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南極を巡る米中露の動きを垣間見る [安全保障全般]

南極条約で軍事利用は禁止されているが
科学調査の名目で各国が条約崩壊に備えた活動を
衛星通信の受信器設置が重要な意味を

Antarctica3.jpg22日付Military.comが米軍兵士4名による南極大陸での活動を取り上つつ1961年の南極条約で大陸の軍事化や兵器の使用が禁じられている中で、豊富な資源など大きな可能性を秘めた未開の大陸で、軍人も含めた中露を含む諸国の活動が活発化している様子を紹介していますので、昨年10月のABC報道と併せてご紹介します

南極大陸に関しては、7か国が領有権を主張(豪州、アルゼンチン、チリ、仏、英、ノルウェー、NZ)しているようですが、1961年発効の南極条約で領有権を設定せず、以下のような活動の枠組みを設定しました
(ウィキペディア南極条約→https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E6%A5%B5%E6%9D%A1%E7%B4%84

・南極地域の平和的利用(軍事的利用の禁止
科学的調査の自由と国際協力
・南極地域における領土主権、請求権の凍結
核爆発、放射性廃棄物の処分の禁止
・条約の遵守を確保するための監視員の設置
・南極地域に関する共通の利害関係のある事項についての協議の実施
・条約の原則および目的を促進するための措置を立案する会合の開催

Antarctica.jpg軍事的利用の禁止(軍事化や兵器使用の禁止:bans militarization and weapons use)を定めていますが、軍人や装備の侵入を禁じてはおらず、軍人が科学調査を支援するとの目的で活動することを妨げるものではありません

また議定書において経済的な資源の発掘や採掘は2048年まで一切が禁止されており、この効果が切れる2048年に再び議論することが少なくとも現時点で決まっているようで、少なくとも豪州やNZが現状維持を主張する一方で、中国やロシアは開発を主張しています。開発主張のメンツからしても、いつ抜け駆けが始まってもおかしくないですね・・・

米軍人4名のチームが通信インフラ試験に
Antarctica2.jpg●2018年12月、米州空軍の第263戦闘通信隊の下士官4名が2週間に渡り、「Operation Deep Freeze」作戦の一環として、衛星通信や衛星通信ネットワークの構成試験を行った
●参加した軍曹は「戦術衛星通信ターミナル装置を活用して、データ容量や密度を上げた戦闘通信が局所的や一時的に提供可能か、様々な試験を行った」と語っている

●また「極地の孤立した場所にSATCOMを設置して有効に活用できるかを確認し、同時に、2021年まで継続して通信を継続できる手法の検討も行っている」とも述べた
●試験が行われた拠点は、米国がMcMurdo Stationとして維持している施設の一部で、同基地はまた、軍兵士を含む国際協力チームが「National Science Foundation's Polar Program research」の名のもとに、毎年南極点探査を行っている拠点でもある

Antarctica5.jpg●米国のMcMurdo Stationには、南極の夏に当たる10月から2月の間に約1000名の関係者が滞在し、種々の活動を行っている。なお米軍人4名の試験結果については公表されていない
●他国も活動を活発化させており、中国とロシアも含まれている。

例えば中国は、McMurdo Station北西の豪州が領有を主張している地域で活発化しており、こちらも通信ネットワークの改善試験を開始しているようである
●NZの専門家は「2020年までに中国やロシアのGPSシステムが米国と技術的に肩を並べることになる」と述べており、また南極大陸に設置される受信装置が、中国やロシアによる軍事活動の範囲を世界中に拡大するだろうと述べている

豪州発ABCニュースは昨年10月
過去10年間で、特に中国とロシアは南極での活動を活発化(又は復活)させている。
Antarctica4.jpg中国の活動のほとんどは豪州が領有権を主張しているエリアで行われ、豪州はその活動を把握している。
中国は南極大陸に、3つの恒久基地と2つの簡易基地、そして3つの飛行場を維持している

●一方でロシアは、1820年に南極大陸を発見したと主張し、その後南極で長く活動している。一時は科学調査分野で世界のリーダーだったが、ソ連崩壊で資金が激減し、3つの基地を閉鎖した
しかしロシアは最近、再び難局に投資を再開し、科学調査と衛星通信受信機に焦点を置いている
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南極条約の正確な内容や、衛星通信に関する技術的な知識があれば、より突っ込んだ説明が可能でしょうが、知識不足で中途半端な説明になってしまいました

ご興味のある方は「南極」や「Antarctic Treaty」でググってください

それから、豪州は約2200億円をかけ、新型の南極砕氷艦(a new Antarctic icebreaker)を調達するようです。

関連のwebリンク
ウィキペディア南極条約https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E6%A5%B5%E6%9D%A1%E7%B4%84
外務省の南極条約解説https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/s_pole.html
各種百科事典の南極条約解説https://kotobank.jp/word/%E5%8D%97%E6%A5%B5%E6%9D%A1%E7%B4%84-108763

ウィキペディア南極の領有権主張
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E6%A5%B5%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E9%A0%98%E6%9C%89%E6%A8%A9%E4%B8%BB%E5%BC%B5%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7

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今後10年間の核兵器関連予算見積が23%増 [安全保障全般]

毎年5.5兆円(日本の防衛費と同レベル)が必要との見積
2年ごとの見積も、毎回15-20%上昇

CBO NCW.jpg24日、米議会予算室(CBO:Congressional Budget Office)が今後10年間(2019–2028年)に米国核戦力の維持&近代化に必要な経費を見積もって公表しました。この見積もりは隔年で行われているもので、2015年と2017年にも公開されています。

見積の結果、今後10年間で約55兆円が必要とされ、平均すると毎年の国防費の約6%を核兵器関連経費が占めることになります。
またこの約55兆円は、2017年見積の約45兆円から23%増加しており、2017年見積も2015年見積から15%アップした経緯を経ており、その急増ぶりが米議会で早くも注目を集めています

2018年にトランプ政権が核態勢見直しNPRを発表し、新たな計画として盛り込んだ低出力潜水艦発射型弾道ミサイル搭載核兵器、艦艇発射巡航ミサイル搭載核兵器、プルトニウム製造施設増設については、今後10年間で約1.9兆円と試算されています。

B-2takeoff.jpg一方でロシアの欧州正面への中距離巡航ミサイル配備を受け、米国がINF全廃条約を脱退した場合の新型兵器開発や配備の経費は見積不能で含まれておらず、またNPRが示したB83核爆弾の延命措置経費についても、細部不明で見積には含まれていません

なおCBO見積では、個々の見積額を合計後、過去の同種のプロジェクトの経年経費増加率を参考に、今後約10年間のトータル経費増加額を別途約6.8兆円と見積もって追加しているもも特徴です

下院で多数派を占める民主党議員達は、到底受け入れ不可能な数字であり、今こそ核兵器削減を議論すべきだと訴え、核兵器や関連施設の近代化を強く推してきた共和党の有力議員でさえも、政党間の論点となるだろうとコメントしています

以下は項目別10年間経費見積もり
●$234 billionを戦略核兵器運搬システムと関連兵器に
戦略原潜、ICBM、長距離爆撃機と搭載核兵器、更にエネルギー省が担当する潜水艦用原子炉経費

●$15 billionを戦術運搬システムと関連兵器に
戦術航空機と関連兵器、新しい潜水艦発射巡航ミサイル

●$106 billionをエネルギー省の施設経費
核兵器関連研究所と製造整備施設(核兵器の管理保管も含む)
核兵器のメンテナンスと近代化が先送りされ蓄積中

●$77 billionを核兵器関連の指揮統制システム
指揮統制には早期警戒情報の伝達システムを含む

●残りの$62 billionはCBO予想のコスト増加額
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CBOの見積もり現物(12ページ)
https://www.cbo.gov/system/files?file=2019-01/54914-NuclearForces.pdf

SSBN2.jpg細部の見積もりや、2017年見積もりからの変化等については、現物レポートや米空軍協会web記事をご覧いただければ幸いです。

米軍ほどの数量の核兵器を保有しなくても、核兵器保有に関する基礎的な固定費は、核兵器の製造・維持整備施設や関連研究機関経費、指揮統制システム、関連人員の経費等で膨大な額になることをザックリとでも頭に置いてください。

2017年のCBO見積もり(30年間対象)記事
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02-1

「2017年世界の核兵器動向」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-20

米国核兵器を巡る動向
「核兵器輸送がNo2任務」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-11
「ついにINF条約破棄へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「サイバー時代の核管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02
「リーク版:核態勢見直しNPR」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13
「議会見積:今後30年で140兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02-1

