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インド空軍機種選定に特別仕様F-16で挑む [安全保障全般]

かつて戦闘機946機の476機を事故で失ったインド空軍
2007年頃から機種選定で迷走中
4世代機はまだまだ世界で人気です
パキスタンとゴタゴタの中で・・

Indian Air Force.jpg21日付Military.comが、インド空軍による114機調達予定の戦闘機機種選定に挑むロッキード社の特別仕様F-16を取り上げ、同社の宣伝映像と共に紹介しています、

ライセンス生産を念頭に置くインド空軍の意向を受け、インド企業の「Tata Advanced Systems」との共同体制で案を練っているようですが、これまでほとんど細部が明らかになっておらず、一部のマニアや専門家の関心が高まっていたところでした

ただ、今回ご紹介する記事も約90秒の宣伝映像から懸命に読み取った内容で、細部のほどは依然として「?」ですが、機体の目指す方向性やインド空軍の要求事項が垣間見えますので、戦闘機ファンの皆様にご紹介しておきます

余談ですが、26日にパキスタンとの争いで、撃墜された(墜落した?)らしいインド軍機はMig-21だそうです。まだ飛んでいるとは・・・

まずインド空軍の戦闘機は・・・
Indian Air Force2.jpg●2002年から導入が開始されたライセンス生産のSu-30MKI戦闘機254機が主力であるが、旧式のMiG-21、MiG-29B、ミラージュ2000をまだ多く保有していることから、2000年代半ばから多目的戦闘機130機程度の調達選定に入っている。しかし紆余曲折でまだ機種が決まっていない
●余談であるが、インド空軍は1964年以来、初期の主力戦闘機であったMIg-21を946機調達したが、そのうち476機を事故で失うという恐ろしいまでの事故率を記録した空軍である

2007年頃の候補機は、F-16、FA-18、Su-30MKI、Mig-35、グリペン、ラファール、ユーロファイターであり、2011年からラファールに絞って交渉を開始も、ライセンス生産交渉でもめ、36機を輸入して打ち切られた
インドはロシアと共同で、5世代機の触れ込みのSu-57開発に資金協力しているが、開発は順調でなく、同じくライセンス問題もあり、調達対象となるには至っていない

●ラファール導入が不調に終わった後、2016年からは、ライセンス生産を念頭に約150機を調達する機種選定に仕切り直しで入っており、ロイター報道によれば、F-16、FA-18、グリペン、ラファール、ユーロファイター、Su-57が対象になっている模様

ロッキード公開のF-21映像


21日付Military.com記事によれば
●ロッキード社がインド空軍用に特別仕様で提案しようとしている「F-21」との名称のF-16発展型は、一言でいえば、「Stocky, but agile 多数の弾薬を搭載可能だが機敏に動ける」戦闘機と言えるかもしれない
●20日にインドで公開された「F-21」の映像などによると、同じくロッキード製のF-22やF-35の最新技術を取り入れたF-16改良版で、インド空軍の将来航空戦力を深化させる可能性を秘めている

Indian Air Force3.jpg●依然として細部は不明な部分が多いが、イメージ映像が公開されるとSNS上では専門家やマニアの間で、AMRAAM搭載量が3倍(一つのパイロンに3発)になっていることや、空中給油装置が特別製の格納可能タイプになっていることが指摘されている
●ロッキードのJohn Losinger報道官は映像発表に際し、「インド空軍の当別や要求事項を満たすため、いくつかの特別仕様を施している」、「空中給油装置やタッチパネル式の大型コックピットディスプレイなどで、ディスプレイはF-35の同形式である」と説明している

●同報道官はそれ以上の細部に機種選定中であることから言及しなかったが、現時点では「F-21をインド以外に提供する計画はない」と述べ、インド特別仕様だと表現した
●2018年7月、インド企業の「Tata Advanced Systems」との協力体制確立が発表され、総額1兆7000億円ともいわれるプロジェクト獲得に向けた動きをロッキードは加速させた
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Indian Air Force4.jpgなお、第5世代機が話題の中になっても、このF-16シリーズは引き続き根強い引き合いがあり、2018年1月にも最新型であるF-16V Block 70をバーレーンが16機購入することが発表されています

何度も頓挫を経験しているインド空軍の機種選定が、今回は結論を得て戦力化されるのか気になるところですが、ロシアも含めた世界中の全ての戦闘機を対象とするような機種選定で、さぞやインド担当の方は大変かと思いますが、

累計で4500機以上が製造され、2018年7月時点でも、F-16は世界25か国で合計約3000機が運用され、今後新たに200機を製造するため、2030年頃まで生産ラインを維持することになる予定だそうです。第4世代機で十分だと思います・・・

F-16関連の記事
「F-16生産拠点移設であと200機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21-3
「サンダバードF-16も延命改修&後継機種はF-35?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-26-1
「米軍F-16延命へ:F-15C退役に弾み?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
「米空軍がF-15と16の延命検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-25
「F-16の延命措置300機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-31-1

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T-Xに中東諸国が関心:練習機としてだけでなく [安全保障全般]

米空軍が2.2兆円を予期も、1兆円も安価に落札のT-X
ボーイングは薄利多売作戦で市場拡大へ!?

T-X  Boeing2.jpg19日付Defense-Newsが、UAEで開催されている軍事見本市(IDEX)でのボーイング社のMark Ballew外国政府担当営業部長からの取材情報を掲載し、国名は不明ながら、中東の数か国がT-X練習機に関心を示し、練習機としてだけでなく仮設敵機や攻撃機としても注目されていると報じています

米空軍が50年以上使用している420機のT-38練習機の後継として、昨年9月末、米空軍は最低でも350機、多ければ470機を購入する前提で、ボーイングとSaab共同チーム提案採用を決定しましたが、ボーイングチームは米空軍の予想価格より1兆円も安い(おおよそ半額)価格を提示して関係者を仰天させています

そんな経緯もあり、またT-X練習機はF-35操縦察養成への円滑な移行に配慮されていることから、ボーイングはF-35購入国への売り込みを想定し、提案価格を抑えたと噂されているところですが、実戦投入機としての売り込みにも抜かりないようです

19日付Defense-News記事によれば
T-X  Boeing3.jpg●Mark Ballew外国政府担当営業部長はUAEのアブダビで、「T-Xに対する当地諸国の関心が相当見あり、機体性能や完成時期に関する複数の問い合わせを受けている」と語った
●同部長は、具体的にどこの国が、T-Xのどのような用途に興味を示しているのかにコメントを避けた

F-35への機種転換を容易にする性能や操作性を備えたT-Xなので、F-35購入国が練習機としてT-Xを購入することは予想されているが、IDEXでのメディア説明会で同部長は、T-Xがアグレッサー(仮設敵機)や軽攻撃機としても関心を集めていると示唆した
●そして同部長は「この機体で相手国関係者が何をしたいのか、何を求めているのかを確認しながら話を進めている」、「機体が完成して飛行を開始すれば、能力負荷を行うだろうし、その際は世界が何を求めているかを確認する」とメディアに説明した

TX-Boeing.jpgT-Xの開発終了と生産開始は2020年代前半を予定し、その後に国際市場に本格参入することが想定されている。(注:米空軍からは、2023年にシミュレータを納入し、2024年末までに初期運用体制を確立することを求められている
●また同部長は、「今後の進め方についてはしばらく待っていただく必要があるが、我が社は、中東地域だけでなく世界中で、T-Xが期待に添える人気機種になるだろうと確信している」と語った
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日本も多くのF-35を購入することになりそうなので、T-X売り込みには注意したほうが良いでしょう。

ところでMark Ballew部長の肩書である「外国政府担当営業部長:director of sales and marketing for International Government Services at Boeing Global Services」・・・特に中東などでは、いろいろな表に出せないような手段を駆使して売り込むんでしょうねぇ・・・。

Qatar.jpg中東産油国の場合、互いに能力比較されること極端に嫌い、おまけに見えを張りあったりするものですから、少なくとも同じ戦闘機は保有したがりません

例えば、サウジがF-15で、UAEがF-16、クウェートがFA-18で、カタールがミラージュ・・・といった具合です。さすがに小国のバーレーンや産油量が少ないオマーンはF-16ですが・・・

ボーイングの部長さんは、中東産油国の複数の国に買ってもらえるよう、練習機バージョンや軽攻撃機バージョンなど、複数のオプションで「別の機体ですよ感」を出して売り込むんでしょうか???

T-X関連の記事
「ボーイング提案をT-Xに採用」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-28
「T-X選定から候補が続々脱落」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-02
「T-X提案要求書発出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-01
「ボーイングがT-X候補発表」→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-16
「T-X要求性能の概要発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-23-1
「シミュレーターが重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-21

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2021年失効のNew START条約が延長危機 [安全保障全般]

INF全廃条約破棄で協議の機運無し
New START失効で核と非核兵器の識別が不可能に!?

