ICBM後継ミサイルの開発経費で意見相違 [米空軍]
9月20日、James空軍長官が米空軍協会総会で記者団に対し、ICBM「ミニットマン3:Minuteman III」の後継検討GBSD(Ground Based Strategic Deterrent)に関し、2018年度予算案への入れ込み検討を行っているが、経費見積額について米空軍と国防省の間で未解決の相違があり、話の進展が滞っていると語りました
空軍長官は、双方の見積もりの間に大きな差はないと述べ、今後入手する様々なデータを基に見積もりのズレが解消されるだろうと余裕を見せていますが、国防省側は他装備の状況から、企業と各軍種の見積もりに不信感たっぷりであり、そんなにすんなり進むとは考えられません
そもそも、米軍核戦力の維持改善には約10兆円必要との見積もりもあり、とても現在の予算や他の装備品計画からして収まるものではありません。
例えば、戦略原潜オハイオ級の後継艦にしても、現オハイオ級が3000億円以下なのに、国防省設定上限でも4900億円で、実際の米海軍見積もりはその上を行く5400億円にまで現時点でも膨らんでいます。
また次期爆撃機B-21も、1機550億円縛りで80~100機購入を前提としてますが、早くも270機必要だとかの声が米空軍協会総会でも出ています
そんな中ですから、ミリミリ精査したい国防省側と、他軍種に負けないよう「パイをぶんどれ」の空軍との話が円滑に進むとは到底考えられない状況です
James空軍長官の発言概要
●20日James空軍長官は、米空軍と国防省の見積もりの間には「An unresolved discrepancy:未解決の相異」があると記者団に語ったが、その差は「not that high」であり、ICBM開発を40年間やってこなかったのだからコスト計算に色々な考え方があるのは致し方ないと表現した
●同長官は、短期的にはWork副長官から提供されるインプット情報を基に、米空軍と国防省コスト分析&計画評価室が計算を行い、現在国防省内で行われている2018年度予算案編制に必要な数値を導出する事になると語った
●更に長期的には、10月末に本プログラムに参入する3社(ロッキード、ボーイング、NG)から各提案を入手し、より正確な見積もりを導出すると説明した
●「我々は情報を得るまで、つまり各企業から提案を受けるまで確かな情報を持てない。企業情報により、より細密なコスト見積もりが可能となり、米空軍として本事業に関する立ち位置を決めることが出来る」と語った
●そして「今後2~3ヶ月にわたり、正確な見積もりのためになすべき事を全て行い、予算計画サイクルに載せることに全力を尽くす」「ただし実際の課題は、来年以降に継続的に見積もりを精査して洗練させて予算サイクルに載せていくことにある」とも表現した
国防省側:GBSDはF-35以上に不透明かつ巨大
●匿名の国防省高官は、GBSDの試験&評価プロセス、つまり次期ICBMの試験評価は史上最大で、F-35以上になる可能性があると語った
●そして、ICBM試験の難しさは、直陸させられないことにあると表現し、海面に着弾させて破壊されてしまうからだとも述べた。そのため実試験までには、膨大で精力的なシミュレーションやモデリング分析が必要になると語った
●また、試験&評価を考える上で不確定な点が多すぎるとも指摘し、何発購入するのか、指揮統制施設の改修はどうするのか等々の疑問点も指摘した
おまけ:オバマ大統領を牽制?
国防省は「核の先制不使用宣言」には向かわない
●27日、カーター国防長官は米空軍の核兵器開発の中心であるKirtland空軍基地で記者団の質問に対し、微妙ないい振りながら、核兵器の先制使用を否定していない米国の現姿勢を、北朝鮮等を抑止するための同盟国等へのコミットメントだと表現しました
●そして「我々は将来に亘り、核の傘を提供している同盟国へのコミットメントに見合う能力を保持する予定だ」と語りました
●(記者からの、先制不使用宣言にYesかNoかとの確認の質問に、)「It has been our policy for a long time and it's part of our plans going forward」と答えた
オバマが「核兵器を先制使用しない宣言」を検討中
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-07
/////////////////////////////////////////////////////
James空軍長官は今回の空軍協会総会で、「今回の総会参加が空軍長官として最後になる」と時期は未定ながら退任を表明しています。
米空軍事業の3本柱、F-35とB-21とKC-46Aに一定の目途が立ったからだと説明しましたが、さぞかしお疲れだったのでしょうし、まんぐーすだったら「もうやってられない」との気持ちになっている環境だと思います
そんな空軍長官から「実際の課題は、来年以降に・・」と言われると、お先真っ暗なんだろうな・・・と思います。
そう言えば同じ立場のケンドール国防次官も、3~5年先の計画ならあるが、その先は全く決められないと「さじを投げた感」の発言をしています。老朽装備品の更新や重要装備の調達計画が目白押しで、予算に収まらないことが明白で、何を削るかの議論に全く手つかずだからです
まだ米国はオープンに議論できるだけ増しです、日本など、何が何だか判らないうちに正面装備だけが膨らみ、組織のゆがみや現場の悲鳴を誰も聞かないし言えない状態ではないかと危惧しています
ICBM後継に関する記事
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「次期空母の建造費を削れ!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-07
オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13
空軍長官は、双方の見積もりの間に大きな差はないと述べ、今後入手する様々なデータを基に見積もりのズレが解消されるだろうと余裕を見せていますが、国防省側は他装備の状況から、企業と各軍種の見積もりに不信感たっぷりであり、そんなにすんなり進むとは考えられません
そもそも、米軍核戦力の維持改善には約10兆円必要との見積もりもあり、とても現在の予算や他の装備品計画からして収まるものではありません。
例えば、戦略原潜オハイオ級の後継艦にしても、現オハイオ級が3000億円以下なのに、国防省設定上限でも4900億円で、実際の米海軍見積もりはその上を行く5400億円にまで現時点でも膨らんでいます。
また次期爆撃機B-21も、1機550億円縛りで80~100機購入を前提としてますが、早くも270機必要だとかの声が米空軍協会総会でも出ています
そんな中ですから、ミリミリ精査したい国防省側と、他軍種に負けないよう「パイをぶんどれ」の空軍との話が円滑に進むとは到底考えられない状況です
James空軍長官の発言概要
●20日James空軍長官は、米空軍と国防省の見積もりの間には「An unresolved discrepancy:未解決の相異」があると記者団に語ったが、その差は「not that high」であり、ICBM開発を40年間やってこなかったのだからコスト計算に色々な考え方があるのは致し方ないと表現した
●同長官は、短期的にはWork副長官から提供されるインプット情報を基に、米空軍と国防省コスト分析&計画評価室が計算を行い、現在国防省内で行われている2018年度予算案編制に必要な数値を導出する事になると語った
●更に長期的には、10月末に本プログラムに参入する3社(ロッキード、ボーイング、NG)から各提案を入手し、より正確な見積もりを導出すると説明した
●「我々は情報を得るまで、つまり各企業から提案を受けるまで確かな情報を持てない。企業情報により、より細密なコスト見積もりが可能となり、米空軍として本事業に関する立ち位置を決めることが出来る」と語った
●そして「今後2~3ヶ月にわたり、正確な見積もりのためになすべき事を全て行い、予算計画サイクルに載せることに全力を尽くす」「ただし実際の課題は、来年以降に継続的に見積もりを精査して洗練させて予算サイクルに載せていくことにある」とも表現した
国防省側:GBSDはF-35以上に不透明かつ巨大
●匿名の国防省高官は、GBSDの試験&評価プロセス、つまり次期ICBMの試験評価は史上最大で、F-35以上になる可能性があると語った
●そして、ICBM試験の難しさは、直陸させられないことにあると表現し、海面に着弾させて破壊されてしまうからだとも述べた。そのため実試験までには、膨大で精力的なシミュレーションやモデリング分析が必要になると語った
●また、試験&評価を考える上で不確定な点が多すぎるとも指摘し、何発購入するのか、指揮統制施設の改修はどうするのか等々の疑問点も指摘した
おまけ:オバマ大統領を牽制?
国防省は「核の先制不使用宣言」には向かわない
●27日、カーター国防長官は米空軍の核兵器開発の中心であるKirtland空軍基地で記者団の質問に対し、微妙ないい振りながら、核兵器の先制使用を否定していない米国の現姿勢を、北朝鮮等を抑止するための同盟国等へのコミットメントだと表現しました
●そして「我々は将来に亘り、核の傘を提供している同盟国へのコミットメントに見合う能力を保持する予定だ」と語りました
●(記者からの、先制不使用宣言にYesかNoかとの確認の質問に、)「It has been our policy for a long time and it's part of our plans going forward」と答えた
オバマが「核兵器を先制使用しない宣言」を検討中
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-07
/////////////////////////////////////////////////////
James空軍長官は今回の空軍協会総会で、「今回の総会参加が空軍長官として最後になる」と時期は未定ながら退任を表明しています。
米空軍事業の3本柱、F-35とB-21とKC-46Aに一定の目途が立ったからだと説明しましたが、さぞかしお疲れだったのでしょうし、まんぐーすだったら「もうやってられない」との気持ちになっている環境だと思います
そんな空軍長官から「実際の課題は、来年以降に・・」と言われると、お先真っ暗なんだろうな・・・と思います。
そう言えば同じ立場のケンドール国防次官も、3~5年先の計画ならあるが、その先は全く決められないと「さじを投げた感」の発言をしています。老朽装備品の更新や重要装備の調達計画が目白押しで、予算に収まらないことが明白で、何を削るかの議論に全く手つかずだからです
まだ米国はオープンに議論できるだけ増しです、日本など、何が何だか判らないうちに正面装備だけが膨らみ、組織のゆがみや現場の悲鳴を誰も聞かないし言えない状態ではないかと危惧しています
ICBM後継に関する記事
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「次期空母の建造費を削れ!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-07
オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13
Work副長官:第3の相殺戦略で空軍に要望する [米国防省高官]
9月21日、Work国防副長官が米空軍協会の航空宇宙&サイバー総会最終日に登場し、「第3の相殺戦略」のポイントを再徹底すると共に、「技術革新面」でない「組織運用改革面」での最初の実例として米空軍主導の多機関共同の宇宙作戦センター(JICSpOC)を高く評価すると共に、陸海軍の取り組みを紹介しつつ米空軍に要望事項を示して一層の努力を要望しました。
「陸海軍の取り組みを紹介」する場面では、具体的に陸海軍幹部の論文を紹介してその革新的なアイディアを讃える扱いをしており、Work副長官的には米空軍の取り組みを「今ひとつ」と感じているような印象を受けます。
空軍への要望に「センサーと兵器等をマルチドメインで結ぶ指揮統制グリッドへの新アイディア」と表現しており、新空軍参謀総長が最近打ち出した重視事項の一つと一致しており、震源がWork副長官主導の「第3の相殺戦略」であることを伺わせます
また、最近とても「淡泊な」米国防省webサイトが、本講演をかなりしっかり紹介しており、米空軍へのメッセージとして重要な位置づけを示しています
まず、なぜ何のために何を「第3の相殺戦略」を
●「第3の相殺戦略」に取り組む3つの理由は、まず、米軍は大部分の戦力を米国内に保有しているが、将来大規模紛争が生起しそうな地域に大規模戦力の集積は困難で、緒戦では潜在的な敵が時間と空間と戦力数で優位に立つ可能性が高いこと
●2つ目に、潜在敵対者も過去には保有していなかった米軍に近いレベルの誘導兵器を保有するようになってきていること
●3つ目に、敵対者は米軍が「第2の相殺戦略」の結果として、ネットワークや宇宙アセットに依存していることを良く把握し、多額の投資でサイバーや電子戦や宇宙兵器を準備して対ネットワーク戦能力を高めている点である
国防省高官がこぞってJICSpOCを高く評価
●コロラド州のSchriever空軍基地にある「JICSpOC」は、米戦略コマンド、国家偵察室(NRO)、空軍宇宙コマンド、米空軍研究所ARRL、情報コミュニティー、宇宙関連情報提供企業が協力して運用する形態で、2015年10月に正式運用を開始した。
●JICSpOCは統合戦力がよって立つ宇宙世界での戦場管理の指揮統制を担う様に設計されているが、このような指揮所をかつて保有したことはなく、組織形態面で「第3の相殺戦略」を最初に体現したものである
●宇宙コミュニティーの関係者を融合し、非常に重要な宇宙システムを運用するのがJICSpOCである。そしてJICSpOCが自らに課す課題は、GPSシステムが脅威を受けた際、どのようにその運用法を変えて行くかを考え行動することである
科学評議会の議論を踏まえた技術重点5つ
●全般には、戦場ネットワークの能力&耐性改善のため、人工知能や自立化の活用、統合戦力が統合の協力的「human-machine」戦場ネットワークの力をより活用し、作戦遂行能力の優位さを確保する事で通常戦力による抑止力強化を狙う
●5つの鍵となる技術分野
・Learning machines
恐らく、ディープラーニングのような手法を指し、戦場の状況を人間を介さず装備やシステムに学ばせ「AI」等の洗練に活用する技術
・Human-machine collaboration
人間がより迅速に正しく必要な意志決定が可能なようなビジュアル化を含むコンピュータとの接点技術
・Assisted human operations
全ての操縦者、地上&海上兵士を戦場ネットワークに組み込む技術
・Human-machine combat teaming
有人装備と無人装備の有機的なチームとしての運用とその技術
・Network-enabled autonomous weapons
高度な学習機能を備えたC3Iネットワークに全ての自律的兵器を連接する技術
陸軍と海軍は新コンセプトを生みつつあるぞ
●米陸軍教育訓練コマンドの副司令官H.R. McMaster中将は、「concept of multidomain battle」を提唱し、ドメインをまたぐ統合戦力共同の作戦行動により、複数のドメインで敵に対して優位を確保できる「temporary windows」をひねり出すことが可能で、米軍統合戦力が主導権を掴んで拡大する事につながると論じている
●米海軍は、全ての任務空間に於いて行動の自由を確保するため、2015年3月に「A Cooperative Strategy for 21st Century Seapower」との公開ブリーフィングを発表し、電磁スペクトラム(EMS)で軍事的優位を獲得する行動を示している
●このアプローチで米海軍は、電磁波発射への理解と管制による電子スペクトラム支配を重要な行動と位置付け、融合された戦力投射に活用することを提示している
米空軍にはこの分野を極めて欲しい
●米空軍が自然な形で「第3の相殺戦略」推進し、統合戦力に貢献できることとして具体的に以下の検討を要望する
●我々は、センサーと兵器等を、マルチドメインでマルチ機能で、かつ多国間で結ぶ指揮統制グリッドへの新アイディアを必要としている。
●米空軍には、連合の航空作戦センターの概念を拡大発展させ、統合の学習C3Iネットワーク面で、全ドメインで、複数の機能をまたぎ、同盟国等も交え、時には地域もまたいだ作戦が可能なアイディアを生み出して欲しい
●これらは全て、統合戦力での戦いをもう一度変革させる潜在的可能性を秘めている
////////////////////////////////////////////////////////
「5つの鍵」や「第3の相殺戦略」の背景はこれまでもご紹介してきましたが、米空軍への具体的な要望や、陸海軍の具体的なコンセプトへの言及は初めてのような気がします。
陸軍中将の論文や海軍のブリーフィング資料は未確認ですが、陸上自衛隊の研究本部や海上自衛隊幹部学校の分析紹介を期待致しましょう。
もう少し具体的事例を交えて説明できれば良いのですが、まぁ・・・ぼちぼち明らかになるでしょう・・・。
Multidomain battleの解説記事
→http://warontherocks.com/2016/09/multi-domain-battle-a-new-concept-for-land-forces/
A Cooperative Strategy・・Seapower関連のリンク
→https://www.uscg.mil/seniorleadership/DOCS/CS21R_Final.pdf#search='A+Cooperative+Strategy+for+21st+Century+Seapower'
→http://www.navy.mil/local/maritime/
米空軍新参謀総長の重視事項
「3つの重視事項」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13
「迅速にピクチャー共有を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-21
Work副長官と「第3の相殺戦略」
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「宇宙とOffset Strategy」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-01
「空軍研究所で関連研究確認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-07
「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「Three-Play Combatを前線で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09
関連の記事
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26
「CNASが官僚の壁を指摘」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-02
「陸海軍の取り組みを紹介」する場面では、具体的に陸海軍幹部の論文を紹介してその革新的なアイディアを讃える扱いをしており、Work副長官的には米空軍の取り組みを「今ひとつ」と感じているような印象を受けます。
空軍への要望に「センサーと兵器等をマルチドメインで結ぶ指揮統制グリッドへの新アイディア」と表現しており、新空軍参謀総長が最近打ち出した重視事項の一つと一致しており、震源がWork副長官主導の「第3の相殺戦略」であることを伺わせます
また、最近とても「淡泊な」米国防省webサイトが、本講演をかなりしっかり紹介しており、米空軍へのメッセージとして重要な位置づけを示しています
まず、なぜ何のために何を「第3の相殺戦略」を
●「第3の相殺戦略」に取り組む3つの理由は、まず、米軍は大部分の戦力を米国内に保有しているが、将来大規模紛争が生起しそうな地域に大規模戦力の集積は困難で、緒戦では潜在的な敵が時間と空間と戦力数で優位に立つ可能性が高いこと
●2つ目に、潜在敵対者も過去には保有していなかった米軍に近いレベルの誘導兵器を保有するようになってきていること
●3つ目に、敵対者は米軍が「第2の相殺戦略」の結果として、ネットワークや宇宙アセットに依存していることを良く把握し、多額の投資でサイバーや電子戦や宇宙兵器を準備して対ネットワーク戦能力を高めている点である
国防省高官がこぞってJICSpOCを高く評価
●コロラド州のSchriever空軍基地にある「JICSpOC」は、米戦略コマンド、国家偵察室(NRO)、空軍宇宙コマンド、米空軍研究所ARRL、情報コミュニティー、宇宙関連情報提供企業が協力して運用する形態で、2015年10月に正式運用を開始した。
●JICSpOCは統合戦力がよって立つ宇宙世界での戦場管理の指揮統制を担う様に設計されているが、このような指揮所をかつて保有したことはなく、組織形態面で「第3の相殺戦略」を最初に体現したものである
●宇宙コミュニティーの関係者を融合し、非常に重要な宇宙システムを運用するのがJICSpOCである。そしてJICSpOCが自らに課す課題は、GPSシステムが脅威を受けた際、どのようにその運用法を変えて行くかを考え行動することである
科学評議会の議論を踏まえた技術重点5つ
●全般には、戦場ネットワークの能力&耐性改善のため、人工知能や自立化の活用、統合戦力が統合の協力的「human-machine」戦場ネットワークの力をより活用し、作戦遂行能力の優位さを確保する事で通常戦力による抑止力強化を狙う
●5つの鍵となる技術分野
・Learning machines
恐らく、ディープラーニングのような手法を指し、戦場の状況を人間を介さず装備やシステムに学ばせ「AI」等の洗練に活用する技術
・Human-machine collaboration
人間がより迅速に正しく必要な意志決定が可能なようなビジュアル化を含むコンピュータとの接点技術
・Assisted human operations
全ての操縦者、地上&海上兵士を戦場ネットワークに組み込む技術
・Human-machine combat teaming
有人装備と無人装備の有機的なチームとしての運用とその技術
・Network-enabled autonomous weapons
高度な学習機能を備えたC3Iネットワークに全ての自律的兵器を連接する技術
陸軍と海軍は新コンセプトを生みつつあるぞ
●米陸軍教育訓練コマンドの副司令官H.R. McMaster中将は、「concept of multidomain battle」を提唱し、ドメインをまたぐ統合戦力共同の作戦行動により、複数のドメインで敵に対して優位を確保できる「temporary windows」をひねり出すことが可能で、米軍統合戦力が主導権を掴んで拡大する事につながると論じている
●米海軍は、全ての任務空間に於いて行動の自由を確保するため、2015年3月に「A Cooperative Strategy for 21st Century Seapower」との公開ブリーフィングを発表し、電磁スペクトラム(EMS)で軍事的優位を獲得する行動を示している
