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ロッキードがF-35用廉価版シム訓練装置開発 [亡国のF-35]

豪華版と同じソフトでハード削減も75%の訓練可能
豪華版の1/8のスペースで使用可、分解持ち運び容易
価格非公表も豪華版の数分の一の模様

F-35 MRT LITE.jpg11月30日、ロッキード社が全世界のF-35使用者の要望に応え、現在100台余りが使用されている豪華版F-35訓練シミュレータの小型簡易版を開発したと発表し、9割部品を削減して小型で分解持ち運び容易性を高め、かつ訓練可能科目も豪華版の75%をカバーする装置を実現したと説明しました

第5世代機は能力が高すぎ、実環境で性能を最大発揮する訓練が難しいことや、飛行時間当たりの維持整備費が高価なことから、バーチャル訓練と呼ばれるシミュレーターでの訓練の重要性が叫ばれ、F-35用には360度の映像を映し出すMRT(Mission Rehearsal Trainer)との豪華版シム装置が提要され、DMT(Distributed Mission Training)とのシステムで世界中のシム装置と連接し、異機種混合の大規模バーチャル訓練体制構築を目指しています

F-35 MRT LITE2.jpgそのような豪華版MRTが約100台米軍を中心に世界で使用されているようですが、価格非公開ながら高価格と想定され、F-35運用者からは安価版や小規模版を求める声が相次いでいたようで、ロッキードは発表で、F-35使用者の要望やニーズを基に設計開発したので、宣伝や売込みの必要なく商談が成立するだろうと語っています

以下では2日付Defense-News記事から、安価小型版MRT LITEの概要をご紹介します

MRT LITE(Mission Rehearsal Trainer Lightning Integrated Training Environment)の概要
豪華版より9割ハードを削減し、豪華版1台のスペースに、8台を設置可能
豪華版1台の価格で、“a number of these(MRT LITE)”を購入可能

F-35 3-type.jpg豪華版が360度映像投影だが、廉価版は前方スクリーン3枚
豪華版から緊急事態対処用のみに関連する操作スイッチ等を無くしたが、5世代機に重要な目視範囲外(beyond-visual-range)任務など、豪華版の75%の任務訓練が可能

廉価版は数時間で分解・組み立てが可能で、空母内での使用も可能
18か月間の開発とF-35使用者へのデモと意見聴取で現在に至る

現在は公開ソフトのみ使用可能で、秘匿ソフトの導入を今後実施。他の部分も含め、具体的な開発完了時期やコストには発表会見で言及せず
ロッキード社は、国防省F-35計画室やF-35使用者と具体的な導入・提供に向けた協議を並行して進めている
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F-35 Gilmore.jpg豪華版だけでなく、最初から廉価版も作れよ!・・・とロッキードに突っ込みたくなりますが、F-35の維持整備費が高止まり状態で、米軍や米国議会のみならず、英国からも辛らつな批判を浴びているロッキードが、ようやく重い腰を少し上げたのでしょう

日本が豪華版を導入しているのか把握していませんが、飛行時間削減及び維持整備費削減のため、この廉価版導入を検討してはいかがでしょうか

世界中で100台使用のF-35豪華版シム訓練装置
「F-35新型シム装置DMTで他基地他機種ともシム訓練可」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-02
「DMT構想について」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-06

5世代機とバーチャル訓練
「米空軍が人工知能シム訓練アイディア募集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-26
「5世代機のため訓練エリア拡大要望」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-12-09-1
「5世代機の訓練はシムと実機併用で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-11-24-1
「シム訓練でF-22飛行時間削減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-11-1
「F-35SIM連接の課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-05
「移動簡易F-35用シミュレーター」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-02
「5世代機はバーチャル訓練で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-28-1

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欧州で初の米空軍F-35部隊設立 [亡国のF-35]

施設工事遅延で1年遅れも英国で
12月から機体受け入れ、最終的には2個飛行隊へ

495th Fighter S.jpg1日、英国のLakenheath英空軍基地で、米空軍初の欧州F-35飛行隊となる第495飛行隊が約30年ぶりに再立ち上げされ、飛行隊長が12月から機体受け入れを開始すると明らかにしました

「約30年ぶりに再立ち上げ」とご紹介したのは、同飛行隊がWW2時代に創設されて終戦時にいったん活動を終えた後、冷戦に伴い再編成され、1977年から1991年12月までF-111F戦闘爆撃機の部隊として「砂漠の盾」作戦などで活躍した歴史を持つからです

コロナの影響か、当初は2020年再立ち上げ予定が1年遅れのようですが、欧州全体で2030年までに450機のF-35を運用予定との予定の元、他の欧州導入国と連携して「がんばるぞ!」との同飛行隊長や欧州米空軍司令官の決意のほどをご紹介しておきます

先ずその前に、欧州諸国のF-35導入構想は
●共同開発国では(()内は導入予定機数)
 Denmark(27機), Italy(90機), Netherlands(37機), Norway(52機), 英国(138機)
●FMS購入国
 Belgium(34機), Israel(19機),ポーランド(32機)、スイス(32機)

495th Fighter S3.jpg上記を合計すると461機となり、これに米国がLakenheath英空軍基地に配備予定の2個飛行隊(第495飛行隊含む)48機を加えると500機を超えるのですが、2030年までだと地域合計450機になるようです

ただ、コロナ等による経済危機により、イタリアの90機や英国の138機は早くも赤信号で、イスラエルは50機以上の可能性があるものの、先行きの不透明感はぬぐえません

1日付米空軍協会web記事によれば
495th Fighter S2.jpg●1日に再編成された第48戦闘航空団隷下の第495飛行隊は、12月から機体を受け入れ、47機と人員約60名で活動する。更に同基地には追加でF-35飛行隊が編成される予定で、将来的には2個飛行隊48機で運用される予定である

●第495飛行隊長のIan D. McLaughlin中佐は1日、飛行隊のニックネームは伝統の「Valkyries」(戦場での生死を決める寓話上の女性)を引き継ぐと明らかにし、「冬に機体を受け入れるまでにやるべきことは山ほどあるが、伝統ある飛行隊を戦力化し、欧州最初のF-35飛行隊として欧州全体の戦力増強につなげたい」と決意を述べた
●欧州米空軍司令官のJeffrey L. Harrigian大将は9月の米空軍協会航空宇宙サイバー会議で、欧州でF-35をかつてない規模で運用する同盟国等と緊密に連携し、「既に計画中の欧州戦域F-35全体でのleverage構想により、相互運用性を高めるなどして地域におけるF-35の重要性を示していきたい」と抱負を語っていたところ
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495th Fighter S4.jpg現在のF-35の論点は、維持費の高止まりを如何に改善するかです。現在は第4世代機の2倍の維持経費が必要で、今後当初の要求性能を満たす「Block4」レベルへの機体改修などに必要な経費とその維持費見通しからすると、劇的な改善は困難との見方が一般的で、米議会幹部も米空軍幹部も、維持費レベルが確定した時点で調達機数削減を決定する意向を示しているところです

米空軍の導入予定機数は1760機程度ですが、これが800機程度に縮小されたとしても、既に一大戦力ですからしっかり活用して頂かないと困ります

兵站支援情報システムODINの開発中断など、現場のご苦労には頭が下がるばかりですが、頑張って頂くほかありません。B型も含め、140機以上の導入構想がある航空自衛隊も同様です

F-35のエンジン問題
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-15
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「F-35エンジン改良検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-01-2
「AETPの開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-07-02-1

最近のF-35
「2025年に調達上限設定を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-01
「酸素生成装置問題を解決せよ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-03
「海兵隊C型が完全運用態勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-08
「スイスが14番目の購入国に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-01
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-24-1
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「伊軽空母に海兵隊F-35B展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-14-1
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-06
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「F-35稼働率の状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「新型戦術核搭載飛行試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-28
「5月の事故対策改修は秘密」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-24
「中東でかく戦えり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07
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「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
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F-35への戦術核搭載へ第一歩:投下試験終了 [亡国のF-35]

設計承認後は作戦運用態勢承認のため配備基地の態勢整備へ
核搭載改修するF-35の配備先は不明
遠くない将来に配備先等も明らかになるとか

F-35 B61-127.jpg4日、米空軍戦闘コマンドACCが、F-35への戦術核爆弾(B61-12)搭載承認への第一歩として、2機のF-35がネバダ州の試験演習場で、模擬戦術核爆弾の投下試験に成功したと認めました

この模擬弾の投下試験は、戦術核搭載承認の第1段階である「nuclear design certification」の一環で、今後国防省とエネルギー省が試験データを分析して「nuclear designレベル」での承認に向けた審査を行うとのことです

その後の第2段階「nuclear operational certification」では、実際に核搭載型F-35が配備される部隊に対し、必要な訓練が実施され維持整備を含む部隊能力が備わっているかを確認する運びとなります

F-35 B61-126.jpgACC関係者は、今後の承認プロセスの時程や「operational certification」対象となる配備基地について言及を避けましたが、遠くない将来に明らかになろうと述べたようです