New START.jpg20日付Defense-Newsは、先週末行われたミュンヘン安全保障会議で米露双方がINF条約破棄を巡って互いを非難しあう厳しい状況だったこと等を踏まえ、2021年2月に失効となる2011年締結の「新戦略兵器削減条約:New START」の延長に暗雲が立ち込めているとの考察記事を掲載しました

New START条約は2011年2月5日に発行したもので、双方の戦略核弾頭上限を1550発とし、その運搬手段である戦略ミサイルや爆撃機配備数上限を700に制限する条約です。
なお同条約は発効後の有効期限は10年間で、最大5年の延長を可能とし条約の履行検証は米ロ両国政府による相互査察により行うこととなっていいます。

ただ、この条約を両国の議会が批准した際、米議会は米ミサイル防衛システム(MD)の開発配備が同条約に規制されないとしましたが、ロシア議会は、MD配備によりロシアの核が不利になり戦力バランスが不均衡になる場合は条約から脱退できるとの付帯条項を含めました

それでも2011年2月5日に、同じミュンヘン安全保障会議において米露間で批准書の交換が行われ条約が発効した経緯もあり、2021年2月の期限に向け、同会議で改めて注目を浴びることとなっています

20日付Defense-News記事によれば
New START2.jpg米露という核大国をチェックする役割をはたしてきた記念碑的条約の延長のチャンスが、失われていくように感じられた
●2月中旬に開催されたミュンヘン安全保障会議で、米露双方がINF条約破棄を巡って互いを非難しあうことで、より大きな枠組みであるNew START条約の延長に疑問符が大きくなったと専門家はみている

●英IISSのKori Schake副事務総長は「INFの経験から、米は露に疑念を抱いており、その姿勢は正しいと思う」と述べ、2月に米国がINF条約破棄を発表した翌日に、ロシアも脱退を宣言し、条約に縛られていた能力の兵器を遅滞なく配備するとした姿勢に触れた

●同じIISSのFrançois Heisbourg上級顧問は、トランプ政権の同条約延長への関心の低さから、同条約の延長なき失効のカウントダウンが始まったと表現している
●また同顧問は、「ロシアはINFとNew STARTの両方の破棄を願っているように見える」とも語った

New START3.jpg●ミュンヘン安全保障会議でロシアの副外相は、New START条約に関して昨年から問題となっている問題、米軍のトライデントSLBM発射管56基とB-52爆撃機41機の非核仕様への改修の「不可逆性」が不十分だとの点を持ち出している
●同副外相は、ロシア検証チームは米国側と共に追加の査察を行い、米国側に非核改修が「不可逆的」と信頼するに足るレベルになる方法を提案しているが、米側からは何の反応もないと非難した

●そして同副外相は「私は疑っている。米側は露側の提案を検討するとして時間を稼ぎ、心配するなと我々に言い訳し、2021年2月に条約が失効した途端に手のひら返しを見せ、軍備管理に次なる衝撃を与えるのでは・・・と」とも表現した

B-2restart.jpg●IISSのHeisbourg上級顧問は、New START条約が失効することで、情勢は大きく不安定化すると予想している。つまり「New START条約がなくなることで、どの兵器が核搭載で、どれが違うのかを見分ける手段がなくなり、全ての対応や計画がエスカレーション、つまり核戦争に突き進むことになる」と懸念を示した

●同条約に対するロシアの公式姿勢は「5年間の延長希望」だと副外相はミュンヘンで述べたが、米国務省のEvelyn Farkas元ロシア担当次官補代理は懐疑的で「協議する用意があるというだけで、実際に協議することとは異なる」とロシア流の対応に疑念を示している
●一方でFarkas女史は、「トランプ政権は故意にぐずぐずしてるのであって、現時点でNew START条約の事はまだよく検討されておらず、当面はその状態が続くだろう」と見ている
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無秩序エントロピー増大の法則と申しましょうか・・・・そんな流れにあるようです

Minuteman III 4.jpg米国は対ICBMを含むミサイル防衛強化に動いていますし、ロシアが難癖をつけるポイントは、トライデントやB-52以外にもいくらでもあるのでしょう・・・

ロシアとしては、中国の動きもありますし、米国とは通常兵器で差がありますから、多種多様な戦略兵器で米国に対応という姿勢でしょう。サイバーや宇宙を含め・・

米国核兵器を巡る動向
「今後10年の核関連予算見積が23%増」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26
「2017年世界の核兵器動向」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-20
「核兵器輸送がNo2任務」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-11
「ついにINF条約破棄へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「サイバー時代の核管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02
「リーク版:核態勢見直しNPR」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13
「議会見積:今後30年で140兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02-1

21世紀の抑止概念を目指す
「3本柱はほんとに必要か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03

「相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25

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Shanahan臨時国防長官の後任は女性? [米国防省高官]

議会との関係が急速に悪化する臨時長官
一時は解任も噂されたこの女性の下馬評アップ

Shanahan6.jpg22日付Military.comは、マティス前国防長官に代わって1月1日から臨時国防長官を務めているPatrick Shanahan氏と議会との関係が急速に悪化していることを受け、Wilson空軍長官を後任者として推す声が報道や発言が相次いでいると報じています。

ただしShanahan臨時長官の仕事ぶりを讃え、当面このまま臨時長官を務めさせるか、または正規の国防長官に就任させる可能性も示唆し始めているトランプ大統領やホワイトハウスの姿勢とは異なった情報であり、情勢は微妙です

そもそもマティス前長官は、昨年12月に自ら辞任を表明する前から、就任2年となる今年2月に退任する予定だった言われており、多くの後任候補者が政権内部で検討されていた模様です。

しかし突然のシリアからの米軍撤退表明後任候補者が次々と「トランプ大統領には付いていけない」と辞退したことから、Shanahan副長官が臨時長官に急きょ繰り上がったと言われています

ですから、トランプ政権はShanahan臨時長官で当面乗り切るしかないのが現実かと思いますが、この臨時長官と議会の関係が急速に悪化しています

例えば・・・
Shanahan5.jpg12日に上院軍事委員長のJim Inhofe議員(共和党)は記者団に、臨時長官にはマティス氏のような「謙虚さ」が欠けていると述べ、更に、臨時長官はあくまで臨時であり、国防省全体の業務をかじ取りする力を供えていないのだから、政権は正規の国防長官を任命することになると明言している
●そして同議員は臨時長官の前職がボーイング社重役であったことに関する点や、軍事問題の経験が浅いことに関しては、ことさらに問題視する姿勢を示さなかったが、「Shanahan氏が正規の朝刊として議会承認を求めてきたなら、超党派の議員間で問題視する声となる可能性がある」と言及した

●また20日頃、共和党の有力上院議員のLindsey Graham氏は、臨時長官からの中東情勢ブリーフィングを受けた後、「臨時長官は私の信頼を失った」と関係者に語り、臨時長官に対しても直接「敵対勢力として行動せざるをえない」と言い放ったと伝えられている
Graham議員と臨時長官とのやり取りは、トランプ大統領のシリア撤退に関する見解を問うもので、大統領を支える立場の臨時長官は難しい立場だったと考えられるが、ものの言い方や態度が、つまり人柄が議会の反発を買っている模様で、信頼回復は難しいと見られている

そんな中22日付Military.com記事は
Wilson6.jpgWilson空軍長官を国防長官に推す声が様々な方面から発せられている。実現すれば初の女性国防長官となるHeather Wilson女史を推す声は、超党派の議員から上がっている
●また政権関係者が、Wilson空軍長官なら国防長官就任に必要な議会承認手続きがスムーズに進むだろうと語ったとも報じられている

下院軍事副委員長は「女性は常に国家安全保障にポジティブな影響を与えてくれる。そして女性の役割やチャンスは最近正しい方向に拡大している」と一般的な表現ながら、Wilson空軍長官を押す発言をしている
●また国防省で次官補代理を務めた経験のあるシンクタンク研究員は、「国防省で現在活躍している上級ポストの女性は、未来志向で、肯定的で、声に出して主張でき、官僚機構での戦いに優れ、意に反する政策でも上層部での決定事項については誠実に遂行する姿勢で評価されている」と表現し、Wilson空軍長官を間接的に押している

ただしトランプ大統領が宇宙軍創設を打ち出した際、空軍が消極的だったため、一時はWilson空軍長官解任の噂が流れホワイトハウスが否定するコメントを出したこともあり、政権側の評価は定かではない

Wilson5.jpg●なおWilson空軍長官は、米空軍士官学校の卒業生(女性で3期目)で7年間の空軍勤務がアリ、その後NSCのスタッフ、サウスダコタ州の児童教育長、下院議員を11年間、それらの合間に今も続く国防関係コンサル企業を設立したほか、複数のエネルギーや国防関連企業の顧問も務めた経験を持つ、3人の子供の母親です
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記事はもう一人、Ellen Lord調達担当次官(女性)を有力な次期長官候補として紹介しています。

Lord次官もボーイングの重役出身で、その点では議会の評価は微妙かもしれませんが、 官僚的で、鈍重で、融通が利かない国防省の調達業務の改革に「剛腕」で取り組む「できる女性」として紹介されています

でも・・・いつもは複数の名前が挙がる米議会から候補者の名前が出ないのは深刻ですねぇ・・・

関連の記事
「臨時長官はB社関連決定できず」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-01-1
「辛辣な承認審議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-29
「副長官候補にボーイング重役」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-17
「Wilson長官のご経歴など」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-24

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米軍兵士の2018年自殺者数は過去最高!? [Joint・統合参謀本部]

なぜか陸軍の4四四半期の数字が未公表
海軍と海兵隊は過去最高更新
でも人数比率は日本全体の約半分程度です

Marine-okinawa.jpg1月30日付Military.comが、出所が不明確ながら米軍の2018年自殺者数を紹介し、統計が整備された以降で実質的には過去最高レベルに達していると報じました。

