イスラエルと合意後に湾岸諸国へ戦闘機 [安全保障全般]
9月28日、上院外交委員会のクロッカー委員長は、下記の中東諸国への作戦機売却をホワイトハウスも承認したと語りました。
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9月14日、米国政府がイスラエルへの今後10年間(2019~28年)の軍事援助額等について、イスラエルと合意文書に署名しました。援助の詳細内容をめぐって数か月にわたり両国間で重ねられて来た議論の末、10年間で約3兆9千億円に及ぶ史上最大規模の軍事援助が決まりました
日本のメディアは「史上最大規模」の部分にのみ注目していますが、以前ご紹介したように、今回の合意の最大のポイントは、実質4割近くにまで及んでいた援助資金のイスラエル国内企業での消費を段階的に削減し、米国軍需産業からの調達に絞る約束が盛り込まれたことです
力を付け米国企業と世界市場で争うようになったイスラエル軍需産業への補助金的な使用を制限し、米国軍需産業を守るための分かり易い米国政府の姿勢です。両国関係の変質とか言われましたが、激論の末に「段階的に」で合意したようです。未だに親イスラエル議員は、議会では阻止すると吠えているようですが・・・
本日の話題は、この困難な米イスラエル間の最大案件が落ち着いたことで、中東湾岸諸国が2年間も待たされた戦闘機売却話がやっと進展しそうとのお話です。
中東におけるイスラエル軍事力の「質的優位を維持する」との両国関係の大前提を踏まえ、分かり易く湾岸諸国が「後回し」にされた構図です
15日付Defense-News記事によれば
●14日、上院外交委員会のBob Corker委員長は、「イスラエルとの合意が成立し、カタールとクウェートとバーレーンとの武器売却交渉の詰めに進むことが出来て嬉しい」、「2つの交渉に関係がないような振りをしているが、率直に言えば、身代金が届いて人質が解放されたような気分だ」と吐露した
●カタールへの72機のF-15Eストライクイーグル売却と、クウェートへの28機のFA-18E/F売却(追加で12機のオプション付)が、イスラエル軍事力の質的優位を維持する上で許容されるべきかどうかについて、2年以上も結論が先延ばし保留されてきたのだ
●イスラエルとの交渉はデリケートで、イスラエル側も米国政府と交渉した内容について一切メディアにコメントしてこなかった。
●米国内的には、ボーイングのF-15とFA-18生産ライン維持に関わる死活的問題で、バーレーンが希望する18機のF-16はロッキード社にとって大きな案件である
両国の関係者発言
●15日、今春までイスラエル国防相だったMoshe Ya’alon氏はDefense Newsに対し、湾岸諸国への戦闘機売却はイスラエルへの軍事援助合意とリンクしていると語り、「イスラエル軍事力の質的優位を維持するため、案件によってはイスラエルが留保権(reservations)を持っている」と語った
●一方で上院外交海外活動小委員会のLindsey Graham委員長(上院軍事委員会のメンバー)は15日、最近イスラエルを訪問した米議員団に対し、イスラエル側は今回の戦闘機売却について議論を求めなかったと語り、「本件がイスラエルの立場を変えるとは思わない」と主張した
●米国防協力庁のJoseph Rixey長官は、イスラエルとの合意と湾岸諸国への戦闘機売却の関係について問われ、「私が言えるのは、イスラエルと軍事援助執行の仕事をすることを楽しみにしている事だけだ」とのみ語った
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日本のメディアが触れない中東軍事の一つの構図ですので、ご参考まで取り上げました。ますます流動化する中東情勢を見る参考になれば・・・
ところで・・・中国のA2AD能力強化で「脅威の変化に直面」する日本とは事情が異なりますが、イスラエルも周辺諸国への軍事技術の拡散で「脅威の変化に直面」しています。
ですからF-35購入決定に際しては、本当に戦闘機に莫大な投資を続けるのかに関し、国を2分する激論が行われました。
「イスラエルがF-35で激論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-01
神出鬼没なヒズボラ戦闘員による旧式のロケット弾攻撃を、最新装備のイスラエル軍が制圧できなかった反省、弾道・巡航ミサイルの拡散、過激派による不正規戦、ISILの台頭などを前に、第4次中東戦争までの思考を引きずっていて良いのか等々の議論です
このような「脅威の変化」に向き合う議論が、日本では何時になったら出来るんでしょうか? 軍人が口火を切り、政治家にも有識者層を形成し、国民の意識レベルも高め・・・気の遠くなる道のりですが、少しづつでも・・いつの日か・・・
攻防:イスラエルへの軍事援助10年計画
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-26
米国とイスラエル関係関連
「6つの迎撃ミサイルでBMD演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-07-1
「イスラエルF-35は独自装備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-05-1
「史上最大の多国間空軍演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-03
「新統参議長:初海外はイスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-20
湾岸諸国と米製兵器売り込み
「FMS手続きの簡素化へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-05
「ドバイの脅迫:軍需産業の懸念」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-01
「湾岸諸国はF-35不売で不満」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-16
「海外売込みに助言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-27