またACC関係者は、核搭載型F-35への主要な機体改修内容として、機内兵器庫に設けられる地上で操作が必要な「mission select switch」と、操縦席でパイロットが操作する「nuclear consent switch」があると説明していますが、核爆発で発生する電磁パルス(EMP)からの防御機構も付加する必要があると考えられます

ACC関係者は、現在F-15EとF-16(更に独空軍のトーネード)が戦術核を搭載可能だが、ステルス機であるF-35が自由落下型のB61-12戦術核を搭載可能となることで、攻撃目標により接近して正確な攻撃が可能になると意義を強調しています

F-35 B61-124.jpg一方で戦闘爆撃機に戦術核を搭載する必要性については様々な議論があり、特に対ロシアを巡る西側欧州諸国で議論のあることです。現在、米軍の戦術核兵器がドイツ、ベルギー、オランダ、イタリー、トルコに計200発程度保管され、必要時には各国戦闘爆撃機に搭載して使用できる態勢がとられていますが、対ロシア抑止の手段ではあるものの、各国政府は各国民の理解を今後も得ることは容易でないと考えています

費用面でも戦術核を維持することは大きな負担で、老朽化した旧式B61戦術核を全て「B61-12」に置き換えるには約1兆円必要だとも見積もられており、シンクタンクの中には、「B61-12」への置き換えは限定数にとどめ、戦闘爆撃機への戦術核搭載は止め、B-21次期爆撃機に搭載して使用しては・・・との提言も見られます

この場合、冷戦期から行われているドイツ、ベルギー、オランダ、イタリー、トルコと米国との「核シェアリング」が無くなることを意味し、政治的には大きなインパクトがあると考えられ、なかなか欧州関係国やNATO内で考え方を一本化することが難しいようです

F-35 B61-123.jpg大きくとらえれば、サイバー戦や宇宙戦までも含めた戦いの変化の中で、核抑止や核戦力をどう位置付けるかの議論にも発展する「リトマス試験紙」の意味合いもあり、末尾の過去記事でご覧いただけるようにチマチマとフォローしております。

ご興味のある方は、過去記事もぜひ覗いてみてください。本日はとりあえず、模擬戦術核投下試験に成功したACC関係者の言葉をご紹介しておきます

5日付米空軍協会web記事によれば試験関係者は
F-35 B61-122.jpg●ACC戦略抑止副部長(中佐)は、「潜在的敵対国は、作戦開始前により多くの可能性を想定したゲームプランを考える必要に迫られるだろう」と、F-35への戦術核爆弾(B61-12)搭載承認を得ることの意義を語った
●また「非ステルス機では実現不可能な、より戦闘地域深くへの侵攻攻撃が可能になる」、「重力投下型のB61-12戦術核は、より目標に接近できれば、より正確に目標を攻撃できる」と、模擬弾での試験成功の意義を強調した

●別のACC幹部(中佐)は、「第5世代機が全く新しい戦略的レベルの能力獲得に近づき、米国の核抑止を強化することになる」と述べる一方で、「全てのF-35が戦術核型になるわけではない」と述べた
●更に同中佐は、「それほど遠くない将来、design certificationに加え、配備基地においてoperational certificationを獲得し、地域戦闘コマンド司令官に供することになろう」と説明した
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F-35 B61-125.jpgドイツ空軍は、戦術核運搬機としてトーネード戦闘爆撃機を保有していますが、老朽化に伴う後継機選定を迫られており、戦術核搭載承認を得るのが容易でない欧州製のタイフーンやFA-18にするか、承認を得た高価なF-35を選ぶのか、又は上記3機種混合調達かの選択を迫られています。

戦術核絡みで「F-35を押し売り」されたくないとの思惑がドイツや欧州諸国にはあり、ドイツや欧州国民感情もあり、メルケル政権後のドイツ連合政権の動向もあり・・・、本日ご紹介した米空軍中佐レベルの言葉だけではとても語りきれないF-35戦術核搭載試験のお話でした

戦術核兵器とF-35等
「米空軍に追加の戦術核は不要」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-04
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ドイツと戦闘機選定関連記事
「独3機種混合案検討を認める」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-23-1
「独トーネード後継を3機種混合で?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-29
「トーネード後継でFA-18優位?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28

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下院軍事委員長が再びF-35に噛みつく [亡国のF-35]

生存性は期待ほど高くなく、維持費が高止まり
エンジン問題で稼働率上がらず→AETP早期導入要望
無人機の群れの方が有効な投資先だ
2025年の維持費を見て調達数上限を決める

Smith3.jpg8月31日、Brookings主催のイベントにAdam Smith下院軍事委員長が登場し、来年度予算を決定する2022年国防授権法の議論について語り、特に同議長が問題視するF-35問題について、維持費が高止まりすれば調達機数を制限する規定や次世代エンジンAETPをF-35に導入する可能性検討を命ずる案を含めたいと語りました

また、F-35設計当時に想定されていたより脅威環境が厳しくなり、同機の生存性が低下していると指摘し、最近の事例も踏まえて「無人機の群れ」に優先投資すべきとの考え方を示しました

Smith4.jpgAdam Smith下院軍事委員長は3月に同じくBrookingで、「どぶに金を捨てるようなF-35への投資を止めさせたい」、「金食い虫のF-35に今後35年も頼らなくてよいような道を探るべき」と訴え大きな話題になりましたが、その第2弾をぶちかましています

このイベントの内容を一番早く報じたのが、米空軍応援団の米空軍協会webサイトですので、恐らく米空軍内外にも同委員長意見に賛同する者が多数存在すると推測いたします

31日付米空軍協会web記事によれば同委員長は
F-35 F135.jpgF-35の維持費が高止まりしていることを米議会でも多くの議員が問題視しており、2022年国防授権法の下院軍事委員長案には、2025年度の同機の年間維持費が米空軍が目標とする1機年間約4.5億円以下に低下しなかったら、米空軍が何機F-35を維持できるかを見積り、調達予定機数1763機を削減する条項を盛り込んだ

また、F-35のPratt & Whitney社製 F135エンジンの整備時間や整備コストが膨らんでいる問題に関連し、維持整備費削減策の一つとして、GE社とPratt & Whitney社が開発を競い合っている次世代エンジン計画AETP(Adaptive Engine Transition Program)を活用できないかと考えている
AETPは一般に、次世代制空機NGAD計画(Next-Generation Air Dominance program)用とされているが、F-35に導入する可能性があると考えており、2社が競い合う体制であることも好ましいことから、2022年国防授権法の下院軍事委員長案に、調達担当国防次官にAETPをF-35に導入する開発&融合戦略を策定するよう規定を含めている

F-35 Greece4.jpg全く別の視点だが、F-35の戦闘空域での生存性が、敵の防空ミサイル等の迎撃能力向上により、F-16など第4世代機の生存性レベルに低下し始めていると懸念している。脅威の変化については細部に言及できないが
このような厳しい脅威環境では、F-35は機体が大きすぎて敵に発見されずに侵攻することが難しい。そこで、より小型で生存性が高い無人機に投資するのが好ましいと考えている

最近目にした、シリアやアルメニアとアゼルバイジャンの戦いが示すように、探知困難なドローンの群れは強烈なパンチを見舞うことができる。探知できず、探知しても迎撃することが短時間で困難な点など、大型アセットが不可能な役割を果たしてくれると期待でき、今後の投資先にふさわしいと考えている

緊急追記:Brown参謀総長もF-35調達数制限に同意
(維持整備費が低下しなかった場合の措置として)
Brown.jpg9月8日、Brown米空軍参謀総長はDefense-News主催イベントで、米議会からの提案は私の考え方と同一線上にあると語り、維持整備費が計画の2倍程度の高止まりしている状況が改善されなければ、調達機数1763機の削減を考えざるを得ないと述べた
同大将は「米議会からの意見や提案は、米空軍が検討している方向と同じである」、「我々はF-35計画を資金的に維持可能なものにすることに目標を定めており。それが焦点となっている」と表現した
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同イベントの模様(約1時間)


Smith下院軍事委員長が3月5日に「どぶに金を捨てるようなF-35への投資を止めさせたい」と口火を切り、6月23日には英国防相が英議会で「維持費を下げなければ、支払い不可能な請求書に縛られるつもりは無い」、「F-35を計画通り買ってほしければ、コストを抑えろ」、「白紙の小切手を渡すつもりは毛頭ない」と米国と米企業を非難する事態に至っています

なぜF-35反対の先頭に立つSmith下院軍事委員長までが、2025年度の維持費実績が出るまで調達機数削減判断を先延ばしする案を出しているのか不明ですが、国内産業政策とか、海外の調達契約国との関係とか、整理するにはそれぐらいの期間が必要なのかもしれません。

F-35のエンジン問題
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-15
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「F-35エンジン改良検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-01-2
「AETPの開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-07-02-1

最近のF-35
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「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
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米議会が再度F-35酸素供給装置の調査指示へ [亡国のF-35]