タイトルに「!?」を付け、「実質的には」とまどろっこしい言い方になるのは米陸軍の10月から12月の自殺者数を国防省の担当部署が公表しなかったため、合計数が確定していないからです

全軍のデータだ出そろってから明らかにしろよ・・・と言いたいところですが、「Defense Suicide Prevention Office」なる国防省組織のトップが空席で、陸軍の最終四半期のデータが出てこないとの説明になっています
(ならば、なぜ海空軍海兵隊の同期間のデータが明らかになっているのか不思議ですねぇ・・・)

とりあえず1月30日付Military.com記事によれば
airman.jpg米軍の自殺者数の過去最高は、2012年の321名であるが、米陸軍の最終四半期の数が含まれない段階の集計で、既に2018年は286名であり、この数字で既に2017年全体の自殺者数と同数である
米陸軍の2018年1月から9月の自殺者数は103名で、単純にこのペースで最終四半期の自殺者数を類推すると34名で、年間数が136名となり、米軍全体の数は推定で320名でほぼ過去最高数となる

●他の軍腫では、米海軍が68名、米空軍が58名、海兵隊が57名であった
米海兵隊2018年の自殺者数57名は、2017年から25%増加し、2001年に厳密な統計を取り始めてから最悪となった。海兵隊では予備役者の自殺も多く、2018年は18名で、2016年の19名に次ぐ多さである

米海軍年間数は68名で、これも厳密な統計開始以来最悪の数字で、2017年の65名より増加している。
5年前の海軍の自殺者数は41名で、兵士10万人当たりの自殺者数は12.7名であったが、2018年の数字では10万人当たり20名を超える比率に上昇している

CSAF2.jpg米空軍58名で、2015年63名、2016年61名、2017年63名と比較するとわずかに減少している
●米空軍の自殺・メンタル強靭性担当責任者のMichael Martin准将は、「米空軍は自殺者数の横ばい状態に決して満足しているわけではない。包括的で各級指揮官が率先する兵士とその家族を支える戦略を展開しており、問題の初期段階で、組織と人の強固なネットワークを構築して自殺者を出さない体制に取り組んでいる」とコメントを出している

米軍の自殺者数を一般社会と比較するため、10万人当たりの自殺者数に換算することが有効だが、各軍種からは発表されず、国防省のSuicide Event Reportで確認できる
●入手可能な最新の国防省レポート(2016年統計)によれば、米軍全体の10万人当たりの比率は21.1名で、一般社会の兵士と同年代の男性の比率26.8名よりは低い

他軍種の2016年の数値は以下の通り
---米空軍は19.4 自殺者61名
---米陸軍は26.7 自殺者127名
---米海軍は15.3  自殺者50名
---米海兵隊は21名 自殺者37名
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中途半端な統計の紹介で恐縮ですが、間違いなく、米軍の自殺者数は増加しています。兵士数当たりの自殺者比率も上昇しています。

EW2.jpgもちろん国防省も各軍種も自殺防止に様々な取り組みを進めており、その対策は年々充実していますし、効果もあるはずです。しかし現実としてこの結果・・・

募集難から難しい人材が入隊していることもあるでしょうし、海外派遣や作戦任務が連続していることもあるでしょうが、・・・米軍最高司令官の大統領の軍への姿勢も影響しているのではないでしょうか・・・

申し添えますと、ちなみに、日本の全年齢層合計の2018年10万人当たりの自殺者数は、男性23.2人、女性10.1人でした。統計の存在する1900年以降で最悪は2003年で、自殺者総数34400人、10万人当たりで男性40.0人、女性14.5人です

関連の記事
「戦地激励を避けるトランプ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-23
米空軍死者の一番は自殺」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-12-1
米海軍の自殺も語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-20
国防省の自殺防止会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-25
陸軍も6年連続自殺増」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-14

「米軍死者の7割は非戦闘中」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-16-2
「米軍即応態勢:影の課題2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-04

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米空軍緊急開発調達の先兵9個プロジェクト [米空軍]

官僚機構の壁を破り迅速な前線配備を目指す

Roper3.jpg18日付米空軍協会web記事は、従来の調達や開発の枠組みに縛られず、迅速にプロトタイプ作成や装備調達を可能にする2016年制定の法律に基づき、米空軍が最初に取り組む9つのプロジェクトを紹介しています。

米空軍省の開発調達技術担当次官補であるWill Roper氏が引っ張るこれらプロジェクトですが、今後2-5年での前線投入を想定し、既存成熟技術の組み合わせで迅速に前線の要求にこたえることを目指し、一度に飛躍的な革新を狙わず、市場の技術を迅速に柔軟に取り入れ、柔軟なバージョンアップで最新の状態を維持する等のコンセプトを重んじる仕組みです

2019年度に取り組む9個のプロジェクトに関し、年度で3回進捗報告レポートを出すと自らに縛りをかけ、米軍や国防省の「悪名高い」鈍重で官僚的な調達プロセスのイメージを一新しようとの意気込みが感じられる進捗レポートの第一弾からご紹介です

18日付米空軍協会web記事によれば
2018年12月にまとめられた第一回進捗レポートで米空軍協会が確認した、米空軍が最初にこの緊急調達枠組みで取り組む9個のプロジェクトは以下のとおりである

超超音速兵器関連
---Hypersonic Conventional Strike Weapon
---Air-Launched Rapid-Response Weapon missile-development efforts.

航空機関連
---B-52 engine replacement effort,
---F-22 upgrades,
---search for a light-attack aircraft.

サイバーやネットワーク関連
---Unified Platform for cyber operators
---fifth increment of the Integrated Strategic Planning and Analysis Network

宇宙関連
---Next-Generation Overhead Persistent Infrared
---Protected Tactical Enterprise Service programs.

Hypersonic.jpg米空軍はこれらプロジェクト推進を加速するため、既に存在する知見を最大限活用する方針で、例えば超超音速兵器関連の「Air-Launched Rapid-Response Weapon」では、AFRL米空軍研究所とDARPAが知見(Tactical Boost Glide technology)を持ち寄り、ロケットでミサイルを加速する方式の最適化を追求し、より迅速な前線配備を目指す
●また「Hypersonic Conventional Strike Weapon」では、既に飛行試験が行われている「aeroshells from the Common Hypersonic Glide Vehicle」を活用してより迅速なEOC(early operational capability)を可能にする計画である

F-22のアップグレードはソフトウェアが柱であるが、GPS、通信、核兵器、宇宙、サイバー等の関連で、一度に大きな進歩を狙って開発が遅延することをさえるため、小さな単位で何度もアップグレードを行う方式を狙っている
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F-22hardturn.jpgサイバー&ネットワーク関連や、宇宙関連については、どんなプロジェクトなのかさっぱりわかりませんが、今後話題になることもあるでしょうから、またその筋の方にはご承知の方もいらっしゃるでしょからご紹介しておきます。

それでも、サイバーや宇宙や超超音速兵器が「鍵」であることが伺えます・・・

Will Roper氏の関連記事
「維持費削減に新組織RSO」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-23
「ソフト調達が最大の課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-01
「F-35維持費が大問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-20-1
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26 
「無人機の群れに空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30
「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1

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初代格上げサイバー司令官は日系3世 [サイバーと宇宙]

ナカソネ司令官のご活躍に期待
他省庁とのサイバー協力にも力点

Nakasone.jpg14日、格上げされたサイバーコマンド司令官Paul Nakasone陸軍大将(兼ねてNSA長官)が上院軍事委員会で、最近のサイバーコマンドの取組等について語りました。
ナカソネ大将は3代目のサイバーコマンド司令官で、またサイバーコマンドが2018年4月に大統領直属の「Unified Command」に格上げされて最初の司令官です。

この「Unified Command」とは、太平洋軍や中央軍などの地域コマンド6つと、特殊作戦軍や戦略軍など機能コマンド4つの計10コマンドを指し、隷下に4軍の部隊を戦力として運用し、先に述べたようにその司令官は大統領が直接の上司になる作戦単位の最上位部隊単位です

Cyber-new1.jpg言うまでもなくサイバードメインは今最も関心の高い分野ですが、国としての防衛を考える際、敵が狙うのは軍事目標だけでなく、重要な社会インフラである通信、エネルギー、金融、交通インフラなど国防省が管轄していない目標であることから、その仕切りが民主主義国にとっては悩ましい課題となっています

つまり、多くが民間の商業ベースで運営されていたり、また個人のプライバシーにかかわる社会インフラ分野で、「軍の役割は以下にあるべきか?」という難問が、サイバーコマンドの作戦議論の前に立ちはだかっている状態が続いています。

大前提は国防省のネットワークを担当するのが主任務ですが、国家安全保障を考えた場合、そこで立ち止まっていてはすぐに限界に直面する難しさがサイバードメインの宿命です。

日系2世の父親はWW2で情報将校の陸軍大佐として活躍され、自身も同じく陸軍の情報将校としてキャリアを重ね、将官昇任後にサイバー分野に関わるようになったナカソネ司令官のご活躍を祈念し、サイバーコマンドの状況をご紹介します

14日付米空軍協会web記事によれば
Nakasone cyber2.jpg●ナカソネ司令官は上院軍事委員会で、主要な懸念対象である中国、ロシア、北朝鮮、イランやならず者国家に対応するため、133個のサイバー対処チームを統合部隊として編成完了したが、あくまでこれは初期段階に過ぎず、さらに増強する必要があると証言した
●同大将は「様々な脅威対象への即応体制を考えた場合、現有の戦力はその構成要素であるが、これらに戦略的縦深性を増すため、陸軍の予備役や州軍にもサイバー対処チームを編成する取り組みを始めている」と述べた

