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1/2対中国で北東から南東アジアへシフト [Air-Sea Battle Concept]

AFM1012.jpg1月号の「AirForce Magazine」が「Pacific Push(太平洋での攻勢)」と題した記事を掲載しています。
Richard HalloranというNY Times紙でアジア全体や軍事問題を扱っていた人物による記事で、対中国を巡る米国戦略で南シナ海が鍵となりつつあり、その対応のためにグアム諸島の強化や東南アジア諸国との連携強化が進んでいる様子を紹介しています。

JGSDF3.jpgまた同時に、対中国の前線として重視したい日本が「出遅れ」て「日本にとって日本自身が最悪の敵となっている」等の表現を用い、緊密に連携したいのに「頭越しせざるを得ない」状況にある困惑も描いています。

なおRichard Halloran氏は、以前ご紹介した「AirSea Battle」との記事(↓にアドレス)を同誌に上奏し、太平洋軍の同コンセプトへの取り組みをフォローしており、本記事でもAir-Sea Battleとの関係に触れつつ筆を進めています。
「太平洋軍のAir-Sea Battle検討」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-05

本日と明日の2日に分けてご紹介します
「Pacific Push(太平洋での攻勢)」の前半の概要は・・・

北東アジアから南東アジアへの静かなシフト
gatesMarine.jpg●北朝鮮による挑発的な動きはあるが、本地域での本質的脅威は中国からのモノである。
●例えば、昨年6月のシャングリラ・ダイアログで、ゲーツ国防長官に対する挑発的な中国軍将軍の発言や個別の米国幹部への発言等から、中国軍が共産党や政府のコントロールとは別の戦術を執っているのでは、と見る専門家もいる。

「シャングリラ・ダイアログ演説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05
「(質疑)シャングリラ演説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-10

●このような強い姿勢とは裏腹に、中国は国内消費の半分の石油を輸入に頼り、その輸入の8割は脆弱なマラッカ海峡経由の海上輸送によるモノである。同海峡から南シナ海を通過するルートが中国経済成長の命綱である。
仮に米が中国の海上輸送を妨害しようとすれば、例えばB-52爆撃機1機が搭載する巡航ミサイル、魚雷や機雷等だけでもかなりのことが可能である。

B-52.jpg●約100年前、英国の地政学者マッキンダーは「ハートランド」を制する者がユーラシア大陸を支配すると述べたが、今米国の戦略家は南シナ海を制する者が海空パワーを用いて中国を含む発展著しい東南及び東アジアを支配すると考え始めている。複数の論文がある。

●中国が米国をアジアと西太平洋から閉め出そうとするのを抑止するため、米太平洋軍は静かにその焦点を「北東アジア」から「南東アジア」にシフトし、特に南シナ海とその沿岸地域でその動きが顕著である。
グアムでの戦力増強は、このような中国に釘を刺す戦略の機軸となっている。(豪との米海軍部隊の訪問強化の協定もこの流れ)
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前半の本日はここまでとし、後半の明日は「グアムでの活動活発化と抗たん性強化」と「東南アジア諸国の巻き込みと日本の停滞」についてご紹介します。

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その2緊縮財政対処のAir-Sea Battle [Air-Sea Battle Concept]

SchwartzGen3.jpg12月15日、シュワルツ空軍参謀総長が国防大学(NDU:National Defense University)で、大佐クラスの4軍の学生(他国軍を含む)と同大学教授陣を対象とした講義を行っています。口述原稿はこちら
脅威認識と厳しい財政状況を踏まえ、これ以外に道はない、との悲痛な叫びのようにAir-Sea Battleの背景とその狙いについて語っています。

将来枢要なポストに就く上級エリート幹部への講義にこのトピックを選んだことからも、空軍にとってAir-Sea Battleが中核的なコンセプトとなりつつあることがが伺えます。また、本Conceptが今後の空軍予算の削減と投資の優先分野を決定していく基準(手段?)となりつつあることが推測できます。

Air-Sea Battleの狙いを概観するような内容ですが、後半の今日は対処の方向性についてです。

膨大な投資はもう出来ない。だから・・・
●軍事技術の拡散と拒否戦略拡大の中にあっても、我々はもはや、高価で技術的に練られ、特定の軍種のみを対象とする様な投資は出来ない。我々は、厳しい財政状況が求めるより節度と効率性と革新性に富んだ、軍種横断的な相互運用性のある兵器システムを求められている
●ゲーツ国防長官の主導により始まっている、無駄経費の削減と必要分野への2-3%の予算増確保は、本環境下での我が戦闘力向上策の例である。
●他の方向での取り組みには、制度面作戦面からのAir-Sea Battleコンセプト導入がある。私と海軍のラヘッド作戦部長とエイモス海兵隊司令官が共に取り組む、海上航空戦力の恒久的な協力関係を創出するもので、一時的な取り決めでなく、永続的で戦略的な3次元の関係確立を目指すモノである。3つの次元とは・・

--- 制度面(institutionally):協力関係を正常化するため、軍種の文化や組織を変更する
--- 概念面(conceptually):いかに海空のアセットが一体化して行動するかを正式合意する
--- 装備面(materially):装備が最低限相互運用性があり、一体的な取得戦略の基で将来の統合システムを見据える

Air-Sea Battleのため具体的には・・・
SchwartzAF2.jpg●このため歴史的観点からも、この種の取り組みの進め方やサブコンセプトの定め方を見極める必要がある。そして、現在の統合ドクトリンや組織、更に訓練も、抗たん性や相互運用性を高めた兵器システム、連接性を備え結節のない指揮統制ネットの構築とあわせて進める。
●Air-Sea Battleではより現実的な脅威下を想定し、より不完全なネットワークや位置情報下で訓練する必要があろう。また海空軍の兵士は、より協同してステルス潜水艦や航空機を一体的に運用し、全体戦力の残存性を高めるべきである。

●1980年代に当時のソ連艦艇の防空能力に対処するため、当初の反対にもかかわらず、空軍のB-52にハプーン対艦ミサイルを搭載したと同様の取り組みが必要なのである。例えば、空軍の世界をカバーするISR能力でAir-Sea Battleを見れば、空軍無人機撮影の動画を敵脅威下の海軍艦艇に提供することもその一つである。
●Air-Sea Battleが進展すれば、より効果的な多国籍活動のため、この関係が同盟国やパートナー国とも構築できるようも努める

進路変更を歓迎せよ
●Air-Sea Battleとは、我々のアクセスやネットワークに挑み、また様々なタイプの紛争に我々を対応させるあらゆる安全保障環境に応ずるコンセプトの先駆けである。そしてそれは先ほどの3つの次元からなっている。
●再度強調すると、以前や現在のコンセプトとは異なり、Air-Sea Battleは米国の海外での戦力投射能力を維持し改善するコンセプトである。そして海軍海兵隊と空軍の協力強化によって結果が導かれないのなら、それはAir-Sea Battleではない

君たちの心地良い領域が侵されることを受け入れよ。尊重すべき議論や進路変更を歓迎せよ。これら全てが、今後国家が対処すべき課題への備えを後押ししてくれるのだから。そして君たちの、この複雑な問題への理解と実用的な対処案を促進してくれるのだから。
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回りくどい慎重な表現が多い講義ですが、下記のCSBAレポートを読んでいただくとより明確に理解いただけると思います。
ただし講義では、Air-Sea Battleがハイエンドからローエンド紛争にまで対応するコンセプト、との表現もあり、より拡大した発展がありそうでが・・・。

Air-Sea Battle関連記事
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「2CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20
「3CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20-1
「4CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21
「5CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
「6CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「最後CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30
「番外CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-02-1

米国防政策と最近の日本
「QDRから日本は何を読む」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「2QDRから日本は何を読む」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1
「新防衛大綱とAir-Sea Battle」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19