21世紀の抑止概念を目指す
「3本柱はほんとに必要か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03

「相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25

NPR(核態勢見直し)関連
「次期ICBMと核巡航ミサイルの企業選定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-27-1
「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1
「トランプ政権NPRの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09

「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「NPR発表3回目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-02
「バイデンが大幅核削減を公言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-19

戦術核兵器とF-35記事など
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ICBM後継に関する記事
「初のオーバーホールICBM基地」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-15
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1

オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

「RAND:中国の核兵器戦略に変化の兆し」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-19

三浦瑠璃女史の北朝鮮と核持ち込み
http://lullymiura.hatenadiary.jp/entry/2017/04/24/000359

ロシアのINF条約破り
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

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整備員からサイバーに職種転換した兵士が大活躍 [サイバーと宇宙]

米空軍が職種転換でサイバー要員養成を検討
整備員出身者がサイバークラスで他を圧倒

Cyber-EX.jpg17日、米空軍の州空軍幹部がペンタゴンで記者団に対し、輸送機の機種更新に伴い余剰人員となった整備員の一部をサイバー分野に職種転換させたところ、サイバーコマンドから「こんな人材がほしかった!」と言われるほどの優秀なサイバー部隊員になっていると語りました

米軍は民間企業とのサイバー人材確保競争において、給与水準や勤務環境の差から、民間企業に不利な立場にあり、ますます部隊での需要が高まっているサイバー部隊兵士の確保に大変苦労しており、その対策の一環として、現在米軍内に存在する他職種の人材から、必要な資質を持った兵士を探す試みを行っているようです。

必ずしも学生時代にコンピュータ学位を取得した者でなくても、採用時にプログラム技術者経験がなくても、米軍内の他の職種で組織人として仕事をこなしてきた人材が、失礼ながら「オタクぞろい」のサイバー部隊でも頭角を現すとのお話は、何かうれしい話ですのでご紹介します

以下の記事が取り上げる整備員からの転換だけが好成績なのか、他の職種からの転換も試しているのか、その辺りはよくわかりませんが、「灯台下暗し」の例え通り、案外、人は融通が利くのかもしれません

17日付DEfense-News記事によれば
maintainers2.jpg●メリーランド州州空軍第175航空団の副司令官であるJori Robinson大佐は記者団に対し、「我々は一般に物事を直線的に考えがちだ。サイバー部隊にはコンピュータの学位やプログラム経験のある人材が必要だと考えがちで、そのような経歴の背景が良いサイバー戦士を生む要素だと見なしている」と語り始めたが、
米空軍が今、目の当たりにしているのは、「コンピュータやプログラムの学位や経験が、必ずしもサイバー作戦を学ぶに必要な能力とは限らない・・・という事実である」と説明した

●そして、「最近のいくつかの経験や調査から明らかになってきたのは、例えば、過去15年間に渡りペンチやスパナをもって航空機のボルトを扱っていた整備員の例だ。彼らは実際にサイバー分野で優れた能力を持ち、ネットワークを理解して優れた仕事を成し遂げられることを証明しているのである」とも述べ、
●更に、「米空軍が保有する関連人材の中でも、最も熟達して素晴らしいサイバーオペレーターに成長して見せてくれている」、「我々は元整備員をサイバー職に転換させたが、(学位や経験を持つ)同期生を追い抜いている。サイバーコマンドが組織にほしいと探し求めていた人材に、彼らがぴったりだったのだ」とうれしい想定外を興奮した様子で記者団に説明した

maintainers3.jpg●またウエストバージニア州空軍のサイバー担当Jody Ogle中佐も、C-5輸送機からC-17輸送機への機種更新を契機に生じた余剰の整備員を、「民間に教育委託して職種転換を図ったところ、大成功を収めている」と語り、具体的に50名の元整備員をサイバー職に転換させたと付け加えた
●同中佐は、「サイバーは防御だけではない。ドメインを構成するなら、情報技術の側面もあり、ITメンテナンスの側面も当然考えなくてはならないのである」とも表現している
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最後の中佐の発言だけに注目すると、元航空機整備員が職種転換し、サイバー部隊のシステムメンテナンスを担当しているようにも聞こえますが、決してそれだけではないと思います

Cyber College2.jpg最先端のアルゴリズムやプログラム解析を行うポストには学位保有者や経験者が必要でしょうが、根気のいる日常の対応や組織的活動には、現場でチームとして作戦機を扱ってきた人材が必要で、元整備員の中でプログラムやPCにアレルギーが無ければ貴重な戦力になりえるのでしょう・・・

サイバーコマンドの人材募集も狙った記者会見の側面もあるでしょうが、「人の可能性を先入観で狭めてはいけない」典型的な例のような気もします・・・。続報に期待いたしましょう

サイバーと兵器管理
「市販UAVの使用停止へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-07-1
「サイバーコマンドの課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-04
「サイバー時代の核兵器管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02
「人材集めの苦悩」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-31
「米空軍ネットをハッカーがチェック」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23
「米国政府サイバー予算の9割は攻撃用!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-31
「装備品のサイバー脆弱性に対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-02

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米陸軍が射程1000nmの「砲」開発へ [Joint・統合参謀本部]

昨年9月に担当将軍がちらりと言及
今度は陸軍長官が優先目標だとちらり発言

Esper Army.jpg24日、Mark Esper陸軍長官がペンタゴンで記者団と懇談し、射程1000nm(1864㎞)の「大砲:artillery cannon」の開発に取り組んでいることに改めて言及しました。

この1000nm大砲については、米陸軍内に新たに編成された「Army Futures Command」のJohn Murray司令官が昨年9月、下院の委員会で「Strategic Long Range Cannon」との名称で検討している(looking at)と言及し、超超音速兵器に並ぶ優先度だと表現したことから注目を集めたものです

地上火力への期待は、前の太平洋軍司令官(現駐韓米国大使)ハリス大将も、南シナ海等でA2ADを図る中国正面での必要性と重要性を繰り返し訴えてきたところですが、ここにきて、欧州正面でロシアが中距離弾道ミサイルを配備し、米国がINF全廃要約から脱退目前となる中、欧州正面でも必要性が高まっている背景があります

具体的な1000nm砲の性能や開発計画などは全く明らかになっていませんが南シナ海やロシアとの脅威に関する表現も交えて陸軍長官が言及していますので、時代の必要性が生む兵器の典型として取り上げておきます

24日付Military.com記事によれば
1000 miles Cannon2.jpg●24日、Mark Esper陸軍長官がペンタゴンで記者団と懇談し、この1000nm砲の必要性に疑問を持つ記者団に対し、戦略的または戦術的な長距離砲として他軍腫の支援任務にも活用できるし、米陸軍が正常にたどり着く前に目標や脅威のいくつかを排除して置くことも可能であると語った
●更に同長官は、「戦術レベルでは、我々は相手の火砲を射程や組織で凌駕する必要がある」、「槍が考案されたのは、刀を射程距離・攻撃可能範囲で上回るためだ」、「相手から反撃を受けずに、相手を攻撃できることを常に追求してきた」とも説明した

●また「これが射程延伸砲が我々に与えてくれるもので、ロシア軍と対峙した場合などで必要なものだ」、「空軍の第5世代機F-35が、第4世代機が侵攻する前に敵脅威を減らすため投入されるように、射程延伸砲が地上部隊の脅威を除去しておくのだ」とも記者団に語った
●加えて長官は、「米海軍艦隊が中国海軍アセットの脅威で南シナ海に立ち入れない場合でも、地上から(射程延長砲で)対応可能になる」との例も用いた。

1000 miles Cannon.jpg●なおこの「Strategic Long Range Cannon」に関しては、昨年9月13日、Army Futures CommandのJohn Murray司令官が下院で証言し、米陸軍の装備近代化の優先事項の一つで、新設のコマンドとして、必要に迫られているこのような技術をスムーズに獲得できるような懸命な手法を探求していると述べている
●そして「我がコマンドは、超超音速兵器を実現する事に懸命に取り組んでおり、また射程1000nmを想定しているStrategic Long Range Cannonについても検討している」と言及したが、同長射程砲を配備する時期等については何も語らなかった
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「Cannon」ですから「砲」ですが、射程1000nm(1852㎞)と言うと、東京から上海までの距離らしいです。

