し、2月25日午前2時15分(米国東時間)にドッキングに成功した
ドッキング後、Intelsat 901通信衛星は自身の機能に異常がないか自己診断を行い、その後MEV-1の推進力で所定の通信衛星としての軌道に戻り、今年3月から再び通信衛星として役割を再開する予定である

般に人工衛星の寿命は搭載燃料に左右され、例え搭載機材に異常がなく、搭載機材を稼働させる電力を太陽電池から得ることが出来ても、燃料が枯渇して移動できなくなると、軌道を維持することや、求められる軌道への移動が出来なくなり、その役割を終えることになる
●SpaceLogistics社のMEV-1は、機器は正常でも燃料不足に陥った衛星に接近してドッキングし、MEV-1搭載燃料と推進装置を使用して、顧客の衛星を所望の軌道や位置に移動させることで人工衛星の延命に貢献する

MEV-1 2.jpgまたMEV-1は、今回のIntelsat 901への任務を終えた後、引き続き約15年間宇宙に留まり、他の燃料切れ衛星に同様のサービスを提供することが可能だと、SpaceLogistics社は説明している
SpaceLogistics社のTom Wilson社長、「我が社はインテルサット社と協力し、官民両方を対象とした革新的な宇宙でのサービスに乗り出した」、「我々のMEV衛星は、革新的な人工衛星延命サービスである」とアピールしている

インテルサット社のMike DeMarco担当副社長は、「我が社は数十年に渡り、宇宙技術分野において、革新の先駆者であり続けてきた。可能性を更に押し広げる我が社のDNAは、MEV-1の最初の顧客になることに一切躊躇しなかった」、「SpaceLogistics社やNorthrop Grummanともに、宇宙における地殻変動的な一里塚を築く歴史を描けたことを誇りに思う」との声明を発表した

なおSpaceLogistics社は、数年後にはMEV-1を発展させたサービスを計画しており、MEV-1の発展型衛星を複数宇宙に配備し、軌道傾斜の変更、衛星の機能点検、軌道上での修理や組み立てサービスにも乗り出したいと考えている
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MEV-1の紹介映像(約2分)


映像を見ると、助けられる側に特別なドッキング装置は不要そうなので、ある程度の大きさと強度を持つ衛星であれば、MEV-1やその発展型衛星の各種サービスを受けられるような気がするのですが、難しいことなのでしょうか?

考えてみれば、中国やロシアの衛星を宇宙で排除する兵器にも活用できそうな気がするのですが、どうなんでしょう?

この発表は、中国やロシアの「宇宙で怪しげな動きをする衛星」に対する、警告の役割も果たすのかもしれません

宇宙関連の記事
「怪しげなロシア衛星問題提起」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-04
「宇宙Fenceレーダー試験開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-12-1
「同盟国にも宇宙関連訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-2
「アジア太平洋での宇宙作戦が困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-10-1
「再び同高官が指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-26
「米高官が不審な露衛星を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-15

「Space Fence試験レーダー完成」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-29
「米空軍のSpace Fenceを学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-28
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5年連続で米空軍はパイロット養成目標未達成 [米空軍]

昨年6月に空軍トップは不足状況悪化は下げ止まり発言も
専門家は目標達成は当面無理と

USAF Pilot4.jpg18日付Military.comは米空軍発表情報として、米空軍が目標としているパイロット養成数を5年連続で達成できなかったと報じ、専門家の見方として、当面目標数を達成できる見込みはないとも伝えています

米空軍は、給与面や海外派遣が長期化していることなどを背景に、パイロット需要が旺盛な民間航空会社への空軍操縦者の流出が止まらず、パイロットポストの約2割と言われる約2000名の操縦者が不足する厳しい状態にあり、数年前から多様な対策に取り組んでいるところです

米空軍参謀総長は昨年6月に具体的数値には触れずに、パイロット希望者の身体検査基準緩和、継続勤務者へのボーナス増額、司令部等の幕僚勤務削減による飛行機会の増加、パイロット勤務基地内外の学校の質向上(子弟教育環境の改善)、民間航空会社への引き抜き自粛要請などなどの対策により、課題が「leveled offした」とか「slightly uphillな方向だ」との表現で、改善の兆しが見えてきたと発言していました

しかし今回明らかになった具体的数字によれば、確かに改善の方向にあると言えなくもないが、明るい見通しとはいえない実態が伺えます

18日付Military.com記事によれば
USAF Pilot.jpg米空軍が明らかにしたところによれば、米空軍が2020年度末(2020年9月末)までに計画していた年間の操縦者育成目標数1480名は達成が困難となり、およそ1300名となる模様である。米空軍は約1300名の機種別の数など細部は明らかにしていない
●パイロット不足に対応するため、パイロット養成数を拡大すると当時のWillson空軍長官は2018年10月に議会で証言し、2019年度には前年の養成数1160名から1311名に養成数を増やすと宣言したが、結果として1279名養成に終わっている。今年度も1300名程度とすれば、養成数を2022年までに1500名にするとの目標の達成は困難と言わざるを得ない

●米空軍は、2016年度末の時点で1279名操縦者が不足していると明らかにし、2017年度末にはその不足数が約2000名に増加し、種々の対策にもかかわらず2019年度末時点でも1937名の不足状態にあるとしてきた
●米空軍報道官は、「引き続き複数の対策で操縦者養成数増加に取り組むとともに、現在所属している操縦者の慰留に努め、健全な操縦者数への回復を図る。米空軍は操縦者不足数の拡大を食い止めたが、パイロット不足を解消するため、今後数年にわたって取り組んでいく」とコメントしている

USAF Pilot3.jpg●一方で、外部の専門家は、2022年までに年間1500名操縦者を養成するとの米空軍の目標は、難しいとみている
●官民の操縦者養成と融合に世界規模で対応してきた企業CAEの社長経験者であるGene Colabatistto氏は、「操縦者希望者や候補者となりえる母体が十分に存在しない現状では、操縦者養成数や米空軍のパイロット不足を劇的に改善する環境にはない」と述べ、
●更に、「良い航空機や良いシミュレータを導入したり、良い教官を準備しても、問題の解決にはならないだろう。操縦者が使用する航空機や技術の問題ではない」、「システムの問題だ。人を引き付けなくてはならない。一般的にパイロットになりたいと考えている人はいるはずだ。人を引きつkられなければ成功しない」とコメントしている

PTN(Pilot Training Next)について
米空軍は2018年から、新たな操縦者トレーニング法(PTN:Pilot Training Next)に取り組み始めており、そこではバーチャル環境での訓練を重視し、操縦者を目指す訓練生だけでなく、米空軍全体として今後重視する「virtual reality and simulator」訓練技術に習熟することも狙っている
2021年度予算では、このPTNに関する予算が約30億円案に計上されており、更なる質の向上に向けた研究開発と評価に投入される予定
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Gene Colabatistto氏の発言の真意が不明ですが、人の募集要領が悪いと言いたいのかもしれません。原文は「"It's a system issue," he said. "You have to attract people, and they want to become pilots in general. Otherwise ... you'll never succeed."」です

Goldfein.jpg昨年6月空軍参謀総長は、パイロット不足の最大の問題は、「quality of service:勤務の質」改善が不十分な点だと表現し、「勤務の質を如何に改善し、パイロットの期待にこたえられるかにかかっている」、「パイロットは飛ぶために空軍に所属しているが、軍の航空部隊に所属する要員にふさわしい戦う能力と、最大限に能力を伸ばし鍛える場を如何に与えるかを考えねばならない」、「各飛行隊が部隊のメンバー一人一人を巻き込んで活動し、各構成員が組織内で役に立っているとか、存在意義を感じられるような組織になるよう取り組んでいる」とも表現し、飛行隊長クラスのリーダーシップの重要性を強調しています

でも・・・、それも大事でしょうけど・・・。パイロットの代表格で、パイロット志願者のほとんどが目指す戦闘機パイロットが夢見る空中戦は、ベトナム戦争が最後で、あとは偶発的な事案程度です。

前線での「戦闘機の役割」がなくなり、単に空中で待機や哨戒して爆撃機や偵察機を援護する退屈な任務ばかりになっていることも大きな背景ではないでしょうか。戦い方が変化し、戦闘機の役割が低下していることも、大きな要因ではないかと思います

米空軍パイロット不足関連
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18
「操縦者不足緩和?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
「下士官パイロット任務拡大?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10
「世も末:幕僚勤務無し管理検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-20
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不気味:中国人留学生が米軍基地撮影で続々逮捕 [中国要人・軍事]

フロリダ州の米海軍基地だけで約1年半で4人
海岸線から忍び込み海軍施設を撮影など

Truman Annex2.jpg23日付Military.comが、中国人の留学生が米海軍基地内に入り込んで緊要施設の写真撮影をしていたとして逮捕されて懲役1年の求刑され、判決が3月中旬に行われると報じ、同海軍基地に2018年秋以降だけで4人の中国人留学生による侵入・写真撮影事案が発生していると不気味な状況を紹介しています

記事はフロリダ州Key Westにある米海軍航空基地「Naval Air Station Key West」についての事象のみを淡々と取り上げており、同じくフロリダ州南部にあるトランプ大統領の豪華な別荘「Mar-a-Lago」へのスパイ活動とあわせて当局が注視していると紹介していますが、中国人留学生が手先となって世界各地の米軍基地等の情報収集に当たっている事例として「氷山の一角」のような気がしてなりません完全な邪推ですが・・・

米海軍航空基地「Naval Air Station Key West」は、米海軍FA-18部隊配備されてるほか、空中戦訓練に最適な空域と訓練分析装置を備えていることから、全軍の作戦機が利用する基地です。他にも水中での特殊作戦遂行部隊のほか、中米や南米の軍事作戦や治安作戦を担当する「Joint Interagency Task Force South」の中枢が配備されている基地で、かつてトルーマン大統領が「第2のホワイトハウス」として使用したことから「Truman Annex」とも呼ばれています

23日付Military.com記事によれば
Truman Annex.jpg●27歳の中国人Lyuyou Liaoは、セントルイスで中国からの国費留学生として博士課程で学んでいるが、2019年12月26日にフロリダ州南部の米海軍航空基地「Naval Air Station Key West」へ海岸線を伝って侵入し、写真撮影をした罪で2か月後に逮捕された
●Lyuyou Liaoは侵入当日、周辺にいた目撃者から軍施設への侵入と写真撮影を警告されていたが、逮捕された際は、日の出の写真を撮影したいたと弁解した

●しかし当局が容疑者のスマホ内を調べたところ、写真撮影禁止の「Truman Annex」内の様子が撮影されていたことが明らかになった
●Lyuyou Liaoと検察側は司法取引を行い、軍基地への無断侵入等の罪を免除する代わりに、写真撮影やスケッチをしていたことに関しては認めて争わないことで合意し、検察側は懲役1年を求刑した

●陪審員の審理は3月2日に実施され、判決は3月11日に予定されている

Truman Annex3.jpg2018年の秋以降、Key Westに所在する軍事施設を写真撮影した罪で4人の中国人が逮捕されており、フロリダ州南部での北京政府主導のスパイ活動を監視してきた治安当局が、トランプ大統領の別荘「Mar-a-Lago」も含めて注視しているところである

2019年9月には、中国人の音楽大学学生Zhao Qianliが>、「Truman Annex」に隣接する州立公園の海岸沿いからTruman Annexに侵入した件で逮捕された。捜査により、同学生のデジタルカメラから基地施設の写真が複数発見され、懲役1年が言い渡されている
●更に今年1月4日の朝には、共に24歳のミシガン大学修士課程学生である中国人2人が、「Naval Air Station Key West」の沖合800mの島に設けられた海軍施設「Sigsbee Park Annex」の写真撮影を行って同施設の警備員に発見され、現在刑務所で3月2日の判決待っている状況にある
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不気味ですねぇ・・・・。中国人の留学生が次々と・・。
なぜ「Key West」なの?、「Key West」だけなの?