133の「Cyber Mission Force teams」は計画よりも編成が少し遅れたが、昨年態勢を整えた。なお、このほかに国防省には、別の攻撃と防御作戦を担うサイバー作戦チームが存在する
●「Cyber Mission Force teams」は約6200名で構成されており、以下の4つの任務区分に分かれている
---Cyber national mission teamsは、敵の活動を察知し、攻撃をブロックして撃退する
---Cyber combat mission teamsは、世界中の地域コマンドにサイバー作戦能力を提供する
---Cyber protection teamsは、主に国防省ネットワークの防御に当たりつつ、攻勢的サイバー作戦の準備もする
---Cyber support teamsは、サイバー関連分析を提供し、「national and combat mission teams」の計画支援を行う

いくつかある課題の中で、同司令官は中核となる優秀な人材に触れ、「ソフト開発やマルウェア分析に、通常の兵士の10倍20倍の能力を持つ人材(10 or 20 x type of people):the best of the best」の確保・維持が課題だと述べた
●また司令官は、同司令部幹部が、敵対的行動をとるものに対して官僚機構の制約なくより迅速に対処できるような枠組み整備のため、議会に要望や働きかけを行っているとも説明した

Nakasone cyber.jpg●議会の理解を得て、2019年国家授権法がサイバーコマンドから国土安全保障省に対する支援を迅速に行える枠組みを整えたおかげで、エネルギー関連インフラの安全確保などでの連携が円滑になったと感謝の意を同大将は述べた
●「国防省内に他省庁との協力強化のための先駆的プログラムを立ち上げ、国土安全保障とは定期的な情報共有会議を設け、エネルギー省とは定期的な協議の場を持てるようになった」と進展を説明した

●今後について同司令官は、更なるサイバー関連インフラ、センサー、人材を含む能力強化により、デジタル戦争体制を強化することで米国全体の能力を進展させる必要があるとし、併せて、サイバー衛生環境やソフトセキュリティーの基準設定の重要性についても訴えた
●そして同司令官は「今最も重要なのは、それが米軍内組織であろうと他省庁であろうとも、パートナーを機能できるようにすること(to enable our partners)」で、「国土安全保障省やFBIを例に、near-peer 敵対者に備え、力をつけてもらうことである」と表現した
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まだまだ「定期的な」情報共有なりミーティングレベルと言えばそれまでですが、民主主義国の限界でしょうか・・・。

Cyber-new2.jpg縄張り意識が強く、かつ新たな仕事に消極的な各省庁を動かすのは大統領でありホワイトハウスなんでしょうが、安全保障は「票」になりにくいですから、負担やコストが増しそうな、ややこしそうなサイバーに取り組ませるのは難しいのでしょう。日本などもっと難しそうな気がします・・・

ナカソネ大将のご活躍に期待いたしましょう。日本も巻き込んでくださいね!

サイバー関連の関連記事
「大活躍整備員から転換サイバー戦士」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-3
「サイバー戦略がもたらすもの」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-02
「市販UAVの使用停止へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-07-1
「サイバーコマンドの課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-04
「サイバー時代の核兵器管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02

「人材集めの苦悩」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-31
「米空軍ネットをハッカーがチェック」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23
「米国政府サイバー予算の9割は攻撃用!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-31
「装備品のサイバー脆弱性に対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-02

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太平洋軍が対中で兵力配備再検討 [Joint・統合参謀本部]

第2列島線まで後退する新たな拠点模索?
南シナ海への「にらみ」とはいうけれど
PNGやミクロネシとは・・・

Davidson5.jpg12日、Davidson太平洋軍司令官が上院軍事委員会で証言し中国の軍事力強化や南シナ海の要塞化を踏まえ、北東アジアやグアム中心だった兵力配備やローテーションの再考を求められていると語りました。

この発言を踏まえ米軍事メディアが専門家の見方を紹介し、具体的にインドネシア、パプアニューギニア(PNG)、ミクロネシアなどに米軍の活動拠点を求め、中国とのつばぜり合いが発生している様子を伝えています。

南シナ海周辺を外まきに取り囲むと言われればそうかもしれませんが、中国のA2ADに対応し、または中国の軍事力強化に押し出され、第2列島線ラインまで後退を余儀なくされているように見えてしまうのですが、長らく対中国の米軍動向を取り上げていないので(米軍の動きが見えないので)、久々の話題としてご紹介しておきます

15日付Military.com記事によれば
Papua New Guinea.jpg●15日、上院軍事委員会で太平洋軍司令官は、対中国を見据え、新たな兵力前進配備場所や物資集積場所を検討していると語り、地域の同盟国や友好国と協議していると証言した
●そして同海軍大将は、「ここ最近数年のことでなく、数十年間にわたり、太平洋軍の基地や展開先は北東アジア地域に置かれてきた」、しかし地域情勢の急激な変化に対応するため「どこを拠点に作戦するか、どこに兵力をローテーション派遣するかの再検討を求められている」と語った

●太平洋軍は、韓国、日本、豪州、グアム島に兵力を駐留させローテーションしているが、専門家は、これら派遣戦力の増強だけでなく、これら地域以外に(又はこれら地域から)インドネシア、パプアニューギニア、ミクロネシアなどに間もなく戦力が展開されるだろうと語った
CSISのアジア太平洋部長Carl Baker氏は、「中国が米国と対等な競争者として台頭する中、アジアインド太平洋地域には新たな考え方が生まれており、北東アジアだけでなく、南東アジアからインド洋も含めた展開地域拡大検討が迫られている」と表現している

●Baker氏は背景として、中国の海軍やミサイル能力向上により、射程外の場所に米軍の拠点を探す必要が生じ、また中国の南シナ海の拠点化により、米軍地上部隊を「toward the ends of the South China Sea」に置く必要が出てきたと表現した

PNGやミクロネシアで
Manus.jpgヘリテイジ財団のDean Cheng上級研究員は、米中のつばぜり合いの一例として、パプアニューギニアのManus Islandに中国が海軍基地を建設しようと試みたが、米国と豪州が協力してこれをはねのけ、パプアニューギニアとのプロジェクトに乗り出した事例に言及した
●米軍はManus Islandの2か所の海軍施設を、WW2当時から重要な海上交通路をにらむ拠点として使用しているが、当時ペンス副大統領が「パプアニューギニアの島々の主権と海洋権益を守るため、豪州と協力する」と表明している

●Cheng上級研究員によれば、米軍が恒久的な軍事基地をアジア地域に新設することは難しい情勢なので、米軍は様々な演習を通じて地域の国々との相互運用性を向上して危機に備えることを考えている。特にグアムとパプアニューギニアをつなぐミクロネシアの島々で、危機に際しての「staging ground」としての利用を視野に置いている

Davidson太平洋軍司令官は上院軍事委員会で、「我々は南シナ海での劇的な変化の事実を受け止めなければならず、過去の繰り返しの様な対応でなく、新たなアプローチを求められている」と証言している
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Micronesia.jpg南シナ海の周辺国であるインドネシアで何が検討されているのか気になるところですが、記事には記述がありません。今後注意いたしましょう・・・

PNGやミクロネシアと言われると、太平洋戦争時の帝国陸海軍と米軍の攻防と、「飛び石作戦」を思い浮かべますが、米国の研究者は当時の資料を読み返しているのでしょうか・・・

南シナ海の人工島とその要塞化は実質完成してしまいましたので、新しい現実の中で考えざるを得ません。「なされるがまま」「相手の言いなり」で事態は進み・・・

A2AD中国軍事力関連の記事
「空母キラーDF-26の発射映像」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-31
「射程1800㎞の砲を米陸軍に」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「DIAが中国軍事力レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-17

「H-20初飛行間近?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-13
「イメージ映像:中国軍島嶼占領」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-06
「驚異の対艦ミサイルYJ-18」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-30

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再びトランプ大統領がパレードもどきを発案 [ふと考えること]

独立記念日にリンカーンメモリアルを中心に
「Salute to America' parade」と呼ぶらしい
トランプ創設のイベントとして恒例化を目指すとか

Salute to America.jpg12日トランプ大統領は、7月4日の独立記念日に「アメリカに敬意を:Salute to America'」パレードを計画すると明らかにし昨年100億円規模の予算が必要との試算が出てとん挫した軍事パレードの代わりに、「大集会」のイメージに近いイベント構想を語りました

そもそもトランプ大統領は、シャンゼリゼ通りで毎年行われるフランス独立記念軍事パレードに2017年7月来賓として参加してその様子が気に入り帰国後ワシントンDCの目抜き通りであるPennsylvaniaアベニューでの軍事パレード検討(11月の退役軍人記念日に)を命じましたが、他の外交日程や経費問題で実現できず、別のチャンスを伺っていた模様です

昨年の軍事パレードは、「米軍に感謝の意を示したい」との大統領の趣旨説明を受け、国防省に検討が命じられましたが、今回は「アメリカに敬意を:Salute to America」とのテーマであり、担当は内務省(ここも長官不在で臨時長官が勤務中)になるようです

軍事パレードでも、「アメリカに敬意を大集会」でもそうですが、なんとなく自分を中心に「偉大なアメリカ」をお祝いしたい狙いが見え見えで、あんぐり口が開いてしまいそうなイベントですが、関連報道をご紹介いたします