●このアプローチで米海軍は、電磁波発射への理解と管制による電子スペクトラム支配を重要な行動と位置付け、融合された戦力投射に活用することを提示している
米空軍にはこの分野を極めて欲しい
●米空軍が自然な形で「第3の相殺戦略」推進し、統合戦力に貢献できることとして具体的に以下の検討を要望する
●我々は、センサーと兵器等を、マルチドメインでマルチ機能で、かつ多国間で結ぶ指揮統制グリッドへの新アイディアを必要としている。
●米空軍には、連合の航空作戦センターの概念を拡大発展させ、統合の学習C3Iネットワーク面で、全ドメインで、複数の機能をまたぎ、同盟国等も交え、時には地域もまたいだ作戦が可能なアイディアを生み出して欲しい
●これらは全て、統合戦力での戦いをもう一度変革させる潜在的可能性を秘めている
////////////////////////////////////////////////////////
「5つの鍵」や「第3の相殺戦略」の背景はこれまでもご紹介してきましたが、米空軍への具体的な要望や、陸海軍の具体的なコンセプトへの言及は初めてのような気がします。
陸軍中将の論文や海軍のブリーフィング資料は未確認ですが、陸上自衛隊の研究本部や海上自衛隊幹部学校の分析紹介を期待致しましょう。
もう少し具体的事例を交えて説明できれば良いのですが、まぁ・・・ぼちぼち明らかになるでしょう・・・。
Multidomain battleの解説記事
→http://warontherocks.com/2016/09/multi-domain-battle-a-new-concept-for-land-forces/
A Cooperative Strategy・・Seapower関連のリンク
→https://www.uscg.mil/seniorleadership/DOCS/CS21R_Final.pdf#search='A+Cooperative+Strategy+for+21st+Century+Seapower'
→http://www.navy.mil/local/maritime/
米空軍新参謀総長の重視事項
「3つの重視事項」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13
「迅速にピクチャー共有を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-21
Work副長官と「第3の相殺戦略」
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「宇宙とOffset Strategy」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-01
「空軍研究所で関連研究確認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-07
「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「Three-Play Combatを前線で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09
関連の記事
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26
「CNASが官僚の壁を指摘」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-02
フィリピン派遣第3弾はC-130輸送機2機だって [安全保障全般]
大山鳴動して普通の輸送機たった2機
26日付太平洋空軍web記事が、4月にカーター国防長官が実施を宣言したフィリピンへの航空戦力ローテーション派遣の第3弾として、ただのC-130輸送機2機が南シナ海から遠い島に、25日展開したと報じています。
米フィリピン関係は、ドゥテルテ大統領の強権的な麻薬撲滅対策とオバマ大統領の人権外交姿勢によって険悪な状況に陥っており、6月以降途絶えていたローテーション派遣がどうなるか注目を集めていたところです
まぁ・・立ち消えにならなかっただけ良かったのかも知れませんが、4月の派遣発表時にはF-22の派遣をプンプン臭わす発言が高官から出ていた事もあり、第1弾A-10攻撃機、第2弾EA-18G電子戦攻撃機につづく派遣戦力が、普通の輸送機2機だけとは正直「拍子抜け」です。
26日付太平洋空軍web記事によれば
●25日、米軍横田基地所属の第374空輸航空団のC-130輸送機2機と空軍兵士約120名が、第3回目のローテーション航空派遣隊(rotational air contingent)としてフィリピン空軍の「Mactan-Benito Ebuen基地」(南部セブ島の空港:民間機の国際空港も同居)に展開した。
●約120名の中には、グアム島アンダーセン基地所属の第36緊急事態対処群のメンバーも含まれており、空輸訓練だけでなく、「Subject Matter Expert Exchanges」の位置づけの訓練もフィリピン空軍と行う計画になっている
●本派遣飛行隊は、米軍と比軍の相互運用性を高めることを目的としており、両国間の安全保障協力を更に発展させるためのものである
●なお約2週間の派遣隊第1弾には、A-10攻撃機とHH-60Gヘリ等が空軍兵士が4月16日から派遣され、第2弾には6月15日から4機のEA-18G電子戦攻撃機が海軍や海兵隊兵士と共に派遣されていた
///////////////////////////////////////////////
単に航空戦力を派遣するだけでなく、地上要員が航空機運用や特殊作戦の訓練も行っていますし、今回の「第36緊急事態対処群」は恐らく基地が空襲等で被害を受けた際の応急対処を行う部隊で、その様な能力をフィリピンにも伝授したいとの目的もありましょう
また、これまでクラーク空軍基地だけを使用していましたが、今回は南部セブ島に隣接する島の基地に展開しており、活用できる飛行場を拡大しようとの狙いも感じられます。
施設未整備な飛行場への第一歩としては、C-130が適任でしょうが・・・
しかし・・・A-10やEA-18Gと比べると・・・見劣りしますねぇ・・・しかも南シナ海から遠い島ですからねぇ・・・。
ドゥテルテ大統領の就任に伴う対フィリピン関係の変化と共に、対中国姿勢を巡るホワイトハウスと国防省間の意見の相違も大いに今回の派遣規模に影響しているものと推測します
中国との軍事的緊張を避けたい大統領府と、現場の危機感を訴える国防省との間の溝が、ますます深まっていると米軍事メディアが報じる今日この頃ですから・・・
米軍と比軍との協力関係
「比大統領が米との南シナ海作戦を拒否!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15-1
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03
「EA-18G電子戦攻撃機が展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-18
「国防長官が交代派遣発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16
前比政権と米国との関係
「比軍基地への米軍アクセス拡大」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-24
「フィリピンへの軍事援助再開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-24
「米海兵隊員に殺人容疑」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-16
「比が米軍受け入れ合意へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-10
26日付太平洋空軍web記事が、4月にカーター国防長官が実施を宣言したフィリピンへの航空戦力ローテーション派遣の第3弾として、ただのC-130輸送機2機が南シナ海から遠い島に、25日展開したと報じています。
米フィリピン関係は、ドゥテルテ大統領の強権的な麻薬撲滅対策とオバマ大統領の人権外交姿勢によって険悪な状況に陥っており、6月以降途絶えていたローテーション派遣がどうなるか注目を集めていたところです
まぁ・・立ち消えにならなかっただけ良かったのかも知れませんが、4月の派遣発表時にはF-22の派遣をプンプン臭わす発言が高官から出ていた事もあり、第1弾A-10攻撃機、第2弾EA-18G電子戦攻撃機につづく派遣戦力が、普通の輸送機2機だけとは正直「拍子抜け」です。
26日付太平洋空軍web記事によれば
●25日、米軍横田基地所属の第374空輸航空団のC-130輸送機2機と空軍兵士約120名が、第3回目のローテーション航空派遣隊(rotational air contingent)としてフィリピン空軍の「Mactan-Benito Ebuen基地」(南部セブ島の空港:民間機の国際空港も同居)に展開した。
●約120名の中には、グアム島アンダーセン基地所属の第36緊急事態対処群のメンバーも含まれており、空輸訓練だけでなく、「Subject Matter Expert Exchanges」の位置づけの訓練もフィリピン空軍と行う計画になっている
●本派遣飛行隊は、米軍と比軍の相互運用性を高めることを目的としており、両国間の安全保障協力を更に発展させるためのものである
●なお約2週間の派遣隊第1弾には、A-10攻撃機とHH-60Gヘリ等が空軍兵士が4月16日から派遣され、第2弾には6月15日から4機のEA-18G電子戦攻撃機が海軍や海兵隊兵士と共に派遣されていた
///////////////////////////////////////////////
単に航空戦力を派遣するだけでなく、地上要員が航空機運用や特殊作戦の訓練も行っていますし、今回の「第36緊急事態対処群」は恐らく基地が空襲等で被害を受けた際の応急対処を行う部隊で、その様な能力をフィリピンにも伝授したいとの目的もありましょう
また、これまでクラーク空軍基地だけを使用していましたが、今回は南部セブ島に隣接する島の基地に展開しており、活用できる飛行場を拡大しようとの狙いも感じられます。
施設未整備な飛行場への第一歩としては、C-130が適任でしょうが・・・
しかし・・・A-10やEA-18Gと比べると・・・見劣りしますねぇ・・・しかも南シナ海から遠い島ですからねぇ・・・。
ドゥテルテ大統領の就任に伴う対フィリピン関係の変化と共に、対中国姿勢を巡るホワイトハウスと国防省間の意見の相違も大いに今回の派遣規模に影響しているものと推測します
中国との軍事的緊張を避けたい大統領府と、現場の危機感を訴える国防省との間の溝が、ますます深まっていると米軍事メディアが報じる今日この頃ですから・・・
米軍と比軍との協力関係
「比大統領が米との南シナ海作戦を拒否!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15-1
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03
「EA-18G電子戦攻撃機が展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-18
「国防長官が交代派遣発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16
前比政権と米国との関係
「比軍基地への米軍アクセス拡大」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-24
「フィリピンへの軍事援助再開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-24
「米海兵隊員に殺人容疑」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-16
「比が米軍受け入れ合意へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-10
サイバー脅威の変化と対処を語る [サイバーと宇宙]
単なるスパイ行為から、攻撃や乗っ取り行為へ増長
20日、米空軍協会の航空宇宙&サイバー総会の2日目も様々な米空軍関係者が語っていますが、本日は強面のサイバーコマンド副司令官とサイバー人材確保を担うチャーミングな女性中将の講演からご紹介します
副司令官がサイバー脅威の変化と民間部門での攻撃激化を語りつつ、人材確保にそれほど悲観的ではない一方で、空軍司令部初の女性人事計画部長である女性中将は、有能な人材の確保困難を訴えています。
相反することを言っているのではなく、前線部隊は頑張れると語り、司令部はその難しさを語るとの、巧みな任務分担と理解致しましょう・・・
追加で、米空軍の研究開発を担当する女性大将が、米空軍の「サイバー7つの取組」を紹介していますのでご紹介します。
サイバー脅威の変化と攻撃激化
●Kevin McLaughlin副司令官は、敵はこれまでの単なるサイバースパイ行為から、より攻撃的になり、またネットワークの乗っ取りにも手を出し始めていると訴えた。
●そして、この様な攻撃を受けた米軍部隊は、自身のネットワークを自分たちでコントロールできているのか?、ネットワーク内のデータが信頼できるものなのか?、に悩まされることになると説明し、従来とは異なる軍事問題だと語った
●同中将はまた、同コマンドがサイバー脅威の変遷を監視しているとしながらも、非軍事分野での任務が「重大な結果をもたらす攻撃」への対処に限定されていることから、メディアで報じられるようなサイバー攻撃対処には関与していないと説明した
●何が「重大な結果」なのかの定義は常に見直されており、脅威の性質や頻度の状況を踏まえれば、「重大な結果」をもたらす攻撃が近い将来に発生する可能性があると語り、公共インフラや金融機関のサイバー状況を監視する機会はあまりないが、必要な対処がとれるように訓練を行っていると述べた
サイバー人材確保に多様な見方
●McLaughlin副司令官はサイバーコマンドの要員確保について、要員の訓練初期段階でその難しさから離職者が出るのは事実だが、サイバーコマンドの6000名体制を維持するために困難を感じたことはなかったと語った
●ただ、長期的視点で経験を積んだサイバー戦士を引き留められるかについては現時点で述べることは難しいと語ったものの、継続勤務ボーナスや、民間分野では出来ない「fighting in the cyber domain」等の種類の仕事に従事できることの魅力が人材確保につながっているとも説明した
初の女性人事計画部長の見方は
●一方、空軍司令部初の女性人事計画部長であるGina Grosso中将は、「サイバー戦士:cyber warrior」の定義が曖昧なことから、民間で活躍するサイバー関連人材を見極めることが難しいと語った
●同中将はそして、下士官が8割を占めるサイバー関連ポストに適合する、民間技術者を募集採用して継続勤務させることが最大の課題だと表現した。
●もう一つの課題としてGrosso中将は、退役軍人の優先雇用施策と米空軍の新卒者を希望する思いに、民間での賃金コストが絡み、複雑な側面を形成していると語った
●あちらを立てれば、こちらが立たない状況で複雑だが、全米から有能な人材を確保するとの大前提から、民間からの採用には優先して取り組みたいと同部長は語った
開発担当司令官が7つの取り組み訴え
(Materiel CommandのPawlikowski司令官)
●まず、どこにサイバー脅威があるかを分析し対処する。F-16を例に取れば、飛行中は問題ないが、地上で自動システム判定装置を連接する際やソフトを開発して投入する時
●2つ目は、今後のシステム開発やシステムのバージョンアップ時に、どのようにサイバーセキュリティーを導入するか
●3つ目は、必要なサイバー専門家を養成すること
●4つ目は、迅速に効率的にシステムアップを行えるよう、オープンシステムを使用すること。そうしないと、GPSを改良するのに10年も必要では敵にかなわない
●5つ目は、サイバー脅威の共通理解と対処手引きの非公開ガイドを作成する
●6つ目は、旧式のシステムにどのようにサイバー耐性を付与するか
●7つ目は、サイバー関連の最新情報を如何に対処法に組み込んでいくか
///////////////////////////////////////////////////
まんぐーす自身もピンと来ていないサイバー攻撃問題ですが、最近不審メールの数が増え、金融機関からの「注意喚起メール」の頻度が増えていることは身をもって感じています。
McLaughlin副司令官は、米軍サイバーコマンドの任務範囲を拡大した方が国家として有益だと言いたいのでしょうか? 任務を拡大することで、人材確保を有利に進めたいとの思いからでしょうか?
勝手ながら、このGina Grosso中将を応援させていただきます! 「Personnel Programs and Force Programs Analyst」との職種で、直近の米空軍「Sexual Assault対策室長」を含め、人事や人材管理のエキスパートです。
海外勤務が、中佐として勤務した韓国オーサン基地での基地支援業務隊長だけとの特殊な人事ですが、次の女性大将最有力候補ですね!!!
最近のサイバー関連記事
「装備品のサイバー脆弱性に対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-02
「対ISサイバー作戦で大きな教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-23
「日本とイスラエルが覚書へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21
「成果Hack the Pentagon」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-20-1
「組織の枠を超えた情報共有を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-07
「中国には君らも脆弱だと言っている」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-23
20日、米空軍協会の航空宇宙&サイバー総会の2日目も様々な米空軍関係者が語っていますが、本日は強面のサイバーコマンド副司令官とサイバー人材確保を担うチャーミングな女性中将の講演からご紹介します
副司令官がサイバー脅威の変化と民間部門での攻撃激化を語りつつ、人材確保にそれほど悲観的ではない一方で、空軍司令部初の女性人事計画部長である女性中将は、有能な人材の確保困難を訴えています。
相反することを言っているのではなく、前線部隊は頑張れると語り、司令部はその難しさを語るとの、巧みな任務分担と理解致しましょう・・・
追加で、米空軍の研究開発を担当する女性大将が、米空軍の「サイバー7つの取組」を紹介していますのでご紹介します。
サイバー脅威の変化と攻撃激化
●Kevin McLaughlin副司令官は、敵はこれまでの単なるサイバースパイ行為から、より攻撃的になり、またネットワークの乗っ取りにも手を出し始めていると訴えた。
●そして、この様な攻撃を受けた米軍部隊は、自身のネットワークを自分たちでコントロールできているのか?、ネットワーク内のデータが信頼できるものなのか?、に悩まされることになると説明し、従来とは異なる軍事問題だと語った
●同中将はまた、同コマンドがサイバー脅威の変遷を監視しているとしながらも、非軍事分野での任務が「重大な結果をもたらす攻撃」への対処に限定されていることから、メディアで報じられるようなサイバー攻撃対処には関与していないと説明した
●何が「重大な結果」なのかの定義は常に見直されており、脅威の性質や頻度の状況を踏まえれば、「重大な結果」をもたらす攻撃が近い将来に発生する可能性があると語り、公共インフラや金融機関のサイバー状況を監視する機会はあまりないが、必要な対処がとれるように訓練を行っていると述べた
サイバー人材確保に多様な見方
●McLaughlin副司令官はサイバーコマンドの要員確保について、要員の訓練初期段階でその難しさから離職者が出るのは事実だが、サイバーコマンドの6000名体制を維持するために困難を感じたことはなかったと語った
●ただ、長期的視点で経験を積んだサイバー戦士を引き留められるかについては現時点で述べることは難しいと語ったものの、継続勤務ボーナスや、民間分野では出来ない「fighting in the cyber domain」等の種類の仕事に従事できることの魅力が人材確保につながっているとも説明した
初の女性人事計画部長の見方は
●一方、空軍司令部初の女性人事計画部長であるGina Grosso中将は、「サイバー戦士:cyber warrior」の定義が曖昧なことから、民間で活躍するサイバー関連人材を見極めることが難しいと語った
●同中将はそして、下士官が8割を占めるサイバー関連ポストに適合する、民間技術者を募集採用して継続勤務させることが最大の課題だと表現した。
●もう一つの課題としてGrosso中将は、退役軍人の優先雇用施策と米空軍の新卒者を希望する思いに、民間での賃金コストが絡み、複雑な側面を形成していると語った
●あちらを立てれば、こちらが立たない状況で複雑だが、全米から有能な人材を確保するとの大前提から、民間からの採用には優先して取り組みたいと同部長は語った
開発担当司令官が7つの取り組み訴え
(Materiel CommandのPawlikowski司令官)
●まず、どこにサイバー脅威があるかを分析し対処する。F-16を例に取れば、飛行中は問題ないが、地上で自動システム判定装置を連接する際やソフトを開発して投入する時
●2つ目は、今後のシステム開発やシステムのバージョンアップ時に、どのようにサイバーセキュリティーを導入するか
●3つ目は、必要なサイバー専門家を養成すること
●4つ目は、迅速に効率的にシステムアップを行えるよう、オープンシステムを使用すること。そうしないと、GPSを改良するのに10年も必要では敵にかなわない
●5つ目は、サイバー脅威の共通理解と対処手引きの非公開ガイドを作成する
●6つ目は、旧式のシステムにどのようにサイバー耐性を付与するか
●7つ目は、サイバー関連の最新情報を如何に対処法に組み込んでいくか
///////////////////////////////////////////////////
まんぐーす自身もピンと来ていないサイバー攻撃問題ですが、最近不審メールの数が増え、金融機関からの「注意喚起メール」の頻度が増えていることは身をもって感じています。
McLaughlin副司令官は、米軍サイバーコマンドの任務範囲を拡大した方が国家として有益だと言いたいのでしょうか? 任務を拡大することで、人材確保を有利に進めたいとの思いからでしょうか?
勝手ながら、このGina Grosso中将を応援させていただきます! 「Personnel Programs and Force Programs Analyst」との職種で、直近の米空軍「Sexual Assault対策室長」を含め、人事や人材管理のエキスパートです。
海外勤務が、中佐として勤務した韓国オーサン基地での基地支援業務隊長だけとの特殊な人事ですが、次の女性大将最有力候補ですね!!!
