カナダがミサイル防衛を再考し米と協力へ [安全保障全般]
F-35には強い警戒感も、BMDでは現実路線へ転換か
9月28日付Defense-Newsは、2005年に一旦はミサイル防衛に関する米国からの協力依頼を断ったカナダ政府が、最近の軍事的脅威の動向を踏まえ、米国が進める地上配備ミサイル防衛システムGMDに協力する方向で検討が進みつつある様子を伝えています
GMDは「Ground-Based Midcourse Defense system」の略で、中距離弾道ミサイルよりも飛翔速度が速く迎撃が難しい大陸間弾道弾ICBMに対処するBMDミサイルシステムで、高価なため米本土でも西海岸の一部に少数が配備された程度が現状です。
ロシアや中国や北朝鮮、更には中東から発射されるICBMを対象と考えれば、早期警戒や対処のため、北極圏をはさんで脅威の前面に立つカナダにとって、自国の脅威対処に重要なだけでなく、米国にとって必要不可欠なパートナーのはずです
昨年秋に自由党のトルドー首相が首相に就任し、F-35購入決定の再検討を指示するなど、米国にとっては「一筋縄では行かないカナダ」ですが、BMD分野に関しては軍事的合理性に基づいた判断に進む気配を感じます
9月28日付Defense-Newsによれば
●カナダ議会は政府に対し、2005年に当時の自由党政権が拒絶した米国ミサイル防衛システムへの米国からの協力要請を、受け入れて協力する方向で再検討するよう促している
●2005年に当時の自由党政権のPaul Martin首相は、ブッシュ米大統領から直接GBMDへの参加協力を要請されたが、米国との軍事同盟の再確認は行ったものの、BMDに関しては踏み込まなかった
●しかし現在の自由党政権は議会の要請も受け、Harjit Sajjan国防相(ターバンのシーク教徒)が実施中の「defense review」の中で、米国主導のシステムの中で如何なる役割を果たしうるか検討していると発言している
●そして検討のため、かつての自由党政権で国防相を勤めたBill Graham氏をアドバイザーに迎えている
●議会の軍事委員会が最近まとめた報告書「Canada and the Defence of North America」では、政府に巡航ミサイルや関連技術が拡散していることを指摘し、カナダ防衛のため適切な行動を起こすよう求めている
●このような行動を通じて獲得された新しい能力は、米カナダによる北米航空宇宙防衛コマンドNORADに対する、カナダの大きな将来の貢献になる可能性がある
具体的なアイディアとしては・・・
●カナダ軍高官は具体的に、GMD用のレーダーや迎撃ミサイル基地で貢献するオプションや、多用途センサーを北極海沿岸に設置して、弾道ミサイルだけでなく北極圏の艦艇や航空機を監視することを想定している。
●また、2015年4月にはカナダ国防省の研究機関が、「continental surveillance radars」の調査研究を行う意志を示し、「NORADとの相互運用性を強化することにつながる可能性がある」と述べている
●2015年には更に、カナダ政府が東海岸沿いの「LabradorのGoose Bay」にXバンドレーダーを設置し、中東から発射された弾道ミサイルの探知追尾に貢献する検討を行っている
●本件に関するアドバイザーに就任したBill Graham氏は、カナダによる米国BMDへの参加は、米国との強力な安全保障関係を守る鍵だと主張している
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イケメンで伊勢志摩サミットでも人気が高かったトルドー首相は、「F-35購入再検討」では「緊急の戦力補填」を理由として「当面FA-18を購入」を打ち出し、米国をなだめつつF-35を慎重に見極める高等戦術を繰り出しており、したたかな「策士」の一面もみせた若手政治家(刺青あり)です
しかし今回のミサイル防衛再考からは、キチンと専門家の声に耳を傾け、軍事脅威の変化を見極める冷静な視点を持った政治家の一面も見せています。
まぁ・・・米国と水面下で「ガチガチ」やっているのかもしれませんが、安全保障に関して安定感を感じさせる点で今後に注目したいものです。
米本土ミサイル防衛のGMD関連
「GMD関連2017年度予算案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-12
「2013年当時の計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-16
「北米軍作戦部長が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-10
カナダとF-35
「FA-18購入でF-35議論回避か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-09
「新政権もF-35になびく?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-24
「カナダにF-35反対首相」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-22
北極&極地関連の記事
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02
「ロシアが鉄の壁構築」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-07
「露軍が北極に部隊増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04-1
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09
「米軍C-17が極地能力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-02