2017年頃からくすぶり続ける低酸素症問題
昨年10月のNASA報告書でも残る疑義に再調査要求へ
これまでに40件以上の異常発生報告があり・・・

F-35 Japan1.jpg7月28日、下院軍事委員会が2022年度予算関連法付属書案で、F-35酸素供給装置関連でパイロットに多数発生している低酸素症などの根本原因調査を国防省に求めていることが明らかになりました。同委員会所属議員の補佐官が記者団に明らかにしたものです

F-35操縦者に発生する低酸素症など生理学的異常事例(physiological episodes)は、2017年にF-35操縦者養成のメッカであるLuke空軍基地で問題になり、5件近くの事例報告があったことから約2週間飛行停止にして調査しましたが理由は判然とせず、海軍や海兵隊でも同様事象の発生が判明しましたが、当時は実質的にはそのまま飛行を再開し、後に酸素供給装置のソフト改修を行って今日に至っています

F-35 OBOGS.jpg本件に関しては、2021年度予算関連法でも調査が求められ、NASAが複数の操縦者への聞き取りとF-35地上試験結果を踏まえて2020年11月に報告書を出しましたが、3軍のF-35全てから40件以上の低酸素症のような体調不良発生がレポートされ、操縦者が搭乗時に呼吸回数を増やして機体に対応している様子や、一度酸素不足症状に襲われた操縦者が数日から数か月にもわたり呼吸器官全般に不調を訴えていることなど、「相当な懸念事項が見つかった」ようです

今回の調査指示案は、昨年11月発表のNASA報告を受け、更に調査を深堀する必要があると判断した下院軍事委員会の「Tactical Air and Land Forces小委員会」の要求で、法的な要求事項案になったとのことです

2日付Defense-News記事によれば
F-35 OBOGS3.jpg●再調査を求めた議員の補佐官は記者団に、「(国防省が本問題を自ら解明する姿勢を見せず、)議会が命ずる形になったことは不幸なことだと思う」と冒頭で述べ、議会が要求した包括的調査により本件の根本的な技術的原因が解明され、国防省がF-35に関する大規模で高価な機体改修を決定する前に、必要な改修策が確定され組み込まれる必要があると訴えた
●我々はF-35に適応するよう強制されているパイロットに成り代わり、酸素供給装置(OBOGS:onboard oxygen-generation system)が本来求められている基準を満たし、操縦者が機内での呼吸に負担を強いられることなく、本来の任務に集中でき環境を提供したいと同補佐官は語った

●同補佐官は、これまでに40件以上の生理学的異常がF-35操縦者からレポートされており、そのうち27件が米空軍用のF-35A型で発生していると述べ、
F-35 OBOGS2.jpg●中には2020年5月に発生した着陸失敗事故で機体が修理不能になったケースも含まれ、事故報告書が「労力を要するF-35での呼吸で、操縦者の認知能力が低下していたことも副因となった可能性あり」とされたことで、F-35酸素供給装置の問題に再び関心が集まっているとも説明した

●米空軍協会機関紙の調査によれば、2017年に9件確認された事象は、18年には4件、19年に3件、20年に5件と推移している
●今後この調査要求指示法案は、下院軍事委員会で審議され、了承されれば上院ともすり合わせて法案化が決定される
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2017年にLuke空軍基地で問題になり飛行再開した際は、「問題が発生した高度帯の飛行を極力避ける」「身体への影響を局限する地上での離陸前手順や地上訓練を追加する」「追加の予備酸素を機体に搭載する」「飛行中の身体データを記憶するセンサーを装着するオプションを提供する」との措置が取られています

F-22Hawaii.jpgF-22も似たような酸素供給装置トラブルを経験してリ、2005年運用開始の3年後から問題が確認され始め、7年後にやっと原因が酸素供給装置の欠陥バルブとフィルターだと特定され対策が打たれたとの経緯があります。

酸素精製装置のソフトが改修された後の現在でも、操縦者が「work too hard at breathing」な状態なら、何とかしてあげてほしいものです。F-35に問題があっても、操縦者に罪はなく、むしろ被害者ですから・・・。

労力を要するF-35内の呼吸による操縦者の認知能力低下も副因の一つの可能性と
「F-35着陸大事故の対策機体改修は秘密」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-24

鬼門のF-35酸素供給装置
「F-35で謎の低酸素症多発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-11

F-22事案を振り返る
「最終的に飛行再開・原因特定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-25
「不沈F-35と低酸素F-22」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-09
「F-22再度飛行停止と再開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-24
「F-22操縦者に謎の症状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-31

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F-35はエンジン不足で15%が飛行できず [亡国のF-35]

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米空軍保有機約290機の41機がエンジンなし
トルコ除外による部品不足や整備時間長期化もあるが
エンジンブレード耐熱不足問題がどっしりと[exclamation]

F-35 F135.jpg13日、下院軍事小委員会で国防省F-35計画室長などが証言し、エンジン関連が原因で運用態勢にない米空軍F-35が41機あり、他軍種や同盟国機も含めると計46機が搭載可能なエンジンが無い状態にあると説明しました。

米空軍のエンジン無し比率「約15%」がどれほど問題なのか、比較可能なデータがないので不明ですが、2021年初から関係高官が、F-35稼働率が上がらない原因として「F135エンジン問題」に言及しており、コロナ感染拡大やトルコが部品サプライチェーンから除外されたことに起因する部品不足だけでなく、「エンジンブレード耐熱不足問題」がじわじわと表面化しそうな雰囲気です

繰り返しご紹介しているように、F-35の製造コストは低下傾向(最新Block 4は?)も、維持整備コストが第4世代機の2倍程度に高止まりし、更に一つの完成型である「Block 4」以前の機体は「Block 4」にアップグレード改修を行う必要があることから、総コストは上昇の見通ししかありません。そんな中でのエンジン問題に、「泣きっ面にハチ」状態のF-35購入国です

「エンジン問題について」各種報道から
Fick2.JPG国防省F-35計画室長Eric Fick空軍中将は下院で、「エンジンの維持コストは課題である。だた、新造機の納入には影響はない。まもなくエンジン使用2000時間の定期整備を迎えるエンジンが現れコスト増に注意が必要だが、最近はコストがフラットになる傾向を見せつつある」と述べつつも
エンジン整備遅延問題に対処するため「3つのアプローチに取り掛かっており、一つはTinker基地エンジン整備所の整備時間短縮取り組みであり、もう一つは他にもエンジン整備拠点を設ける検討、そしてエンジンの整備間隔を延長する検討である」と説明した

F-35 F135 2.jpgJay Stefany米海軍開発担当次官補代理は下院で、「関連企業及びF-35エンジン修理施設と緊密に連携し、エンジン整備の遅れを取り戻すべく尽力している」、「整備人員の増強など」と説明したが、エンジンブレード表面処理の問題は人の増強では解決できない
現場でのエンジン不足問題を受け、F-35が所属する米空軍戦闘コマンドは、2021年に各所で開催予定だった航空ショーへのF-35派遣を縮小することを決定している

F-35 F135 5.jpgF-35用のF135エンジンを製造するPratt & Whitney社のMatthew Bromberg社長は、4月にエンジン不足問題についてメディアに、「2つの理由がある。コロナ感染対策による部品製造の遅れと、トルコが部品供給チェーンから抜けたこで、予定していた効率アップが進まなかった」と説明している
ちなみにトルコは約1000個の部品供給に関わっていたが、その中には188個のエンジン関連部品が含まれていた。同社長はタービンブレードの耐熱コーティングに関しては言及しなかった
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大きくF-35の稼働率が上がらない理由を考えると、兵站情報管理システム(ALISに代わりODIN)トラブルや部品確保サプライチェーンの混乱、想定以上の部品故障率や整備員の技量未熟等々・・・複数の大きな原因が背景に上がりますが、性能発揮の制約になりそうなのがエンジン問題です。

以下では関連の高官発言を時系列でご紹介します特に今年2月のBrown空軍参謀総長発言に注目です。「フェラーリ(F-35)で毎日通勤することはない。日曜日に乗ればよい」と発言したことで、この問題の深刻さが広く知られるようになったからです

Lord調達担当国防次官
Lord2.jpg2019年11月下院委員会で→戦闘任務にあたる飛行部隊での稼働率は、2018年10月の55%から、2019年9月の73%に上昇
2020年7月下院委員会で→F-35稼働率は、2020年1月には60%であったが、同年6月には70%に上昇。また全ての任務が可能な機体比率は、同期間で40%から50%に上昇
退任前日の2021年1月19日会見で→F-35稼働率は、「複数ある任務の一つでも可能な機体は69%で、全ての任務が可能な機体は39%、稼働率低迷の主な理由は、キャノピーの表面剥離やF135エンジン関連問題にある

国防省F-35計画室幹部(2021年2月12日) 
エンジンブレードの問題は、耐熱コーティングが想定より早く劣化する問題である。F-35関連各級指揮官がF-35関連の種々の課題を議論する会議を開催し、F135エンジン問題に関する議論も行われた
Pratt & Whitney社は声明で
2020年からエンジンブレード改良処理過程を導入開始し、製造ラインに投入している