最近のサイバー関連記事
「装備品のサイバー脆弱性に対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-02
「対ISサイバー作戦で大きな教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-23
「日本とイスラエルが覚書へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21
「成果Hack the Pentagon」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-20-1
「組織の枠を超えた情報共有を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-07
「中国には君らも脆弱だと言っている」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-23
カーター長官が議会で議会を大批判 [カーター国防長官]
22日、カーター国防長官とダンフォード統合参謀本部議長が上院軍事委員会で証言し、10月1日から開始の2017年度予算が未成立で、8年連続暫定予算になりそうな状況を嘆き、不毛で行政の混乱を招いているねじれ現象で党派間の妥協が出来ない議会を、皮肉たっぷりに厳しく批判しました
カーター長官も各軍種のリーダー達も繰り返し述べてきたことですが、強制削減を暫定措置(continuing resolution)の繰り返しで凌いでいる予算状況では、長期的な計画が立てられず戦力の維持向上に大きな支障をきたしている点や、議員の選挙区防衛のため基地の統廃合が進まない点等を訴えています
同席のダンフォード議長も厳しい脅威に立ち向かう部隊の人員不足や訓練や装備開発費の不足を訴えましたが、ロシアが一番の脅威とか、ISILが米軍等に対し「化学兵器砲弾」を打ち込んでいる状況も証言しています
カーター長官は3つの問題を指摘
●米軍が「空虚な軍」とならないよう、議会には超党派的な合意により強制削減の問題を解決して欲しい。
●2017年度予算開始まで8日間となった現状では暫定措置にならざるを得ないのが現実だが、暫定措置の繰り返しで対処している現状は、長期計画を妨げ、同盟国等との関係を妨げ、敵を増長させ、軍需産業の非効率を招く。
●議会が我々を助けるために出来ることは3つある。1つはこの予算の不安定さと見通しの無さを解消すること、2つは細部への介入と過剰な規制をなくすこと、3つ目は必要な改革を妨げないことである
●(予算の中で優先する項目は何かとの議員からの質問に対し、皮肉たっぷりに、)強制削減に向かうような措置や超党派の合意を遠ざける予算措置を支持することは出来ない。また、国防省行政の安定性を犠牲にするような措置や前線兵士の必要なものを削減する措置にも賛成できない。更に、優先度の低いことに予算を付けることも困る
●強制削減に突入するようなことは、これら全ての支持できない事を招くと繰り返し繰り返し証言しておく(again and again and again)
ダンフォード議長:ロシアが一番の脅威
●ロシアが最大の問題を提示しており、かつ潜在的にも米国の安全保障にとって最大の脅威である。また、ロシアの核戦力、サイバー戦能力や水中戦能力からそう考える。またウクライナやグルジアでのロシアの作戦形態も我々を懸念させる
●(ロシアのシリアでの活動に関して、)19日にシリア内で国連関係者の車列を爆撃したのは間違いなくロシア軍である。
●(シリア内での活動に関するロシアとの協力について、)我々にはロシア側と情報共有する意志は全くない
ISILが米軍にマスタード化学砲弾を使用
●20日にISILが、イラク北部に所在していた米軍に対し、マスタードガス弾を用いた。びらん剤系のマスタードを砲弾に詰めたものであったが、投射手段が適当でなく、我が方にけが人等はなかった
●ISILがマスタード砲弾を米軍やイラク軍やクルド人に用いたのは初めてではないが、それほど深刻な懸念材料ではない。9月12日には、ISILの化学兵器保管庫を米軍が攻撃して破壊したところである
//////////////////////////////////////////////////
以前オバマ大統領は、「シリアで化学兵器が使用されたら・・」と敷居を設けて米国に対応を変えると発言し、化学兵器が使用されても動かずに非難を浴びましたが、今では米軍に化学兵器が使用されても「対ISIL戦線異状なし」の模様です
お役目とは言え、文民統制下のダンフォード議長は、マスタードガス弾を「moderate level of concern」と評価せざるを得ない辛い立場です。
議会による国防省改革に関する勝手な動きや過剰な規制、ホワイトハウスやNSCによる軍事作戦への細部介入をなくして欲しいと「公言」し、議会には議員の私利私欲や選挙区への利益誘導による「基地の統廃合」や「不要老朽装備の破棄」が進まないストレートに訴えています。
カーター長官の発言は、政権交代が5ヶ月後で、自身の任期もそれまでとの「悟りの境地」とは言え、あまりにも直接的な発言です。最近は、何でもありな米国社会です。
関連の記事
「議員の国防省改革案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-30
「先制攻撃:国防長官の改正案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-06
「長官が2017年度予算案説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
カーター長官も各軍種のリーダー達も繰り返し述べてきたことですが、強制削減を暫定措置(continuing resolution)の繰り返しで凌いでいる予算状況では、長期的な計画が立てられず戦力の維持向上に大きな支障をきたしている点や、議員の選挙区防衛のため基地の統廃合が進まない点等を訴えています
同席のダンフォード議長も厳しい脅威に立ち向かう部隊の人員不足や訓練や装備開発費の不足を訴えましたが、ロシアが一番の脅威とか、ISILが米軍等に対し「化学兵器砲弾」を打ち込んでいる状況も証言しています
カーター長官は3つの問題を指摘
●米軍が「空虚な軍」とならないよう、議会には超党派的な合意により強制削減の問題を解決して欲しい。
●2017年度予算開始まで8日間となった現状では暫定措置にならざるを得ないのが現実だが、暫定措置の繰り返しで対処している現状は、長期計画を妨げ、同盟国等との関係を妨げ、敵を増長させ、軍需産業の非効率を招く。
●議会が我々を助けるために出来ることは3つある。1つはこの予算の不安定さと見通しの無さを解消すること、2つは細部への介入と過剰な規制をなくすこと、3つ目は必要な改革を妨げないことである
●(予算の中で優先する項目は何かとの議員からの質問に対し、皮肉たっぷりに、)強制削減に向かうような措置や超党派の合意を遠ざける予算措置を支持することは出来ない。また、国防省行政の安定性を犠牲にするような措置や前線兵士の必要なものを削減する措置にも賛成できない。更に、優先度の低いことに予算を付けることも困る
●強制削減に突入するようなことは、これら全ての支持できない事を招くと繰り返し繰り返し証言しておく(again and again and again)
ダンフォード議長:ロシアが一番の脅威
●ロシアが最大の問題を提示しており、かつ潜在的にも米国の安全保障にとって最大の脅威である。また、ロシアの核戦力、サイバー戦能力や水中戦能力からそう考える。またウクライナやグルジアでのロシアの作戦形態も我々を懸念させる
●(ロシアのシリアでの活動に関して、)19日にシリア内で国連関係者の車列を爆撃したのは間違いなくロシア軍である。
●(シリア内での活動に関するロシアとの協力について、)我々にはロシア側と情報共有する意志は全くない
ISILが米軍にマスタード化学砲弾を使用
●20日にISILが、イラク北部に所在していた米軍に対し、マスタードガス弾を用いた。びらん剤系のマスタードを砲弾に詰めたものであったが、投射手段が適当でなく、我が方にけが人等はなかった
●ISILがマスタード砲弾を米軍やイラク軍やクルド人に用いたのは初めてではないが、それほど深刻な懸念材料ではない。9月12日には、ISILの化学兵器保管庫を米軍が攻撃して破壊したところである
//////////////////////////////////////////////////
以前オバマ大統領は、「シリアで化学兵器が使用されたら・・」と敷居を設けて米国に対応を変えると発言し、化学兵器が使用されても動かずに非難を浴びましたが、今では米軍に化学兵器が使用されても「対ISIL戦線異状なし」の模様です
お役目とは言え、文民統制下のダンフォード議長は、マスタードガス弾を「moderate level of concern」と評価せざるを得ない辛い立場です。
議会による国防省改革に関する勝手な動きや過剰な規制、ホワイトハウスやNSCによる軍事作戦への細部介入をなくして欲しいと「公言」し、議会には議員の私利私欲や選挙区への利益誘導による「基地の統廃合」や「不要老朽装備の破棄」が進まないストレートに訴えています。
カーター長官の発言は、政権交代が5ヶ月後で、自身の任期もそれまでとの「悟りの境地」とは言え、あまりにも直接的な発言です。最近は、何でもありな米国社会です。
関連の記事
「議員の国防省改革案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-30
「先制攻撃:国防長官の改正案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-06
「長官が2017年度予算案説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
F-35の原因不明火災と強制売込の脅威 [亡国のF-35]
空自の1番機ロールアウト式典日にA型原因不明火災
爆笑:ロッキードの世界配信写真は防衛副大臣と空幕長を取違え
→左の写真に「杉山航空幕僚長が、生産ラインからロールアウトした航空自衛隊の1番機の前でスピーチを行う」との説明を付け、ロッキードが世界に配信(大笑い)
23日、航空自衛隊用F-35の1番機ロールアウト式典がテキサス州で開催され、若宮防衛副大臣と杉山空幕長などが日本から出席しました。
そんな戦闘機命派には「めでたい日」のはずの同じ23日、アイダホ州の米空軍基地で地上発信準備でエンジンを始動させたF-35Aが「aft:尾部」から突然火災を起こし、パイロットは脱出、整備員数名が病院に搬送される事故が発生しました。
幸いけが人はなかったようですが、2014年6月に同様の発進準備中に火災を起こしたF-35の「F135エンジン」に注目が集まっています。当時の火災原因は2014年10月に特定され、その後エンジンの設計変更や材質変更等の対策が進行中と認識していましたが、それとの関連も気になります。エンジンが23日の火災の原因かも不明確ですが・・・
そんなF-35ですが、デンマークがF-35購入を決定した機種選定に、FA-18で破れたボーイングが15日に正規に異議申し立てを行いました。時期も時期、20日には米国防省F-35計画室長が「まとめ買いすると単価が下がりますよ」と悪魔のささやきを・・・
まずは23日の地上火災について
●23日の正午頃、Luke空軍基地からアイダホ州のMountain Home空軍基地に移動展開中の7機のF-35の中の1機で、離陸準備でエンジンを始動させたところ尾部から火災が発生し、パイロットが脱出した
●米空軍報道官によれば、火災はすぐに消し止められ、念のため手順に従って基地内病院に搬送された7名の整備員にもケガ等はなかった
●7機のF-35は9月10日から24日の予定で、空対地攻撃訓練のために移動訓練を行っていたが、今回の火災の原因は調査中である
●エンジンを製造するPratt & Whitney社の報道官は、「火災が派生したことは承知しているが、現時点では細部を把握していない」「我が社は国防省や米空軍に調査協力を行う準備がある」と述べた
●16日に15機のF-35A型機で発覚した、冷却システムの燃料タンク内の配管に絶縁が不十分な部分がある問題との関係も明らかになっていない。冷却システムの配管問題は担当企業の不手際で、来週対処要領が確認される予定
2014年6月のF-35エンジン火災
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08
安くなるよ!まとめ買いしない?
●20日、米空軍協会総会で国防省F-35計画室長Bogdanは、予定されていた契約時期を過ぎても協議がまとまらないロッキード社とのF-35製造契約「Lots 9 と10」について、タフな交渉が続いておりまだまとまっていないと語った
●機体単価の値下げを要求する国防省側に対し、ロッキード社が反発しており、交渉の難航が伝えられている
●また同中将は、「Lot 12, 13, and 14」で購入を予定している同盟国等に対し、まとめ買い契約(multi-year buy)をすることにより、計約450機の部品等をまとめて調達でき、控えめに見積もって約2000億円が節約できると述べ、参加を呼びかけた
●なお、デンマークは現時点でLot 12で購入する予定はないと同中将は語った
●(任期に関する記者からの質問に対し、)2012年から現ポストを勤めているが、終わりは見えない。
ボーイングがデンマーク機種選定に意義申し立て
●15日、デンマーク次期戦闘機の機種選定(5月に機種決定)でロッキード社のF-35に破れたボーイング(FA-18提案)は、デンマークの比較評価が不公正だと「request for insight」をデンマーク政府に提出し、機種選定の評価データを提供するよう要求した
●ボーイングの担当幹部は、このような不公正が選定が認められれば、他国の機種選定に悪影響を及ぼしかねないと強く主張している
●デンマークはF-35を28機購入と38機のFA-18購入を比較した模様だが、F-35の単価が約90億円に対し、FA-18が125億円と評価段階で見積もられるなど、不自然な選定が外部専門家からも指摘されており、「ロシアの脅威を前にし、政治的圧力が働いた」とも指摘されている
●他にも、評価ではボーイングがFA-18の寿命を9500時間と見積もっているのに6000時間と抑えられ、F-35が8000時間とされているなど奇妙な点がある
●また、ボーイングは複座価格と単座価格を併記して選定に臨んだが、FA-18の単座価格は選定に使用されず、単座戦闘機のF-35と公平な比較がされておらず、不公平だと訴えている
/////////////////////////////////////////////////////////
ロッキード社による写真の取り違えといい、式典当日の今回の火災といい、売り込みに必死な米国防省幹部の様子といい、デンマークの機種選定に見る米国圧力といい、何が何でも前進あるのみ、無理は承知でゴリゴリ売り込みの恐ろしさを感じます
そんなどさくさの最中に、1番機を受け取らされた日本と自衛隊の将来に「幸あれ」と祈らずにおれません。だめでしょうけど・・・。
23日の火災は、事によるとF-35Aの長期飛行停止に繋がる可能性があります。少なくとも2014年6月の火災では、2ヶ月以上の飛行停止が必要でしたから・・・
エンジンでしょうか・・・だとすると深刻です!
2014年6月のF-35エンジン火災
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08
別の国防省高官も・・・
「悪魔の誘い:まとめ買いしない?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-31
デンマークとF-35
「ボーイングが選定結果に反発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-16
爆笑:ロッキードの世界配信写真は防衛副大臣と空幕長を取違え
→左の写真に「杉山航空幕僚長が、生産ラインからロールアウトした航空自衛隊の1番機の前でスピーチを行う」との説明を付け、ロッキードが世界に配信(大笑い)
23日、航空自衛隊用F-35の1番機ロールアウト式典がテキサス州で開催され、若宮防衛副大臣と杉山空幕長などが日本から出席しました。
そんな戦闘機命派には「めでたい日」のはずの同じ23日、アイダホ州の米空軍基地で地上発信準備でエンジンを始動させたF-35Aが「aft:尾部」から突然火災を起こし、パイロットは脱出、整備員数名が病院に搬送される事故が発生しました。
幸いけが人はなかったようですが、2014年6月に同様の発進準備中に火災を起こしたF-35の「F135エンジン」に注目が集まっています。当時の火災原因は2014年10月に特定され、その後エンジンの設計変更や材質変更等の対策が進行中と認識していましたが、それとの関連も気になります。エンジンが23日の火災の原因かも不明確ですが・・・
そんなF-35ですが、デンマークがF-35購入を決定した機種選定に、FA-18で破れたボーイングが15日に正規に異議申し立てを行いました。時期も時期、20日には米国防省F-35計画室長が「まとめ買いすると単価が下がりますよ」と悪魔のささやきを・・・
まずは23日の地上火災について
●23日の正午頃、Luke空軍基地からアイダホ州のMountain Home空軍基地に移動展開中の7機のF-35の中の1機で、離陸準備でエンジンを始動させたところ尾部から火災が発生し、パイロットが脱出した
●米空軍報道官によれば、火災はすぐに消し止められ、念のため手順に従って基地内病院に搬送された7名の整備員にもケガ等はなかった
●7機のF-35は9月10日から24日の予定で、空対地攻撃訓練のために移動訓練を行っていたが、今回の火災の原因は調査中である
●エンジンを製造するPratt & Whitney社の報道官は、「火災が派生したことは承知しているが、現時点では細部を把握していない」「我が社は国防省や米空軍に調査協力を行う準備がある」と述べた
●16日に15機のF-35A型機で発覚した、冷却システムの燃料タンク内の配管に絶縁が不十分な部分がある問題との関係も明らかになっていない。冷却システムの配管問題は担当企業の不手際で、来週対処要領が確認される予定
2014年6月のF-35エンジン火災
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08
安くなるよ!まとめ買いしない?
●20日、米空軍協会総会で国防省F-35計画室長Bogdanは、予定されていた契約時期を過ぎても協議がまとまらないロッキード社とのF-35製造契約「Lots 9 と10」について、タフな交渉が続いておりまだまとまっていないと語った
●機体単価の値下げを要求する国防省側に対し、ロッキード社が反発しており、交渉の難航が伝えられている
●また同中将は、「Lot 12, 13, and 14」で購入を予定している同盟国等に対し、まとめ買い契約(multi-year buy)をすることにより、計約450機の部品等をまとめて調達でき、控えめに見積もって約2000億円が節約できると述べ、参加を呼びかけた
●なお、デンマークは現時点でLot 12で購入する予定はないと同中将は語った
●(任期に関する記者からの質問に対し、)2012年から現ポストを勤めているが、終わりは見えない。
ボーイングがデンマーク機種選定に意義申し立て
●15日、デンマーク次期戦闘機の機種選定(5月に機種決定)でロッキード社のF-35に破れたボーイング(FA-18提案)は、デンマークの比較評価が不公正だと「request for insight」をデンマーク政府に提出し、機種選定の評価データを提供するよう要求した
●ボーイングの担当幹部は、このような不公正が選定が認められれば、他国の機種選定に悪影響を及ぼしかねないと強く主張している
●デンマークはF-35を28機購入と38機のFA-18購入を比較した模様だが、F-35の単価が約90億円に対し、FA-18が125億円と評価段階で見積もられるなど、不自然な選定が外部専門家からも指摘されており、「ロシアの脅威を前にし、政治的圧力が働いた」とも指摘されている
●他にも、評価ではボーイングがFA-18の寿命を9500時間と見積もっているのに6000時間と抑えられ、F-35が8000時間とされているなど奇妙な点がある
●また、ボーイングは複座価格と単座価格を併記して選定に臨んだが、FA-18の単座価格は選定に使用されず、単座戦闘機のF-35と公平な比較がされておらず、不公平だと訴えている
/////////////////////////////////////////////////////////
ロッキード社による写真の取り違えといい、式典当日の今回の火災といい、売り込みに必死な米国防省幹部の様子といい、デンマークの機種選定に見る米国圧力といい、何が何でも前進あるのみ、無理は承知でゴリゴリ売り込みの恐ろしさを感じます
そんなどさくさの最中に、1番機を受け取らされた日本と自衛隊の将来に「幸あれ」と祈らずにおれません。だめでしょうけど・・・。
23日の火災は、事によるとF-35Aの長期飛行停止に繋がる可能性があります。少なくとも2014年6月の火災では、2ヶ月以上の飛行停止が必要でしたから・・・
エンジンでしょうか・・・だとすると深刻です!
2014年6月のF-35エンジン火災
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08
別の国防省高官も・・・
「悪魔の誘い:まとめ買いしない?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-31
デンマークとF-35
「ボーイングが選定結果に反発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-16
より現実的で低価格なF-15能力向上案 [米空軍]
日本もこの近代化改修や追加購入でいいんじゃない?