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緊縮財政対処のAir-Sea Battle [Air-Sea Battle Concept]

SchwartzGen.jpg少し前になりますが、12月15日シュワルツ空軍参謀総長が国防大学(NDU:National Defense University)で、大佐クラスの4軍の学生(他国軍を含む)と同大学教授陣を対象とした講義を行っています。口述原稿はこちら
脅威認識と厳しい財政状況を踏まえ、これ以外に道はない、との悲痛な叫びのように「Air-Sea Battle」の背景とその狙いについて語っています

講義は、主要な軍幹部の話を学生が聞くシリーズの一つとして設定されたものですが、将来枢要なポストに就く上級エリート幹部への講義にこのトピックを選んだことからも、空軍にとってAir-Sea Battleが中核的なコンセプトとなりつつあることがが伺えます

Air-Sea Battle に関する「Classifiedな文書」の中身については触れておらず、狙いを概観するような内容ですが、本Conceptが今後の空軍予算の削減と投資の優先分野を決定していく基準(手段?)となりつつあることが推測できます。

講義の概要を2回に分けてご紹介します。
本日はAir-Sea Battleの背景にある情勢認識を、明日は対処の方向性についてです。

情勢と脅威認識について
●手短に言えば、安定が世界中の潜在的な又は顕在化しつつある攻撃的なプレーヤーにより脅かされつつある。またこれまで彼らの手に届かなかった通信、IT、非運動力や高度な兵器技術により安定が脅かされている。
これらの能力は時にネットワーク化され、相手の行動の自由やアクセスを拒否しつつ、攻撃側の能力温存に利用される。
接近拒否能力は全体戦略と組み合わされ、米国やその同盟国のみならず、地球規模の通信、交通や貿易と言った平和の基礎にあるシステムを真に脅かすモノとなり得る。
●厳しい財政下、国家予算や国家資源を巡る厳しい競争の中で、これらの課題は我々に更なる統合と効率化による協力強化を強く求めている

失われつつある行動の自由
SchwartzGen2.jpg●過去数十年間にわたり、米国軍は他の追随を許さない能力で制空権と制海権を確保してきた。そのため我々は、米本土からの戦力投入、海外基地へのアクセスや世界中の戦場への機動力について疑うことは無かった。
しかしこの優位は崩れつつある。潜在的な敵は戦略的に、我々の国益に関わる地域へのアクセスとその能力に挑戦するような先進技術への投資により迫ってきている。
●このような状況下にあっても、同盟国等は引き続き米国に集団安全保障を求めており、我々はアクセスと行動の自由を確保し続けねばならない。さもなければ、より遠方から高いリスクを負いつつ不利な態勢から行動しなければならなくなり、世界的な安全保障に負の影響を与える。

如何にこの状況に対応するか
接近拒否や領域拒否を克服するためには、大きな視点で複数の分野が一体となって取り組む必要がある。
財政的制約下で、潜在的な敵が、我が国益や世界経済、更には世界の危機対処に欠かせない戦力投射能力、特にそれを支える貿易輸送路、海外基盤基地、通信ラインに対峙してくることに対処しなければならない。
●このため、米空軍と海軍、また米軍内だけでなく、国家全体の多様な次元の能力を集合的に自由に活用し、緊要な利害の追求に資する必要がある。
●そのため、全ての国家能力要素が、それぞれのドメインを明確にしつつも、一層相互連接的に相互依存的になる。海上でも、サイバー領域でも陸上でもである。タイムリーに、結節無く、複数の領域が一体統制の元にあることが、いかなる軍への要請に対しても、任務成功の前提条件になってきた。
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本日はここまでとし、明日は対応の方向性についてご紹介します。
端的に言えば、お金がないので、これまでのように4軍間で予算争いをやっている余裕はない、です。更に言えば、下記のCSBAのレポートをオブラートに包んで講義するとこのような形になると思われます。

Air-Sea Battle関連記事
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「2CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20
「3CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20-1
「4CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21
「5CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
「6CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「最後CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30
「番外CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-02-1

米国防政策と最近の日本
「QDRから日本は何を読む」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「2QDRから日本は何を読む」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1
「新防衛大綱とAir-Sea Battle」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19

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新防衛大綱とAir-Sea Battle [Air-Sea Battle Concept]

17日に閣議決定された新防衛大綱関連の論評・解説の中で、Air-Sea Battle Conceptに言及してその影響を観察している記事が出始めました。
何を今頃・・・との感は否めませんが、正しい方向性の記事ですので、中身はありませんが概要を取り上げます。

●読売19日付『新防衛大綱、マイケル・グリーン氏に聞く』
GreenCSIS.jpg米国のアジア政策の専門家であるマイケル・グリーン元NSCアジア上級部長(現・戦略国際研究所(CSIS)日本部長)が、読売新聞のインタビューに答えて、戦略的にはA評価だが、財源には難点があり、予算的にはBマイナスであるという評価を示しています。

Q:新大綱は米国との防衛協力にどう資するか
A:オバマ政権が2月に発表したQDR(4年ごとの国防計画見直し)に盛り込まれている「海軍と空軍による統合戦(Joint Air-Sea Battle Conceptのこと)」の概念は新大綱にも影響を与えたようだ
airseaBC.jpgQDRが打ち出した対潜水艦戦やミサイル防衛の強化(が新大綱に含まれていること)に加え、新大綱が掲げる日本独自の離島防衛などが相まって、日米防衛協力の強化という力強いメッセージを地域に送ることが出来る。
そして、このことにより、東シナ海や南シナ海での海洋活動を活発化させている中国は、今後の軍事計画が策定しにくくなり、日米の抑止力が高まる。中曽根内閣時の旧ソ連を念頭にした北方防衛強化と似ている

●読売19日付『転機の大綱(下)』
Ford-Class-Carrier.jpg米国はQDRで中国の拒否戦略に対し「ジョイント・エアーシー・バトル構想」を打ち出した。海と空の戦力を一体運用する考え方で、防衛省幹部は「米国の対中認識は厳しさを増し、新大綱に明確に反映させた」と話す
沖縄のF-15や陸空自衛隊のミサイル部隊を増やす。海自の潜水艦を16隻から22隻態勢に増やすのはその一端だ。「共通の脅威」という根幹を一にした新たな日米同盟の始まりである
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読売ばかりですいません。マイケル・グリーン氏へのインタビューは、ブルッキングス研究所の研究員でもある読売社員・飯塚恵子さんによるものです。
それから、もう一つ新大綱ネタです↓ (こわごわ・・恐る恐る)
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読売再び社説「陸自定員削減は不十分」
17日に決定された防衛計画の大綱について様々な報道や論評が成されていますが、19日付読売新聞が社説新防衛大綱での陸上自衛隊の扱いを再び批判しています。武器輸出3原則に関する批判とあわせご紹介します。

読売の「陸自削減」社説の概要は・・・
限られた予算の中で、真に実効性ある防衛体制を整えるには、増強する分野と削減する分野のメリハリが欠かせない。(しかし)新大綱の焦点となった陸自の編成定数は、現行の15万5千人から1000人の削減にとどまった。極めて不十分である。

taikou.jpg●自衛隊全体のバランスを考えれば、今回実現した陸自の戦車・火砲の大幅な削減に加え、陸自定員を一層削減し、海上、航空両自衛隊の定員や艦船・航空機の増強などに回すべきだった。そうしてこそ、「動的防衛力」という新概念がより明確になったはずだ。11年度以降の予算編成での是正を求めたい

陸自の組織的抵抗関連記事
「読売も社説:陸自削減を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-21
「国防より組織防衛」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-16

武器輸出3原則の見直しは、菅政権が国会運営で協力を求めている社民党に配慮するため、新大綱への明記を見送ってしまった。残念な判断である
一方で、国際共同開発・生産が「先進国で主流になっている」と指摘し、具体策の検討を盛り込んだのは、将来の見直しの余地を残したものと評価できる。早期に実現してもらいたい