SouthChina-sea3.jpg第一列島戦から中国大陸が約900㎞の500nmですから、第一列島戦の倍の距離、南シナ海でいうと・・・フィリピンのマニラとベトナムの最短距離が1200㎞、バンコクからシンガポールが1500㎞くらいの感覚です

本当に実現可能なんでしょうか? 移動可能な大砲なんでしょうか? もしかして、ミサイルみたいな砲弾だったりして・・・

地上部隊にA2AD網を期待
「RIMPACで日米陸軍が訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

Cross-domain能力を追求
「ハリス長官がcross-domainを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-05
「副長官が米空軍の尻を叩く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28

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零細脆弱な軍事産業に米政府が投資へ [安全保障全般]

まず弾薬関連メーカーを対象に
化学物質で中国企業依存も深刻化

Navarro.jpg15日、米大統領の通商産業担当補佐官のPeter Navarro氏が独占インタビューに答え大統領が命じて昨年10月に調査が行われた軍需産業の苦境を調べた「defense-industrial base study」結果に基づき、対策の一つとして、弾薬部品や化学物質関連の零細な企業のために約270億円の資金を準備し、審査を経て事業に政府資金で投資を行うと明らかにしました

昨年10月の調査結果、過去2-3年に国防省は大量の爆弾やミサイルを発注しているものの、その調達は過去約20年波が激しく、新たな開発業務もない状態に企業が置かれていることが判明しています。

しかも単一の製造元や納入先しかない極めて不安定な状態に置かれている企業が多いことから、近年事業から撤退を表明または恐れが高い中小の企業が増加し、既に中国を含む他国企業に依存しなければならない分野も急増していることが明らかになっています

なお既に、昨年10月の報告発表直後に、約70億円をガン部品製造企業に、また1億円がアブラハム戦車企業に投資することが発表されているようです

16日付Defense-News記事によれば
36th Munitions2.jpg●同補佐官は、トランプ大統領の国家安全保障戦略に示されているように、経済安全保障自体が国家安全保障に直結すると述べ、弾薬製造企業をテコ入れすることは、軍事力だけでなく、雇用を増加して米国全体を支えることにつながると説明
●更に、軍需産業政策の点で、トランプ大統領はアイゼンハワー大統領以来、最も軍需産業に関心を持って政策に取り組んでいる大統領であると訴えた

●また15日に大統領が署名した4つの文書で、「先行核物資、不活性物質、エネルギー物質、化学物質製造への最新技術」関連のサプライチェーン強化をホワイトハウスが打ち出したところだが、国防省幹部は昨年指摘された300の脆弱産業基盤分野の1/3に今年対応するとも語っている
●なお同補佐官は、資金投入は法律「Defense Production Act’s Title III」に基づいて行われ、決して資金を広くばらまいて企業の運用資金を手当てするのではなく、応募のあった企業やプロジェクトを審査して「ベンチャー投資や事業シードへの投資」に似た性格の資金投入を行うと説明している

●一方で、弾薬製造関連のどの企業がどの程度の政府資金を得られるかについて、同補佐官も国防省関係者も言及せず資金投入の総額は1000億円にはならないが、数百億円の単位だと全体像を語り、調達担当次官は昨年12月、1年以内に270億円を投入すると述べていたところである

F-35 sunset.jpg●同補佐官は、「60~80年間も同じ製造技術や設備を使用している企業に、先端製造技術導入を促進したい」と希望を語っている
●また、供給元が1企業しかない固体ロケットモーター、熱バッテリー、小型タービンエンジンの問題や、弾薬の2次3次メーカニーになるとその98%が唯一の供給企業である実態も悩ましい課題である

海外依存も問題である。例えば、兵器の絶縁(insulation of weapons)に使用するDechlorane Plus 25は、ベルギー企業が唯一の供給元で、その原材料化学物質を製造する中国企業が事業からの撤退を表明している始末である
●更に、空対空ミサイルの推進剤に含まれるDimeryl diisocyanateも供給元が一つだが、既に国防省に製造中止を申し出ている

●同補佐官は対中貿易に関して強硬論者だが、化学物質に関して米国が中国に大きく依存していることを大きな課題と認識している
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36th Munitions4.jpg一応「ベンチャー投資や事業シードへの投資」に似た性格の資金投入との説明ですが、零細で脆弱な軍需企業の実態を考えれば、実態としては運転資金やつなぎ資金の提供に近い資金提供になるような気がします

これは重要な施策です米国だけでなく日本や西側各国で同様の問題が見られ、各国政府や国防関係者は対応に苦慮している中ですので、そのお手並みに注目したいと思います

この分野ではトランプ頑張れ!・・・です

軍需産業関連の記事
「戦闘機稼働率8割への課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-09
「新たな武器輸出促進策」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-10-2
「国防省の軍需産業レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-1
「部品枯渇対策に製造権取得へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-18

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ゆったり慎重検討して星国もF-35購入か [亡国のF-35]

まず少数機を購入して本格購入可否を分析とか

Sinogapre DM.jpg18日、シンガポールの国防長官が声明を発表し、同空軍が保有する約60機のF-16の後継として、技術的評価の結果F-35が最も適しているとの結論に至ったと明らかにしました。

ただし同国防相は、「だからF-35の何型を何機購入する方向に決定した」とは言わず、今後F-35を少数機購入して能力を確認してから本格購入の判断をすると表現し、更にその前に時間をかけて米国側と色々協議するとしています

F-16 Sinogapre2.jpg同国が保有するF-16は「F-16C/D/D+」で、最も古い機体でも1998年製造だということもあり、シンガポールはF-16の退役開始を2030年と想定しており、それまでに後継機がある程度戦力化されていれば良いとのスケジュール感です

なんともうらやましい、余裕の機種選定スケジュールですが、これもこまめに戦闘機のアップグレードを進めてきた同国の努力の成果とも考えられましょう。 なんと言って現在でも、2023年完成を目指し、主要な同国F-16は「F-16V standard」への近代化改修が進行中とのことですから・・・

18日付Defense-News記事によれば
同国は2003年からF-35計画の「security cooperative partner」となっているが、具体的に同機購入検討を明らかにしたのは2013年になってからである。
そしてその後は公式な発表はほとんどなく、垂直離着陸型のF-35Bに同国が関心を持っており、購入機数は40-60機、または2-3個飛行隊分だとの報道があったくらいである

F-16 Sinogapre.jpg18日もNg Eng Hen国防相は、少数機購入するF-35の型式や具体的な機数には一切言及せず、技術的評価の結果、F-35がF-16の「the most suitable replacement」 だとのみ述べ、
今後米国側の関係機関と、9-12か月間かけて、少数機購入の細部について協議すると述べるにとどめた。なお米国からの調達形式はFMSになろうと考えられている

●同国が保有するF-16は「F-16C/D/D+」で、40機のBlock 52 C/D型とより最新の20機のF-16D+ Advanced Block 52sで構成されている。
Block 52 C/D型の中の最も古い12機は、一部が操縦者養成用の機体として米国アリゾナ州のLuke空軍基地に配備され、同基地の米星混合部隊においてシンガポール操縦者の養成訓練に使用されている。
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Sinogapre D.jpgマラッカ海峡を臨む要衝の都市国家のような小国で、「明るく豊かな北朝鮮」とも表現される強力な国家統制下にある極めて特殊な国ですが、まだまだ落ち着かないF-35開発をゆったり見守りつつ、時間をかけて購入を検討するうらやましい対応です

カナダのように、いろいろ理由をつけて購入決定を延期し、ペナルティーを逃れる戦術もありますが、こまめに持ち駒の手入れをして慎重に機種更新を検討するシンガポールの方式は、一つの理想かもしれません

米朝首脳会談を自腹を切って引き受ける外交にも機敏な国ですから、米国とも水面下でいろいろあるのでしょうが、極めて興味深い国です

シンガポールの話題
「2015年シャングリラ会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-28
「飛行船レーダー配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-04
「F-35交渉が難航?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-26
「ドイツ製潜水艦2隻を契約」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-03
「米との戦略枠組みが難航?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-06

F-35購入国は様々
カナダ首相がF-35と戦う
「やり直し機種選定開始」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-03
「カナダが中古の豪州FA-18購入へ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-10
「米加の航空機貿易戦争に英が参戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-16-1
「第2弾:米カナダ防衛貿易戦争」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-04
「痛快:カナダがF-35購入5年延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-23

イタリア関連の記事
「調達ペースダウン」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-10
「イタリアに反F-35政権誕生」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26
「イタリア工業会は米に騙された」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-11
「北極海での通信とMUOS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-25-1

