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米空軍大将が陸軍の長射程兵器導入を「ばかげている」と [Joint・統合参謀本部]

大型爆撃機部隊GSC司令官のTimothy Ray大将
重複投資、アジアで受入国探し困難、1発数十億で破産する
米議員に「ばかげている、いい加減にしてくれ」と説明

Ray3.jpg1日、米空軍協会Podcastで公開されたインタビューで、米空軍で大型爆撃機やICBM部隊を管轄するGSC(Global Strike Command)司令官のTimothy Ray大将が、米陸軍が地上発射極超音速ミサイル等を重点装備として遠方攻撃に乗り出す方針を示していることに対し、「ばかげている。いい加減にしてほしい」と辛らつに批判し、くすぶり続けている「米空軍VS米軍地上部隊の長射程兵器導入構想論争」に、一気に火が付きそうな情勢になってきました

翌日2日には、米陸軍と空軍の参謀総長同士が連絡を取り、Brown空軍参謀総長が「米空軍は引き続き他軍種と緊密に協力しながら、米国の要求にこたえていく。4軍はそれぞれに、国家安全保障のため、統合軍としての役割を相互にサポートするため、それぞれを編成、装備、訓練することを担っている」との、沈静化を狙った声明を出していますが、コロナの影響で国防予算は厳しさを増しており、中国と戦う以前に、4軍間の「仁義なき戦い」は激しさを増しています

hypersonic Army2.jpg米空軍側は以前から、「遠方攻撃は既に米空軍が大型爆撃機等で担っており、空軍の極超音速兵器開発も進んでいるから、予算厳しき中で重複投資は無駄だ」、「ウォーゲームが示すように、長射程兵器だけでは勝てない」、「極超音速兵器や長射程精密誘導兵器は高価で、それだけで数万個の目標に対処すると破産する」と地上部隊の動きを批判してきましたが、GSC司令官は更に「欧州や中央アジアでは受け入れ国があるかもしれないが、アジアでは難しい」との点も持ち出して、陸軍を厳しく批判しています

2日付米空軍協会web記事等によれば
1日公開の米空軍協会ミッチェル研究所のインタビューでRay司令官は、「(米陸軍の遠方攻撃追求を最優先とする構想について、)純粋にその構想の信頼性に苦慮している。私は既に米空軍が習熟している分野に、相当額を投資して重複する戦力を編成する案をばかげていると思う」と語った
同司令官は、陸軍が全ドメインで戦うと称して、地上発射型の極超音速兵器を配備し、敵のミサイルや飛行場を迅速に攻撃できると主張し、陸海海兵隊が担ってきた長射程攻撃、海上作戦、着上陸作戦、宇宙作戦の任務に乗り出そうとしていることを批判した

hypersonic Army.jpgまた同司令官は、「地上配備の長射程兵器が機能するには、同盟国等の受け入れ承認が必要だが、欧州や中央アジアのいくつかの国では可能かもしれないが、アジア太平洋地域でにわかに可能になるとは考えにくい」、「陸軍がその能力を部隊配備するまでに少なくとも5年は必要で、実際に部隊配備できても、有事に前線に展開するには2-3か月は必要だろう」と述べ、一方で空軍アセットは直ちに必要な場所に派遣できると語った
そして、「関係しそうな同盟国に尋ねてみたらどうか? これまでなかったそのような兵器の受け入れ可能性について。基地対策で苦労している現状から、更に全く異なる依頼をすることとなる現実を考えるべきだ」と表現した

極超音速兵器に関しても、米空軍の爆撃機搭載用AGM-183Aの試験が4月5日に予定され、B-52やB-1やF-15E等に搭載可能になることがまもなく証明される段階にあると同大将は訴え陸軍の地上発射型より機動力があると主張した
AGM-183A.jpgまた、空軍の大型爆撃機部隊が開始した「Bomber Task Force」は、インドのような新たな場所にも展開先を広げ、数日ではなく、時間単位で展開可能で、長期にわたり変化する情勢に対応する柔軟性もあると語り、「国防省予算が厳しい中で、暴力的に高価な陸軍のアイディアに投資する必要があるのか」と疑問をぶつけた

