RQ-4無人偵察機操縦者の7割が下士官に [米空軍]

これまでもご紹介してきたように、その劣悪な勤務環境とストレス、将来展望の無いキャリア管理などから無人機操縦者の離職に歯止めがかからず、欠員を埋めるため、これまで士官のみを採用してきたRQ-4操縦者への下士官採用を米空軍は決定し、教育を10月に開始する予定です
米空軍は当初、あくまでも攻撃兵器を搭載しない偵察機だからRQ-4操縦者に下士官を受け入れると説明していたように思いますが、本記事では報道官が「RQ-4の状況を見て、他機種への下士官操縦者導入検討の資とする」と語っており、人手不足に「背に腹は代えられない」雰囲気になっているようです
これは、現在米空軍保有のRQ-4無人偵察機は33機で、攻撃兵器搭載可能な無人機はMQ-1が139機、MQ-9が165機もあり、操縦者不足解消にはRQ-4だけへの施策では効果が限定的だからでしょう。
2日付DODBuzzによれば

●潜在的には、約5万人の下士官が無人機操縦者への応募を希望していると考えているが、実際の募集に何名が応募するかはやってみないと判らない。
●また、将来的に無人偵察機の操縦資格を得た下士官操縦者が、攻撃能力を持つMQ-1やMQ-9無人機の操縦を許可されるかどうかは不明である。しかし、米空軍は高高度偵察無人機のRQ-4より、遙かに多数の中高度攻撃型無人機を保有している
●これに関し同報道官は「資格を保有する士官教官の下で操縦訓練を行う下士官の様子から、下士官操縦者を他の無人機に導入するかどうかの資を得ることになろう」「RQ-4以外に下士官操縦者を拡大するかを語るのは時期尚早だ」と記している

●なお米空軍は、2017年度予算での無人機投資の大部分をMQ-9購入にあて、約1000億円で24機を購入予定である
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RQ-4グローバルホークへの下士官操縦者導入を米空軍が発表した時、これは「アリの一穴」になるとご紹介したのですが、「アリ」どころでも、「モグラ」どころでもなく、「アナグマの一穴」ぐらいの規模になるようです。
しかも、攻撃型無人機への導入も半ば既定路線のような雰囲気です。
そもそも、WW2では多くの国で下士官が戦闘機や爆撃機を操縦しており、日本海軍のエースパイロットとして知られる坂井三郎も下士官でした。

あとは、士官と下士官が同じ仕事をして、それで軍事組織特有の組織風土や秩序が守れるかの問題です。
上手くやっている(少なくともそう見える)例は、自衛隊の管制塔を運用する部隊で、ここで勤務する管制官には、士官と下士官が混在しています
日本もRQ-4を3機導入しますがどうするんでしょう? 米国の下士官と日本の下士官は能力に差があるから、日本では下士官に操縦させないというのでしょうか?
日本の法制下ではより迅速に高度な判断が求められるから、戦闘機を始めとして操縦は士官でないとダメだというのなら、イラクのサマワの最前線で、実弾を装填したチームを率いて現場を仕切った立派な中堅下士官が多数活躍した陸上自衛隊とは異なると言うのでしょうか
単に日本の士官操縦者の中にある「縄張り防衛意識」や「選民意識」や「手当も含めた特権意識」が、変化を阻害する根底にある・・・と考えるのは私だけでしょうか???
または、使い道に困るお邪魔なパイロットの「異動先」に利用するのでしょうか?
無人機操縦者の確保問題
「下士官RQ-4訓練は10月開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-09-1
「RQ-4操縦を下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-19
「問題点と処遇改善の方向性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-11
「空軍長官が現状を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-17
「無人機操縦者の離職止まず」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-31
「無人機操縦者手当を2倍以上に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-17
「無人機は事故率6倍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-21-1
米空軍航空偵察アセットの話題あれこれ
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-21
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