デンマークとF-35
「27機調達か?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-16
「未だ未定:デンマークの苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-07
「事例デンマークの悩み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-07

ベルギー(13番目の購入国)
「34機購入を公式決定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-03

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MDRが要求:F-35でICBM迎撃の可能性検討 [安全保障全般]

なぜか国防省開発担当次官は自信ありげで・・・
多くの専門家がその実現可能性に疑問符・・
日本は巻き込まれないように要注意

F-35 Sun-Set.jpg17日に米政府が発表したミサイル防衛見直し(MDR)が、米空軍とミサイル防衛庁(MDA)に対し、6か月以内にミサイル防衛にF-35を如何に組み込むかについて報告するよう求めている件に関し、米軍事メディアが、Mike Griffin開発担当次官と専門家の意見を紹介しています

過去から何度か話題にされ、民間研究機関の検討レポートも存在するようですが、多くがその実行可能性や効果、更に費用対効果の面から否定的なF-35の活用について、なぜ再び取り上げられたのか良くわからないのですが、メインの対象が北朝鮮のICBMや弾道ミサイルであり、メディア記事の概要をご紹介します

まさかとは思いますが、日本が増強しようとしているF-35が巻き込まれることが無いように切に願いつつ・・・

17日付Defense-News記事によれば
Griffin.jpg●MDRは本件に関し、「F-35は高性能のセンサーを装備しており、発射段階(ブースとフェーズ)のミサイルを探知でき、ミサイルの位置を把握できる」、「F-35は巡航ミサイルの探知と迎撃が現在でも可能だが、将来的には、敵対者の弾道ミサイルを撃墜可能な新たな又は改良した迎撃体を装備し、米国の防衛や攻撃任務を強化するため、迅速に対象地域に派遣可能となるだろう」と述べている
●そしてMDRは今後半年間で、米空軍とミサイル防衛庁に、どのようにしたらF-35を最適な形でミサイル防衛に取り込むことが出来るか報告するよう求めている

●また17日、「強情な」本構想支持者である国防省Mike Griffin開発担当次官も記者団に対し、F-35の活用が作戦面で有効で、かつ費用対効果にも優れていると語った
●同次官は「ある特定の地域では(北朝鮮が頭に浮かぶが・・・)、我々はこの構想が有効で低コストだと考えている。空対空要撃と呼ぶのか、センサーと発射プラットフォームの両方の能力を備えた先進型機に新たな兵器を搭載する方向だ」と語った

AIM-120D-3.jpg●更に同次官は、「我々はMDRが示しているように、もう一度検討しなおすのだ。私が確認した最近の複数の分析では、改めて検討すべきとの結果が出ている」とも表現した
●MDRは新型と改良版の要撃体を検討対象と記しているが、同次官はAMRAAMを改良した要撃体では期待する任務を果たせないだろうとも語った

●検討の結果、例え国防省がF-35による迎撃をあきらめたとしても、同機が装備する多様なセンサーの活用はさらに追及するだろうとMDA長官は述べている

●一方、同次官の楽観的とも見える発言に対し、専門家は懐疑的である。Kingston Reif氏は2012年の科学アカデミーのレポートを示しつつ、「ICBMの短いブーストフェーズ間に、射程距離の短い航空アセット発射兵器で撃墜するには、同アセットがICBM発射地点の近傍上空に在空している必要があり、かつ迎撃ミサイルにはより燃焼速度の速い固体燃料が必要だ」と述べ、F-35活用に否定的
●端的に言えば、F-35のような貴重なアセットを、敵の領域近傍に常時在空させて待ち構えるようなやり方は、極めて非効率で高価であるとともに、F-35を他の任務から引きはがす点でも不適当な構想だとの指摘で、この指摘に同調する専門家が多い

Griffin2.jpgGriffin次官は、何を根拠にF-35の活用が「low cost」で、何を根拠に17日に記者団に自信を示したのか説明していないが、軍事ウォッチャーの中には、国防省がMDへのF-35活用をいつか持ち出すと睨んでいたものもいる

共和党議員の中には、2017年のロスアラモス研究所レポートがF-35によるICBM撃墜の可能性を示していると主張する者もいる
●また、F-35の「distributed aperture system」を活用した2014年のMDAとNorthrop Grummanの研究が、2機以上のF-35の同システムデータを融合し、弾道ミサイルの位置を追尾しようと試みた試験を持ち出す者もいる
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Griffin次官の17日発言の根拠については不明ですが、今後様々に報道されるでしょう

出ましたFNNの解説記事
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190120-00010000-fnnprimev-int&p=1

また、米空軍が本気で取り組むとは考えにくいのですが、いい加減に検討し、日本や韓国に押し付けることが無いよう願うばかりです・・・

MDR関連の記事
「やっと発表MDR」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-19
「MDRはまだなのか?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25-1
「米ミサイル防衛の目指すべき道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「戦略国防次官にMD伝道者」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-1
「BMDRはMDRに変更し春発表予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24-1
「米ミサイル防衛庁の2017年予算」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-12

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やっとミサイル防衛見直しMDRを発表&トランプ演説 [安全保障全般]

米国が破産しないように祈るばかり・・

MDR.jpg17日、トランプ大統領は国防省で、MDRは今後5~10年間のMDシステムの指針を示したミサイル防衛見直しについて演説し、米国のBMD努力に依存している同盟国等に負担を求めていく考えを再び強調しました

この見直しは、MDに慎重な姿勢を示したオバマ前政権時代の2010年以来9年ぶりとなるものです。なお今回の見直しは2018年中に発表する予定でしたが、対象国による新型兵器の開発が飛躍的の進んでいることや、厳しい財政背景もあり、米国政府内dの調整に時間を要し繰り返し発表が延期されてきました。

これまでの歴代政権は、北朝鮮とイランの弾道ミサイルを脅威の対象に据え、米国のミサイル防衛は中露に対抗するものではないと主張して来ましたが、今回は、弾道ミサイルだけでなく巡航ミサイルや、中露が開発を手がける超超音速兵器や高性能巡航ミサイルなど幅広い脅威に対象拡大を明確にし、「弾道ミサイル防衛見直し(BMDR)」という従来の名称を、「弾道ミサイル」との限定をなくし「MDR:ミサイル防衛見直し」へと改めています。

各種報道からつまみ食いして張り合わせで・・・
Hypersonic8.jpg●2010年のBMDR以降、北朝鮮が米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験に成功した。また米国は、ロシアが中距離核戦力(INF)全廃条約に違反する中距離ミサイルを実戦配備したとも主張。さらに、中国も「空母キラー」と呼ばれるミサイルを配備するなど専門家が「ミサイル・ルネサンス」と呼ぶほど状況は激変している。
●更に、中露が音速の5倍以上で飛行する極超音速兵器の開発を急ピッチで進め、ロシアは2019年内に実戦配備すると発表し、中国も完成まじかといわれるなどミサイル開発競争が激化する中で、圧倒的な軍事的優位を保とうとミサイル防衛態勢の強化を目指す。

●トランプ大統領は演説で、「米国の目的はシンプルだ。いかなる場所からいつ米国にミサイルが発射されても感知し、破壊することを確実にする」、「ミサイル防衛を改良し、近代化しなければならない。脅威が急速に進化する時代にあって、我々のミサイル防衛能力は無敵でなければならない」と訴え、これまでは弾道ミサイル以外の新型兵器に対処する包括的戦略を欠いていたと指摘し、「巡航ミサイルや極超音速兵器を含む、あらゆるミサイルから防衛する態勢を整える」と強調した

●また、「(ミサイル防衛システムの宇宙展開は)米国の国防における非常に大きな部分を占めることになる」と指摘し、宇宙配備型センサーなど新技術の開発に注力すると述べ、「敵対国家(の技術開発)と同じペースを保つだけでは不十分だ。全てにおいて上回らなければならない」と訴えた
Aegis FMS.jpg●米政府高官は「(ミサイルの探知、追跡、識別能力向上のため)宇宙は次世代のMDのカギとなる」と説明、米本土や日本などの同盟国などを守るため、超超音速ミサイルに対応する柔軟なセンサーや、ミサイル追跡用のセンサーを宇宙に多数配備する方針を示している。また、ミサイルを打ち上げ(ブースト)段階で撃墜する強力なレーザー兵器の開発と無人機への搭載なども見据えている。