Sigsbee Park Annex.jpg米海軍航空基地「Naval Air Station Key West」にとっても氷山の一角からもしれませんし、米本土の米軍基地だけでなく、全世界の主要な米軍基地が中国人留学生によりスパイされている・・・と考えて警戒すべきではないでしょうか?

米国本土でこれですから、沖縄の米軍や自衛隊基地、いや日本全体の米軍基地や自衛隊基地が、中国人留学生によって写真撮影されていると疑ってかかっても良いのでは・・・と思います

関連ありそうな記事
「ファーウェイ使用は対米関係損ねる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-17
「Five Eyes Nationsが情報共有」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-17-2
「究極のインテリジェンス教科書」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-22
「司馬遼太郎で学ぶ日本軍事の弱点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-01
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KC-46の最重大不具合について3月に手打ち!? [米空軍]

米空軍参謀総長がメディアに明かす
問題解決には3-4年必要と空軍幹部が嘆いていたが・・・
給油機不足で民間委託に進む案も検討中だったが

Goldfein.jpg20日付Defense-Newsが、18日に行ったGoldfein米空軍参謀総長への独占インタビューを基に、米空軍への納入が始まっているのに重大不具合で作戦投入に向けた準備が進まないKC-46空中給油機に関し、最大の問題であるRVS(Remote Vision System)の不具合改修について3月には合意する方向で米空軍とボーイングと協議中だと報じました

KC-46開発のグダグダについては末尾の過去記事をご確認いただくとして、RVS(Remote Vision System)は給油装置捜査員がカメラ映像を見ながら給油を行う装置で、太陽の位置によって、また夜間等に給油相手機の位置等が正確に見えにくくなり、給油任務に支障があるとの不具合が指摘されていいます

KC-46 RVS.jpgRVSの不具合は2018年末には指摘されていたものですが、ボーイング側と空軍間で「改善内容の定義」を巡って折り合いがつかず、ボーイングの不誠実な姿勢に2019年9月にはKC-46運用部隊司令官の女性大将が「不具合解消に何の進展もない。同機運用開始には3-4年必要」と不満を爆発させ、両者の関係は最悪な状態になりました

KC-46の開発遅延と老朽の給油機(KC-135とKC-10)の稼働率低下と維持費高騰により、作戦運用に支障をきたす事態に直面した米空軍は、今年1月9日、Goldfein米空軍参謀総長自らがボーイングの新たなCEO宛にレターを送り、「ボーイングの対応に満足していない」、「いつまで不具合を抱えたままの機体を納入するのか」、「KC-46にもっと焦点を当て取り組んでほしい」と訴え、その書簡がメディアで大きく報じられるまでに至りました

3月に予期されるRVS不具合改善の方向合意により、「作戦投入まで3-4年は必要」と女性司令官が嘆いた事態が、どれほど改善されるのかは不明ですが、旅客機B-737 MAXの墜落事故で世間の非難を浴びるボーイング社にも、少しは変化の兆しが見えそうですのでご紹介しておきます

20日付DEfense-News記事によれば
KC-463.jpg●Goldfein米空軍参謀総長は、1月9日に交代したばかりのボーイング新CEOのDave Calhoun氏へ事態改善を要求するレターを送り、直後の1月15日にボーイングCEOがペンタゴンに参謀総長を訪れ、良い会談が出来たと当時の状況を振り返った
●同会談で、新CEOは「KC-46問題を最優先事項として取り組む。優秀な技術者や必要な資源を投入し、正常な状態に戻す」と参謀総長に約束し、参謀総長は「精力的な協議が続いている中なので細部には言及できないが、ボーイング側に姿勢の変化がみられる」、「ボーイング社指導層のKC-46不具合に対する熱意レベルが上がった」と最近の様子を評価した

●参謀総長は協議の状況について、「今言えるのは、ボーイング側が停滞しているわけではないという点である。我々は活発な議論を行っており、不具合改善方策を真剣に議論しており、3月末までには改善方針を固め、夏前には飛行試験で改善を確認開始したいと考えていると語った
●米空軍は2021年度予算案で、13機のKC-135と16機のKC-10を早期退役させ、同機の運用経費や維持整備費を浮かせて、将来装備への投資等に再配分する計画を示しているが、KC-46の現状から米議会はこの予算案の実効性について懐疑的である。米空軍は予算を通すためにもKC-46の問題解消を早期に必要としている

KC-46 RVS2.jpg●Defense-Newからの質問に対しボーイング社は、米空軍との協力関係を重視し、米空軍が求めるKC-46を提供することにコミットすると回答し、「米空軍とRVS改修について生産的な議論を行っており、この議論から機体能力を強化する計画を確立できると考えている」と述べている
●ボーイングにとっても、既に自腹で3300億円以上の追加経費をKC-46開発に投入しているところ、早期に不具合を解消し、米空軍が支払いを保留している機体価格の一部を受け取り、179機の生産に集中したいところであろう。ちなみに現時点で31機の不具合機体が納入済みである
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状況を把握しているGoldfein米空軍参謀総長は、「夏までは改修したRVSで飛行試験を開始したい」との意向を示していますが、昨年9月段階でKC-46運用部隊司令官が、「作戦投入させるまでに成熟するには3-4年必要」と評価していた状況に、どれだけ変化があるのか気になるところです

まさかとは思いますが、RVSの性能改善レベルで米空軍側が妥協し、KC-46を安易に運用可能としないことを祈念いたします
他の重大不具合(ブームの固着など)の扱いについても気になります・・・

でも、連接性向上重視、将来への投資重視の2021年度予算ですから、旧式給油機の早期退役を推進するため、大局的判断もあり得るかも・・・・です

KC-46関連の記事
「空軍トップが新CEOに改善要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03
「ついに空中給油の民間委託検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-15
「貨物ロックに新たな重大不具合」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-12
「海外売り込みに必死なボーイング」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-22-1
「米空軍2度目の受領拒否」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-1
「機体受領再開も不信感・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「米空軍がKC-46受け入れ中断」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-3
「不具合付きの初号機受領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-2
「初号機納入が更に遅れ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20
「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1
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身内の監察官指摘:米国務省のサイバー対策はでたらめ [サイバーと宇宙]

数年前からの指摘も放置、多額の予算はどこに消えた
海外の米国大使館は更にひどい状況
全ての評価側面で問題ありの診断

OIG State2.jpg1月24日付DefensOneは、22日に米国務省監察官が発表した「監察レポート」によれば米国務省のITシステムのサイバー対策が数年前から複数の問題点を指摘されているにもかかわらず、改善されておらず、8つの評価カテゴリー全てで問題を抱えていると報じています。

1月22日の米国務省監察官レポートで指摘される直前にも、1月14日にMark Warne上院議員が国務長官に対し、以前の「監察官レポート」での指摘事項が改善されておらず、「歴史上の数々の情報漏洩に対する教訓が生かされていない」との公開書簡を出し、最近のイラン対応での情報管理のまずさを指摘したていたところでした

記事を見ると、重要な担当ポストが空席のままとか、国務省CIOが不適切な人選だとか、在外公館で未認可のITシステムを5年以上使用しているとか、膨大な予算に見合った成果が上がっていないとかサイバー対策面でガバナンスが機能していない様子が見受けられ、誰も関心を持って取り組んでいない組織であることが伺えます

24日付DefensOne記事によれば
OIG State4.jpg22日に米国務省監察官が発表したレポートは、米国務省ITシステムのサイバー対策に多くの誤りがあることを指摘しており、世の注目を集めている
●監察レポートは、「国務省が投入した多額の支出に見合わない状態」とサイバー対策の現状を表現し、「国務省の各種情報が、以前からの指摘にも拘わらず、引き続き危険な状態に置かれている」と明確に指摘している

●この「監察レポート」発表の直前、1月14日には民主党のMark Warne上院議員が国務長官に対し、以前の「監察官レポート」でのサイバー関連指摘事項が改善されておらず、、「歴史上の数々の情報漏洩に対する教訓が生かされていない」との公開書簡を出し、国務省を非難していたところである
●同上院議員が特に問題視していたのは、国務省のサイバー対策を担当する重要な2つのポストが空席であることと、2017年の監察レポートでも指摘されている、国務省CIOに適切な人材が配置されていない点である

22日公開のレポートは、例えば、同じ2017年レポートでも指摘されている「情報システムセキュリティー担当官の働きが不十分」な問題が、2019年になっても改善されていない点や、在外公館でのサイバー管理問題がより広範な点を指摘している
OIG State.jpg在外公館の問題に関しては、ITシステムのライフサイクル管理に関する考え方が欠如しており、使用承認のないまま、在外公館が2013年から特定のITシステムを使用している事案が明らかになったりしている

●このような実態から、米国務省の米国政府が法令に基づき行う情報管理評価の結果は、8つの評価カテゴリー全てで問題ありとされてる。8つの評価カテゴリーは、リスク管理、ITシステム形態管理、IDとアクセス管理、データ保護&情報保全訓練、情報セキュリティーの継続監視、事案対処、緊急事態計画の8つである
●米国務省の監察官は、2018年と2019予算年度に関する予算執行監査報告(consolidated financial statements)を同じく22日に公表したが、2009年の同監査報告から継続する形で、国務省のITセキュリティー管理に問題があると指摘し続けている
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米国は、対外的な交渉を行うプレーヤーが多く、また政治任用者が対外的に派手に立ち回ることから、職業外交官のステータスがそれほどでなく、意欲の面でも盛り上がらないのかもしれませんが、この状態はまずい気がします。大統領や国務長官が手と付けるべきレベルだと思います