13日付Military.com記事によれば
Salute to America3.jpg●12日、トランプ大統領はホワイトハウスで、7月4日かその当たりで、Salute to America' paradeといった名称の大きな集会実施を考えており、リンカーン記念堂を中心に行うことを一案に検討させていると明らかにした
●同大統領は、パレードとの言葉を使ったが「大きな集会のような感じだ」と表現し、「今後、伝統的に行われるイベントになる event to become a tradition」とも語った

●このイベントの担当はDavid Bernhardt臨時内務省長官で、「とてもわくわくした日になる could be a very exciting day」とも大統領は語った
●毎年、独立記念日には国立公園協会がワシントンモニュメント周辺で花火を行うことになっているが、この恒例イベントを無料で、「Salute to America」のボーナスイベントとして活用できるとも大統領は述べた

Salute to America2.jpg●しかし7月4日の独立記念日当日には、既に複数のイベントがワシントンDCで計画されており、これとの兼ね合いが悩ましいくなるだろう
Constitutionアベニューでのパレードなど多数のパレードイベント、例の花火の直前まで議会議事堂の庭で開催されTV中継されるコンサートなど、多くの人々が毎年この日にはDCを訪れる

●なおホワイトハウスは、このイベントの予算見積もりについては言及していない
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「Salute to America」とのイベント自体は、米国建国の精神を振り返りつつ、独立記念日を祝おうとの行事で、アメリカらしいパレードやコンサートが、星条旗が打ち振られる中で開催されるイメージの祝賀行事で、独立国として自然な行事です

Salute to America4.jpgでも、昨年11月に目論んだ軍事パレードが経費面で不評を買ったからか、花火については「a bonus will be fireworks at no extra charge」と言及する品の無さで、イベントの品を落としているような気がしてなりません。もし休日である独立記念日に動員される米軍兵士がいたら、白けた気分になるかもしれません・・・

いろんなタレントや歌手にも声がかかるのでしょうが、先日のスーパーボールのハーフタイムショー出演歌手を巡る騒ぎように、トランプ支持かどうかの「踏み絵」を踏まされ、周辺で反対集会が開催されるような米国分断を象徴するイベントにならないことを祈ります

少しは関連のある記事
「DCで軍事パレードをご希望」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-10-1
「宇宙軍創設を訴え」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-21
「戦地激励を避けるトランプ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-23

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新たな自衛官の海外派遣先MFOを学ぶ [安全保障全般]

国連の枠組みでない米国主導で1982年開始の兵力引き離し監視
エジプトとイスラエル間のシナイ半島を約2000名で担当
1988年から日本は資金協力も、現資金規模は当時の5%以下

MFO.jpg10日各種メディアが、シナイ半島に展開する兵力監視部隊MFOの司令部要員として、自衛官2名を派遣する方針を政府が固め、早ければ今春にもMFO司令部があるシナイ半島南端部の都市シャルム・エル・シェイクに派遣されると報じました

MFO(Multinational Force and Observers)は、これまで自衛隊が多く参加した国連枠組みの活動ではなく第4次中東戦争後に米国主導で1982年から活動を開始した「兵力引き離し監視」を行う組織で、2015年に成立した安全保障関連法によって付与された、新たな海外活動の初適用となるそうです

Sinai.jpg遠く離れた中東で、かつイスラエルとエジプトに挟まれたシナイ半島は日本人にとって極めて遠い場所でしょう。中年以上の方にとっては映画「十戒」で、神がシナイ山でモーゼに10の戒めを示された場所・・・ぐらいの記憶があるかもしれませんが・・・

そんな場所での任務ですので、派遣されるであろう陸上自衛官2名のご活躍を祈念し、MFOについて日本とのかかわりを中心にご紹介いたします。
外務省が公開している予算獲得関連資料を中心につまみ食いで取り上げますので、なんとなく有効性を強調する論調になるかもしれませんが・・・

外務省予算資料とMFOのサイト情報より
第4次中東戦争後のエジプトとイスラエルの平和条約の議定書に基づき、1982年から展開。シナイ半島を挟む上記2国の軍の平和条約履行の検証(展開、活動状況、停戦監視)、両国間の対話の促進、関係の安定化が主要任務活動開始後35年間、4回も戦争したりぃう国間の和平維持に貢献
12の要員派遣国から現在約2000名が活動しており、3個歩兵大隊、1個支援代替、沿岸紹介部隊(偵察ボート保有)、航空機部隊、文民監視団などによって構成されている

MFO2.jpg要員派遣国は米、英、加、豪、仏、伊、NZ、ノルウェー、チェコ、ウルグアイ、コロンビア、フィジー
本部はローマに所在し、エジプトとイスラエルにも事務所を置く。所属部隊の司令部は2015年以降の改編で、シナイ半島の南北に分かれたいたものを南部のシャルム・エル・シェイクに集約

2017年の主な活動実績
---文民監視ユニットによる検証24回、偵察を23回
---シナイ半島で両国間の会議を3回開催
---任務効率化のための遠隔監視サイトの再編成
---中東展開の国連休戦監視機構(UNTSO)との情報交換
●任務遂行の効率化に取り組み、1983年当時と比較し、人員規模を3割削減し、予算規模を1割削減
(ただし米ドルベースで予算規模の推移を見ると、1983年を100とすると、最高は84年の109、90-05年は最低で50、2018年は78レベルであり、継続して予算規模が縮小しているわけではない

MFO3.jpg予算拠出はエジプト、イスラエル、米国が同額で各20億円超でを拠出して全体の3割を賄い、その他を関係国が分担して賄っている
日本は1988年から資金援助を開始しているが、外務省資料は日本の支援金額が「90年代の5%以下の低下している」と指摘し、2018年度支出が約500万円であることから、当初は1億円程度を支援していたものと考えられる

日本の資金面での貢献度は、2002年度で2900万円で第7位の貢献度であったが、500万円となった現在では貢献度順位は公開されていない。外務省資料では、MFOは設立当時の関係国の思惑等から国連枠組みにならなかったことから、より多くの国からの支援を得ることを重視しており、少ない額でもMFOから評価されているが、これ以上の金額低下は避けるべきと記されている

●外務省資料では、日本からの拠出金は「文民職員給与」と「食糧調達」に限定して使用されるとなっているが、MFOのwebサイトでは、日本が「Force Protection Fund」の2割程度を拠出していることになっており、この2つの資料の関係はよく分からない(もう一つの区分のOperational Budgetでは日本の割合は読み取れないほど小さい)
→ http://mfo.org/en/mfo-in-numbers 

MFO事務局長(現在は米国の外交官で、イラクやエジプトの大使経験者)が2015年から毎年訪日し、活動状況等について日本に説明し、意見交換を日本側と行っている
●現在のMFO指揮官は豪州陸軍少将で、ティモールで多国籍部隊指揮官の経験がある
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活動の細部はMFOのwebサイトをのぞいていただければともいます

MFO4.jpg例えばフィジーからの派遣部隊は、シナイ半島で武器(小銃等)を提供され、訓練を受け、武器を帰国時に持ち帰って自国で活用できる制度になっているような話を聞いた覚えがあります
先進国は沿岸監視ボートや偵察航空機、指揮統制通信インフラ、装備の維持整備要員、文民監視員を提供し、その他の国はエリアを分担して駐屯しているイメージかと思います

恐らく、事務総長が毎年訪日するようになった2015年以降、支援金の減額に伴い「人的貢献」の要望が繰り返し出されたものと邪推します。
シャルム・エル・シェイクはシナイ半島南端付近の『リゾート地』で、ソフトターゲットとしての観光施設を狙ったテロが時々報じられています。派遣される方は余暇の時間も気を付けて頑張っていただきたいです

MFOのwebサイト
http://mfo.org/en

参考にした外務省の公開予算関連資料
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000392519.pdf

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米軍PGM不足はやっぱり未解決で深刻 [米空軍]

昨年末に作戦部長が目途が付いたと語っていたが・・・
年変動がある発注方を改革できるか
弾薬の「切りしろ」扱いを変えられるか

Roper5.jpg6日、米空軍省の調達担当次官であるWill Roper氏が記者団に対し、米空軍は中東での作戦で大量に消費しているPGM(精密誘導兵器) の穴埋め調達に懸命に取り組んでいるが、関連軍需産業の生産能力には限界があり、厳しい状態に置かれていると語りました

そしてその背景として、これまで予算編成時の道具として、予算枠が厳しい時の「切りしろ」、予算編成時に余白や隙間ができた際の「穴埋め」「隙間うめ」扱いを受け、年度年度の受注が安定しない弾薬とその製造を担う厳しい弾薬製造企業の窮状現状を訴えています

米空軍(米軍全体でも恐らく)のPGM在庫危機は、対ISIS作戦が激化、アフガンでのタリバン活発化に伴うPGM大量消費によって2015~16年頃から表面化し、国防省高官が「同盟国に提供する余裕はない」「米軍を当てにするな」と公言するようになりその深刻さが明らかになりました

JDAM.jpg軍隊に弾がなければ「張り子のトラ」で、他国に知られれば弱点をさらすようなものであり、米国はあくまで「当面の作戦に支障はない」、「必要な備蓄量は確保されている」との公式発言を続けていましたが、同時に折に触れ「弾薬増産体制を調整中」「必要な予算を確保」とも言い続けてきました