なお武器輸出3原則については、14日付「国際情報センター」記事の視点が大変参考になります。
記事は→こちらをクリック

本件に関連する米国の国防政策の変化もご参考
「武器輸出・共同開発の方針転換へ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-22  
「武器輸出管理システム改善とQDR」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-09  
「QDRの「(軍需)産業基盤の強化」」→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-08

Air-Sea Battle関連記事
「Air-Sea Battleの状況」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「2CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20
「3CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20-1
「4CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21
「5CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
「6CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「最後CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30
「番外CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-02-1

米国防政策と最近の日本
「QDRから日本は何を読む」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「2QDRから日本は何を読む」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1

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作戦基地の脆弱性を論ず [Air-Sea Battle Concept]

AFM1012.jpg12月号の「AirForce Magazine」が「Countering Missile Threat」との記事を掲載し、Air-Sea Battle Conceptへ取り組むことになった脅威の問題意識を紹介しています。
具体的な対象国の脅威ではなく、旧ソ連崩壊後、米国自身が作戦基盤基地への直接的脅威から目を背けてきたことへの反省が中心となっている記事です

Rebecca Grant女史の筆によるその問題認識は・・
●本年9月、シュワルツ空軍参謀総長は「真珠湾攻撃を海軍基地が受けた汚名を歴史に記録し、忘れてはならない。」、「あまり知られていないが、敵は我々の作戦機をまず攻撃し、制空権を我々から奪った」と空軍協会シンポジウムで述べた。

●冷戦最盛期の1980年代はソ連の欧州方面での脅威を懸念し、基地の脆弱性をどのように克服するかの検討が盛んに行われた。しかし冷戦終了後、表面上はともかく、実際はこの問題を考える者はほとんど無くなった
1999年にRAND研究所が発表した「通常弾頭の巡航ミサイルと弾道ミサイルの攻撃に対する基地の脆弱性」レポートでも、「単一の緊急事態であれば、敵ミサイルの被害があっても、米空軍がその戦力を最大限に活用すれば、湾岸戦争での「砂漠の嵐」作戦程度の航空戦力発揮は可能」と結論付けた。

AFM10123.jpg●しかし、特に中国とイランの軍事力拡大により、基地の脆弱性と航空力発揮への障害が再び大きな変数となって現れてきた。冷戦期に多数の大小の研究機関によってなされた脆弱性対処を思い出し参考にすることも必要であろう。
2007年のRAND研究所のレポートでは以下の中国軍ドクトリンを紹介している。そのドクトリンは「仮に敵の航空作戦計画を粉砕したいならば、敵の指揮統制と燃料と弾薬を目標にせよ。また仮に敵の航空戦力を低下させたいなら、我の脅威となる航空戦力が集結する基地を目標にせよ」と述べている。
●またどのように中国軍が攻撃を開始するかについて、中国軍のドクトリン研究者は「先制攻撃」がその焦点にあると見ている。上述のRANDレポートでは、米の空中給油能力が中国軍戦略のターゲットと見なされている。

●攻撃を受けた当初の不発弾対処、化学弾対処、不審分子の活動、そして被害の復旧。それ以前にイラン・イラク戦争時にオマーンの空軍基地に行ったような基地施設の抗たん化(格納庫等の強化)も考えられる

●分散も有効であろう。しかし、敵の脅威から遠くなれば必要な攻撃やISR能力を犠牲にしなければならない。そこで湾岸戦争時には、最終的にイラク前面のクウェートにまでF-15Eを展開した。一方で、1999年のOperation Allied Forceの際には、当初5カ国9カ所であった基地を、作戦期間中に11カ国22基地に拡大した経験もある。

●米軍の前方展開基地だけでなく、近い将来米本土の基地が敵の脅威下にはいることもあるだろう。米空軍にとって、これまで当然と考えてきた作戦基地にの安全が大きな課題となっている。
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AFM10122.jpgこの記事でもCSBAのレポートの流れが中心を成しています

軍事予算が切迫する中で、どこまでAir-Sea Battle Conceptが形になるか不明ですが、米軍事雑誌でもWEBサイトでも普通に議論されるようになってきました。
ますます注目です。

「QDRから日本は何を読みとるべきか(1)」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07

「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「(その6)CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24

「Air-Sea Battleの起源」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-24-1
「太平洋軍のAir-Sea Battle検討」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-05

長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃(LRS)システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃(LRS)システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1

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Air-Sea Battleの考察論文 [Air-Sea Battle Concept]

ProceedingCoverAug10.jpgこれまで本ブログでは、米軍の西太平洋戦略の変化、つまり中国対応の今後について注目し、シンクタンクCSBAの関連レポートや高官の発言を紹介してきましたが、本日は海軍研究所が毎月発刊している月刊誌「Proceeding」8月号が掲載した論文What's New About the AirSea Battle Concept?」を取り上げ紹介します。
「Proceeding」はかなり高尚な論文を掲載する雑誌で、米海軍の戦略研究の歴史と奥深さを感じさせます。

元海軍大佐2名と海軍戦略の研究者2名によって書かれた論文は・・

(Air-Sea Battleは新しい概念ではない)
1943年頃、連合国の海上輸送の大きな障害となっていた独U-Boatに対処するため北大西洋で繰り広げられた米、英、カナダの海空軍が協力して行った作戦や、
1944年後半に日本軍が駐留していたフィリピンを攻略するために空母機動部隊と陸軍航空隊が海兵隊と連携した作戦は、海空軍戦力が連携した点で既にAir-Sea Battleのコンセプトを体現していた。

●しかし冷戦終了後、新たな作戦コンセプトを生み出す動機付けは無かった。
ところが以下の3つの変化により新たな作戦コンセプト作成の機運が生まれた。まずオバマ政権がアフガンからの撤退を視野に入れた戦略を打ち出した。また中国の軍事力の増強近代化が無視できないほどになった。そして経済の減速によりこれまでのような国防予算を確保できなくなった。この3つである。

(Air-Sea Battle 誕生の背景・経緯)
CSBAレポート2本の紹介。詳しくは「マイカテゴリー」の「Air-Sea Battle」をご覧下さい。

(Air-Sea Battleコンセプトの示唆するもの)
●CSBAの提起したコンセプトの「出発点」は、戦略的、制度的、計画的に見て無数の認知及び未認知の派生的影響を巻き起こす。そしてそれはどのようにコンセプトが採用されるかによって様々であるが、以下のような観点が程なく表面化するだろう。

公式のAir-Sea Battleコンセプトは中国をどう位置づけるか
chinaFlag.jpgCSBAの研究者は中国を脅威として捕らえてレポートを書けるが、米軍の公式見解として、中国をどのように描写するかは全く別問題である。

同盟国を納得させられるか
中国の急激な軍事力増強を前に、アジアの同盟国やパートナーの米国への信頼を維持し説明するにはAir-Sea Battleへの真剣な取り組みや関与が欠かせない。取り組みへの失敗は予期できない正反対の結果を招く。

作戦基盤基地の強化と同盟国への影響
andersenGM.jpg西太平洋地域の同盟国等での新たな基地の建設や強化は、同盟国の国内政治との関係で単純でない課題である。海外基地の強化や復旧資材集積は、当該国が攻撃目標となることを明らかにすることでもあり、同盟国にとってそれを受け入れることの是非を問う微妙な問題となりうる。

海空軍の真の協力体制構築
例えば、1986年のゴールドウォーター・ニコラス法は統合分野での勤務経験を軍人の昇進の要件に組み込むなど、4軍間の協力を強制的に推進させる役割を果たした。今後も海空軍の協力関係を推進するためには、何らかの制度的な「ゆりかご」が幹部や計画立案者や調達関係者のために設定される必要がある。さもなければ、いつもの軍種間の競争に逆戻りする