そして、複数の米議員から陸軍構想について質問されたが、そのたびに「正直に申し上げると、ばかげているし、いい加減にしてほしい」と答えているとまで表現した

インタビューの中でミッチェル研究所の研究部長であるDeptula退役空軍中将は、「アフガンやイラクからの撤収が(政権の)話題の中で、米陸軍は極超音速兵器を追求することで自身の存在意義を主張しようとしている」、「強引に新たな任務を確保し、国家防衛戦略NDSの中で存在感を発揮しようとしている。それが遠方攻撃最優先の背景だ」と厳しく指摘した
Deptula AFA2.jpg更に同部長は、「陸軍は統合戦力を頼ることなく、遠方の目標情報や衛星画像情報を陸軍の航空機や宇宙センサーで獲得しようと構想しているが、これらは米空軍が統合戦力にすでに提供しているもので、完全に重複投資だ」とも訴えた

そして、陸軍は遠方攻撃に投資するために、米陸軍が中核として担ってきた基地防空やミサイル防衛への投資をおろそかにしていると批判し、米軍全体での戦闘能力強化を考えて行動すべきと批判した
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何回も申し上げてきたように、こんな時こそ統合参謀本部が乗り出すとタイミングだと思いますが、議長が陸軍人で、副議長が空軍人の体制では期待できそうもありませんし、仲介の動きさえも聞こえてきません

それでも、第一列島線上に「インサイド部隊」として残存性の高い防空&対艦ミサイル部隊を電子戦能力を強化して配備し、遠方で待機する「アウトサイド部隊」である海空軍部隊の来援まで持ちこたえ、中国が既成事実を積み上げることを阻止する体制づくりが大きな米軍の方向性のようなので、海兵隊を含めた地上部隊の動きは今後も要注目です

対中国新構想「海洋プレッシャー戦略」の中核か?
CSBAの同構想レポートを振り返るhttps://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-13

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
「米空軍トップが批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

米陸軍の目指す長距離攻撃能力
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「3月の極超音速兵器テストは誤差20㎝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-14
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16
「射程1000nmの砲開発に慎重姿勢見せる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-10
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15

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B-21の大きさをシェルター規模から推定 [米空軍]

米空軍が公開のシェルター候補から
B-2爆撃機の縦横8掛けのイメージか

B-21 Shelter.jpg4日付米空軍協会web記事は、米空軍が公開したB-21シェルター候補の写真をB-2爆撃機用シェルターの大きさと比較し、謎に包まれた開発中のB-21爆撃機の大きさを推定しています。

このシェルターとは、封鎖された空間となる「格納庫」とは異なり、飛行場の駐機場(列線:Flight Line)に設ける屋根付き壁無しの駐機スペースのことで、航空自衛隊の基地にはありませんが、米軍の航空基地には広く配備され、在日米軍基地でも岩国などで見られます

シェルターは、直射日光(紫外線など)や雨や雪が機体表面を損耗させるのを防ぎ、積雪地では機体の雪下ろしの手間を省くほか、弾薬搭載や燃料補給などの機体回り作業を開放的な空間で効率的に行うために活用されます

B-21 B-2.jpg特にステルス機の場合は、機体表面のステルスコーティングを守る意味から重要で、本格的な整備作業は封鎖された空間が確保できる「格納庫」で行われますが、格納庫への機体の出し入れは手間がかかるため、B-2爆撃機は輸送可能な移動式簡易シェルターを保有しており、インド洋のディエゴガルシアやグアム島展開の際は臨時に設置されるようです