そして昨年12月5日、米空軍作戦部長が、「地域戦闘コマンド司令官にはPGMの使用を抑制してもらっていたが、何とか改善ができてきた」、「2017年から、関連軍需産業の協力を得てPGM生産量増強に取り組んできたが、前線への供給増や備蓄増に結び付くようになってきた」と改善の兆しをアピールしていましたが、あくまで「兆し」で問題の根が深いことが明らかになりました

7日付米空軍協会web記事によれば
●ペンタゴンで記者団に対しRoper次官は、米空軍が必要とするPGM製造企業の状況に懸念を示し、ISISに対し計7万発を消費している現状にも触れ、「製造能力に注目している」と述べた
JDAM-Empty.jpg●「我々は大量に使用されるPGM等の供給に関する大きな負担を負っている」、「多くの弾薬に関し、大規模調達が可能な体制を整える必要がある」と述べつつも、現状に関し「製造企業が製造可能な限定された数量しか入手することができない」と苦境を表現した

●先週、Roper次官の軍事補佐官であるArnold Bunch中将が、米空軍は対ISIS作戦で大量消費にされているPGM(JDAM bombs, Hellfire missiles, Advanced Precision Kill Weapon System rocket)製造企業にフル操業での増産を要請していると語ったところである
●一方でRoper次官は、2020年度予算案にどの程度の弾薬関連経費を計上する予定化については言及を避けた

●またRoper次官は、一般論として、空軍が80年代に行っていた「一部品2供給元」体制が好ましく、複数の部品や装備供給可能企業が競い合い、品質や価格において競争原理が働くような体制構築議論も歓迎するとしながらも、現状の調達規模では複数のサプライヤーを維持するには不十分であることも認めた
Hellfire2.jpg●そして同次官は弾薬の予算上での扱いについて自戒の念を込め、「弾薬購入予算は、他の装備品予算と予算枠との隙間を埋める役割の扱いを受け、主要装備を多く購入するときは弾薬が削られ、逆の場合は弾薬予算が増えるのが実態だった」と認めた

●しかしこれは製造企業側からすれば、発注が少なければ製造設備や人員を維持できないし、原材料調達単価も上昇する厳しい状況を生き抜くこと迫られ、気まぐれな増産要請に対応できる余裕など確保できない
●また企業が長期計画に基づく設備投資等を行うことも難しく、原材料の大量購入による単価削減も考えにくい・・・等と現状を訴えた

それでも同次官は向かうべき方向として>、「企業間の競争を促せる企業数の確保と、単一企業からの調達を避ける方向」を挙げ、そのため国防省や空軍として「毎年購入する弾薬量の平準化を図り、予算枠の穴埋め役にせず、企業側と5か年計画の視野で話ができるようにしたい」と述べ、「幾つかのアイディアもある」と言及した
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APKWS2.jpg「弾薬の備蓄量」は秘密中の秘密ででしょうから、具体的な数量について語れませんが、対リビア作戦をNATO欧州諸国に任せたときは、欧州諸国が「さほど攻撃目標がない短期作戦で弾薬不足に直面した」として、当時のゲーツ国防長官が酷評していました

米軍の弾薬不足がどの程度かは推測する根拠がありませんが、国防省が「同盟国に提供する余裕はない」「米軍を当てにするな」と公言するくらいですから、相当レベルと推測します。

そしてあくまで邪推ですが朝鮮半島で紛争が勃発しても、思う存分PGM精密誘導兵器を余裕をもって使用できる態勢にはないのでは・・・と邪推します。

米空軍と弾薬関連
「精密誘導爆弾の不足改善へ?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-09
「アフガン軽攻撃機がPGMを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-2
「意味深:グアムの弾薬10%増」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-21
「米空軍が精密誘導兵器増産へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-24

「空軍長官代理の発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-05
「精密誘導爆弾の不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-03
「米国の弾薬を当てにするな!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-21-1

ゲーツ長官がリビア作戦の欧州諸国を酷評
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-12

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米空軍:上級軍曹の選抜から体力テスト除外 [米空軍]

知識テストと体力テストをなくす決定
リーダーシップ無き者が選ばれるのを避けるため

Airman2.jpg4日、米空軍が下士官の上級階級3つへの昇任審査の基準変更を発表し、これまで選考の基準に含まれていたWAPS(Weighted Airman Promotion System testing requirement)を除外すると明らかにし、具体的には、知識テスト(knowledge test)と体力テスト(promotion fitness exam)を無くすとしています

これまで、知識と体力テストを各100点満点で点数化し、これに加えて過去5年間の勤務評価や賞罰や勲章歴等を加点して対象者を評価して候補者をリストアップし、中央昇任審査会(central evaluation board)で面接等を経て選抜していたようですが、ここから知識と体力テストを除去する大きな改革です

airman.jpg知識テストを免除して「頭でっかち」だけの指導力のない下士官を排除し、体力テストを除いて「少々肥満型でも」組織を引き締めてくれる指導力ある人物を選抜する決心がなされたものと「邪推」いたしました。

一般的な時代の流れに逆行するような気もしますが、そうでもしないと風紀の乱れに打つ手なしの部隊状況ではないか・・・そしてこれが米空軍(恐らく米軍全体)の実態だと推測いたします・・・

4日付Military.com記事によれば
●4日米空軍は、上級下士官3階級(master sergeant, senior master sergeant and chief master sergeant)への昇任者選抜プロセスから、知識テスト(knowledge test)と体力テスト(promotion fitness exam)を無くすと明らかにした。

Wright.jpg●4日、米空軍下士官トップであるKaleth O. Wright最上級軍曹は声明を発表し、「この新たな選抜プロセスが、上級下士官選抜において最適な人材を選抜し、各級指揮官や組織指導者に信頼できる人的戦力を継続的に提供するものと確信している」と述べている
●また「テスト部分を選抜プロセスから除くことにより、強力なリーダーシップ発揮の潜在能力を保持しない者が選抜されることを避け、最上級の優れたパフォーマンスを示しているものが選ばれる仕組みを確実なものとする」とその意義を説明している

●米空軍司令部の人的戦力計画部長であるBrian Kelly中将は、「我々は継続的に、米空軍全体で人材管理手法の改善に取り組んでいく」、「今回の選抜要領見直しは、(テストよりも)日頃の勤務パフォーマンスを重視して焦点を当てるものである。我々は引き続き、透明性とシンプルさを追求していく」と本件に関しコメントしている
●なお、新方式での昇任者が誕生するのは、今年秋からである
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空軍内では性的暴行(sexual assult)問題が4軍の中でも際立ち、その他にも飲酒や麻薬、士官学校でのカンニングやセクハラなど風紀上の問題が重くのしかかっており、統合参謀本部議長に空軍人が長く推薦されない原因の一つとも言われているほどですが、対策の一つとしての上級軍曹選抜の改革(現場で目を光らせる適任者の選抜)ですが、これは大きな人事制度の変革だと思います

basic-training4.jpg「日頃の勤務パフォーマンスを重視」とは聞こえが良いですが、多くの対象者を対象として、日頃の職務遂行状況を公平に評価することは容易ではありません

公平性を確保するため導入したのが知識テストと体力テストですから、そこからの決別は公平性確保への挑戦でもあります。他軍腫の追随状況を含め、お手並み拝見と行きましょう

米空軍内の風紀の乱れ
「空軍内で性的襲撃既に今年600件」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-19-1
「空軍士官学校の内通者が反旗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-10-1
「戦闘機操縦者支配への反発が顕在化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-04
「指揮官を集め対策会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-04

米軍と性犯罪(Sexual Assault)問題
「性犯罪は依然高水準」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-06-1
「暴力削減にNGO導入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-05
「国防長官が対策会見」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-19

「海軍トップも苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-20
「女性5人に一人が被害」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-10
「米軍内レイプ問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-19

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第9回中国安全保障レポートは「一帯一路」 [中国要人・軍事]

「核心的利益を追求する中国の行動は、周辺諸国との摩擦を高め、アジアの地域秩序に関する中国戦略は、必ずしも順調ではない」

2019Report中国.jpg1月30日、防衛省の防衛研究所が、第9回となる「中国安全保障レポート」を発表しました副題として「アジアの秩序をめぐる戦略とその波紋」を掲げ、日英中の3か国語で全文が提供され、防衛研究所webサイトで無料公開されていますので、是非ご覧ください。

このレポートは、世界に大きな影響を与えつつある中国の戦略的・軍事的動向を分析し、「あくまでも執筆者の個人的見解で、防衛省の公式見解ではない」との注釈付ながら、実質的には防衛省の見方を国内外に発信するためのものです

記事末尾の過去レポートの紹介記事が示すその時々の中国を表現するテーマを掲げて、中国の動向を分析しており、レポート本文中には、本レポートの内容を基に諸外国の研究機関との意見交換を行っているとの記述も見られます。

one belt one road5.jpg今回のテーマは「一帯一路:one belt one road」や中国の対外政策で、膨大な人口を背景にして魅力的な市場となっている中国が、その経済力をテコに周辺諸国に対して、「真綿で首を締める」様な「協調&強硬路線」を採っている様子を紹介しています

レポートの構成は以下の通りでまず全般状況を概説し、次に地域ごとの様子を取り上げる形をとっていますが、本日は各章の概要をレポートの要約部分から「ちらり」とご紹介します。

第1章 既存秩序と摩擦を起こす中国の対外戦略
第2章 中国による地域秩序形成とASEANの対応
第3章 「一帯一路」と南アジア――不透明さを増す中印関係
第4章 太平洋島嶼国――「一帯一路」の南端