Brown空軍参謀総長(2021年2月17日)
Brown.jpg(F-35エンジン問題に関する質問に問題の存在を認めつつ、)最新鋭機へのニーズが高いことから使用頻度が高くなり、F-35のエンジンの故障率が上昇している
この問題対処に維持整備方式や整備施設の体制検討を中将大将レベルで行っている。シンプルにはF-35の使用頻度を下げることが対処法だ(simply be to use the F-35 less)
「フェラーリで毎日通勤することはないだろう。フェラーリは日曜日に運転すればいいんだ。F-35はハイエンド環境の装備であり、ローエンド環境で常に使用する必要はない」と述べつつも、「この考え方にも異論があるだろう。反論も予期している」
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よくわかりませんが、「Pratt & Whitney社声明」をそのまま信じれば、2020年以降のエンジンブレードは耐久性が改善され、米空軍でいえばそれまでに受領していた200機強だけが問題を抱えているとも解釈できます。

でもそうであれば、Brown空軍参謀総長のような発言にはならない気がします。突き放したようなその表現に、F-35が既に米軍内で「お荷物」になりつつある気配さえ感じます

エンジンブレードの耐熱性不足
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21

最近のF-35
「海兵隊C型が完全運用態勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-08
「スイスが14番目の購入国に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-01
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-24-1
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「伊軽空母に海兵隊F-35B展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-14-1
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-06
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「F-35稼働率の状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「新型戦術核搭載飛行試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-28
「5月の事故対策改修は秘密」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-24
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「B型とC型が超音速飛行制限甘受」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-27
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

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米軍F-35で初の完全運用態勢確立:海兵隊F-35C型 [亡国のF-35]

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海兵隊F-35Bや空軍F-35Aは未だ「完全態勢」ではないのに
C型は空母用の形態で、実戦投入の話は聞いていないが
各軍種で完全運用態勢の定義が異なるようで

F-35C Marine3.jpg7月1日、米海兵隊はF-35C型保有の飛行隊(Marine Fighter Attack Squadron (VMFA) 314)が、完全な運用態勢を確立したと発表し、空母での運用と作戦投入が完全な状態で可能になったと明らかにしました

なお米海兵隊はF-35を420機導入する計画で、その形態別内訳は、垂直離着陸用B型を約350機、空母運用用C型を70機と言われています(ちなみに米海軍はC型を273機導入予定 現時点では)

ちなみに、「完全態勢」を宣言したMarine Fighter Attack Squadron (VMFA) 314飛行隊は、映画「トップガン」の部隊となった加州ミラマー海軍航空基地所属です

F-35C Marine2.jpg同飛行隊を零下に置く第3海兵航空団のChristopher Mahoney,少将は、「来年、同飛行隊は空母戦闘群の一員として作戦任務のため展開する予定だ」と今後について述べ、同飛行隊作戦士官の少佐は「今は(派遣予定の)艦艇に適合できるように、空母乗員との意思疎通訓練や事故対処訓練などを飛行訓練と共に継続して行っている」と説明しています

米軍では、海兵隊のF-35B型が2018年9月にアフガンで初実戦投入、空軍のF-35A型が2019年4月にイラクで初実戦投入されていますが、海兵隊B型も空軍A型も、いずれも初期運用態勢(initial operational capability)宣言のみで、完全運用態勢確立(full operational capability)は宣言しておらず、実戦投入の話を聞かない海兵隊のF-35C型がなぜ先に「完全態勢」を宣言できたのかは不明です

F-35C Marine.jpg初期運用態勢や完全運用体制の基準は、軍種や当該機種の運用要領により異なり、公表もされていませんが、地上の支援機材の体制、運用可能な飛行隊保有機数、任務可能レベルの操縦者や整備要員の数、安全面での管理運用体制、各種技量レベルなど、様々な要素が関連すると考えられます

空母艦載飛行隊の場合、15機以下程度で構成されるため、空軍の飛行隊(25機程度)より態勢確立が容易なのかもしれませんが、既に英空母エリザベスに展開し、実戦任務に従事している海兵隊F-35B飛行隊や、中東各地で任務に従事している空軍A型が「完全態勢」を宣言しない中、実戦投入の話も聞かない海兵隊C型が最初に「完全態勢」宣言とは驚きました

以下では、各形態のこれまでの歩みを、ざっくり振り返っておきます

イスラエル空軍A型
2016年12月に初号機受領、2017年に初期運用態勢確立
2018年5月22日、世界初のF-35作戦投入と発表。2つの作戦で攻撃任務を担った空軍司令官が発表

米海兵隊B型
2015年、安全運用態勢確立を発表
2018年3月、強襲揚陸艦Waspへの艦載運用開始
2018年9月、同艦艇から離陸し、初の作戦・アフガン地上攻撃遂行
2021年5月、英空母に派遣され一体運用開始、地中海、アラビア海、インド洋、南&東シナ海へ長期派遣

米空軍A型
2016年8月初期運用態勢確立
2019年4月、UAEの基地からイラク内の実戦に初投入
2021年5月、保有機数が283機を超え、機種別機数第2位に

米海兵隊C型
2020年1月、初号機受領
2020年3月、安全飛行態勢確立
2020年12月、初期運用態勢確立

米海軍C型
2019年2月、初期運用態勢確立
新型フォード級空母完成遅れ・・・
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F-35C Marine4.jpg既に各種形態を合わせ、米軍内で300数十機が納入されているF-35ですので、有効活用されるのが一番です。
でも、空母上で撮影された海兵隊C型の写真が全く見当たりません。不思議です。。。
 
ですが、「高止まり」している維持整備費に対しては各方面から警告が発せられており、英国防相が「白紙の小切手を切るつもりは無い」「計画通り購入してほしければ、維持コストを下げろ」と英議会から訴え、7日付の米会計検査院レポートでGAOが「維持整備費高止まりの各種要因への対策とその成果が確認できるまで、本格量産に入るべきではない」と勧告し、上下院でも「現在の予算要求以上は絶対認めない」と一般ニュースになるレベルに問題化しています

これだけ問題になっていながら、日本が米軍に続いて世界第2位の購入量となる戦闘機ですので、今後もフォローしたいと思います

F-35初任務関連の記事
「イスラエルA型が初任務」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-05-26
「海兵隊B型が初実戦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-28-1
「米空軍A型が初任務」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-01
「英海空軍共有F-35Bが初任務」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-27
「米空軍で保有機数第2位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-09

英国防相の恫喝
「英議会でF-35企業に激怒」→https://holylandtokyo.com/2021/06/25/1949/

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スイスが14番目のF-35購入決定国に [亡国のF-35]

36機購入決定をスイス政府が発表
機種選定でFA-18とTyhoonとRafaleを撃破
他提案より30年コストが2000億円以上安かったと!?

F-35 Swiss.JPG6月30日、スイス政府が現有F-18(F-5も)の後継機となる次期戦闘機(air policing mission機)に、機種選定で競ったFA-18とTyhoonとRafaleを退け、F-35A型36機を選んだと発表しました。

選定結果を発表したスイス連邦評議会(Swiss Federal Council)は、「F-35はスイス空域の防御と監視に、完全に新しく著しく優れたネットワークシステム能力を備えている」とその性能を讃え、スイス政府が設定していた購入価格上限約7000億円を相当下回る、約6000億円のロッキード提案に軍配を上げました。

F-35 Swiss3.jpg更に同評議会は、「運用コスト面でも最も低い提案だった」、と信じられないコメントを出していますが、30年間のトータルコスト見積りで、F-35は他の候補機に2300億円以上のの差をつけて勝利を勝ち取ったらしいです!?

