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米空軍無人機部隊がネット切断の恐怖体感!? [米空軍]

SIPRnet.jpg9月9日、米空軍無人機運用の中核であるCreech空軍基地で非公開情報を扱う米空軍内部のネットシステム「SIPRnet」に原因不明の故障(a failure)が発生し、米空軍側は無人機による攻撃行動に影響はなかったと弁明するものの、最近相次ぐ中東での「誤爆」事案もあり、疑惑を生む結果となっています

最初にCreech空軍基地「SIPRnet」の故障を取り上げたWebニュースサイト「BuzzFeed News」は、このトラブルを作戦運用とは全く関係のない米政府の契約関連webサイトで察知し、10月12日に報じて米空軍に問いただしたところ、13日になって米空軍報道官が初めて故障発生の事実を認ており、この流れも疑惑に拍車をかけています

「SIPRnet」故障の原因は現在調査中で、単なる機材トラブルか、サイバー攻撃を受けたか等については不明ですが、同故障発生日に、米空軍は同基地に対し特別サイバーセキュリティ監査を10月に行うと発表し、システム使用者にログイン情報管理等を適切に行うよう注意喚起をしており、この措置との関連も疑惑を倍増させています

12日付BuzzFeed News記事によれば
●米空軍のMQ-1やMQ-9無人機攻撃を司るCreech空軍基地の「SIPRnet」に原因不明の故障を起こし、米政府の契約関連サイトによれば、未だ完全復旧には至っていない模様。SIPRnetは2重化され、非公開の目標情報や映像や電子情報を扱うネットワークであり、インターネット世界には接続されていない
●米空軍戦闘コマンド報道官のSingleton少佐は、「原因調査が現在行われている」とのみ述べている

SIPRnet2.jpg●ネバダ州のCreech空軍基地は「目標殺害の拠点」と呼ばれ、衛星通信で結ばれた無人攻撃機を、シリア、アフガン、パキスタン、ソマリア等々で飛行させ、アルカイダやISIL戦闘員への攻撃を操作し、併せて情報収集も行っている。
●9月9日の原因不明トラブル以降、シリア、アフガン、ソマリアで「誤爆」と考えられる事案が連続して報じられたが、同空軍報道官は「同ネットに問題が発生しても、MQ-1やMQ-9の作戦飛行に問題はない」と説明している

●「誤爆」が疑われている事象には、停戦合意期間中の9月17日にシリアで62名のシリア兵が空爆され死亡した事案、9月28日にアフガンで15名の民間人が空爆され死亡した事案、更に同日、ソマリアで22名のソマリア政府が非戦闘員だと主張する22名が殺害された件がある。

●BuzzFeed NewsがCreech空軍基地の「SIPRnet」事案を察知したのは、10月初旬の政府契約関連情報サイトに「9月9日にCreech基地のSIPRNetに障害が発生し、主要サービスが影響を受けた。同サービスは当座の対処で復旧したが能力の完全回復には至っていない。バックアップシステムもない状態」と掲載されたからだ
●関連は不明だが事案発生の9月9日に、米空軍は静かに、Creech空軍基地が10月にサイバー特別査察を受けると発表し、システム使用者にログイン情報管理等を適切に行うよう注意喚起をしている

●なお、Creech空軍基地でも使用されているより情報管理が厳しい「JWICS」に対する「SIPRnet」事案の影響については不明である

13日空軍報道官は作戦運用への影響を否定
●13日、米空軍戦闘コマンド報道官のSingleton少佐は、「今回のSIPRnetトラブルと、無人機による攻撃事案とは関係が無い」と述べ、9月9日のSIPRnetトラブルは現在も調査中であるが、同トラブルの影響については細部に言及しないとし、「現在同基地のネットワークは回復して稼働中」だと説明した
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SIPRnet3.jpg怪しい匂いがプンプンしますが、これ以上何ともコメントできません。
しかし、ネットワークに依存する米軍幹部は、この事象を聞いて「来るべきものが来た」と感じたのではないでしょうか?

またネットワーク依存の恐ろしさと、サイバー攻撃の恐怖を様々に感じているのでしょう。
そして世界中の軍事関係者が様々な形で本事案を分析し、様々に対応を考えるのでしょう。続報を待つことといたしましょう・・・もう情報は出てこないかも・・・。

最近のサイバー関連記事
「サイバー脅威の変化と対処を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-21
「装備品のサイバー脆弱性に対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-02
「対ISサイバー作戦で大きな教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-23
「日本とイスラエルが覚書へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21

「成果Hack the Pentagon」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-20-1
「組織の枠を超えた情報共有を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-07
「中国には君らも脆弱だと言っている」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-23

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国防長官肝いり革新評議会DIBが中間報告 [カーター国防長官]

DIB.jpg5日、カーター国防長官が3月に立ち上げた国防革新評議会が、来年1月の答申とりまとめに向けた中間報告会を行い、第一印象的な初期のアイディア11項目を報告しています。

カーター長官が自ら登場してShow Upする力の入れようですが、本日は、11項目の中で、米国防省web記事が紹介している「8項目」をご紹介します

この国防革新評議会DIB(Defense Innovation Board)は、アマゾンやグーグルやインスタグラム等の技術先進企業の重役や、ハーバードやアスペン研究所やCITなどの研究者ら15名をカーター長官が集め、

●国防省の組織や人や文化や技術や業務慣行に革新を植え付ける
ペンタゴンに外部の考え方を持ち込み、米軍をますます力をつけている敵対者に対する優位に保つため、より新たなアイディアや新たなパートナー関係にオープンな組織に変革させる事を目的に設置した組織です

メンバーは米国防省web記事でご確認下さい
http://www.defense.gov/News/Article/Article/965196/defense-innovation-board-makes-interim-recommendations

国防革新評議会DIBの活動と今後
●メンバーは多忙な中、空軍のネリス基地、海軍のSan Diego基地、陸軍のFort Bragg基地、フロリダの米中央軍と特殊作戦コマンド司令部、米サイバーコマンド司令部等の部隊を訪問し、各評議員の知見と部隊訪問の印象等から中間提言を実施した
●今後メンバーは更に部隊視察等を行い、最終提言を固めていき、来年1月に取りまとめ会議を行う。2017年は、提言に対してどのような施策が執られたかをモニターする

米国防省web記事が紹介の8項目
DIB2.jpg●国防省内の革新改革活動を統括してシンクロさせる「chief innovation officer」を設ける
コンピュータ科学の専門家にキャリア管理基準を定め、サイバー専門家を確保するためデジタルROTC制度を設ける

革新を推進し、創造性発揮を奨励し、多様性を確保し、組織員の声を生かすため、ボーナスや表彰や他インセンティブなどにより、証拠に基づき、挑戦や実験を重んじ、成果を重視する文化を構築する
米サイバーコマンドに対しNSA(National Security Agency)との連携を命じ、全ての国防省システムのセキュリティー確認を実施させる

人工知能AIや機械学習を探求する研究所を設置する
調達プロセスの迅速化。特別措置や手続き免除、迅速な処理にインセンティブを与えることにより達成

DARPA、国防省戦略能力構築室SOC、DIUx、RCO等の機動力があり革新思考の組織の予算を増やし、相互の連携を促す
ソフトウェア関連の課題に迅速に対応するため、プログラマーやソフト開発者の「human cloud」を構築する
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DIB3.jpg「DARPA、国防省戦略能力構築室SOC、DIUx、RCO等の予算増額」は、カーター長官が言わせたのでは・・・と思ってしまいますが、シリコンバレーや起業家グループと親交が深いカーター長官の考え方を具現化した組織ですから、DIBメンバーには素晴らしく映ったのでしょう

来年1月に最終提言がまとまったとして、次期政権でどうなるの???・・との疑問を持ちますが、Work副長官が述べているように、目的や狙いを明確にした種々の選択肢を用意し、その内容をしっかり申し送り、次期政権の国防省チームに提供するとのスタンスでしょう。

カーター長官のアジア太平洋リバランス「第3の波」発言は、どのメディアもフォローしない「言うだけ番長」扱いされていますが、組織革新や技術革新に向けた取り組みだけでも、実を結んでほしいものです。