14日、F-15製造企業を引き継いでいるボーイング社が、7年前に提案したF-15のステルス性強化を含む大規模能力向上策「Silent Eagle構想」を引っ込め、より現実的で「modest」な改修案を明らかにしました。
「兵器搭載量増加」「航続距離増加」「5世代機との連携」「電子戦能力強化」など、米空軍が最近打ち出した「Air Superiority 2030」に基づく将来制空アセット像を支える方向性で、日本を支配する旧態然とした戦闘機命派を置き去りにする動きが本格化しています
米空軍の直面する予算制約や、F-15を2040年代まで活用する米空軍構想に配慮した企業の独自提案ですが、米軍以外にF-15を運用している国は日本、韓国、シンガポール、イスラエルで、現在もサウジとカタール用に2019年まで生産ラインがオープンしている状況ですから、いろいろ海外にもインパクトありそうです
15日付米空軍協会web記事によれば
●セントルイスのボーイング社で同社が主催した記者説明会が実施され、米空軍の予算状況に配慮し、7年前に打ち出したF-15を「F-22やF-35のより良いパートナーにするSilent Eagle構想」ではなく、より現実的な提案をまとめたと同社幹部が語った
●同幹部は、変更案でもF-15Cを「2030~40年代でも有効な機体」に改修可能で、既に米空軍と契約が始まっているF-15の延命措置改修(2030~40年代までの使用を想定)との同タイミングでの実施を空軍に提案していると説明した。
●改修項目には、レーダーや兵器搭載量向上が含まれ、航続距離増加やIRST(赤外線追尾装置)搭載、更には複数の電子戦能力強化策や第5世代機との対話能力付加にも力を入れている。
●空対空兵器の搭載量を「quad racks」により2倍以上(22発案も)にし、F-15Eに採用されているコンフォーマル燃料タンク(CFT)付加で航続距離を延伸させる提案となっている
●同社幹部はまた、CFTは翼下への兵器搭載量を増加させ、F-22が搭載していないIRSTはF-15ステルス性向上に寄与するとアピールした。なおCFTは州空軍に既に11セット改修を納入し、追加で200セットの可能性がある
●また従来の「Silent Eagle構想」もいつでも提供できる状態にあるとしながらも、別の幹部は「適度の規模の能力向上案も準備できている」とも説明した
●同機を2040年代まで延命させる機体構造部分の改修では、翼や胴体、その他負荷のかかる部材を新品に交換することなどを米空軍と協議が行われている
●なお、米軍以外にF-15を運用している国は日本、韓国、シンガポール、イスラエルで、また現在もサウジとカタール用に2019年まで生産ラインがオープンしている
/////////////////////////////////////////////////////////
日本でもどう?・・とお話しすると、米空軍機とは形態が違うとか、米国は肝心な部分を提供してくれないとか、装備が提供されても「ブラックボックスだ」とか、ぐだぐだ細かいことを指摘する人がいますが、これらは「F-15延命に反対」する「重箱の隅」主張であって、本気で米国と最初から交渉すればそれなりに道は開けます
「F-15延命」や「F-15追加購入」が完全な策ではないにしろ、国産戦闘機の夢だけを追い続けると、「F-15延命」以上の技術的&政治的&予算的リスクを大規模に背負い込むことになることも肝に銘じる必要があるでしょう。
そもそも、日本を支配する旧態然とした戦闘機命派は、世界の軍事情勢をほとんど日本の新聞記事斜め読み程度でしか把握していませんから・・・。まぁ、戦闘機の機数維持のため、余計な情報が耳に入らないような形に組織を育て仕向けてきたのでしょうが。
「悲劇:F-3開発の動きと戦闘機命派への提言」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
F-15の延命や改修検討
「米メディア:心神よりF-15改修」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-16
「F-15全機の電子戦機材換装へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-05
「米空軍がF-15と16の延命検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-25
「F-15の寿命を2倍に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-27
「F-16の延命措置300機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-31-1
米空軍の将来制空アセット検討
「Penetrating Counter Air検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「2030年検討の結果発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-02
14日、F-15製造企業を引き継いでいるボーイング社が、7年前に提案したF-15のステルス性強化を含む大規模能力向上策「Silent Eagle構想」を引っ込め、より現実的で「modest」な改修案を明らかにしました。
「兵器搭載量増加」「航続距離増加」「5世代機との連携」「電子戦能力強化」など、米空軍が最近打ち出した「Air Superiority 2030」に基づく将来制空アセット像を支える方向性で、日本を支配する旧態然とした戦闘機命派を置き去りにする動きが本格化しています
米空軍の直面する予算制約や、F-15を2040年代まで活用する米空軍構想に配慮した企業の独自提案ですが、米軍以外にF-15を運用している国は日本、韓国、シンガポール、イスラエルで、現在もサウジとカタール用に2019年まで生産ラインがオープンしている状況ですから、いろいろ海外にもインパクトありそうです
15日付米空軍協会web記事によれば
●セントルイスのボーイング社で同社が主催した記者説明会が実施され、米空軍の予算状況に配慮し、7年前に打ち出したF-15を「F-22やF-35のより良いパートナーにするSilent Eagle構想」ではなく、より現実的な提案をまとめたと同社幹部が語った
●同幹部は、変更案でもF-15Cを「2030~40年代でも有効な機体」に改修可能で、既に米空軍と契約が始まっているF-15の延命措置改修(2030~40年代までの使用を想定)との同タイミングでの実施を空軍に提案していると説明した。
●改修項目には、レーダーや兵器搭載量向上が含まれ、航続距離増加やIRST(赤外線追尾装置)搭載、更には複数の電子戦能力強化策や第5世代機との対話能力付加にも力を入れている。
●空対空兵器の搭載量を「quad racks」により2倍以上(22発案も)にし、F-15Eに採用されているコンフォーマル燃料タンク(CFT)付加で航続距離を延伸させる提案となっている
●同社幹部はまた、CFTは翼下への兵器搭載量を増加させ、F-22が搭載していないIRSTはF-15ステルス性向上に寄与するとアピールした。なおCFTは州空軍に既に11セット改修を納入し、追加で200セットの可能性がある
●また従来の「Silent Eagle構想」もいつでも提供できる状態にあるとしながらも、別の幹部は「適度の規模の能力向上案も準備できている」とも説明した
●同機を2040年代まで延命させる機体構造部分の改修では、翼や胴体、その他負荷のかかる部材を新品に交換することなどを米空軍と協議が行われている
●なお、米軍以外にF-15を運用している国は日本、韓国、シンガポール、イスラエルで、また現在もサウジとカタール用に2019年まで生産ラインがオープンしている
/////////////////////////////////////////////////////////
日本でもどう?・・とお話しすると、米空軍機とは形態が違うとか、米国は肝心な部分を提供してくれないとか、装備が提供されても「ブラックボックスだ」とか、ぐだぐだ細かいことを指摘する人がいますが、これらは「F-15延命に反対」する「重箱の隅」主張であって、本気で米国と最初から交渉すればそれなりに道は開けます
「F-15延命」や「F-15追加購入」が完全な策ではないにしろ、国産戦闘機の夢だけを追い続けると、「F-15延命」以上の技術的&政治的&予算的リスクを大規模に背負い込むことになることも肝に銘じる必要があるでしょう。
そもそも、日本を支配する旧態然とした戦闘機命派は、世界の軍事情勢をほとんど日本の新聞記事斜め読み程度でしか把握していませんから・・・。まぁ、戦闘機の機数維持のため、余計な情報が耳に入らないような形に組織を育て仕向けてきたのでしょうが。
「悲劇:F-3開発の動きと戦闘機命派への提言」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
F-15の延命や改修検討
「米メディア:心神よりF-15改修」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-16
「F-15全機の電子戦機材換装へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-05
「米空軍がF-15と16の延命検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-25
「F-15の寿命を2倍に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-27
「F-16の延命措置300機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-31-1
米空軍の将来制空アセット検討
「Penetrating Counter Air検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「2030年検討の結果発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-02
担当ケンドール次官がレーザー兵器に冷水 [米国防省高官]
レーザー兵器は万能薬ではない
戦力化を決断するレベルに至っていない
「We’re not at the point where we can decide we’re going to put lasers in the force.」
7日、国防省の研究開発や装備品調達全般を取り仕切るケンドール国防次官(開発調達担当)は記者団に対し、国防省や4軍が多様な方面で研究開発を積極的に推進しているレーザー兵器に関し、将来の可能性や今後数年間のプロトタイプ作成投資は否定しなかったものの、過度の期待を戒めるよう語りました。
3月にはロッキード社の技術幹部が30kwレベルならいつでもOKと宣伝し、米空軍は2021年までに自己防御用を作戦機に搭載する計画を明らかにし、米海軍は艦艇に搭載して中東海域で試験を行い、陸軍も海兵隊も具体的装備を演習で試験する段階にあるとお伝えしてきましたが、兵器開発の元締めから「冷や水」発言です
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1
「ペルシャ湾で艦艇試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-13
ケンドール次官の発言はもっともな指摘であり、2018年度予算案議論に向け4軍の関係者に対し、レーザー兵器開発予算はしっかり煮詰めて精査してから持ってこい・・・と言いたげな雰囲気を醸し出しています。
新兵器の開発は、敵対国へのアナウンスメント抑止効果と、自国内での秩序ある予算編成とのバランス感覚が求められるものだと再認識した次第です
9日付Defense-News記事によれば
●7日の「Common Defense会議」後にケンドール次官は記者団に対し、30年に亘る国防省のレーザー研究から、同兵器が万能薬であるかのように表現される最近の風潮に否定的な考えを表明した
●同次官は「同兵器が一定の出力や発射様式や重量や大きさを達成できれば有効な兵器になり得るが、戦力化・装備化を決断するレベルに至っていない」と語った
●この発言は、ここ最近の国防省や軍需産業界の関係者による、関連技術が直ぐそこにあるような発言より控えめで慎重なものである
●ただ同次官は、同兵器が進歩すれば国防省に有用だと述べ、今後約3年間に同兵器のプロトタイプに投資を継続することにもコミットし、更なる技術成熟を確認することは明確に認めた
●そして同次官は「エネルギー兵器には多様なプロトタイプ計画があり、それを支える多様な技術研究が行われており、今後3年間で成果が確認できるだろう。その時点をもって、本分野で何を前進させるべきかを決断可能になる」と表現した
●しかし同時に、現時点では効果的な兵器具現化に向けて幾つかの重大な課題が残っていると述べ、必要な出力レベルや自然界での有効性に言及し、雲や雨などの気象条件による影響や大気の影響、敵の防御強化への対策など、レーザーが万能で無い事を強調した
●ただし同次官は、同兵器の小型無人機への潜在的有効性には大いに期待していると語った
●「小型無人機はISILやウクライナのロシア軍が目標照準に使用し、武器使用することもある。この様な目標には現レーザー兵器が有効な場合がある。そんなに遠距離で無い事が多く、大きな出力を必要としないからだ」と語った
/////////////////////////////////////////////////////
以前、米空軍の研究開発を束ねる女性大将が、レーザー兵器に対し冷静に議論するよう求めていましたが、強面のケンドール次官は単刀直入な判りやすい言いブリです。
でも同時に、ケンドール次官こそが、カーター長官やWork副長官と共に、その実現可能性を追求する体制作りを行った仕掛け人である事も忘れてはなりません
今後の3年間にブレークスルーの可能性は依然残されており、民間の先端技術にいち早くアプローチする体制も整いつつあるし、30年来の夢を追い続けて欲しいものです。
レーザー兵器関連の記事
「開発担当女性空軍大将も慎重」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1
「米陸軍は2016年前線に投入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-16
「まずC-17搭載レーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-23
「特殊作戦C-130にレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31
「ACC戦略2015では?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-12
「米空軍幹部が議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-29
「CNAS:エネルギー兵器の課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-23
「特殊部隊とレーザー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-16
「米空軍の30年戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-31
「ペルシャ湾で艦艇試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-13
「レーザー兵器の開発動向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-01
戦力化を決断するレベルに至っていない
「We’re not at the point where we can decide we’re going to put lasers in the force.」
7日、国防省の研究開発や装備品調達全般を取り仕切るケンドール国防次官(開発調達担当)は記者団に対し、国防省や4軍が多様な方面で研究開発を積極的に推進しているレーザー兵器に関し、将来の可能性や今後数年間のプロトタイプ作成投資は否定しなかったものの、過度の期待を戒めるよう語りました。
3月にはロッキード社の技術幹部が30kwレベルならいつでもOKと宣伝し、米空軍は2021年までに自己防御用を作戦機に搭載する計画を明らかにし、米海軍は艦艇に搭載して中東海域で試験を行い、陸軍も海兵隊も具体的装備を演習で試験する段階にあるとお伝えしてきましたが、兵器開発の元締めから「冷や水」発言です
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1
「ペルシャ湾で艦艇試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-13
ケンドール次官の発言はもっともな指摘であり、2018年度予算案議論に向け4軍の関係者に対し、レーザー兵器開発予算はしっかり煮詰めて精査してから持ってこい・・・と言いたげな雰囲気を醸し出しています。
新兵器の開発は、敵対国へのアナウンスメント抑止効果と、自国内での秩序ある予算編成とのバランス感覚が求められるものだと再認識した次第です
9日付Defense-News記事によれば
●7日の「Common Defense会議」後にケンドール次官は記者団に対し、30年に亘る国防省のレーザー研究から、同兵器が万能薬であるかのように表現される最近の風潮に否定的な考えを表明した
●同次官は「同兵器が一定の出力や発射様式や重量や大きさを達成できれば有効な兵器になり得るが、戦力化・装備化を決断するレベルに至っていない」と語った
●この発言は、ここ最近の国防省や軍需産業界の関係者による、関連技術が直ぐそこにあるような発言より控えめで慎重なものである
●ただ同次官は、同兵器が進歩すれば国防省に有用だと述べ、今後約3年間に同兵器のプロトタイプに投資を継続することにもコミットし、更なる技術成熟を確認することは明確に認めた
●そして同次官は「エネルギー兵器には多様なプロトタイプ計画があり、それを支える多様な技術研究が行われており、今後3年間で成果が確認できるだろう。その時点をもって、本分野で何を前進させるべきかを決断可能になる」と表現した
●しかし同時に、現時点では効果的な兵器具現化に向けて幾つかの重大な課題が残っていると述べ、必要な出力レベルや自然界での有効性に言及し、雲や雨などの気象条件による影響や大気の影響、敵の防御強化への対策など、レーザーが万能で無い事を強調した
●ただし同次官は、同兵器の小型無人機への潜在的有効性には大いに期待していると語った
●「小型無人機はISILやウクライナのロシア軍が目標照準に使用し、武器使用することもある。この様な目標には現レーザー兵器が有効な場合がある。そんなに遠距離で無い事が多く、大きな出力を必要としないからだ」と語った
/////////////////////////////////////////////////////
以前、米空軍の研究開発を束ねる女性大将が、レーザー兵器に対し冷静に議論するよう求めていましたが、強面のケンドール次官は単刀直入な判りやすい言いブリです。
でも同時に、ケンドール次官こそが、カーター長官やWork副長官と共に、その実現可能性を追求する体制作りを行った仕掛け人である事も忘れてはなりません
今後の3年間にブレークスルーの可能性は依然残されており、民間の先端技術にいち早くアプローチする体制も整いつつあるし、30年来の夢を追い続けて欲しいものです。
レーザー兵器関連の記事
「開発担当女性空軍大将も慎重」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1
「米陸軍は2016年前線に投入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-16
「まずC-17搭載レーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-23
「特殊作戦C-130にレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31
「ACC戦略2015では?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-12
「米空軍幹部が議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-29
「CNAS:エネルギー兵器の課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-23
「特殊部隊とレーザー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-16
「米空軍の30年戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-31
「ペルシャ湾で艦艇試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-13
「レーザー兵器の開発動向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-01
戦力構築戦略室SCOが存続を掛け動く [米国防省高官]
9日付Defense-Newsが、国防省内に設置された戦力構築戦略室SCO(Strategic Capabilities Office)のWilliam Roper室長インタビューを掲載し、次期政権での生き残りを掛けてSCOが活動を活発化させている様子を紹介しています
SCOはカーター国防長官が副長官時代の2012年に設けた小さなチームで、米軍のニーズを戦略的に把握し、4軍全体のニーズを踏まえ、既存の装備の他分野への応用や、企業が持つ「技術の種」の活用法を助言して具現化・装備化に繋げる様な役割を持つ組織のようです
米空軍が先駆者となり、海軍や陸軍も設置した緊急能力造成室RCO(Rapid Capabilities Office)と似た役割の国防省レベル組織のようでもあり、シリコンバレーやボストンに設置された民間企業技術の収集ご用聞き&国防省とのリエゾン出張所「DIUx」の元締め組織のようでもあります
その他、かつて伝説のA.マーシャル氏が率いた「Office of Net Assessment」の軍事技術版だとか、4軍がリスクを恐れて着手に躊躇する開発初期段階に予算投入する/できる組織だとか、様々に表現されているチームのようです
本日はまず、2月の2017年度予算案会見でカーター国防長官がアピールしたSCOの活動状況説明を振り返り、その後に9日付Defense-News掲載のRoper室長によるSCO説明をご紹介します。
カーター長官のSCOアピール発言(2月)
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
敵を困惑させるような新しい画期的能力を提供するSCO(Strategic Capabilities Office)の取り組みを、カーター長官は以下の例を挙げて紹介した
●スマホカメラのような小型センサーを目標照準の精度向上にキットとして開発し、SDBなど多様な爆弾等に適用
●群れを成す自動無人機。アラスカやイラクで実験を開始しているジェット機から散布するような高速飛行する小型無人機や、実際の島や人工島で周辺の海で艦隊防御や偵察に利用するネットワーク化された自動無人ボート
●海軍駆逐艦や陸軍の自走砲に装備する5インチ「電磁レールガン」は、従来の兵器をミサイル防衛兵器に変換。先月試験に成功
●無人機化した空軍の旧式航空機を「空飛ぶ弾薬庫:arsenal plane」として活用し、全てのタイプの通常兵器を発射使用可能にし、第5世代機とネットワーク連接してセンサーや目標照準機として活用。既存システムの組み合わせで新能力の獲得
Defense-News記事:SCO室長による説明
●今年の8月はとても忙しかった。2018年度予算案に、多様な選択肢やアイディアの中から、何を選択して組み込むかの検討に忙殺されたからだ。今後数週間で今後数年になすべき方向を決断することになる
●我がSCOの著名な成果は、艦艇防御用だったSM-6ミサイルを、ほとんど費用を掛けずに艦艇攻撃用に応用できるようにしたことである。このように、既存の技術や能力を新たな分野に生かす方法を案出するのも役目である
●戦略家や軍事アナリストとして、企業を支援することも重要な役割である。優秀な企業技術者が、同時に軍事戦略家であることは容易ではない。SCO室員は常に技術の現場で専門家と接触を維持し、どのような枠組みや分野でその技術が活用可能かを助言して技術の種を装備化に前進させる
●5月にメディアの皆さんに説明したように、政府の契約事務webサイトに「Broad Area Announcement」を掲載し、多様な企業からの情報を募り、また国防省が求めている技術ニーズを公開している
●多くの企業から情報提供をもらったが、最初は特定の任務用の既存装備の改良案などを持ち込まれることが多かった。
●しかしSCOが求めるのはそのような情報ではなく、もっと斬新で基礎的な「a piece of technology」であり、その技術を国防省や米軍が求めるより有用な分野に応用して任務遂行に繋げるのが役割である
●新政権でのSCOの存続や位置づけへの懸念に付いては、「cautiously optimistic」である。その為には、SCOが4軍と戦略的なパートナーである必要がある。
●新政権にSCOが無くなったら誰がどのように困るかと聞かれた際、明確に説明し、SCOの存在意義をアピールできなければならない。従って、4軍と協力して具体的プログラムを動かしていくことが重要だ
●SCO室長は、SCOが4軍全ての技術面での立ち上げ支援組織でありたいと考えている。具体的にSCOはその予算を、4軍がリスクを恐れて自身の予算で踏み切れない、作戦運用試験に至るまでの技術確認や計画立ち上げ部分に投入したいと考えている
CNAS研究員の評価・見方
●CNASのBen FitzGerald研究員は、新技術に焦点を当てた戦略室だと表現している。「Office of Net Assessment」の技術版のイメージをもっているとも
●更に同研究員は、有能な人材の小さなチームが存在し、はっきりは判らないが何か希望を持たせてくれる組織だ。敵から見れば、チョット立ち止まって考えさせられるような組織だと語っている
●カーター長官が立ち上げたDIUx(Defense Innovation Unit Experimental)は、初年度ゆっくりなスタートだったが、国防長官直轄にして活性化を試みている
●SCOは2012年立ち上げで時間が使えので、幾つかの成果を出せた。もっとも、SCOとDIUxは役割が異なり、DIUxは有望な技術保有企業を国防省装備開発に結びつける役割だが、SCOは作戦運用コンセプトや前線ニーズと最新技術を結びつけ、4軍に提供するような役割である
//////////////////////////////////////////////
「SCO」や「RCO」や「DIUx」、更に先端技術企業との連携や人材交流を促進する「Force of future」施策、そしてこれらの果実を総合的に技術優位に結びつけるのが「第3の相殺戦略」です。
これらは中国やロシア等が軍事力強化を進める中、厳しい財政状況の中でも何かできないかと知恵を絞って生まれた取り組みです。
