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初めてF-35を受領する米空軍予備役飛行隊 [米空軍]

来年F-35を受領し、30年使用のF-16は仮設敵部隊へ
予備役戦闘機部隊の訓練や作戦運用もご紹介

457th EFS3.jpg8月10日付米空軍協会web記事が、米空軍の予備役戦闘機部隊として2024年に初めてF-35を受領し、30年に渡るF-16運用に幕を閉じるテキサスの米海軍航空基地に籍を置く第301戦闘航空団の第457派遣戦闘飛行隊の様子を取り上げていますので、予備役戦闘機部隊の訓練や作戦運用を垣間見る機会としてご紹介します

第457派遣戦闘飛行隊(457th EFS: 457th Expeditionary Fighter Squadron)は、現在サウジのPrince Sultan Air Baseに派遣されており、8月末に帰国する予定ですが、その後にF-16からF-35への機種転換に本格的に取り組む模様です

457th EFS.jpg同飛行隊がF-35を受領するのが2024年となっていますが、現有F-16を手放す時期(ネリス基地でアグレッサー転換し、フロリダ州Homestead空軍基地で第93予備役戦闘飛行隊に移管される)は不明確ながら、過去の正規空軍飛行隊のF-16~F-35への機種転換の様子から、F-35到着の1年前にF-16を送り出すことになろうと考えられています

同飛行隊長の中佐はまず、現在の中東への展開が如何に過酷で、任務遂行を通じて部隊が逞しくなった様子を振り返り、「対ISISのOperations Inherent Resolveや、ロシアによるMQ-9への妨害が頻発する中での地域安定化警戒飛行作戦Spartan Shieldに備え、一般的な展開準備の他に、ACE(Agile Combat Employment)構想演習や近接航空支援訓練を短期間に精力的にこなし」

457th EFS4.jpg中東展開後は、「1回のフライトが7時間に及ぶ連続飛行の中で、様々な任務を緊張感を維持しつつ遂行する任務」や、「暑さ、強い風、砂嵐等の米本土とは異なる厳しい環境の中で、米本土での訓練フェーズに比べてはるかにテンポの速い、作戦→整備、任務の分析検討→休息→作戦準備→作戦のサイクル」を成し遂げてきた部隊の自信が、F-35受け入れに向けた様々な準備の基礎になろうと胸を張っています

また同飛行隊を有する第301戦闘航空団司令官の大佐は、「F-35はその機体特性からSEADへの専門性が高い機種だが、既に多くの正規空軍部隊に配備され、その優れた性能を多様な任務で発揮しており、F-16の後継機種として大いに期待されている」と語り、予備役部隊として最初のF-35を受け入れに万全を期すと決意を新たにしています
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457th EFS2.jpgF-35導入が進んでも、米空軍のF-16がまだまだ仮説敵部隊(アグレッサー部隊)で活躍すること、海外派遣部隊が展開前にACE構想演習を実施すること、中東派遣の戦闘機部隊が7時間もの長時間フライトを普通に行っている事、F-35の専門分野を問われれば、空軍内ではSEAD機として認識されていることなどを、この記事から学びました

まだまだ暑い夏が続きますが、皆さま、お体をくれぐれも大切に・・・

米空軍の戦闘機構成議論
「戦闘機の近未来体制は」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/

次世代制空機NGADの検討状況
「企業選定開始」→https://holylandtokyo.com/2023/05/22/4656/
「欧州型とアジア太平洋型の2タイプ追求」→https://holylandtokyo.com/2023/05/10/4604/
「NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/

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米空軍がベンチャー企業にBWBデモ機を [米空軍]

「JetZero社のZ-5」が2027年までに飛行試験
官民両用で燃料効率・輸送効率大幅向上目指す

Z-5 jetzero.jpg8月16日、米空軍はBWB(blended wing body)形状機体のプロトタイプ機作成と2027年までのデモ飛行実施を、ベンチャー企業「JetZero」社に委託すると発表し、発表の場でKendall空軍長官が「BWB機は燃料消費を大幅に削減するとともに、航空作戦に変革をもたらし、我々の勝利に必要な戦略的優位をもたらしてくれるだろう」とアピールしました