ただ、スイス政府が重要評価要素としていた「スイス軍需産業の参画」面で、F-35は最善の提案ではなかったと同評議会はコメントしているようですが、報道では、タイフーンは最終組み立て工場をスイスに建設する提案を行い、ラファールも700ページに及ぶ提案を行ったと伝えられていま

F-35 Swiss4.jpgこの面でF-35のロッキード社は、F-35用キャノピー400機分製造と同維持整備拠点のスイス設置や、「Swiss cyber center」誘致を持ち出していたようです

なおスイス政府は同時に、地対空ミサイルの機種選定結果も発表し、フランスEurosam製のSAMP/T systemを破り、米レイセオン社のパトリオット5セットを購入すると発表しています

ちなみに、FA-18 Super Hornetを提案したボーイング社
●「比類なき性能を有するFA-18 Block III Super Hornetは、スイスが保有するF-18からの機種更新が容易で、かつ維持整備インフラの6割以上そのまま活用できるライフサイクルコスト面で最も優れた提案だと信じている
スイス側からのデブリーフィングを楽しみにしている」と不気味な声明を出しています

F-35導入を決定した国(カッコ内は購入予定機数)
●共同開発国(7か国とその他2国)
 豪州(100機), Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、米国(2443)(空軍1763、海兵隊420、海軍260)
 カナダは共同開発国ながら選定を延々と実施中で、今年結果発表予定
 トルコも共同開発国ながら、ロシア製SAM購入で排除された

●FMS購入国(7か国)
Belgium(34機), Israel(19), 日本(42+100) , 韓国(40)、シンガポール(当面12機 最終的に約50機) ポーランド(32機 2020年1月)、スイス(32)

Lauderdale 2.jpgフィンランドも機種選定実施中で、カナダと並び来年春中に結果が明らかになるようです。ドイツもトーネード後継でF-35の臭いが・・

ロッキードは2月1日、新しいF-35担当責任者に女性のBridget Lauderdale副社長を任命してF-35体制を刷新したようですが、引き続き「亡国のF-35」との呼び名にふさわしい様相を呈する同戦闘機を、生暖かく見つめていきたいと思います

最近のF-35
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-24-1
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「伊軽空母に海兵隊F-35B展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-14-1
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-06
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「F-35稼働率の状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「新型戦術核搭載飛行試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-28
「5月の事故対策改修は秘密」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-24
「中東でかく戦えり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07
「B型とC型が超音速飛行制限甘受」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-27
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

ALISの後継システムODIN
「ODINの開発中断」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-24
「ODIN提供開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-24
「元凶:ALISとその後継ODINの現在位置」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-17
「ALISを断念しODINへ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-22
「ALIS問題を議会で証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-15
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02

F-35維持費削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

ドイツと次期戦闘選定
「独3機種混合案検討を認める」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-23-1
「独トーネード後継を3機種混合で?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-29
「トーネード後継でFA-18優位?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28

カナダのダラダラ戦闘機選定
「仕切り直し戦闘機機種選定RFP発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-24
「カナダ仕切り直し戦闘機選定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-03
「カナダが中古の豪州FA-18購入へ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-10
「痛快:カナダがF-35購入5年延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-23

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英国防相がF-35企業に不満をぶちまける [亡国のF-35]

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「ロッキードに言わせてもらう」と英議会で警告
維持整備費高止まりと英製ミサイル搭載遅延に不満爆発

Wallace5.jpg23日、英国のBen Wallace国防相が英国議会国防委員会で、英国が2015年時点ではF-35購入機数を138機と明確にしてにもかかわらず、今年3月発表の国防予算計画「Defence in a competitive age」では曖昧な表現に終始している件について、F-35の高止まりしている維持整備費と、英国が要求している欧州製ミサイル搭載事業が遅々として進まないことへの不満が原因だと明言しました

英国議会という公式な場で、しかも国防相としての立場で、これ以上は無い・・・と言えるほど明確に、相手を指さして恫喝するがごとく、「維持費を下げなければ、支払い不可能な請求書に縛られるつもりは無い」、「F-35を計画通り買ってほしければ、コストを抑えろ」、「白紙の小切手を渡すつもりは毛頭ない」と訴えています

Queen Elizabeth2.jpg加えて、F-35に欧州MBDA製の中距離空対空ミサイル「Meteor」(米製AMRAAMと同等)と空対地ミサイル「Spear」を2024年ころまでに搭載する計画について、ロッキードとBAEが真剣に取り組んでいるようには見えない点にも強い不満を表明しています

一方で、英国と米国は作戦運用面では緊密な連携を保っており、最近では英国の新型空母エリザベスに米海兵隊F-35を派遣する形で常駐させ、更に米イージス艦を同空母に同行させ「空母攻撃群」として一体運用を開始しており、既に中東地域で作戦行動を行い、アジアにも進出予定となっているところです

以下では、Ben Wallace英国防相の怒り爆発の国防委員会発言をご紹介いたします

23日付Defense-News記事によれば同国防相は
Wallace4.jpgBAE SystemsやLockheed Martin社、更にF-35製造にかかわるすべての関係企業の皆さんに、私から重要なことをお伝えしたい。F-35の維持コストを下げることは皆さんにとって極めて重要なことである。なぜなら、私は我が国が支払不可能な請求書に縛られたくないと考えているからだ
更に重要で、関連企業の皆さんに承知しておいてほしいのは、我々が引き続き「Meteor空対空ミサイル」を英国F-35Bに搭載したいと考えており、そのための検討や設計作業などを後回しされることに我慢ならないと考えていることである

F-35B.jpgもし関連企業の皆さんが、英国によるF-35継続購入を期待されるのであれば、維持整備経費を抑制し、欧州製のミサイル搭載改修要請に対し、公平に公正に対応してほしい
英国は(現在発注済の)48機以上のF-35が必要だし、そのために投資したいと希望しているが、関連企業の皆さんがコスト管理や維持整備分野で役割を果たさず、英国製兵器の搭載を確かなものとしないなら、私は白紙の小切手を切るつもりは無い

上記の国防相発言に対しロッキード報道官は、「多くの投資により、過去5年間でF-35の飛行時間当たり経費を44%削減してきたし、今後5年間で英米を含む関係国と協力して40%削減するよう取り組んでいる」と述べている
///////////////////////////////////////////

英国防省関係者は、Wallace国防相の発言は、英国から米国に対する警告で、「Meteor空対空ミサイル」をF-35内部兵器庫に搭載する計画を邪魔するなら覚悟があることを伝えたものだとコメントしているようです

Wallace3.jpgまた国防相の発言は「Spear空対地精密誘導ミサイル」に触れていなませんが、「Meteor空対空ミサイル」のような扱いを受ければ、同様の問題として英米間に浮上するだろうと考えられているようです

なお、F-35の時間当たり維持整備費は、現状35000ドル/時間で第4世代機の約2倍で、これを25000ドル以下に2025年までに引き下げる目標を掲げていますが、様々なタイプのF-35が混在して維持整備が複雑で、整備支援システムALIS崩壊と後継ODIN開発中断で混乱に拍車がかかっており、加えて最新型Block4の導入も予定されていることから、削減目標達成は困難と考えられています

英国よりも遥かに多数のF-35を購入予定の日本も、これぐらい強気に出たいですがねぇ・・

英国のF-35への態度が冷徹に
「英国の138機F-35購入計画は多くて60-72機へ!?」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/
「英空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-11

空母エリザベスでは海兵隊F-35が
「英空母エリザベス米英のF-35B搭載で初出撃」→https://holylandtokyo.com/2021/05/11/1492/
「英新型空母と米駆逐艦が空母攻撃群を編成へ」→https://holylandtokyo.com/2021/01/27/308/

ALISの後継システムODIN
「ODINの開発中断」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-24
「ODIN提供開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-24
「元凶:ALISとその後継ODINの現在位置」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-17
「ALISを断念しODINへ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-22
「ALIS問題を議会で証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-15
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02

F-35維持費削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

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資金不足でF-35兵站システムODIN開発停止 [亡国のF-35]

ALIS後継システムODINのソフト開発一時停止
要求より42%カットされた2021年度予算で資金尽きる
国防省F-35計画室長が衝撃の発表:再開時期説明できず

ODIN6.jpg22日、米国防省F-35計画室長のEric Fick空軍中将が下院軍事委員会で、機能不全で部隊や関係機関に大混乱を引き起こしているF-35兵站情報システムALISの後継システムとして、2020年1月に開発が決定(2022年12月運用開始を計画)したODINのソフト開発が、見積りの甘さと資金不足で「戦略的停止strategic pause」状態に至ったと証言しました

また再開見込みについて同室長は説明できず、ALISからODINへの移行状況、ODINハードの開発状況、同機保有部隊の状況、及び使用可能資金状況を踏まえて検討し、最新の状況を米議会にも今後報告していくと述べるにとどまりました

ODIN5.jpg兵站情報システムALIS(Autonomic Logistics Information System)の問題は語るに切ない惨状で、ソフト不具合からデータの誤処理が頻発して非稼働F-35を量産し、整備現場や部品管理施設を大混乱させ、おまけに旧発想設計で使いにくく、データ処理が遅く、機動展開用の機材が大きく重くかつネット接続できないなどなど、問題大爆発状態でした

いくら言ってもロッキードがALISを修正できないことから、2020年1月に国防省は開発費2兆円のALISをあきらめ新たなODIN(Operational Data Integrated Network)導入を決定し、ハードはロッキードだが、システム全体管理とソフトは国防省が主導して開発すると宣言しました

その後、昨年9月には新ハードの一部導入が海兵隊部隊で始まり、「装備の重量が1/10に」、「データ処理速度が2-3倍に」、「使いやすさも改善で部隊でも好評」とかの大本営発表(米国防省F-35計画室)がなされていたところでした

22日付Defense-News記事によれば
Fick2.JPGF-35計画室長は、2021年度のODIN関連予算が(おそらく予算要求額から)42%カットされたこともあり、ODINソフト開発の資金が底をついたことから、同開発を「戦略的停止strategic pause」したと証言した
そして「ODIN開発は全ての面において前進していたが、ALISシステムの複雑性やODINへの移行業務量を過小評価していたことについて、幾つかの教訓を得ることとなった」と反省の弁を述べた

