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新たな自衛官の海外派遣先MFOを学ぶ [安全保障全般]

国連の枠組みでない米国主導で1982年開始の兵力引き離し監視
エジプトとイスラエル間のシナイ半島を約2000名で担当
1988年から日本は資金協力も、現資金規模は当時の5%以下

MFO.jpg10日各種メディアが、シナイ半島に展開する兵力監視部隊MFOの司令部要員として、自衛官2名を派遣する方針を政府が固め、早ければ今春にもMFO司令部があるシナイ半島南端部の都市シャルム・エル・シェイクに派遣されると報じました

MFO(Multinational Force and Observers)は、これまで自衛隊が多く参加した国連枠組みの活動ではなく第4次中東戦争後に米国主導で1982年から活動を開始した「兵力引き離し監視」を行う組織で、2015年に成立した安全保障関連法によって付与された、新たな海外活動の初適用となるそうです

Sinai.jpg遠く離れた中東で、かつイスラエルとエジプトに挟まれたシナイ半島は日本人にとって極めて遠い場所でしょう。中年以上の方にとっては映画「十戒」で、神がシナイ山でモーゼに10の戒めを示された場所・・・ぐらいの記憶があるかもしれませんが・・・

そんな場所での任務ですので、派遣されるであろう陸上自衛官2名のご活躍を祈念し、MFOについて日本とのかかわりを中心にご紹介いたします。
外務省が公開している予算獲得関連資料を中心につまみ食いで取り上げますので、なんとなく有効性を強調する論調になるかもしれませんが・・・

外務省予算資料とMFOのサイト情報より
第4次中東戦争後のエジプトとイスラエルの平和条約の議定書に基づき、1982年から展開。シナイ半島を挟む上記2国の軍の平和条約履行の検証(展開、活動状況、停戦監視)、両国間の対話の促進、関係の安定化が主要任務活動開始後35年間、4回も戦争したりぃう国間の和平維持に貢献
12の要員派遣国から現在約2000名が活動しており、3個歩兵大隊、1個支援代替、沿岸紹介部隊(偵察ボート保有)、航空機部隊、文民監視団などによって構成されている

MFO2.jpg要員派遣国は米、英、加、豪、仏、伊、NZ、ノルウェー、チェコ、ウルグアイ、コロンビア、フィジー
本部はローマに所在し、エジプトとイスラエルにも事務所を置く。所属部隊の司令部は2015年以降の改編で、シナイ半島の南北に分かれたいたものを南部のシャルム・エル・シェイクに集約

2017年の主な活動実績
---文民監視ユニットによる検証24回、偵察を23回
---シナイ半島で両国間の会議を3回開催
---任務効率化のための遠隔監視サイトの再編成
---中東展開の国連休戦監視機構(UNTSO)との情報交換
●任務遂行の効率化に取り組み、1983年当時と比較し、人員規模を3割削減し、予算規模を1割削減
(ただし米ドルベースで予算規模の推移を見ると、1983年を100とすると、最高は84年の109、90-05年は最低で50、2018年は78レベルであり、継続して予算規模が縮小しているわけではない

MFO3.jpg予算拠出はエジプト、イスラエル、米国が同額で各20億円超でを拠出して全体の3割を賄い、その他を関係国が分担して賄っている
日本は1988年から資金援助を開始しているが、外務省資料は日本の支援金額が「90年代の5%以下の低下している」と指摘し、2018年度支出が約500万円であることから、当初は1億円程度を支援していたものと考えられる

日本の資金面での貢献度は、2002年度で2900万円で第7位の貢献度であったが、500万円となった現在では貢献度順位は公開されていない。外務省資料では、MFOは設立当時の関係国の思惑等から国連枠組みにならなかったことから、より多くの国からの支援を得ることを重視しており、少ない額でもMFOから評価されているが、これ以上の金額低下は避けるべきと記されている

●外務省資料では、日本からの拠出金は「文民職員給与」と「食糧調達」に限定して使用されるとなっているが、MFOのwebサイトでは、日本が「Force Protection Fund」の2割程度を拠出していることになっており、この2つの資料の関係はよく分からない(もう一つの区分のOperational Budgetでは日本の割合は読み取れないほど小さい)
→ http://mfo.org/en/mfo-in-numbers 

MFO事務局長(現在は米国の外交官で、イラクやエジプトの大使経験者)が2015年から毎年訪日し、活動状況等について日本に説明し、意見交換を日本側と行っている
●現在のMFO指揮官は豪州陸軍少将で、ティモールで多国籍部隊指揮官の経験がある
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活動の細部はMFOのwebサイトをのぞいていただければともいます

MFO4.jpg例えばフィジーからの派遣部隊は、シナイ半島で武器(小銃等)を提供され、訓練を受け、武器を帰国時に持ち帰って自国で活用できる制度になっているような話を聞いた覚えがあります
先進国は沿岸監視ボートや偵察航空機、指揮統制通信インフラ、装備の維持整備要員、文民監視員を提供し、その他の国はエリアを分担して駐屯しているイメージかと思います

恐らく、事務総長が毎年訪日するようになった2015年以降、支援金の減額に伴い「人的貢献」の要望が繰り返し出されたものと邪推します。
シャルム・エル・シェイクはシナイ半島南端付近の『リゾート地』で、ソフトターゲットとしての観光施設を狙ったテロが時々報じられています。派遣される方は余暇の時間も気を付けて頑張っていただきたいです

MFOのwebサイト
http://mfo.org/en

参考にした外務省の公開予算関連資料
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000392519.pdf

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