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米空軍がABMS具現化第1弾でKC-46に中継ポッド [米空軍]

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F-22とF-35のデータ共有を可能にする中継ポッド
約2年かけて練ったABMS構想を具体化するとの意思表明
全体像が見えないと懐疑的な議会説明がカギ

ABMS4.jpg21日、米空軍は約18か月かけて構想を練り、数回の実験演習を行ってきたABMS(Advanced Battle Management System)を具現化する時が来たと声明を発表し、第1弾として相互に通信できないF-22とF-35のデータリンクを繋ぐ中継ポッドをKC-46空中給油機に搭載するプロジェクトを行うと発表しました

このABMSは、多様な空軍アセットがセンサー等から入手した情報を迅速に共有し、前線から指揮官レベルまでがリアルタイムで共有できるシステム構築を目指すもので、これにより意思決定を迅速化して中国軍に対抗しようとするものです

ABMS.jpg迅速な情報共有配分の必要性は米国防省全体で危機感を持って認識されており、米国防省レベルではJADC2(Joint All-Domain Command and Control)とのプロジェクト名、米陸軍は「Project Convergence」、米海軍は「Project Overmatch」と呼んで、それぞれが保有するアセットを連接して迅速な作戦運用実現に着手し、米空軍のABMSはこれらを束ねる柱になろうと突っ走っています

具体的には、国防省やDARPAや陸海軍や多数の企業に声をかけ、ABMSの実験演習が2019年12月(米本土防衛対巡航ミサイルシナリオ)、2020年9月上旬(宇宙軍絡みの拡大シナリオ)と下旬(アジア太平洋シナリオ)に行われ、多様な連接・情報共有&指揮統制要領が試されました

このABMSを大々的に推進していたRoper空軍調達担当次官補が政権交代と共に空軍省を去り、その後は全くこの話が聞こえてきませんでしたが、2022年度予算案公表直前に米空軍が「本格的に取り組むぞ!」との声明を出し、その第1弾として第5世代機を繋ぐデータ中継ポッドを持ち出しました

21日付米空軍報道官発表や報道によれば
ABMS2.jpgBrown空軍参謀総長は声明で、「約2年間に渡る精力的な検討や実験演習を経て、ABMSが疑いないものであることを示すことができた。迅速でより良い意思決定のため、ABMSが陸海空宇宙サイバードメインの大量のデータを収集して共有することができると我々は示すことができた」と明言し
「ABMSは米軍を有利な立場に置くことが明らかであり、これを具現化してその力と能力を活用する時が来た」と訴えた

具体的には具現化の第一歩として、一部のKC-46空中給油機に、現状ではステルス性維持のため相互にデータ共有ができないF-22とF-35データリンクの中継装置を、KC-46空中給油機にポッドとして搭載するプロジェクトを開始する
ABMS3.jpg担当する空軍迅速能力開発室RCOのRandy Walden氏は、「ABMSのCapability Release #1として中継ポッドの設計開発調達を進める」と述べ、併せて「ABMSの基礎を構成するデジタルインフラへの投資を加速し、意思決定速度で優位性を確保するため、賢く・素早く・打たれ強いsystem of systemsをもとめる米軍のニーズに対応していく」と語った

ただ、KC-46に搭載する中継ポッドが、何時、どの程度の性能で、どれくらいの数量提供されるのか等、プロジェクトの細部は一切明らかにされなかった
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本筋ではない「重箱の隅」ですが、今でも疑問に思います。同じロッキード製でありながら、相互にデータ共有ができないF-22とF-35がなぜ出来上がったのか・・・

ABMS5.jpg約2年前にABMSとの言葉が出始めた頃は、E-8 Joint STARSの後継との位置づけで語られ始めましたが、今や膨大なシステム群で構成される「system of systems」の様相を呈し、何が何だかよくわかりません

このような疑問は米議会も同じで、米議会は空軍に昨年時点で「今後全体像が良くわからない構想に、五月雨式に様々な装備要求が出てきそうだから、2022年度予算提出の際は全体像をしっかり説明しろ」と命じており、5月27日の2022年度予算案提出発表後に、様々な情報が出てくるものと思います

全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMS関連
「3回目はアジア太平洋設定で」→https://holylandtokyo.com/2020/10/05/425/
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holylandtokyo.com/2020/09/09/476/
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「今後の統合連接C2演習は」→https://holylandtokyo.com/2020/05/14/671/
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28

米海軍と海兵隊は我が道なのか
「米海軍の戦術ネットワークProject Overmatch」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-15
「米空軍の課題:他軍種はABMSに懐疑的」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-12
「統合にデータフォーマットの壁」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-12

実は米陸軍と空軍の2年計画は画期的だった
「米陸軍と空軍がJADC2コンセプト共同開発にゆるく合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-06

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Kendall空軍長官候補が上院での質疑に臨む [米空軍]

B-21やF-35調達数、A-10やMQ-9の今後
性的襲撃事案多発への対応についても所信を語る

Kendall SASC.jpg5月25日、米空軍長官候補に指名されたFrank Kendall元調達&技術開発担当国防次官が上院軍事委員会での質疑に臨み、「私が国防省に戻ろうと考えたのは、中国対処に取り組みたいと考えたからである」と思いを語り、「承認いただけたら、この課題に立ち向かう」と信念を語りました

また、B-21爆撃機やF-35戦闘機の調達数や、A-10やMQ-9の今後など航空アセットへの投資の考え方など、厳しい予算繰りの中での装備近代化について所信を述べ、あわせ部隊で大きな問題となっている性的襲撃(sexual assaults)について、部隊の「command climate:部隊の状況・業務要領・雰囲気」を精査して問題対処にあたると語りました

Kendall SASC2.jpgそれほどインパクトのある発言があったわけではありませんが、4年前まで務めた国防次官時代に剛腕で知られ、空軍装備品開発や調達問題にも詳しい陸軍士官学校卒業の空軍長官候補の基本的考え方を知る機会ですので、ご紹介しておきます。なおKendall氏のご経歴については、末尾の過去記事をご覧ください

25日付米空軍協会web記事によればKendall氏は
中国は湾岸戦争での米軍の戦い方を研究し、米国が中国に戦力を向けた場合を想定して、それを撃破するとの明確な目標を定めて急激な軍備近代化を進めてきており、中国の2021年代の近代化の大きな成功は米国の大きな懸念事項になっている
US China2.jfif私が国防省に戻ることを考えたのは、この中国の急速な軍事近代化への対処に関心があったからである。米軍も中露の脅威に対処するため進化を遂げてきたが、やるべきことが多く残されており、長官就任を承認いただけたなら、米空軍と宇宙軍の組織編制、訓練、装備品調達に尽力し、中露の抑止に努め、要すれば如何なる敵も撃破し勝利を収めたい

核抑止3本柱の2本を米空軍が担っているが、併せて米空軍は核戦力運用の指揮統制システムを担っており、この極めて重要(by far its most important)な4本柱の3本を担ってその維持に今後も全力を尽くす
開発中のB-21爆撃機は145機が必要だと考えており、現時点では妥当な機数だと思う。まだ本格調達開始には時間があり、状況の変化により要求値は変化する可能性がある(注:機種選定時には「少なくとも100機」、その後「少なくとも100-145機」と変化し、現在GSコマンドは220機必要だと主張し始めている)

A-10 4.jpgA-10攻撃機については、そのユニークな地上部隊支援能力から私は応援団であるが、何機を今後も維持していくかについては厳しい各種トレードオフも見極める必要がある。全てを無くすことには抵抗がある

F-35は米空軍作戦機の中核であり、現存するベストな戦術航空機で当面あり続ける。不幸にも複雑で高価な装備品だが、圧倒的な兵器だと認識している。4年前まで国防次官として勤務した際も、その困難な道のりと課題が続く長い経緯を見てきた
米空軍が開始した「TacAir Study」についてはまだ把握していないが、戦闘機の最適な構成比率を見極める検討であり、進めていく。ただF-35の維持費については、多く導入すれば単位当たりのコストは低下するので、まだまだ導入機数が少ない段階では、計画に沿って調達を進めて体制の安定を目指していく

Kendall22.jpgMQ-9はイラクやアフガンでの対テロ作戦に大きな貢献をした機体だが、このままでは強固に防御された作戦域での活躍は難しく、投資をして能力や生存性を高める必要がある
性的襲撃問題が依然大きな課題だが、米空軍部隊の大部分は健全な状態にあると見ている。ただすべてが良い状態とまでは言えず、長官に就任したら部隊の「command climate:部隊の状況・業務要領・雰囲気」を厳正に精査して問題がある部隊を把握し、問題対処にあたりたい
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B-21 bomber.jpgKendall氏が頑張っても動ける余地は少ないですし、空軍だけでなく宇宙軍という大問題も背負っての登板ですから、大きな期待は酷でしょうが、Brown空軍参謀総長と連携よろしくお願いしたいと思います

4年の国防次官前に2年間調達次官補も務め、その前にも国防長官室で別分野の次官補や室長など務めた剛腕の「実務の人」ですので期待いたします

オバマ政権で調達&開発担当国防次官を4年
陸軍士官学校卒で航空工学修士とMBAと法学博士
「空軍長官候補Kendall氏をご紹介」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-28
https://holylandtokyo.com/2021/04/30/120/

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韓国への弾道ミサイル性能制限撤廃に米国同意 [安全保障全般]