今回のシェルター候補写真からすると、B-21はB-2の縦横8割程度の大きさのようで、現在B-2が使用している機動展開用簡易シェルターがB-21にもそのまま使用されるのではないか・・・と記事は推測しています

4日付米空軍協会web記事によれば
米空軍が公開したサウスダコタ州のEllsworth空軍基地に設置されたB-21爆撃機用シェルター候補の写真には、全長6mの車両(Ford F-150 又は Chevy Silverado)と複数の人物が含まれており、そこからこのシェルターの大きさを推定した
B-2爆撃機も同様のシェルターを使用しておりその大きさは
--- シェルター 75m×38m
--- B-2の機体 51m×21m(横幅×全長)

写真から推定するB-21シェルターの大きさは
--- シェルター 45m×24m
B-2の例からB-21の機体規模を推定すると
--- B-21の機体 42m×15m(横幅×全長)

B-21 bomber.jpg米空軍GSCのB-21担当大佐によれば、B-2と比較し、B-21はより多くの軽易な整備作業をシェルター内で実施可能な設計思想で開発が行われており、今後他のシェルター候補と数年かけて諸データを収集して比較する予定である
また、B-21配備候補基地はEllsworth空軍基地の他、モンタナ州のWhiteman基地やテキサス州のDyess基地など退役が始まったB-1爆撃機配備基地が予期されるが、Ellsworth空軍基地が最も気象条件が厳しいことからシェルター候補のテスト基地に選ばれたと述べた
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なお米空軍協会は、独自に以前から「45m×17m以下」と推定していたと自慢しています。B-21の大きさが「42m×15m」と推定されたとして、「それがどうした?」と言われそうですが、こんなことが話題になるほど謎に包まれたB-21爆撃機です

それでも米空軍は、B-21関連情報を小出しにして、開発が順調だと最低限の宣伝には着意しているようで、予算確保への配慮に苦心しているようです

次期制空機NGADについて米空軍大将が、「中国に先を越される前に実現したい」と危機感を示していましたが、中国やロシアがどこまでB-21について把握しているのかも気になります・・・

B-21爆撃機の関連記事
「初飛行は2022年半ばか」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-17
「B-21の開発状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「2021年12月3日初飛行予告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-29
「初期設計段階終了」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-30
「米空軍の爆撃機体制計画」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2 
「2017年3月の状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-20
「B-21に名称決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-27

「敗者の訴え却下」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-17
「敗者がGAOに不服申し立て」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-07
「結果発表と分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-28

米空軍爆撃機の話題
「B-1の稼働機一桁の惨状」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-05
「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
「2018年春時点の爆撃機構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2

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空母艦載機の無人機比率を将来的には2/3に [Joint・統合参謀本部]

米海軍航空作戦部長が海軍協会のイベントで語る

Harris XX.jpg3月30日、米海軍協会イベントで米海軍航空作戦部長が、空母艦載機における無人機の割合を将来的には6割以上にまで高めることも検討していると語りました

米海軍は3月16日、無人システム活用の将来構想「Unmanned Campaign Plan」を発表しましたが、専門家や米議会から「空虚な言葉や表現ばかりで中身がない」、「今やっていることの説明ばかりで、具体的将来計画がない」等々と厳しい評価を受けていたところですが、そんな評価を気にしての発言かもしれません(完全に邪推です)

FA-18.jpg米海軍はFA-18後継機のFA-XX検討において、米空軍と同じように「family of systems」コンセプトを表明しており、単に特定の戦闘機型プラットフォームだけでなく、センサーや他の兵器システム全体で将来の戦い方を実現したいとしていますが、この方面でも米議会から検討状況が全く見えてこないと批判的な評価を得ているところです

もちろん、中国の軍事力課題が急速に進む中、「手の内」を見せない次世代装備開発が米軍には求められますが、対中国正面ではこれまでとは異なる戦いへの変革を求められていることから、自ら新たな発想を生み出せない&変化を推進できない軍隊の負の側面を見せているとも考えられ、今後の具体的な動きが注目されます