●トランプ大統領はまた、「発射の有無にかかわらず、米国をターゲットとした」ミサイル攻撃に対する防衛に制限は課さないと言及。「運任せにはしない。行動を起こすのみだ」と表現した。なお、米政府は核兵器が中露の抑止力になると期待しており、MDRはこの点を強調。米国は大国との戦争になった場合、地上配備型ミッドコース防衛システム(GMD)を制限なく使用する意向を示している。

ロシアや中国は、米国が進めるMDは両国が保有する「ICBMなどを無力化するのが狙い」と強く警戒、ロシア上院のボンダレフ国防・安全保障委員長は、米国の新たなミサイル防衛戦略が世界的な緊張を高めるとの見方を示した。

対象国に関するトランプ大統領の言及(朝日新聞より)
missile-salbo.jpg●トランプ大統領はイランと北朝鮮のミサイルを脅威として直接言及することは避けたものの、MDRは「北朝鮮との和平構築に向けた新たな可能性が開かれたものの、北朝鮮は引き続き深刻な脅威であり、米国は引き続き警戒する必要がある」と指摘した。
●MDRではイランが中東最大の弾道ミサイルを所有していると指摘し、ロシア、中国の攻撃能力の向上についても脅威と強調した。
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レーガン大統領時代には、ソ連がスターウォーズ構想がらみの軍拡競争で破産しましたが、この2019MDRの方向性をそのまま実現すれば、米国が破産するのでは・・・と気になります

トランプ大統領やMDRを主導した国防省の戦略担当国防次官が、費用面をどのように整理しているのか、国防費全体の視点から伺ってみたいものです。

超超音速兵器関連の記事
「ロシアが超超音速兵器試験に成功」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-27
「日本に探知追尾レーダー配備?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-24
「LRDRレーダー開発が順調」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-10
「グリフィン局長の発言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-1

「米空軍が1千億円で」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-1
「同兵器は防御不可能」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-21-1
「ロシアが新型核兵器続々開発と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-1
「中国が超超音速兵器で優位」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-27-1

MDR関連の記事
「MDRはまだなのか?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25-1
「米ミサイル防衛の目指すべき道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「戦略国防次官にMD伝道者」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-1
「BMDRはMDRに変更し春発表予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24-1
「米ミサイル防衛庁の2017年予算」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-12

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DIAが初の公開版中国軍事力分析 [米国防省高官]

中国軍人が自信をつけてきていることが最も心配
Shanahan臨時長官が “China, China, China.”と連呼

DIA china.jpg15日、DIA(Defense Intelligence Agency)が、初めて公開版の中国軍分析レポートを発表するにあたり記者会見を開き超超音速兵器や新型戦略爆撃機などなどの最新アセットに注目が集まる中、真にDIA分析官が恐れるのは、中国軍人が自信をつけ、地域紛争に対し前のめりになりつつあることだと訴えました

中国軍事力に関する国防省のレポートといえば、毎年議会報告用に国防省として提出する報告書「中国の軍事力」が知られていますが、なぜDIAが「DIA 2019 China Military Power」なる新たなレポートを発表することになったのかは不明です。

しかし最近の国防省レポートの書きぶりが、「米国の手の内を知られたくない」「米国の分析結果を相手に知らせたくない」との観点から、よりぼんやりした書き方になっていることから、軍事情報分析の専門機関として、何か専門的な視点を打ち出したかったのかもしれません

だったら国防省レポートもはっきり書けばいいじゃないかと言われそうですが、その辺りは国防省内部の力学で、大人の事情があるのかもしれませんDIAレポートの表現に、以前の国防省「中国の軍事力」レポートの臭いを感じ、懐かしさを感じるので、そんな風に考えました

15日付Defense-News記事によれば
Taiwan-China.jpg●15日、同レポートの発表に先立ち、匿名のDIA分析官は記者団に対し、最も懸念すべき本レポートの結論は、中国政治指導層が中国軍の台湾進攻能力を間もなく信頼することになる点であると述べた
●この会見の数日前には、Shanahan臨時国防長官が長官として初の会議で、国防省にとって中国の脅威が第一の焦点だと述べ、 “China, China, China.”と3度繰り返したと言われており、タイミング的にも同レポートが注目を集めている

●分析官は「最も大きな懸念は、これまで中国軍は発展途上でまだぜい弱だと考えていた中国指導層が習近平に対し、中国軍には能力が備わってきたと進言する可能性が高くなりつつある点だ」と表現した
●また「多くの軍事技術が成熟し、軍の機構改革が効果を発揮し、中国軍がそれらを使いこなし始めていることが、中国が地域紛争に軍事力を投入する意思決定をより容易にしている点である」とも述べた

何を想定した軍近代化か
共産党中央軍事委員会3.jpg●DIAは中国の公式文献を基にした分析の結果として、中国の軍事力近代化は世界規模の大規模紛争を想定したものではなく、地域紛争の準備であるとし、「この枠組みにおいて、中国の自信と実力の伸びを背景にした中国の強気な姿勢が、時には米国の国益と反することになろう」と述べている
●特に中国軍事力近代化は台湾に焦点を置いており、他の場所で役に立たない短距離弾道ミサイル技術開発はその表れであるとも表現している。

●だた現時点では台湾を静観する姿勢を中国が取り、準備レベルも全面侵攻に備えるものではないが、状況が変われば、中国軍はそのための技術や兵器量を保持している
●分析官は「実際に中国が侵攻を判断する自信をいつ獲得するかはっきり言えないが、今日にでも彼らは命令可能だ。今の時点でそこまで自信を持っていないと思うが・・・」と語り、これは南シナ海や尖閣諸島にも当てはまるとも述べた
●更に中国は、ジブチの基地や外洋航海活動を増やしていることからも、世界にも触手を伸ばしている

軍事技術面からの視点
●中国軍のドクトリン変化は急激ではないが、新たな技術革新への投資は実を結び始めている。初の国産空母の2019年完成、H-20戦略爆撃機の開発、地上戦力のプロ戦力化など、陸海空全ての分野で成果が生まれ始めている
DF-21D 2.jpgいくつかの分野ではすでに米国以上の能力を備えており、その一番が超超音速兵器である。過去2年間で米国防省も同兵器の重要性を訴えてきているが、その背景には中国が同兵器で米国に先んじ、「弾道ミサイルの先端に取り付けて発射する方式で、配備直前の段階にある」ことがある

●また、米国やロシアがINF全廃条約に縛られて中距離弾道ミサイル保有を禁じられている中、中国がこの分野で最先端を走っている。更に対衛星兵器として、衛星妨害装置やビーム兵器だけでなく、運動エネルギー兵器でも足跡を残しており、更に高等な衛星運用を軌道上で実験している模様である
●分析官は「中国は包括的な対衛星能力構築に向け進んでおり、軌道上のすべてのシステムの脅威を構成しつつある。中国は宇宙アセットを米国の弱点とみなし、注力している。一方で中国自身も移駐への依存度を高めているが・・」と語っている
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読みにくい訳になってしまいましたが、雰囲気を感じて頂ければ幸いです

Shanahan臨時国防長官が長官として初の会議で、中国脅威が第一の焦点だとして、 “China, China, China.”と連呼したとか・・・。

優秀なボーイングのビジネスマンだった臨時長官です、トランプ大統領を後ろ盾に、シンプルにその方向に突っ走るのかもしれません。長期勤務になりそうな気もします・・・

関連の記事
「H-20初飛行間近?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-13
「イメージ映像:中国軍島嶼占領」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-06
「仰天:DF-26も空母キラー?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04
「驚異の対艦ミサイルYJ-18」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-30
「10分野で米軍と中国軍を比較」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-18
「大幅改良J-20が初飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-20

国防省「中国の軍事力」レポート関連記事
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1

おまけtwitterより
孫向文‏ @sun_koubun ·
中国の軍事力がアメリカを超えた部分があります
1)5Gネットワークによるサイバー攻撃
2)生体認識人工知能技術
3)長距離超音速巡航ミサイル
4)量子通信技術
5)宇宙兵器

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米空軍2トップ寄稿:北極圏と米空軍 [米空軍]

米空軍最初の大規模空輸と空爆作戦は北極圏だった

Arctic.jpg9日付Defense-Newsに、Wilson空軍長官とGoldfein空軍参謀総長が「Air power and the Arctic: The importance of projecting strength in the north」とのタイトルで寄稿し、北極圏での米空軍の活動の重要性を訴えています。

「冷戦終了時には、多くの人々は米本土北方国境の安全が確保されたと考えたであろうが、技術の発達を受け、敵対者はこの強固な国境を穴だらけにしようとしている・・・」との一文が示すように、敵対者から米国への最短距離の国境であり、また資源豊富な北極圏は新たなつばぜり合いの最前線となっています