SCO、DIUx、RCOの解説記事
「SCOが存続をかけ動く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10

「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25

「米陸軍もRCO設立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01
「次期爆撃機の要求検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
「謎のRQ-180」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
「謎の宇宙船X-37B」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
「国防長官がMC-12工場激励」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-02

リバランス「第3の波」発言
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-01

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ロシアが欧州飛び地やトルコで不穏な動き [安全保障全般]

ロシアが欧州飛地(Kaliningrad)やトルコで不穏な動き

Kaliningrad33.jpg8日、ロシア国防省はKaliningrad(リトアニアとポーランドとバルト海に囲まれた飛び地)に、定期的な軍事演習のため短距離弾道ミサイル「Iskander-M」を展開させたと発表し、周辺国と米国防省が非難する声明を発表しています

なお、同ミサイルは射程500㎞程度で周辺国は全て射程内で、射程700㎞への延伸改修が完了していれば、ベルリンも射程内に収めることが可能です。
特に「M型」は核弾頭搭載可能で、射程延伸型であれば射程1000㎞以上と言われる巡航ミサイルの「K型」とあわせ、INF条約違反が警戒されている兵器です

またトルコ外交筋によれば、10日にプーチン大統領とトルコ大統領がイスタンブールで会談し、紆余曲折を繰り返してやり直し状態にあるトルコ長距離防空システムの選定候補に、再びロシア製システムも加えることになった模様です

日本との領土および経済交渉でも利害追求の不穏な立ち回りを見せそうなロシアですが、欧州から中東方面では相変わらず嫌われ者役を堂々と演じ、国益追求だけに邁進しているようです

飛び地に「Iskander-M」展開
Iskander-M2.jpg●8日、ロシア国防省の報道官は、定期的な演習で同ミサイルを展開したと発表し、「Kaliningradへの展開は初めてではない」との声明を発表した
●ロシア報道官は米国の偵察衛星にわざと見つかるように配備していると語り、「頑張っておられる米側の皆さんが、配備を確認するのに時間はかからないだろうと」と皮肉たっぷりに語った

●展開飛び地に隣接するリトアニアの外相は、「このような露の行動は地域の緊張を高めるだけでなく、500km以上の弾道ミサイルの展開を制限した取り決めに反する可能性がある」と警告した
●リトアニア外相は更に「本件はNATO-Russia Councilでも議題となるだろう。単に事実を確認するだけでなく、国際合意との整合を問いただすのだ」とコメントしている

米国防省も警告
Iskander-M.jpg●なお米国の情報関係者は、7日時点で同ミサイルの移動が行われているのを確認しており、NATOへの威嚇行為だとみている
●(3連休明けの)11日、米国防省はロシアによる同ミサイルの展開を、既に高い緊張状態にある同地域の緊張感を、不必要に高める行為だと警告した。


ロシアが再びトルコ防空システムに参戦
3年前に価格で敗退したはずが、露とトルコの再接近で再び参戦
●トルコ外交筋の情報として10日付Defense-News記事が報ずるところによれば、イスタンブールで開催された世界エネルギー会議に出席したプーチン大統領とトルコのエルドワン大統領が会談し、トルコがロシアにミサイル機種選定に参加するよう招待した模様
●なお、仮にロシア製を選択した場合、中国製と同様に、既存の西側防空システムとの連接は不可能となる

同ミサイル機種選定の紆余曲折・・・
●2013年9月
CPMIEC-SAM.jpgトルコ政府は中国CPMIEC製のシステムを約3600億円で調達すると決定
(この選定においてロシア製は「価格が倍以上」として不採用になった。他にはPatriotを提案の「レイセオン&ロッキード」と、SAMP-1を提案の「European Eurosam」が参戦していた)
以後、米国やNATOが、中国製システムと既存の西側防空システムは情報保護の観点から連接不可能で、作戦運用上で極めて非効率で問題ありと強く抗議し

●2015年11月
トルコ政府が中国製を選択した決定の破棄を発表し、国産開発の方向を示唆し具体的関係企業2社に言及
一方で発表後も、米企業チームと欧州チームとも並行して選定協議を継続していた
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これまで何回も取り上げましたが、米露のINF全廃条約や弾道ミサイルを制限する条約は、中露北朝鮮などなどの条約に縛られない国を利するだけなので、今一度議論が必要だと思います。

PAC-3.jpgそのよう議論が国際社会で起きないと、日本で独自に現在の壁を突破して「弾道ミサイル保有」に進むことは厳しいです。
ロシアが極東に中距離弾道ミサイルを持ち込んだらどうするかとの問題もありますが、中国を優先すべきでしょう・・・

トルコが何を考えているか良く分かりませんが、少なくともエルドワン大統領が軍事のことを優先して考えていないことは明白でしょう・・・

約3年前からKaliningradに展開実績か?
「プーチンが展開否定も???」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-19-1

トルコ政府の反米と軍粛清
「将軍の4割以上を排除」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11
「トルコで反米活動激化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-31
「トルコクーデターに噂」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-2

トルコ防空システム選定のゴタゴタ
「中国製決定を破棄」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-16
「トルコ大統領訪中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-30-2
「対IS空爆作戦にトルコ協力へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-24

「NATOと連接しない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-20
「4度目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-04
「トルコが中国企業と交渉開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-27

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米空母の定期修理が間に合わない [Joint・統合参謀本部]

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Bush-CV.jpg7日付Defense-Newsは、米海軍艦艇の任務多忙で艦艇のローテーションが厳しい中、派遣期間が増えて定期修理補習作業が増える一方で、予算不足(又は不安定)により艦艇修理施設の人材や技量不足して特に空母の回しが困難に成ってきており、来年新大統領が就任する頃には中東に空母が存在するかどうかが微妙だと報じています

具体的には、現在中東に派遣されている空母アイゼンハワーは来年1月には帰路に就く予定で、空母ブッシュが定期修理と準備訓練を終えて任務を引き継ぐ予定であるが、空母ブッシュの定期修理が長引き、必要な訓練期間の半分しか確保できないまま派遣される恐れがあるという現状です

恐らく記事は「氷山の一角」を捕らえたもので、空母以外の艦艇や潜水艦の定期修理等にも影響が出ていると思われ、記事は原子力潜水艦の修理を民間企業に委託し、海軍修理所の人員を艦艇修理に振り向けたりする現状も紹介されています

一応、アイゼンハワーとブッシュ問題は、南シナ海やアジア太平洋地域には影響は無いだろうと記事は触れていますが、米政権や米国防省が対ISILや対露に力点を置く現状から、どんな影響が出るか判りません

7日付Defense-News記事によれば
Norfolk.jpg空母アイゼンハワーは、中東地域に展開する唯一の空母としてペルシャ湾で活動しているが、2017年1月には7ヶ月間の計画派遣期間を終え、米東海岸のNorfolk基地に帰還する予定である
しかし、後を引き継ぐはずの空母ブッシュは、当初の定期修理期間6ヶ月を大幅に延長する13ヶ月の修理期間を要し、今年7月に派遣準備訓練を開始したばかりである

●通常、空母ブッシュには10ヶ月間の派遣準備訓練が必要だが、修理期間延長が検討され始めた頃に最初8ヶ月間に短縮され、最終的に現在では、交代派遣のためには4ヶ月で準備訓練を終える必要がある
●現在空母ブッシュは約2週間の訓練航海中だが、修理を継続している部分もあり、本当に年末に中東に向け出発するのか米海軍艦艇コマンド司令部も最終決定していないし、多方面からの質問に回答しない姿勢を取っている

この背景には、予算削減や予算の不安定と、その影響を受けた過去の修理所の人員削減がある。もちろん、艦艇の任務増加で船体が酷使されていることも影響しているが。空母ブッシュだけでなく、10月5日に20ヶ月間の定期修理を終えた空母ニミッツも、予定より4ヶ月も修理期間が延びている
●活動中の空母アイゼンハワーも、前回の定期修理が半年延長され、他の空母を「つなぎ」に投入しなければ成らなかった