軍需産業基盤へのインパクト
gatesWikileaks.jpgAir-Sea Battleがどれほどドラスティックになるか、どれほど調達や軍需産業基盤に影響を与えるかは現時点で不明である。しかし良い影響を受ける者と悪い影響を受ける者が生まれることは避けようもない。

いずれにしても、海軍と空軍が真のシナジー効果を発揮するため、双方の能力をこれまでないほどに生かさねばならない。
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Google(英語版)で「Air-Sea Battle」を検索すると、この論文がCSBAレポートの次に表示されます。
現時点で、もっとも広く読まれているAir-Sea Battle考察論文ですので、原文に目を通されることを強くお奨めします。

A2AD対処の柱の一つ・・LRSに関するCSBAレポート
長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃(LRS)構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃(LRS)構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1

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米が豪との国防関係強化へ [Air-Sea Battle Concept]

「我々はアジア太平洋地域に新たな基地を求めることには関心がない。むしろ、どのように既存の基地を有効に使用し、使用法を強化するかに着目している」(8日ゲーツ国防長官)

gatesOG1108.jpg8日、米と豪はメルボルンで2+2ミーティング(外相と国防相の計4者の会議)を行い、ゲーツ長官は豪国防省と新たなパートナーシップ協定を結んだと発表しました。
新たな関係構築に向けての具体的枠組みは米国防省HP記事からは必ずしも明確ではありませんが、大きく3つ、つまり豪への新たな戦力配備検討、宇宙監視協力及びサイバー分野協力が含まれているようです。サイバーについては細部の言及がありませんが・・・

新作業グループでの戦力配備検討
●12月から検討を開始。両国の統合活動の多様な分野における強化を探るもの。
●作業グループの検討対象には、米海軍戦力のプレゼンス増強と周辺地域への訪問強化、両国間の軍事訓練機会の増加、災害対処や人道支援物資や機材の事前集積、更には豪軍関係者と協議する米軍関係者の豪常駐の検討が含まれている。
●ゲーツ長官は「公式に何を両国でなすかについては何も決まっていない。軍事の観点から両国の為になることを検討していく。」と慎重に述べました。
●同時にゲーツ長官は軍事記者に「(米国の)戦力組成について、どのような体制を国家安全保障会議に提言するかは未定である。しかし、アジア太平洋地域により大きなプレゼンスを置くことは明らかだ」と述べ、更に冒頭の表現で既存基地の強化等に言及しました。

宇宙状況認識パートナー
Space Situational Awareness Partnership
●アジア太平洋地域上空の宇宙に存在する衛星や各種破片を監視するするためのレーダーや光学監視サイトの共同設置とネットワーク化
●同ネットワークにより、共同で宇宙における様々な活動(計画的、偶発的、事故的なもの全体)をモニターする。
●ゲーツ長官は「両国は、ますます相互依存(interdependent)が進み、混雑(congested)し、脅威が増している(contested)宇宙空間への懸念を共有する。そして宇宙での過ちや誤解、相互不信を招くような行為を防止しなければならない点で一致した」と述べています。

gatesOG2.jpgサイバー関連
サイバー空間における協力関係をステップアップする。この取り組みには、サイバー空間に関する国際的な基準やルール(norms)を設定する努力が含まれる。

クリントン国務長官は・・・
我々はこれまでと違った何かを特別なレベルで行っているのではない。我々は単に、将来に必要とされる行動のストックに勤めているだけである。(以上記事概要)
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米海軍のプレゼンスの強化や事前集積の強化は、明らかに「Air-Sea Battle Concept」の背景となる西太平洋地域の米軍の拠点の少なさや補給路の脆弱性をカバーする施策でしょう。
また、冒頭の「既存の基地の有効使用」は脆弱性の克服であり、なるべく多くの作戦基盤を現状の基地を強化することで整備したいとの意志の表れでしょう。

次の訪問先のマレーシアで何が出るかにも注目したいと思います。

「CSBA中国対処構想」→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「(6)CSBA中国対処構想」→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24

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Air-Sea Battleドクトリン完成間近 [Air-Sea Battle Concept]

breedlove.jpg4日、米空軍司令部計画部長のブリードラブ中将(Lt. Gen. Philip Breedlove)がワシントンで軍事記者に対し、Air-Sea Battle doctrinal concept開発の海空軍合同チームが約1年間の検討作業をまもなく終了し、「同コンセプトに関する秘密文書の最終版(doctrinal concept)を一月以内に完成して展開(roll out)する」と述べました。

更に「Air-Sea Battleは今最初のステップ、初年度にあり、今後複数年に渡ってA2AD脅威(anti-access, area-denial)にどのように対応していくかを海空軍が対話していく事であると考えている」と述べました。
また「既に国防長官室、戦闘部隊指揮官(combatant commanders)、統合参謀副議長はコンセプトの説明と幾つかの付随的アイデアの説明を受けている」と説明しました。

同中将は同コンセプトについて
CSBA LRS2.JPG●コンセプト検討の過程で、長年海空軍が手をつけてこなかった海空軍の重要で機微な「投資と能力増強」の相互関係が明らかになった。
●我々は海空軍双方の投資と秘密の開発計画間の全てのバリアを打ち砕き、海空軍合同チームが双方の計画に踏み込み、如何にして双方が助け合うかについて踏み込んで検討した。
・・・と述べました。
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以前シュワルツ空軍参謀総長がプレスクラブで講演し、Air-Sea Battleの「Three Steps」として制度面(institutional)、コンセプト面 (conceptual)、装備面(material)の3つを上げました。
「プレスクラブでASB」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-13

海空軍トップのAir-Sea Battle検討覚え書きが制度面、恐らく「一月以内にroll-out」の秘密文書がコンセプト面、更に今後進む装備面での整備が「material」なのかもしれません。
CSBA LRS EA2.JPG秘密のドクトリン文書の内容がどの程度明らかになるのか不明ですが、今後の装備調達や研究開発の方向性とCSBAレポートの内容を見比べていけば、おのずとその方向性は明らかになるでしょう。

なおブリードラブ中将は、大将に昇任して空軍副参謀総長に就任することが議会で承認されています
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軍事サイト「DODBuzz」の関連記事はこちら
シンクタンクCSBA関係者のコメントも紹介されています。

米海軍と空軍間の、長距離攻撃能力(LRS)の「腹を割った検討」が一つの鍵、とのコメントです。
長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃(LRS)構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃(LRS)構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1

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本論2:長距離攻撃(LRS)システム構想 [Air-Sea Battle Concept]

CSBA LRS FP.JPG長距離攻撃(LRS)システム構想紹介の後半です
9月14日、シンクタンクCSBAのガンジンガー上席研究員(Mark A. Gunzinger)が発表したレポート「Sustaining America’s Strategic Advantage in Long-Range Strike」(以下LRSレポートと呼称)は、これまでの国防省・軍高官の発言と方向を同じくし、かつ包括的なLRS構想となっています。

ガンジンガーのLRSレポートは以下を参照下さい
レポート本文  プレゼンスライド  プレス発表レジメ


昨日は、突破型攻撃力、スタンドオフ攻撃力、そして空母搭載攻撃力について紹介しました。
本日は、空中発射巡航ミサイル、PGS(Prompt global strike)兵器、空中電子攻撃機、そして核抑止3本柱の空部門の将来についてご紹介します。

4 空中発射型巡航ミサイル
●短期及び中期に新たなスタンドオフ攻撃母機が無い代わりに、海軍と空軍は、長距離及び短距離母機の両方から発射可能で、通常弾頭と核弾頭が搭載可能な統合巡航ミサイルを開発すべきである。