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射程800㎞以下の制約が撤廃
米国は対中国に期待も、日本にとっては懸念材料のみ
まぁ、日本も射程を伸ばしているので、静観の構えか

Hynmoo-4.jpg5月21日、米韓首脳会談に臨んだ韓国大統領は会談後、「(韓国の弾道及び巡航ミサイル開発を制限していた)米韓ミサイルガイドライン撤廃に合意した」と米韓共同記者会見で明らかにしました

下記でご紹介するように、1979年に米韓で設定された韓国保有弾道ミサイルに関する制限は、2012年には巡航ミサイルにも制限を広げましたが、北朝鮮側のミサイル開発に伴い順次制限が緩和され、日本の半分が射程に入る弾頭重量無制限の弾道ミサイル開発が可能となっていました

Korea US2.jpg巡航ミサイルでは、既に射程1500㎞の兵器が10年前から配備開始されており、弾道ミサイルと合わせ少なくとも1500発以上を韓国は保有し、2000発まで増強する計画を持っています

25日付Defense-Newsは、韓国が射程1000~5000㎞の中距離弾道ミサイル開発に進み、潜水艦発射型の弾道ミサイルや極超音速兵器開発に進む可能性も高いと分析し、元韓国国防開発庁長官の「我々は長年に渡り長射程ミサイルの技術獲得を追求してきたが、米韓ガイドラインの制約で成しえなかった。しかし今や我々はどんなタイプのミサイル開発も可能になった」との言葉を紹介しています

Hyunmoo-3.jpg米国メディアは、北朝鮮の脅威を背景に韓国が宿願を果たしたと報道していますが、一般の日本人にとっては「脅威」としか思えません。

記事末尾に紹介する日本の信頼できる専門家は、日本も長射程兵器導入に進みつつあり、「もはやお互い様になりつつあるので、放っておいた方がフェア」とのコメントですが、気になるので同ガイドラインの経緯や韓国弾道&巡航ミサイル概要をご紹介しておきます

韓国保有の弾道&巡航ミサイルへの制約経緯
(米韓の取り決めの経緯)
1979年 射程距離180㎞以内 弾頭500㎏以下 
 一方で米国は、韓国に韓国産ミサイル開発のため技術提供を行う
1997年 射程距離300㎞以内 弾頭500㎏以下

2012年 射程距離800㎞以内 弾頭500㎏以下
(巡航ミサイルは、射程300㎞以上は弾頭500㎏以下、それ以外は無制限)
2017年 射程距離800㎞以内 弾頭制限撤廃

2020年 同条件:固体燃料ロケット開発同意
2021年5月 全ての制約撤廃
Hynmoo-2.JPG








韓国が既に開発中の中射程弾道ミサイル「玄武:Hynmoo」
韓国は既に、下記の玄武-2と玄武-3を合わせて1500発以上保有しており、2000発まで増強する計画である
韓国は既に弾道及び巡航ミサイルを保有している
--- 弾道ミサイル玄武-1及び発展型の玄武-2は、射程距離800㎞以内
--- 巡航ミサイル玄武-3は、射程1500㎞で201年に部隊配備と報道

制限撤廃を見据え、韓国は中距離弾道ミサイル玄武-4開発中
--- 射程800㎞以上、弾頭2トンのバンカーバスター型貫通弾
--- 2020年3月に2発の発射試験
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ハドソン研:村野将さんのコメント(5月20日Twitter)
Murano.jpg元々の米韓ミサイル指針は、射程とともにペイロードの重量制限を設けていたというのがポイント。それが2017年の改定で、800kmの射程制限を残しつつも、ペイロード制限を撤廃していたので、この時点で既に有名無実化していた(ペイロードを軽くすれば、射程は伸ばせるので)

日本が既に取得することが決まっている各種スタンドオフミサイルや、将来的な高速滑空弾の射程延伸を踏まえたときに、もし韓国政府がこれに抗議してくるようであれば、指針撤廃に抗議してもいいような気がしますが、もはやお互い様になりつつあるので、放っておいた方がフェア

韓国が国として堂々とやっている一方で、日本は反日野党や反日メディアに気を使って「こそこそ」進めている印象で悔しいです

もう一つ、ソウルと北京の距離は約920㎞で、中国政府の反応がどうなるのか興味深いです。どなたかご存じですか???

韓国関連記事
「KF-21デモ機披露」→https://holylandtokyo.com/2021/04/12/104/
「米検査院の日韓駐留経費評価」→https://holylandtokyo.com/2021/03/23/167/
「トルコ戦車へ禁断のエンジン供給へ」→https://holylandtokyo.com/2021/03/12/159/
「AWACSとSIGINT機追加購入」→https://holylandtokyo.com/2020/08/12/521/
「韓国軍人の巨星没す」→https://holylandtokyo.com/2020/07/14/571/

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台湾が統合強化と権限分散の軍改革へ [安全保障全般]

陸軍軍団が各地域を分割担当している現状から
「統合戦域司令部」を5つ設け、海空軍人トップの可能性も

Chiu Kuo-cheng2.jpg10日、台湾国防相が議会で、2022年1月から台湾軍組織を改編し、陸軍中心から統合を重視した体制や、より各地域司令部に権限を委譲して被害下でも作戦遂行が可能な態勢を追求すると証言しました

また報道によれば、この改編を契機とし、数で圧倒する中国軍に対抗するため、非対称な戦いを追求する体制を強化するとも言われているようです

17日付Defense-News記事の専門家は評価するコメントをしていますが、先日ご紹介した米中経済安保評議会に登場した米国の専門家は、硬直的で改革に消極的な高級台湾軍人を厳しく批判しており、装備なども含め、本当に改革が進むのか今後とも注視する必要があるでしょう

現在の台湾軍の指揮統制体制をよく把握せず、台湾より更に硬直的な日本人が、偉そうに批評できる立場にはありませんが、学べるところは学んでいきましょう

17日付Defense-News記事によれば
Taiwan-China.jpg10日、台湾のChiu Kuo-cheng国防相は台湾議会で、2022年1月から、これまで台湾各地域を担当指揮してきた陸軍の澎湖、華東、第6、第8、第10軍団が、台湾西部の澎湖諸島、台湾東部、北部、南部、中部の各地域を担当する第1から第5からなる各戦闘地域司令部に改編されると説明し
同国防相はまた、各戦闘地域司令部司令官は担当地域に所在する陸海空軍部隊の連携に責任を持ち、統合運用体制を強化するとともに、平時の災害対処から有事の本格紛争対処までをコーディネートすると説明したが、これにより各戦闘地域がより独立的に作戦行動を遂行することが可能になると考えられる

国防相は、現在は台湾を地域分割する各軍団司令官に陸軍人が就任しているが、新たな各戦闘地域司令部司令官には海軍や空軍幹部が就任する可能性もあると説明した

Chiu Kuo-cheng.jpg台湾国防研究所のSu Tzu-yun氏はこの発表を歓迎するとともに、台湾本島東部と台湾東部海域の島々を担当する第2戦闘地域司令部司令官には、地域の特性から海軍や空軍人が就任する可能性があるとコメントしている
また同氏は、陸海軍の統合作戦遂行が容易な態勢になることで、数で圧倒する中国軍から被害を受けて中央からの指示が得られない中でも、粘り強く作戦継続することが可能となると評価し、更に非対称戦を追求する台湾の「Overall Defense Concept」とも方向性が一致していると見ている

一方で、現在は陸軍軍団から独立した立場を与えられている、中国本土と台湾の間に存在する金門と馬祖島の防衛司令部にどのように影響するかは不明
また、陸軍軍団から独立している陸軍の航空および特殊作戦軍が現在の状態を維持するのか、再編後に別の戦闘地域司令部の管轄下に入るのかは不明
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Chiu Kuo-cheng3.jpgChiu Kuo-cheng国防相は元陸軍人で、元統合参謀長です。国防相には2月末に就任したばかりで、その前は台湾情報機関のトップでした

台湾政府だけではなく、米国や各方面の専門家からも改革を迫られている「誇り高き台湾軍」ですが、これを積極的な改革姿勢の一つと見るのか、仕方なくひねり出した言い訳の改革案と見るのか微妙なところです

でも日本にとっては参考にするところ大でしょう

最近の台湾関連記事
「DIA長官の中国脅威認識」→https://holylandtokyo.com/2021/05/02/212/
「米空軍の台湾シナリオWar Game」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/109/
「台湾軍の対中国体制に危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/08/155/
「中国は6年以内に台湾併合」→https://holylandtokyo.com/2021/03/19/165/
「フロノイ氏が今こそ語る中国抑止策」→https://holylandtokyo.com/2021/04/05/99/

CSBA提言の台湾新軍事戦略に学ぶ
まとめ→https://holylandtokyo.com/2020/11/08/381/
その1:総論→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27
その2:各論:海軍と空軍へ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27-1
その3:各論:陸軍と新分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27

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F-15EXが配備2週間で大規模演習参加 [米空軍]

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Northern Edge演習で50対50の大規模航空戦訓練に
とりあえずF-15Cの代役できるか確認
新電子戦機器EPAWSS、搭載量増、FBW等で上々の成果
最近のハイエンド想定航空戦演習をのぞいてみます

F-15EX Northern Edge2.jpg20日付米空軍協会web記事が、2週間前に米空軍部隊に配備されたばかりのF-15EXが大規模ハイエンド航空演習「Northern Edge」に参加し、4月28日から5月14日の間に33ソーティーの演習行動をアラスカ上空でこなしたと紹介しています