艦艇補修所の状況と米海軍の対応
Norfolk2.jpg米海軍には4カ所の艦艇補修所(Norfolk、Puget Sound、Pearl Harbor、Portsmouth)があり、前者2カ所が後者の2倍の人員を抱える主力施設で、計約3.5万人の人員で運営されている
●作業量の増大に伴い、定年退職や離職者を埋める必要とあわせ、2013年以降に1.4万人を新規採用しているが、作業需要に追いつかない修理作業には特別な技能が必要で、数を揃えても技量向上には時間が必要なのだ

現場での作業員だけでなく、修理作業行程を計画管理する有能な人材の不足も指摘されている。酷使された船体には、想定外の要修理箇所が見つかることが多く、その都度全体の作業プランの見直しが必要で、複数の艦艇補修所で作業を分担することもあり極めて高度なプランニングが求められる
●米海軍艦艇コマンドは緊急の任務要請等に対応するため、最適艦艇対処計画OFRP(Optimized Fleet Response Plan)を準備し、関係する他コマンドや関係部署と調整協議を行う事としているが、空母ブッシュの作業遅延対策が十分なのか疑問声が挙がっている

●匿名の関係者は、空母ブッシュの派遣を数ヶ月遅らせて派遣を2017年頭書とし、空母アイゼンハワーの任務期間を遠投する可能性に言及したが、厳しく緊張感の続く任務に就いている中東派遣空母の派遣期間延長には慎重な声もあり、結論は出ていない模様である
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Bush-CV2.jpg記事の中に「悪循環に陥っている:caught in a vicious cycle」との表現がありますが、不規則に「つぎはぎ」を繰り返すことで、部品の発注や人材の育成、計画部門の混乱や疲弊が広がる事になるのでしょう・・・

このような兵站の問題は表面に出ることが少なく、戦史の中でも、後年になって研究が進んでやっとそのインパクトの大きさが明らかになることが多いです。
国防省や米海軍首脳も、気づいた時には手遅れで、体制建て直しには体制建て直しには長期間を要する・・にならないよう、手を打ってほしいものです。

まぁ・・・飛行機ばっかり購入し、維持整備体制や部品の購入費を犠牲にしている日本軍首脳にも、「ゆでがえる」に成らないよう過去の教訓を学んで欲しいものです

空母関連の記事
「F-35Cの着艦装置が凄い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-22
「露空母が26年目で初任務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-23
「イラン無人機が米空母撮影」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-01

「新空母フォード級を学ぶ」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「映像:革新的新カタパルト」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

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カナダがミサイル防衛を再考し米と協力へ [安全保障全般]

F-35には強い警戒感も、BMDでは現実路線へ転換か

GMD.jpg9月28日付Defense-Newsは、2005年に一旦はミサイル防衛に関する米国からの協力依頼を断ったカナダ政府が最近の軍事的脅威の動向を踏まえ、米国が進める地上配備ミサイル防衛システムGMDに協力する方向で検討が進みつつある様子を伝えています

GMDは「Ground-Based Midcourse Defense system」の略で、中距離弾道ミサイルよりも飛翔速度が速く迎撃が難しい大陸間弾道弾ICBMに対処するBMDミサイルシステムで、高価なため米本土でも西海岸の一部に少数が配備された程度が現状です。

ロシアや中国や北朝鮮、更には中東から発射されるICBMを対象と考えれば、早期警戒や対処のため、北極圏をはさんで脅威の前面に立つカナダにとって、自国の脅威対処に重要なだけでなく、米国にとって必要不可欠なパートナーのはずです

昨年秋に自由党のトルドー首相が首相に就任し、F-35購入決定の再検討を指示するなど、米国にとっては「一筋縄では行かないカナダ」ですが、BMD分野に関しては軍事的合理性に基づいた判断に進む気配を感じます

9月28日付Defense-Newsによれば
Trudeau.jpg●カナダ議会は政府に対し、2005年に当時の自由党政権が拒絶した米国ミサイル防衛システムへの米国からの協力要請を、受け入れて協力する方向で再検討するよう促している
●2005年に当時の自由党政権のPaul Martin首相は、ブッシュ米大統領から直接GBMDへの参加協力を要請されたが、米国との軍事同盟の再確認は行ったものの、BMDに関しては踏み込まなかった

●しかし現在の自由党政権は議会の要請も受け、Harjit Sajjan国防相(ターバンのシーク教徒)が実施中の「defense review」の中で、米国主導のシステムの中で如何なる役割を果たしうるか検討していると発言している
●そして検討のため、かつての自由党政権で国防相を勤めたBill Graham氏をアドバイザーに迎えている

議会の軍事委員会が最近まとめた報告書「Canada and the Defence of North America」では、政府に巡航ミサイルや関連技術が拡散していることを指摘し、カナダ防衛のため適切な行動を起こすよう求めている
●このような行動を通じて獲得された新しい能力は、米カナダによる北米航空宇宙防衛コマンドNORADに対する、カナダの大きな将来の貢献になる可能性がある

具体的なアイディアとしては・・・
GMD2.jpg●カナダ軍高官は具体的に、GMD用のレーダーや迎撃ミサイル基地で貢献するオプションや、多用途センサーを北極海沿岸に設置して、弾道ミサイルだけでなく北極圏の艦艇や航空機を監視することを想定している。
●また、2015年4月にはカナダ国防省の研究機関が、「continental surveillance radars」の調査研究を行う意志を示し、「NORADとの相互運用性を強化することにつながる可能性がある」と述べている

●2015年には更に、カナダ政府が東海岸沿いの「LabradorのGoose Bay」にXバンドレーダーを設置し、中東から発射された弾道ミサイルの探知追尾に貢献する検討を行っている
●本件に関するアドバイザーに就任したBill Graham氏は、カナダによる米国BMDへの参加は、米国との強力な安全保障関係を守る鍵だと主張している
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イケメンで伊勢志摩サミットでも人気が高かったトルドー首相は、「F-35購入再検討」では「緊急の戦力補填」を理由として「当面FA-18を購入」を打ち出し、米国をなだめつつF-35を慎重に見極める高等戦術を繰り出しており、したたかな「策士」の一面もみせた若手政治家(刺青あり)です

GMD3.jpgしかし今回のミサイル防衛再考からは、キチンと専門家の声に耳を傾け、軍事脅威の変化を見極める冷静な視点を持った政治家の一面も見せています。
まぁ・・・米国と水面下で「ガチガチ」やっているのかもしれませんが、安全保障に関して安定感を感じさせる点で今後に注目したいものです。

米本土ミサイル防衛のGMD関連
「GMD関連2017年度予算案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-12
「2013年当時の計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-16
「北米軍作戦部長が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-10

カナダとF-35
「FA-18購入でF-35議論回避か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-09
「新政権もF-35になびく?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-24
「カナダにF-35反対首相」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-22

北極&極地関連の記事
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02
「ロシアが鉄の壁構築」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-07

「露軍が北極に部隊増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04-1
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09
「米軍C-17が極地能力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-02

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米空軍トップ:F-35地上火災の原因は未解明 [亡国のF-35]

火災事故から2週間、未だ原因不明

Goldfein-AUSA.jpg4日、米陸軍協会総会で講演したGoldfein空軍参謀総長は、ここ2週間あまりの間に発覚したF-35関連の問題やエンジン始動時の火災発生について言及し、9月23日発生の火災については未だ原因不明だと明らかにしました

また、最近耳にすることが急増している「multi-domain融合」について、Work副長官やハリス太平洋軍司令官の発言と「共鳴」「共振」するように、そして同参謀総長の持論である「迅速な情報共有」も絡め、更に「垂直統合」や「自立判断ソフト」とのアイディアも加えて力説しています

F-35の連続トラブルについて
9月16日に発覚し、15機のF-35A型機を飛行停止にする事になった冷却系統の絶縁不備問題については、製造過程にある機体も含めると計42機が同問題を抱えていると判明した
F-35 Hill AFB3.jpg●本件に関しGoldfein大将は、国防省F-35計画室が対策を立案しており、翼を一部切り取って内部の配管の不具合箇所を交換や修復する手順の説明を受けたと語り、専門家が適切に対処してくれていると安心していると表現した

一方で、9月23日に発生したエンジン始動時の尾部からの火災については、「現時点では根本原因に言及するのはまだ早い」との述べ、「通常我々はこの様な事案に際しては、調査チームを派遣し、全ての事象を精査し、発生事象の根っこに立ち返り、原因が判明したら全てに対策を講じるが、そのプロセスの最中にあると言うことだ」と表現するに止めた

