2021年度予算案発表後のゴタゴタ [Joint・統合参謀本部]

「へぇ・・・」だったり、「こりゃー大変だ」だったりなんですが、全般的にこれまでの延長の予算編成では、限界にきていることを感じさせます。
冷戦期に導入した装備品の更新を冷戦後のデタントムードの中で怠り、更にそれら装備品を中東での対テロ作戦で酷使し、加えて中国やロシア軍対応でも長期にわたり海外派遣したりして定期整備も遅れがちな老朽装備にしてしまった今、兵器の更新は待ったなしですが、相変わらずの兵器開発は開発の遅延と価格高騰を繰り返して、悩ましい事態となっています
その上、トランプ大統領の「ご指示」や「思い入れ」を受け、国防予算や政策が振り回され、国防予算が拡大解釈で流用される事態にまでなっており、米国防省と米軍幹部の苦悩は増すばかりの状況です
各種報道から、2021年度予算案発表後のゴタゴタをを「つまみ食い」すると・・・
ホワイトハウスからの横槍
●13日になってトランプ政権の指示で、メキシコとの国境の壁建設費約6000億円分を国防費から捻出することになり、米空軍ではF-35やMQ-9やC-130調達予算が削減される修正案が示されたが、早くも米議会からは党派を問わず反対の声が上がる
米陸軍関連では

●しかし2021年度予算案についてRyan McCarthy陸軍長官は14日、「昨年より生ぬるい」と表現し、今回の2021年度予算案では約1.5兆円の予算再配分に止まったと説明している。また、昨年削減対象となった予算項目の中で、約220億円分が2021年度予算案で復活していると述べている
米海軍関連では
●米海軍予算で、継続して毎年2隻調達していたバージニア級攻撃原潜の予算が「ゼロになっており、対中露の鍵となる装備だけに超党派の議員から大反対の声が上がっている。核兵器近代化や新型戦略原潜予算確保のために削減された模様だが、造船所の体制維持の問題もあり、大いに揉めそう
●新型戦略原潜コロンビア級の一番艦予算が、今後3年間で計1兆6000億円程度計上されることになるが、これを枠が決まっている米海軍の艦艇等建造費から捻出することには無理があるとの声が米海軍から上がっており、米海軍トップが3軍の予算シェア見直しを求めているところ。
---予算案提出を契機に、この意見に下院軍事委員長らが賛同し「将来の米国核抑止の7割を担う戦略原潜予算は、別枠扱いを検討すべき」との意見を表明し、エスパー長官の「3本柱予算は各軍種内で」との基本方針と対立鮮明化
米空軍関連では

●B-2爆撃機用に開発されてきた敵防空兵器探知システムDMS-M(Defensive Management System-Modernization)予算約360億円が見送られた
●高高度有人偵察機U-2は、5年後には退役の方向だが、2021年度予算案にはU-2搭載装備の近代化経費が相当程度含まれており、現場やロッキード社に驚きや困惑が見られる
///////////////////////////////////////////////////
米海軍が特に厳しいように思います。

艦艇まわしや維持整備費の状況、民間企業が担当するドックの状況など、人の面とモノの面、更に管理体制も含め、崩壊前夜の様相を呈しています。太平洋艦隊隷下で艦艇の衝突事故が連続発生していましたが、後で振り返って「終わりの始まりだった・・・」なんてならないことを祈ります
エスパー国防長官の思い
「横ばい予算でNDSを遂行するには」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「資源配分の再検討を不退転の決意で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-31
「Esper長官の略歴」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-20
米海軍の苦悩
「3軍の予算シェア見直しを訴え」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-16
「空母1隻削減案に揺れる」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-29
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09
コメント 0