作戦基地の脆弱性を論ず [Air-Sea Battle Concept]
12月号の「AirForce Magazine」が「Countering Missile Threat」との記事を掲載し、Air-Sea Battle Conceptへ取り組むことになった脅威の問題意識を紹介しています。
具体的な対象国の脅威ではなく、旧ソ連崩壊後、米国自身が作戦基盤基地への直接的脅威から目を背けてきたことへの反省が中心となっている記事です
Rebecca Grant女史の筆によるその問題認識は・・
●本年9月、シュワルツ空軍参謀総長は「真珠湾攻撃を海軍基地が受けた汚名を歴史に記録し、忘れてはならない。」、「あまり知られていないが、敵は我々の作戦機をまず攻撃し、制空権を我々から奪った」と空軍協会シンポジウムで述べた。
●冷戦最盛期の1980年代はソ連の欧州方面での脅威を懸念し、基地の脆弱性をどのように克服するかの検討が盛んに行われた。しかし冷戦終了後、表面上はともかく、実際はこの問題を考える者はほとんど無くなった。
●1999年にRAND研究所が発表した「通常弾頭の巡航ミサイルと弾道ミサイルの攻撃に対する基地の脆弱性」レポートでも、「単一の緊急事態であれば、敵ミサイルの被害があっても、米空軍がその戦力を最大限に活用すれば、湾岸戦争での「砂漠の嵐」作戦程度の航空戦力発揮は可能」と結論付けた。
●しかし、特に中国とイランの軍事力拡大により、基地の脆弱性と航空力発揮への障害が再び大きな変数となって現れてきた。冷戦期に多数の大小の研究機関によってなされた脆弱性対処を思い出し参考にすることも必要であろう。
●2007年のRAND研究所のレポートでは以下の中国軍ドクトリンを紹介している。そのドクトリンは「仮に敵の航空作戦計画を粉砕したいならば、敵の指揮統制と燃料と弾薬を目標にせよ。また仮に敵の航空戦力を低下させたいなら、我の脅威となる航空戦力が集結する基地を目標にせよ」と述べている。
●またどのように中国軍が攻撃を開始するかについて、中国軍のドクトリン研究者は「先制攻撃」がその焦点にあると見ている。上述のRANDレポートでは、米の空中給油能力が中国軍戦略のターゲットと見なされている。
●攻撃を受けた当初の不発弾対処、化学弾対処、不審分子の活動、そして被害の復旧。それ以前にイラン・イラク戦争時にオマーンの空軍基地に行ったような基地施設の抗たん化(格納庫等の強化)も考えられる。
●分散も有効であろう。しかし、敵の脅威から遠くなれば必要な攻撃やISR能力を犠牲にしなければならない。そこで湾岸戦争時には、最終的にイラク前面のクウェートにまでF-15Eを展開した。一方で、1999年のOperation Allied Forceの際には、当初5カ国9カ所であった基地を、作戦期間中に11カ国22基地に拡大した経験もある。
●米軍の前方展開基地だけでなく、近い将来米本土の基地が敵の脅威下にはいることもあるだろう。米空軍にとって、これまで当然と考えてきた作戦基地にの安全が大きな課題となっている。
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この記事でもCSBAのレポートの流れが中心を成しています。
軍事予算が切迫する中で、どこまでAir-Sea Battle Conceptが形になるか不明ですが、米軍事雑誌でもWEBサイトでも普通に議論されるようになってきました。
ますます注目です。
「QDRから日本は何を読みとるべきか(1)」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「(その6)CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「Air-Sea Battleの起源」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-24-1
「太平洋軍のAir-Sea Battle検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-05
長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃(LRS)システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃(LRS)システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1
具体的な対象国の脅威ではなく、旧ソ連崩壊後、米国自身が作戦基盤基地への直接的脅威から目を背けてきたことへの反省が中心となっている記事です
Rebecca Grant女史の筆によるその問題認識は・・
●本年9月、シュワルツ空軍参謀総長は「真珠湾攻撃を海軍基地が受けた汚名を歴史に記録し、忘れてはならない。」、「あまり知られていないが、敵は我々の作戦機をまず攻撃し、制空権を我々から奪った」と空軍協会シンポジウムで述べた。
●冷戦最盛期の1980年代はソ連の欧州方面での脅威を懸念し、基地の脆弱性をどのように克服するかの検討が盛んに行われた。しかし冷戦終了後、表面上はともかく、実際はこの問題を考える者はほとんど無くなった。
●1999年にRAND研究所が発表した「通常弾頭の巡航ミサイルと弾道ミサイルの攻撃に対する基地の脆弱性」レポートでも、「単一の緊急事態であれば、敵ミサイルの被害があっても、米空軍がその戦力を最大限に活用すれば、湾岸戦争での「砂漠の嵐」作戦程度の航空戦力発揮は可能」と結論付けた。
●しかし、特に中国とイランの軍事力拡大により、基地の脆弱性と航空力発揮への障害が再び大きな変数となって現れてきた。冷戦期に多数の大小の研究機関によってなされた脆弱性対処を思い出し参考にすることも必要であろう。
●2007年のRAND研究所のレポートでは以下の中国軍ドクトリンを紹介している。そのドクトリンは「仮に敵の航空作戦計画を粉砕したいならば、敵の指揮統制と燃料と弾薬を目標にせよ。また仮に敵の航空戦力を低下させたいなら、我の脅威となる航空戦力が集結する基地を目標にせよ」と述べている。
●またどのように中国軍が攻撃を開始するかについて、中国軍のドクトリン研究者は「先制攻撃」がその焦点にあると見ている。上述のRANDレポートでは、米の空中給油能力が中国軍戦略のターゲットと見なされている。
●攻撃を受けた当初の不発弾対処、化学弾対処、不審分子の活動、そして被害の復旧。それ以前にイラン・イラク戦争時にオマーンの空軍基地に行ったような基地施設の抗たん化(格納庫等の強化)も考えられる。
●分散も有効であろう。しかし、敵の脅威から遠くなれば必要な攻撃やISR能力を犠牲にしなければならない。そこで湾岸戦争時には、最終的にイラク前面のクウェートにまでF-15Eを展開した。一方で、1999年のOperation Allied Forceの際には、当初5カ国9カ所であった基地を、作戦期間中に11カ国22基地に拡大した経験もある。
●米軍の前方展開基地だけでなく、近い将来米本土の基地が敵の脅威下にはいることもあるだろう。米空軍にとって、これまで当然と考えてきた作戦基地にの安全が大きな課題となっている。
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この記事でもCSBAのレポートの流れが中心を成しています。
軍事予算が切迫する中で、どこまでAir-Sea Battle Conceptが形になるか不明ですが、米軍事雑誌でもWEBサイトでも普通に議論されるようになってきました。
ますます注目です。
「QDRから日本は何を読みとるべきか(1)」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「(その6)CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「Air-Sea Battleの起源」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-24-1
「太平洋軍のAir-Sea Battle検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-05
長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃(LRS)システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃(LRS)システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1
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