9月28日付Defense-Newsは、2005年に一旦はミサイル防衛に関する米国からの協力依頼を断ったカナダ政府が、最近の軍事的脅威の動向を踏まえ、米国が進める地上配備ミサイル防衛システムGMDに協力する方向で検討が進みつつある様子を伝えています
GMDは「Ground-Based Midcourse Defense system」の略で、中距離弾道ミサイルよりも飛翔速度が速く迎撃が難しい大陸間弾道弾ICBMに対処するBMDミサイルシステムで、高価なため米本土でも西海岸の一部に少数が配備された程度が現状です。
ロシアや中国や北朝鮮、更には中東から発射されるICBMを対象と考えれば、早期警戒や対処のため、北極圏をはさんで脅威の前面に立つカナダにとって、自国の脅威対処に重要なだけでなく、米国にとって必要不可欠なパートナーのはずです
昨年秋に自由党のトルドー首相が首相に就任し、F-35購入決定の再検討を指示するなど、米国にとっては「一筋縄では行かないカナダ」ですが、BMD分野に関しては軍事的合理性に基づいた判断に進む気配を感じます
9月28日付Defense-Newsによれば
●カナダ議会は政府に対し、2005年に当時の自由党政権が拒絶した米国ミサイル防衛システムへの米国からの協力要請を、受け入れて協力する方向で再検討するよう促している
●2005年に当時の自由党政権のPaul Martin首相は、ブッシュ米大統領から直接GBMDへの参加協力を要請されたが、米国との軍事同盟の再確認は行ったものの、BMDに関しては踏み込まなかった
●しかし現在の自由党政権は議会の要請も受け、Harjit Sajjan国防相(ターバンのシーク教徒)が実施中の「defense review」の中で、米国主導のシステムの中で如何なる役割を果たしうるか検討していると発言している
●そして検討のため、かつての自由党政権で国防相を勤めたBill Graham氏をアドバイザーに迎えている
●議会の軍事委員会が最近まとめた報告書「Canada and the Defence of North America」では、政府に巡航ミサイルや関連技術が拡散していることを指摘し、カナダ防衛のため適切な行動を起こすよう求めている
●このような行動を通じて獲得された新しい能力は、米カナダによる北米航空宇宙防衛コマンドNORADに対する、カナダの大きな将来の貢献になる可能性がある
具体的なアイディアとしては・・・
●カナダ軍高官は具体的に、GMD用のレーダーや迎撃ミサイル基地で貢献するオプションや、多用途センサーを北極海沿岸に設置して、弾道ミサイルだけでなく北極圏の艦艇や航空機を監視することを想定している。
●また、2015年4月にはカナダ国防省の研究機関が、「continental surveillance radars」の調査研究を行う意志を示し、「NORADとの相互運用性を強化することにつながる可能性がある」と述べている
●2015年には更に、カナダ政府が東海岸沿いの「LabradorのGoose Bay」にXバンドレーダーを設置し、中東から発射された弾道ミサイルの探知追尾に貢献する検討を行っている
●本件に関するアドバイザーに就任したBill Graham氏は、カナダによる米国BMDへの参加は、米国との強力な安全保障関係を守る鍵だと主張している
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イケメンで伊勢志摩サミットでも人気が高かったトルドー首相は、「F-35購入再検討」では「緊急の戦力補填」を理由として「当面FA-18を購入」を打ち出し、米国をなだめつつF-35を慎重に見極める高等戦術を繰り出しており、したたかな「策士」の一面もみせた若手政治家(刺青あり)です
しかし今回のミサイル防衛再考からは、キチンと専門家の声に耳を傾け、軍事脅威の変化を見極める冷静な視点を持った政治家の一面も見せています。
まぁ・・・米国と水面下で「ガチガチ」やっているのかもしれませんが、安全保障に関して安定感を感じさせる点で今後に注目したいものです。
米本土ミサイル防衛のGMD関連
「GMD関連2017年度予算案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-12
「2013年当時の計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-16
「北米軍作戦部長が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-10
カナダとF-35
「FA-18購入でF-35議論回避か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-09
「新政権もF-35になびく?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-24
「カナダにF-35反対首相」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-22
北極&極地関連の記事
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02
「ロシアが鉄の壁構築」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-07
「露軍が北極に部隊増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04-1
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09
「米軍C-17が極地能力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-02
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