ハイエンド想定の敵50機と友軍50機が、本格的な脅威想定で実施する大規模演習の機会が貴重であることから、F-15EXが部隊配備される1年以上前から「部隊配備直後」の本演習参加が計画準備されていたようで、決して思い付きの飛び入り参加ではないようです

F-15EX Eglin.jpgF-15EXは「完璧な対地攻撃能力を有する」と言われていますが、本演習では従来F-15C型が担っていた制空&防空任務を担い、F-15CやF-15EやF-22やF-35とチームを組んで行動を共にしたり、情報をリンク等で共有したりしながら、新電子戦機器EPAWSS、2つ増加された兵器搭載ポイント、グラスコックピットやFBWシステムの有効性を確認したようで

稼働率など維持整備面での評価も含めた細部の結果は今後分析されるとのことですが、今どきのハイエンド航空作戦演習を垣間見る機会でもありますので、ご紹介しておきま

20日付米空軍協会web記事によれば
F-15EX Northern Edge3.jpgF-15EXと共に「Northern Edge」に参加した第84試験評価飛行隊のJohn O’Rear中佐は、「2機のF-15Cや2機のF-15Eと編成を組み、他の第4世代機を支援しつつ、F-22やF-35との作戦融合に取り組み、敵機を撃墜することもあったが、被撃墜される場面もあった」と語った
「かつての演習では友軍の損害ゼロで終わるケースもあったが、最近はそんな結果だと敵脅威の設定は適切だったか厳しく問いただされる。教訓を得るためには必要なことだと感じている」と、他軍種も参加する大規模演習「Northern Edge」を振り返った

演習の細部には同中佐は言及しなかったが、「このような演習環境設定の場合、友軍機が撃墜されるのは多くの場合、目視外からのミサイル攻撃によるものだ」、「目視範囲内での空中戦場面は頻繁に発生しない」と語った

EPAWSS.jpg新型電子戦装備EPAWSS(Eagle Passive Active Warning Survivability System)が、2020年12月のネリス基地でのBlack Flag演習以来、2回目の投入となったが、「細部は分析中ながら、我々が期待していた成果が出た感触を得ている」と振り返った
更にEPAWSSに関し、「大規模戦力が存在し、多数の電磁波が飛び交う空間でも機能した」、「近傍のステルス機であるF-22やF-35を支援することもできた」、「追加的な妨害効果により、F-35をより敵に接近させることができた」と演習での感触を語った

また「演習では通信やGPSにも厳しい妨害をかけられたが、友軍はその制約下で作戦を遂行するため、他の米空軍機や他軍種の友軍機との連携にたよって行動した」との振り返りつつも、多くの場面で他軍種アセットの連携が良く機能したが、そうでない場面もあったと教訓にも触れた
機種間の情報共有については、代替手段としてLink-16や第5世代機との通信翻訳を務める航空アセットも活用し、妨害や被害状況でも多層で重複した仕組みを構築して全戦力の効果的な行動に供したとも同中佐は説明した

F-15EX Eglin3.JPG全般を総括して同中佐は、部隊配備される1年以上前から本演習参加を準備してきたのは、単に空軍戦闘コマンド部隊にF-15EXに慣れてもらうためではなく、ハイエンド紛争の厳しい環境下で、我々が練ってきたF-15EX運用法が有効かを検証するためだったと振り返った
F-15EXの特徴として、極超音速兵器や大型兵器を搭載可能な点が挙げられるが、今回はその面での確認は行われず、代わりにB-52がAGM-183極超音速兵器を発射していたとも語った
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F-22とかF-35になるとハイテク装備過ぎて人間の出番が限られ面白くないとの話を聞きますが、基本的に新型第4世代機であるF-15EXでの演習を振り返る中佐は何やら楽しそうに聞こえます

制空や防空と言った任務には、もしかしたら味方基地に迫りくる巡航ミサイル要撃任務や、敵の「無人機の群れ」対処だったのかもしれませんが、部隊配備2週間での大規模演習参加は大したものです

最近、F-15EXへの期待がとても大きいことを各種記事でご紹介していますが、興味深い新型第4世代機ですので、今後もフォローしたいと思います

戦闘機の将来構成を検討(F-15EXへの期待大)
「今後10年くらいの戦闘機構想」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/
「空母艦載機は2/3無人機に」→https://holylandtokyo.com/2021/04/06/10

F-15EX関連の記事
「初号機を米空軍受領」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-15
「F-15Eの後継候補?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-02
「イヤイヤF-15EXに進む米空軍」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-30
「国防省高官もF-15EX導入を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-23-1
「統参議長がF-15EX購入を語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-2
「F-15EXは空軍の選択ではない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-02
「参謀総長F-15Xを強く示唆」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-31-1
「今頃になってEXのエンジン機種選定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-21-1

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海兵隊NMESISは海上移動目標に命中していた [Joint・統合参謀本部]

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4月29日発表の試験成功の細部に言及
2022年度予算案の最優先装備としてアピール

Berger3.jpg13日、David Berger海兵隊司令官が講演で、4月末に同司令官が発表したNMESIS(海軍海兵機動型艦艇阻止システム:Navy Marine Expeditionary Ship Interdiction System)発射試験の成功に関し、実は目標が90nm以上沖合の海上を移動する艦艇であったと明らかにし、NMESISの能力の高さをアピールしました

先日の「海上目標攻撃試験成功」時にご紹介したように、NMESISは、既に沿岸戦闘艦LCS等に搭載されている対艦対地ミサイル「naval strike missile」を、既に運用実績がある軽戦闘車両JLTVを無人運用可能にした車両に搭載したもので、海兵隊が開発リスクを最小限に抑えたと宣伝するシステムです

なお、JLTVを無人運用可能にするため、「ROGUE:remotely operated ground unit for expeditionary」とのシステムを搭載して無人運用可能としています。

Berger海兵隊司令官はMcAleese defense 会議で
NMESIS.jpg●12日、加州沖合の小島に展開したNMESISからの海上目標攻撃試験成功についてBerger海兵隊司令官は、同試験での攻撃目標は「海上移動中の艦艇:a ship on the move」であったと明らかにした
「大変成功した試験だった」、「この攻撃能力を前にした敵は、どう行動すべきかを慎重に考えざるを得なくなる」と試験成功を改めて振り返り、2022年度予算案での米海兵隊最重要案件であるとアピールした

同司令官は更に、海兵隊は敵水上艦艇を除去するだけでなく、敵潜水艦までも危機に陥れることで米海軍の作戦行動を支援したいと語り、そのため米海兵隊は海峡などの水路や海上交通路をコントロールし、米国や同盟国のためにオープンな状態を維持したいと語った

Noble Fury2.jpgそして、「沿岸地域からの戦闘が米海兵隊にとって強化すべきエリアであり、その方向に向かっている」と述べ、(過去20年余りの対テロ戦や従来の海兵隊が重視してきた)戦車や短射程火砲は海兵隊の将来脅威にフィットしておらず、長射程火砲と軽着上陸艦艇がふさわしい、と説明した
また「米海兵隊は、一つの場所に継続して拠点を張る地上部隊から、海洋機動モードへと方向転換を図りつつあるのだ」と語った
/////////////////////////////////////////////

4月29日に同司令官が議会証言した際は
我々はNMESISを米艦艇や沿岸地域に配備し、敵水上艦艇に脅威を与えることができ、海上交通路を開放することができる。このNMESISを有効に活用できる迅速な機動展開運用が我々の目指すべき方向である
Berger4.jpg米海兵隊にとって、2022年度予算で地上や艦艇配備の精密誘導火力を確保することが死活的に重要だ。海洋エリアをバリアに変え、敵の海上交通路を遮断し、我が交通路を確保することが目的だ
・・・と述べており、その主張は一貫しています

一方で米海軍や米空軍のように、中国の綿密に練られた戦力構成や作戦構想A2ADを前に従来の主役であった空母や戦闘機の扱いに困って、検討中とか、玉虫色の発言が多い組織とは異なり戦車を捨て、短射程火砲を犠牲にし、歩兵中心だった組織も大変革しようとしている米海兵隊はたくましいです

米海兵隊の変革関連
「海兵隊NMESISで海上目標攻撃成功」→https://holylandtokyo.com/2021/05/03/213/
「歩兵の多能兵士化を推進中」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/117/
「海兵隊で歩兵が砲兵を支援する新形態演習」→https://holylandtokyo.com/2021/04/15/107/
「対潜水艦作戦にも」→https://holylandtokyo.com/2020/11/09/382/
「在日海兵隊の飛び石演習」→https://holylandtokyo.com/2020/10/26/441/
「司令官が在日米海兵隊削減を示唆」→https://holylandtokyo.com/2020/09/28/488/
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

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米空軍の戦闘機構想:2022年度予算説明資料より [米空軍]

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2030年代までの構想を含め来年度予算を語る
2026年までに421機を退役、304機を新規導入

F-35 Gilmore.jpg米空軍協会機関紙が、5月27日にバイデン政権が発表予定の2022年度予算案に関する米空軍作成の「論点:talking points」ペーパーを入手し、その概要を14日付の長文の記事で紹介しています