また「我々はODINが想定されている地点に到達するため、ハード面でも、データ処理環境面でも、ソフト面でも必要するレベルに確実に到達し、ALISが期待されていた機能獲得追求を続ける」と語った
ODIN2.jpgただし同室長はODINソフト開発再開時期については説明できず、ALISからODINへの移行状況、ODINハードの開発状況、同機保有部隊の状況、及び使用可能資金状況を踏まえて検討し、最新の状況を米議会にも今後報告していくと証言するにとどまった

下院での発言とは別に提出された説明文書は、「ODINの装置はALISと比較して75%小型化され、重量も90%削減されており、価格も30%削減できる見込みである。またデータ処理速度も2-3倍速くなっていることが現場から報告されている」と説明している
また同文書は、「今年夏には、単一機材で複数の飛行部隊を支えることが可能な、経費も節減できる新機材を提供開始する予定」で、「ALISからODINへの移行経費として、今後5年間で約500億円を投資する予定だ」と説明している
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ODIN4.jpg米国と「血の同盟」で結ばれたF-35共同開発国である英国がF-35調達予定機数を半減することを匂わせはじめ、1700機以上調達予定だった米空軍も1000機まで削減する検討中と報じられる中、共同開発国でもないFMS調達国待遇に甘んじつつも、世界第2位の調達機数を予定している日本は、「亡国のF-35」とともに没することになるのでしょうか・・

あまりに悲しく、戦闘機のために汗を流している現場の隊員の皆様があまりにもかわいそうです。航空自衛隊のOBを含む戦闘機命派には、しっかり説明責任を果たしていただきたいと思います

でもねぇ・・・航空自衛隊の主要ポストを務めた戦闘機パイロットは、退役後に外に向けて語ることがありませんねぇ・・・。パイロット以外の人しか研究会とか学会的なところには出てきませんし・・・。

ALISの後継システムODIN
「ODIN提供開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-24
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F-35維持費削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
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「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

最近のF-35
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「伊軽空母に海兵隊F-35B展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-14-1
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-06
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「F-35稼働率の状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「新型戦術核搭載飛行試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-28
「5月の事故対策改修は秘密」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-24
「中東でかく戦えり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07
「B型とC型が超音速飛行制限甘受」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-27
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

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英国の138機F-35購入計画は多くて60-72機へ!? [亡国のF-35]

23日発表の国防費計画で138機に言及無く疑念拡大
次期戦闘機「Tempest」開発優先で国内産業対策へ

2021 UK.jpg23日付Defensae-News記事は、英国防省が同日発表した国防予算計画「Defence in a competitive age」で、F-35購入について言及がなく、一方で英国がスウェーデン等と共同開発する次世代戦闘機「Tempest」に多額の投資を行うと明らかにしたことで、英国が2015年時点で表明していた138機F-35Bを購入する計画は極めて怪しくなったと伝えています

英国は2015年の「SDSR:Strategic Defence and Security Review」で、英国空軍と海軍が共同運用する形で138機F-35Bを購入するとしていましたが、現時点では2025年までに48機を導入する契約を結び、20機程度を受領した段階で、138機への動きは全く聞こえてきておらず、英国防省や英軍内でも138機体制が実現するとはだれも考えていない状態だと伝えられていたところでした

F-35B.jpgその結果として、当初、英海軍は空母エリザベス級空母を2隻建造し、各艦に最大32機のF-35B搭載する構想を持っていましたが、予算不足などから就航した1番艦空母エリザベスに20機以下のF-35Bしか搭載できず、米海兵隊F-35B部隊に最大能力試験の支援を依頼し、更に米海兵隊機との「戦力互換性:interchangeability」運用を目指すとの美しい形を演出して戦力不足を補っている状態

更に今年1月には、英海軍の新型空母エリザベスと米海軍の駆逐艦Sullivansが空母攻撃群を編成し、空母エリザベスの指揮のもと、2021年後半から作戦行動を行う旨の合意文書に米英国防大臣が署名して「強固な協力関係」をアピールしていますが、F-35B搭載可能な強襲揚陸艦を大火災で失った米海兵隊との「悲しきWIN-WIN関係」だとまんぐーすは邪推しております

Heappey UK.jpgただ、F-35の調達機数削減は米空軍も検討しているところ、関連企業が全米に分散されている米産業界への影響も大きく、政治的影響も大きいことから、英国としても慎重に検討を進めている姿勢を示し、米国新政権の出方を伺っているところでしょう

16日に英国政府は、安全保障や外交の中長期計画を定めた「安保・国防・外交政策統合レビュー(見直し)」を発表し、保有する核弾頭の上限目標を現在の180発から260発に引き上げる方針を表明し、世界を驚かせて安保への取り組み姿勢をアピールしましたが、すそ野の更に広い戦闘機に関しては「バチバチ」状態が続くのでしょう

3月23日付Defensae-News記事によれば
英国防省が23日発表した国防予算計画「Defence in a competitive age」では、「英国は、既に発注した48機を超えてF-35戦力拡大に取り組んでいく」と記されているが、2015年のSDSRに明示されていた138機体制への言及は全くなかった
Heappey UK2.jpgワシントンDC記者団への23日の会見で、この138機調達計画に関する直接的な記者からの質問に対しJames Heappey英国防副大臣は、明確な表現を避け、「48機購入にコミットしている」、「我々は他国とも共同でFuture Combat Air System(Tempestのこと)に取り組んでおり、将来の英軍航空戦力が如何にあるべきかの議論を行っている。ただ48機のF-35Bにはサイン済である」と回答した

昨年12月、本件に関し英国防省の計画担当であるRichard Knighton空軍中将は、「F-35Bを増強して英海軍空母の能力強化を進める必要性を感じているが、2025年ころまでに空母体制も含めて検討して結論を得たい」と述べるにとどまっていた

英シンクタンクのJustin Bronk研究員は、48機のF-35Bでは、英国軍が求める戦力レベルに達しないが、23日の文書がF-35調達の将来に言及しなかったことからすると、英国政府が国内産業維持を優先して「Tempest」投資を重視し、近未来の軍事的なニーズに目をつぶったのだろう、とコメントしている
F-35B2.jpg23日の文書国防予算計画「Defence in a competitive age」では、英国とスウェーデンが中心に共同開発の「Tempest」に対し、今後4年間で3000億円の開発費を投じる計画となっており、対抗する仏独伊スペインチームをおののかせている

「Tempest」計画は英国にとって、単に将来戦力としてだけでなく、軍需産業基盤にとって極めて重要な役割を期待されており、既に英国中の300以上の企業で1800以上の新規雇用を生み、18000名の既存高度熟練技能者を支えており、サプライチェーン全体では数万人規模に影響を与えると言われている
特に政治的経済的にかじ取りが難しい、Scotland, Wales and Northern Ireland地域の雇用への影響が大きい点でも、政治的な視点で見られがちな案件である

前出のJustin Bronk研究員は、「Tempestに対しこれだけ入れ込むシグナルが出ていることからすれば、F-35の調達機数は多く見積もっても合計で60-72機程度になるのでは」と見積もった
Heappey英副大臣は「F-35運用は、米、伊、豪などの海軍との共同運用を考える上で重要」で、このコミュニティーは無視できないともコメントしている
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英国防予算計画「Defence in a competitive age」
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/971859/_CP_411__-_Defence_in_a_competitive_age.pdf

Queen Elizabeth.jpgF-35AとB型を、それぞれ105機と42機購入する予定で、米国に次ぐ世界第2位の購入予定数国でありながら、共同開発国の扱いも受けられない日本はどうするのでしょうか?

そもそも、対中国の環境からすれば、最新の戦闘機を導入するニーズ自体に疑問の余地が多い日本ですから、よく考えていただきたいものです

英空母エリザベスの悲しき現実
「英新型空母と米駆逐艦が空母攻撃群を編成へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-22
「コロナ下で800名乗艦で最終確認試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-01
「英空母エリザベスは米軍F-35B部隊と一体運用へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-26-1
「英海軍と英空軍共有のF-35Bが初任務」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-27
「米海兵隊F-35が英空母へ展開へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-09
「米軍F-35Bを英空母に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16
「英空母が航空機不足で米軍にお願い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

F-35搭載改修終了直前の惨事(放火)
「強襲揚陸艦Bonhomme Richard火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15

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米海兵隊F-35Bが伊空母に展開し受け入れ準備支援 [亡国のF-35]

伊軍も30機F-35B購入予定で同空母搭載準備中
英空母とは共同運用構想にまで発展しているが

F-35B Cavour3.jpg13日付Military.comは、米海兵隊F-35部隊約180名が約4週間に渡りイタリア海軍軽空母Cavourに展開し、同空母のF-35B受け入れ試験航海を支援したと報じています。

イタリアの軽空母Cavourは、海上自衛隊の「いづも」とほぼ同じ大きさで、「ひゅうが」よりは一回り大きく、2009年から就航している艦艇ですが、現在主戦力として搭載している12機のAV-8Bの後継として、F-35B受け入れ準備を行っており、米海兵隊が空母戦力化を支援した形です