当然全てがうまくいくとは限りませんし、失敗もあるでしょうが、その情熱とそれを支える人材の存在に圧倒的な差を感じる今日この頃です。
単に予算的な話ではなく、安全保障問題を避けてきた日本人が、太古の昔から人間、いや生物全てが生きるために努力してきた分野で、戦後70年間「思考停止」状態にあるからにほかありません。
SCO関連の記事
「カーター長官のアピール」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
「B-52を弾薬庫航空機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-12
米空軍や陸軍のRCO
「米陸軍もRCO設立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01
「次期爆撃機の要求検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
「謎のRQ-180」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
「謎の宇宙船X-37B」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
「国防長官がMC-12工場激励」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-02
カーター長官肝いりの「DIUx」
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1
「2つ目の場所とリーダー公表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
脅威の変化に対応する改革派
「相殺戦力等の改革を如何に引き継ぐか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「統合参謀本部副議長が改革を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-27
「米空軍に激震人事:戦闘機族ボスに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-09
SCOはカーター国防長官が副長官時代の2012年に設けた小さなチームで、米軍のニーズを戦略的に把握し、4軍全体のニーズを踏まえ、既存の装備の他分野への応用や、企業が持つ「技術の種」の活用法を助言して具現化・装備化に繋げる様な役割を持つ組織のようです
米空軍が先駆者となり、海軍や陸軍も設置した緊急能力造成室RCO(Rapid Capabilities Office)と似た役割の国防省レベル組織のようでもあり、シリコンバレーやボストンに設置された民間企業技術の収集ご用聞き&国防省とのリエゾン出張所「DIUx」の元締め組織のようでもあります
その他、かつて伝説のA.マーシャル氏が率いた「Office of Net Assessment」の軍事技術版だとか、4軍がリスクを恐れて着手に躊躇する開発初期段階に予算投入する/できる組織だとか、様々に表現されているチームのようです
本日はまず、2月の2017年度予算案会見でカーター国防長官がアピールしたSCOの活動状況説明を振り返り、その後に9日付Defense-News掲載のRoper室長によるSCO説明をご紹介します。
カーター長官のSCOアピール発言(2月)
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
敵を困惑させるような新しい画期的能力を提供するSCO(Strategic Capabilities Office)の取り組みを、カーター長官は以下の例を挙げて紹介した
●スマホカメラのような小型センサーを目標照準の精度向上にキットとして開発し、SDBなど多様な爆弾等に適用
●群れを成す自動無人機。アラスカやイラクで実験を開始しているジェット機から散布するような高速飛行する小型無人機や、実際の島や人工島で周辺の海で艦隊防御や偵察に利用するネットワーク化された自動無人ボート
●海軍駆逐艦や陸軍の自走砲に装備する5インチ「電磁レールガン」は、従来の兵器をミサイル防衛兵器に変換。先月試験に成功
●無人機化した空軍の旧式航空機を「空飛ぶ弾薬庫:arsenal plane」として活用し、全てのタイプの通常兵器を発射使用可能にし、第5世代機とネットワーク連接してセンサーや目標照準機として活用。既存システムの組み合わせで新能力の獲得
Defense-News記事:SCO室長による説明
●今年の8月はとても忙しかった。2018年度予算案に、多様な選択肢やアイディアの中から、何を選択して組み込むかの検討に忙殺されたからだ。今後数週間で今後数年になすべき方向を決断することになる
●我がSCOの著名な成果は、艦艇防御用だったSM-6ミサイルを、ほとんど費用を掛けずに艦艇攻撃用に応用できるようにしたことである。このように、既存の技術や能力を新たな分野に生かす方法を案出するのも役目である
●戦略家や軍事アナリストとして、企業を支援することも重要な役割である。優秀な企業技術者が、同時に軍事戦略家であることは容易ではない。SCO室員は常に技術の現場で専門家と接触を維持し、どのような枠組みや分野でその技術が活用可能かを助言して技術の種を装備化に前進させる
●5月にメディアの皆さんに説明したように、政府の契約事務webサイトに「Broad Area Announcement」を掲載し、多様な企業からの情報を募り、また国防省が求めている技術ニーズを公開している
●多くの企業から情報提供をもらったが、最初は特定の任務用の既存装備の改良案などを持ち込まれることが多かった。
●しかしSCOが求めるのはそのような情報ではなく、もっと斬新で基礎的な「a piece of technology」であり、その技術を国防省や米軍が求めるより有用な分野に応用して任務遂行に繋げるのが役割である
●新政権でのSCOの存続や位置づけへの懸念に付いては、「cautiously optimistic」である。その為には、SCOが4軍と戦略的なパートナーである必要がある。
●新政権にSCOが無くなったら誰がどのように困るかと聞かれた際、明確に説明し、SCOの存在意義をアピールできなければならない。従って、4軍と協力して具体的プログラムを動かしていくことが重要だ
●SCO室長は、SCOが4軍全ての技術面での立ち上げ支援組織でありたいと考えている。具体的にSCOはその予算を、4軍がリスクを恐れて自身の予算で踏み切れない、作戦運用試験に至るまでの技術確認や計画立ち上げ部分に投入したいと考えている
CNAS研究員の評価・見方
●CNASのBen FitzGerald研究員は、新技術に焦点を当てた戦略室だと表現している。「Office of Net Assessment」の技術版のイメージをもっているとも
●更に同研究員は、有能な人材の小さなチームが存在し、はっきりは判らないが何か希望を持たせてくれる組織だ。敵から見れば、チョット立ち止まって考えさせられるような組織だと語っている
●カーター長官が立ち上げたDIUx(Defense Innovation Unit Experimental)は、初年度ゆっくりなスタートだったが、国防長官直轄にして活性化を試みている
●SCOは2012年立ち上げで時間が使えので、幾つかの成果を出せた。もっとも、SCOとDIUxは役割が異なり、DIUxは有望な技術保有企業を国防省装備開発に結びつける役割だが、SCOは作戦運用コンセプトや前線ニーズと最新技術を結びつけ、4軍に提供するような役割である
//////////////////////////////////////////////
「SCO」や「RCO」や「DIUx」、更に先端技術企業との連携や人材交流を促進する「Force of future」施策、そしてこれらの果実を総合的に技術優位に結びつけるのが「第3の相殺戦略」です。
これらは中国やロシア等が軍事力強化を進める中、厳しい財政状況の中でも何かできないかと知恵を絞って生まれた取り組みです。
当然全てがうまくいくとは限りませんし、失敗もあるでしょうが、その情熱とそれを支える人材の存在に圧倒的な差を感じる今日この頃です。
単に予算的な話ではなく、安全保障問題を避けてきた日本人が、太古の昔から人間、いや生物全てが生きるために努力してきた分野で、戦後70年間「思考停止」状態にあるからにほかありません。
SCO関連の記事
「カーター長官のアピール」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
「B-52を弾薬庫航空機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-12
米空軍や陸軍のRCO
「米陸軍もRCO設立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01
「次期爆撃機の要求検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
「謎のRQ-180」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
「謎の宇宙船X-37B」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
「国防長官がMC-12工場激励」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-02
カーター長官肝いりの「DIUx」
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1
「2つ目の場所とリーダー公表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
脅威の変化に対応する改革派
「相殺戦力等の改革を如何に引き継ぐか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「統合参謀本部副議長が改革を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-27
「米空軍に激震人事:戦闘機族ボスに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-09
米空軍幹部「時代遅れのATOではなく・・・」 [米空軍]
米空軍に盲目追随の空自戦闘機命派に衝撃!
空自は、はしごを外された哀れなピエロか!?
19日から米空軍協会主催の航空宇宙&サイバー会議(21日まで)が始まり、米空軍の主要幹部が次々と登壇し、様々な分野について現状や問題点と対処方針について語っています。
取り上げれば切りがありませんが、本日は「chunk education」や「B-21の状況」をつまみに、メインを米空軍戦闘コマンドACC作戦部長による「時代遅れのATOから脱却せよ」発言にしてご紹介します
特に72時間サイクルで回るATO(Air tasking order)での航空作戦計画方式は、相手と地理的に近接する日本の作戦環境を考えれば、航空自衛隊には馴染まないとの意見が当然のように非戦闘機命派から上がっていたようですが、米空軍に「盲目追従」で「戦闘機が絡む事ならむやみに積極的」な戦闘機命派が暴走推進してきたやり方です
2年以上前から訴えているのに・・・
「ATO方式など機能するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-06-1
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2014-05-05
「20年前を目指す航空自衛隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-03
「時代遅れのATOから脱却せよ」発言
●米空軍戦闘コマンドACC作戦部長のThomas Deale少将は、将来の航空作戦センターでの活動は宇宙やサイバー空間を含む複数ドメインを扱う方向に変革すると語り、古めかしい時代遅れのATO方式ではなく、「on demand targeting」が可能なように変化進歩しなければならないと訴えた
●そして、攻撃航空機は大まかな作戦エリアを念頭に離陸し、柔軟に敵の動きに対応し、任務の最終段階で作戦センターから目標情報を提供されるようになるだろうと説明した
●湾岸戦争時の「Operation Desert Storm」では、作戦センターは72時間サイクルでATOを発出していたが、この「古めかしい一方放送のような」方式は、現在目指している「on demand」方式とは相容れないと語り、
●新しい方式において「鍵となる要素」は、宇宙やサイバー空間からの目標照準に関するインプットであり、「全ドメイン情報を融合させて任務成功に導く」体制だと同少将は訴えた
日本周辺国からの「脅威の変化」を素直に直視すれば、米空軍が湾岸戦争時(Operation Desert Storm)に使用した20数年前の作戦計画方式が役に立たないことは明々白々だったのに、なぁ・・んにも考えないで「戦闘機中心の作戦」を、つまり20数年前を追い続けた結果、訪れるべくして訪れた米空軍の脅威への対応に今になって翻弄される事になるわけです
繰り返し申し上げているように、日本は「脅威の変化」に直面する最前線国家です。米国より早く「脅威の変化」に気付き、自ら判断して米国を引っ張るくらいの強い意志が必要なのに、20数年前の作戦計画方式を盲目追従するから、自衛隊の前線部隊に言わせれば「ちゃぶ台返し」に会うわけです。
本当に戦闘機命派の罪は重いと思いますが、現状として戦闘機命派が支配している以上、戦闘機命派が変化に着手になければ組織は変化できないのです。いい加減にして欲しい・・・
まず、防衛計画の大綱別表に定められた、戦闘機飛行隊数と作戦機機数のデタラメな算出背景を白日の下にさらし、その修正から入ってもらいたいです
//////////////////////////////////////////////////////
以下はおまけで
「chunk education」と「B-21の状況」に関する発言
B-21開発の状況
●米空軍の緊急能力造成室RCOのRandall Warren室長は、B-21の機種選定が決着して「B-21」との名称が決定した今年2月以降、同機の開発は「順調:up and running」に進んでいると述べた
●RCOを中心に4年間も開発リスクを見据えた達成可能な要求値を煮詰めてきた結果、またNorthrop Grumman社と結んだ納期を守りコストを下げるインセンティブを与える契約により、調達計画通りに予算範囲内でB-21計画が進むことを楽観視しているとも語った
●また同室長は、最初の21機は1機約560億円以下の価格を達成できると予言した
●今後も同事業をRCOが担当し、空軍のMateriel Commandには移行しないだろうと述べ、理由を米空軍首脳と議会関係者の監視と情報提供が円滑に可能な点と、B-21の非公開技術情報を保護するためと説明した
●米空軍内部と退役軍人に募ったB-21爆撃機の愛称は、太平洋戦争時のドゥーリットル爆撃(Doolittle Raider)にちなみ、「Raider」に決定した
「chunk education」を推進
●米空軍大学のSteven L. Kwast校長は、サイバー戦やパイロット不足まで、様々な米空軍の課題に迅速に対処するため、「just in time」の教育版とも言える「chunk:固まりの、厚切りの、相当な量」教育戦略を導入しつつあると語った
●同校長は、この教育戦略は従来の学位取得を目指すような教育方式から、特定の問題に対処する焦点を絞った特製のまとまった教育を行う方式へのシフトに力点を置く事だと説明した
●大量生産時代の教育方式から脱却し、特にサイバー分野などの変化が激しい分野の教育を時代に適合させ、遠方の相手にも迅速に小分けにして提供しようとするものである
●この教育の目指すところは、「10ドルの課題を10セントで解決し、敵には100ドルの負担をさせる」ことである。
●単位認証や学校から離れた軍人がこの方式に追随出来るかどうかの問題は、今後の課題であるが・・・
//////////////////////////////////////////////////////
太平洋戦争時のドゥーリットル爆撃(Doolittle Raider)は、画期的なアイディア、陸海軍の協力、日本に対する奇襲効果等々の点から、米空軍が今でも教科書に載せて語り継いでいる「サクセスストーリー」です。
陸軍の爆撃機を海軍艦艇から発進させるという統合協力による画期的作戦で、航空機の航続距離から米軍機による攻撃はないだろうと安心していた日本を恐怖のどん底にたたき込み、日本爆撃成功後にバラバラになった攻撃編隊搭乗員達のサバイバル英雄話までくっついたストーリーです。そこから名前を取られると、日本人としては少し複雑ですか・・・
「chunk education」はよく分かりませんが、柔軟に迅速に教育カリキュラムを組み替える姿勢は重要で、トヨタの生産技術からから学んだ「just in time」を尊重していることもあり、応援したいと思います。
2年以上前から訴えているのに・・・
「ATO方式など機能するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-06-1
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2014-05-05
「20年前を目指す航空自衛隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-03
米空軍トップもリアルタイム重視
「3つの重視事項」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13
「迅速にピクチャー共有を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-21
将来の制空アセットに関する米空軍検討
「Penetrating Counter Air検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「2030年検討の結果発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-02
空自は、はしごを外された哀れなピエロか!?
19日から米空軍協会主催の航空宇宙&サイバー会議(21日まで)が始まり、米空軍の主要幹部が次々と登壇し、様々な分野について現状や問題点と対処方針について語っています。
取り上げれば切りがありませんが、本日は「chunk education」や「B-21の状況」をつまみに、メインを米空軍戦闘コマンドACC作戦部長による「時代遅れのATOから脱却せよ」発言にしてご紹介します
特に72時間サイクルで回るATO(Air tasking order)での航空作戦計画方式は、相手と地理的に近接する日本の作戦環境を考えれば、航空自衛隊には馴染まないとの意見が当然のように非戦闘機命派から上がっていたようですが、米空軍に「盲目追従」で「戦闘機が絡む事ならむやみに積極的」な戦闘機命派が暴走推進してきたやり方です
2年以上前から訴えているのに・・・
「ATO方式など機能するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-06-1
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2014-05-05
「20年前を目指す航空自衛隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-03
「時代遅れのATOから脱却せよ」発言
●米空軍戦闘コマンドACC作戦部長のThomas Deale少将は、将来の航空作戦センターでの活動は宇宙やサイバー空間を含む複数ドメインを扱う方向に変革すると語り、古めかしい時代遅れのATO方式ではなく、「on demand targeting」が可能なように変化進歩しなければならないと訴えた
●そして、攻撃航空機は大まかな作戦エリアを念頭に離陸し、柔軟に敵の動きに対応し、任務の最終段階で作戦センターから目標情報を提供されるようになるだろうと説明した
●湾岸戦争時の「Operation Desert Storm」では、作戦センターは72時間サイクルでATOを発出していたが、この「古めかしい一方放送のような」方式は、現在目指している「on demand」方式とは相容れないと語り、
●新しい方式において「鍵となる要素」は、宇宙やサイバー空間からの目標照準に関するインプットであり、「全ドメイン情報を融合させて任務成功に導く」体制だと同少将は訴えた
日本周辺国からの「脅威の変化」を素直に直視すれば、米空軍が湾岸戦争時(Operation Desert Storm)に使用した20数年前の作戦計画方式が役に立たないことは明々白々だったのに、なぁ・・んにも考えないで「戦闘機中心の作戦」を、つまり20数年前を追い続けた結果、訪れるべくして訪れた米空軍の脅威への対応に今になって翻弄される事になるわけです
繰り返し申し上げているように、日本は「脅威の変化」に直面する最前線国家です。米国より早く「脅威の変化」に気付き、自ら判断して米国を引っ張るくらいの強い意志が必要なのに、20数年前の作戦計画方式を盲目追従するから、自衛隊の前線部隊に言わせれば「ちゃぶ台返し」に会うわけです。
本当に戦闘機命派の罪は重いと思いますが、現状として戦闘機命派が支配している以上、戦闘機命派が変化に着手になければ組織は変化できないのです。いい加減にして欲しい・・・
まず、防衛計画の大綱別表に定められた、戦闘機飛行隊数と作戦機機数のデタラメな算出背景を白日の下にさらし、その修正から入ってもらいたいです
//////////////////////////////////////////////////////
以下はおまけで
「chunk education」と「B-21の状況」に関する発言
B-21開発の状況
●米空軍の緊急能力造成室RCOのRandall Warren室長は、B-21の機種選定が決着して「B-21」との名称が決定した今年2月以降、同機の開発は「順調:up and running」に進んでいると述べた
●RCOを中心に4年間も開発リスクを見据えた達成可能な要求値を煮詰めてきた結果、またNorthrop Grumman社と結んだ納期を守りコストを下げるインセンティブを与える契約により、調達計画通りに予算範囲内でB-21計画が進むことを楽観視しているとも語った
●また同室長は、最初の21機は1機約560億円以下の価格を達成できると予言した
●今後も同事業をRCOが担当し、空軍のMateriel Commandには移行しないだろうと述べ、理由を米空軍首脳と議会関係者の監視と情報提供が円滑に可能な点と、B-21の非公開技術情報を保護するためと説明した
●米空軍内部と退役軍人に募ったB-21爆撃機の愛称は、太平洋戦争時のドゥーリットル爆撃(Doolittle Raider)にちなみ、「Raider」に決定した
「chunk education」を推進
●米空軍大学のSteven L. Kwast校長は、サイバー戦やパイロット不足まで、様々な米空軍の課題に迅速に対処するため、「just in time」の教育版とも言える「chunk:固まりの、厚切りの、相当な量」教育戦略を導入しつつあると語った
●同校長は、この教育戦略は従来の学位取得を目指すような教育方式から、特定の問題に対処する焦点を絞った特製のまとまった教育を行う方式へのシフトに力点を置く事だと説明した
●大量生産時代の教育方式から脱却し、特にサイバー分野などの変化が激しい分野の教育を時代に適合させ、遠方の相手にも迅速に小分けにして提供しようとするものである
●この教育の目指すところは、「10ドルの課題を10セントで解決し、敵には100ドルの負担をさせる」ことである。
●単位認証や学校から離れた軍人がこの方式に追随出来るかどうかの問題は、今後の課題であるが・・・
//////////////////////////////////////////////////////
太平洋戦争時のドゥーリットル爆撃(Doolittle Raider)は、画期的なアイディア、陸海軍の協力、日本に対する奇襲効果等々の点から、米空軍が今でも教科書に載せて語り継いでいる「サクセスストーリー」です。
陸軍の爆撃機を海軍艦艇から発進させるという統合協力による画期的作戦で、航空機の航続距離から米軍機による攻撃はないだろうと安心していた日本を恐怖のどん底にたたき込み、日本爆撃成功後にバラバラになった攻撃編隊搭乗員達のサバイバル英雄話までくっついたストーリーです。そこから名前を取られると、日本人としては少し複雑ですか・・・
「chunk education」はよく分かりませんが、柔軟に迅速に教育カリキュラムを組み替える姿勢は重要で、トヨタの生産技術からから学んだ「just in time」を尊重していることもあり、応援したいと思います。
2年以上前から訴えているのに・・・
「ATO方式など機能するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-06-1
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2014-05-05
「20年前を目指す航空自衛隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-03
米空軍トップもリアルタイム重視
「3つの重視事項」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13
「迅速にピクチャー共有を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-21
将来の制空アセットに関する米空軍検討
「Penetrating Counter Air検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「2030年検討の結果発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-02
なぜ今、日英戦闘機の共同訓練なの? [ふと考えること]
F-2後継選定を巡りタイフーンに色気で米国を牽制のつもりか
「心神」ご披露と並ぶ悲しくむなしい戦闘機命派のあがきか
16日、航空自衛隊と在京英国大使館が、戦闘機による日英共同訓練を三沢基地を中心に10月中旬から11月上旬まで実施すると発表しました。「本訓練は、航空自衛隊が国内を拠点に米国以外の国と実施する初の共同訓練」で、「EX GUARDIAN NORTH 16:ガーディアンノース16」との名称で実施されるそうです
この訓練は、(英国がEU離脱を決定する以前の)今年1月の日英外務・防衛閣僚会合(2+2)において合意されたもので、訓練にあわせ英国からファロン国防相らが10月末ごろ来日し、日本側と北東アジア情勢やテロ対策などを巡って意見交換する予定とか
メイ首相が就任後、対中国姿勢を改めつつあるとは言うものの、つい最近も安倍首相が英国のEU離脱で日本企業千社以上が英国を脱出する可能性を示唆して英国&EUを牽制しており、時期的なセンスのなさが際だっています。
そもそも、往年の「吉田茂」ならニヤリとしたかもしれませんが、経済右肩下がりで東アジアの安全保障などに実質関係ない地球の反対側の国と、いまごろ時代錯誤の空中戦訓練を行う必要性などあるのでしょうか?