内容は2022年度予算の説明ではなく、むしろ2022年度予算要求の背景にある2026年までの予算や作戦機購入計画を描いたもので、年初から始まった「TacAir Study」検討の背景にある各アセットの期待される役割なども説明されています

F-22Hawaii.jpg「論点:talking points」ペーパーは、最も厳しいシナリオと米空軍が想定する、2035年時点で台湾シナリオでの対中国紛争を念頭した各種の分析やシミュレーションを基にまとめられたものとされており、今後米空軍が打ち出す様々な計画の基礎にあると考えられますのでご紹介しておきます

ただ、以下の計画案が米議会で認められるかは予断を許さず、コロナで傷んだ地域経済を背負った利益誘導議員による妨害は十分に予想されます

14日付米空軍協会web記事によれば
●米空軍が旧式アセット早期引退を急ぐ背景
--- 航空アセットの44%が当初の運用寿命オーバーで使用中
--- 米空軍航空機の平均年齢は28.6歳 老朽化
--- ちなみに米陸軍は15.3歳、海軍は14.4歳
--- 豪空軍は8.9歳、英空軍は16.6歳
●以下の早期引退進め、近代化加速でも、年間7-8千億円資金不足

●米空軍が2026年までに退役させたい戦闘機421機
(以下の退役規模は2010年初頭の250機以来の規模)
--- F-15C/Dを234機、F-16を124機(残り812機に)
--- A-10を63機 (ただし2023年までに:現281機)
●一方で2026年までに新規導入希望304機
--- F-35Aを220機、F-15EXを84機

●F-22は2030年から退役開始
--- NGADが後継となる方向
--- 今も近代化改修中も、20年後はハイエンドで戦えない
●F-15EXの方向性
--- 2022年に11機、23年に14機、その後年19機導入
--- 遠方からハイエンド紛争に参画、それ以外では制空任務も
--- 極超音速兵器や、空対地ミサイルAGM-183A・ARRW搭載へ
--- また中国の長射程空対空ミサイルPL-15に対抗
     長射程空対空ミサイルAIM-260搭載か

●維持費高止まりのF-35調達ペースは
--- 2022年度は48機要求も、以後2023-26年は年43機ペースに落とす
--- これにより2023-26年調達機数を240機から220機に削減 
--- 当初の年間1機維持費見積4.5億円だったが、現時点では2036年でも8.5億円 
--- F-16とA-10全ての後継機のはずが、維持費下がらず方向転換へ
--- 一応空軍は「Block4」が完成したら調達ペース上げると言い訳

●2035年頃から導入MR-X(malti-role Fighter)
--- 約600機のF-16後継をイメージ。6-8年後から検討開始
--- デジタル設計技術導入で、開発期間短く、短期間使用で維持費抑制
--- 早いサイクルで次世代機導入で陳腐化避ける
--- ハイエンド紛争には限定的役割も、多用途で任務あり
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F-15EX 3.jpgこの計画の大前提は、次世代制空システムNGADが現在の構想通り有人機と無人ウイングマン機のチームとして運用可能となることと、航空戦力の柱となるF-35の維持整備費が下がることです

「TacAir Study」がF-35維持費の低減率をどのように見積もって行われているのか不明ですが、第4世代機レベルに低下させるのは不可能との前提に立ち、現在の1700機以上調達の見直しに舵を切るものと想定しています

今後、様々に報道される米空軍を巡る情勢を見る基礎として押さえておきましょう

TacAir study関連
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/
「空母艦載機は2/3無人機に」→https://holylandtokyo.com/2021/04/06/100/
「戦闘機族ボスがNGADへの危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/05/154/
「F-15EXの初号機受領」→https://holylandtokyo.com/2021/03/22/166/
「F-35への投資はどぶに金を捨てる行為」→https://holylandtokyo.com/2021/03/10/157/

最近のF-35
「ODINの開発中断」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-24
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-06
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「F-35稼働率の状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07

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米国防省監査官が省内のUFO対応を調査へ [米国防省高官]

法律が政府情報機関へのUFO報告を6月末に求める中
2020年4月に米海軍がUFOらしき画像公開後関心急上昇
中国の無人偵察機との懸念も大

UFO investigation.jpg3日、米国防省監察官が省内のUFOへの対処状況について調査・捜査(investigation)を開始すると発表しました。

発表メモは、「国防省がどの程度「未確認空中現象:unidentified aerial phenomena」に「has taken actions」しているかを評価する」としていますが、「監査の進捗で明らかになった結果を基に、その目的は柔軟に拡大や変化する」ともしており、秘密のベールに包まれた通称「UFO」に関する関心が急速に高まってることを感じさせます

一つの契機は、米海軍が各種UFO情報を公式報告させるフォーマットや報告要領を定め集めた情報を2020年4月に初公表し、訓練中の空母艦載機FA-18が目撃・撮影した3件のUFO(未確認飛行物体)映像(2004年11月と2015年1月2件)が公になったことです

UAP3.jpgそのほかにも、例えば2014~15年の間に米東海岸沖で空母艦載機がUFOと衝突直前にまで至った事象や、2004年に西海岸サンディエゴ沖で「腕時計型」の大型空中浮遊物体が目撃されている事象などが、米海軍内で公式報告されていると報じられているところです

これらを受け、2020年8月には当時のDavid Norquist国防副長官が「Unidentified Aerial Phenomena Task Force」を編成して国家安全保障上問題となる情報収集を開始し、また共和党ルビオ上院議員などの議員立法で2020年12月に成立した「2021年情報授権法」は、180日以内に国防省やFBIや関連情報機関にUFOやUAFに関するレポートをまとめて報告するよう命じました

背景には地球外に由来する未確認物体だけでなく、中国やロシアが開発する新技術由来の飛行物体の可能性も想定されていると言われています

4日付military.com記事によれば
Stone.jpg3日、米国防省監察官室はRandolph Stone監察官補(宇宙・情報・技術開発担当)が中心となり、「国防省がどの程度「未確認空中現象:unidentified aerial phenomena」に「has taken actions」しているかを評価する」ため、国防長官室、各軍種、メジャーコマンド、戦闘支援機関などを調査すると発表した
ただし、調査の範囲や対象は今後の監査の進捗で拡大する可能性があるとも発表メモは述べている

UFOに関しては、昨年8月に国防省自身が海軍が中心として、国家安全保障に影響する米軍兵士とUFOとの遭遇について調査を開始し、また2020年12月に成立した「2021 Intelligence Authorization Act」でも、180日以内に国家情報機関にUFO関連情報について報告するよう求めているところである
ただ、一般にはUFOと言えば地球外生物との関連を連想しがちであるが、今年4月に「The Drive」webサイトが報じたところによれば、UFOに関する調査の結果、これら未確認飛行物体の大部分が、米軍事力をスパイする目的をもったドローンや無人機だと結論付けられている模様である
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UAP2.jpg2020年12月成立の「2021年情報授権法」に含まれている「180日以内に報告せよ」指示への対応状況を「監査」するためなのか、今回発表の監査の目的が良くわかりませんが、「未確認飛行物体の大部分が、米軍事力をスパイする目的をもったドローンや無人機」であるならば、国防省としても大いにアピールすべきと考えますが・・

様々な取り組みが進んでいますので、数か月後には一部なりとも明らかになるであろう、調査や監査や報告書を楽しみにしておきましょう・・・

UFO関連の記事
「国防省等の米国情報機関が公式UFO報告書作成へ」→https://holylandtokyo.com/2021/01/07/293/
「英国防省:地球外生物ETは存在しそうもない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2013-06-22-1

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英空軍トップが3月公表の国防予算計画を語る [安全保障全般]

Defense-Newsの独占インタビューです
Aaron Mehta副編集長が語る

Arron UK.jpg9日付Defense-Newsが、4月に訪米した英空軍参謀総長Mike Wigston大将に行った独占インタビューを紹介し、3月23日に英国防省が発表した国防予算計画「Defence in a competitive age」で、F-35購入機数に言及していない点やE-3後継のE-7早期警戒管制機の導入機数削減、更には次世代戦闘機TEMPEST開発予算の影響を受けるた事業について問いただしています

もちろん、疑問にきっぱり回答しているわけではありませんが、重要視している基本的考え方は参考になりますし、米軍と最も関係が深い同盟国英国の考え方を想像したいと思います

Aaron Mehta副編集長質問の背景には、
2021 UK.jpg●「Defence in a competitive age」では、「英国は、既に発注した48機を超えてF-35戦力拡大に取り組んでいく」と記されているが、2015年の国防計画文書SDSRに明示されていた138機体制構築計画への言及が全くなかった
同国防予算計画で、従来5機とされてきたE-3後継のE-7早期警戒管制機の導入機数が、3機に削減されている
仏独伊の共同開発連合に対抗し、スウェーデンとの共同開発がスタートしている次世代戦闘機TEMPESTの開発費に、今後4年間で約3000億円もの巨費を投じる計画が同国防予算計画で明らかにされている

Mike Wigston英空軍参謀総長は
質問1:国防予算計画では、本格紛争能力に多額の投資が行われる一方で、削減された計画もあり、極端すぎるとの批判も一部にあるがどうか?