F-35B.jpgイタリアは空軍が通常型のF-35A型を約90機購入予定で、更に短距離離陸垂直着陸のF-35Bを海空軍で計30機購入する計画を持っています。伊海軍は軽空母でのF-35B運用を想定し、空軍はF-35Bを短い滑走路しかない機動飛行場で運用することを想定しているようです

現時点でイタリアは、2機のF-35Bを受領し、米国内のBeaufort米海兵隊航空基地(SC州)で要員の訓練&養成を行っています

欧州の中では、英国に続いてF-35に積極的だったイタリアは、最終組み立て工場FACOや部品製造分担も担っているのですが、どうもお国柄(失礼・・・)からかうまく稼働していないようで、加えてコロナが追い打ちをかけた厳しい財政情勢からF-35調達が危うい雰囲気となっており、米軍がイタリアのF-35熱が冷めないように懸命に支援している・・・とも解釈できます

13日付Military.com記事によれば
F-35B Cavour.jpg米海兵隊のPatuxent River海軍航空基地所属の約180名が、約4週間に渡りイタリア空母Cavourを拠点に活動し、米海兵隊F-35Bの操縦を試験評価第23飛行隊のパイロットが務め、伊空母のF-35B受け入れ態勢準備を支援した
米第2艦隊のAndrew Lewis司令官は、「イタリア海軍の空母体制準備支援は、我々の共同運用体制における安全と戦闘能力向上につながるものだ」、「この支援を通じ両軍はさらに能力を向上させる」と語っている

空母Cavour艦長のGiancarlo Ciappina大佐は、「第5世代戦闘機が実際に我が空母に展開して活動するという、我々すべてにとって特筆すべき成果である」、「既に大きな成果であるが、同時にイタリア海軍にとって新たな挑戦の始まりでもある」と訓練の意義を語っている
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米海兵隊F-35Bが伊空母Cavourで活動(3分半)


米海兵隊は、F-35Bを十分に調達できない英海軍のため、新型の英空母Queen ElizabethにもF-35Bを派遣して空母受け入れ態勢準備を支援し、2021年1月には、両国からF-35Bと空母を差し出し、同空母と米駆逐艦で空母攻撃群を構成する合意文書にも署名しています

F-35B Cavour2.jpgそして今年中旬以降、米駆逐艦Sullivansと空母エリザベスが空母攻撃群を構成して作戦行動に出ることも決まっています。イタリア空母の場合、そこまで米軍と深い関係とはならないようですが、F-35Bを活用した両国軍の関係強化には貢献したということでしょう

英空母エリザベスの悲しき現実
「英新型空母と米駆逐艦が空母攻撃群を編成へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-22
「コロナ下で800名乗艦で最終確認試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-01
「英空母エリザベスは米軍F-35B部隊と一体運用へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-26-1
「英海軍と英空軍共有のF-35Bが初任務」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-27
「米海兵隊F-35が英空母へ展開へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-09
「米軍F-35Bを英空母に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16
「英空母が航空機不足で米軍にお願い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

F-35搭載改修終了直前の惨事(放火)
「強襲揚陸艦Bonhomme Richard火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15

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下院軍事委員長がF-35を痛烈批判「どぶに金を捨てるのか」 [亡国のF-35]

米空軍による戦闘機構成検討「TacAir」の背景にある問題児
高止まり維持費、利益地元誘導政治家が絡み身動きできぬ苦悩

Smith2.jpg5日、Adam Smith下院軍事委員長(民主党)がブルッキングスで講演し、「どぶに金を捨てるようなF-35への投資を止めさせたい」などとF-35を厳しく批判し、「金食い虫のF-35に今後35年も頼らなくてよいような道を探るべき」と訴えました

この問題には米軍も苦悩しており、同機を1763機も調達予定の米空軍でも、2月17日にBrown米空軍参謀総長が「5世代機と次世代制空機NGADと新たな5世代機マイナスとの混合編成」を考える必要があるとして、新たに「5世代機マイナス」性能のF-16後継機開発を含めた、「TacAir study」検討を数か月間で行うと表明したところです

F-35 3-type.jpg飛行時間当たりの維持費が第4世代機の2倍で下がる見通しが立たず、まだ開発と製造が同時進行状態で稼働率も上がらないF-35にこれ以上依存では破産するとの現実的な問題ですが、F-35製造関連企業や工場を政治家対策のため全米に分散させた結果、地元利益誘導の米議員集団が「亡国のF-35」計画の推進を要求しており、「民主主義の悪夢」の様相を呈しています

Brown空軍参謀総長は初の黒人軍種トップとして話題の大将ですが、予算の現実を直視しない前線部隊や政治屋からの大反対を受けつつ、「今決断せねば勝利はない」との強い決意で戦闘機問題に臨もうとしていますが、黒人ゆえの悲哀を感じつつ、孤独な戦いが続いています。重鎮である下院軍事委員長の発言を「追い風」として、改革が進められるのかに注目しているところです

Adam Smith下院軍事委員長はブルッキングスで
Smith.jpgF-35は我々に何を与えてくれるか? 我々の損失を断ち切る道はあるのか? このような問題の多いアセットへの多額投資を止める方法はないのか? 皆さんも知っているだろう。この機体の維持費は暴力的だ!
私は最も費用対効果の高い戦闘機の構成(a mix of fighter- aircraft)を検討したいと考えている。今後35年間、問題山積のF-35に依存しないために、何かを見つけたいと考えているのだ 

我々はこれまで、期待通りに機能しない兵器システムに驚くほど巨額の資金を浪費してきた。我々が受け入れてきてしまった過ちは、唖然とするほど巨大なものである。F-35は・・
しかし、(地元利益誘導の)米議員からのF-35支援の声が強く、米国がF-35に縛られる状況に陥りつつあることを情けなく思う。米国議会はコストが高騰し続ける兵器システムをチェックする役割を担っているはずなのに・・

2月25日Brown空軍参謀総長は戦闘機問題について
Brown3.jpg(2月17日に「TacAir study」を発表したのは、)今後調達していくF-35だけでなく、今後10-15年のスパンでF-35を補完していく他の方法も含め、総合的な検討を行いたいと考えたからだ
必要な能力を確保するため、F-35を計画通り1763機導入するオプションから、予算で対応可能な4世代機プラス(5世代機マイナス)を利用するオプションについても、幅広く検討したいと考えている
//////////////////////////////////////////////////////

米空軍は1763機調達予定を、1070機まで減らす検討をしていると昨年末に報道され、「火の無いところに煙は立たず」で、そうならざるを得ないと思います・・・

まんぐーすも、いつまでもグダグダとF-35の負の話題をお伝えしたくはないのですが、日本は世界第2位のF-35購入国になる計画を持ち、共同開発国でもないことから米国以上の調達&維持コストを強いられることが明らかだから触れずにはおれません

F-35 Luke.jpgおまけに、主に海外に展開して戦う米軍とは異なり、日本を拠点として戦う自衛隊の性格からすれば、有事に飛行場等の機能喪失が容易に予想できる中で、F-35に多額の投資を行うことが如何に「亡国の政策」かも、くりかえして口にせざるを得ません

前線で真摯に国防に取り組みたいと汗を流す隊員の皆さんが、これ以上「亡国のF-35」で苦しむ姿は見るに堪えません・・・。時すでに遅し‥でしょうか? 日本も「TacAir study」を、いやより大きな戦力構成再検討を行ったらどうでしょうか?

2月17日Brown参謀総長発表の「TacAir study」関連
「戦闘機世代混合比や5世代マイナス機の検討」→→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-19
「戦闘機族ボスがNGADへの危機感を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-27-1

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F-35のエンジンブレードと整備性問題発覚 [亡国のF-35]

稼働率低調の2大原因の一つ
キャノピー問題は第2メーカー参入の5月まで辛抱か

F-35 F135.jpg12日付Defense-Newsが国防省筋の話として、F-35の稼働率低空飛行の当面の原因とされているF135エンジン問題について、エンジンブレード耐熱塗装の問題と、オーバーホール整備に想定以上の時間が必要となっている問題を取り上げ、国防省F-35計画室の対処方針を紹介しています

また、退任直前のLord前次官が明らかにしていたエンジン以外のもう一つのF-35稼働率低迷要因である「キャノピー」については、5月から新たなメーカーが製造や補修に参入して前線部隊を支える方向だと、同記事は紹介しています

F-35 F135engine.jpg退任前日の1月19日にLord前次官が明らかにしたF-35稼働率は、「複数ある任務の一つでも可能な機体は69%で、全ての任務が可能な機体は39%」との衝撃的なものでしたが、上記のエンジン整備やキャノピー問題だけに原因を集約するのは無理があり、兵站情報管理システム(ALISに代わりODIN)トラブルや部品確保サプライチェーンの混乱や想定以上の部品故障率や整備員の技量未熟等々・・・複数の大きな原因が背景にあります

