SSブログ

2021年失効のNew START条約が延長危機 [安全保障全般]

INF全廃条約破棄で協議の機運無し
New START失効で核と非核兵器の識別が不可能に!?

New START.jpg20日付Defense-Newsは、先週末行われたミュンヘン安全保障会議で米露双方がINF条約破棄を巡って互いを非難しあう厳しい状況だったこと等を踏まえ、2021年2月に失効となる2011年締結の「新戦略兵器削減条約:New START」の延長に暗雲が立ち込めているとの考察記事を掲載しました

New START条約は2011年2月5日に発行したもので、双方の戦略核弾頭上限を1550発とし、その運搬手段である戦略ミサイルや爆撃機配備数上限を700に制限する条約です。
なお同条約は発効後の有効期限は10年間で、最大5年の延長を可能とし条約の履行検証は米ロ両国政府による相互査察により行うこととなっていいます。

ただ、この条約を両国の議会が批准した際、米議会は米ミサイル防衛システム(MD)の開発配備が同条約に規制されないとしましたが、ロシア議会は、MD配備によりロシアの核が不利になり戦力バランスが不均衡になる場合は条約から脱退できるとの付帯条項を含めました

それでも2011年2月5日に、同じミュンヘン安全保障会議において米露間で批准書の交換が行われ条約が発効した経緯もあり、2021年2月の期限に向け、同会議で改めて注目を浴びることとなっています

20日付Defense-News記事によれば
New START2.jpg米露という核大国をチェックする役割をはたしてきた記念碑的条約の延長のチャンスが、失われていくように感じられた
●2月中旬に開催されたミュンヘン安全保障会議で、米露双方がINF条約破棄を巡って互いを非難しあうことで、より大きな枠組みであるNew START条約の延長に疑問符が大きくなったと専門家はみている

●英IISSのKori Schake副事務総長は「INFの経験から、米は露に疑念を抱いており、その姿勢は正しいと思う」と述べ、2月に米国がINF条約破棄を発表した翌日に、ロシアも脱退を宣言し、条約に縛られていた能力の兵器を遅滞なく配備するとした姿勢に触れた

●同じIISSのFrançois Heisbourg上級顧問は、トランプ政権の同条約延長への関心の低さから、同条約の延長なき失効のカウントダウンが始まったと表現している
●また同顧問は、「ロシアはINFとNew STARTの両方の破棄を願っているように見える」とも語った

New START3.jpg●ミュンヘン安全保障会議でロシアの副外相は、New START条約に関して昨年から問題となっている問題、米軍のトライデントSLBM発射管56基とB-52爆撃機41機の非核仕様への改修の「不可逆性」が不十分だとの点を持ち出している
●同副外相は、ロシア検証チームは米国側と共に追加の査察を行い、米国側に非核改修が「不可逆的」と信頼するに足るレベルになる方法を提案しているが、米側からは何の反応もないと非難した

●そして同副外相は「私は疑っている。米側は露側の提案を検討するとして時間を稼ぎ、心配するなと我々に言い訳し、2021年2月に条約が失効した途端に手のひら返しを見せ、軍備管理に次なる衝撃を与えるのでは・・・と」とも表現した

B-2restart.jpg●IISSのHeisbourg上級顧問は、New START条約が失効することで、情勢は大きく不安定化すると予想している。つまり「New START条約がなくなることで、どの兵器が核搭載で、どれが違うのかを見分ける手段がなくなり、全ての対応や計画がエスカレーション、つまり核戦争に突き進むことになる」と懸念を示した

●同条約に対するロシアの公式姿勢は「5年間の延長希望」だと副外相はミュンヘンで述べたが、米国務省のEvelyn Farkas元ロシア担当次官補代理は懐疑的で「協議する用意があるというだけで、実際に協議することとは異なる」とロシア流の対応に疑念を示している
●一方でFarkas女史は、「トランプ政権は故意にぐずぐずしてるのであって、現時点でNew START条約の事はまだよく検討されておらず、当面はその状態が続くだろう」と見ている
////////////////////////////////////////////////

無秩序エントロピー増大の法則と申しましょうか・・・・そんな流れにあるようです

Minuteman III 4.jpg米国は対ICBMを含むミサイル防衛強化に動いていますし、ロシアが難癖をつけるポイントは、トライデントやB-52以外にもいくらでもあるのでしょう・・・

ロシアとしては、中国の動きもありますし、米国とは通常兵器で差がありますから、多種多様な戦略兵器で米国に対応という姿勢でしょう。サイバーや宇宙を含め・・

米国核兵器を巡る動向
「今後10年の核関連予算見積が23%増」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26
「2017年世界の核兵器動向」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-20
「核兵器輸送がNo2任務」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-11
「ついにINF条約破棄へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「サイバー時代の核管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02
「リーク版:核態勢見直しNPR」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13
「議会見積:今後30年で140兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02-1

21世紀の抑止概念を目指す
「3本柱はほんとに必要か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03

「相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。