OIG State3.jpgまぁ・・・サイバー攻撃で情報が漏洩するのではなく、人を介しての情報リークやメディアへの告発が「常態」になっていることの方が問題かもしれませんが・・・。国務省は国防省にとって、「2+2」とか重要な枠組みの相棒ですし・・・

公務に就く者が、お国のことだけを考えて、職務に誇りをもって取り組めるような環境と雰囲気のある社会でありたいものです

米国務省監察官室のwebページ
https://www.stateoig.gov/

国務省関連の記事
「シンガポールにF-35売却許可」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10-1
「オープンスカイズ条約脱退を調整」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22-1
「怪しげなロシア衛星問題提起」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-04
「特殊作戦軍と中露」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-19
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米陸軍と空軍が試用開始のAI活用教育ソフト [ちょっとお得な話]

テキストを投入すると自動で教材を作成
生徒の進度を教官がリアルタイム把握
生徒個々の理解度に併せて柔軟に教材変更調整
学習時間を4割削減かつ定着率アップ
米陸軍と空軍の基礎課程で試行

AI learing4.jpgMilitary.comが、米陸軍や米空軍が試用を始めた人工知能を活用した教育教材の作成と活用について取り上げています。
冒頭で手短にご説明しているように、AIによる「自動学習:machine learning」機能を活用しつつ、オンライン機能を活用して教官がリアルタイムで生徒の様子を把握する手法で、相当の効果を上げているようですのでご紹介します

この新しい学習software systemは、従業員教育に数十年の経験がある「Cerego」との企業が開発したもので、教育対象科目に制約はなく、現在ある教材(文書、ビデオ、図表などなど)をこのsoftware systemに投入すると、何を、いつ、どのように生徒に提供して学習させ、どの様に理解度・進捗度を評価するかを提供してくれるそうです

Cerego2.jpgまた教材はアプリ形式で提供され、個々の生徒のアプリへの反応(教材の理解度や弱点)に応じ、教材の提供要領を修正変更していくということです

記事では、米陸軍が全ての兵士が受講する必要がある負傷者手当(Tactical Combat Casualty Care)の教育に導入した様子や、米空軍が初級基礎コース(BMT:Basic Military Training)の新入隊員110名を対象に昨年12月から試用を始めた様子を取り上げています

教育分野は問いませんし、「Cerego」社のwebサイトは一般企業の従業員教育への活用を宣伝アピールしていますので、ご興味のある方はどうぞ

Military.com記事によれば
これは、パワーポイント・スライドを使用した教育が招く「脳死状態」を救うかもしれない
教育対象者の理解度を向上し、かつ教育時間を削減するために「Cerego」社が米陸軍と空軍に提供し始めたsoftware systemは、一般企業の従業員教育に関する数十年間の経験と、AIの機械学習・自動学習能力を結び付けた製品である

AI learning2.jpg同社CEOのPaul Mumma氏は、「我が社は、適切なタイミングで適切な教材を提供し、時間を無駄にしないことを重要コンセプトにしている」、「我が社のソフトを活用すれば、従来の手法に比べ、4割少ない時間でより高い学習効果が得られる」とアピールしている
米陸軍と空軍は、共に同社のソフトを活用した試行プロクラム開発を終了し、米空軍は2019年12月から、テキサス州ラックランド基地での新入兵士基礎課程BMTで試用を開始して効果を確認している

●ラックランド基地の第321教育隊では、110名の新入隊員に「Microsoft Surface Proタブレット」が配布され、各新入兵士はいつでも教材にアクセスでき、かつ教官もいつでも生徒個々の学習状況をリアルタイムで把握出来る仕組みになっている
●同部隊の教育担当軍曹は、「このシステムは個々の生徒の弱点を明らかにし、これまで感覚的に把握していたものを明確にしてくれる。教育をより効率的にしてくれる」と語っている

●同システムにインプットする元教材を作成する教官にも、生徒が理解苦労している部分を早期に把握でき、修正が直ちに生徒への提供教材に反映できることから好評である。
米空軍は、このラックランド基地での試行結果が良ければ、米空軍の全ての新入兵士基礎課程BMTに同システムを導入することも考えている。現時点では、教育効果向上にも、教育時間の短縮にも良い結果が表れている

AI learing6.jpg●同社CEOは、AIの機械学習や自動学習技術を活用しているものの、「教育原理の基本として100年以上前から知られている、分散・反復学習(distributed learning)技術や、知識をテストすることで定着させるretrieval practiceの原理を活用する基本は変わることはない」とシステムを説明している
●同時に同CEOは、AI活用ソフトを導入したとしても、身体を動かして学ぶ「muscle memory aspects」や、生徒の様子を観察して適切な方向に導く教官が不要になるわけではないと強調している

●例えば、米陸軍の基礎課程では、「Tactical Combat Casualty Care」と呼ばれる負傷者救護法が全兵士に必須の科目だが、同社のAI活用システムで基礎知識を効率的に得たとしても、実際に包帯や止血帯をどのように負傷者に使用するかは、手を動かして実地に体験させることで教える必要がある
それでも米陸軍では、この「Tactical Combat Casualty Care」教育全体に必要な時間が、12時間から6時間に短縮できたとの成果を確認している
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下にご紹介するCerego社のwebサイトものぞいてみてください

Cerego.jpg記事でご紹介したCEOのPaul Mumma氏が約2分間の動画に登場し、同社とその製品をアピールしていますが、若いです! 20代後半から30代半ばにしか見えません

「Paul Mumma Cerego」でググってみても、そのご活躍ぶりが伺えますので、ご興味のある方はどうぞ!

Cerego社のwebサイト
https://www.cerego.com/

AI関連の記事
「国防省のAI研究に規範を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-02
「米国防省AI研究開発は2020年に突破口を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-02
「人工知能シミュレータ提案を募集」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-26
「AI技術を昆虫に学べ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-1
「DARPAが新AIプロジェクトを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-11-1
「中露がAI覇権を狙っている」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28
「2025年にAIで中国に負ける」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-04
「DARPA:4つの重視事項」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08
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2021年度予算案発表後のゴタゴタ [Joint・統合参謀本部]

Norquist3.jpg10日に国防副長官が記者ブリを行って公表した2021年度予算案を巡り、実はこんな内容が入っていたとか、米議会からの反応とか、関連でこんなことが話題になっているとか、色々と話題になっていることを「つまみ食い」で幾つかご紹介しておきます

「へぇ・・・」だったり、「こりゃー大変だ」だったりなんですが、全般的にこれまでの延長の予算編成では、限界にきていることを感じさせます

冷戦期に導入した装備品の更新を冷戦後のデタントムードの中で怠り、更にそれら装備品を中東での対テロ作戦で酷使し、加えて中国やロシア軍対応でも長期にわたり海外派遣したりして定期整備も遅れがちな老朽装備にしてしまった今、兵器の更新は待ったなしですが、相変わらずの兵器開発は開発の遅延と価格高騰を繰り返して、悩ましい事態となっています

その上、トランプ大統領の「ご指示」や「思い入れ」を受け、国防予算や政策が振り回され、国防予算が拡大解釈で流用される事態にまでなっており、米国防省と米軍幹部の苦悩は増すばかりの状況です

各種報道から、2021年度予算案発表後のゴタゴタをを「つまみ食い」すると・・・

ホワイトハウスからの横槍
13日になってトランプ政権の指示で、メキシコとの国境の壁建設費約6000億円分を国防費から捻出することになり、米空軍ではF-35やMQ-9やC-130調達予算が削減される修正案が示されたが、早くも米議会からは党派を問わず反対の声が上がる

米陸軍関連では
Esper SAIS2.jpg米陸軍は昨年の2020年度予算検討の際、当時のエスパー陸軍長官(現在の国防長官)が「夜間集中検討会:night court review」を行って予算の細部までを再検討し、約3兆円の低優先事業を見つけ出して優先度より高い分野に再配分した
しかし2021年度予算案についてRyan McCarthy陸軍長官は14日、「昨年より生ぬるい」と表現し、今回の2021年度予算案では約1.5兆円の予算再配分に止まったと説明している。また、昨年削減対象となった予算項目の中で、約220億円分が2021年度予算案で復活していると述べている

米海軍関連では
米海軍予算で、継続して毎年2隻調達していたバージニア級攻撃原潜の予算が「ゼロになっており、対中露の鍵となる装備だけに超党派の議員から大反対の声が上がっている。核兵器近代化や新型戦略原潜予算確保のために削減された模様だが、造船所の体制維持の問題もあり、大いに揉めそう

新型戦略原潜コロンビア級の一番艦予算が、今後3年間で計1兆6000億円程度計上されることになるが、これを枠が決まっている米海軍の艦艇等建造費から捻出することには無理があるとの声が米海軍から上がっており、米海軍トップが3軍の予算シェア見直しを求めているところ
---予算案提出を契機に、この意見に下院軍事委員長らが賛同し「将来の米国核抑止の7割を担う戦略原潜予算は、別枠扱いを検討すべき」との意見を表明し、エスパー長官の「3本柱予算は各軍種内で」との基本方針と対立鮮明化

米空軍関連では
F-35 fuselage2.jpg●上記の「国境の壁」経費捻出以前にも米空軍は、機体寿命が残っているにも拘わらず、運用及び維持経費を削減するために早期退役させる航空機として、17機のB-1爆撃機(現有62機)、24機のRQ-4無人偵察機(現有34機)、44機のA-10攻撃機(現有280機)、24機のC-130(現有310機)を計上しており、予備役や州軍所属機を優先するとの方向ながら、かなりの機数となっている

B-2爆撃機用に開発されてきた敵防空兵器探知システムDMS-M(Defensive Management System-Modernization)予算約360億円が見送られた
●高高度有人偵察機U-2は、5年後には退役の方向だが、2021年度予算案にはU-2搭載装備の近代化経費が相当程度含まれており、現場やロッキード社に驚きや困惑が見られる
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米海軍が特に厳しいように思います。

LSC2.jpgそんな中で「355隻体制」を目指すとか、無人艦艇や無人水中艇や無人機を増やすとか・・・大丈夫でしょうか?