3月30日付Military.com記事によれば
Ford2.jfifNavy Leagueのイベントで米海軍航空作戦部長Gregory Harris少将は、「family of systems」で航空戦力を強化していく一環として、将来的には、無人戦闘機などを含む無人システムで空母艦載機の2/3以上を占める可能性に言及した
同少将は、「family of systemsは有人と無人システムの組み合わせで構成されると予期しており、有人と無人の比率は、無人4割、有人6割の方向に向かい、時間と共にその比率は無人6割・有人4割に向かうことも想定できる」、「空母艦載航空部隊を、5割以上無人システムで構成するようにもっていきたい」と表現した

このため、米海軍はFA-18後継機を検討するFA-XXプロジェクトで、有人機か無人機か部分的自立システム化等の検討を行っていると同少将は説明し、米空軍のNGAD計画が単一の戦闘機型アセットで構成されるものではない点にも留意していると語った
MQ-25.jpg更に同少将は、「米海軍はE-2D後継を将来的に考える必要があり、早期警戒プラットフォームの補完的な役割も考える必要がある」とも語った

そして、現在進めている空母艦載無人空中給油機MQ-25 Stingrayの出来次第で、今後の方向性を煮詰めていく事になるとも語った。なお米海軍はMQ-25に給油任務の他、ISR任務遂行を期待している
一方で、空母上での無人機運用は、安全面など今後慎重に進めるべき課題も残されており、他航空機との兼ね合いも含め、今後実際に空母上でリハーサルを繰り返す中で作戦運用を成熟させていく必要があると語った
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米空母の艦載機は、ニミッツ級でも新型フォード級でも、FA-18やF-35が4個飛行隊計約45機、電子戦機EA-18Gが5機、早期警戒機E-2Dが4機、H-60救難&輸送ヘリが6機、C-2輸送機が2機が一般的な構成ですが、6割以上を無人機にするとなると、戦闘機系列45機に手を付けなければなりません

X-47BFlight.jpgどこまで「無人機6割」の検討が煮詰まっているのか「?」ですが、米海軍協会(Navy League)のイベントは、米海軍主要幹部の他、大物OBや専門家やマスコミや軍需産業幹部が集結する相当規模のイベントですので、それなりの覚悟で発言したものと考えられます

の発言を受け、米空軍幹部にも「海軍は無人機6割の方向だが、空軍は?」との質問が投げかけられるのでしょう・・

上院軍事委員会が米海軍に対し、現状で不明確な米海軍の次世代制空(NGAD)構想について不満を示し、整理して報告するように要求
2021年度予算を22億円要求に対し、7億円しか認めず
「米海軍の次期艦載機F/A-XXの構想進まず」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-17

空母艦載の無人攻撃機構想がしぼむ様子
「組織防衛VS無人機導入派」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-08-01
「哀愁漂うUCLASS議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-17
「UCLASSの要求性能復活?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-14
「夢しぼむUCLASS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-21

無人艦載攻撃機X-47Bの夢
「夏にRFP発出か:無人艦載機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-28-1
「映像:空母甲板上で試験中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-11
「映像:X-47B地上カタパルト発進」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-01
「X-47Bが空母搭載試験へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-28-1

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フロノイ氏が今こそ語る:中国を抑止するには [安全保障全般]

皆が期待する国防長官最有力候補だったのに・・・
今もお元気そうで何よりです

Flournoy.jpeg29日、バイデン政権の国防長官最有力候補だったMichèle Flournoy女史(CNAS共同創設者)が、パネッタ元国防長官や陸海軍参謀総長と共にネットワークの重要性を議論するパネル討議に登壇し、どのように中国を抑止すべきかについて語っています