キャメロン政権の仕業
「予算減で英軍の士気崩壊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-18
「英軍が戦闘機半減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-13-2
「大なた:英軍の大軍縮」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19-1
ひねくれたまんぐーすが、英国側が「実戦的な訓練を通じ、相互運用性の向上を図り」、「深化する日英の防衛協力体制の象徴的なイベント」と紹介する本演習の狙いをあれこれ考えます。
まず「GUARDIAN NORTH 16」の概要
●参加部隊と規模
日本:航空総隊の北部航空方面隊
F-15戦闘機とF-2戦闘機それぞれ約4機
英国:第2飛行隊など150~200名
タイフーン戦闘機4機、空中給油機(A330型MRTT)2機、C-17輸送機3機
●訓練内容(東京新聞によれば)
空中戦、補給支援、指揮統制などを共同で訓練
東京新聞の難癖(真偽は知りません)
●日本政府はこれまで「(日米以外の)第三国の人の訓練をわが国において行うことは許されない」(1971年、福田赳夫外相の国会答弁)との姿勢を示しており、過去の政府答弁との整合性が問われることになる。
●英国軍が国内で訓練を行う場合、法的根拠が問題となるが、その一つとして想定されるのが、朝鮮戦争休戦協定が発効した後の五四年、日本が国連軍と締結した国連軍地位協定だ月。しかし使用できる基地・施設はキャンプ座間や横須賀海軍基地、横田飛行場など7カ所に指定されており、今回使用される三沢基地は含まれない
まんぐーすの考える本訓練の背景
●「世界を俯瞰する外交」を推進する安倍総理の意向を受け、防衛省が弾として出してきた一つが技術開発や共同生産パートナーとして有望な英国。兵器の共同開発だけでは目立つので、現場部隊レベルのネタを探したところ、移動も比較的安価で容易な航空戦力分野が浮き上がったのだろう
●空自としては、最近旗色の悪い戦闘機の話題作りとして、また取り組みやすく英語の勉強にもなる古式騒然とした空中戦演習を選択したのだろう。しかし・・・以下のような戦闘機命派の「こざかしい」「見え見えの」「ほほえましい」「3倍返しされそうな」浅知恵もあるような気がします
F-2後継選定における米国牽制
●2018年春頃までを目途に進むF-2戦闘機の後継機選定に向け、防衛省は情報提供要求RFIを発出済みで、ボーイングとロッキードがともに参画の意向を表明(INSジェーンズ情報)している
●F-2開発の過程で、純国産のはずが直前に政治的圧力で米国との共同開発になり、「共同」も聞こえの良い「日本独自技術の強奪作戦」であった事を骨身に刻んでいる団塊の世代や、その後の米国装備導入で「部品枯渇」や「意味不明の部品高騰」に苦しめられている現役世代は、米国の産軍複合体に根強い不信感を持っている
●僅かなりとも抵抗したい日本は、今年4月22日の「心神」初飛行を大々的に報道宣伝し、関連する「F-3国産開発決定報道」などにより、国産を追求していると折に触れて海外にも発信中
●一方でタイフーンやグリペン戦闘機は、米国製以外の貴重なF-2後継候補であり、日本がそれなりに注目していることを示すことで、米国政府と米国企業からの不当圧力を牽制する手段ともなり得る
//////////////////////////////////////////////////////
今年1月の日英外務・防衛閣僚会合(2+2)において合意したのだから、EU離脱云々以前の話だから、取りあえず米国と「血の同盟」を維持してる英国だから、今回は仕方ないでしょう。
でも、「脅威の変化」の最前線にあり、戦闘機の抑止力や有事の有効性が急降下している位置にある日本としては、資源配分の優先度を低下させるべき戦闘機の訓練を、英国と続けることにほとんど意味はないと思います
2の次、3の次のF-2後継機選定のために、余計な空中戦訓練など無駄です。人材や時間や予算の無駄使いだと思います。ましてや、英国などと訓練して喜んでいるようでは、戦闘機命派の悪評を増し、ますます組織がばらばらになりますよ・・・
もしかしたら、機種選定で敗者にしたA330MRTT空中給油機の方に興味があったりして・・・まぁ、F-35Bを沖縄に・・とか語って、認知症とか痴呆症とか疑われない事と併せ、十分に注意していただきたいと思います。
「韓国はA330に決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-01
戦闘機への投資を語る空自OB
「織田邦男の戦闘機命論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-06
「広中雅之は対領空侵効果に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1
「小野田治も戦闘機に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05
いい加減にしろ戦闘機命派
「悲劇:F-35の主要問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「悲劇:F-3開発の問題整理」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
「戦闘機の呪縛から脱せよ」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
英国軍は崩壊寸前!?
「予算減で英軍の士気崩壊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-18
「英軍が戦闘機半減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-13-2
「大なた:英軍の大軍縮」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19-1
「心神」ご披露と並ぶ悲しくむなしい戦闘機命派のあがきか
16日、航空自衛隊と在京英国大使館が、戦闘機による日英共同訓練を三沢基地を中心に10月中旬から11月上旬まで実施すると発表しました。「本訓練は、航空自衛隊が国内を拠点に米国以外の国と実施する初の共同訓練」で、「EX GUARDIAN NORTH 16:ガーディアンノース16」との名称で実施されるそうです
この訓練は、(英国がEU離脱を決定する以前の)今年1月の日英外務・防衛閣僚会合(2+2)において合意されたもので、訓練にあわせ英国からファロン国防相らが10月末ごろ来日し、日本側と北東アジア情勢やテロ対策などを巡って意見交換する予定とか
メイ首相が就任後、対中国姿勢を改めつつあるとは言うものの、つい最近も安倍首相が英国のEU離脱で日本企業千社以上が英国を脱出する可能性を示唆して英国&EUを牽制しており、時期的なセンスのなさが際だっています。
そもそも、往年の「吉田茂」ならニヤリとしたかもしれませんが、経済右肩下がりで東アジアの安全保障などに実質関係ない地球の反対側の国と、いまごろ時代錯誤の空中戦訓練を行う必要性などあるのでしょうか?
キャメロン政権の仕業
「予算減で英軍の士気崩壊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-18
「英軍が戦闘機半減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-13-2
「大なた:英軍の大軍縮」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19-1
ひねくれたまんぐーすが、英国側が「実戦的な訓練を通じ、相互運用性の向上を図り」、「深化する日英の防衛協力体制の象徴的なイベント」と紹介する本演習の狙いをあれこれ考えます。
まず「GUARDIAN NORTH 16」の概要
●参加部隊と規模
日本:航空総隊の北部航空方面隊
F-15戦闘機とF-2戦闘機それぞれ約4機
英国:第2飛行隊など150~200名
タイフーン戦闘機4機、空中給油機(A330型MRTT)2機、C-17輸送機3機
●訓練内容(東京新聞によれば)
空中戦、補給支援、指揮統制などを共同で訓練
東京新聞の難癖(真偽は知りません)
●日本政府はこれまで「(日米以外の)第三国の人の訓練をわが国において行うことは許されない」(1971年、福田赳夫外相の国会答弁)との姿勢を示しており、過去の政府答弁との整合性が問われることになる。
●英国軍が国内で訓練を行う場合、法的根拠が問題となるが、その一つとして想定されるのが、朝鮮戦争休戦協定が発効した後の五四年、日本が国連軍と締結した国連軍地位協定だ月。しかし使用できる基地・施設はキャンプ座間や横須賀海軍基地、横田飛行場など7カ所に指定されており、今回使用される三沢基地は含まれない
まんぐーすの考える本訓練の背景
●「世界を俯瞰する外交」を推進する安倍総理の意向を受け、防衛省が弾として出してきた一つが技術開発や共同生産パートナーとして有望な英国。兵器の共同開発だけでは目立つので、現場部隊レベルのネタを探したところ、移動も比較的安価で容易な航空戦力分野が浮き上がったのだろう
●空自としては、最近旗色の悪い戦闘機の話題作りとして、また取り組みやすく英語の勉強にもなる古式騒然とした空中戦演習を選択したのだろう。しかし・・・以下のような戦闘機命派の「こざかしい」「見え見えの」「ほほえましい」「3倍返しされそうな」浅知恵もあるような気がします
F-2後継選定における米国牽制
●2018年春頃までを目途に進むF-2戦闘機の後継機選定に向け、防衛省は情報提供要求RFIを発出済みで、ボーイングとロッキードがともに参画の意向を表明(INSジェーンズ情報)している
●F-2開発の過程で、純国産のはずが直前に政治的圧力で米国との共同開発になり、「共同」も聞こえの良い「日本独自技術の強奪作戦」であった事を骨身に刻んでいる団塊の世代や、その後の米国装備導入で「部品枯渇」や「意味不明の部品高騰」に苦しめられている現役世代は、米国の産軍複合体に根強い不信感を持っている
●僅かなりとも抵抗したい日本は、今年4月22日の「心神」初飛行を大々的に報道宣伝し、関連する「F-3国産開発決定報道」などにより、国産を追求していると折に触れて海外にも発信中
●一方でタイフーンやグリペン戦闘機は、米国製以外の貴重なF-2後継候補であり、日本がそれなりに注目していることを示すことで、米国政府と米国企業からの不当圧力を牽制する手段ともなり得る
//////////////////////////////////////////////////////
今年1月の日英外務・防衛閣僚会合(2+2)において合意したのだから、EU離脱云々以前の話だから、取りあえず米国と「血の同盟」を維持してる英国だから、今回は仕方ないでしょう。
でも、「脅威の変化」の最前線にあり、戦闘機の抑止力や有事の有効性が急降下している位置にある日本としては、資源配分の優先度を低下させるべき戦闘機の訓練を、英国と続けることにほとんど意味はないと思います
2の次、3の次のF-2後継機選定のために、余計な空中戦訓練など無駄です。人材や時間や予算の無駄使いだと思います。ましてや、英国などと訓練して喜んでいるようでは、戦闘機命派の悪評を増し、ますます組織がばらばらになりますよ・・・
もしかしたら、機種選定で敗者にしたA330MRTT空中給油機の方に興味があったりして・・・まぁ、F-35Bを沖縄に・・とか語って、認知症とか痴呆症とか疑われない事と併せ、十分に注意していただきたいと思います。
「韓国はA330に決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-01
戦闘機への投資を語る空自OB
「織田邦男の戦闘機命論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-06
「広中雅之は対領空侵効果に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1
「小野田治も戦闘機に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05
いい加減にしろ戦闘機命派
「悲劇:F-35の主要問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「悲劇:F-3開発の問題整理」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
「戦闘機の呪縛から脱せよ」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
英国軍は崩壊寸前!?
「予算減で英軍の士気崩壊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-18
「英軍が戦闘機半減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-13-2
「大なた:英軍の大軍縮」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19-1
ボーイングが米空軍次期練習機T-X候補を発表 [米空軍]
13日、米空軍の次期練習機T-X候補に名乗りを上げる「ボーイングとSaabチーム」が、候補となる新設計の機体を公開し、なかなかかっこ良い機体が軍事メディアの話題を集めています。
次期練習機T-Xは、50年以上使用している420機のT-38後継として350機の調達を予定し、20年間に亘って毎年1000億円以上の調達運用経費が絡む大型契約で、米国外の企業も交えた4チームが参戦すると言われています。
同機は米空軍が取り組む調達改革の試金石とも言える調達事業で、空軍長官が掲げる「早い段階からの企業との情報共有」、「コストと性能のトレードオフを精査」等々の指針に沿い、通常より1年近く早い2015年3月に要求性能が公開され、企業とじっくりやりとりして検討した後、2017年秋に企業と機首を決定し、2022年からの納入開始の計画となっています
今後様々な関係者の思惑を含み、各国や各企業が動くと思われますので、その「序章」として「Boeing-Saab候補機」を簡単にご紹介し、2015年3月公表の要求性能を当時の記事から振り返ります
Boeing-Saab候補機について
●ボーイングのPhantom社長のDarryl Davis氏は、性能や候補機に投入された新しい具体的技術について細部への言及を避けつつ、華やかな音楽と照明の中で登場した「T-X候補機」が既に2機存在すると語った
●2つの垂直尾翼により、より良い機動性を獲得し、かつ軽量化を図った。エンジンはGE製のGE-404エンジン1台
●グラスコックピットを採用し、オープンソフトで機体と地上訓練装置とでデータの共有が可能
●要求性能にはないが、翼下に各2カ所の搭載ポイントを設けた
●空中給油の受け口(receptacle)を搭載するスペースを確保
●米空軍は「high G」や「high angle of attack」性能をインセンティブ項目に指定しているが、「Boeing-Saab候補機」はコスト削減の視点からも、機体性能値を細密に設定している
●外観からは判らないが、先進的設計と製造工程を取り入れている。細部には言及しないが、道具を使用せず機体組み立てが可能(enable Boeing to assemble the aircraft without any tools)である
●これも細部には言及しないが、キャノピー製造や3-Dプリンター活用により、機体製造時間の短縮を図った
●BoeingとSaabの製造分担については言及がなかったが、関連技術はボーイングのFA-18とSaabのグリペンから採用しているとのこと。脚はF-16のものをそのまま活用
●Boeing-Saabチームは計画的な宣伝を行っており、8月にwebサイトを開設し、正式一般公開となる9月19日からの米空軍協会の航空宇宙サイバー総会に向け、その1週間前にこの様な記者発表を行った
●他にも「T-X」へは3チームの参戦が予期されており、「Northrop Grumman/ BAE」は新デザイン機を提案予定である。「Lockheed Martin」は韓国空軍が使用している韓国製T-50の改良型T-50Aで参入する方向で、「Raytheon, Leonardo and CAE」もM-346を改良した機体T-100で競争に参入する見込み
Boeing社による13日公表映像(8分半)
(冒頭にCM映像が流れることがありますが、その後にT-X登場です)
米空軍次期練習機T-Xの要求性能と選定の流れ
(2015年3月18日公表)
●このT-X調達は、James米空軍長官が掲げた調達改革の最初のケースとなるもので、「早い段階からの企業との情報共有」、「コストと性能のトレードオフを精査」等々の狙いがどのように実現されるのかに注目が集まっている
●公開された100項目以上の要求性能に基づき、同年5月10日までに希望企業が参加を申し出る。その後、申し出た企業と細部のやりとりを経て、最終的には2017年秋に企業と機首を決定し、2022年からの納入開始
●米空軍教育訓練コマンドは「従来の装備調達に比し、10ヶ月も早く要求性能を公開した。これは企業とのより深くオープンな意見交換を行うためである」と述べ、2026年~45年の間の運用を想定し、その間年間360時間の飛行を前提として稼働率80%を求めている
●米空軍は「off the shelf」航空機に拘らないことから、「Boeing/Saab」や「Northrop Grumman/ BAE」は新デザイン機を提案予定である
具体的な特徴的要求項目
●100項目以上の要求性能の中で、特に強調されているのは「sustained G」と「simulatorの信頼性・有効性」と「sustainment」の項目である
●また、老朽化したT-38練習機では出来ない戦闘機及び爆撃機操縦者に必要な訓練が出来ることが求められている
●エンジンの燃費はT-38より1割以上の改善が要求され、空中給油装置も要求。外装PODは「weapon systems support pod」と「travel pod」のみ
●米空軍はまた、多様な空対空・空対地の兵器発射・投下を模擬出来る「switchology:スイッチアクション?模擬」が可能なことも求めている
その他の関連事項
●米空軍作戦部長は議会で、「T-Xは将来Aggressor任務を果たすに十分なスペース、パワー、冷却機能等を有しているが、要求性能ではAggressor任務を求めてはいない」、「F-16が同任務を最も効率的に実施している中、T-Xの使用を考えるのは時期尚早だ」と説明した
●米空軍省の調達担当次官も、将来のある時点でAggressor任務をT-Xに期待する事はありあるだろうが、要求性能値はそのオプションを妨げないものとなっていると語った
●米空軍からの企業への質問には、「将来の能力拡張や変更に関し、どの程度オープンで柔軟か」や「レーダーやリンクや防御システム等の将来改修の阻害要因」が含まれている
●一方で米空軍教育訓練コマンドは「拡張性」要求には懸念も示し、「要員養成訓練が可能なことが重要であり、拡張性は必要だが、適切な費用対効果の範囲内でだ」と語った
//////////////////////////////////////////////////////////
練習機は比較的参入が容易で、「候補機種」が世界中にあり、今回も韓国やスウェーデンやイタリア企業が既に米企業と組んで参戦する方向にあります。
その中から「誰からも文句を言われない」選定をするのは大変困難な作業になります。特にこの様な大きな「金」が動く機種選定だと・・・
今後、応募企業と「意見交換・情報共有」を行い、非公開の細部要求性能を「費用対効果」や「実現可能性」を踏まえて定め、最終的な「提案要求書:RFP」は年内には米空軍から参戦企業に発出され、2017年秋に最終決定の予定だそうです
軍需産業政策を担当する米国防省の役人の立場なら、米国企業の関与が大きく、なおかつ多くの米企業の共存共栄が図られる機種であることが望ましいのでしょうが・・・
次期練習機や長距離スタンドオフ兵器等が対象
「米空軍の調達コスト削減戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-19
T-X関連の記事
「T-X要求性能の概要発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-23-1
「シミュレーターが重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-21
「次期練習機は2年凍結?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-19
「米空軍T-38練習機の後継争い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-30
「ボーイングがT-38後継を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-18
「T-38に亀裂やトラブル多発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-20-1
悪夢のKC-46A選定どろ沼
「KC-X最終決定 泥沼終結か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25
次期練習機T-Xは、50年以上使用している420機のT-38後継として350機の調達を予定し、20年間に亘って毎年1000億円以上の調達運用経費が絡む大型契約で、米国外の企業も交えた4チームが参戦すると言われています。
同機は米空軍が取り組む調達改革の試金石とも言える調達事業で、空軍長官が掲げる「早い段階からの企業との情報共有」、「コストと性能のトレードオフを精査」等々の指針に沿い、通常より1年近く早い2015年3月に要求性能が公開され、企業とじっくりやりとりして検討した後、2017年秋に企業と機首を決定し、2022年からの納入開始の計画となっています
今後様々な関係者の思惑を含み、各国や各企業が動くと思われますので、その「序章」として「Boeing-Saab候補機」を簡単にご紹介し、2015年3月公表の要求性能を当時の記事から振り返ります
Boeing-Saab候補機について
●ボーイングのPhantom社長のDarryl Davis氏は、性能や候補機に投入された新しい具体的技術について細部への言及を避けつつ、華やかな音楽と照明の中で登場した「T-X候補機」が既に2機存在すると語った
●2つの垂直尾翼により、より良い機動性を獲得し、かつ軽量化を図った。エンジンはGE製のGE-404エンジン1台
●グラスコックピットを採用し、オープンソフトで機体と地上訓練装置とでデータの共有が可能
●要求性能にはないが、翼下に各2カ所の搭載ポイントを設けた
●空中給油の受け口(receptacle)を搭載するスペースを確保
●米空軍は「high G」や「high angle of attack」性能をインセンティブ項目に指定しているが、「Boeing-Saab候補機」はコスト削減の視点からも、機体性能値を細密に設定している
●外観からは判らないが、先進的設計と製造工程を取り入れている。細部には言及しないが、道具を使用せず機体組み立てが可能(enable Boeing to assemble the aircraft without any tools)である
●これも細部には言及しないが、キャノピー製造や3-Dプリンター活用により、機体製造時間の短縮を図った
●BoeingとSaabの製造分担については言及がなかったが、関連技術はボーイングのFA-18とSaabのグリペンから採用しているとのこと。脚はF-16のものをそのまま活用
●Boeing-Saabチームは計画的な宣伝を行っており、8月にwebサイトを開設し、正式一般公開となる9月19日からの米空軍協会の航空宇宙サイバー総会に向け、その1週間前にこの様な記者発表を行った
●他にも「T-X」へは3チームの参戦が予期されており、「Northrop Grumman/ BAE」は新デザイン機を提案予定である。「Lockheed Martin」は韓国空軍が使用している韓国製T-50の改良型T-50Aで参入する方向で、「Raytheon, Leonardo and CAE」もM-346を改良した機体T-100で競争に参入する見込み