日本用1番機のロールアウト式典当日に発生
「9月23日の火災」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24

「multi-domain」と迅速な情報共有&判断を語る
●Goldfein大将は、各ドメインを司る作戦センター間で、将来の戦いの様相に追随するため、情報をより迅速に伝達する必要があると語った。
●同大将は、中央軍での空軍司令官当時を回想し、同司令官としての主任務は最適な航空アセットを作戦地域に投入する事だと信じているが、実際に大半の時間を費やしたのは、地域をまたぐ戦いで全ドメインと調整して任務を遂行するため、必要な各ドメインの能力を集めて最適化し、その指揮統制を行う事だったと語った

Goldfein1-1.jpg●同参謀総長は、当時のCAOC(連合航空作戦センター:combined air operations center)が、宇宙や救難救助や米国政府関係機関やコアリション参加国代表等が協力して任務を遂行する様子を「魔法のようだった」と表現したが、同時に将来の戦いを考えるとあまりにも業務速度が遅いと語った

●そこで同大将は、機能の垂直統合や自立判断ソフト(autonomous soft)の活用により、各ドメイン間のやりとりを迅速化する手法を提示した
●そして、各軍種は既に基礎的な「multi-domain融合」を理解しているが、今必要なのは「次のレベルへの発展である」と表現した
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F-35の火災は、今頃になって試験飛行の負荷強度が上がり始め、やっと本来早期に潰しておかねばならない問題が表面化してきたと捕らえるべきでしょう。

今現在、F-35の飛行試験が継続されているのか、中断されているのかも不明ですが、決して根の浅い問題ではないと思います。航空機がエンジン始動段階で火災を起こすなど、完成機ではほとんど発生しない事態だからです。

multi-domain.jpg先日、曖昧な「A2AD」との用語を使用中止にする米海軍トップの話をご紹介しましたが、この「multi-domain融合」も各軍種が都合のいいように解釈し、統合の場で議論が食い違いそうな気配を感じます。

これに議会が絡み、同盟国まで巻き込むとなると想像に難くないでしょう・・・。
まぁ・・・そのうち、「multi-domain」とか「Cross-domain」とか言い始める日本人も出てくるでしょうが・・・。まんぐーすのことか?

関連の記事
「Work副長官が空軍に迫る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
「ハリス司令官はCrossドメインと」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-05
「空軍トップ:ピクチャー共有」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-21

日本用1番機のロールアウト式典当日に発生
「9月23日の火災」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24

2014年6月のF-35エンジン火災
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08

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比国防相が米軍に南シナ海共同警戒中止を通告 [安全保障全般]

Lorenzana2.jpg7日、フィリピン国防相が記者団に対し、米軍に対して南シナ海での共同パトロールや演習を中止すると伝えたと語りました。フィリピンのDuterte大統領が対米関係に関し過激な発言を続けている中ですが、初めて実務レベルで両国軍時関係を後退させる動きが明らかになりました

更に同国防相は、フィリピン南部に駐留してイスラム過激派対策を行っている107名の米軍人の国外退去にも言及し、年間約30回実施されている米比軍共同訓練の全てを中止するよう比大統領が求めているとも明らかにしています

また、比大統領が同国防相に、中露を訪問して武器購入交渉を行うよう命じていることも明らかにしています

同日にはDuterte大統領が、米国を批判して中国に向かう旨の発言もしており、引き返せないところに近づきつつあるような気がして心配です

ただ同国防相は両国関係について、難しい時期もあるが、時間が経てば回復するとの主旨の発言もしており、実務を預かる責任者として複雑な思いも示唆しています
米国側は正式には聞いていないとの「取りあえずコメント」で、本件を伝えるAP通信は日本との関係には変化が無いとも言及しています。

7日付 AP通信web記事によれば
Lorenzana.jpg●フィリピンのDelfin Lorenzana国防相は、フィリピン大統領がここ数ヶ月間発言してきた、南シナ海での米軍との共同パトロールや演習を中止すると米軍に伝えたと記者団に語り、 大統領発言を初めて具体化する事が明らかになった
●更に同国防相は、南部での無人機を使用したイスラム過激派偵察任務を担当する部隊を含む107名の米軍部隊を、フィリピン軍が同能力を獲得次第帰国するよう要請すると語った

●また国防相は、Duterte大統領が年間28回の米比軍事演習の中止を求めており、現在実施中の米比共同着上陸演習が最後の演習になることを望んでいると明らかにした
●なお7日にDuterte大統領は、「私が大統領である限り、フィリピンをドアマットのように扱うな。なぜなら、そんなことをすれば米国が後悔するからだ。米国とは話はしない。私はいつでも中国に行ける」と述べ、再び「私の強硬姿勢を非難するなら、大統領から追い出して見ろ」と演説した

米国務省のカービー報道官は、米国はフィリピンから軍事演習を中止するとの公式通知を受けた覚えはないと語り、両国間の条約に基づき、フィリピンの安全保障にコミットしていくとコメントしている
●そして同報道官は「このような比大統領の発言を、それが実際の行動を伴うものかどうかにかかわらず、フィリピンと長年に渡って構築してきた親密な関係とそれを完全に維持したいと考える我々は、驚きと困惑をももって受け止めている」と言及した

Lorenzana3.jpg国防相は、米軍関係者が65年の歴史がある両国関係を懸念していることを承知しつつも、いずれ関係が回復することに楽観的な姿勢も示唆し、「道路のでこぼこに差し掛かろうとしているが、国家間関係はそのようなもので、時には難しい時期もあるが、いずれ元に戻るだろう」とも記者団に語っている

●また、Duterte大統領が引き起こしている米国関係の混乱は、必ずしも日本のような米同盟国には広がっていない。日本はフィリピン軍の偵察能力強化に、監視艦艇や偵察機5機を提供することになっており、11月に予定の偵察機受け取りに変化はない
●ただしDuterte大統領は中国やロシアとの関係強化を視野に置いており、国防相は、大統領から中露を訪問して軍事装備の調達について協議してくるよう命令されているとも記者団に語った
//////////////////////////////////////////////

フィリピンのLorenzana国防相は元軍人(陸軍大将)です
ですから、軍事や安全保障に関する現実的な感覚を持っており、米国との関係が如何に重要かは「肌感覚」で理解しています。ですから「時には難しい時期もあるが、いずれ元に戻るだろう」と希望せざるを得ないのです。

Lorenzana4.jpgしかし所詮はDuterte大統領の部下ですから、中露と仲良くしろと言われれば、辞任しない限り、その方向にゆっくりとでも進まざるを得ないのでしょう。
「比軍にイスラム過激派の偵察能力が備われば・・・」と言った、時間稼ぎの発言が出来る間はOKでしょうが、いつまで出来るのやら・・・

Duterteをだしに、米軍が日本にフィリピン支援を丸投げしたりしないよう、また丸投げされないよう、用心深く構えておくことも大切でしょう。

米国とフィリピン軍事関係
「C-130が2機だけ展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-27
「比大統領南シナ海共同を拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15-1
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03

「EA-18G電子戦攻撃機が展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-18
「国防長官が交代派遣発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16

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在日米軍司令官に軽量人事!? [米空軍]

Martinez.jpg6日、8月から空席になっていた在日米軍司令官(兼5空軍司令官)に、輸送機操縦者でアジア勤務経験がなく、海外勤務も統合部署経験もわずか3年間のみのJerry Martinez少将が、中将に昇任して就きました。

なお、米空軍が6日に発表したのみで、勤務場所の横田基地に到着したかも7日時点では不明です。また厳密に言えば、5空軍司令官は、予備役のような「少将」が一時的に職務を行っていたので「完全な空席」ではなかったですが・・・

更に、日本時間の8日朝7時時点では、Jerry Martinez新司令官の米空軍公式公開経歴は「少将」のままで、職務も「米空軍輸送コマンドの作戦部長」のままであり、バタバタの人事であったような印象を与えます