艦艇まわしや維持整備費の状況、民間企業が担当するドックの状況など、人の面とモノの面、更に管理体制も含め、崩壊前夜の様相を呈しています。太平洋艦隊隷下で艦艇の衝突事故が連続発生していましたが、後で振り返って「終わりの始まりだった・・・」なんてならないことを祈ります

エスパー国防長官の思い
「横ばい予算でNDSを遂行するには」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「資源配分の再検討を不退転の決意で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-31
「Esper長官の略歴」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-20

米海軍の苦悩
「3軍の予算シェア見直しを訴え」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-16
「空母1隻削減案に揺れる」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-29
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09

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太平洋空軍が戦力分散運用ACEに動く [米空軍]

久々にACE(Agile Combat Employment)について
作戦機を分散基地で支援する地上支援機材が鍵の一つ
地上要員にパワースーツ装着も検討

Agile Combat Emp.jpg11日付Defense-Newsは、中国による各種ミサイル兵器の増強により、西太平洋の米空軍拠点航空基地の脆弱性が増し、貴重な米軍航空戦力が地上で無効化される恐れが高まる中、米空軍が対処策として取り組んでいるACE(Agile Combat Employment)構想の現状について、太平洋空軍副司令官らへのインタビューを基に紹介しています

ACEとの言葉を初めてご紹介したのは2017年10月のことで、当時の国防高官が記者団に断片的に・・・
米空軍が現在使用している西太平洋の空軍基地は、作戦初動で大きな被害を受ける可能性があるので、その対処策として、作戦コンセプトACEを共有して取り組んでいる
在日の米軍最新戦闘機は、地域の島々10-15箇所の未整備な緊急展開基地に分散させる
●このコンセプトでは、分散した不便な展開場所でも最新戦闘機が作戦可能なように、兵たん部門の分散運用支援体制を迅速に整える必要がある
●米空軍は最近の演習などで、燃料の緊急配分訓練をすでに開始している
戦力を分散配備することで、中国がどこを優先して攻撃すべきか判断することを困難にすることが狙いだ

Agile Combat Emp2.jpgまた2017年12月には当時のO’Shaughnessy太平洋空軍司令官が
太平洋軍エリアでACE関連訓練が開始され、戦力を分散して柔軟性と強靭性を確保する取り組みが始まっている
予算の強制削減と過去約20年間の継続した戦いにより、わが米空軍に再投資して立て直すには時間が掛かるので、現有戦力で戦う方法を考えるしかない

最近では、例えばBrown太平洋空軍司令官は、米空軍だけで航空基地の防空を担うことは難しいので、他軍種にも協力をお願いすべく協議を始めていると語っていたところです

そんな中、戦力分散先で航空機運用するために必要な体勢を整えるため、1960年代から変わっていない航空機の地上支援機材を中心に、色々な対処法が考えられているようです

11日付Defense-News記事によれば
Agile Combat Emp3.jpg●1月29日にインタビューに応じたBrian Killough太平洋空軍副司令官は、多様な攻撃ミサイルを備えた中国やロシアと米軍が西太平洋で戦うことになれば、米軍は兵站上、大変な困難に直面すると語り、
そんな中でも米軍航空戦力を生かすため、ACE(Agile Combat Employment)構想に基づき、基盤航空基地ではなく、設備不十分な基地や同盟国の基地、民間飛行場などを活用しての戦力運用を考えていると述べた

●同副司令官は、欧州であれば鉄道や高速道路で機材や物資を輸送できるが、アジア太平洋地域ではそのような手段が確保できないことから工夫が必要で、「lighter and leaner:軽く、ほっそりと」なる必要がある、と表現した
航空機を離陸させるには、テストスタンドや兵器搭載用機材など、重くて輸送しにくい地上支援機材が必要であるが、米空軍はより輸送し易い「(多様な機種に対応できる)共有支援装備:common support equipment」を導入したいと希望している

米空軍兵站コマンドも検討していると同副司令官は述べたが、「基本的に我々が現在使用しているのは1960年代から変わらない装備で、より軽量で効率的な装置が必要だ」と問題点を指摘した
Agile Combat Emp4.jpg太平洋空軍の兵たん担当Daniel Lockert大佐は別の観点から、分散配備先の限られた人員や装備で重量物を扱うために、人間が着脱可能なパワースーツ(wearable exoskeleton)で、一人の人間が120㎏程度の荷物を扱えるような手段も考慮していると述べている

●米空軍はまた、アジア太平洋地域用に必要機材を事前集積するキット「RBCP:regionally based cluster pre-position」方式を検討しており、欧州で始まっている「deployable air base kits」を参考に、滑走路修復機材や発電機、通信機材などを含むキットを検討していると同大佐は述べ
RBCPは欧州版より輸送し易いものをイメージし、2-4機の小規模展開に対応するレベルで検討されており、状況に応じて中身を選択できるモジュラー方式を追求していると同大佐は述べた

RBCPの配備はまだ始まっていないが、RBCPを地域のいくつかのハブ基地に分散集積しておき、必要時に必要な場所に分配する方式も考えられており、今年豪州で予定されている「Pitch Black演習」で試験することが計画されている
●同大佐は、同演習後にいくつかの機材を豪州に残置し、他の演習に活用するなどの機会を利用してRBCPプロセス成熟に活用したいとの意向を示唆した

最近の太平洋空軍演習とACE
Agile Combat Emp5.jpg2019年4月にグアム島を中心に行われた「Resilient Typhoon演習」では、グアムのアンダーセン基地の航空機が、グアム島内の他基地や、テニアン、サイパン、ミクロネシア、パラウに緊急分散退避する訓練が行われた

2019年10月にアラスカで行われた「Polar Force 20-1演習」では、空軍兵士は通常の主任務とは別の任務、例えば基地の警備、航空機への燃料補給、展開部隊受け入れ施設準備などの業務を訓練し、滑走路の緊急復旧訓練も実施された
2020年1月に嘉手納基地を中心に行われた「WestPac Rumrunner演習(過去記事あり)」では、嘉手納基地の整備員が、島内の海兵隊普天間基地に展開して空軍機を受け入れ、給油や再発進準備を行った

●10日に公開された2021年度予算案でも、ACE関連予算が含まれているかは不明ながら、兵站能力強化のための予算が重点項目として、約3300億円含まれている
●米空軍協会ミッチェル研究所のMark Gunzinger研究部長は、米空軍は正しい方向に取り組んでいるが、滑走路補修機材、緊急燃料タンクなどなど必要不可欠な装備品は数多く、「短期間で完成するようなものではない。冷戦終了後、米軍は分散運用能力を全て捨て去ってしまっており、この回復には10年以上必要だろう」と語っている
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Agile Combat Emp6.jpgグアム周辺や豪州に作戦機を分散しても、当然中国は予期して分散基地を多様な手段で攻撃・無効化するでしょうし、そのような不便な分散基地からの戦力発揮が極めて難しいことや、戦力投射能力が限定的なことは十二分に米軍はわかっているはずですが、それでも懸命に取り組んでいるわけです

大統領選挙の荒波の中で、国防費や国防予算の細部が「政争の具」になる中でも、米軍や米国防省は前向きに取り組んでいるわけです・・・

それに引き換え、日本の取り組みはさみしいです。嘉手納基地が危機感にあふれている一方で、那覇基地や九州の新田原や築城はどうでしょうか・・・。これは政治の話かもしれませんが、さみしい限りです

集中配備から、分散運用する新コンセプトACEへ
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「嘉手納中心に基地防空とACE訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-15
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13

日本を含む西太平洋地域の現実
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
「岩田元陸幕長の発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09
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エスパー長官:Huawei使用は対米関係を損ねる [エスパー国防長官]

ポンペイオ国務長官の発言とは微妙にズレが

Esper munich.jpg15日、エスパー国防長官が第56回ミュンヘン安全保障会議で講演し、中国を米国の主な敵対国(main adversary)だと表現しつつ中国のファーウェイ製5G機器を導入することは、米国との情報共有や安全保障協力体制を危機にさらすことだと表現し、同盟国等にファーウェイ製5G機器導入を避けるよう警告を発しました

一方で、10日の週にポンペイオ国務長官は、英国のジョンソン首相が部分的にファーウェイ製5G機器を導入すると発表したことに対し、米英同盟には影響ないとの発言を行っており、米政権内の本件に関する温度差も話題になっています。

同様にエスパー長官講演前日の14日には、ホワイトハウスのRobert Blair国際通信政策担当官も記者団に、「米国はファーウェイ製導入が招く結果を注視して行くが、(英国がファーウェイ製品を導入しても、)米英間の情報共有全体が侵食されることはない(no erosion)」と述べていたところです

このように、今後ドイツなど西側同盟国のファーウェイ製機器導入への姿勢やその影響が明らかになるにつれ、米国内でも立場立場で様々な意見があることから、米国の姿勢も揺れ動くものと考えられますが、本日は中国に対し強い姿勢を今後も示すであろうエスパー長官の現時点での考え方をご紹介しておきます

15日付Defense-News記事によれば
Esper munich2.jpg●エスパー長官は、「5Gを中国企業に依存することは、例えば、我が同盟国等の重要なシステムを脆弱にし、妨害や攪乱やスパイ活動にさらすことにつながる」、「(ファーウェイ製導入は、)また、我々の意思疎通や情報共有能力を悪化させることにつながり、同盟関係を損ねることにもなりかねない」と強い懸念を表明した
●更に長官は、「(ファーウェイ5G導入は)、我々の国防協力に重大なレベルのリスクをもたらす」と強い表現でファーウェイ5G製品導入に危機感を表明した

●米政権内部にも本件に関する発言のトーンに差はあるが、本会議におけるエスパー長官、ポンペイオ長官、米国両政党の議員(ペロシ下院議長を含む)の発言は、中国はファーウェイ製5G機器を使用してサイバースパイ活動や監視活動を実施可能で、大きな安全保障上の脅威であるという点では一致していた
ポンペイオ長官は同会議で、「ファーウェイや中国が背後にいるハイテク企業は、中国情報機関にとってのトロイの木馬である」と述べつつも、「西側は専制国家に対して勝利を収めつつある」との認識を示していた

昨年12月、NATO加盟国首脳たちは初めて、中国の台頭が経済や軍事面で与える影響について、NATOとして考える必要がある点で合意しているが、2月12日から13日に掛けてエスパー長官はNATO本部で、加盟各国代表に中国への懸念を公に改めて説明した
同長官は15日の講演で、NATOの対中戦略は引き続き検討中であると述べたが、北京政府が人工知能や最新技術を、少数派であるイスラム部族、ジャーナリストや民主化推進活動家の監視や圧迫に使用している点も交え、中国への深い懸念を説明した

Pompeo.jpg●一方で同長官は、「NATOは、ロシアの悪行を抑止し、欧州大陸の安全保障確保に焦点を当てたものであるべき」との大原則にも言及している
●エストニアの前大統領からの質問「ファーウェイの代わりになる5G機器を、米国は準備検討しているのか? その進捗具合は?」に対し、ホワイトハウス主導でサムスン、ノキア、エリクソンとパートナー関係を構築し、米国防省はそれら企業に5G機器の試験用に施設や演習場提供を申し出ていると対応した