Boeing社による13日公表映像(8分半)
(冒頭にCM映像が流れることがありますが、その後にT-X登場です)
米空軍次期練習機T-Xの要求性能と選定の流れ
(2015年3月18日公表)
●このT-X調達は、James米空軍長官が掲げた調達改革の最初のケースとなるもので、「早い段階からの企業との情報共有」、「コストと性能のトレードオフを精査」等々の狙いがどのように実現されるのかに注目が集まっている
●公開された100項目以上の要求性能に基づき、同年5月10日までに希望企業が参加を申し出る。その後、申し出た企業と細部のやりとりを経て、最終的には2017年秋に企業と機首を決定し、2022年からの納入開始
●米空軍教育訓練コマンドは「従来の装備調達に比し、10ヶ月も早く要求性能を公開した。これは企業とのより深くオープンな意見交換を行うためである」と述べ、2026年~45年の間の運用を想定し、その間年間360時間の飛行を前提として稼働率80%を求めている
●米空軍は「off the shelf」航空機に拘らないことから、「Boeing/Saab」や「Northrop Grumman/ BAE」は新デザイン機を提案予定である
具体的な特徴的要求項目
●100項目以上の要求性能の中で、特に強調されているのは「sustained G」と「simulatorの信頼性・有効性」と「sustainment」の項目である
●また、老朽化したT-38練習機では出来ない戦闘機及び爆撃機操縦者に必要な訓練が出来ることが求められている
●エンジンの燃費はT-38より1割以上の改善が要求され、空中給油装置も要求。外装PODは「weapon systems support pod」と「travel pod」のみ
●米空軍はまた、多様な空対空・空対地の兵器発射・投下を模擬出来る「switchology:スイッチアクション?模擬」が可能なことも求めている
その他の関連事項
●米空軍作戦部長は議会で、「T-Xは将来Aggressor任務を果たすに十分なスペース、パワー、冷却機能等を有しているが、要求性能ではAggressor任務を求めてはいない」、「F-16が同任務を最も効率的に実施している中、T-Xの使用を考えるのは時期尚早だ」と説明した
●米空軍省の調達担当次官も、将来のある時点でAggressor任務をT-Xに期待する事はありあるだろうが、要求性能値はそのオプションを妨げないものとなっていると語った
●米空軍からの企業への質問には、「将来の能力拡張や変更に関し、どの程度オープンで柔軟か」や「レーダーやリンクや防御システム等の将来改修の阻害要因」が含まれている
●一方で米空軍教育訓練コマンドは「拡張性」要求には懸念も示し、「要員養成訓練が可能なことが重要であり、拡張性は必要だが、適切な費用対効果の範囲内でだ」と語った
//////////////////////////////////////////////////////////
練習機は比較的参入が容易で、「候補機種」が世界中にあり、今回も韓国やスウェーデンやイタリア企業が既に米企業と組んで参戦する方向にあります。
その中から「誰からも文句を言われない」選定をするのは大変困難な作業になります。特にこの様な大きな「金」が動く機種選定だと・・・
今後、応募企業と「意見交換・情報共有」を行い、非公開の細部要求性能を「費用対効果」や「実現可能性」を踏まえて定め、最終的な「提案要求書:RFP」は年内には米空軍から参戦企業に発出され、2017年秋に最終決定の予定だそうです
軍需産業政策を担当する米国防省の役人の立場なら、米国企業の関与が大きく、なおかつ多くの米企業の共存共栄が図られる機種であることが望ましいのでしょうが・・・
次期練習機や長距離スタンドオフ兵器等が対象
「米空軍の調達コスト削減戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-19
T-X関連の記事
「T-X要求性能の概要発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-23-1
「シミュレーターが重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-21
「次期練習機は2年凍結?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-19
「米空軍T-38練習機の後継争い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-30
「ボーイングがT-38後継を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-18
「T-38に亀裂やトラブル多発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-20-1
悪夢のKC-46A選定どろ沼
「KC-X最終決定 泥沼終結か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25
装備内蔵システムへのサイバー攻撃に備えて [サイバーと宇宙]
本サイトのFacebookとTwitterもご活用下さい!
Facebook→http://www.facebook.com/holylandsonettokyo
Twitter→https://twitter.com/Mongoose2011
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
1日付Defense-Newsは、米国防省が議会に対し、技術分析予算の一部を研究・試験・評価予算に振り替え、主要な兵器システムのサイバー攻撃に対する脆弱性評価費の増額に充当したいと要請したと報じています
主要装備のサイバー脆弱性評価は、議会の要請を受けオバマ大統領が2015年に命じたもので、2019年末までに評価結果を議会に報告することになっており、既に約200億円の予算が計上されていますが、今回更に追加で約100億円を振り替え使用要求したものです。
この問題は、サイバー攻撃と言えばパソコンや情報システムが対象と想定しがちですが、兵器や整備機材に搭載されている集積回路やチップもサイバー攻撃の対象になる可能性があり、全てをネットワークで連接して迅速な使用を意図する方向にある中、重大な懸念となっている現状が背景にあります
1日付Defense-News記事によれば
●最近関連のレポートをCNASから発表したGeorge Washington大学のJacquelyn Schneider准教授は、過去20年間に製造された西側の兵器は「戦場で極めて高い効果を発揮したかも知れないが、ネットワーク攻撃には極めて脆弱だ」、「衛星通信、GPS、戦闘空域情報などネットワークから得る目標情報への依存が急激に進んでいる」と指摘している
●そしてデジタルネットワーク情報に大きく依存している兵器システムとして、F-35とDCGS(作戦情報分析共有システム)を上げた
●国防省の試験評価部長であるMichael Gilmore氏も2015年、ほぼ全ての国防省システムがサイバー攻撃に脆弱だとする報告書を出し、特に2014年時点で40個のシステムは早急な対策が必要だと指摘した
●また国防省の科学技術諮問委員会の2013年報告書は、国防省は兵器システムの使用や運用に関するサイバー安全性には注意しているが、兵器やその支援装備の内部のIT回路や部品レベルへの対策を放棄していると警告を発していた
●同諮問委員会の報告書は、「現代の世界は高度に連接され自動化が進んでいるが、全ての電子的な演算チップ、記憶装置、ソフトウェアを備えた装置は、国防省の兵器も含めサイバー攻撃の対象となり得る」と警鐘を鳴らしている
●更に同報告書は、「サイバー攻撃によるわずかなシステムへの作用でも、兵器を無効化することが可能」であり、各システムのサイバー攻撃への脆弱性を予測することは難しいと強調している。(つまり、全ての兵器や装備に注意しなければならない)
●今年6月に実施された、協力者ハッカーの協力を得た作戦運用に直接関与しない国防省システムの脆弱性チェックで、138箇所もの脆弱点が発見されたことは記憶に新しい。
//////////////////////////////////////////////////////
中国やロシアなら、Schneider准教授がCNASレポートで指摘したF-35とDCGS(作戦情報分析共有システム)を今後重点的に狙いに来るでしょう。
F-35の場合、全世界の整備部隊や企業を結ぶ自動兵站支援システムALISを使用することになっていますが、細心の注意が必要です。サイバー対処が追いついていないとの指摘も、かねてから出されています。
いずれにしても、米軍だけでなく、世界の軍隊が自分のこととして真剣に取り組むことを求められています。そしてその経費は、戦闘機の数を削減してでも捻出する必要があると思います
CNASのJacqueline Parzialeらのレポート
→http://www.cnas.org/open-source-software-and-DoD
関連の記事
「個人意識で8割解決」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-22-1
「航空戦力でサイバー戦を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-17
「閉鎖ネットワークにサイバー攻撃を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-18
「成果発表Hack the Pentagon」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-20-1
「イージス艦サーバー企業が中国に身売り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-06
中国製のニセ部品関連
「F-35センサー中国製造疑惑」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-14-1
「上院の偽部品レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-23-1
「米国製兵器は偽物だらけ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-29
「中国製にせ部品との戦い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-10
Facebook→http://www.facebook.com/holylandsonettokyo
Twitter→https://twitter.com/Mongoose2011
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
1日付Defense-Newsは、米国防省が議会に対し、技術分析予算の一部を研究・試験・評価予算に振り替え、主要な兵器システムのサイバー攻撃に対する脆弱性評価費の増額に充当したいと要請したと報じています
主要装備のサイバー脆弱性評価は、議会の要請を受けオバマ大統領が2015年に命じたもので、2019年末までに評価結果を議会に報告することになっており、既に約200億円の予算が計上されていますが、今回更に追加で約100億円を振り替え使用要求したものです。
この問題は、サイバー攻撃と言えばパソコンや情報システムが対象と想定しがちですが、兵器や整備機材に搭載されている集積回路やチップもサイバー攻撃の対象になる可能性があり、全てをネットワークで連接して迅速な使用を意図する方向にある中、重大な懸念となっている現状が背景にあります
1日付Defense-News記事によれば
●最近関連のレポートをCNASから発表したGeorge Washington大学のJacquelyn Schneider准教授は、過去20年間に製造された西側の兵器は「戦場で極めて高い効果を発揮したかも知れないが、ネットワーク攻撃には極めて脆弱だ」、「衛星通信、GPS、戦闘空域情報などネットワークから得る目標情報への依存が急激に進んでいる」と指摘している
●そしてデジタルネットワーク情報に大きく依存している兵器システムとして、F-35とDCGS(作戦情報分析共有システム)を上げた
●国防省の試験評価部長であるMichael Gilmore氏も2015年、ほぼ全ての国防省システムがサイバー攻撃に脆弱だとする報告書を出し、特に2014年時点で40個のシステムは早急な対策が必要だと指摘した
●また国防省の科学技術諮問委員会の2013年報告書は、国防省は兵器システムの使用や運用に関するサイバー安全性には注意しているが、兵器やその支援装備の内部のIT回路や部品レベルへの対策を放棄していると警告を発していた
●同諮問委員会の報告書は、「現代の世界は高度に連接され自動化が進んでいるが、全ての電子的な演算チップ、記憶装置、ソフトウェアを備えた装置は、国防省の兵器も含めサイバー攻撃の対象となり得る」と警鐘を鳴らしている
●更に同報告書は、「サイバー攻撃によるわずかなシステムへの作用でも、兵器を無効化することが可能」であり、各システムのサイバー攻撃への脆弱性を予測することは難しいと強調している。(つまり、全ての兵器や装備に注意しなければならない)
●今年6月に実施された、協力者ハッカーの協力を得た作戦運用に直接関与しない国防省システムの脆弱性チェックで、138箇所もの脆弱点が発見されたことは記憶に新しい。
//////////////////////////////////////////////////////
中国やロシアなら、Schneider准教授がCNASレポートで指摘したF-35とDCGS(作戦情報分析共有システム)を今後重点的に狙いに来るでしょう。
F-35の場合、全世界の整備部隊や企業を結ぶ自動兵站支援システムALISを使用することになっていますが、細心の注意が必要です。サイバー対処が追いついていないとの指摘も、かねてから出されています。
いずれにしても、米軍だけでなく、世界の軍隊が自分のこととして真剣に取り組むことを求められています。そしてその経費は、戦闘機の数を削減してでも捻出する必要があると思います
CNASのJacqueline Parzialeらのレポート
→http://www.cnas.org/open-source-software-and-DoD
関連の記事
「個人意識で8割解決」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-22-1
「航空戦力でサイバー戦を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-17
「閉鎖ネットワークにサイバー攻撃を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-18
「成果発表Hack the Pentagon」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-20-1
「イージス艦サーバー企業が中国に身売り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-06
中国製のニセ部品関連
「F-35センサー中国製造疑惑」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-14-1
「上院の偽部品レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-23-1
「米国製兵器は偽物だらけ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-29
「中国製にせ部品との戦い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-10
F-35がNIFC-CA試験に初参加で成功 [Joint・統合参謀本部]
13日付米海軍web発表(正確にはSea Systemsコマンド発表)によれば、12日にニューメキシコ州のミサイル射撃場で実施されたNIFC-CA試験に海兵隊F-35がF-35として初参加し、空飛ぶセンサーとしての役割を果たし、地上発射ミサイルによる目標迎撃に成功した模様です
米海軍が取り組むNIFC-CA構想は、海軍艦艇の捜索レーダーが探知できない遠方目標情報を、F-35等のステルス機のセンサー情報やE-2D早期警戒機の情報を活用してデータリンクで入手し、艦艇や他の攻撃アセットで対処しようとするものです
ここでのポイントは、NIFC-CAに加わる各種アセット(イージス艦、空母、E-2D、EA-18G、FA-18、F-35、MQ-4、P-8、空母艦載無人機、潜水艦? 更に空軍アセットも)をリンクで結び、単なる目標情報の「kill chain」ではなく、「kill web」として迅速に共有し、対処範囲を大きく拡大して遠方から中国のA2AD網に対抗する点です。
なおNIFC-CAでは、海軍F-35は主に最前線センサーの役割を担い、兵器発射はEA-18G電子戦攻撃等に守られたFA-18が主担当になっており、「kill web」情報のハブ役をE-2Dが果たすことになっています。
そして空母を守りながら攻撃も担うイージス艦は、この「kill web」情報によりレーダー見通し外の目標に対し、SM-6(防空と対艦攻撃の両用)や巡航ミサイルを発射することになります
「米海軍のNIFC-CAとは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
13日付米海軍web発表によれば
●12日、米海軍Sea SystemsコマンドがWhite Sandsミサイル演習場で行ったNIFC-CA試験で、海兵隊F-35をセンサーとして組み入れた初めての実弾発射試験には成功した
●試験には、何も手を加えていない海兵隊作戦試験評価飛行隊のF-35Bが参加し、イージス艦に見立てた地上レーダー&射撃施設「USS Desert Ship」からSM-6を発射して行われた
●「USS Desert Ship」レーダーの探知範囲外の目標を飛行中のF-35Bセンサーが捕らえ、同機のデータリンクMFAD(Multi-Function Advanced Data Link)で「USS Desert Ship」と目標情報を共有した
●共有されたデータは「Desert Ship」で最新ソフト「Baseline 9.C1」で処理され、SM-6による要撃成功に導いた
●米海軍Sea Systemsコマンドの同計画責任者Anant Patel氏は、「この試験により、米海軍が外部技術も取り込んで兵器管制ループを完成させ、対空と対艦兵器合をセンサーとリンクと兵器を結ぶkill webに融合させる能力があることを証明できた」と語った
●試験に参加した海兵隊F-35部隊の派遣隊長は、「この試験は、F-35Bを他の海軍アセットと相互運用する行程の開始を告げるものだ」と述べ、「F-35Bは近い将来、米海軍の状況掌握能力と打撃力を飛躍的に向上させるだろう」と語った
//////////////////////////////////////////////////////////
着実な1歩で結構なことですが、どうせやるなら早々に米空軍のF-35Aも加えた統合体制を早期に確立して欲しいです。
最近、いろんな方面からF-35関連の「良いニュース」が聞こえてきますが、先日ご紹介したケンドール国防次官のように冷徹で広い視野をお持ちの方は、「F-35調達機数の削減」と「単価上昇」による通称「死のスパイラル」への警戒を忘れないでしょう。
次の国防長官による、最初の大きな決断になるでしょうから・・・
米海軍NIFC-CAと関連装備
「米海軍のNIFC-CAとは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
「kill chainからkill webへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-15
「SM-6でBMD対処に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-05
「Baseline 9 :イージス艦の進歩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09
「NIFC-CAとSM-6連携」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27
「NIFC-CAで空軍と協力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-23
「日本&韓国とBaseline 9契約」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-28
「日本もNIFC-CAに参加?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-11
F-35調達機数の削減問題
「F-35が鍵:次期政権の国防費」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-08
「統参謀議長が削減検討に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-11
「重鎮マケイン議員も削減要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-22
米海軍が取り組むNIFC-CA構想は、海軍艦艇の捜索レーダーが探知できない遠方目標情報を、F-35等のステルス機のセンサー情報やE-2D早期警戒機の情報を活用してデータリンクで入手し、艦艇や他の攻撃アセットで対処しようとするものです
ここでのポイントは、NIFC-CAに加わる各種アセット(イージス艦、空母、E-2D、EA-18G、FA-18、F-35、MQ-4、P-8、空母艦載無人機、潜水艦? 更に空軍アセットも)をリンクで結び、単なる目標情報の「kill chain」ではなく、「kill web」として迅速に共有し、対処範囲を大きく拡大して遠方から中国のA2AD網に対抗する点です。
なおNIFC-CAでは、海軍F-35は主に最前線センサーの役割を担い、兵器発射はEA-18G電子戦攻撃等に守られたFA-18が主担当になっており、「kill web」情報のハブ役をE-2Dが果たすことになっています。
そして空母を守りながら攻撃も担うイージス艦は、この「kill web」情報によりレーダー見通し外の目標に対し、SM-6(防空と対艦攻撃の両用)や巡航ミサイルを発射することになります
「米海軍のNIFC-CAとは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
13日付米海軍web発表によれば
●12日、米海軍Sea SystemsコマンドがWhite Sandsミサイル演習場で行ったNIFC-CA試験で、海兵隊F-35をセンサーとして組み入れた初めての実弾発射試験には成功した
●試験には、何も手を加えていない海兵隊作戦試験評価飛行隊のF-35Bが参加し、イージス艦に見立てた地上レーダー&射撃施設「USS Desert Ship」からSM-6を発射して行われた
●「USS Desert Ship」レーダーの探知範囲外の目標を飛行中のF-35Bセンサーが捕らえ、同機のデータリンクMFAD(Multi-Function Advanced Data Link)で「USS Desert Ship」と目標情報を共有した
●共有されたデータは「Desert Ship」で最新ソフト「Baseline 9.C1」で処理され、SM-6による要撃成功に導いた
●米海軍Sea Systemsコマンドの同計画責任者Anant Patel氏は、「この試験により、米海軍が外部技術も取り込んで兵器管制ループを完成させ、対空と対艦兵器合をセンサーとリンクと兵器を結ぶkill webに融合させる能力があることを証明できた」と語った
●試験に参加した海兵隊F-35部隊の派遣隊長は、「この試験は、F-35Bを他の海軍アセットと相互運用する行程の開始を告げるものだ」と述べ、「F-35Bは近い将来、米海軍の状況掌握能力と打撃力を飛躍的に向上させるだろう」と語った