◎ただし、5項のPGS(Prompt global strike)と同様に、これら精密誘導ミサイルや兵器は非常に高価であり、これだけで所用の攻撃目標に対処することはコスト面から受け入れがたい。従って巡航ミサイルや5のPGSは真に高価値目標のみを対象に運用を考えるべきであり、突破型システムとの組み合わせを総合的に考える必要がある。
◎また生産のスケールメリットによる単価低下効果を利用するため、調達時はまとまった数量で発注すべき。

「どんな兵器:A2AD対応」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04

5 PGS(Prompt global strike)兵器
CSBA LRS PGS.JPG●国防省は、数時間単位で高度価値目標(very-high-value targets)への限定的な攻撃を支援するため、100基以下程度の小規模のPGS(Prompt global strike)兵器開発を考慮すべき。
◎レポートの中では、HTV-2やX-51Aの事例が紹介されている。(いずれも実験初期段階で、実用化には最低5-10年が必要と考えられる。)

「核抑止の代替?CSMについて」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-25
「PGSのHTV-2試験失敗」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-27
「X-51Aは初期実験段階」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-23

6 空中電子攻撃機
CSBA LRS EA2.JPG●現在装備が進められているFA-18Gは、濃密な防空網での運用が困難であるため、新たな長距離攻撃機のための高度なデコイや自己防御システムに加え、国防省は有人又は無人で長距離攻撃を支援する空中電子攻撃(AEA:Airborne Electronic Attack)機を導入すべきである。
●この際、国防省が実施中の他の開発技術や既存の技術を最大限生かし、「75%の出来映え」で良いのでコストと開発期間を短縮して導入すべきである。(イメージ図には空母搭載型N-UCASに似た機体が使用されている。)

「苦難 米空軍電子戦」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-29-1

7 核抑止3本柱の空部門
CSBA LRS2.JPG●核搭載巡航ミサイルの廃棄が決定され、かつB-2の突破力も将来的には保障されていないため、空軍は核抑止3本柱の空部門を担い、将来の不確実性に備えた新たな核搭載突破型爆撃機のデザインを開始すべきである。
すぐにテストして装備する必要はない。その必要が生じた際に軽易な対応をして応じられるようにしておくべき。新START条約でもこの手法に問題はない。
◎LRSレポートでは、1項の「突破型攻撃力」を担う機体に6-8%程度の追加開発経費をかけることにより、EMP対策等を施して核兵器発射母体として必要時に活用可能な機体を保有することが提案されている。

8 軍需産業基盤の維持
ステルスや大型突破型機体の開発が途絶えれば、軍需産業に技術者や施設の維持が困難になり、米国の国防産業基盤全体の地盤沈下につながる。(以上がLRSレポートの紹介)

「武器輸出・共同開発の方針転換」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-22  
「QDRの「産業基盤の強化」」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-08
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LRSレポートに関する米軍事情報サイトのコメントは・・・
CSBA LRS3.jpg●「このレポートが求める約100機のステルスISR長距離攻撃機を調達するには、F-35調達数を大幅に削減(400機程度)する必要があるが、削減時のF-35の価格高騰、また軍需産業とコスト超過状態にあるF-35に疑問を呈する議会との関係もあり、空軍は厳しい選択を迫られている

ガンジンガー上席研究員やCSBAの面々は、2012年度予算案を国防省内で議論する年内が「議論の山」と見ているのかも知れません。F-35の調達数にメスが入るのか、LRSが棚上げになるのか・・・

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我が国はどうするのか・・・

ますます米国の作戦発起位置は遠方になります。これは中国の軍事力増強を考えれば軍事的合理性に沿った方向性です。
CSBAのAir-Sea Battleに関するレポートでは、日本に作戦基地の抗たん性強化や4世代及び5世代戦闘機の増加・導入を求めていましたが、作戦基地の抗たん性強化はともかく、戦闘機の増強を本当に行うべきか・・本当に信じて良いのか・・他の手段はないのか・・・

専守防衛を含め、根本に立ち返り困難な島国防衛を考える時期に来ています

長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃(LRS)システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26

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本論1:長距離攻撃(LRS)システム構想 [Air-Sea Battle Concept]

CSBA LRS4.jpg昨日の「序論」に続き、本日は本論の前半です。
シンクタンクCSBAのガンジンガー上席研究員(Mark A. Gunzinger)が9月14日に発表したレポート「Sustaining America’s Strategic Advantage in Long-Range Strike」(以下LRSレポートと呼称)は、過去の国防省高官の発言と一致する包括的なLRS構想となっています。

同LRSレポートは、今空軍は曲がり角に差し掛かっており、本レポートの提案を実行しなければ、これまで米国が維持してきた長距離攻撃能力での優位性を維持できなくなる、と主張しているところです。Holylandは、本LRSレポートが2012年度国防省予算案の議論が佳境に入るタイミングで発表されたこともあり、「F-35調達数削減論」とセットになる提案だと考えています。

ガンジンガーのLRSレポートは以下を参照下さい
レポート本文  プレゼンスライド  プレス発表レジメ

本日は、突破型攻撃力、スタンドオフ攻撃力、そして空母搭載攻撃力について紹介し、
明日は、空中発射巡航ミサイル、PGS(Prompt global strike)兵器、空中電子攻撃機、そして核抑止3本柱の空部門の将来についてご紹介します。

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以下、●は同レポートの結論部分の記述 ◎は結論に至る検討等の記述

CSBA LRS3.jpg1 突破型攻撃能力
●米空軍は2012年度予算において、全方位広域周波数ステルス性を有し、ペイロード約2万ポンド、航続距離4-5000マイルの爆撃機(有人タイプも可能な:optionally manned)約100機のプログラムを開始すべきである。
●同爆撃機は、友軍のC4ISR能力が低下した際でも、独立して固定と移動目標を攻撃できるように、機上に偵察及び自己防御能力を備えるべき。

ペイロード2万ポンドはB-2爆撃機の約半分。機体重量はB-2の約3分の2。LRSレポートでは、B-2と同等のペイロード4万ポンドを生産する場合と2万ポンドの場合の総経費や単価比較を行っており、最終的に前者50機と後者100機程度の総経費が同程度となるモノの、運用の柔軟性確保の観点から約100機がベターと判断。
航続距離は、相手のアクセス拒否エリア前縁(沿岸から約500マイル)での空中給油を前提として、主要な目標(レポートの図では中国の北京や德令哈(Delingha:核ミサイル基地)、イランのナタンツが表示)への到達を基準としている。

CSBA LRS5.jpg◎ステルスと対ステルス技術は「イタチごっこ」の関係にあり、日進月歩の対ステルス技術やステルス機製造経費の費用対効果(相手に強いる防空経費も考慮)には継続的に注意すべきであるが、実際の錯綜した戦場環境でステルス機を発見攻撃することは以前として困難。
我のC4ISR能力が低下した際、機上で判断させるために有人機のオプションも必要。仮に有人機オプションを考慮しても、想定する攻撃機の大きさは爆弾格納容量でほぼ決定されることから、想定規模の攻撃機規模であれば、有人オプションを考えても機体全体の構造に大きな影響はない

現有機の既存技術を活用すれば、本コンセプトの機体を製造するリスクは低く、開発経費も抑えられる。(B-2 F-35 F-15E FA-18 B-737の技術を活用して製造)

2 スタンドオフ攻撃能力
●スタンドオフ攻撃母体(B-52の様にステルス性を持たず、敵防空網内への接近・侵入が困難で、遠方からミサイル攻撃を行うモノ)については、現有機の稼働可能年数やスタンドオフ攻撃能力の有効性を勘案し、新型の機体開発は1の突破型計画の終了が見える時点まで行わない。

◎LRSレポートでは厳しい財政状況に配慮した段階的アプローチ(phased approach)を採っており、スタンドオフ機については将来に先送り。
◎B-52に関しては最近、1機あたり約100億円もの改修計画が話題になったところ。