●5Gの側面からだけでなく、エスパー長官は同会議出席者に、「多くの国が数十年に渡り享受してきた国際ルールに基づく秩序を、中国が勝手に変更しようとしている問題に目を覚ますべきだ」、「習近平は中国を悪い方向に加速度をつけて引っ張っている。国内抑圧、前時代的な経済習慣、そしてより私を懸念させるアグレッシブな軍事体制などが目立っている」と警鐘を鳴らした
●これらの話のほかにエスパー長官は、米国が中国との紛争を望んでいないこと、各種ミサイル防衛システムに投資している事、宇宙軍を立ち上げたこと、2021年度予算案で旧式の装備を早期退役させ、超超音速兵器やAIや無人システムに資源を再配分していることなどを説明した
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Esper munich3.jpgNATOは本来ロシアに対処すべき組織である点を再確認しつつも、エスパー長官は対中国への協力を欧州諸国に要請し、5Gが極めて重要な課題だと訴えています

ここで本来なら「5G」に関するうんちくを語り、なぜ西側諸国がファーウェイ製品になびくのかをご説明できればよいのですが、そこまでの知見がありません

残念ながら、中国が人材と資金に物を言わせ、5G技術で一歩も二歩も先んじているということなのでしょう・・・・

5G関連の記事
「5Gと軍事レーダーの干渉確認「」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-05
「5G企業とGPS関係者がLバンド電波巡り激突中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22-2
「戦略コマンドが5Gとの電波争奪に懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-27
「5G試験のため民間に演習場提供案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-14

「CSBA対中国戦略レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「2019年アジア安全保障会議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-31-1
「2019年中国の軍事力レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-06
「グーグルからAI技術流出」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-31-1

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F-35とKC-46Aの小ネタ2つ [亡国のF-35]

ポーランドがF-35を32機購入契約締結
ボーイングが更にKC-46開発で160億円追加負担

全く異なるF-35とKC-46Aに関する「小ネタ」報道ですが、小さなことからコツコツと・・・が信条の「東京の郊外より・・・」ですので、ご紹介しておきます。

ポーランドがF-35を32機購入契約締結

F-35 fuselage2.jpg1月31日、ポーランドの国防相が32機のF-35と同機の予備エンジン33セット(F135)を購入する$4.6 billion(約5100億円)の契約書に署名し、同国のAndrzej Duda大統領がポーランドと周辺地域の安全保障を強化する上で、極めて大きなステップだと表現しています

同契約は昨年9月に米国防省から許可が出ていたものですが、これで先日ご紹介したシンガポールに続き、ポーランドは13カ国目のF-35運用国になる方向です

ちなみに他の12カ国は・・・
(カッコ内の数字は購入予定機数、ちょっと古い数字も含まれます)

共同開発国では、豪州(100機), Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、米国(2443)(A1763、M420、N260)
FMS購入国では、Belgium(34), Israel(19),、日本(42+100) , 韓国(40)、シンガポール(当面12機 最終的に約50機)

共同開発国の中でも、F-35に不信感を持つカナダのトルドー首相は、正式購入決定を先延ばし続けて現在も機種選定中(65機購入予定だった)で、100機購入予定だったトルコは、S-400をロシアから導入したことで、共同開発国から排除されました

31日付米空軍協会web記事によれば
F-35hardpoints2.jpg●31日に結ばれた契約には、機体と予備エンジンのほか、8台の訓練用シミュレータ、維持整備支援、ALIS(?)が含まれ、パイロット24名と整備員約100名の養成訓練も含まれている
機体の受け取りは2024年から始まり、毎年4-6機づつ2030年まで受領する予定。機体は「Block 4」型で、1機当たりの価格は$87.3 million(約96億円)である

●契約セレモニーでMariusz Blaszczak国防相は、F-35は同国が保有するパトリオットやF-16と相互連携運用が可能だと導入メリットをアピールした
●ポーランドは昨年5月にF-35購入希望を米国に伝えていたが、同6月にポーランド大統領がホワイトハウスを訪問した際、トランプ大統領がF-35に上空を飛行させ、メディアで大きく取り上げられたところである


ボーイングが更にKC-46開発で160億円追加負担

KC-46 2.jpg1月31日、ボーイング社が米国の証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)に提出した定期資料で、トラブルが続発して運用態勢確立が遅れている米空軍のKC-46A空中給油機に関し、追加で約160億円の追加出費を強いられたことが明らかになりました

ボーイングは米空軍と、同機の開発と最初の18機納入までを「経費固定契約」で結んでおり、契約金額をオーバーした追加経費部分についてはボーイング社が負担することになっています。

このような契約形態は、既に空中給油装置技術は確立してKC-135やKC-10で実績があり、母体となる旅客機B-767も飛行実績が十分あることを受け、装備品開発における経費高騰と開発遅延の「黒歴史」イメージ払しょくを狙い、米空軍がボーイングと合意して始めたもので、契約当時の記者会見では、当時のドンリー空軍長官が新たな取り組みとして大いにアピールしていました

KC-464.jpgしかし機体開発後半になってトラブルが続発し、初号機の納期が2年近く後れ、納入開始後も米空軍による機体性能試験の過程で様々なトラブルが明らかになり、米空軍が要員養成のため細部には目をつぶって機体を順次受け入れたものの、未だに最重大レベルの不具合3種類が未解決で要求性能を満たせず、「機体開発費」が膨らみ続けてボーイングの自腹持ち出し分が拡大し続けている現状です

ボーイングの持ち出し分は、2018年が約510億円、2019年が約800億円と明らかになっていましたが、今回の新たな報告資料で約170億円が追加され、合計で3300億円を超えるに至っています

技術的な問題以外にも、納入された胴体や翼の中に、工場で使用された工具やゴミが残されたまま見つかるなど、ボーイング社現場の荒廃ぶりが明らかになり、米空軍が2度にわたって機体受け取りを拒否する事態が昨年発生しています

31日付米空軍協会web記事によれば
●米空軍は、特に解決の見通しが立っていないRVS(remote viewing system:給油操作員が空中給油ブームの操作をモニター画面を使用して行う装置。以前の給油機では、機体後方の窓から直接相手機を確認しつつ操作を行っていた)の問題解決には3-4年が必要と見積もっており、それまでKC-46Aを実戦投入出来ないとしている
KC-46 RVS2.jpg国防省の試験評価局も米空軍に対し、空中給油を実施する如何なる環境でも任務遂行可能なレベルにまで改善されることを、確実に確認するよう求めている

●Bloomberg報道によれば、B-737MAXの事故を受けて交代した新たなボーイングCEO、David Calhounに対し米空軍参謀総長が書簡を送り、米空軍が機能不完全なKC-46Aを受領させられ続けている現状から、ボーイングがKC-46A問題により真摯に取り組むよう求めたところである
/////////////////////////////////////////////////

ポーランドのF-35購入契約の件では、ポーランド国防省の公式声明に、契約に含まれるものとして「自動兵站情報システムALIS」の名前が含まれているようですが、1月21日に国防省F-35計画室が、「ALISを断念する」、「ODIN(Operational Data Integrated Network)を導入する」と発表したところでもあり、些細なことですが気になります

ボーイングはどうするんでしょうかねぇ・・・。米空軍は空中給油機が不足することから、空中給油業務を民間企業へ一部委託することまで検討を始めており、「世も末」感が更に加速しています

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「強度弱いボルトをF-35で多数使用」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-31
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F-35維持費の削減は極めて困難
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KC-46関連の記事
「ついに空中給油の民間委託検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-15
「貨物ロックに新たな重大不具合」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-12
「海外売り込みに必死なボーイング」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-22-1
「米空軍2度目の受領拒否」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-1
「機体受領再開も不信感・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「米空軍がKC-46受け入れ中断」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-3
「不具合付きの初号機受領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-2
「初号機納入が更に遅れ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20
「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1
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空母フォードへのレーザー兵器搭載に期待する声 [Joint・統合参謀本部]

フォード級空母の発電能力はニミッツ級の3倍
防御用レーザーに必要なスペースと電力余裕有
弾道ミサイルと超超音速兵器には対処困難も

Ford Navy.jpg31日付Defense-News記事は、運用態勢確立に向け訓練中のフォード級空母の一番艦空母フォードJ.J. Cummings艦長へのインタビューと、フォード級空母への期待を語るシンクタンクCSBA研究員の話を取り上げ、米海軍は艦艇防空に関し、これまでのように迎撃ミサイル頼みから脱却する必要があるとの意見を紹介しています

フォード級空母は、従来のニミッツ級空母の2倍近く(1隻約1兆5000億円:搭載艦載機除く)に跳ね上がった価格にも拘わらず、搭載新装備のトラブルやトランプ大統領の電磁カタパルト「ダメ」発言で風当たりが強く、加えて対艦ミサイルの発達で空母の脆弱性指摘が厳しくなる一方の中で、運用態勢確立に向け訓練中です

特段に新しい話題があるわけではありませんが、米海軍の水上艦艇の在り方に関する話題をいろいろ取り上げてきた一環として、新装備を手に入れウキウキの空母艦長とシンクタンク研究者のお話をご紹介しておきます

1月31日付Defense-News記事によれば
Ford Navy3.jpg●空母フォードのJ.J. Cummings艦長は同空母上でインタビューを受け、対艦ミサイル防衛のための新たな兵器システムを受け入れるスペースと発電量を、同空母は備えていると自信を示した
フォード級空母が搭載している「A1B原子炉」は、ニミッツ級空母が搭載している原子炉の3倍の発電能力(100メガワット以上)があり、電磁カタパルト(EMALS)等の新たな装備を搭載しても、電力供給能力に余裕があると同艦長は述べた

●空母の脆弱性からその存在意義が問われている空母の防御に関し同艦長は、フォード級空母はレーザー兵器のようなエネルギーを大量に必要とし、かつ新たなスペースが必要な装備にも対応可能だと語った
「海軍の世界における革新を語りたいなら、この空母にはそれが存在している」、「フォード級はニミッツ級より軽く(電力消費量が少ない意味か?)作られている」、「ニミッツ級には多くの追加装備が搭載され、その能力向上が図られているが、その電力供給は限界に達しつつある。フォード級には将来システムが搭載可能なように、電力供給量に余裕がある」と同艦長は語った

米海軍省の調達責任者であるJames Geurts氏は、開発経費の超過等の問題を抱えつつもフォード級空母を追求する理由の一つは、空母の残存性確保にフォード級が欠かせないからであると説明し、「同空母は次世代システム搭載に必要な柔軟性を保有している点で、重要な戦力である空母の残存性を高めることが出来るシステムとして重要だ」と述べている

CSBAのBryan Clark研究員は
●元米海軍士官であるCSBAのBryan Clark研究員は、フォード級空母はその強力な発電能力を残存性向上に生かすことが出来るとし、「空母の特に近距離防御力向上にレーザー兵器搭載が考えられるが、従来の艦艇には電力確保という大きな課題があった」と述べ、
Clark CSBA2.jpg「仮に3-400kw級レーザーを搭載するとして、まず艦艇上に十分なスペースを確保する必要があり、更に十分な電力を確保する必要がある。フォード級ではそれが可能なのだ」と説明した