第1章 既存秩序と摩擦を起こす中国の対外戦略
one belt one road.jpg●習近平政権は、「一帯一路」に代表される協調重視の「平和発展の道」と、強引な海洋進出に見られる対立もを辞さない「核心的利益の擁護」という2つの対外方針を同時進行している。
●更に中国は、「中国の特色ある大国外交」を標榜し、中国の発展途上国への発言力強化で国際秩序の改編を目指している。

●こうした中国の動きは、米国や先進国の警戒を呼び、途上国の間には経済合理性や透明性に欠けてる「一帯一路」構想への疑念が拡大している
●更に「核心的利益」を追求する中国の行動は、周辺諸国との摩擦を高め、アジアの地域秩序に関する中国戦略は、必ずしも順調ではない

第2章 中国による地域秩序形成とASEANの対応
one belt one road3.jpg●ASEAN諸国は、台頭する中国に「関与と牽制」、「経済と安全保障」、「中国と米国」といった多様で柔軟な姿勢で対応してきた。中国は、経済的影響力と安全保障を積極的に結びつけ、南シナ海問題などでASEANを中国の意向に従わせようとした。

●「一帯一路」での中国の支援攻勢にASEANは積極的に反応し、ASEANが進めるインフラ整備に中国が大きく寄与することで、ASEANへの中国の政治的影響力は拡大している。中国は「台頭」を超え、地域秩序の「中心」と化しつつあるという意味で、両者の関係は新たな段階へ到達している。
しかしマレーシア新政権による「一帯一路」関連プロジェクトの見直しが顕在化するなど、ASEANの対外戦略の本質は均衡にあることが、2018年にはあらためて明らかになった

第3章「一帯一路」と南アジア―不透明さを増す中印関係
one belt one road2.jpg●「一帯一路」で進む南アジア諸国への中国の経済的関与は、地域での中国の存在を、地域大国インドを上回る支配的地位へと押し上げ得る。インドは警戒感を抱き、「一帯一路」を経済的なプロジェクトではなく政治的・戦略的意図を帯びたものととらえて、域内諸国への関与強化、多国間連結性構想の推進、域外主要国との連携といった対抗策を強めてきた。

●一方で中国は、「一帯一路」にインドの協力を得たい思惑や、ハンバントタ港引き渡しを受けた「一帯一路」のイメージ悪化に対処する必要性から、インドに譲歩する姿勢を見せ、インドも応じる形で、2018年4月の中印首脳会談で関係の「リセット」が行われた。
●しかし、南アジア諸国での中印間の競争は今後も続き、長期的にはそれが、これまで総体的な中印関係が備えてきた、「管理された対立」としての性質を蝕んでいく可能性が高い

第4章 太平洋島嶼国――「一帯一路」の南端
one belt one road4.jpg●中国は「一帯一路」における「21世紀の海上シルクロード」の南端を太平洋島嶼国と定め、近年これらの国々への支援を大幅強化している。島嶼国側は、経済発展のため基本的に中国支援を大いに歓迎し、「一帯一路」構想への参画にも積極的である。

●現在、中国の島嶼国への安全保障面での関与は、主として2国間レベルで進められている。中国が中長期的には戦略的な進出を始める可能性は否定できないものの、中国はまず同地域において経済権益の確保と、経済力を用いて政治的影響力を高めることに注力しているようである。
●島嶼国への中国進出に対し、関係国の警戒感は高まっている。豪州やNZは、自らの影響力の相対的な低下を懸念している。同地域に領土を持つフランスも、警戒感を強めている。
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日中関係改善(米中対立と反比例し)の機運の中で、こっそり発表された印象が強いです。

中国という多様な側面を持ち、日本との利害関係も複雑な対象を報告書にまとめることは、防衛研究所のような公的研究機関でないと難しいと思います。

one belt one road6.jpg企業や財団系のシンクタンクが専門家を集めてレポートをまとめようとしても、個性豊かな断片レポートの寄せ集めになりがちですが、緩やかながらでも組織的統制がある防研のような組織は、全体んバランスや視点を整えることが可能かと思います

もちろん、防衛省という看板を背負っている関係上、「角」がとれた表現に納まっている部分もありますが、日本語で読める得難い資料ですのでご活用ください

注:まんぐーすは防衛研究所の関係者ではありません。誤解されている方がいるようですが・・・

防衛研究所の同レポート紹介webサイト
http://www.nids.mod.go.jp/publication/chinareport/index.html

過去の「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1

4回:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
5回:非伝統的軍事分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-22
6回:PLA活動範囲拡大→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-09
7回:中台関係→サボって取り上げてません
8回:米中関係→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-2

米国防省「中国の軍事力」レポート関連記事
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1

防衛研究所が4年かけ取り組んだ大規模研究プロジェクト
全12章の大作:「フォークランド戦争史」
http://www.nids.mod.go.jp/publication/falkland/index.html

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国防省評価局:ALISは未だF-35の大きな障害 [亡国のF-35]

問題多数で使えないからデータベース不十分
使わないから使用者の習熟度も上がらず
開発段階での試験が現場の使用実態と乖離・・・

F-35 3-type.jpg1月31日、米国防省の試験評価局(DOT&E:director of operational test and evaluation)が、F-35の稼働率が上がらない元凶の一つである自動兵站情報システムALISの現状についてレポートを発表し、  
設計上の機能を発揮できず、現場を混乱させている様子を厳しく指摘しています

現場の使用状況に即した性能確認試験が不十分なため現場に余計な負担をかけ、トラブルが多いため整備員がALISを使用しない抜け道で活動するため正確なデータ蓄積ができず、不十分な情報やソフトのバグが生む誤った故障アラームで稼働率低下の悪循環など、現場整備員の苦悩が伺えるデタラメな状況がレポートされています

まだ現場配分の機体数が少ないため人海戦術で対応しているのでしょうが、機数が増えるにしたがって整備の現場が破綻する様子が目に浮かぶようです・・・・。皆さん、F-35運用が安定し、F-35を採用する国が増えてきたと考えるのは大きな間違いです。米国がF-35輸出を促進するため、一生懸命表面をお化粧しているだけです・・・

1日付Defense-News記事によれば
F-35C.jpg●ALIS(Autonomic Logistics Information System)は、F-35運用と整備に効率性をもたらすものと大宣伝されているが、必要なデータの欠落とソフトのバグにより、現場整備員の仕事をますます困難なものにしてる様子をDOT&Eレポートは暴露している
●結果として、ALISが誤って機体故障アラームを表示し、例えば展開先で飛行開始までに余計な時間を要し、現場整備員に大きな負担を強いている

DOT&Eレポートは、ALIS関連不具合を大きく3つのカテゴリーに分類できるとしている
一つ目は、自動化されているはずの使用手順の多くが、未だ手動入力によらねばならず操作に多大な時間を必要とする点

二つ目は、ALISが提供するデータが不完全や誤りであることが多い点。理由は様々だが、例えば契約業者が問題の多いALISを使いたがらず必要な情報が入力されいのも背景の一つ。F-35を製造するロッキード社の現場でも、ALISを使い始めたのは2018年3月からという驚くべき実態
F-35 luke AFB.jpg三つ目は、上記2つの結果、現場整備員がALIS使用経験不足である点。このため複雑な搭載装備品のデータ修正には多くの時間を要し、結果として求められる時刻までに機体を飛行可能にすることができない事態に至っている。ALIS操作問題での非稼働が、主要な5つの非稼働率原因に入っている

●このような問題が顕在化するのはF-35が母基地から機動展開した場合で、不自由な環境では第4世代機より飛行準備に時間必要になっている。このため整備員は、本来ALISで実施すべきデータ管理を、自己流の別手段で行っている
●最もF-35稼働率が低い海兵隊の航空基地では、修理のために必要な部品をALISに入力すると、入手までに数年かかると表示されることがあり、電話で確認して急送を依頼している実態などが明らかになっている

●同レポートによれば、これら問題の一部はソフト管理部門で対策が行われているが、タイムリーに措置されていない問題が多数あり、対処されている問題の解決にも異常に長い時間がかかっている
●ALIS内の複数のアプリが異なった指示を出し、現場を混乱させている問題も2012年から指摘されているが、複数のソフト改修を経た後も依然問題として残っている

●ロッキード社は、今後のALISソフト改修はより小規模で頻度を上げる方向で行うとし、DOT&Eもその方向を指示しているが、改修ソフトの試験手法が現場のALIS使用実態に即しておらず、ソフト開発部署ごとに試験手法が異なっていると批判している

DOT&EレポートがALIS以外で指摘した課題の一部
F-35B-2.jpg●海兵隊に納入されたF-35Bの初期型は、2000時間分の耐久試験しか行われておらず、8000時間と設定されている耐用年数前に問題が出る可能性がある
●国防省F-35計画室は、今後6か月ごとにソフトを更新する方向で計画しているが、あまりにも頻繁でソフトの信頼性確認が不十分なリスクが高い

●F-35に脅威データを提供する「mission data files」を作成する装置が不十分であり、特に展開先など作戦時のストレスが高い環境下で新たなデータファイルを迅速に作成できない
●F-35A型の機関砲の装着が適切に行われておらず、射撃の正確性に問題がある
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F-35の維持整備はそのコストと作業員負担の多さで大きな問題となっており、最大の懸案の一つですが、「日暮れて途遠し」状態に変化無しです