Mosquito.jpg我々は過去数十年間、量と質のトレードオフに悩んでいた。しかし現在成熟しつつある技術は、8機のタイフーン戦闘機を、100機の無人機の群れや、また10機の無人ウイングマンと2機の有人戦闘機に置き換えることを可能にするかもしれない可能性を持っている
我々は大きな転換点に立っており、量と技術の両方を追求できると考えている

また我々は新たに備えるべき能力として、宇宙、データ分析、デジタル設計技術など新たな分野で、人材を確保育成する必要に迫られている
更に人材を育成する訓練手法においてバーチャルリアリティーや総合トレーニング等の新手法を導入する必要があり、また兵站や基地機能維持部門などでの高度な自動化を追求したいと考えている。これらは民間分野ですでに起こりつつある変革であり、その進歩を軍にも導入したい

質問2:E-7の導入機数が5機でなく3機に削減されたのはなぜ?

E-7 2.jpgまず英国政府が早期警戒管制機の重要性を認識し、老朽化するE-3後継としてE-7導入に同意してくれたことを喜んでいる。E-7はE-3に比し、飛躍的に高度なデジタル技術でセンサーを運用し、他機とのデータ共有も円滑に可能となる
5機から3機となれば能力が制約されることは明確だが、米空軍やNATO加盟国との連携を踏まえた広い視野で作戦運用して対応することを想定している。E-7のデータ共有能力をもってすれば、同盟国機との連携強化で相当部分が穴埋めできると考えている。将来的に5機に増強することを排除したわけではない。現時点では3機で対応しようということだ

質問3:138機のF-35購入目標はどうなった?まだ頭にある数字か?

F-35B.jpg我々はF-35導入の初期段階にある。当初の48機発注の内21機しか受領していない。今後来年は33機、その後は48機になる計画である。我々はF-35部隊の成長に取り組んでおり、その点で何も変わっていない
今も米国防省F-35計画室やロッキードと導入についての継続的に協議を行っている。このプラットフォームを潜在的に50年間運用する予定であり、短期的に最終的な数字に到達することを急いでいない

F-35B型購入から、A型購入に変更するオプションについては今も議論があるが、その決定は私の後任者の時代になされることであろう。今は空母エリザベスと空母プリンスオブウェールズに必要な十分な機体と運用要員を確保することに集中すべき時だ

質問4;次期戦闘機TEMPEST計画の犠牲になる他装備は?
英政府は今後4年間で約3000億円をTEMPEST計画に投資するが、政府が英軍に投資する全体額は3.7兆円であり、他の計画とのトレードオフはないと考えている

質問5:無人ウイングマン機Mosquitoの完成見込みは
TEMPESTは2030年代後半からの運用を想定しているが、Mosquitoは今後10年で最前線に送ることを目標に取り組んでいる。国際協力の機会であることは間違いない。米国や豪州の動きも注目している
////////////////////////////////////////////////////

「質問1」に対するWigston英空軍参謀総長の対応は、今の空軍関連の技術動向を的確に表現していると思います

F-35 Sun-Set.jpg「現在成熟しつつある技術は、8機のタイフーン戦闘機を、100機の無人機の群れや、また10機の無人ウイングマンと2機の有人戦闘機に置き換えることを可能にするかもしれない」
「新たに備えるべき能力として、宇宙、データ分析、デジタル設計技術など新たな分野で、人材を確保育成する必要」
「人材を育成する訓練手法においてバーチャルリアリティーや総合トレーニング等の新手法を導入する必要があり、また兵站や基地機能維持部門などでの高度な自動化を追求したい」

残念ながら、F-35を共同開発国でもないのに大量購入する(させられる)日本は、F-35の購入費と維持費で破産し、英空軍参謀総長の考える上記重要分野に配分する資源が残らないでしょう

英国防予算計画「Defence in a competitive age」関連
「英国の138機F-35購入計画は多くて60-72機へ!?」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/

英空母エリザベスの悲しき現実
「英空母エリザベス米英のF-35B搭載で初出撃」→https://holylandtokyo.com/2021/05/11/1492/
「英新型空母と米駆逐艦が空母攻撃群を編成へ」→https://holylandtokyo.com/2021/01/27/308/
「英空母エリザベスは米軍F-35B部隊と一体運用へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-26-1
「英空母が航空機不足で米軍にお願い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

欧州の戦闘機開発
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2

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米空軍トップ:将来は戦闘機を現7機種から4程度に絞る [米空軍]

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現在をA-10 F-15CD F-15E F-15EX F-16 F-22 F-35として
将来はNGAD F-35 F-15EX F-16か後継か35
TacAir Studyでは最適解1つではなく、複数オプションを

Brown4.jpg12日、Brown空軍参謀総長が講演で、年初に開始した将来の戦闘機構成を検討する「TacAir study」やその結果としての将来戦闘機の種類について現時点での考えを語り、「TacAir study」では最適解一つを導くのではなく複数のオプションを提示することや、戦闘機機数を現7機種から4機種程度に絞り込むと語りました

「TacAir study」開始時には、一つの最適解を提示するような勢いでしたし、「5世代機マイナス」の新機種検討まで明言していましたが、12日には複数状況に応じた複数案を検討するとの表現になり、「5世代機マイナス」との言葉も新機種検討をアピールすることもありませんでした。いろいろあったのでしょう・・・「急ぐ必要はない、今後8年ぐらいかけて(as long as eight years from now)」などとまで発言し、後退感は否めません

F-22Hawaii.jpg戦闘機機種の絞り込みについては、多機種だと維持整備が大変で、2030年代後半頃のイメージでNGADとF-35とF-15EXと「F-16かその後継かF-35など」と表現し、F-22やF-15Eは含まれませんでした

また「TacAir study」については基本的に内部検討だと述べ、公にする可能性には触れず、米議会にもすべてを説明するつもりは無い様で、議会の理解を得る努力の重要性は強調しつつも、複数年度の予算に渡る事業であるため、必要な部分を必要な時に、予算要求のため説明するとの姿勢を示しました

12日付米空軍協会web記事によれば
Brown2.jpg12日、McAleese FY2022 Defense Programs 会議でBrown空軍参謀総長は、年初から開始した「TacAir study」は戦闘機構成の最適解を一つ示すのではなく、脅威の変化や様々な可能性が考えられるので、複数のオプション(a window of options)を提示するものになる、と述べた
また、同検討は2022年度予算検討の基にもなるし、2023年以降の検討の基礎にもなると述べ、検討は統合参謀本部や国防長官室のCost Assessment and Program Evaluation室とも連携して行っていると説明した

将来戦闘機の機種数については、現7機種から4機種プラスoneとなると語り、NGADとF-35とF-15EXと「F-16かその後継かF-35など」と表現し、F-22やF-15Eの名は上がらなかった
これに関し空軍報道官は、Brown大将は長期的視点で述べたのだと説明し、A-10は2030年代まで運用する方向で検討していると述べ、「プラスone」はA-10だと語った。またF-22は当面引退することはないが「TacAir study」の結果次第だと述べた

F-16D ground.jpgF-16に関しBrown参謀総長は、「当面の間ともに活動する」と述べ、後継については「F-35の調達増加か、他の機種になるだろう」と語った
またF-15Eは2030年代には老朽化し、2030年代には退役だろうと述べた。F-15Eに関しては、F-15C/Dの後継として導入が始まっているF-15EXを、複座型に改良して機体強度をF-15E型レベルに強化する等で、F-15E後継にできるとの見方がある

David Nahom空軍計画部長は同会議で、多様な機種を維持するコストが大きな負担で、機種を減らすことが重要だと語っている

ただこれら機種構成の検討についてBrown大将は、「どの機種を何機将来保有するかについては、早急に答えが必要ではなく、8年ぐらいかけて検討することになる」と語り、「単年度予算で実現できないので、今プロセスを開始する必要があり、米議会との協力が重要になる」と述べた
F-15EX 3.jpgまた「事実と分析結果を踏まえて計画を議会に説明する必要があり、その分析に取り組んでいる」と説明し、更に軍需産業界との意思疎通も重要だと述べ

無人機の導入について参謀総長は、今後多くの部分を無人機が占めることになろうとのみ述べ、最近のウォーゲームでも有人機と無人機の混合運用の重要性が示されていると語<り/span>、この事実から将来の飛行部隊の在り方や訓練方法についても大きな課題であり、「TacAir study」の検討対象だと説明した
/////////////////////////////////////////////////////

「TacAir studyは最適解を一つ示すのではなく、複数のオプション(a window of options)を提示する」とか、「8年ぐらいかけて検討する」とか、言われると、最初の勢いはどこへやら・・・と思わず言いたくなりますが、様々な圧力やしがらみの中で、検討を継続するにはこれぐらいの説明ぶりの方がやりやすいのでしょう・・・。そう信じておきましょう・・・

Brown nomination.jpgもちょっと具体的機種名については「しゃべりすぎ」のような気がします。一つの最適解を出すつもりもないのに・・・とも思いますが、のろしを上げて各方面の反応を見ているのかもしれませんねぇ・・・

ワシントンDCは「魑魅魍魎」が住む世界だそうですから・・・。でも無人機機数に関する発言も慎重ですねぇ・・・。下手に発言すれば、黒人参謀総長の後ろには誰もサポートする人はいないのでしょう

TacAir study関連
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/
「空母艦載機は2/3無人機に」→https://holylandtokyo.com/2021/04/06/100/
「戦闘機族ボスがNGADへの危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/05/154/
「F-15EXの初号機受領」→https://holylandtokyo.com/2021/03/22/166/
「F-35への投資はどぶに金を捨てる行為」→https://holylandtokyo.com/2021/03/10/157/