ご存じのようにFlournoy女史は、有力シンクタンクCNASの共同創設者で、その後オバマ政権下で国防省NO3の政策担当次官として活躍し、バイデン政権誕生決定時には、専門家の10人いれば9人は次期国防長官最適任者として名を上げていた人物で、実務能力及び見識及び経験を全て備えた史上初の女性国防長官確実と追われていた女性です

Flournoy3.jpegしかし、なんかよくわからない理由で指名直前に候補から外れ、初の黒人Austin長官が誕生して以来、動静を耳にすることはありませんでした。フロノイ女史が候補から外された背景には、「米産軍複合体の闇を感じる」との噂や話をあちこちで耳にしたところです・・・

そんなFlournoy女史が久々に公の場に登場ですので、断片的ですが、対中国に関するお考えを改めてご紹介しておきます

なお、同女史のお考えは、以下の二つの記事でもご紹介をし、多くの方にご覧いただいておりますのでご参考に予算争いが激しさを増し、何が何かわからなくなっている、米国軍事戦略&戦術の方向性を示した、筋の通った考え方がそこにはあります

フロノイ女史の思考
「必要な国防政策を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-12
「米議会で中国抑止を議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17

29日付米空軍協会web記事によれば
Flournoy2.jpeg3月29日、The Hill主催のwebイベントに参加したMichèle Flournoy元政策担当国防次官は、中国は米国が国家として下り坂に入っていると確信しており、そのような考え方のもとに中国が誤った行動を起こさないよう、米軍内の連接性を向上させる等の未来志向の投資を活性化し、同盟国へのコミットを確かにしなければならないと訴えた

そして、「米国は中国に対し、コロナ禍から立ち上がり、地に足の着いた歩みを取り戻したことを示す必要があり、このため先ず国内諸問題に対処しなければならない」、そして「早期にカギとなる米軍の近代化や改革につながる技術分野へ投資する姿を見せることで、米国が世界のリーダーシップから後退しているとの見方により強く対処しなければならない」と主張した

更にフロノイ氏は、「最近行われた全てのウォーゲームやシミュレーションは、私の知る限り、現在の形態の米軍では次世代の軍事優位を維持することはできないことを示している。我々は抑止力を徐々に失っている状況にある」と警鐘を鳴らした
Flournoy4.jpegまた、「米軍は旧態然とした伝統装備に投資しすぎており、将来の厳しい戦闘環境下で生き残り、たくましく連携しながら機動し、戦い続けるような陸軍部隊や戦闘機部隊や海軍艦艇を生み出す次世代技術に十分投資していない」と問題点を指摘した

中国の軍事ドクトリンは「我が指揮統制、移動、通信、目標照準能力をダウンさせることで、交戦前に戦いを決着させる方向を目指しており、米国はこれに対処するため、強靭な全ドメイン指揮統制ネットワーク網を求められている」と現状認識を示し
最後に、「今後40年間の対中国抑止能力を確保しようとするならば、米国防省は今後4年間に賭けて、必要分野に重点投資しなければならない」と訴えた
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同webイベントでパネッタ元国防長官は中国が莫大な投資を5GやAI分野に投資を行っているのを横目で見ながら、それらの重要性を認識しながら、米国として十分な投資を行ってこなかった現実を直視すべきと語り、米国は中国に5GやAI分野で明白に後れを取っていると現状認識を示しています

Panetta.jpgただバイデン政権はその遅れを認識し、新技術への投資の必要性を認識しているとし、時間が必要だが、民間企業が国防上重要な分野に投資が進むようなインセンティブを与えるべきとの意見を述べています

残念ながら、陸軍と空軍の参謀総長は、遠方攻撃を巡る縄張り争いに関し、互いに議論に踏み込まない姿勢を示し、「それぞれに考えがあるが、4軍として一丸となって戦う」とその場しのぎの発言で終わっています

国防省内は混乱を極めており、中国の言う「下り坂の米国」を象徴するような状態ですが、本日は、良心的な政権外部の有識者から見た、米軍の対中国の現実とあるべき方向性をお伝えしました