恐らく関連予算が多く含まれているであろう2020年度予算案の2月公開を前に、その背景を説明し、関係者の理解を得ようとの狙いがあるものと邪推しておりますが、平易に米国と米軍にとっての北極圏領土の重要性を説明していますのでご紹介します

Air power and the Arctic:
The importance of projecting strength in the north

経緯と今の姿
Arctic rader.jpg●米空軍は半世紀以上にわたり北極海を飛行してきた。忘れられているが、米国が初めて大規模空輸や空爆を行ったのは、WW2時のアラスカに連なる島々への「Thousand-Mile War」である
●WW2で日本軍がアリューシャン列島を侵略する10年以上も前に、ミッチェル将軍は同列島での飛行場建設を議会に主張し、「アラスカを制する者は、世界を制する」と訴えた。当時でさえ北極圏は戦略的に重要で、ミッチェルの言葉はその重要性を裏付けている。たとえ最低限のインフラや、厳しい気象状況が軍の活動を制限していても

75年の時の経過を経て、北極圏の米国にとっての重要性は一層増している。北から接近する者に関しても、また米国の戦力投射の視点からしても、その重要性を誇張しすぎることはない
●同エリアにはカギとなるアセットが点在し、米空軍も、戦闘機や空中給油機基地から、北極圏を通過して向かってくるミサイルや航空機を監視するレーダーや宇宙監視システムを運用している
●一例として、2022年までには、北極圏で運用される戦闘機は、他のどの地域のアセットよりも最新型に更新される

時代の変化と他国の動き
FPS-115front.jpg冷戦終了時には、多くの人々は米本土北方国境の安全が確保されたと考え、凍結した広大な土地が米本土防衛に厚みを増してくれると見なしたであろうが、技術の発達を受け、敵対者はこの強固な国境を穴だらけにしようとしている
レアメタル、漁業資源、世界の1/5を占める石油天然ガス埋蔵量をはじめとする北極圏の豊富な天然資源は、米国だけでなく、多くの他国が注目している

ロシアはGDPの2割を生み出す北極圏の経済権益確保に乗り出しており、地域での軍事プレゼンス再構築に取り組んでいる。
中国は地域を「一帯一路」政策の一部と見なし、経済をテコに他の北極圏国家で経済プレゼンスを確立しつつある

米国と米軍の取り組み
Arctic Ace3.jpg●これらの変化に対応するため、昨年7月、当時のマティス国防長官が「米国は北極圏でのゲームに加わらねばならない:America’s got to up its game in the Arctic」と述た。
●米空軍は包括的な北極戦略を検討中で、新たなNDS目的を達成する能力を確保する必要がある。我々は他パワーの侵略を抑止し、我が権益を守る体制を整えねばならない

●米空軍は、北からのミサイルや爆撃機からの防衛のため、多くをカナダと協力運用している50以上のレーダーの近代化を進めている。また北部の基地は、北極圏にあらゆる場所に迅速に航空機を派遣する重要な基盤である
●米空軍は最近、グリーンランドの宇宙監視アセットを更新した。これは米国で最も北にある米国拠点である。更に、北極圏の厳しい環境での活動に備える国防省で最も古いサバイバル訓練施設やそり付き航空機の運用を維持している

●これらの任務継続には問題が避けられない。北極圏の厳しく予想困難な気象、短い施設建設可能シーズン、長い暗闇期間、更にオーロラや宇宙現象による通信障害など、多くの困難が横たわっている
●これらへの対処には同盟国やパートナー国との協力がより一層重要になる。カナダとの長い協力関係に加え、米空軍は他の北極圏関係国との関係強化を追及しており、特に演習を通じて、気象データ・通信・偵察データの共有や、作戦運用経験の交換することを考えている

Arctic ship.jpgWW2当時の北極圏作戦で派生した尊い犠牲者の記憶は、極地での厳しい環境における備え不足が招く危機を明確に物語っている。そして米議会を含めた多くの人々が、北極圏への注目の必要性を訴えている
●2019年国家授権法は国防省の北極圏戦略を更新し、その任務と役割を示している。世界の動きや事象は、我が国益を守るため、スマートに行動を開始すべき時であることを示している
////////////////////////////////////////////////////////////

確かに、超々音速兵器にしても、弾道ミサイルにしても、北極海の氷減少に伴う覇権争い先鋭化にしても、北極圏へのアクセス確保するための航空基地を維持し、各種センサーを近代化して維持していくことが基礎をなすと言えましょう。

ミッチェル将軍の「アラスカを制する者は、世界を制する:Whoever holds Alaska will hold the world.」との言葉は、今後米空軍関係者がよく使うことになるのかもしれません。

他の分野に関してもこのような「寄稿」があるのか、北極圏がポイントなのか、今後に注目したいと思います

北極に関する話題
「グリーランドに中国企業」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-4
「北極航路ブームは幻想?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-13
「トランプ:空母削って砕氷艦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02

北極圏:米国防省と米軍の動き
「米軍C-17が極地能力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-02
「北極海での通信とMUOS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-25-1
「米国防省の北極戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-23-1
「米海軍が北極対応を検討中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20

ロシアの北極圏活動
「ロシアが北極圏の新しい軍基地公開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-30
「露軍が北極に部隊増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04-1
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09
「ロシア軍が北方領土に地対艦ミサイル配備へ」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-26

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AIの革新は昆虫に学べ! [米国防省高官]

わずか数百の神経細胞しかないのに昆虫は・・・

Bugs.jpg4日、米国防省国防省高等研究庁DARPAが、「Microscale Bio-Mimetic Robust Artificial Intelligence Networks」と命名された「ハイリスクながら、ハイリターンが期待できる」プロジェクトを行うと発表し、投資額を明示して挑戦者の募集を開始すると明らかにしました

このプロジェクトは文字どおり、小さな昆虫の小さな脳神経システムを学んでヒントを得、飛躍的に発展しつつあるAIに更なる革新を持ち込もうとするもので、約1億円の資金を掛け、18か月間で結論を得ようとするベンチャー的性格を帯びたものです。

募集期間も短く、今年春には開始するスピード感も特徴で、中国やロシアに押されて危機感が募るDARPAが、新たな姿勢で臨む意欲を姿勢を示したプロジェクトです。

このような発想では、既に民間企業でも取り組みがあるのかもしれませんが、DARPAの巻き返しに期待しつつ、概要をご紹介しておきます

8日付米空軍協会web記事によれば
neurotechnology.jpg●4日付DARPA発表では、「過去10年間で、その開発と教育訓練方法で爆発的な進歩を見せたAI分野であるが、今や多くの産業界にその応用が広がっている」とし、AIが急激な進歩を遂げている重要分野であることを強調している
●一方でその課題の一つとして、「Aiがより複雑な課題への応用に投入される中、大きなシステム活動を支える計算能力要求は毎年10倍ペースで急増している」として、飛躍的な処理速度向上を達成するための革新が求められている状況を説明している

●DARPAの発表は、具体的にどの昆虫の脳神経細胞システムをサンプルにプロジェクトを進めるのか明らかにしていないが、数百の脳神経細胞しか持たない昆虫が、自然環境にて適応した昆虫の捕食、生態、生殖等を低エネルギーで支えている仕組みから学んで取り入れようとのプロジェクトである
●募集要項に基づき2月4日から挑戦者を募集し、4月3日から開始するプロジェクトは、18か月間で結果を出すことを求められている

前半の6か月間には約2000万円までの資金が割り当てられ、昆虫システムの応用可能性を情報収集システムと情報信号の交換システムの視点から確認する。
neuron.jpg後半の12か月間では約8000万円までの資金で、具体的なプロトタイプの計算モデルを開発することを目指している

●この昆虫プロジェクトは、2018年7月に始まった「Artificial Intelligence Exploration program」の一環である
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昨年7月発表の「Artificial Intelligence Exploration initiative」は、18か月間の間にハイリスクながらハイリターンが見込めるAI分野を見出し、あらたなAIコンセプトを提示することを目指すもので、併せて迅速な研究資金確保のメカニズムを提示した取り組みです。(受付期間は3か月とのスピード感)

その一つが今回の昆虫プロジェクトです・・

一方で、昨年9月発表の「AI Next initiative」は、より包括的な全体計画の位置づけかと推察いたします

AI関連の記事
「DARPAが新AIプロジェクトを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-11-1
「中露がAI覇権を狙っている」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28
「2025年にAIで中国に負ける」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-04
「DARPA:4つの重視事項」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08