Brown空軍参謀総長の関連記事
「春完成の電子戦戦略を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-30
「戦闘機新調達方式などを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-24
「行動指針を小冊子で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-01
「米空軍は海兵隊と同じ方向を目指す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-25
「人種問題を経験から語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-06-1

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無人ウイングマン構想の頭脳ACSが初飛行 [米空軍]

初飛行でいきなり130分間のフライト
Kratos社の試験機「Mako」にACSを搭載して

Mako Kratos.jpg5日米空軍は、4月29日にフロリダ州Tyndall空軍基地を拠点とし、無人ウイングマン構想で当該無人機の頭脳となる自立飛行システム(ACS:autonomy core system)を搭載した無人機が、約130分の初飛行を実施したと発表しました

ACSを搭載しての初飛行を実現したのはKratos社の「UTAP-22 Mako」との試験用無人機で、同社が無人ウイングマン構想の試験機としてこれまで飛行させてきた「XQ-58A Valkyrie」より小型でシンプルそうな機体ですが、縦横6mx3m、高度5万FTまで飛行可能、機体内外に約800ポンドの搭載物が積め、更に両翼にそれぞれ100ポンド搭載可能との機体で、最高速度マック0.9、航続距離1400nmと立派な航空機です

Mako Kratos2.jpg米空軍は、F-35やF-15EXとチームを組んで、有人機にはリスクが高すぎる任務を遂行可能な「a family of Skyborg drones」の開発を計画しており、昨年12月にKratos社と共に、ボーイングとGeneral Atomicsの3社とそれぞれ別々に、同構想のデモ機開発契約を結んだところでした

米空軍は同様の飛行試験を今後数か月で行い、3企業と契約して並行作成させているデモ機が5月末には出来上がってくることから、デモ機も活用して更にACSを成熟させていくものと考えられま

5日付Defense-News記事によれば
米空軍は初飛行について、「ACSは基礎的な飛行能力を披露し、地上からの指示にも対応しつつ、機体の飛行性能を考慮した地形対応の飛行を実現した」と表現し、担当のDale White准将は「開発初期段階のACSによる初飛行に興奮するとともに、今後のSkyborg技術(無人ウイングマン技術)確立に向けたマラソンのような道のりの第一歩だと認識している」と語った
Mako Kratos3.jpgまた、「自立型システムがその能力を示した初飛行となったが、今後も有人機である戦闘機と編隊を組んで作戦行動可能なレベルを目指し、複数の機体で能力を実証していきたい」と声明を出している

今回ACS初飛行の受け皿となった試験機「UTAP-22 Mako」を製造したKratos社CEOのEric DeMarco氏は「Mako はXQ-58A Valkyrieと並ぶ試験用無人機で、多様な顧客の多様なニーズに応え、様々な開発中の装置を搭載して試験飛行が可能で、電子戦センサーや妨害装置、様々なセンサーなど、攻防両方のシステムの試験に活用いただいている」、「MakoやXQ-58A Valkyrieで事前確認しておくことで、他の無人システムにも円滑に搭載することが確認できる」とアピールしている
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この初飛行には、多くのジャーナリストやシンクタンク研究者が招待された模様で、米空軍はその取り組みを懸命にアピールしています

Mako Kratos4.jpgSkyborg構想(無人ウイングマン構想)については、4月上旬に多用途ドローンの投下試験に成功した際も、米空軍がメディア宣伝に力を入れていましたので、「秘密主義で米議や世論へのアピール・説明不足」との汚名挽回を期し、取り組んでいるのでしょう

また試験が行われたフロリダのTyndall空軍基地は、2018年10月に巨大ハリケーンの直撃で壊滅的被害を受けた基地でもあり、復興をアピールする狙いもあったと邪推いたしております

無人機ウイングマン構想
「多用途ドローン投下試験成功」→https://holylandtokyo.com/2021/04/09/103/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holylandtokyo.com/2020/05/24/679/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
「空母搭載の小型無人機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-03
「空軍研究所が関連映像公開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-3

Tyndall空軍基地ハリケーン被害の惨状
「米軍が施設への自然災害で予算枯渇」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-24

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単発中国戦闘機が国産エンジン搭載で初部隊配備か [中国要人・軍事]

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単発J-10C戦闘機に国産WS-10B搭載が演習参加初確認
長年のロシア製エンジンへの依存を断ち切れるのか?

J-10 WS-10B4.jpg11日付Defense-Newsは、中国国営ラジオwebサイトが中国軍の実弾射撃演習を紹介した画像で、部隊配備された単発のJ-10C戦闘機に国産WS-10Bエンジンが搭載されているのを初めて確認したと紹介しています。

これまで中国は戦闘機のエンジンをロシア製に依存し、徐々に双発以上の戦闘機や輸送機に国産エンジンの搭載を試みていた中でしたが、ついに単発の戦闘機にも本格搭載を開始して部隊配備が開始されたのが真実であれば、中国の航空技術が大きな壁「エンジン開発」を乗り越えたことを示すこととなります

J-10C WS-10B.jpg国の工業総合力レベルを示すバロメータと言われるジェットエンジン開発で中国は苦戦が続き、20年以上前から中国産エンジンエンジン開発に取り組んでいると記憶していますが、試験的な搭載機が確認されても実戦配備には至らないケースや、いったん中国製エンジンの搭載を始めても、再びロシア製エンジンに戻ったりしていた記憶があります

例えば、2010年ごろからWS-10型エンジンを双発戦闘機J-11やJ-16に試験搭載しましたが、その後開発が行われた初の中国産空母艦載機J-13や初期型J-10には、結局ロシア製AL-31エンジンが採用されました

J-10 WS-10B2.jpg一方でその後、2018年のZhuhai航空ショーで、J-10B試験機にステルス性の高いWS-10Bを搭載して披露したり、双発のステルス形状攻撃機J-20に国産WS-15エンジンを、また4発のY-20輸送機にWS-10ターボファンエンジンを搭載開始したことが確認されていたところです

エンジンを一つしか搭載せず、エンジントラブルが墜落に直結する単発のJ-10戦闘機に、国産エンジンを搭載して部隊配備が始まっている(らしい)との今回の話は、国産ジェットエンジンへの自信を中国が深めている表れと考えられ、部隊配備の程度が気になるところです

ちなみにJ-10戦闘機は、J-11戦闘機とハイローミックスを構成する第4世代軽戦闘機の位置づけで国産され、1998年初飛行、2005年から運用開始と言われており、中国は450機以上を生産して全土で運用されています。イスラエルのラビ戦闘機の技術導入だとか、様々な情報が乱れ飛んだ中国製戦闘機ですが、公式情報はほとんど公開されていません

11日付Defense-News記事によれば
J-10 WS-10B3.jpgChina National Radioが中国空軍の実弾射撃演習(実施場所不明)を紹介した画像に、J-10C戦闘機が国産WB-10Bエンジンを搭載したことが明確にわかる様子が写っており、部隊配備の単発戦闘機に初めて国産エンジン搭載が確認できたと話題になっている
画像のJ-10C戦闘機の機体番号は画像処理して消されており、所属部隊が判明しないように配慮されているが、西側の中国軍用機専門家は、広東省汕頭市所在の中国空軍部隊のJ-10Cに国産エンジンが搭載され配備されたのだろうと分析している

中国は成都飛機工業公司 (Chengdu Aircraft Industries)製造のJ-10戦闘機に、国産エンジン搭載を2011年頃から試験しており、J-10BやJ-10C試験用航空機への搭載が目撃されていたが、部隊配備用の量産型への搭載開始は明確ではなかった
中国は新型機の部隊配備を公表することは普通ないので、いつから国産WS-10B搭載型のJ-10Cが配備開始されたのか不明である
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Berrier DIA2j.jpg先日ご紹介した国防情報長官(DIA長官)の中国軍事力に関する議会証言で「中国は約6年後には基礎的な軍事近代化を達成し、15年以内に最も破壊的な新たな軍事能力導入を目指している」と延べ、「軍民融合体制」で「特定57分野に照準を定め」、米国を出し抜く決意だとの分析を披露していました

また、人工知能AI、高速計算機、量子計算機、バイオ技術、先進ロボットなど世界が注目する将来技術分野で世界をリードしているとも分析し危機感をあらわにしていたところです。このようなIT関連だけでなく、草の根の工業力全般が試されるジェットエンジン分野でも成熟している中国に恐ろしさを禁じえません

WS-10エンジンが登場する過去記事
「中国航空ショーでのJ-20を評価する」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-10-1
「J-20が初の海上行動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-05-12-1
「報道官が戦闘能力発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-1

国防情報長官(DIA長官)の中国軍事力分析
https://holylandtokyo.com/2021/05/02/212/

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対中国想定でMQ-9活用演習2回目実施 [Joint・統合参謀本部]

2回目の「Agile Reaper」演習で海兵隊支援を
米海軍「Unmanned Integrated Battle Problem 21」と並行実施
海兵隊はMQ-9操縦者とセンサー操作員を自前養成中

MQ-9 Agile4.jpg4月28日付Military.comが、4月7日から加州の小島を利用して行われたMQ-9の本格紛争演習「Agile Reaper」2回目の様子を紹介し、昨年9月の1回目がMQ-9現場運用部隊の機動展開や通信環境設定、並びにMQ-9の基本運用の試行だったのに対し、2回目はより少ない展開人員での運用やより本格的な再発進準備訓練や地上攻撃やISR支援など、更に実戦的な演習となった様子を伝えています