フロノイ女史の思考:Biden政権の国防長官最有力候補だった
「必要な国防政策を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-12
「米議会で中国抑止を議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

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米欧州軍が最高度の警戒態勢:露軍がウ国境に兵力増強 [米国防省高官]

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4月13日には、バイデンとプーチン大統領が電話会談
(近く、両首脳の直接会談をセットで合意とか)
ロシア軍8万人が国境付近集結とウクライナ情報
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米軍トップがロシアとウクライナ軍と意思疎通図る
ロシア軍の演習だろうとの見方もあるが・・・

Kirby2.jpg3月31日、John Kirby米国防省報道官が記者会見で、ロシア軍がクリミア半島付近のウクライナ国境に戦闘車両や兵器システムを増強しており、米軍人トップのMark Milley統合参謀本部議長が、ロシア軍とウクライナ軍のカウンターパートと連絡を取って状況確認と情報収集にあたっていると語りました

米メディア(NYT誌電子版など)は、先週から欧州米軍の当該地域担当部隊が警戒レベルを最高度に引き上げ、監視体制や情報収集体制を強化していると報じている一方で、米国高官が軍事演習の準備だろうと語った等の報道も出ており実態がわかりませんが、米国がコロナや政権交代途中で万全ではない状態で、ロシアや中国にとってチャンスと見えるタイミングですので要注意のためご紹介します

同じタイミングで、ロシア軍は北極海やアラスカ周辺で大型偵察機を繰り出し、米軍やNATO軍が10回以上のスクランブル発進で対応する事案も発生しており、気になる動きです

3月31日付米空軍協会web記事によれば
crimia.jpgJohn Kirby米国防省報道官(元海軍少将・海軍でも報道担当)はロシア軍がクリミア付近のウクライナ国境周辺に軍備増強している件について、3月31日にMilley統合参謀本部議長がロシア軍とウクライナ軍トップに連絡を取り、状況確認を開始したと明らかにした
同報道官は、「ロシア側との接触は始まったばかりである。直接ロシア側に何が起こっているかを確認するため」であり、ロシア勢力のこれ以上のウクライナへの侵入を防止するためでもあると語った

ロシア側高官は「軍事対峙のエスカレーションがみられる」と表現したと伝えられているが、米CBSニュースは米側高官が「軍事演習の準備だろう」と語ったとも報じている
NYT紙は、先週から欧州米軍が地域担当部隊の警戒態勢を最高レベルに引き上げたと報じている

Kirby.jpg同報道官はまた、欧州米軍のTod Wolters司令官が潜在的な脅威を懸念していると語り、この警戒態勢アップにより、欧州米軍の脅威情報収集を強化し、各級指揮官の状況判断を適切にできると説明した
また、そこに注視して監視するに値する対象が存在する、とも表現した
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「杞憂」であることを祈りますし、米国防省が「ロシアの脅威を忘れるな」と訴え、予算獲得の「追い風」に利用しているのかもしれませんが、ロシアやソ連の前科を見ると、心配になります

crimia2.jpgJohn Kirby氏の姿を見るのは何年ぶりでしょうか・・・。このような形で安保や軍事分野を専門にする報道対応のプロが、日本でも望まれるのでしょう。男性女性関係なく、有能な人材の登用が望まれます

表面上だけでも、静かな週末を祈ります

ロシア関連の記事
「露軍がスーダンで海軍拠点確保」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-14
「セルビアが危ない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-10-2
「ベラルーシ大演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-11-23
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

John Kirby米国防省報道官(海軍少将)関連
「マケイン議員が報道官に激怒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-24
「国防省がHumint強化へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-27

ゲーツ長官とメディア
「最後の記者会見でプレスを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-17-2
「他国はなぜ米国と付き合うか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-02

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昨年の米大統領選挙で米サイバー軍が20回以上作戦を [サイバーと宇宙]

