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本論1:長距離攻撃(LRS)システム構想 [Air-Sea Battle Concept]

CSBA LRS4.jpg昨日の「序論」に続き、本日は本論の前半です。
シンクタンクCSBAのガンジンガー上席研究員(Mark A. Gunzinger)が9月14日に発表したレポート「Sustaining America’s Strategic Advantage in Long-Range Strike」(以下LRSレポートと呼称)は、過去の国防省高官の発言と一致する包括的なLRS構想となっています。

同LRSレポートは、今空軍は曲がり角に差し掛かっており、本レポートの提案を実行しなければ、これまで米国が維持してきた長距離攻撃能力での優位性を維持できなくなる、と主張しているところです。Holylandは、本LRSレポートが2012年度国防省予算案の議論が佳境に入るタイミングで発表されたこともあり、「F-35調達数削減論」とセットになる提案だと考えています。

ガンジンガーのLRSレポートは以下を参照下さい
レポート本文  プレゼンスライド  プレス発表レジメ

本日は、突破型攻撃力、スタンドオフ攻撃力、そして空母搭載攻撃力について紹介し、
明日は、空中発射巡航ミサイル、PGS(Prompt global strike)兵器、空中電子攻撃機、そして核抑止3本柱の空部門の将来についてご紹介します。

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以下、●は同レポートの結論部分の記述 ◎は結論に至る検討等の記述

CSBA LRS3.jpg1 突破型攻撃能力
●米空軍は2012年度予算において、全方位広域周波数ステルス性を有し、ペイロード約2万ポンド、航続距離4-5000マイルの爆撃機(有人タイプも可能な:optionally manned)約100機のプログラムを開始すべきである。
●同爆撃機は、友軍のC4ISR能力が低下した際でも、独立して固定と移動目標を攻撃できるように、機上に偵察及び自己防御能力を備えるべき。

ペイロード2万ポンドはB-2爆撃機の約半分。機体重量はB-2の約3分の2。LRSレポートでは、B-2と同等のペイロード4万ポンドを生産する場合と2万ポンドの場合の総経費や単価比較を行っており、最終的に前者50機と後者100機程度の総経費が同程度となるモノの、運用の柔軟性確保の観点から約100機がベターと判断。
航続距離は、相手のアクセス拒否エリア前縁(沿岸から約500マイル)での空中給油を前提として、主要な目標(レポートの図では中国の北京や德令哈(Delingha:核ミサイル基地)、イランのナタンツが表示)への到達を基準としている。

CSBA LRS5.jpg◎ステルスと対ステルス技術は「イタチごっこ」の関係にあり、日進月歩の対ステルス技術やステルス機製造経費の費用対効果(相手に強いる防空経費も考慮)には継続的に注意すべきであるが、実際の錯綜した戦場環境でステルス機を発見攻撃することは以前として困難。
我のC4ISR能力が低下した際、機上で判断させるために有人機のオプションも必要。仮に有人機オプションを考慮しても、想定する攻撃機の大きさは爆弾格納容量でほぼ決定されることから、想定規模の攻撃機規模であれば、有人オプションを考えても機体全体の構造に大きな影響はない

現有機の既存技術を活用すれば、本コンセプトの機体を製造するリスクは低く、開発経費も抑えられる。(B-2 F-35 F-15E FA-18 B-737の技術を活用して製造)

2 スタンドオフ攻撃能力
●スタンドオフ攻撃母体(B-52の様にステルス性を持たず、敵防空網内への接近・侵入が困難で、遠方からミサイル攻撃を行うモノ)については、現有機の稼働可能年数やスタンドオフ攻撃能力の有効性を勘案し、新型の機体開発は1の突破型計画の終了が見える時点まで行わない。

◎LRSレポートでは厳しい財政状況に配慮した段階的アプローチ(phased approach)を採っており、スタンドオフ機については将来に先送り。
◎B-52に関しては最近、1機あたり約100億円もの改修計画が話題になったところ。

「B-52に1機100億の改修案」→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-08

3 空母搭載攻撃能力
●空中給油能力を有し、高度な敵防空網内でも残存できる全方位広域周波数ステルス性を備えた、行動半径約1500マイル(給油無し)、搭載能力4000ポンド、給油ありの連続飛行時間24時間の無人艦載機を海軍は開発すべきである。

CSBA UCAS.jpgレポート内のイメージ図(左図)では、空母は海岸線から1500マイル地点からUCAS艦載攻撃機を発進させ、アクセス拒否国海岸線から500マイル地点で空中給油を行った後、対象国の防空網へ進出する事となっている。
◎防空網内に進出した無人艦載機は、それぞれが約半径100マイルを担当範囲として常続的ISR及び攻撃空中待機任務を行う。繰り出す艦載機数(飛行隊数)が増えるほど、艦載機が制圧制空するエリアが拡大可能。
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明日は、空中発射巡航ミサイル、PGS(Prompt global strike)兵器、空中電子攻撃機、そして核抑止3本柱の空部門の将来についてご紹介します。

長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論2:長距離攻撃(LRS)システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1

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