US Forces Japan3.jpg在日米軍問題など複雑な課題を抱えて重要なはず(この認識が間違いかも!)の在日米軍司令官を、8月から2ヶ月間も空席にしたあげく、アジア経験がない人材を送り込む人事には色々な思いがよぎります。

特に前任者であるDolan中将が、輝かしいポストである米空軍司令部の作戦部長にご栄転された直後であるだけに、その落差を感じざるを得ません(Martinez新司令官には大変失礼ですが・・)

Jerry Martinez新司令官の経歴あれこれ
1986年米空軍士官学校卒業(防衛大学校30期相当か)
●C-17、C-5、C-141輸送機及びKC-135空中給油機のパイロットで4千時間以上の飛行時間

Martinez2.jpg2010年3月から2011年4月までの間に、アフガンのカブールで治安維持部隊の引き継ぎコマンド副司令官を准将として務めるまでは、一貫して米国内の輸送機及び空中給油機部隊勤務
●上記カブール勤務と、その後、2013年6月から2015年5月まで、オランダのNATO空軍司令部で作戦担当副参謀長を務めた以外は、海外での勤務経験なし

統合職での勤務は、上記2ヶ国での統合ポスト勤務以外に、2001年6月から2年間、米輸送コマンド作戦センターで、中佐としての輸送システム班長職だけ
●その他は、イリノイ州、カンサス州、オクラホマ州、ワシントン州とワシントンDCで、輸送機や給油機部隊勤務です

●士官任官後のお勉強歴も、米陸軍指揮幕僚大学、米空軍大学AWC、デュポン社国防省フェロー、統合軍幕僚大学であり、ケネディースクールとかハーバードとかではありません
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US Forces Japan2.jpgもちろん、2013年8月に少将昇任ですので、優秀な幹部としての処遇がなされていますが、2か月間以上の空席が示すように、それなりの扱いのポストなんでしょう。

または、戦闘機パイロットばかりじゃ組織がダメになるから、多様性を追求しろとホワイトハウスや国防長官から言われているので、これまでの経験に関わらず、将来のために泥臭い仕事が多い在日米軍司令官を経験させるための人事配置なのでしょう・・・

家族構成の記述がありませんが、奥さんが日系やアジア系の可能性もありますが・・・。
いずれにしても、米空軍は早急にJerry Martinez新司令官の経歴webページを更新した方が良いと思います!→やっと更新されました!

Martinez新司令官の経歴
http://www.af.mil/AboutUs/Biographies/Display/tabid/225/Article/108505/lieutenant-general-jerry-p-martinez.aspx

8月に離任した前任のDolan中将について
「日本が命の恩人」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-21
「次の在日米軍司令官候補」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-19

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ハリス司令官が「Cross-Domain」能力を訴え [Joint・統合参謀本部]

AUSA 2016.jpg4日、ハリス太平洋軍司令官が米陸軍協会総会に「Skype映像」で講演し、アジア太平洋地域の脅威環境を考えれば、特定の軍種が特定のドメイン(陸海空宇宙サイバー等)での戦いを主導するのではなく、全軍種が全ドメインに関われるような「cross-domain」能力を備え、かつ全軍種の「cross-domain」能力を融合して戦う必要があると訴えました

9月21日にはWork副長官が米空軍協会総会で講演し、米陸軍中将が提唱する「Multi-domain battle」論を紹介しつつ、「第3の相殺戦略」に取り組む米陸軍を讃え、返す刀で米空軍に奮起を促していましたが、ハリス司令官も「Cross」して「Multi」なドメインで全軍種が戦うイメージを共有しているようです

「副長官が米空軍の尻を叩く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28

そしてその考え方の背景には、Work副長官が3つの側面から指摘していたように、アジア太平洋地域では友軍戦力の大規模集積が不可能で、敵対国がかなりの能力の誘導兵器で少ない展開基盤を攻撃可能で、かつ米側のネットワーク依存を弱点としてサイバーや宇宙兵器に力点を置いている厳しい現実があります

5日付米空軍協会web記事によれば
Harris CSIS.jpg●ハリス司令官は「現在の世界情勢を踏まえれば、cross-domain能力の導入は喫緊の課題である。特にインド-アジア太平洋地域においては」と訴えた
●そして「脅威に先行して対処するには、組織的な惰性や慣行がcross-domain作戦への移行を妨げることがあってはならない」と述べた

●背景として司令官は、人口が増加して世界の中での経済的比重が成長を続ける当地域に、ハイエンド紛争用の軍事力が急増し、「multi-domain」な戦域になっているからだと述べた
●そして、ロシアや中国がネットワーク化された艦艇や潜水艦や航空機に搭載される長距離弾道ミサイルによるA2AD能力を備え、唯一21世紀に核兵器実験を行った北朝鮮が当地域に存在すると言うことだと説明した

●「Cross-domain能力」の例としてハリス大将は、米陸軍も敵艦艇を撃沈し、敵衛星を無効化し、敵のミサイルを打ち落とし、敵の指揮統制系統を妨害したり「Hack」したり出来なければならないと説明した
AUSA 2016-2.jpg●そして、敵が作戦したいと考えるドメインで彼らの行動を拒否することで、融合された(cross-domain能力を持つ)統合戦力は新興勢力を抑止できるのだと語った

●「我々は過去の計画立案者よりも、遙かにより多くのドメインで統合作戦を実施可能でなければならない。我々は統合の度合いを高める必要があり、特定の軍種が特定のドメインを支配することなく、どのドメインも内部に固定された軍種の縄張りを設けてはならないと考える」と訴えた
●更に、「全てのドメインで即応態勢を保って勝利を勝ち取るには、戦闘コマンド司令官は、どのドメインからでも、他のドメインに存在する目標に所望の影響を与えられるようでなければならない」と語った
/////////////////////////////////////////////////

25年前の湾岸戦争時のように、50万人の兵力と空母3隻と数百機以上の航空機をアジア太平洋戦域に展開させることは不可能だから、展開可能な限られた戦力が複数のドメインで活躍してくれないと対処できないし、又は遠方から戦力投射するしかないと言うことでなのでしょう。

Harris4.jpgただ「Cross-domain能力」の獲得は良いとして、厳しい予算状況であるが故に軍種間の縄張り争いは熾烈でアリ、また米議会も同じような能力を複数軍種が保有することに厳しい目を向けることになるでしょう。

日本が一番に考えなければならない「Cross-domain能力」でしょうが、予算獲得過程で精緻に「装備の縄張り」は区分され、財務省の厳しい目もあり、話を持ち出すだけでマスコミにリークされて民共連合の餌食になりそうです。

とりあえずは、米国がこの「Cross」して「Multi」なドメイン能力をどのように具体化するのかを見守りたいと思います。

関連の記事
「副長官が米空軍の尻を叩く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
「迅速にピクチャー共有を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-21

地上部隊にA2AD網を期待
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

「Multidomain battle」の解説記事
http://warontherocks.com/2016/09/multi-domain-battle-a-new-concept-for-land-forces/

Work副長官と「第3の相殺戦略」
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15

「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26

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米海軍トップ:曖昧用語「A2AD」は使用禁止 [Joint・統合参謀本部]

Richardson22.jpg3日、CSISで講演した米海軍トップのJohn Richardson海軍作戦部長(CNO)は、その示す意味が曖昧な「A2AD」との用語の使用を米海軍内で禁止すると語りました。

同大将は、CNOに就任直後に、100年以上も米海軍人の間で使用されてきた「sailorやpetty officer」との呼称を止めさせ、「operations specialists」とか「gas turbine system technicians - electrical」等の呼び名への変更を進めてきた「用語にこだわりのある人物」です。

以上の経緯もあり、今回の「A2AD」使用禁止を斜に構えて冷ややかに見る向きもあるようですが、その理由に耳を傾けるのもお勉強の一つと考え取り上げます

3日付Defense-News記事によれば
●「改めて皆さんにも問いかけたい」と語り始めたRichardson海軍作戦部長(CNO)は、ペンタゴンやワシントンDCで飛び交う様々な短縮用語が、本来の意味から離れて使用されたり、元の名前より広く知られるようになる事がしばしばあると指摘した
●そしてその様な短縮用語が、使用する人によって意味がまちまちで、同じテーブルで議論していても議論がかみ合わないケースが決して少なくないとも指摘した