//////////////////////////////////////////////////////////
着実な1歩で結構なことですが、どうせやるなら早々に米空軍のF-35Aも加えた統合体制を早期に確立して欲しいです。
最近、いろんな方面からF-35関連の「良いニュース」が聞こえてきますが、先日ご紹介したケンドール国防次官のように冷徹で広い視野をお持ちの方は、「F-35調達機数の削減」と「単価上昇」による通称「死のスパイラル」への警戒を忘れないでしょう。
次の国防長官による、最初の大きな決断になるでしょうから・・・
米海軍NIFC-CAと関連装備
「米海軍のNIFC-CAとは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
「kill chainからkill webへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-15
「SM-6でBMD対処に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-05
「Baseline 9 :イージス艦の進歩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09
「NIFC-CAとSM-6連携」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27
「NIFC-CAで空軍と協力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-23
「日本&韓国とBaseline 9契約」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-28
「日本もNIFC-CAに参加?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-11
F-35調達機数の削減問題
「F-35が鍵:次期政権の国防費」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-08
「統参謀議長が削減検討に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-11
「重鎮マケイン議員も削減要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-22
フィリピン大統領が米との南シナ海作戦を拒否!? [安全保障全般]
15日付読売新聞朝刊が7面に「米比共同哨戒 参加せず」との記事を掲載し、フィリピン大統領が13日の軍関係者に向けた演説で、今年4月に米国と合意していた南シナ海での軍による共同哨戒活動に参加しない方針を示したと報じています
具体的には、同大統領が共同哨戒活動不参加について「我が国は敵対的な行動に巻き込まれたくない」と発言し、南シナ海問題で対立する中国へ配慮した可能性があると記事は説明しています。
また「より独立した外交政策を進める」とも言及し、中国やロシアからの武器購入も検討する考えを示したと紹介しています。
更に同大統領は12日にも、南部ミンダナオ島でテロ対策にあたる米軍の撤退を要求した模様で、強権的な麻薬取り締まりをオバマ大統領や国連から批判された事に反発し、外交・安全保障政策でも米国と距離を置きつつあり、アキノ前政権が進めた米比の軍事協力が停滞する可能性が出てきたとも同記事は言及しています
一方で同記事は最後に、「ただ比当局者らは米比同盟関係を維持したい考えで、ドゥテルテ氏の意向がどの程度反映されるか不透明だ」と結んでおり、外交分野に不慣れな同大統領の激情型ドゥテルテ氏の発言と、実際の外交関係の進展を見極める必要性を指摘しています
////////////////////////////////////////////////////////
フィリピンが揺れ動く状況が様々な形で報道等されており、「大統領意向がどの程度反映されるか不透明だ」と言われるとお手上げなのですが、まんぐーすの頭の整理も兼ねて、不安材料とそうでも無い材料を並べてみます
不安をかき立てる報道
●南シナ海問題の焦点となっているフィリピンに近いスプラトリー礁に関し、中国はフィリピンに共同開発に持ちかけ、更に比内部に社会インフラ建設提供を表明しており、比大統領が乗り気だとの報道あり
●この背景には、オバマ大統領が比大統領の麻薬対策への強権姿勢を「人権問題」として非難している事への反発心があると言われており、先日のAPECで両大統領の会談が比大統領発言でドタキャンになったこと等の因縁説も囁かれている
●4月にカーター国防長官が訪比して発表した、比空軍クラーク基地への米軍航空アセット派遣が、4月のA-10等派遣と6月のEA-18G派遣だけに止まり、その後の動きが全くない
「EA-18G電子戦攻撃機が展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-18
「国防長官が交代派遣発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16
実務レベルでは大丈夫との報道
●8月末、フィリピン空軍副司令官ら8名が太平洋空軍司令部を訪問し、3日間に亘り両国空軍の協力強化や作戦運用に関して集中討議を行い、両国関係者が有意義だったと語っている
●7日に米空軍長官は、同国と新たに結んだ軍事協力合意EDCAに基づき、航空アセット交代派遣の受け入れのため、比空軍「Basa Air Base」の「building up」をフィリピン側が行う事になったと明らかにした
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03
共通して米国に思うこと
●米国の人権優先外交はいい加減にして欲しい。タイとの関係悪化やミャンマーとの関係改善遅延など、中国が喜ぶような結果ばかりを生んでいる「人権命主義」は止めて欲しい
●ドゥテルテ大統領の強権政治は「開発独裁」の一つの形態段階とも考えられ、民衆の支持もアリ、効果も現段階ではありそうなのだから、いきなり米国が言いがかりを付けることに実利はない
●もちろん、歴史上この種の強権政治が、腐敗や一族支配や誤った独裁に発展する事例は少なくないが、現時点で米国がとやかく言う必要があるのか? 対中国で米国が何ら具体的対処が出来ないなら、せめて友好国を増やす配慮を重視しろ。優先順位を見誤るな
●米国政府は他国の人権問題をとやかく言う前に、米国内の「強欲資本主義者=ヘッジファンド等」による他国への非人道的行為を何とかして欲しい
●他国の人権問題より、トランプのような人物が大統領候補になるような米国、銃による大量殺人が定期的に発生する米国をまず何とかして欲しい
米軍と比軍との協力関係
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03
「EA-18G電子戦攻撃機が展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-18
「国防長官が交代派遣発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16
前政権と米国との関係
「比軍基地への米軍アクセス拡大」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-24
「フィリピンへの軍事援助再開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-24
「米海兵隊員に殺人容疑」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-16
「駐比対テロ米軍部隊撤退へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-29-1
「比が米軍受け入れ合意へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-10
具体的には、同大統領が共同哨戒活動不参加について「我が国は敵対的な行動に巻き込まれたくない」と発言し、南シナ海問題で対立する中国へ配慮した可能性があると記事は説明しています。
また「より独立した外交政策を進める」とも言及し、中国やロシアからの武器購入も検討する考えを示したと紹介しています。
更に同大統領は12日にも、南部ミンダナオ島でテロ対策にあたる米軍の撤退を要求した模様で、強権的な麻薬取り締まりをオバマ大統領や国連から批判された事に反発し、外交・安全保障政策でも米国と距離を置きつつあり、アキノ前政権が進めた米比の軍事協力が停滞する可能性が出てきたとも同記事は言及しています
一方で同記事は最後に、「ただ比当局者らは米比同盟関係を維持したい考えで、ドゥテルテ氏の意向がどの程度反映されるか不透明だ」と結んでおり、外交分野に不慣れな同大統領の激情型ドゥテルテ氏の発言と、実際の外交関係の進展を見極める必要性を指摘しています
////////////////////////////////////////////////////////
フィリピンが揺れ動く状況が様々な形で報道等されており、「大統領意向がどの程度反映されるか不透明だ」と言われるとお手上げなのですが、まんぐーすの頭の整理も兼ねて、不安材料とそうでも無い材料を並べてみます
不安をかき立てる報道
●南シナ海問題の焦点となっているフィリピンに近いスプラトリー礁に関し、中国はフィリピンに共同開発に持ちかけ、更に比内部に社会インフラ建設提供を表明しており、比大統領が乗り気だとの報道あり
●この背景には、オバマ大統領が比大統領の麻薬対策への強権姿勢を「人権問題」として非難している事への反発心があると言われており、先日のAPECで両大統領の会談が比大統領発言でドタキャンになったこと等の因縁説も囁かれている
●4月にカーター国防長官が訪比して発表した、比空軍クラーク基地への米軍航空アセット派遣が、4月のA-10等派遣と6月のEA-18G派遣だけに止まり、その後の動きが全くない
「EA-18G電子戦攻撃機が展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-18
「国防長官が交代派遣発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16
実務レベルでは大丈夫との報道
●8月末、フィリピン空軍副司令官ら8名が太平洋空軍司令部を訪問し、3日間に亘り両国空軍の協力強化や作戦運用に関して集中討議を行い、両国関係者が有意義だったと語っている
●7日に米空軍長官は、同国と新たに結んだ軍事協力合意EDCAに基づき、航空アセット交代派遣の受け入れのため、比空軍「Basa Air Base」の「building up」をフィリピン側が行う事になったと明らかにした
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03
共通して米国に思うこと
●米国の人権優先外交はいい加減にして欲しい。タイとの関係悪化やミャンマーとの関係改善遅延など、中国が喜ぶような結果ばかりを生んでいる「人権命主義」は止めて欲しい
●ドゥテルテ大統領の強権政治は「開発独裁」の一つの形態段階とも考えられ、民衆の支持もアリ、効果も現段階ではありそうなのだから、いきなり米国が言いがかりを付けることに実利はない
●もちろん、歴史上この種の強権政治が、腐敗や一族支配や誤った独裁に発展する事例は少なくないが、現時点で米国がとやかく言う必要があるのか? 対中国で米国が何ら具体的対処が出来ないなら、せめて友好国を増やす配慮を重視しろ。優先順位を見誤るな
●米国政府は他国の人権問題をとやかく言う前に、米国内の「強欲資本主義者=ヘッジファンド等」による他国への非人道的行為を何とかして欲しい
●他国の人権問題より、トランプのような人物が大統領候補になるような米国、銃による大量殺人が定期的に発生する米国をまず何とかして欲しい
米軍と比軍との協力関係
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03
「EA-18G電子戦攻撃機が展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-18
「国防長官が交代派遣発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16
前政権と米国との関係
「比軍基地への米軍アクセス拡大」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-24
「フィリピンへの軍事援助再開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-24
「米海兵隊員に殺人容疑」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-16
「駐比対テロ米軍部隊撤退へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-29-1
「比が米軍受け入れ合意へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-10
RQ-4無人偵察機操縦者の7割が下士官に [米空軍]
2日付DODBuzzは米空軍報道官からの情報として、日本も3機導入予定の無人偵察機RQ-4グローバルホークの米空軍操縦者に採用される下士官の比率が、数年後には全RQ-4操縦者の7割に達すると報じています
これまでもご紹介してきたように、その劣悪な勤務環境とストレス、将来展望の無いキャリア管理などから無人機操縦者の離職に歯止めがかからず、欠員を埋めるため、これまで士官のみを採用してきたRQ-4操縦者への下士官採用を米空軍は決定し、教育を10月に開始する予定です
米空軍は当初、あくまでも攻撃兵器を搭載しない偵察機だからRQ-4操縦者に下士官を受け入れると説明していたように思いますが、本記事では報道官が「RQ-4の状況を見て、他機種への下士官操縦者導入検討の資とする」と語っており、人手不足に「背に腹は代えられない」雰囲気になっているようです
これは、現在米空軍保有のRQ-4無人偵察機は33機で、攻撃兵器搭載可能な無人機はMQ-1が139機、MQ-9が165機もあり、操縦者不足解消にはRQ-4だけへの施策では効果が限定的だからでしょう。
2日付DODBuzzによれば
●米空軍報道官のBryan Lewis少佐はE-mailで「Military.com.」に対し、「2020年までに、RQ-4の操縦資格を持つ198名のうち、半数を超える操縦者は下士官となるだろう」、「実際に日々の任務飛行を行うのに必要な121名の操縦者の約7割は下士官となるだろう」と明らかにした
●潜在的には、約5万人の下士官が無人機操縦者への応募を希望していると考えているが、実際の募集に何名が応募するかはやってみないと判らない。
●また、将来的に無人偵察機の操縦資格を得た下士官操縦者が、攻撃能力を持つMQ-1やMQ-9無人機の操縦を許可されるかどうかは不明である。しかし、米空軍は高高度偵察無人機のRQ-4より、遙かに多数の中高度攻撃型無人機を保有している
●これに関し同報道官は「資格を保有する士官教官の下で操縦訓練を行う下士官の様子から、下士官操縦者を他の無人機に導入するかどうかの資を得ることになろう」「RQ-4以外に下士官操縦者を拡大するかを語るのは時期尚早だ」と記している
●またLewis報道官は、「下士官が航空機搭乗員だった歴史や、サイバーや宇宙分野で下士官が士官と同様の任務をこなしている現状も加味し、センサー操作員等の技術的基礎も踏まえながら、操縦者への下士官の導入は慎重に検討されるだろう」と述べている
●なお米空軍は、2017年度予算での無人機投資の大部分をMQ-9購入にあて、約1000億円で24機を購入予定である
///////////////////////////////////////////////////////////
RQ-4グローバルホークへの下士官操縦者導入を米空軍が発表した時、これは「アリの一穴」になるとご紹介したのですが、「アリ」どころでも、「モグラ」どころでもなく、「アナグマの一穴」ぐらいの規模になるようです。
しかも、攻撃型無人機への導入も半ば既定路線のような雰囲気です。
そもそも、WW2では多くの国で下士官が戦闘機や爆撃機を操縦しており、日本海軍のエースパイロットとして知られる坂井三郎も下士官でした。
士官だから、下士官だから・・・の区別ではなく、必要な資質がある人材が必要な訓練を受け、きちんと評価されて資格を取ればそれでOKなのです。
あとは、士官と下士官が同じ仕事をして、それで軍事組織特有の組織風土や秩序が守れるかの問題です。
上手くやっている(少なくともそう見える)例は、自衛隊の管制塔を運用する部隊で、ここで勤務する管制官には、士官と下士官が混在しています
日本もRQ-4を3機導入しますがどうするんでしょう? 米国の下士官と日本の下士官は能力に差があるから、日本では下士官に操縦させないというのでしょうか?
日本の法制下ではより迅速に高度な判断が求められるから、戦闘機を始めとして操縦は士官でないとダメだというのなら、イラクのサマワの最前線で、実弾を装填したチームを率いて現場を仕切った立派な中堅下士官が多数活躍した陸上自衛隊とは異なると言うのでしょうか
単に日本の士官操縦者の中にある「縄張り防衛意識」や「選民意識」や「手当も含めた特権意識」が、変化を阻害する根底にある・・・と考えるのは私だけでしょうか???
または、使い道に困るお邪魔なパイロットの「異動先」に利用するのでしょうか?
無人機操縦者の確保問題
「下士官RQ-4訓練は10月開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-09-1
「RQ-4操縦を下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-19
「問題点と処遇改善の方向性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-11
「空軍長官が現状を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-17
「無人機操縦者の離職止まず」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-31
「無人機操縦者手当を2倍以上に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-17
「無人機は事故率6倍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-21-1
米空軍航空偵察アセットの話題あれこれ
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-21
これまでもご紹介してきたように、その劣悪な勤務環境とストレス、将来展望の無いキャリア管理などから無人機操縦者の離職に歯止めがかからず、欠員を埋めるため、これまで士官のみを採用してきたRQ-4操縦者への下士官採用を米空軍は決定し、教育を10月に開始する予定です
米空軍は当初、あくまでも攻撃兵器を搭載しない偵察機だからRQ-4操縦者に下士官を受け入れると説明していたように思いますが、本記事では報道官が「RQ-4の状況を見て、他機種への下士官操縦者導入検討の資とする」と語っており、人手不足に「背に腹は代えられない」雰囲気になっているようです
これは、現在米空軍保有のRQ-4無人偵察機は33機で、攻撃兵器搭載可能な無人機はMQ-1が139機、MQ-9が165機もあり、操縦者不足解消にはRQ-4だけへの施策では効果が限定的だからでしょう。
2日付DODBuzzによれば
●米空軍報道官のBryan Lewis少佐はE-mailで「Military.com.」に対し、「2020年までに、RQ-4の操縦資格を持つ198名のうち、半数を超える操縦者は下士官となるだろう」、「実際に日々の任務飛行を行うのに必要な121名の操縦者の約7割は下士官となるだろう」と明らかにした
●潜在的には、約5万人の下士官が無人機操縦者への応募を希望していると考えているが、実際の募集に何名が応募するかはやってみないと判らない。
●また、将来的に無人偵察機の操縦資格を得た下士官操縦者が、攻撃能力を持つMQ-1やMQ-9無人機の操縦を許可されるかどうかは不明である。しかし、米空軍は高高度偵察無人機のRQ-4より、遙かに多数の中高度攻撃型無人機を保有している
●これに関し同報道官は「資格を保有する士官教官の下で操縦訓練を行う下士官の様子から、下士官操縦者を他の無人機に導入するかどうかの資を得ることになろう」「RQ-4以外に下士官操縦者を拡大するかを語るのは時期尚早だ」と記している
●またLewis報道官は、「下士官が航空機搭乗員だった歴史や、サイバーや宇宙分野で下士官が士官と同様の任務をこなしている現状も加味し、センサー操作員等の技術的基礎も踏まえながら、操縦者への下士官の導入は慎重に検討されるだろう」と述べている
●なお米空軍は、2017年度予算での無人機投資の大部分をMQ-9購入にあて、約1000億円で24機を購入予定である
///////////////////////////////////////////////////////////
RQ-4グローバルホークへの下士官操縦者導入を米空軍が発表した時、これは「アリの一穴」になるとご紹介したのですが、「アリ」どころでも、「モグラ」どころでもなく、「アナグマの一穴」ぐらいの規模になるようです。
しかも、攻撃型無人機への導入も半ば既定路線のような雰囲気です。
そもそも、WW2では多くの国で下士官が戦闘機や爆撃機を操縦しており、日本海軍のエースパイロットとして知られる坂井三郎も下士官でした。
士官だから、下士官だから・・・の区別ではなく、必要な資質がある人材が必要な訓練を受け、きちんと評価されて資格を取ればそれでOKなのです。
あとは、士官と下士官が同じ仕事をして、それで軍事組織特有の組織風土や秩序が守れるかの問題です。
上手くやっている(少なくともそう見える)例は、自衛隊の管制塔を運用する部隊で、ここで勤務する管制官には、士官と下士官が混在しています
日本もRQ-4を3機導入しますがどうするんでしょう? 米国の下士官と日本の下士官は能力に差があるから、日本では下士官に操縦させないというのでしょうか?
日本の法制下ではより迅速に高度な判断が求められるから、戦闘機を始めとして操縦は士官でないとダメだというのなら、イラクのサマワの最前線で、実弾を装填したチームを率いて現場を仕切った立派な中堅下士官が多数活躍した陸上自衛隊とは異なると言うのでしょうか
単に日本の士官操縦者の中にある「縄張り防衛意識」や「選民意識」や「手当も含めた特権意識」が、変化を阻害する根底にある・・・と考えるのは私だけでしょうか???
または、使い道に困るお邪魔なパイロットの「異動先」に利用するのでしょうか?
無人機操縦者の確保問題
「下士官RQ-4訓練は10月開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-09-1
「RQ-4操縦を下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-19
「問題点と処遇改善の方向性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-11
「空軍長官が現状を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-17
「無人機操縦者の離職止まず」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-31
「無人機操縦者手当を2倍以上に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-17
「無人機は事故率6倍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-21-1
米空軍航空偵察アセットの話題あれこれ
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-21