「B-52に1機100億の改修案」→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-08

3 空母搭載攻撃能力
●空中給油能力を有し、高度な敵防空網内でも残存できる全方位広域周波数ステルス性を備えた、行動半径約1500マイル(給油無し)、搭載能力4000ポンド、給油ありの連続飛行時間24時間の無人艦載機を海軍は開発すべきである。

CSBA UCAS.jpgレポート内のイメージ図(左図)では、空母は海岸線から1500マイル地点からUCAS艦載攻撃機を発進させ、アクセス拒否国海岸線から500マイル地点で空中給油を行った後、対象国の防空網へ進出する事となっている。
◎防空網内に進出した無人艦載機は、それぞれが約半径100マイルを担当範囲として常続的ISR及び攻撃空中待機任務を行う。繰り出す艦載機数(飛行隊数)が増えるほど、艦載機が制圧制空するエリアが拡大可能。
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明日は、空中発射巡航ミサイル、PGS(Prompt global strike)兵器、空中電子攻撃機、そして核抑止3本柱の空部門の将来についてご紹介します。

長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論2:長距離攻撃(LRS)システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1

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序論:長距離攻撃(LRS)システム構想 [Air-Sea Battle Concept]

CSBAGunzinger.jpg1ヶ月以上前になりますが、9月14日シンクタンクCSBAのガンジンガー上席研究員(Mark A. Gunzinger)が、レポート「Sustaining America’s Strategic Advantage in Long-Range Strike」(以下LRSレポートと呼称)を発表しました。

米軍の将来の長距離攻撃能力(LRS)に関しては、これまで細切れに高官の発言等を紹介してきたところですが、ガンジンガー氏のLRSレポートはこれら発言等をほぼ網羅した包括的なLRS構想の説明となっており、CSBAがQDRや最近のゲーツ長官の発言に大きく関連していることを踏まえれば、国防省内部でのLRS検討原案だとHolylandは考えています。

CSBA LRS.jpgこの点は、カンジンガー氏自身がLRSの元となるAie-Sea Battle関連CSBAレポートの共同執筆者であったことからも明らかだと考えます。

LRSレポートは、米空軍はいま曲がり角に差し掛かっており、本レポートの提案を実行しなければ、これまで米国が維持してきた長距離攻撃能力での優位性を維持できなくなり、必然的に拒否戦略を図る相手に後れを取ると主張しており、今後2012年度予算案を米国防省がまとめる中で大きな争点となると思われます

なお、ガンジンガー氏のLRSレポートはこちらをを参照下さい

本日は、まずLRSレポートの中身紹介前の「序論」として、本ブログで長距離攻撃能力に関して紹介してきた事項の概要を振り返り明日以降、LRSレポートの内容を本論として紹介していきたいと思います。
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問題認識の確認

以下のようなゲーツ国防長官発言が示す米軍西太平洋戦略の大転換を前に、日本は冷戦当時(戦後か?)から全く変わらない従来型の防衛力強化を進めていて良いのだろうか・・・との疑問に向き合う必要があると考えています。

CSBA LRS5.jpg中国のような軍備増強している国を考える際・・・(中略)彼らのサイバー戦、対衛星・対空・対艦兵器、弾道ミサイルへの投資は、米軍の主要なプロジェクション能力と同盟国の支援能力を脅かす。特に前線海外基地と空母機動部隊に対して顕著である。またそれらへの投資は、足の短い戦闘機の有効性を殺ぎ、どのような形であれ遠方攻撃能力の重要性を増す。」(09年9月16日の空軍協会演説)(上図はLRSレポートの使用のイメージ図

中国の投資に対応して、米国は、見通し線外からの攻撃力やBMD配備に重点を置き、また短距離システムから次世代爆撃機のような長距離システムへのシフトを求められるだろう」(09年1/2月フォーリンアフェアーズ誌論文)・・・・・

第1歩としてのQDR2010

以上のような考え方を具現化する第1歩として、2月にQDRが発表されました。拒否戦略を遂行する相手への対処として米国防省が掲げた方向性の中核は・・・

CSBA LRS2.jpg●Develop a joint air-sea battle concept
対中国の新作戦コンセプト(対イランも少し)を、空軍と海軍アセットを中心に開発中。洗練された拒否能力を持つ敵対者に対抗するための、陸海空宇宙とサイバー領域にわたる全ての海空軍能力を使用するコンセプトであり、米国の行動の自由を確保し、今後の能力開発の指針となるもの。(左図はLRSレポートの対象イランのイメージ図

●Expand future long-range strike(LRS) capabilities
今後20~30年のパワープロジェクションを考える検討が進行中。その中には、バージニア級潜水艦の長距離攻撃能力、米空母に搭載可能な無人機N-UCAS(写真左)の偵察・攻撃力、空軍の爆撃機後継に関する生存性を有する長距離偵察攻撃力、海空軍共同の新型巡航ミサイルの検討等が含まれる。

Air-Sea Battleは既にかなり紹介

まだまだ細部が不確定ながら、Air-Sea Battleの概念とその取り組みについては何度も取り上げてきたところです。

(代表的記事)
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「嘉手納から有事早々撤退」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
「2 QDRから日本は何を読みとる」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1
「Air-Sea Battleの状況」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「どんな兵器:Anti-Access対応」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応概念」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
「QDRから日本は何を読むべき」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07

LRS(long-range strike)の状況は?

例えば、空軍の将来爆撃機の検討は、ゲーツ長官が2008年に一端中断して根本的に見直すべきと指示し、仕切直しになりましたが、QDRやJoint Air-Sea Battle Concept検討の中で「ISRと攻撃の一体化」のようなイメージが発信されつつあります。

空軍参謀総長は以下のようなイメージで、2012年度予算には具体的な開発費等を計上したい意向のようです。その方向性は・・・・
開発リスクの低い、現状で証明済みの技術を用いた長距離ステルス型を念頭に
有人タイプはオプションとし、他の兵器システムとの組み合わせ(A family ofsystemとして)で総合的に能力発揮
●B-2のように製造コストの高騰で十分な数を調達できなかった例を反面教師とし、十分な数量を確保できる単価で 

breedlove.jpg具体的には・・6月24日ブリードラブ米空軍作戦計画部長(Lt. Gen. Philip Breedlove, deputy chief of staff for operations, plans, and requirements)が空軍協会主催の朝食会で本件について語っています。なおブリードラブ中将は、まもなく大将に昇任して空軍副参謀総長に就任することが承認されている人物です。
●次世代爆撃機との言葉は死語である。もう次期爆撃機とは呼ばない
●今検討されているのは、ステルス機ではあるが、次期爆撃機のイメージより小型で、濃密なSAMベルト地帯を突破するようなデザインにはなっていない。
●今検討されているのは、より多様なポジションをこなせる選手(utility infielder)である。

●長距離攻撃や突破型プラットフォーム議論の論点の一つは、高コストのプラットフォームと低コストの敵防空網との対峙をどう評価するかである。
●新たな兵器システムに関する議論を明らかにすることも問題になっている。なぜなら相手は公開情報から学び、より強力になるからである。
●歴史上初めて、主要な作戦機の要求が、戦闘コマンドからではなく国防長官室から降りて来ている。
「次期爆撃機とは呼ばない」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-24

CarterAs.jpgまた・・9月15日カーター国防次官(取得技術兵站担当)はAFA航空宇宙会議で、LRSは電子攻撃、ISR、攻撃、スタンドオフ又はイン、友人・無人等々の複雑なモザイクである。そしてコストとの関係で、最近は見られなくなっていた、国防省をあげてのトレードオフ議論を行っている。ゲーツ長官が望んでいた議論である「AFA航空宇宙会議」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-16-1

そして・・・
ついにCSBAがLRSレポート発表
紙面の都合もあり、LRSレポートの概要は明日から2回に分けて紹介します。

長距離攻撃(LRS)システム構想
「本論1:長距離攻撃(LRS)システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃(LRS)システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1