Richardson11.jpg●そして同大将は、「A2ADとの言葉の使用を控えようと思う」と述べ、用語A2ADが様々な意味で理解され自由に使用されており、意思疎通に必要な正確な定義が不足して課題が生じていると表現した
例えば、「denial」との言葉は既に確立した状態を想起させるが、作戦上の実態はより複雑であろうと述べ、また戦史上でも決して目新しい事を指しているわけでないと語った

●また、「A2AD」が防御を意識させ過ぎると感じており、現実における防御と攻撃の混在両用とは異なったイメージを与えがちな点も不適切だとCNOは語った
●更に、「A2AD」は2000年代から好んで使用されているが、今日のより悩ましい課題、更に高度化している敵ミサイルや敵ISR等の最新の脅威を見逃す可能性を懸念もしていると表現した

しかしRichardson大将は、「A2AD」の換わりとなる言葉や表現を示さず、「申し訳ないが、代替の表現を具体的に持ち合わせていない」「しかしワンフレーズの短縮表現が混乱を生み、明確さを欠くことを指摘しておきたい。その様な用語を使用する代わりに、より具体的な戦略や能力について議論すべきだと思う」と語った
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CSISが掲載の講演動画
https://www.csis.org/events/maintaining-maritime-superiority-admiral-john-richardson

米海軍の内部に限った用語「A2AD」使用禁止だと思いますが、一理あるような気がしますし、「より具体的な戦略や能力について議論すべきだ」との指摘は、脅威の最前線にある日本の国防関係者に向けられた言葉と言っても過言ではないでしょう

innovation3.jpg「A2AD」と語っていれば知ったかぶりが出来た時代は過ぎ、組織を動かす少佐や中佐レベルが骨身に染みて「脅威の変化」を感じている必要があるのですが、依然として自衛隊トップレベルが「防衛白書」レベルの「セピア色の脅威認識」で部下に語っているようでは、組織の意識改革は進みません

Richardson大将に言われるまでもなく、「A2AD」使用禁止が必要だとは言いませんが、より具体的に脅威と対処を議論する必要性を強く感じます

Richardson海軍作戦部長(CNO)関連の記事
「呼称CBARSは好きでない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-17
「同大将の初海外は日本」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-25
「海軍内では信頼薄い!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-14
「ノミネート会見」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-16-1

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米軍空中給油機の後継プランを見直しへ [米空軍]

Everhart.jpg9月20日、米空軍協会総会(ASC16)で米空軍輸送コマンド司令官Carlton Everhart大将が空中給油機の将来態勢について言及し、これまで想定していた老朽化が著しい「KC-135とKC-10」を、「KC-X(KC-46)とKC-YとKC-Z」の3機種に置き換える計画を変更し、「KC-Y」をスキップする方向で検討を始めると語りました

KC-Yをスキップ(省略)するとは、新規開発「KC-Y」の代わりに、KC-46Aの改良版を「穴埋め」として購入することをイメージして想定されており、KC-46に先進通信中継システムや自己防御用レーザー兵器の搭載する改修がアイディアにある模様です

そして2030年~35年から導入開始を想定する新規開発「KC-Z」は、第5世代機とともにA2ADエリアに侵入可能なより小型でステルス性を備えるタイプをイメージして軍需産業関係者と話を始めていると語りました

背景には、他にも重要装備の調達計画が目白押しで、2030年~35年頃まで待たないと予算の目途が立たない現実もあり、同司令官も本音を示唆しています。

「KC-Z」に関する同司令官の発言
Everhart4.jpg●Everhart司令官は、敵の防空網が発展を続ける中、米空軍はステルス戦闘機と行動を共にできる突破型の空中給油機を必要とするだろうと語った
●そして、今年中には(KC-Zの)公式検討を開始して方針を定めると語り、「公式検討がまとまったなら、具体的計画に進み、予算面で可能性がありそうな2030年~35年頃の調達を目指す」と語った

現在の空中給油機は大型民間旅客機をベースにしたタイプで、敵の活動領域から離れたエリアで味方小型機に給油しているが、将来このような方法は効果的・効率的ではない
●また給油機はその登場以来、同じ方法でブームや受け口を使用して給油を行っているが、我々は自動化(autonomy)を追求している。

●また米空軍研究所とも協議を進め、特に軍需産業とは生まれたてから既存の技術情報を収集するために協力してもらっており、10月には企業を集めたイベントを計画している
Everhart3.jpg5世代戦闘機に敵空域まで追随するためステルス性を求めており、企業にはレーダー反射を低下させ小さく見せる「cloaking device」の開発を求めている

●低視認性を目指し、機体形状も「flying wing」や「blended wing」を導入したいと検討しているが、これは検討の氷山の一角に過ぎず、様々な技術を広く検討している
米空軍はKC-46Aを179機購入することにしているが、「KC-Z」が何機必要かは、どのような有事所要があるか見極める必要がある。敵の動向やどの程度の能力が実現できるかを踏まえ、KC-46との比率も検討する必要がある
///////////////////////////////////////////////////

スキップする事になりそうな「KC-Y」が、本来どのような機体を狙っていたのか気になりますが、KC-46Aに付加したい装備が通信&中継能力や自己防御レーザーとの話は腑に落ちる話です

Everhart2.jpg米海軍初の空母艦載無人機「MQ-25A Stingray」が空中給油機となり、ステルス性は後回しにしつつ2020年代前半に運用開始を目指す方向にあることを考えれば、2030年以降に実現する新型空中給油機はチョット遅いな・・・と感じます。しかしお金がないから仕方がないか・・・

戦闘機や爆撃機など攻撃アセットがステルスを追求し、次に空中給油機が続き・・・その後は早期警戒管制機とか救難機とかも続くのでしょうか・・・。

米空軍の空中給油機ゴタゴタ
「KC-46ブーム強度解決?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-15
「納期守れないと認める」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-01
「Boom強度に問題発覚」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-03

海軍の空母艦載無人機もゴタゴタ
「名称決定MQ-25A Stingray」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-17
「UCLASSはCBARSへ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-02

「UCLASS選定延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-05-1
「米海軍の組織防衛で混乱」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-01
「国防省がRFPに待った!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-12

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統参議長:米空軍は外国軍訓練をもっと重視せよ [Joint・統合参謀本部]

Dunford AFA.jpg9月21日、米空軍協会総会の最終日に登場した米軍人トップのダンフォード統合参謀本部議長は外国軍を訓練して能力向上させる任務の重要性について、米空軍内の意識が低く、軽んじられていると厳しく指摘しました。

米空軍の主要幹部がほぼ全て勢揃いの会場で、アフガンで訓練に従事する自身の「甥」まで証拠として引用し、「この任務の重要性を判っているのか? 君たちはこの任務の魅力化に何かやっているのか?」とストレートな詰問口調です

厳しいなぁ・・・は大変だなぁ・・と率直に思いますが、数年前から我が国自衛隊にも降って湧いたように「能力構築支援:Capacity Building support」なる任務が急増し、アフリカから中東、東南アジアからモンゴルまで、自衛官等が飛び回っている現状です

ダンフォード議長は厳しい口調で・・
A-29 Afghan.jpg●パイロット不足、連日行われている対ISIL攻撃、厳しい予算の中での取捨選択など、米空軍は全力で任務に取り組んでいる。そして国防省では、その負担軽減のため、数年に亘り負担を同盟国等に担ってもらえる様に取り組んできた
同盟国や友好国の空軍を訓練することに、特段の重要性があると考えよニーズがあると考え、その任務に従事する空軍兵士の動機付けも含め、空軍としてしっかりと取り組め

同盟国等を訓練することは中核任務である。決しておざなりな姿勢で臨む第2優先の任務ではない
●我々が世界中で全ての軍事任務を担うことは出来ない。従って米軍は戦略として、過激派が戦力を拡大しないよう、限定的な予算を用い、アフガニスタンやイラクやシリアのような国で有効な軍を育成すること当たっているのだ。