●Clark研究員は長年に渡り、ロシアや中国やイランは米艦艇にミサイル飽和攻撃を仕掛けて防空ミサイルを打ち尽くさせようしているから、米海軍は迎撃ミサイル重視による艦艇防空から脱却すべきと主張してきた
●対策として同研究員は、同じ艦艇の垂直発射装置スペースに4倍の数量を搭載可能な小型の短射程迎撃ミサイル「Evolved Seasparrow」を搭載することや、レーザー兵器で対艦ミサイル迎撃を考えるべきと主張してきた。この場合、艦艇近傍に敵ミサイルが接近するのを待って迎撃をする「気持ち悪さ」はあるが・・・

●同研究員は「レーザー技術は相当成熟してきたので、レーザーでフォード級は、空母の大きな課題である脆弱性に一つの対策を確保できる。数個のレーザー兵器搭載は防空能力を相当向上させるだろう」と述べている
●しかし同研究員は、レーザーで艦艇へのすべての脅威に対処できる訳ではないと釘を刺し、「おそらく、通常の巡航ミサイルから超音速巡航ミサイルまでには対応可能だろうし、小型ボートのような目標にも有効だろう。しかし、弾道ミサイルや超超音速兵器には有効ではないだろう」と語った
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Ford Navy2.jpgClark研究員は「仮に3-400kw級レーザーを搭載するとして」との想定で話をしていますが、現状は60kwからスタート(拡張性150kwまで)程度で、数百KWにはまだ時間が必要と思われます(下の過去記事等をご覧ください)

フォード級空母でも、先日ご紹介したロシア軍がフリゲート艦に搭載する超超音速ミサイル6発以下程度で撃沈可能と見積もられているようで、空母の旗色は悪くなる一方です

これも先日ご紹介したように、CSBAは、大型艦艇中心の米海軍の体制整備に疑問を呈し、平時には有人運用でグレーゾーンの対応にも使用しやすく、有事には無人で運用可能な中型艦艇導入を推奨しています

この有事無人の中小型艦艇は、防御ミサイルや攻撃兵器を搭載し、数多く配置して敵の攻撃ターゲティングを複雑にし、かつ防御や攻撃力で一部の大型艦艇を保管して守ろうとする役割を期待されています

いずれにしても、ISR能力の発達に伴い、ステルス性も限界があり、動きの遅い水上艦艇は、生き残りが難しくなる一方です。「F-35Bを搭載するらしい護衛艦いづも」はどの様な運用をするのでしょうか?

フォード級の話題
「空母フォード:3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「トランプはEMALSに反対」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-13
「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「解説:電磁カタパルトEMALS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

関連の記事
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「ロシアの対艦超超音速ミサイル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-21
「米議会で中国抑止を考える」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17

「米海軍トップが軍種予算シェア見直し要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-16
「中国巨大艦艇が就航」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-15-1

最近のレーザー関連記事
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
「F-15用自己防御レーザー試験」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-04

そのほか米海軍関連の記事
「空母1隻削減案に揺れる」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-29
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24

「空母フォード3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「攻撃原潜に新たな形態BlockⅤ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-07

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南シナ海で航行の自由作戦を活発化とは言うけれど [Joint・統合参謀本部]

2015年から開始で2019年が最も活発だったと米海軍
台湾海峡通過も含め航海の自由のため頑張ると主張も

南シナ海.jpg5日付Defense-Newsは、米太平洋海軍発表を取り上げ、2015年にオバマ政権下で開始された南シナ海における「航行の自由作戦:FONOP:freedom of navigation operations」が、2019年には過去最多の7回実施され、今後も「航行の自由」を確保するため継続されると報じています

「航行の自由作戦:FONOP」とは、沿岸各国の領有権主張が入り混じる南シナ海の島や岩礁を中国が勝手に埋め立てて拡大し、領有権を主張して滑走路や格納庫や弾薬庫やレーダーサイトやミサイル部隊を配備して軍事要塞化を進めていることに対抗し、それら人工島から12マイル以内(国際法で領海と言われる範囲)を米海軍艦艇が無害通航するという作戦です

厳密にいうと、フィリピンやベトナムも小さな岩礁に人工物を置いて領有権主張を行っており、「過度な行動は好ましくない。話し合いでの決着を図るべき」と南シナ海沿岸国すべてに訴えるのが「航行の自由作戦:FONOP」の狙いですが・・・

・・・とは言っても既に中国は南シナ海の複数の島々の埋め立て作業や滑走路を含む軍事基地化をほぼ完了しており、今や米艦艇が12マイル以内に近づくと、島々から中国軍戦闘機がスクランブル発進して威嚇し、島配備の地対艦ミサイルが狙いをつける・・・と言った事態になっているようで、「勝負はついた」感が漂っています

そんな中ですが、米太平洋艦隊の「引き続き航行の自由作戦(FONOP)頑張るよ」発表をご紹介しておきます

5日付Defense-News記事によれば
南シナ海3.jpg米太平洋海軍の報道官は、2015年に始まった「航行の自由作戦:FONOP」を昨年2019年に7回実施して年間で過去最多になったと発表し、今後も過度な領有権主張に挑戦していくとの意思を明確にして、公海における安全と航海の自由を確保すべく、作戦を継続すると声明で明らかにした
●同報道官は声明で、「米軍は世界中で定期的に、航行の自由を主張するための行動を行っている」、「全ての作戦は国際法に則って実施され、米国は国際法の許す限り、その場所に過度な領有権主張があろうと、その地域にもめ事があろうと、全ての場所で飛行し、航行して作戦行動を行うことを示していく」と述べている

2015年以来の南シナ海「航行の自由作戦:FONOP」実施回数は
2015年  2回
2016年  3回
2017年  6回
2018年  5回
2019年  7回
トランプ政権となった2017年以降、対中国で積極対抗姿勢を示して回数が増加している

一方、台湾海峡の米艦艇通過は傾向が異なり
2016年  12回
2017年  5回
2018年  3回
2019年  9回
トランプ政権となった2017年以降、一旦は減少したが、2019年に再び上昇している

南シナ海2016.jpg←左写真は2016年のもの
2020年に入っても、1月25日に最初の「航行の自由作戦:FONOP」を沿岸戦闘艦LCS:USS Montgomeryで南沙諸島(Spratly Islands)を対象に実施している。ちなみにこの際は、同諸島からスクランブル発進した中国軍の2機の戦闘爆撃機が米艦艇に対し威嚇飛行行った
●前述のように「航行の自由作戦」は過度な領土要求を対象に実施しており、1月25日の作戦は、公式には、中国、台湾、ベトナムを対象に実施されたことになっている

ただ、このような米軍の作戦にもかかわらず、中国は人工島の要塞化と領有権主張を激しく進めており、米国防省「中国の軍事力」レポートによれば、滑走路や弾薬庫等のほか、既に対艦・対空ミサイル部隊の配備も行っている

●米大学のZhiqun Zhu教授は、「米中関係は、トランプ大統領が香港の自由化運動を支持する姿勢を示して悪化しており、中国とベトナムとの関係も、中国艦艇によるベトナム主張領域への頻繁な侵入により緊張が最近高まっている」とコメントし、
「また台湾で反中国姿勢の総統が当選したことを受け、中国として何らかの対策が必要と考えているであろうから、地域の全般情勢は悪化の傾向にあるとみている」と述べている
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南シナ海2.jpg米艦艇による台湾海峡通過回数が、トランプ政権誕生後に激減したあたりは、米国の中国と台湾への姿勢が微妙だった過去を映し出しています。今は台湾への武器輸出もそれなりに復活し、以前並みの雰囲気でしょうか・・・?

数年前までは頻繁にメディアに取り上げられた、南シナ海での中国の「傍若無人」ぶりですが、今や話題にする人も少なくなり、「既成事実化」が着実に進行しています

南沙諸島で中国軍の戦闘爆撃機がスクランブル発進とは・・・、時の流れは速いもの・・・しみじみ・・・

「南沙諸島と西沙諸島で埋めたて完了・施設充実中」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-17

めっきり減った南シナ海の話題
「初のASEANと米国の海洋演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-03
「次期米軍トップが中国脅威を強調」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14-1
「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「F-35搭載艦艇がFONOP」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-07
「アジア安全保障会議2019」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-31-1
「中国艦艇が米艦艇に異常接近」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-10-06-1
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EA-18Gから2機のEA-18Gを操作して飛行試験 [Joint・統合参謀本部]

EA-18Gの無人運用を狙っているだけではないようですが
将来の投資のための技術分野を見極めるため・・とか

EA-18G 2.jpg4日、バージニア州の米海軍Patuxent Riverから3機のEA-18G電子戦機が離陸し、うち1機が他の2機を遠隔操作して飛行させる試験を実施しました。

無人機として有人EA-18Gから遠隔操作を受けた2機のEA-18Gにも、離発着を行うために操縦者が搭乗していたとのことですが、離陸後は着陸を除き無人機として運用されました

試験を実施した米海軍戦闘開発コマンドは、同様の飛行を4回行い、21個の試験項目について確認する計画持っており、「将来技術のどの分野に投資すべきかを決定するための資にするためのデータ収集」との位置づけのようです

パイロットが離着陸を行い、飛行間の操作を遠隔操作で行うEA-18Gが、どの様な機体改修を受けているのか、なぜEA-18Gを3機使用して試験なのかも報道からはよくわかりませんが、米空軍が主導して昨年12月に実施した「統合マルチドメイン指揮統制演習JMDC2(連接マラソン試験演習)」とも関係する試みだとも報道されており、とりあえずメディアの記事を紹介しておきます

4日付Military.com記事によれば
EA-18G 3.jpgボーイング社の無人・有人機チーム化デモ責任者であるTom Brandt氏は本試験飛行について、「ボーイングと米海軍にとって、将来の投資分野を検討する資となるベータを収集分析する機会を得た」、「開発中の他の多様な米海軍無人システムと他軍種の無人システムに対しても、シナジー効果を与えるもの」と狙いと成果を表現した
●また、この実験によりEA-18Gが実戦においても「orce multiplier」として使用可能で、(2機の無人機を操作した)一人のパイロットの負担をそれほど増加することなく、操縦者の状況把握能力を向上できることが証明された、とも表現した

●更に同氏は、「実験に使用された技術により、有人機にリスクを負わせることなく、センサーを奥深くに送り込むことが可能になる」とも述べ、また国防省が試みている、既存のアセットに新技術を加えることで将来環境でも有効活用する取り組みを前進させるものであるとも試験を紹介している
国防省関係者は最近、複数のアセットを連接してデータ共有を進めるネットワーク構築に取り組んでおり、昨年12月に米空軍主導で行われた実験演習では、F-22とF-35の連接改善、米海軍F-35やイージス艦等々を結ぶネットワーク構築が試された。また11月には、C-130輸送機から無人機の群れディスペンサーX-61A Gremlinsを投入する試験も行われている