「海外からの妨害や世論操作行為から選挙を守った」
日系のナカソネ司令官が上院軍事委員会で

Nakasone.jpg25日、米軍サイバーコマンド司令官であるPaul Nakasone 空軍大将が上院軍事委員会で証言し、昨年の米大統領選挙では、NSAやFBIや国土安全保障省や各州軍のサイバー部隊と緊密に連携し、20回以上のサイバー作戦を実施して、選挙妨害や誤情報流布を企てる海外脅威に対応したと語りました

同じ敷地内に同居するNSA(National Security Agency)長官も兼務する同大将は、就任当初から「選挙の防衛」が国防省サイバー軍の最も重要な任務と語り、海外敵対勢力によるサイバードメインでの世論誘導工作が極めて深刻な脅威となる中、急拡大するサイバーコマンドを率いて任務を指揮してきましたが、証言では特定の国名に言及することなく、また任務の性格上、細部には言及しませんでしたが、その状況や教訓について証言しています

Nakasone3.jpg2020年の大統領選挙への妨害工作や世論誘導工作については、トランプ大統領が、ロシア政府機関が関与するサイバー集団による誤情報や世論誘導情報拡散行為を米軍サイバーコマンドが撃退したとのメディア報道を追認し、同コマンドからロシアサイバー活動組織や関連ロシア指導層に警告メッセージを発した等と言及していたところです

また、今年3月にDNI(Director of National Intelligence)がまとめた2020大統領選に関する報告書は、ロシア、イラン、キューバ、ベネズエラ、ヒズボラなどが米国民への誘導工作や誤情報流布を企てていた一方で、中国の関与は米情報機関では認められなかった等との分析結果を公表していました

25日付C4ISRnet記事によれば
Nakasone司令官は、2020年大統領選をめぐる米軍サイバーコマンドの各種作戦を振り返り、国土安全保障省やFBI等の国家機関との連携から得た各種情報や教訓を基に対処できたと振り返った
Nakasone4.jpg特に、各州軍サイバー部隊と協力して選挙前に立ち上げた「Cyber 9-Line」との情報共有ポータルサイトで、州軍前線部隊から各地域の脅威情報を迅速に入手し、サイバーコマンドから各地に警報を発したり、脅威の特徴を迅速に共有したりしたことが、新たなツールとして多いに機能したと説明した

その上で、2020年大統領選挙の3つの教訓に同司令官は言及し
--- 必要時に迅速に対処できる態勢を確立しておくこと
脅威は突然やってきて急激に活動を活発化するので、対処のチャンスは移ろいやすい。従って、作戦成功のためには、滑らかな作戦活動のプロセスを確立しておき、関係機関の相互信頼のもと、即応状態で対処することが不可欠

--- サイバーコマンドとNSAの緊密連携は成功のカギ
司令官とNSA長官の兼務を止め、指揮官を分離すべきとの議論もあるが、同じ敷地内の同じ建物内に位置し、共通の指揮官を置くことで、双方のツールや技能や人材を有機的に機能させることは極めて有効である
サイバーコマンドは、NSAが蓄積した海外の信号分析情報から大いに恩恵を受けたし、サイバーコマンドが電子的脅威に対処する特別チームを立ち上げ、NSAと連携を図ったことが大いに役立った

--- 海外や国内パートナーとの協力で、タイムリーに情報共有関係構築
国内産業や同盟国等に脅威情報を提供することで、彼らの活動を活性化させることで、対処能力改善を推進することができた
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Cyber-new3.jpg対象国に対する世論誘導や誤情報流布は、攻撃源を隠しつつ、安価で継続的で試行錯誤が可能な手法であり、米国のことを心配するより、日本のメディアやSNNの状況を心配したいところです

NHKをはじめとする地上波や、ツイッターも最近ひどいですねぇ・・・

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「初代格上げサイバー司令官は日系3世」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17
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「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07

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