自分の甥や現場の教官達の声を引用し・・・
●最近、アフガン空軍操縦者の訓練を行っている米空軍部隊をアフガンで訪問し、米空軍と共に赴任して教官を務めている私の甥やその同僚達3~4名に話を聞いた。
MD-530 Afghan.jpg君にとっていい仕事かと聞くと、彼らは皆うつむき加減で、はっきりと答えたくない様子だった。また、皆がやりたがる競争率の高い仕事か、君のキャリアアップのために望ましい仕事かと尋ねたら、彼らは否定的に答えた

この会場の全員が、何が重要か、どのように兵士を動機付けするかを考えて欲しい。仮に若い大尉が、アフガン空軍の訓練を魅力的でなく、空軍内部でも価値の無いものと見なされていると感じたら、必要な人材を任務に付けられない
●そして適切な人材を訓練に派遣できなければ、アフガン空軍を望む方向に育てられないのだ

なお、8月にアフガン空軍は、27機のMD-530ヘリを全て受領した。また8機のA-29軽攻撃機を受領し、今後更に12機を2018年末までに受け取る予定である。
アフガン空軍操縦者の訓練は、米国ジョージア州の米空軍基地でも行われている
////////////////////////////////////////////////////////

この内容と全く同じ事を、2009年にゲーツ国防長官(当時)が論文「A Balanced Strategy」で訴えています。
つまり米空軍内では当時と何ら変化無く、引き続き能力構築支援にほとんど力が入っていません

ロバート・ゲーツ語録36
http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19
海外の軍に助言して訓練し、装備品を提供するような重要な任務が、米軍内の優秀と目される幹部にとって、キャリア管理上魅力無いものと見なされているのではないか
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-27

Dunford1.jpg米陸軍や海兵隊でも、似たような状況ではないでしょうか? 逃げられ方が猛烈なので、地上部隊の方が士気低下度は低いかも知れません。
一方で、それなりの人材を送り込める可能性は地上軍の方が高いかも知れませんが・・

それにしても・・・判っていながらこの発言。ダンフォード議長の割り切りと、仕事に徹する姿勢がすごいです・・
/////////////////////////////////////////////////////////

ISILの米軍への化学兵器砲弾使用を否定
●22日に米軍人トップのダンフォード議長が上院軍事委員会で、9月20日にISILが米軍部隊に対しマスタードガス砲弾を使用したと証言した件に関し、28日国防省報道官は、一連の検査の結果、マスタードガスは検知されなかったと述べた

ISIS-TOYOTA.jpg●また同報道官は、20日の事象以降も、ISILが化学兵器を米軍に対し使用したとは確認されていないと語った
●一方で報道官は、「ISILが多様な機会に、イラクとシリアの両方で、化学兵器を使用した事を把握しており、今後の戦いの推移に応じ、米軍がその脅威に直面する可能性がある」と表現した


ダンフォード議長関連の記事
「ISが化学兵器で米軍を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-23
「統合参謀本部のスリム化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16
「初海外はイスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-20

「経歴や人柄紹介」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-02
「上院軍事委員会での証言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-10

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カーター長官がリバランス第3波を語る!? [カーター国防長官]

Carl Vinson.jpg9月29日、カーター国防長官がサンディエゴ停泊中の空母カールビンソン艦上で講演し、アジア太平洋リバランスの「第3波:third wave」「第3段階:third phase」や、国防省戦略能力造成室SCOによる兵器技術の「a few surprises」発表の可能性に言及しました

カーター長官は、ハワイで開催されるASEAN国防相会議に向かう途中であり、同会議への「手土産」を披露した形ですが、SCOが近々発表を匂わせるサプライズ技術は楽しみなものの、リバランスの「第3波」と言われても、第1と第2の波の実態が何だったのか思い出せないアジア諸国を「しらけさせる」気がしてなりません

中身をご紹介する前に失礼な表現で申し訳ないのですが、今年6月のシャングリラ会合で38回も飛び出した「Principled」 との言葉同様、リバランス「第3波」や「第3段階」との表現が短命なキャッチフレーズになりそうな予感がしてなりません・・・・

29日付Defense-News記事によれば
Carl Vinson2.jpg米国は中国の南シナ海での攻撃的な姿勢を非難することと、アジアの大国となった中国に手を差し伸べることの間をさまようような姿勢をとってきた。
●カーター長官が「誰もが発言し、誰も排除すべきでない。中国も含まれる」「中国自らが自身を排除することが無いことを願う」と語るのはこのような姿勢の現れである

●しかし「米国は中国の海やサイバー空間等での行動に重大な懸念を抱いており、中国が自らの利益のために必要な原則だけを尊重し、他を無視している見える」と表現して警戒感を示し、リバランスの「第3波」を明らかにし、3項目から構成されると説明した
●また、KC-46やF-35やB-21による戦力近代化に加え、国防省SCOが煮詰めつつあるサプライズな新能力・新兵器の発表が近くあるだろうと示唆し、「詳しく述べることは出来ないが、友好国も潜在的敵対国も全てが、これら新たな能力が、アジア安全保障への米国のコミットメントを強化するのを目にするだろう」と語った

リバランス「第3波」について長官は3つの項目からなると説明し、第1項目は米軍戦力がより頻繁に同地域に展開して、地域国軍との関係や安全保障強力を強化してきたことを指すと説明した。そして地域での各種演習が「今後も頻度や複雑さを増して高度化する」と語った
第2項目は、国防省以外の関与の増で相互運用性を高めることで、沿岸警備隊がASEANと協力したり、国務省による安全保障支援プログラムの増加などがあり、昨年シャングリラで表明した約430億円の「Southeast Asia Maritime Security Initiative」が好例である。

Carl Vinson5.jpg第3項目について長官は、地域国による新たなサイバー能力の構築であると語り、「日本や韓国やインドやシンガポールではネットワークが充実しており、各国がサイバー能力も高めているので、相互に学んでこの重要度メインで協力することができる」と述べた
●核となる米国のプランは、これらの国がネットワークを使い、技術的にもドクトリン面でも共に作戦することのようである。

●具体な将来のイメージとしてカーター長官は、「将来台風に襲われた後、豪州軍のP-8哨戒機がシンガポール軍人を乗せ、米海軍駆逐艦と連携して捜索救助活動を行う」と語り、「航行の自由作戦においても、実施可能だろう。ネットワーク化された各国の海軍や空軍による飛行や航行により、国際法が許す活動を行って地域の海上交通路が安全でオープンであることを示すのだ」と述べた
●カーター長官はまたTTPの重要性に触れ、「アジア太平洋にとってTPPは重要な機会であり、米国はこれを逃すべきではない」と語った

ちなみに米国防省web記事によれば・・
リバランス「第1波」と「第2波」は
リバランス「第1波」は、オバマ大統領がリバランスを宣言した5年前にスタートし、アジア太平洋地域での米軍体制を強化したこと
●「第2波」は2015年に始まり、戦力の質的改善に着手したこと
●そして「第3波」は、「第1波」と「第2波」での発展を固めるもの
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Carl Vinson4.jpgまぁ・・繰り返しになりますが、今年6月のシャングリラ会合で38回も飛び出した「Principled」 との言葉同様、リバランス「第3波」との表現が短命なキャッチフレーズになりそうな予感がしてなりません・・・・

米国防省の政策担当部署は、「Principled」や「第3波」とのキャッチコピーが意味を持つと考えているのでしょうか? 米国大統領選挙ではありませんが、次から次へと「新ネタ」を持ち出して票をもぎ取るような、品の無い外交になっているような気がしてなりません。

国防省戦略能力造成室SCOによる「a few surprises」発表には期待ですが・・・

言いたい結論は第3項目で、日本と韓国とインドと豪州とシンガポールが、南シナ海で「航行の自由作戦」を米国の変わりにやれ!・・・なんでしょうか!? 