4日付C4ISRnet記事はCSBAの提案を紹介しつつ
米海軍は敵の防空域が拡大していることを受け、有人機が操る無人機や兵器をより前方に送り出して戦う方向を追求しているが、CSBAの最近のレポートが一つの形を提言している
Clark CSBA.jpgCSBAのBryan Clark研究員は、無給油で行動半径3000マイルの対潜水艦作戦から対地攻撃まで可能な無人攻撃UCAV(unmanned combat air vehicle)導入を提唱しているが、同時に有人機を無人機の指揮統制用として維持することを求めている

●「もちろんCAS任務には有人機が必要だが、それ以上に遠方との通信維持が困難な作戦地域で、無人システムの指揮統制を担う有人機が求められる。その役割は有人戦闘機に託される」と主張し、「機体内兵器搭載スペースを燃料搭載用に転換して航続距離を増したF-35が候補となる」としている
●また同研究員は、「F-35操縦者によれば、このような任務をF-35に期待した場合にも、F-35のソフトを少し変更するだけで容易に対応可能だ」と説明している

ボーイングのBrandt氏は、今回のEA-18Gによる実験は、F-35が保有する高度な通信装置を使用せずとも、複数の航空アセットを連接することで状況認識能力を向上させることが出来ることを証明した、と実験の意義を語った
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2つのメディア記事からすると、センサーを搭載した無人機を先行的に前方に差し向け、その無人機を負担なく後方の有人機でコントロールしながら、無人機のセンサー情報で有人機操縦者の情勢認識(situational awareness)を向上させるための試験だったと想像できます

x-47Bflyover.jpgまた、無人機を指揮統制する有人機はステルス性を持つF-35を想定しているが、F-35で試す前にEA-18Gで試験してみた・・・とも解釈できます。
いずれにしても、「統合」「マルチドメイン」「連接」「ネットワーク」は、今後の米軍の作戦運用を考えるキーワードであることが、この試験からもうかがえます

それと、CSBAのBryan Clark研究員が提唱する行動半径3000マイルの無人攻撃UCAVは、CSBAの「エアシーバトル」提言で提唱されていたものとほぼ同じですが、米海軍がいつの間にか無人艦載空中給油機MQ-21に変更してしまって尻すぼみになっていたものです

関連の記事
「2021年度予算の焦点は連接・全ドメイン」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「初回のテーマは巡航ミサイル米本土防衛」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-10
「空軍資源再配分の焦点は連接性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-08
「マルチドメイン指揮統制MDC2に必要なのは?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10

F-35とEA-18Gを比べると・・・
「ステルス機VS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22

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国防長官:良くて横ばいの国防予算でNDS遂行するには [エスパー国防長官]

10日公表予定の2021年度国防予算案の方向性
全ドメイン、連接、指揮統制、関連機関見直し

Esper SAIS4.jpg6日、エスパー国防長官がジョンズホプキンズ大学SAISで講演し、10日にも公表予定の2021年度国防予算案の方向性について語り「良くて実質現状維持」程度しか期待できない国防予算の範囲で、国家防衛戦略NDSの目的を達成するため、50あまりの国防省関連機関の業務や組織見直しを行ったと明らかにしました

また、NDSが示した中国やロシア対処のため、「multi-domain作戦」に焦点を置き、米空軍の「全ドメイン指揮統制」取り組みを推進し、かつ米軍戦力運用を「迅速機敏に」、「予想を困難に」、「破壊力を増し、柔軟で、状況適応力に富んだ」ものに変革する方向に投資すると語りました

前職の陸軍長官時代に200もの諸計画や装備開発を「夜間検討会:night court」を行って見直し、より重要な分野に約2兆8000億円を振り向けた手腕を米国防省全体に対し行う決意を示し、昨年8月末には「私は今、毎週90~120分間を本件の公式な会議に当てており、これを繰り返し続けて道を切り開きたい」と意欲を語っていましたが、約8500億円程度の予算再配分を行うようです

7日付米空軍協会web記事によれば
Esper SAIS.jpg●エスパー長官は「米国は国家として財政上の大きな課題を抱えており、国防費が今後も横ばいであることを肝に銘じ、国防省自らの活動や予算配分を精緻に見直し、与えられた予算で国家防衛を遂行しなければならない」と現状認識を語り、
予算は横ばいか、良くて物価上昇分3-5%程度の増加しか期待できない。従って、特定分野の削減や古い兵器システムの早期退役など厳しい選択を行って経費を確保し、必要な分野に再配分しなければならない」、「米議会はこの現状を理解して、国防省の改革を支援してほしい」と訴えました

●削減分野として、過去4ヶ月に渡り「fourth estate」と呼ばれる約50の国防省関係機関経費約10兆円を精査し、医療機関の縮小や「reducing the Cooperative Threat Reduction Program, and reprioritizing missile defense research」などにより約6500億円を捻出し、核抑止や技術開発に再配分すると説明した。
●また、この「fourth estate」から約2000億円相当の業務を米軍組織に移管し、「fourth estate」の規模縮小を行うと述べた

Esper SAIS2.jpg予算の再配分先の焦点としてエスパー長官は、「部隊の即応態勢や破壊力向上には、技術や組織変更だけでなく、戦い方の近代化によって米軍能力を効果的に束ねることが欠かせない」、「そのため予算編成では、全ドメイン作戦を含む、統合の作戦コンセプト開発と実行をサポートする資源配分を行っている」と述べた
●そして、米軍部隊のより迅速で機敏な展開を可能にし、米軍戦力運用を「迅速機敏に」、「予想を困難に」、「破壊力を増し、柔軟で、状況適応力に富んだ」ものに変革する方向に投資すると説明した

具体的な例として国防長官は、米空軍が進める「ABMS:空中戦闘管理システム」や「JADC2:統合全ドメイン指揮統制取り組み」への投資増額を計画していると説明した
更に、地域戦闘コマンドを含む米軍部隊の再編についても言及し、対テロや麻薬密輸対処などの低列度紛争対処から、中国やロシア対処に切り替えるため、国家防衛戦略NDSに沿った人と組織の再構築を検討していると述べた。米アフリカ軍や南米軍の再検討が始まっていると伝えられている
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2021年度予算(2020年10月1日から使用)案の公表は、日本時間の10日夜あたりで、日本のメディアでも11日の新聞には概要が掲載されると思いますが、特定の予算項目が話題に挙がったり、極東関連の予算のみに焦点が当って全体の狙いが見えにくくなる傾向が毎年あるので、ぼんやりとした内容ですが、エスパー長官の思いを前もってご紹介してみました

Esper SAIS3.jpg予算がないんです・・・。中国が西太平洋でA2ADを完成間近でも、ロシアが大西洋や北極圏や東欧正面で活動を活発化していても、無い袖は振れない厳しさが感じられます

そんな中で、フロノイ元政策担当国防次官が提言した、核戦力近代化はほどほどで、中国を72時間脅威下におく体制造り、などは一つの勇気ある提言だと思います。

大統領選挙で政争の具にされそうな米国防政策ですが、エスパー長官の「夜間検討会:night court」までやって改革を進めようとする熱意と、多士多彩な専門家の知恵が、上手くかみ合ってNDSの目標達成に向かうことを祈ります

エスパー国防長官の思い
「資源配分の再検討を不退転の決意で」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-31
「Esper長官の略歴」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-20

ABMSとJADC2関連
「予算で将来連接性を重視しアセット予算削減」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「米空軍の夢をCSBAが応援!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「初の統合「連接」実験演習は大成功」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「空軍資源再配分の焦点は連接性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-08
「マルチドメイン指揮統制MDC2に必要なのは?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24

米海空軍の戦力大増強への反対意見
「中国抑止をフロノイ女史らが語る」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17

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CSBAが今度は米空軍の将来体制検討レポート [米空軍]

米海軍へのレポートでは米海軍の構想に厳しい指摘も
米空軍の戦闘機や爆撃機大増強を応援する姿勢

CSBA 5 Priorities.jpg1月22日、シンクタンクCSBAが米空軍の将来体制に関する75ページの提言レポート「Five Priorities for the Air Force’s Future Combat Air Force」を発表し、5つの優先取り組み事項を挙げ、現在は「一つの紛争」に対応可能規模だが、「二つの地域紛争」に対処可能な体制に増強すべき等々と提言しています。

この提言は、米空軍が2018年9月に明らかにした戦闘飛行隊数を25%も増強する夢構想「The Force We Need」の方向性を支持しつつ、細かな助言を行うような内容で、2019年4月にCSBAが発表したレポート「An Air Force for an Era of Great Power Competition」の内容を発展させたものだとしています

先日ご紹介したCSBAの米海軍に対する提言レポートでは、同じく艦艇数の2割増を目論む海軍に対し、米海軍が中核として調達を希望する大型イージス艦は敵の攻撃に脆弱で平時運用に非効率であるから、中小の無人艦艇(平時は少人数で有人運用)を積極的に導入せよ等々と厳しい意見を提示していましたが、米空軍には「追い風」の提言となっています

F-35 2.jpgただ、CSBAがまとめた昨年4月のレポートに関しては、CSISが同10月にパネル討議を主催し、他の委託研究結果と併せ、「無人機活用への姿勢が不十分」などと批判的に評価する声をあげており、これを受けてか22日発表のレポートでは、無人機の役割拡大に関する内容が盛り込まれいます。

しかし、先立つ予算がなく、継続する実戦運用予算と老朽化が進む現有装備品の更新の取捨選択を迫られる厳しい状況ですから、夢構想ばかり拘っていては誰も相手にしてくれない悲しい現実がそこにあり、2019年11月には早くも米空軍副参謀総長が夢構想「The Force We Need」について、「詳細な分析ではなく、変更がありうる」、「近い将来に目指す数字ではない」等とトーンダウンしていたところです。

・・・とはいえ、国家防衛戦略NDS実現のために必要な体制を見積もった検討レポートですので、「5つの優先取り組み事項」を確認しておきたいと思います

22日付米空軍協会web記事によれば NGAD2.jpg●CSBAが22日に発表した提言レポートは、現在の米空軍の規模は一つの紛争を戦う規模となっているが、国家防衛戦略NDSが対処の焦点とする中国やロシアは、米軍が一つの紛争に従事して余裕戦力が無いタイミングで、更なる紛争を仕掛けて優位に立とうとする恐れがあると懸念し、
●突破力のあるステルス作戦機の増強、無人機活用の拡大、新たな技術の開発加速、より分散した基地からの運用体制確立など、「5つの優先取り組み事項」を提言している、