またMQ-9の着上陸対地支援能力やISR能力を高く評価した米海兵隊は、米海兵隊兵士のMQ-9操縦者やセンサー操作員を養成することを昨年11月日発表し、今年4月に入ってDavid Berger海兵隊司令官がMQ-9運用部隊の倍増を発表するなど、急速に海兵隊とMQ-9の連携強化が進んでいるようです

MQ-9 Agile.jpg今回の「Agile Reaper」でMQ-9を運用したのはあくまで米空軍第49航空団で、空軍操縦者は無人機遠隔操縦のメッカ米空軍Holloman基地から操作したわけですが、多くの海兵隊操縦要員やセンサー操作員が同基地で演習間訓練を受けたようです。米海兵隊がMQ-9の操作や運用をどこまで担うのか? 前線基地での離着陸や機体整備や兵装などまで担当するつもりなのか不明ですが、そんな勢いがあるMQ-9の沿岸&海洋作戦投入です

同時に行われた米海軍「Unmanned Integrated Battle Problem 21」演習支援では、海洋監視版のMQ-9B Sea Guardianが米海軍ミサイル巡洋艦とタッグを組み、MQ-9Bが艦艇から見えない遠方目標情報を巡洋艦に伝えて大好評を得たようで、空軍MQ-9部隊指揮官には「もっと一緒にやろう」との声が海軍&海兵隊から届いているようです

4月28日付Military.com記事によれば
MQ-9 Agile5.jpg2回目の「Agile Reaper」演習は4月7日から、1回目と同じく加州の米海軍Point Mugu航空基地と加州沖合のSan Clemente島で行われ、3機のMQ-9が(西太平洋の前線展開島をイメージした)San Clemente島に展開し、空軍の現場整備員や離発着・再発進準備要員はC-17輸送機で展開した
今回の演習では、1回目の前回に比して少ない派遣要員で、どれだけ迅速に再発進準備が可能かを試験することが試され、同時に兵装要員もHellfire missilesを再搭載する本格的な訓練を行い、また着上陸時の脆弱な海兵部隊を支援する攻撃任務にも様々なパターンでMQ-9が取り組ん

米空軍第49航空団司令官Ryan Keeney大佐は、「中東とは異なる海洋作戦へのMQ-9の適合を図るため、様々な取り組みを試した」と演習を振り返った
一方の海兵隊は、昨年10月にMQ-9操作職域を新たに設け、MQ-9を使用する本格的な無人機ISRミッションンに挑戦することを宣言している。かつて海兵隊は契約業者に運用を委託してISRに活用したが、自前要員の養成は大きな方向転換である

MQ-9 Agile3.JPG今回の「Agile Reaper」演習で複数の要員がHolloman空軍基地に派遣され、空軍からMQ-9運用を学んでいる。海兵隊司令官は4月にMQ-9運用部隊の倍増計画を明らかにし、「前線に展開するMQ-9運用要員は、統合戦力の目となり耳になる」と語っている
別枠ながら同時に訓練したMQ-9B Sea Guardianと米海軍巡洋艦とのターゲティング連携も併せ、Keeney空軍大佐は「我々にとって新たな挑戦だが、海軍や海兵隊部隊からのフィードバックにはMQ-9の能力に感激したものが多く、更なる連携訓練を望む声が多く励みとなっている」と振り返った。
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MQ-9 Agile2.jpg日本もMQ-9で良かったんじゃないかとつくづく思います。無人機検討を避けに避け続けてきた結果として、希望もしない装備を米国から押し付けられたということです

本題の米空軍MQ-9の米海軍や海兵隊との連携強化ですが、中東という難しい環境で頑張ってきた目立たない空軍無人機部隊が、対中国という新たな分野で底力を発揮し、存在感を発揮することを心から祈ります

最近のMQ-9関連記事
「本格紛争用に約1/4を改修&延命へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/28/118/
「豪州にMQ-9輸出許可」→https://holylandtokyo.com/2021/04/29/119/
「JDAM完成弾運搬役も」→https://holylandtokyo.com/2021/03/09/156/
「無人機MQ-9の対中国海上作戦への応用演習」→https://holylandtokyo.com/2020/10/02/424/

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国防情報局長DIAが中露の脅威を語る [米国防省高官]

中国は2027年までに台湾強制併合可能な軍事レベルに
ロシアは資金資源インフラ不足の中、特定分野で特異な技術追求

Berrier DIA.jpg4月29日、国防情報局長DIAのScott Berrier陸軍中将が上院軍事委員会で中露の軍事脅威について証言し、中国が莫大な投資を背景に軍事力増強を加速させつつあり、約6年後には基礎的な軍事近代化を達成し、15年以内に最も破壊的な軍事能力新規導入に成功する可能性がある一方で、ロシアは資金資源インフラの制約を受け特定分野での軍事分野に注力する傾向が続くと主張しました

また非常に抽象的な表現で細部が不明ながら、全般には、今後20年間で、中国ロシア米国のいずれかが、戦いの性格を変えるような新たな兵器やコンセプトを持ち込むだろうとも証言しています

DIA.jpg中国が米国にとっての最も脅威となる国家で、その勢いが加速しているとの危機感を改めて強調するとともに、中国とロシアが共に宇宙ドメインでの能力を高めつつあり、またサイバー分野で米国社会全体に浸透しつつあり、コロナで混乱する社会問題に付け込む「information warfare」による世論誘導工作で、経済面や政治面で優位な環境を作為しているとも警告しています

4月末で退役したDavidson前インド太平洋軍司令官が3月上旬に、、6年以内に中国が台湾を力で統一する可能性があると議会で証言していましたが、この分析を事前に入手し引用していたのかもしれません。
以下では、中国とロシアに分け、同中将の証言をご紹介します

4月30日付米空軍協会web記事によれば
DIA局長は中国について
Berrier DIA3j.jpg中国は「全政府機関を上げての体制」で軍事力強化に取り組んでおり、「軍民融合military-civil-fusion」により、意図的に民間と軍事技術の境目をあいまいにしてより多くの投資を可能にしており、これが米国の技術優位への最大の脅威である
既に多くの研究分野で、米国と「同レベルかそれに近いレベルを達成」しており、特に「57分野に照準を定め」、米軍事技術を追い越して劣勢な立場に追いやる勢いである

まもなく中国は、中国本土から米軍や同盟国軍を脅威下に置くことが可能となり、戦力投射力も並行して強化している。結果、2027年までに台湾武力併合等を可能とする地域の短期紛争に勝利する能力と、併せて第3者の介入を阻止・抑止するだけの能力を獲得し、2050年までに世界を支配する軍事力を獲得する計画実現に向かっている
中国の軍事力進展を示す事例として、インドとの国境で緊張が高まっている時に、最新のJ-20ステルス攻撃機を国境地域に展開させた

DIA2.jpgまた中国は世界が注目する将来技術分野で世界をリードしており、人工知能AI、高速計算機、量子計算機、バイオ技術、先進ロボットでも世界の主導的立場にある。そしてこれら立場の獲得には、「合法と非合法の手段による海外技術獲得があり、これにより多くの科学分野で現在の地位を確保している
なお中国は、約6か月前に核兵器政策を変更し、核兵器運搬手段を現在の約200から400に倍増することを決定した模様で、加速度的に変化を進めている

このような中国の取り組みにより、中国は米国の技術優位に対する最大の脅威となる可能性が高く、情報コミュニティはこれをとらえて3年前から中国を「pacing threat着実に歩調を進める米軍事力に対する脅威」と表現している

DIA局長はロシアについて
ロシアは膨大な軍需産業群を抱えているが、ロシア独自に先進的な開拓を進めるのではなく、目標と定めた米国やその同盟国が優位にある特定分野で、対抗、対処、優位排除戦力を執ってい
Berrier DIA2j.jpgロシアは大量の兵器生産が可能な態勢にあり、先進技術分野での国産化を進めようとしているが、先進兵器を支えるハイテク部品を製造する下請部門の資金や資源不足、インフラ問題が足かせとなっている

このような通常兵器やIT技術の弱点を相殺するため、ロシアは他国には見られない形で核兵器活用の依存度を高めている。例えば、水中核爆発で津波を発生させて敵国沿岸部に破壊被害を与える兵器の開発追求などであり、この傾向は今後も続くと考えられる

中露共通
中国とロシアはともに、宇宙や対宇宙分野に注力しており、米国のインフラへの影響力を強める形でサイバー空間での活動も増加させている。また両国はコロナパンデミックの機会をとらえ、西側政府や同盟国を情報戦で攻撃して弱体させようとし、経済的政治的利益を得ようとしている
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「2027年までに台湾武力併合等を可能とする地域の短期紛争に勝利する能力と、第3者の介入を阻止・抑止するだけの能力を獲得」と分析されていますが、2027年まで体制整備に時間が必要な分野とはどこでしょうか?

直上陸輸送力、空中給油能力、長射程対艦ミサイルや同ミサイル搭載大型機の開発、洋上目標のターゲティング能力、西太平洋の島々に分散する米軍状況のISR能力などなどでしょうか? 