ただ、当面の大きな課題であるF135エンジン問題とキャノピー問題の2つの状況をご紹介しておきます

12日付Defense-News記事によれば
12日、国防省F-35計画室幹部が、F-35用のF135エンジンの問題は2つあり、一つはオクラホマ州Tinker空軍基地の「F135 Heavy Maintenance Center」で計画通りの時間でエンジン整備が終了しない問題で、もう一つはエンジンブレードのコーティングが想定より早く損傷する問題だと説明した
F-35 F135 5.jpg同高官は「深刻な態勢維持上の問題だ」と述べ、上記問題により2022年まではF-35の5-6%の機体はエンジンが無い状態となり、2割のF-35が何らかの影響を受けることになる可能性があると述べた

この状況を受け、米空軍はF-35の展示飛行チームに対し、2021年の展示飛行計画から8つの計画を削減し、エンジンへの負担を減らしてエンジン整備所要を抑制するよう指示した

このエンジン問題に国防省F-35計画室が気づいたのは2020年初めで、同年夏には、上記エンジン整備センターで予定されていた年間60台のエンジン整備が遂行できないことが明らかになった
F-35 F135 4.jpg整備センターでの遅れは多様な要因で発生しており、技術データ不足、整備工程管理の不具合、整備支援機材の不足、整備担当者の技量不足などなどが組み合わさって発生している、と同幹部は語った

エンジン整備センターでの問題対処には、整備作業ラインをもう一つ6月までに立ち上げる方向で、また国防省とPratt & Whitneyが整備支援強化で契約を結び、作業員の技量向上訓練にも着手する予定である
これら対策により、「現状200日以上必要としているエンジン整備を、122日程度で終了させたい」と同幹部は語った

もう一つのエンジンブレードの問題は、耐熱コーティングが想定より早く劣化する問題である
本件に関しPratt & Whitney(Raytheon Technologiesの傘下:オースチン国防長官は関与できるのか?)は、2020年からエンジンブレード改良処理過程を導入開始し、製造ラインに投入していると声明を出している

F-35 F135 2.jpg2月17日にTinker空軍基地が「F-35関連各級指揮官がF-35関連の種々の課題を議論する会議サミット」を開催し、F135エンジン問題に関する議論も行われた模様だが、国防省関係者は細部への言及を避けた

唯一の良いニュースは、もう一つの稼働率関連の課題であるキャノピー問題で、現在唯一の「canopy transparencies」サプライヤーであるGKN Aerospaceがキャノピーのコーティングの表面剥離問題で製造・修理に苦しみ必要量の提供が滞っている中、第2のサプライヤーが参画する予定であることである
PPG Aerospaceという第2のキャノピーサプライヤーは、5月から「canopy transparencies」を提供開始する予定である
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F135エンジンについては、F-35製造が始まる段階で「あの火災事故の原因対策は終了したのか?」、「本当に大丈夫か?」、「いろんな不具合データが出ており別のエンジンが良いのではないか」等々の意見が多く出されていたと記憶していますが、今になって・・・ではないことを祈ります

でも、最初に述べたように、エンジンとキャノピー問題はあくまで目の前の課題であり、その後ろや足元には、より大きな構造的な維持整備の問題が山積していることを忘れてはなりません

米空軍でまもなく第2位の保有機数となるF-35ですが、維持整備問題で既に大きな「お荷物」となっています。量産前に・・・

2016年9月23日の火災事故記事
「日本用1番機の式典日に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24
「本当?:背風を受けF-35エンジン始動時に火災」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-07-13

2014年6月の火災事案
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「深刻:問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08
「F-35:2週間後も飛行停止」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-26
「P&W社がエンジン亀裂を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-24

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Lord次官:最後はF-35稼働率の状況説明 [亡国のF-35]

複数ある任務の一つでも可能な機体は69%
全ての任務が可能な機体は39%
ご紹介が遅くなってしまいましたが・・・ 

Lord2.jpg1月19日、20日正午に退任したEllen Lord調達担当国防次官が最後の記者会見を行い、F-35の稼働率改善状況について説明しました。

F-35の稼働率については以前から何回かご紹介してきましたが、この会見の模様を報じるDefense-News記事もコメントしているように、その発表事項の統計の範囲や数値の定義が「安全保障上の非公開事項」にあたるとして明確でないため、あまり突っ込んで議論もできないのですが、大まかな傾向としてご紹介しておきます

Mattis.jpgちなみに米軍は、当時のMattis国防長官から主要な戦闘機(F-22、F-35、F-16、FA-18)の稼働率80%を達成せよと指示されましたが、結局クリアーすることができず、Mattis長官退任後に、「単純な稼働率80%目標は、部隊任務達成度合いに比例しない」と理由をつけ、従来からの部隊ごと機種ごとの目標設定に回帰しています

そんな中で、Lord次官がF-35の稼働率について最後の会見で説明したのかよくわかりませんが、米軍が抱える調達や維持整備の問題の典型として、また史上最大の装備品調達であるF-35の状況に触れる責任を感じたのかもしれません

20日付Defense-News記事によれば
F-35 3-type.jpg19日、記者団に対しLord次官は、F-35は引き続き稼働率目標達成のために努力を続けているが、目標としている80%には到達していないと説明した
具体的に同次官は、「多数ある任務の一つでも可能:can meet at least one of its assigned missions」な機体の割合は現状で69%で、目標の80%に達していないと述べ、「全ての任務が遂行可能な機体:fully mission capable aircraft」の割合は36%で、目標50%に向け努力していると説明した

これら稼働率が改善されない主な理由として同次官は、キャノピーの表面剥離やF135エンジン関連問題があると語った
同次官は細部には言及しなかったが、キャノピーについては以前から表面のコーティング剥離が課題となっており、2019年に国防省F-35準備室報道官が製造メーカー「GKN Aerospace」と改善協議を行っていると説明していたところである

ただ、国防省としては、種々の問題を抱えつつも、F-35の稼働率は改善していると説明を続けており、例えば

●2020年7月の下院委員会でLord次官は
F-35稼働率は、2020年1月には60%であったが、同年6月には70%に上昇した。また全ての任務が可能な機体比率は、同期間で40%から50%に上昇したと説明し

●2019年11月の下院委員会でLord次官は
戦闘任務にあたる飛行部隊での稼働率は、2018年10月の55%から、2019年9月の73%に上昇した・・・等と説明してきている

F-35B.jpg一方で、この「稼働率」がどのような統計数値を基に算出されているのかは、「作戦運用上の非公開事項」であるとして不明確な部分も多く、公表数値がF-35の中でも初期に納入されて教育部隊で主に使用されている稼働率の低い機体を含めた数値である場合や、「作戦用部隊:combat-coded squadrons」の数値である場合がまちまちで、単純な比較が難しいケースもある
会計検査院GAOレポートでも、2018年度はF-35の3タイプ全てで稼働率が向上したと記載されているものの、細部データが記載されていないケースがある

また、2020年11月の会計検査院GAOレポートでは以下のような説明があるが、年度ごとの稼働率の細部は公開されず、毎月継続的に上昇しているのか、凸凹がかなりあるが上昇しているのか等の傾向は読み取れない
--- 2012年から2019年の間で、F-35Aが国防省が定めた目標稼働率を達成したのは2年のみ
--- 2013年から2019年の間で、F-35Bが同様の目標達成は1年のみ、F-35Cは2年のみ
--- 目標稼働率を達成できなかった主要な原因は、修理に必要な部品不足である。サプライチェーンが前線部隊が必要とする部品をタイムリーに提供できないのだが、加えて、部品が想定していたよりも頻繁に壊れ、また米軍内の補修能力が故障に十分対応できない点も低い稼働率の要因である
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F-35 Gilmore.jpg軍隊とすれば、重要装備品の稼働率は隠したい数値ですので致し方ないのですが、開発と部隊導入を同時に進めた結果、様々なバージョンが部隊で混在し、維持整備に困難を抱えているF-35の状態を垣間見るためにご紹介いたしました

最近F-35関連報道は減少傾向ですが、米空軍F-35の保有機数は昨年夏時点で機種別第3位(1位F-16が938機、2位A-10が281機、3位F-35Aは241機)で、今年春にはA-10を抜いて第2位になる見込みです。開発途中のF-35ですが、早くも維持整備問題が大きな課題の「亡国のF-35」です

航空自衛隊のF-35部隊の状況は不明ですが、苦労されていないことを願います

主要戦闘機の稼働率問題など
「8割目標を放棄」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-08
「海軍FA-18は何とか達成?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-25
「米空軍はF-16のみ達成可能」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-09-06
「戦闘機稼働率8割への課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-09
「マティス国防長官が指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-11

「B-1爆撃機の稼働機一桁の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-05
「2Bソフト機は稼働率4割台」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-1
「2/3が飛行不能FA-18の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-07
「世界中のF-35稼働率は5割」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-3

最近のF-35関連記事
「新型戦術核搭載飛行試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-28
「5月の事故対策改修は秘密」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-24
「ODIN提供開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-24
「中東でかく戦えり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07
「B型とC型が超音速飛行制限甘受」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-27
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

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