第1に、米軍が他の紛争に従事している状況下でも、中国やロシアの侵略を抑止して食い止めるため、米空軍は2つ目の世界紛争にも対応可能な規模を備えるべきで、同時にその戦力は、厳しい脅威環境下でも敵地深く進攻でき、敵に聖域を与えない質的能力を備えている必要がある

F-22Hawaii.jpg第2に、高い脅威下での作戦運用にはステルス性が不可欠だが、米空軍のステルス機保有数は不十分であり、F-35やB-21の調達を加速し、更に次世代制空機(PCAや突破電子戦機)や突破型ISR機の開発導入を急ぐべきである
●また、現在保有のステルス爆撃機B-2は、爆撃機体制構想では2030年前半に退役する予定になっているが、不足するステルス攻撃機を確保する意味から、B-2の防御管理システムの近代化改修を引き続き進めて、B-21の機数が十分確保できるまで延命させるべき。同様にF-22についても近代化施策を継続して長く活用し、各ステルスアセットへの搭載兵器についても母機の延命仕様に合わせて能力向上を図るべきである

第3に、母基地から、又は敵の脅威下での長距離作戦運用能力を拡大すべき。中国やロシアは作戦行動に際し、米国が対応する時間的余裕のない短期間に「既成事実の確立:a fait accompli」を試みるだろうが、これを防ぐため、敵のミサイル攻撃の射程外の基地から対応しても、迅速に戦力を作戦地域に投入できるような長距離運用能力が求められる
●なおこの際、敵のミサイルの射程外の距離からの戦力投射能力と、分散した基地からの運用能力は、貴重な戦力の保全と残存性確保のために両方確保されるべきである。国防省は最近、米陸軍が主に近距離の基地防空を担当するよう命じたようだが、CSBAは米空軍自身にも基地防御により多くの人員を割り当てるよう求める

MQ-9-3.jpg第4に、無人機や無人システムよって実施する任務分野を拡大すべきである。米空軍の現在の2030年戦力見積もりでは、無人機の規模は2020年時点の状況から若干増加する程度であるが、戦力の規模や能力を確保するため、より積極的に、例えばMQ-9Aや、有人機とチームを組んでのISRや電子戦や対航空任務に従事できる低コストの無人機活用を進めるべきである

第5に、戦力を大きく増強させることが出来る次世代兵器の開発を加速すべきである。超超音速兵器、電子妨害や電磁パルス兵器を搭載して広範囲の敵に対処可能な巡航ミサイル、燃料効率を大幅に改善して航続距離や在空時間延伸に貢献する新型エンジン、マルチドメイン作戦を支える妨害に強い新型データリンクなどが期待される分野である
●また、現有の巨大なISRアセットであるE-3 AWACSやE-8 JSTARSの後継となるアセットの開発も重要である。全ドメインをカバーする強靭な指揮統制システムを構成する重要なアセットとして、新たなアセットを投入する必要がある
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CSBAの当該レポートwebページ
https://csbaonline.org/research/publications/five-priorities-for-the-air-forces-future-combat-air-force

先日ご紹介した下院軍事委員会では、専門家として招聘されたフロノイ元国防次官らが、米海軍や空軍の戦力大増強構想を批判的に評価し、中国首脳部に武力行使を思いとどまらせる方策として、「72時間」中国海軍戦力を高いリスク下に置くアイディア等を出し、より現実的な具体案を探ろうとしていたところです

CSBAの提言は、予算や人材確保が出来れば実現可能でしょうが、F-35の調達ペースさえ上げられず、代わりに第4世代機F-15Xを導入して次世代制空機PCAの議論を先送りしたり、今現在の部隊運用経費と将来への投資のバランスで悩み深き状況の米空軍が、F-35もB-21も次世代制空機も同時に調達を加速するなど、夢のまた夢・・・と言えましょう

FlightIII-Arleigh Burke.jpg米海軍の大型艦艇分散運用思考には批判的なCSBAが、米空軍に対しては別人のように、敵のミサイル射程外で、かつ分散基地運用であれば追求せよと応援していますが、弾道ミサイルや巡航ミサイルの精度や配備数が増加する中、また中露が迎撃が困難な超超音速兵器配備を進める中、逃げ隠れ出来ない容易な目標である米空軍の遠方分散基地が生き延びることが可能でしょうか??? そんな場所があるんでしょうか???

CSBAは米海軍委は厳しく
「CSBAが米海軍に提言:大型艦艇中心ではダメ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10

米海空軍の戦力大増強には反対の意見
「中国抑止をフロノイ女史らが語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17

CSISがパネル討議でCSBAらの提言を批評
「CSISが3つの米空軍将来体制研究を批評」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-31

米空軍の将来体制夢構想「The Force We Need」関連
「空軍長官386個飛行隊ぶち上げ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19-1
「11月には早くも夢構想あきらめ?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-16-1
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米軍士官学校の性的暴力事案に改善の兆しなし [米国防省高官]

「高価な対策も功を奏していない」
一般の大学より事案が多いとの統計も

sexual assault.jpg30日、米国防省は隔年でまとめる3軍士官学校での性的襲撃・暴行(sexual assault)事案統計を発表し「2018-2019年度」の同事案の訴えが149件と、前回「2016-2017年度」調査時の117件から大きく増加したことが明らかになりました。この統計には、各士官学校入学前の事案も一部含まれているようですが、同条件での統計ですから増加傾向には変わりありません

「2018-2019年度」の学生数あたりの発生率は一般大学の発生率と同レベルだと言うことですが、事もあろうに、仮にも軍の指揮官を養成する士官学校の規律レベルが、一般大学生のそれと同レベルとの結果に、驚くばかりです。この問題は少なくとも7年ほど前から国防省内で問題視されており、各種の対策を講じてきた中で改善が全く見られない点で極めて深刻です

昨年4月には、陸海空軍長官が一堂に会し、一日かけて本件の分析と対策について協議しましたが、協議後の会見で「これ以上有効な対策が浮かばない。一般大学の取り組みに学びたい」と空軍長官が代表で述べるなど、全く光明が見えない状態です

sexual assault4.jpgこの問題は士官学校に限らず、米軍全体の問題であり、米空軍から統合参謀本部議長が長年出ていないのは、特に米空軍内の性的暴力事案の増加が著しく、対策が不十分で改善が見られないとの批判が集まっているからだとも言われるくらいです

そういえば米空軍士官学校では、性的襲撃問題の対策を担うべく2003年に6名編成で設置された「性犯罪対処室」が、2017年に職務遂行不十分(細部不明)で室機能を停止され、1ヶ月以上捜査を受けるとの唖然とする事案まで発生していました

統計を発表する対策担当官は「対策の効果は部分的で、多くの課題が残っている」と述べ、この問題対策に立法を検討する米議員からは「国家的な失敗で不名誉なこと」と表現して批判する状態ですが、対策で言及されているのは、まず「被害者が申し出やすい環境整備」であり、問題の根深さを感じさせます

30日付Military.com記事によれば
sexual assault3.jpg30日「Report on Sexual Harassment and Violence at the Military Service Academies」とのレポートが公開され、3軍の士官学校での性的襲撃報告件数が、「2018-2019年度」に149件と、前回調査時の117件から大きく増加した
●軍種別では、陸軍士官学校が57件、海軍が33件、空軍が40件である。事案には2つの区分があり、捜査につなげず、犯罪者の上司にも通報されない内密の報告「restricted report」と、制限を設けない捜査につながる「unrestricted report」の2つである

●同レポートによれば、女子学生の中で28.5%が望まない性的接触を受けた経験があり、前回「2016-2017年度」調査時の21.6%から上昇しており、一般大学女子の26.5%よりも高い被害率である
男子学生も5.8%と、前回調査より3.3%上昇しているが、一般大学での数値7.1%よりは低い

米軍全体での性的襲撃の報告数は、最新の統計がまとまっている2018年で20500件と、その前の2016年調査の14900件から大幅に増加している

sexual assault2.jpg国防省担当部署のElizabeth Van Winkle博士は、「国防省は、士官学校での性的襲撃との戦いにおいて、高いコストに見合った成果が上がっていないと認識している」、「将来の軍指導者を育てる士官学校は、秩序と規律の場であるべきで、このような行為を一掃する必要がある。しかし我々の取り組みは一部の分野でしか効果が確認できず、多くの仕事が残されている。対処の手を緩めることなく、威厳と敬意を持って軍メンバー全員が扱われるべきだとの大前提を守るため、継続的に取り組んでいく」とコメントを出している

●このような厳しい結果を受け、米議会でも超党派の議員が対策の立法化に取り組んでおり、自らの小さな規律違反が暴露したり、復讐を受けるのではないかとの恐れから、性的襲撃被害の通報をためらうことがないような立法措置案を公表している
提案議員団の一人である民主党のJackie Speier下院議員は、「現状の性的襲撃の状況は、国家としての失敗と不名誉である」と嘆き、「法案は、被害者が口をつぐんで被害を隠そうとする文化を変えるためのもので、国防省として犯罪者に責任を負わせ、被害者が小さな規律違反のために申し出をためらうことが無いよう仕向けるものだ」と説明している

「Safe to Report Act:安全に通報できる法」は、性的被害を受けた被害者が、未成年飲酒や門限破りやお酒保持等のより小さな規律違反がばれることを恐れ、性的暴行被害を訴えないことを防ぐため、小さな規律違反を問わないことを規定する法案である
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sexual assault5.jpg被害を報告しやすい態勢を整えたから報告される事案数が増えているのかも・・・とも少しは思いますが、米軍の大佐レベル以上のセクハラ事案が報じられることも急増している印象があり、米国社会全体や米軍入隊者の質の低下を懸念する声もあり、本件に関し改善の兆しはないと見るべきでしょう

被害通報者への「復讐」防止も実効性を挙げるのは難しいようで、各レベルの指揮官が兵士を集め、「復讐などもってのほか」と訓示したり、セクハラや性的襲撃防止教育をする程度では、効果は薄いのが現状でしょう

ロシア軍や中国軍の状況も知りたいところですが、男性と女性が一緒に働くと言うのは、それだけ難しいと言うことでしょうか。人間はなかなか進歩しないようです

米軍での性的襲撃事案多発を考える記事
「米3軍の長官が士官学校でのセクハラ問題議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-10
「現役パイロット時に上官にレイプされた」https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空軍士官学校の内通者が反旗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-10-1
「性犯罪対処室が捜査対象」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-04
「性犯罪は依然高水準」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-06-1

「性犯罪は依然高水準」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-06-1
「暴力削減にNGO導入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-05

「国防長官が対策会見」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-19
「指揮官を集め対策会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-04
「海軍トップも苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-20

「女性5人に一人が被害」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-10
「空軍内で既に今年600件」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-19-1
「米軍内レイプ問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-19

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