関連の記事
「フロノイ氏が今こそ語る中国抑止策」→https://holylandtokyo.com/2021/04/05/99/
「中国は6年以内に台湾併合」→https://holylandtokyo.com/2021/03/19/165/
「必要な国防政策を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/08/17/526/
「米議会で中国抑止を議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17
「太平洋軍司令官が追加要望事項レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-03

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英空母エリザベス米英のF-35B搭載で初出撃 [安全保障全般]

地中海、中東、インド洋、南シナ海、台湾を経て日本へも
米英の悲しきWin-Win関係とも見えるのですが・・・

Queen Elizabeth.jpg5日、英海軍の新型空母エリザベスが、米海兵隊F-36Bを10機と英海軍F-35Bを8機搭載し、地中海、中東、インド洋、南シナ海を経て日本へも立ち寄る初の作戦航海に出港しました。

そしてこの英米F-35Bを混合搭載した新型空母は、米海軍のアーレイバーク級イージス駆逐艦Sullivansと行動を共にし、空母戦闘群として行動することが今年1月に英米国防大臣から大々的に発表されていたところです

米海兵隊F-35Bと英空母エリザベスの一体運用は少なくとも2019年頃から議論され、2020年秋には10機の米海兵隊F-35が空母エリザベスに展開し、同空母に最大負荷をかけての戦闘能力点検を共に突破して連携を深めてきました

Queen Eliz Map.jpg米英両国はこの一体運用を強固な同盟関係のシンボルとしてアピールし、英空母が南シナ海や東シナ海などアジアにも展開して中国ににらみを利かせることから、日本でも大きく報道されています

ただ何回かご紹介しているように、英軍は空母エリザベス搭載用のF-35Bを十分な機数調達できず、米海軍と海兵隊は「虎の子」のF-35B搭載可能強襲揚陸艦Bonhomme Richardを昨年7月の放火火災で失っており、偶然かもしれませんが、英米間の「悲しきWin-Win関係」が成立しているわけです

ただ注意が必要なのは、英国はスウェーデンと組んで次世代戦闘機「Tempest」の共同開発を国内軍需産業保護の観点から強力に進めており、独仏チームに対抗し今後4年間で3000億円の開発費を投じる方針を発表しており、約130機調達予定だったF-35の調達数を半減させる方向だと報じられており、「疑心暗鬼含みの悲しきWin-Win関係」とも言えそうです

5日付Military.com記事によれば
米海兵隊の10機はアリゾナのFighter Attack Squadron 211から派遣され、英軍の617 Squadron 「The Dambusters.」と共に行動することとなった
James Heappey英国軍相は「この出港は、英国軍が世界の同盟国と共に、世界の脅威と対峙する覚悟を示す実例である」、「世界に冠たる英国が行動する姿である」と出港に際して語った

Yael Lempert駐英米国大使は、「英国ほど緊密な同盟国はなく、我々は共に共有する価値を守るため、インド太平洋地域などの安保問題に関与し、同時にNATOへの強固な関与を改めて示す覚悟である」と語っている
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Queen Elizabeth2.jpg地中海からアラビ海でシリア・イラン・そして米軍が撤収を開始したアフガンににらみを利かせ、シンガポールでアジア同盟国からたっぷり補給を受けて南シナ海に進出し、台湾東岸を通過して横須賀に入る行程ですが、機材トラブル等なく航海が進むことを祈念いたします

しかし、このコロナ禍に大変な任務です。ワクチン接種など準備万端でしょうが、初作戦行動にしてはあまりにも荷が重いような気がします

英空母エリザベスの悲しき現実
「英新型空母と米駆逐艦が空母攻撃群を編成へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-22
「コロナ下で800名乗艦で最終確認試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-01
「英空母エリザベスは米軍F-35B部隊と一体運用へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-26-1
「英海軍と英空軍共有のF-35Bが初任務」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-27
「米海兵隊F-35が英空母へ展開へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-09
「米軍F-35Bを英空母に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16
「英空母が航空機不足で米軍にお願い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

「英国の138機F-35購入計画は多くて60-72機へ!?」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24

F-35搭載改修終了直前の惨事(放火)
「強襲揚陸艦Bonhomme Richard火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15

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F-35が機種別保有機数で米空軍第2位の283機に [米空軍]

281機のA-10、234機のF-15C/D、218機のF-15Eを抜く
4世代機の2倍以上の維持費に低下傾向がない中で

Airforce 3 top2.JPG7日、Brown米空軍参謀総長が下院予算小委員会で、F-35の保有機数が283機となり、約450機保有のF-16C/D戦闘機に続いて、保有機数で第2位になったと明らかにしました。ちなみに現時点での米空軍F-35調達予定数は1763機です

同時に同参謀総長は、戦闘機の世代混合比率検討を引き続き行っており、ハイエンド紛争を支えるF-35など第5世代機と、それほど脅威の高くない環境で活躍できる第4世代機や「5世代機マイナス機」の最適構成比率を将来の脅威環境を踏まえつつ導き出したいと説明しました

F-35.jpg民主党政権が誕生してから、F-35への風当たりは厳しさを増しており、Adam Smith下院軍事委員長は3月の講演で「F-35への投資は金をどぶ(rathole)に捨てるようなもの」と怒りをあらわにし、体制維持小委員会のJohn Garamendi委員長も「調達機数を削減して維持費予算の膨張を抑え、戦力全体の健全性を保つべき」と訴えています

折しも、維持費高騰や稼働率低迷の原因であるF-35兵站支援システムALISの代替として部隊配備が一部で始まっていたODINに関し、開発が想定以上の困難と予算不足に直面して中断を余儀なくされ、再開見通しが立たない泥沼に落ちており、同席した空軍長官代理等の表情もさえなかったようです

RQ-4 1.jpg7日の小委員会で米軍幹部は同時に、議会の反対で過去数年全く進展がないA-10やRQ-4やE-8C Joint STARSや老朽給油機の早期退役を強く訴え、浮いた資金を次世代装備導入に振り向けたいとのかねてからの要求を繰り返し述べています

ただ、老朽装備品の早期退役に反対する議員たちは、軍事的な必要性を表面上で訴えていますが、選挙区の基地から装備が削減されて雇用や税金収入が失われることを懸念して抵抗勢力となっているのが実態で、中国の言う「民主主義の限界」を体現したような構図となっています

7日付米空軍協会web記事によれば
Brown参謀総長は、「TacAir検討は戦闘機ポートフォリオを吟味するもので、7種類の異なる戦闘機をどのように組み合わせるのがベストか、将来脅威を踏まえ検討している」と説明し
一方で「単一の答えが出るものではなく、脅威に応じた幅を持ったオプションを提示するようなものとなり、米空軍及び関係者の参考に供することとなろう」と説明するにとどまった

老朽装備の早期退役を訴え
A-10 4.jpgJohn Roth臨時国防長官はBrown参謀総長と共に、「米国は米空軍装備の近代化を、1年はおろか、1か月も1週間も待つことはできない。現在の競争相手で将来の敵対者を抑止し撃破するには、資源配分の方向を今変えなければならない。変化を加速しなければ敗北するのだ。これが我々の要求だ」と訴えた
そして「我々は(老朽装備早期退役の)厳しい決断を今行い、資源投入先の(将来システムへの)変更という難しい決定をしなければならないタイミングにある」、「我々は議会の皆さんと2-3年に渡り本件を議論してきたが、近く政府が議会に提出する予算案は、国家防衛戦略NDS遂行を支えるバランスの取れた案であると申し上げておく」と述べて米空軍の考え方に賛同を求めた

KC-46A3.jpgただ、過去数年間空軍の早期退役要求が認められなかったA-10やRQ-4・Block 30やE-9Cや空中給油機やE-3 AWACS、更に州軍所属のC-130輸送機など具体的な装備名には、予算案提出前でもあり言及せず、各関係部隊と緊密に議論しているとのみ説明した。
同時に資源を振り向けるべき将来に向けての投資に関しても、一般に言われているKC-47給油機やステルス性のある無人ISR機やABMSなどの具体的装備名にも言及しなかった

しかし、核抑止の3本柱の一つであるICBM後継のGBSD開発の重要性については、現有のミニットマンⅢの延命が困難であることと共に、改めて臨時空軍長官と参謀総長は強く訴えた /
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Airforce 3 top.JPG老朽装備の早期退役と次世代装備への投資転換は米空軍としてまっとうな要求だと思いますし、選挙区への利益誘導・既得権絶対死守でこの流れを阻む議員たちの姿は「民主主義の限界」そのものの情けない状況ですが、F-35やKC-46の開発状況がこれだけ「グダグダ」だと、米空軍の訴えも相当に迫力を欠く面があります

次の空軍長官候補となったFrank Kendall氏が正式就任し、その剛腕で議会との折り合いをつけてくれることを祈念申し上げます・・・

F-35では以下のエンジンブレード問題も重いです
「エンジンブレードと整備性問題」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13

「空軍長官候補にKendall氏」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-28

最近のF-35
「ODINの開発中断」→https://holylandtokyo.com/2021/04/26/115/
「英国は調達機数半減か」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/
「伊軽空母に海兵隊F-35B展開」→https://holylandtokyo.com/2021/03/18/164/
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holylandtokyo.com/2021/03/10/157/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「F-35稼働率の状況」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/
「機種別機数が第3位に」→https://holylandtokyo.com/2020/08/04/514/

要求性能を満たすのにあと数年のKC-46給油機
「恒久対策は2023-24年から」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-30
「今度は燃料漏れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-31-1
「やっぱりだめで更に1年遅れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-04

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