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プレスクラブでAir-Sea Battleを [Air-Sea Battle Concept]

schwartAF.jpg12日、シュワルツ空軍参謀総長はワシントンDCのNational Press Clubのランチタイムスピーカーとして講演し、厳しい財政状況化にあっても情勢の変化に立ち向かい、攻撃、輸送、宇宙(ISRと早期警戒、指揮統制)分野等での活動を通じ、米国と同盟国の空を守り続けると語りました。
また講演の中で「Air-Sea Battle Concept」への取り組み、特に海軍との協力の方向性について久しぶりに語ってくれました。珍しく中国関係についても触れています。

講演の中身については、米国防省HP記事National Press Clubの記事では注目ポイントが異なっており興味深いのですが、Holylandは独断と偏見で「おいしいとこ取り」させていただきます。

情勢一般に対する認識
●今日の米空軍が直面する情勢は、過去のいかなる国が直面したものとも異なる。
●しかし、無限の様相があり得る多様な危機全てに十分な予算を確保することは不可能。従って我々はより機動的で迅速で、多様性に富み効率的でなければならない。
●国防省全体で今後5年間で9兆円の経費削減を行うが、空軍には2兆3千億円削減が求められている
●現時点で、空軍の人員数、航空機数、基地数の変化について述べることは出来ないが、「このままで存続することは出来ない」

他軍種との協力での効率化(Air-Sea Battle関連の海軍との協力)
SchwartzAF2.jpg●まず海軍と空軍は制度的(institutional)にも共に働かなくてはならない
●2つに、海軍と空軍のシステムをどのように(conceptual)連接し統合して運用するかについての合意が求められる
●3つに、装備品(material)の相互運用面での協力がある。将来の統合能力に向けて統合調達戦略も求められる。
●上記全てを持って、各軍種の効率性がより増幅される。

医療費の増加が大きな課題
●現在3兆2千億円である医療費が、2015年には5兆円程度の膨張する見込みであり、これは空軍予算の12-14%にもなる。制度の変更は不可避である

中国との関係
●中国との関係を維持することは重要である。例えば中国にC-130輸送機の売却を提案することは、中国との軍事交流を確実にするためにポジティブな方法であろう。

アフガンでの民間人被害について
●民間人の被害の8割は多国籍軍の攻撃とは関係のないものである。多国籍軍の空対地攻撃による被害は全体の8%程度である。

サイバー空間と宇宙事業について
サイバー空間における交戦規定と各種基本的事項が十分には示されていない状況である。
宇宙空間における監視が、脅威の源泉を探知し抑止するのに必要不可欠である。(以上は記事概要)
/////////////////////////////////

Air-Sea Battle関連の発言ですが・・・
●海軍と空軍のシステム統合や連接は、前線の作戦情報を扱うシステムの暗号構造等が異なるため困難を極めている状況です。そして恐らく、どちらがどちらに歩み寄るか・・どちらの指揮所をメインにするか等々の軍種のメンツを賭けたつばぜり合いになっていると考えられます。

RQ-4-2.jpg●装備の相互運用性に関しては、例えば無人機の扱いが大きな課題です。例えば双方がRQ-4グローバルホークを導入しますが、その整備部門の共通化や運用部門の統合なども議論の対象でしょう。
そして本丸は、LRS(長距離攻撃システム)です。空母艦載型により比重が置かれるのか、引き続き陸上発進型が中心となるのか、空軍や海軍の戦闘機数は・・パイロット数は・・全てが重い課題です。

5月26日にマレン統合参謀本部議長が「Air-Sea Battle ConceptのRoll-Outを27日から開始する」と空軍士官学校の卒業式で宣言して以降、久々のAir-Sea Battle関連発言ですが、CSBAレポートが予言したように海空軍間の話の詰めは難航しそうです。
「AirSea Battleとミッドウェイ68周年」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-08

「太平洋軍のAir-Sea Battle検討」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-05
「対中へミサイル原潜増強」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-10
「Air-Sea Battleの起源」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-24-1

「QDRから日本は何を読みとるべきか(1)」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「(その6)CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
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嘉手納滑走路の強化開始か [Air-Sea Battle Concept]

kadenaRWY.jpg10月6日付米空軍HP記事によれば、沖縄の米空軍嘉手納基地は10月4日から約18ヶ月間の予定で滑走路の定期補修(補強?増強?)工事に入りました。

米空軍HP記事が「part of a major construction project」と表現する滑走路関連工事ですが、担当する嘉手納所属の第18施設隊関係者は「3~5年おきに定期的に行うメンテナンス作業だ」と表現しています。
折しも2010QDRや「Joint Air-Sea Battle Concept」では、嘉手納など西太平洋地域の米軍基地の脆弱性対処が求められており、何らかの強度補強や被害復旧の容易さを高める施策が採られるモノと考えられます

kadenaRWY2.jpg米空軍HP記事の表現「major construction project」についてholylandはどのようなモノか承知していませんが、「大量のセメントが西太平洋の基地に注がれる」と表現されるほど施設の強化工事が行われるのでしょう・・・

ところで滑走路工事の概要は・・・
●嘉手納基地には南北2本の滑走路がありますが、「それぞれに9ヶ月間の時間をかけ、滑走路の基礎、舗装、各種表示、侵入灯等のランプ類の交換補修を行う予定」と第18施設隊関係者は述べています。
●まず南の滑走路から工事を開始し、次に北滑走路へ作業が進みます。
工事の間、嘉手納基地の滑走路が1本運用になり、緊急時や天候悪化による在空機増加時には、普天間基地や那覇空港滑走路が代替として使用されることが調整済みだそうです。

kadenaF22.jpgここでHolylandが紹介しなくても、沖縄の独占的新聞「琉球新報」や「沖縄タイムス」では今頃、「戦争前夜のような勢いで戦争準備が進んでいる」・・・等々の記事が踊り、また「那覇空港の軍事化」とか「普天間の恒久化」等々の被害者意識露わな批判が展開されていることでしょう。
おすすめはしませんが、「逆大本営発表」がお好きな方は両新聞をご覧下さい

(QDRやAir-Sea Battle関連記事)
「QDRから日本は何を読みとるべきか(1)」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「(その6)CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24

CSBAと「Joint Air-Sea Battle Concept」の関連記事一覧はこちら
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海兵隊とAir-Sea Battle [Air-Sea Battle Concept]

marineIwozima.jpg新しい海兵隊司令官候補者への面接で、ゲーツ長官は次の質問をしたそうです。
「海兵隊は今や陸軍と同じ仕事をイラクやアフガンでやっている。海兵隊の存在意義と将来ビジョンについて君の考えを聞かせてくれ
「海兵隊は生き残れるか」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-16-1  面接の結果、海兵隊の次期司令官にはパイロット出身者が史上初めて予定されています。

WorkNavy.jpgゲーツ長官による海兵隊への問いかけに、シンクタンクCSBA研究者から昨年9月に海軍次官に就任したRobert Work氏が挑んでいます

11日付「Defense Tech」の記事は、同サイト主催者の友人であるというWork海軍次官の取り組み状況を、同次官のCSICでの講演内容を交え紹介しています。

「Defense Tech」の記事概要は・・・
●ワーク次官は、これまで地上部隊の活動の前提であった航空優勢に代わり、戦闘ネットワーク優勢が重要だと考えている。この戦闘ネットワーク優勢(Battle Network Superiority)は航空優勢獲得より遙かに困難であり、これまでのNCW(Network Centric Warfare)とは前提を異にする。
marinecorps.jpgNCWではネットワークを味方が独占使用して優位を確保することが暗黙のうちに前提となっている。しかし今日では軽易に安価に敵もネットワークが形成できるため、ネットワーク世界での優位獲得競争が熾烈であり重要になる。
●今後海兵隊が着上陸した場合、敵が容易に入手可能な誘導ロケット、大砲、迫撃弾、ミサイルに対処しなければならない。陸上の例だが、2006年にヒズボラがイスラエル軍に対し、商用のシンプルなシステムで有効な偵察攻撃戦闘ネットワーク(Reconnaissance Strike Battle Network)を確立して効果を上げている。