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不具合付きKC-46給油機受け入れ [米空軍]

不具合解消に3-4年は必要と
1機当たり30億円は不具合解消後に支払いとか

KC-46-2.jpg10日、KC-46A空中給油機の初号機が米空軍に引き渡され、カンサス州McConnell空軍基地に到着しました。当初計画では2016年初めに初号機が引き渡され、最初の18機納入が2017年末の予定でしたが、様々なトラブル発生の末に2年遅れとなり、18機目納入は2019年末になる見込みだそうです

納入された初号機は、今後米空軍が実施する「作戦運用試験」に入る予定ですが、前段階の「開発試験」で判明した5つの重大不具合が残ったままの納入という異例の納入となっています。
異例と言えばもう一つ、このような特殊なケースで納入を承認するはずの国防長官が同機製造ボーイング社の出身者であるため判断に関与できず、部下の調達担当次官がサインする「異例」のおまけつきです

KC-46-3.jpg冒頭でご紹介したように、5つの重大不具合解消には4-5年必要で、問題解消までは一部代金を支払わない(1機の機体価格の2割に当たる30億円後払い)との約束がなされる状態で、不具合機体で「作戦運用試験」ができるのかよ???・・・と突っ込みたくなりますが、既にボーイング社が自腹4000億円以上を開発費に持ち出している状況も踏まえ、「おとなの事情」で受け取りとなったものと邪推しております

米空軍の空中給油機は、現有のKC-10やKC-135の老朽化が著しく、その維持整備費高騰が大きな問題となっており、その辺りも「不具合には目をつぶる」判断になったものと邪推しております

11日付米空軍協会web記事によれば
公式の初号機受け入れセレモニーは1月末に計画されている
●初号機以外に、現在9機が米空軍による受入検査を受けており、(その中の)4機がオクラホマ州Altus空軍基地に配備される予定である

KC-46 Boom3.jpg●5つの重大不具合の3つは、初めて導入されるブーム操作員が使用するモニター画面関連で、照明の具合や太陽の角度によっては給油操作が困難な点と、ブームで相手機に機体表面をひっかき傷をつけても捜査員が気づかない問題で、ソフト改修によって対処する方向だとボーイングは説明している
●残り2つの不具合はブーム自体の問題で、ブームに余計な荷重がかかった際に捜査員に知らせる機能の問題、ブームが相手機にコンタクトする際に硬直していることを捜査員に知らせる機能である

●米空軍は追加の18機調達のため、関連機材やスペアパーツ等を含め約3100億円の契約を昨年9月に結んでいる
●なお米空軍とボーイング社は、最近「Phase II of flight certification」を終了し、次のフェーズのの試験を11機の機体で開始している
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KC-46 Boom.jpg不具合を抱えたままの初号機を受け取ることは米空軍として初めてではないようですが、部隊の本音を聞いてみたいものです・・・

そして米国以外で唯一KC-46を購入する航空自衛隊の皆さんのご意見も聞いてみたいものです・・・


米空軍の空中給油機ゴタゴタ
「7機種目の対象機を認定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-08-3
「初号機納入が更に遅れ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20
「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1

「ブームで相手にひっかき傷」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-02-1
「空中給油機の後継プランを見直しへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-22
「KC-46ブーム強度解決?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-15

「納期守れないと認める」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-01
「Boom強度に問題発覚」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-03
「予定経費を大幅超過」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-21

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2020年度米国防費の枠が示されたようですが・・・ [米国防省高官]

750か、730か、700か、複雑な前提条件付きか?

Norquist2.jpg9日、新年から臨時の国防副長官に就任している前国防省会計監査官David Norquist氏は記者団に昨年10月から様々な数字が乱れ飛んでいる2020年度国防予算(2019年10月からの予算)について、予算枠が示されたと語った模様です

しかし同臨時副長官は、具体的な額やその条件などについては一切言及せず、3週間以上続いている一部政府機関の閉鎖(shutdown)の影響は不透明ながら、予算の案の細部については、議会に提示する国家予算案全体が明らかになる2月になると述べるにとどまりました

昨年末のクリスマス休暇直前の段階では、マティス国防長官の辞任の混乱の中で、まだ予算枠は示されておらず、2月までに予算案がまとめられるのか疑問視する声もありましたが、何とか期限までにまとめることになるようです

しかしこのモヤモヤ感・・・。例年は明らかになっている予算枠になぜ言及できないのか?・・・。トランプ大統領も議会も刺激せず、何とか必要なものを確保したい国防省と米軍全体の切なる思いの結果でしょうか・・・

以下では、これまでの経緯を振り返ります
Norquist.jpg●今年度国防予算(2019年度予算)は$716 billionで、来年度(2020年度)は $733 billionを国防省は予定して計画を立てていました
しかし10月16日に中間選挙の「風を読んだ」と大統領が突然、来年度予算は各省5%カットで、国防費は「$700 billionだ」と「ちゃぶ台返しの」指示を出し、反発する共和党議員や国防長官等は危機感を訴えてきました

3者は11月末からマスメディアや講演で、「オバマ政権時の国防費カットで傷ついた軍の立て直しに着手したばかりなのに、来年度予算をカットしては、トランプ政権が定めた国家防衛戦略NDSが定めた、中国やロシアを念頭に置いた米軍の体制整備が中断し、米国を危険にさらす」とのキャンペーンやロビー活動を推進していたところでした

●そして昨年12月4日にマティス国防長官(当時)と両院軍事委員長がホワイトハウスを訪問し、国防費削減を見直すようトランプ大統領に直談判しました。
Trump9.jpg●会談後、上院軍事委員長は「国家安全保障目標に関する率直で建設的な意見交換ができた。我々は国家防衛戦略NDSを遂行するため、オバマ時代のダメージを修復し、米軍を再構築する必要があるとの目標を共有した」、「会談を通じて大統領は、我が国を強くし米軍に適切に投資し続ける決意をしたと確信している」とのコメントを出しましたが、細部は不明のままでした

その後12月10日前後に各種メディアが、複数の筋からの情報として、 12月4日の4者協議で、トランプ大統領が「少なくとも$750 billion」にコミットした模様で、この方を受け議会のタカ派や国防省関係者は興奮に包まれたと報じました。
●一方で、既に米国の国防費は既に肥大しすぎ、他の必要な国家予算を圧迫していると主張している民主党関係者が今年1月から下院で多数派であることから、国防費を巡る攻防は簡単には決着しないと見られています
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Norquist3.jpgこの時期に国防省や米軍に勤務している皆様には、ご愁傷様・・・と申しあげるしかありません。

メキシコとの「国境の壁」費用に、国防省の災害対処予算を充てるとか、建設に軍隊を動員するとか、ため息のでそうな話が次々と・・・

トランプ大統領が「あっさり説得され」、「少なくとも$750 billion」にコミットしたなら喜ぶべきなのかもしれませんが、米議会「ねじれ状態」を考えると、また予算の強制削減法もいまだ有効な中、国防費だけ増が簡単に通るとも思えず、色々裏がありそうな予算枠提示です・・・

2020年度国防予算をめぐる記事
「一転、国防費増?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-11
「国防費巡り4者激突」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-05
「トランプが閣議で次年度予算5%カット指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-2

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脆弱性議論を吹っ飛ばせ!米空母映像4つ [Joint・統合参謀本部]

新年の慌ただしさでお疲れの皆様に、お気楽映像記事です!