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9月14日、米国政府がイスラエルへの今後10年間(2019~28年)の軍事援助額等について、イスラエルと合意文書に署名しました。援助の詳細内容をめぐって数か月にわたり両国間で重ねられて来た議論の末、10年間で約3兆9千億円に及ぶ史上最大規模の軍事援助が決まりました
日本のメディアは「史上最大規模」の部分にのみ注目していますが、以前ご紹介したように、今回の合意の最大のポイントは、実質4割近くにまで及んでいた援助資金のイスラエル国内企業での消費を段階的に削減し、米国軍需産業からの調達に絞る約束が盛り込まれたことです
力を付け米国企業と世界市場で争うようになったイスラエル軍需産業への補助金的な使用を制限し、米国軍需産業を守るための分かり易い米国政府の姿勢です。両国関係の変質とか言われましたが、激論の末に「段階的に」で合意したようです。未だに親イスラエル議員は、議会では阻止すると吠えているようですが・・・
本日の話題は、この困難な米イスラエル間の最大案件が落ち着いたことで、中東湾岸諸国が2年間も待たされた戦闘機売却話がやっと進展しそうとのお話です。
中東におけるイスラエル軍事力の「質的優位を維持する」との両国関係の大前提を踏まえ、分かり易く湾岸諸国が「後回し」にされた構図です
15日付Defense-News記事によれば
●14日、上院外交委員会のBob Corker委員長は、「イスラエルとの合意が成立し、カタールとクウェートとバーレーンとの武器売却交渉の詰めに進むことが出来て嬉しい」、「2つの交渉に関係がないような振りをしているが、率直に言えば、身代金が届いて人質が解放されたような気分だ」と吐露した
●カタールへの72機のF-15Eストライクイーグル売却と、クウェートへの28機のFA-18E/F売却(追加で12機のオプション付)が、イスラエル軍事力の質的優位を維持する上で許容されるべきかどうかについて、2年以上も結論が先延ばし保留されてきたのだ
●イスラエルとの交渉はデリケートで、イスラエル側も米国政府と交渉した内容について一切メディアにコメントしてこなかった。
●米国内的には、ボーイングのF-15とFA-18生産ライン維持に関わる死活的問題で、バーレーンが希望する18機のF-16はロッキード社にとって大きな案件である
両国の関係者発言
●15日、今春までイスラエル国防相だったMoshe Ya’alon氏はDefense Newsに対し、湾岸諸国への戦闘機売却はイスラエルへの軍事援助合意とリンクしていると語り、「イスラエル軍事力の質的優位を維持するため、案件によってはイスラエルが留保権(reservations)を持っている」と語った
●一方で上院外交海外活動小委員会のLindsey Graham委員長(上院軍事委員会のメンバー)は15日、最近イスラエルを訪問した米議員団に対し、イスラエル側は今回の戦闘機売却について議論を求めなかったと語り、「本件がイスラエルの立場を変えるとは思わない」と主張した
●米国防協力庁のJoseph Rixey長官は、イスラエルとの合意と湾岸諸国への戦闘機売却の関係について問われ、「私が言えるのは、イスラエルと軍事援助執行の仕事をすることを楽しみにしている事だけだ」とのみ語った
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日本のメディアが触れない中東軍事の一つの構図ですので、ご参考まで取り上げました。ますます流動化する中東情勢を見る参考になれば・・・
ところで・・・中国のA2AD能力強化で「脅威の変化に直面」する日本とは事情が異なりますが、イスラエルも周辺諸国への軍事技術の拡散で「脅威の変化に直面」しています。
ですからF-35購入決定に際しては、本当に戦闘機に莫大な投資を続けるのかに関し、国を2分する激論が行われました。
「イスラエルがF-35で激論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-01
神出鬼没なヒズボラ戦闘員による旧式のロケット弾攻撃を、最新装備のイスラエル軍が制圧できなかった反省、弾道・巡航ミサイルの拡散、過激派による不正規戦、ISILの台頭などを前に、第4次中東戦争までの思考を引きずっていて良いのか等々の議論です
このような「脅威の変化」に向き合う議論が、日本では何時になったら出来るんでしょうか? 軍人が口火を切り、政治家にも有識者層を形成し、国民の意識レベルも高め・・・気の遠くなる道のりですが、少しづつでも・・いつの日か・・・
攻防:イスラエルへの軍事援助10年計画
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-26
米国とイスラエル関係関連
「6つの迎撃ミサイルでBMD演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-07-1
「イスラエルF-35は独自装備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-05-1
「史上最大の多国間空軍演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-03
「新統参議長:初海外はイスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-20
湾岸諸国と米製兵器売り込み
「FMS手続きの簡素化へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-05
「ドバイの脅迫:軍需産業の懸念」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-01
「湾岸諸国はF-35不売で不満」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-16
「海外売込みに助言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-27
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