航空自衛隊の現場の声(三沢基地の整備員)を是非聞いてみたいものです・・・

関連の記事
「2Bソフト機は稼働率4割台」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-1
「2/3が飛行不能FA-18の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-07
「世界中のF-35稼働率は5割」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-3
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1
「再びGAOが警告」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-10

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新しい在日米軍司令官はアジア極東のベテラン [Joint・統合参謀本部]

前職は太平洋空軍と太平洋軍の参謀長
F-16操縦者で韓国と三沢勤務あり
多国籍操縦者教育部隊の隊長経験も

Schneider.jpg5日、米空軍横田基地で太平洋軍司令官Phil Davidson海軍大将と太平洋空軍司令官CQ Brown空軍大将の列席の元、新しい在日米軍司令官(兼ねて第5空軍司令官)の就任式典が行われ、昇任したばかりのKevin Schneider空軍中将が就任し、部隊の旗を Brown司令官から手渡されました

前任者の輸送機パイロットJerry Martinez中将は、33年間の空軍人としての勤務を終え、退役されるそうです。在日米軍司令官を最後に制服を脱ぐ方は珍しいですが、アジア経験が無く、在任中に米軍兵士や軍属の日本国内での犯罪が多く、また三沢のF-16が燃料タンクを基地近傍の池に投下して漁業被害を出し、基地の整備部隊がデタラメだとの調査結果が出るなど、事件事故が多かった厳しい勤務であったことは間違いありません

5日付米空軍協会web記事と公式バイオより

Schneider新司令官と主要な経歴
Schneider2.jpg1988年に空軍士官学校を卒業(防大32期相当か)後、F-16操縦者として最初の勤務地は韓国のOSAN基地で、次の任地が三沢基地で1995年12月まで勤務。戦闘機パイロットとして最初の5年間を極東に防衛にささげた
●その後は操縦技量と識見ともに優れた士官として、ネリス空軍基地のWeaponスクール教官パイロトを務め、またペンタゴンで少佐として空軍参謀総長の副官室勤務を経験する

飛行隊長は再び韓国駐留のF-16飛行隊で努め、その後、ドイツ勤務等を経て、同盟国操縦者の飛行教育を担当する航空団の司令官を経験する
統合職としては、中佐でJ-5の軍政関係担当を務め、空軍司令部では大佐で人的戦力管理部で将軍人事マネジメント課長を務める

●最近では、UAE内陸の米空軍戦力展開基地司令官、中央軍空軍の副司令官、太平洋空軍の参謀長、そして直前は太平洋軍の参謀長を2016年7月から努めている

5日の就任式典では
Davidson3.jpg●Davidson太平洋軍司令官は、「太平洋地域や日本周辺の課題について深く理解し、たぐいまれな能力を持った人物である」と新司令官を紹介し、
日米同盟について、70年以上に渡り地域安定の「cornerstone」であり、自由で開かれたインド太平洋のために心を同じくする国との協力で安全保障が確保されてきたし、太平洋軍の戦力発揮の信頼性は日本のような鍵となる同盟国との協力が不可欠だ、と述べた

●Schneider新司令官は、「この地域の平和と安全保障に対する明確な脅威を認識している」と述べ、「いかなる危機、脅威、災害に対しても、至短時間で対応できるような高いレベルの即応態勢を維持し無ければならない」と語った

Martinez.jpg●退役するMartinez前司令官に対し太平洋空軍司令官は、「彼が指揮した2年間は決して楽しい2年間ではなかった」、「事態は常に切迫しており、脅威は常に注視されなければならなかった」と労をねぎらった
●Martinez前司令官は、在日米軍司令官と第5空軍司令官として勤務できたことを誇りに思うとともに、「この素晴らしい日本という国で暮らすことが出来たことを、真に誇りに思う」と感謝の弁を述べた
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地域の情勢は言うに及ばず、韓国までが左旋回の度を強めるなか、ここは太平洋軍エリア経験が豊富で、直前まで上級司令部の参謀長を務めていた即戦力を投入し、風雲急を告げる極東の体制を安定させようとの狙いでしょう。

Trump8.jpgでもまぁその前に、同盟国との関係や、過去の経緯を無視しそうな最高指揮官(トランプ大統領)の如何なる思い付き行動にも、即応態勢でいる必要がありそうです。Schneider新司令官は・・・

そういえば米中東軍司令官は、トランプ大統領の米軍のシリア撤退発表について、事前に大統領から何の相談もなかったと上院軍事委員会で証言したようです・・・

Kevin Schneider新司令官の経歴
https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/108888/major-general-kevin-b-schneider/

関連の記事
「三沢F-16整備部隊はでたらめ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-22
「空自の那覇救難隊を表彰」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-19
「前任Martinez中将の経歴」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-07

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独の戦闘機選定:F-35除外も核任務の扱いが鍵 [安全保障全般]

tornade.jpg1月31日付Defense-Newsがドイツ国内報道を引用し、老朽化が進む90機の独空軍トーネード戦闘機の後継機選定に関し独国防省関係者が(米から購入せよ圧力があると邪推する)F-35を候補から除外したと語ったと報じ、一方でトーネードが担っていたNATO作戦における核兵器投下をどうするかについては混迷状態にあると解説しています。

ドイツの戦闘機に関しては、独と仏が中心となり欧州全体を巻き込む方向の次世代戦闘機開発が2040年配備を目指してスタートしており、トーネードの後継機はそれまでの「つなぎ戦力」の性格が強く、早くから5世代機の「F-35でなくても・・」との雰囲気が独内にあります。

eurofighter2.jpgこれを受け昨年4月には、ユーロファイターCEOはトーネード戦闘機の後継争いにおいて、F-35よりもユーロファイターが有利に立っていると語っています。従って、今回の独国防省高官の「F-35排除発言」は、少なくとも軍事専門家や独国内では淡々と受け止められているようです。

しかし、独国防費のGDP比が低いと圧力をかけている米ホワイトハウスや米国務・国防長官、F-35製造のロッキード社は大いに不満でしょうし、トーネードが担っていた核任務の引き継ぎ先の選択肢には複数があり、機体毎の核任務の可否は米国が認可する性格のものであることから、米国VS欧州の性格を持つドロドロ感たっぷりの紆余曲折が予想されることから、簡単にご紹介しておきます

1月31日付Defense-News記事によれば
eurofighter11.jpg●今回の「F-35除外発言」はサプライズではない独関係者はこれまでも、欧州企業共同生産のアップグレードしたEurofighter Typhoonが好ましいと示唆していたからである
●これは、一つには欧州企業による作戦機製造機会を維持しするという目的のためであり、更にはより重要な要素として、独仏が開始している次世代機開発などの兵器開発連合の活動に水を差すことが無いようにするためである

●ただし、現在NATOによって割り当てられているトーネード戦闘機による核兵器投下任務をどうするかについて、米国製核兵器の搭載認証を受けていないTyphoon戦闘機は答えになっていない
FA-18EF2.jpg●そこで今回の「F-35除外発言」以前には、例えばロイター通信のように、独国防省がTyphoon戦闘機とF-35、又はTyphoon戦闘機とFA-18E/Fの混合調達を検討しているとの報道もなされていた

欧州製と米国製機体の混合調達は、NATO核任務遂行と欧州軍需産業保護の両面から都合が良いようにも見えるが、異なる2機種を支える維持整備上の負担は、経費面と人的・組織面の両方で大きな負担となる
●混合機種調達案以外にも、老朽化で維持経費が今後増大しても、NATO核任務用にトーネードの一部を引き続き維持してはどうかとの案も、不可能ではない案として常に検討対象として浮上している

独政府は、核兵器搭載可能機の保有について公に議論するようなことを避けたいと強く願い、核運搬任務に関するトーネードの後継機など議論したくないのが本音であり、Typhoon戦闘機の核搭載任務承認を米国に要請するであろうが、トーネードの維持が高価でも現状維持を期待する声はやまないだろう、とドイツの政府系シンクタンク研究者は昨年8月に予言していた。
F-35 Paris.jpg●1月31日の報道を受けても、独国防省関係者は、トーネードの核任務の後継については何も決まっていないと強調し、FA-18とTyphoonに関する情報提供をボーイングとエアバス社に求めていくだけだと述べた

一方でF-35製造のロッキード関係者は、「F-35除外」発言について、独政府から何も聞いていないと驚いた様子で、「NATOの次世代エアパワーの基盤として、F-35は世界で最も優れた作戦機であり、電子戦分野でも全ての4世代機御上回る能力を保有している」、「長期的な軍需産業基盤や経済的機会の面からも、市場にあるいかなる戦闘機よりも優れている」と訴えた
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F-35の核兵器搭載任務への改修型の設計製造や承認も先送りになっており、米国としても突っ込みが難しい面もあるでしょうが、Typhoon戦闘機に核兵器搭載承認を与えるかも米国の微妙なさじ加減になりそうです。

B-61 LEP.jpg核兵器を搭載するには少なくとも、核爆発時のEMP効果に耐えうる機体にするため、機体の電子回路や配線を電磁波からシールドする必要があり、F-35でも100億円の設計改修費が必要との見積もりがあったと思います

欧州での戦闘爆撃機搭載の戦術核を維持するのか?・・・との大前提となる問いにもこたえる必要がある課題です。これまた、お手並み拝見ですが・・・

ドイツと戦闘機関連記事
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2

戦術核兵器とF-35等
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

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