関連のシャングリラ会議記事
「2016年会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
「2015年会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-28

そのほかの同会議
「2014年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
「2013年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「2010年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05

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イスラエルと合意後に湾岸諸国へ戦闘機 [安全保障全般]

9月28日、上院外交委員会のクロッカー委員長は下記の中東諸国への作戦機売却をホワイトハウスも承認したと語りました。
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US Israel.jpg9月14日、米国政府がイスラエルへの今後10年間(2019~28年)の軍事援助額等について、イスラエルと合意文書に署名しました。援助の詳細内容をめぐって数か月にわたり両国間で重ねられて来た議論の末、10年間で約3兆9千億円に及ぶ史上最大規模の軍事援助が決まりました

日本のメディアは「史上最大規模」の部分にのみ注目していますが、以前ご紹介したように、今回の合意の最大のポイントは、実質4割近くにまで及んでいた援助資金のイスラエル国内企業での消費を段階的に削減し、米国軍需産業からの調達に絞る約束が盛り込まれたことです

力を付け米国企業と世界市場で争うようになったイスラエル軍需産業への補助金的な使用を制限し、米国軍需産業を守るための分かり易い米国政府の姿勢です。両国関係の変質とか言われましたが、激論の末に「段階的に」で合意したようです。未だに親イスラエル議員は、議会では阻止すると吠えているようですが・・・

本日の話題は、この困難な米イスラエル間の最大案件が落ち着いたことで、中東湾岸諸国が2年間も待たされた戦闘機売却話がやっと進展しそうとのお話です。
中東におけるイスラエル軍事力の「質的優位を維持する」との両国関係の大前提を踏まえ、分かり易く湾岸諸国が「後回し」にされた構図です

15日付Defense-News記事によれば
US Israel 2.jpg●14日、上院外交委員会のBob Corker委員長は、「イスラエルとの合意が成立し、カタールとクウェートとバーレーンとの武器売却交渉の詰めに進むことが出来て嬉しい」、「2つの交渉に関係がないような振りをしているが、率直に言えば、身代金が届いて人質が解放されたような気分だ」と吐露した
カタールへの72機のF-15Eストライクイーグル売却と、クウェートへの28機のFA-18E/F売却(追加で12機のオプション付)が、イスラエル軍事力の質的優位を維持する上で許容されるべきかどうかについて、2年以上も結論が先延ばし保留されてきたのだ

●イスラエルとの交渉はデリケートで、イスラエル側も米国政府と交渉した内容について一切メディアにコメントしてこなかった
●米国内的には、ボーイングのF-15とFA-18生産ライン維持に関わる死活的問題で、バーレーンが希望する18機のF-16はロッキード社にとって大きな案件である

両国の関係者発言
US GCC 2.jpg●15日、今春までイスラエル国防相だったMoshe Ya’alon氏はDefense Newsに対し、湾岸諸国への戦闘機売却はイスラエルへの軍事援助合意とリンクしていると語り、「イスラエル軍事力の質的優位を維持するため、案件によってはイスラエルが留保権(reservations)を持っている」と語った

●一方で上院外交海外活動小委員会のLindsey Graham委員長(上院軍事委員会のメンバー)は15日、最近イスラエルを訪問した米議員団に対し、イスラエル側は今回の戦闘機売却について議論を求めなかったと語り、「本件がイスラエルの立場を変えるとは思わない」と主張した
米国防協力庁のJoseph Rixey長官は、イスラエルとの合意と湾岸諸国への戦闘機売却の関係について問われ、「私が言えるのは、イスラエルと軍事援助執行の仕事をすることを楽しみにしている事だけだ」とのみ語った
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日本のメディアが触れない中東軍事の一つの構図ですので、ご参考まで取り上げました。ますます流動化する中東情勢を見る参考になれば・・・

ところで・・・中国のA2AD能力強化で「脅威の変化に直面」する日本とは事情が異なりますが、イスラエルも周辺諸国への軍事技術の拡散で「脅威の変化に直面」しています。
ですからF-35購入決定に際しては、本当に戦闘機に莫大な投資を続けるのかに関し、国を2分する激論が行われました。

「イスラエルがF-35で激論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-01

Birds-Tra2.jpg神出鬼没なヒズボラ戦闘員による旧式のロケット弾攻撃を、最新装備のイスラエル軍が制圧できなかった反省、弾道・巡航ミサイルの拡散、過激派による不正規戦、ISILの台頭などを前に、第4次中東戦争までの思考を引きずっていて良いのか等々の議論です

このような「脅威の変化」に向き合う議論が、日本では何時になったら出来るんでしょうか? 軍人が口火を切り、政治家にも有識者層を形成し、国民の意識レベルも高め・・・気の遠くなる道のりですが、少しづつでも・・いつの日か・・・

攻防:イスラエルへの軍事援助10年計画
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-26

米国とイスラエル関係関連
「6つの迎撃ミサイルでBMD演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-07-1
「イスラエルF-35は独自装備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-05-1
「史上最大の多国間空軍演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-03
「新統参議長:初海外はイスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-20

湾岸諸国と米製兵器売り込み
「FMS手続きの簡素化へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-05
「ドバイの脅迫:軍需産業の懸念」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-01
「湾岸諸国はF-35不売で不満」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-16
「海外売込みに助言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-27

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日本の空中給油機に赤外線ミサイル防御装置 [ちょっとお得な話]

KC-46-2.jpg9月21日、米国務省の武器輸出を審査する部局DSCAが、日本への空中給油機KC-46AのFMSを許可すると発表しました。DSCAは「Defense Security Cooperation Agency」で、FMSは「Foreign Military Sale」の略です。

この許可通知の中で目を引くのが、日本のKC-46に赤外線追尾の要撃ミサイルを無効化する、LAIRCMとかDIRCMとか呼ばれる装備を搭載して売却することが明記されている点です。
DIRCMは「Directional Infrared Countermeasure system」で、LAIRCMは「Large Aircraft Infrared Countermeasures system」の略です

国務省DSCAの発表によれば
●日本にFMSで4機のKC-46Aと関連装備を推計約2000億円で売却を許可する。
●それぞれの機体には2つのPratt &Whitney製のModel 4062 (PW4062)ターボファンエンジンを搭載し、1基の予備エンジンも含まれる

DIRCM-NG.jpg●関連装備として、GPSレシーバーと航空機防御システムを搭載し、GPSレシーバーはレイセオン社のMiniaturized Airborne GPS Receiver (MAGR) 2000で、ハッキングやサイバー攻撃対処能力を付与するもの。(注:他にも無線機や敵味方識別装置や訓練装置や支援サービスや関連取り扱い操作書等も含まれています)
航空機防御システムは、レイセオンのALR-69A Radar Warning Receiver(RWR)と、Northrop Grummanの赤外線ミサイル妨害装置(LAIRCM又はDIRCM:AN/AAQ-24(V))である

赤外線ミサイル妨害装置は以下により構成されている
three Guardian Laser Terminal Assemblies (GLTA)
six Ultra-Violet Missile Warning System (UVMWS) Sensors AN/AAR-54
one LAIRCM System Processor Replacements (LSPR),
one Control Indicator Unit Replacement,
one Smart Card Assembly, and one High Capacity Card

赤外線ミサイル妨害装置(DIRCM)とは
DIRCM-NG3.jpg機体全周をカバーするセンサーで、航空機に向け発射された要撃ミサイルを探知し、同ミサイルにレーザー光線を照射することにより、赤外線追尾ミサイルであった場合はミサイルの赤外線探知追尾センサーをマヒさせて無効化する装置
●Northrop Grumman製の同装置(AN/AAQ-24(V))は、軍用大型機やヘリに搭載され、米軍や英国軍特殊部隊のC-130輸送機等を中心に約750台が提供されているが、カタールの政府専用機などVIP専用機にも搭載されている

●同社は、同製品が現時点で世界で唯一、世界中のテロリストや第3国までもが使用するようになっている、最新の赤外線追尾ミサイルに対して有効な妨害装置だと宣伝している
●同社の他に、イスラエルのElbit社が同様の装備を、19機種に計約100台出荷していると宣伝している。

原理が同じElbit社のDIRCM装置宣伝映像(約2分)

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その道に詳しい方には「そんなの当たり前・・」と言われそうですが、米国から無理矢理売りつけられたのかもしれませんが、それでも戦闘機以外の重要装備にこのような自己防御装置が付くことは嬉しいことです

レーザー自己防御装置がそれなりに成熟したら、レーダー誘導ミサイルにも対処できそうですから、そちらへの配慮も忘れないようにして欲しいものです。航空自衛隊様!

レーザー自己防御装置の状況
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「まずC-17搭載レーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-23
「特殊作戦C-130にレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31

「米国防次官は慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12
「開発担当将軍も慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24

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