●海兵隊は上陸戦闘車両(Expeditionary Fighting Vehicle)を推進しているが、軽易に入手可能な誘導兵器の前に有効だろうか。海兵隊が着上陸地点の安全を確保するためには、どれだけ遠方まで敵を制圧する必要があるのだろうか
●このような偵察攻撃戦闘ネットワークと誘導兵器は、中国が強力に推進している分野でもある。ゲーツ長官はこのような敵に対するとき、海軍は遠く沖合から作戦しなければならないと見ているが、WORK次官は敵の偵察攻撃戦闘ネットワークにある程度の被害を与えれば着上陸も可能だと考えている。

●そして海兵隊は将来、統合軍に対して戦域への入り口(theater entry)を提供する任務を追及すべきだと同次官は考えている。陸軍の空挺部隊もtheater entryを提供する部隊であるが、theater entry任務で上陸地点希近傍に航空攻撃を発起可能な飛行場を提供できれば空軍や戦術航空機にアピールできるだろう。

marine2.jpg●一方で、同じCSBAの別の研究者は拒否戦略ラインを単に突破することと、同ライン内で活動することは大きく異なり、後者が格段に困難であると主張している。前述の誘導兵器のほか、電波の使用制約、仕掛け爆弾等々、イスラエル軍がヒズボラに苦しめられた例をあげて難しさを強調している。
●このような困難性に加え、中国沿岸部のような都市化された地域に着上陸する作戦を、海軍や海兵隊がどのように計画するかについてはまだ聞いたことがない。WORK次官はそのスタッフと共に、今後の着上陸作戦の様相と偵察攻撃戦闘ネットワークが整備された要塞地域へのパワープロジェクションについて検討しているところである。その検討結果が待たれる。(以上が記事概要)

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CSBA理事長のKrepinevichは西太平洋地域を「地上部隊の活動を想定しない地域」と自身のレポート「Why AirSea Battle?」で表現しています。

また、同じくCSBAの研究者で、Air-Sea Battleレポートの補助著者であるJim Thomas氏は「Post Power-Projection Era」との表現で、パワープロジェクション側が益々困難に直面し、防御側が有利になるとの視点を提示していますが、同じCSBA出身者がその課題への対処を政権内で担当している構図になっています。

参考記事(Post Power-Projection Era関連)
「イスラエルがF-35で苦悩」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-01

しかし海兵隊の存在意義はどうなるのでしょうか・・・
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太平洋軍がAirSea Battle検討中 [Air-Sea Battle Concept]

willard3.jpg8月号の「Air Force Magazine」が、ウィラード海軍大将率いる太平洋軍によるJoint Air-Sea Battle検討状況を、ずばり「AirSea Battle」とのタイトルの特集記事で紹介しています。

AirSea Battleの考え方について同記事は、CSBAレポートと全く同じ表現、つまり本ブログと同じ内容を紹介しています。
そこで今回は過去の繰り返しは避け、Andrew Krepinevichが理事長を務めるシンクタンクCSBAや国防省Net-Assessment局マーシャル局長と太平洋軍の関わり、また米軍内で本コンセプトについて何が行われているか、どんな課題があるのかについて、断片的な記事からですがご紹介したいと思います。

まず前振りとして・・・
AFM0810cover.jpgこの記事の中には、「memo」と表現される太平洋軍によるAir-Sea Battleウォーゲームの関連資料が多数引用されています。このウォーゲームには、以前の記事「Air-Sea Battleの起源」でご紹介した2008年10月の「Pacific Vision」演習も含まれる思います。「memo」が「2028年の発生を想定したウォーゲーム」だとしている点からも類似性が明らかです。

また同記事は、memoが「東アジアのライジング軍事競争国」と表現する国は「中国」しか考えられず、イラン、イラク、アフガンなどとは比較にならない「米国の安全保障にとって、唯一のリアルな脅威」と表現しています。

CSBAと国防省Net-Assessment局と太平洋軍
●過去3年間に渡り、3者は半ダースにも上るウォーゲームを実施し、AirSea Battleの考え方をまとめ、海軍と空軍の制服トップに報告した。そして昨年9月、両軍から各4名の大佐が指名されて具体的なドクトリン検討に入った。検討は、まさに紙ヤスリをかけるように数ヶ月にわたって実施され、やっと合意に達した。
太平洋軍では、前太平洋空軍司令官チャンドラー大将により検討が始まった(現在は米空軍副参謀総長として本コンセプト推進をリード)
●CSBAレポートの主執筆者Jan M. van Tolとクレパノビックは国防省Net-Assessment局で勤務し、Gunzingerがペンタゴンで国防計画ガイダンスを担当、Jim ThomasはQDRに参画した。

何が検討されているのか
andersenGM.jpg●AirSea Battleでは、日本・韓国の飛行場が被害時の代替飛行場確保が鍵。そのため米空軍は、アジア各国の飛行場施設の再調査を行っている。
4月に実施されたインドネシアでの共同訓練Cope-West10では、横田基地所属のC-130が同国ハリム空軍基地に展開して飛行場の再評価をこれまでになく慎重に行った。
他にも、フィリピンのクラーク飛行場、サイパン、テニアン、タイのウタパオやコラット、豪北部の飛行基地、ベトナムのタン・ソン・ヌット、パキスタンのペシャワール等々が検討対象になっている模様
米海軍もベトナムのカムラン湾に興味を持っているが、ベトナムが中国との関係を危機にさらして米国に使用させるかは未知数。

何が課題か・・・
●日本と豪には大きく依存しなければならないが、政治的混乱にある日本とのコーディネイトは控えめに見ても困難である。一方で豪は、政治的な変化によっても関係が影響を受けるようには見えない
●日本には、特に情報と警報システムの分野で自衛隊との一体化を要求している。ミサイル防衛の強化と防空能力の強化も期待される。
核戦争プランもAirSea Battle作戦に織り込まれる

誰がどこから作戦を指揮するか。空軍はヒッカム基地の13空軍指揮所を希望するし、海軍は空母航空部隊の統制をあきらめないだろう。
willard.jpg両軍の指揮通信やセンサーは共有されておらず、種々の形式の違いから融合は容易ではないウイラード司令官は「これについて発言するのは時期尚早」と答えている。また陸軍や海兵隊をどのように本コンセプトの絡めていくのかについても今後の課題と言及し、まだ多くの課題があるとして慎重な姿勢も見せた。
●基地や飛行場の抗たん化のために、新素材や建築手法の開発も必要。ミサイル防衛についても一層の強化が必要(以上が記事概要)
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CSBA2ndjasbc.jpgこれまで延々と取り上げてきたAirSea BattleとCSBAレポートの記述が、米軍内でどのように消化されつつあるのか、少しはイメージアップができたように感じます。
また、AirSea Battleを「斜に構えて」見ていた皆様にも、すこしはお役に立ったのでは・・・と思います。これから夏休みシーズンですが、以下の「AirSea Battle」関連過去記事をじっくりしっかりお読み下さい。頭を冷やして・・・・

CSBAと「Joint Air-Sea Battle Concept」の関連記事一覧はこちら

(Air-Sea Battle経費捻出関連の過去記事)
「前線兵士と将来へ9兆円捻出」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-25
「国防省コストカット」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-30-1
「更なる削減案で空軍激論」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-25
「ゲーツ長官が国防省にも宣戦布告」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-03
(関連記事)
「ゲーツ改革のまとめと整理」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17


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