Smithonian.jpg昨年5月から米国のスミソニアン協会が、その脆弱性議論により存在意義が問われている米空母を映像で紹介する試みを開始しました。

同協会の関連webサイトを開くと、米空軍部隊等の紹介映像などを既に公開しており、一連のシリーズであることが伺えます。

18日付Military.comが、当該映像の紹介として短い4本の映像を掲載していますのでご紹介いたします。

CIWSの紹介と整備模様(1分半)
1分間に4500発の弾丸を発射し、空母に接近する敵やミサイルを阻止するCIWSを紹介


難しい空母への着艦(3分半)
お馴染みのスリルあふれる空母での離発着をご紹介


甲板下での弾薬組み立て(3分半)
JDAMをはじめとする弾薬組み立てクルーの活動を紹介


危険と背中合わせの飛行甲板勤務(2分)
EA-6Bエンジンへの整備員吸い込まれの衝撃映像など、危険な甲板作業の一端をご紹介

まぁ・・・だからといって空母の持つ脆弱性が克服されるわけではなく、大きな被害を受けるまで何の変化も起こらないのでしょうが、ぼんやりとご覧ください

米海軍空母関連
「空母群が温故知新訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-25
「べ戦争後初:米空母ベトナム訪問へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-24
「空母艦載給油機のRFP発出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-13
「映像で学ぶ:米海軍空母」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-25

最新フォード級の話題
「艦載機燃料タンクの振動問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-29
「空母フォード:3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20

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米空軍初:ムスリム兵士にあごひげ許可 [米空軍]

当該兵士は中東派遣を経てイスラム教に改宗
部隊内での嫌がらせを乗り越えたと米空軍が公表

Gaitan.jpg11月20日付Military.comは、2014年に米国防省が示した新たな指針に基づき、米空軍初のケースとしてある軍曹が「あごひげ」を禁止する規則の免除を認められ、上官からの理解を得て、周囲からの心無い言葉や嫌がらせにめげずに頑張っているとの米空軍発表を紹介しています

2014年に米国防省が示した新指針では、ターバン、頭のスカーフ、あごひげなどを禁止する規則に関し、誠実な信仰心の表明などと認められる場合は、禁止規定の免除を申請することができ、ケースバイケースの判断で認めるというもので、誠実な信仰の期間が4年以上との基準も示されているようです

ただし、誠実な信仰心からの規則免除申請であっても、制服の着用やヘルメット等の装具の着用に影響の出る場合や 業務や健康に影響が出る場合は申請を許可しない点も指針に明記されているようです

basic-training2.jpg当該軍曹は、加州トラビス空軍基地で緊急対応部隊のロードマスターとして勤務しており、今年8月に規則免除が認められたようですが、11月後半の現在までには様々な同僚等との軋轢があったようで、それらも含め、米空軍として多様性に配慮した対応をして同軍曹の権利を守っている・・・との米空軍発表となっています

この件では米陸軍が先行し、ケースバイケースで同様の規則免除をすでに出しているようですが、同性愛者といい、トランスジェンダーといい、宗教上の配慮といい、米軍の指揮官は大変です・・

20日付Military.com記事によれば
●第821緊急事態対処支援隊の空輸支援要員であるAbdul Rahman Gaitan軍曹は、カトリック教徒として生まれ育ったが、2011年にトルコに派遣された際にイスラム教に接して関心を持ち、その後ハワイへ転属したのちにイスラム教に改宗することを決心した
●ただ、今年8月1日にあごひげを認められ、徐々にひげを伸ばし始めた過程で、同軍曹は様々な嫌がらせを受けている

basic-training4.jpg●例えば、同軍曹がイスラム教徒であることを口にしながら追い払うような仕草をされたり、丁寧な言葉ながら他人の前で「君はISISに入ったのか?」とか「君はテロリストか?」尋ねられたり・・・といったことを同軍曹は何度も経験した
●しかし同軍曹は、そんなことがあるたびに同僚や上司が毅然として同軍曹を守ってくれたと語り、「そのような嫌がらせをお受けた事実は、稲妻のような速さで司令官に報告された」、またあるケースでは翌朝すぐに司令官室へ呼ばれ、司令官が同軍曹を見据えて「心配するな。私は君を守る」と毅然と話しかけてくれたと証言している

●米空軍参謀総長は就任前の上院軍事委員会での2016年の質疑で本件に関し、「これまで行われてきたように、このような申請は慎重に審査され、部隊の即応性や任務遂行に支障がない場合に限って許可される」と証言し、同時に現在の規則免除の範囲を拡大する計画はないと明言している
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urban warfare.jpgケースバイケースで判断するとは都合のよい表現ですが、各部隊の指揮官は大変です。

Gaitan軍曹の強い精神力にも恐れ入りますが、これをプレスリリースしている米空軍の皆さんのこれまでのご苦労と、今後予期されるご苦労にも頭が下がります

トランプ大統領との対面など実現すればもっと良いのに・・・と勝手なことを考える・・・・です

話は変わってジェンダー関連と米軍
「同性愛者の陸軍長官」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01
「大統領、米軍でトランスジェンダー認めない発言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-28-2
「同性愛者対応の変更に関するゲーツ国防長官メッセージ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-01

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米空軍2019年の大きな選択4つ [米空軍]

Wilson6.jpg27日付Defense-Newsが、2019年に米空軍が答えを用意しなければならない課題を4つ取り上げ、米空軍を取り巻く情勢を紹介しています

4つの問いとは、「F-15Xを購入するのか?」、「軽攻撃機の選定と調達規模は?」、「宇宙軍はどうなる、米空軍はどうする?」、「米空軍司令部は大きな組織改編をするのか?」の4つです

その前提には、米国防省の予算がどうなるのか? つまり、750か、733か、700 billionなのか?・・・との大きな問いもありますが、今回は米空軍内の諸課題を覗き見て、2019年を見る視点を養いたいと思います

問1 F-15Xを購入するのか?
F-15 upgrades.jpg●12月21日付のブルームバーグが、2020年度予算案に12機のF-15X購入予算約1400億円が計上されていると報道したが、真偽のほどは明らかではない
F-15Xは、米空軍保有のF-15C/Dを改良し、電子戦能力、新レーダー、新コックピット、AAM増量などを企図したもので、国防省首脳が老朽化が進む州軍所属F-15C/Dの後継として購入を判断したとも噂されている

一方で米空軍正規軍は強く第4世代機の追加購入に反対しており、9月にF-15Xについて問われたWilson空軍長官が、「現在、米空軍の4世代機と5世代機比率は8:2だが、これを5:5に早くって行きたい。5世代機は4世代機に違いをもたらす能力を持っている」と語り、F-35など5世代機購入を優先したい意向をしめしている
●このF-15X購入をどのように扱っていくのか、空軍参謀総長はどう扱っていくのかも含めて注目される

問2 軽攻撃機の選定と規模
●これまでのデモ飛行試験等を経て、データリンク等を備えた軽攻撃機候補として、AT-6(Textron)とA-29 Super Tucano(Embraer and Sierra Nevada Corp)が最終候補になっているが、米空軍は最終の提案要求書受付を2019年まで延期した
AT-6 2.jpg全体の予算枠や軽攻撃機の優先度を巡る議論が煮詰まっていないためだとも言われているが、関連軍需企業からは、本当に米空軍は軽攻撃機を導入する気があるのか疑問視する声もある

もう一つの問いは購入するとしたらどの規模で調達するのかである。当初は数百機単位との話もあったが、最近では特殊作戦コマンドで対テロ作戦のみに使用する機数として100機を切る程度との購入も漏れ聞こえてきている
仮に数百機単位であれば、中東だけでなく、欧州や米本土、更にアジアを含めた世界各所に配備される可能性もある

問3 宇宙軍創設に向け空軍宇宙活動がどう変化?
●先日、国防省としての宇宙軍原案がまとまり、空軍長官の下に米空軍と横並びで宇宙軍を創設する案が提示された。これは海軍長官の下に海軍と海兵隊が並列で置かれるのと同じで、宇宙軍が宇宙軍参謀総長と宇宙軍担当空軍次官によって導かれる案となっている
space aware2.jpg●しかし、現在米空軍隷下にある宇宙コマンドや宇宙ミサイルシステムセンター、また陸海軍の下にある宇宙作戦関連部門が、宇宙軍創設でどうなるのかは明らかでない

政治の世界では、来年ねじれ状態になる議会の対応が注目される。そもそも宇宙軍創設は昨年上院で否決されており、来年は下院で民主党が多数を占める事でも予断を許さない状況になる。

問4 米空軍司令部の組織再編はどの規模か
12月初めに、10年以上空軍省の国際関係担当次官を務めてきたHeidi Grant女史が、自身所属組織の役割が空軍司令部のA-5に移管されると語り、併せて空軍省と空軍司令部の組織再編があるとの発言をしている
●この組織再編については他の高官や関係者からの情報がほとんどなく、Grant女史も2019年1月に組織改編に関する意思決定があると述べるにとどまり、その程度が注目されている
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他にも、誰が宇宙軍を担当する空軍次官(undersecretary of the Air Force for the Space Force)に就くのか・・・も重要な話です。

それ以前にも米空軍には、F-35の維持整備費削減に目途は立つのか、KC-46A空中給油機の重大不具合はいつ解決されるのか(初号機納入はいつか)、操縦者流出を止められるか等々、山ほど課題がありますので、トランプ政権下でどうするか??? 大変です

米空軍カテゴリー記事580本
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2300801463-1

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