Kendall長官はBWB機に関し、大幅に検討開始を前倒し(当初2030年代に検討開始予定を、2022年末から検討開始に)している「KC-Z」こと将来空中給油機NGAS(Next-Generation Air-Refueling System)への適用を念頭にこれまで語ることが多かったのですが、今回米空軍はNGAS用だとは説明せず、「燃料消費減で気候変動対処」、「民航機との技術共有でWin-Win」とのBWB機の側面を積極的に打ち出しており、

Z-5 jetzero2.jpg米空軍の本件発表声明は「BWB技術成熟を目指すデモ機作成は、国防省と民間航空業界の両方に、将来航空プラットフォームの選択肢を提供することを狙いとしている」、「BWB形状は従来機体から空気抵抗を30%削減して飛行効率を向上させ、航続距離、在空時間、搭載輸送の効率の向上と、兵站輸送のリスク低減に大きく貢献する」とアピールしています

米空軍のBWB機体開発には歴史があり、1940年代後半のNG社「YB-35」や2007-13年にボーイングとNASAがデモ開発した「X-48」で培った技術が、B-2やB-21で実用化され実戦配備に結び付いているところです

Z-5 jetzero3.jpgこのBWB技術を更に旅客機や輸送機や給油機に展開を試みる背景には、「最近の機体構造設計技術、材料技術、製造技術などなどの進歩によって、機体の大量生産に目途が立ちつつある」点があると米空軍声明は説明しています

今回選ばれた「JetZero」社は、既に「Z-5」とのBWB機のイメージ図を2023年春に発表しており、従来型機に比較して燃料消費量を5割削減できる可能性があるとしており、NGAS候補にも挑戦したいと明らかにしている企業です

Z-5 jetzero 5.jpg一般的にBWB機は、エンジンが機体上部に搭載されることから地上への騒音が軽減できると考えられており、現状の民航機と同様のルートを飛行可能と想定され、エンジンへの異物混入リスクも低減できると見られています

このプロジェクトには米空軍の他、NASA、国防省のDIUとOffice of Strategic Capitalも関与していますが、民航機への技術転用が想定されることから民間資本の導入も期待されています
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Z-5 jetzero4.jpgもちろん米空軍として、燃料消費量の6割を占める輸送機と空中給油機の燃料消費効率を高めることは、2022年10月発表の気候変動対処計画「Climate Action Plan」に完全に沿ったものであり、今回の発表姿勢に違和感はありませんが、

「KC-Z」である「NGASへの搭載」を明確に打ち出さなかった背景には、空中給油機「KC-Y」もそうですが、多くの候補企業が名乗りを上げていることがあり、機種選定段階でのゴタゴタにつながらないよう、慎重に技術開発を進めたいとの思惑があるようにまんぐーすは考えています

BWB機開発関連の記事
「ステルス給油機検討開始」→https://holylandtokyo.com/2023/02/13/4281/
「長官が積極発言」→https://holylandtokyo.com/2023/01/25/4156/
「空軍がKC-Yと-Zの検討予定に言及」→https://holylandtokyo.com/2022/08/26/3558/
「BWB機の技術動向調査」→https://holylandtokyo.com/2022/08/05/3508/

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AI搭載無人機XQ-58Aが集大成3時間飛行 [米空軍]

本格無人ウイングマン機CCA開発にソフト投入へ
「基礎技術確認を終え、2023年からCCA本格開発」の一環

XQ-58A ALTIUS.jpg8月2日、米空軍研究所AFRLが5年以上に渡り開発を続けてきた、有人機と協力したり随伴したりして攻撃やISR能力強化を狙うAI搭載無人ウイングマン機を開発する「Skyborg計画」の集大成として、開発した人工知能飛行ソフトを「XQ-58A Valkyrie」無人機に搭載し、7月25日に約3時間にわたる試験飛行をフロリダ州Eglin空軍基地周辺で成功裏に実施したと発表しました

開発責任者のTucker Hamilton大佐は試験成功後に、「この飛行試験成功を持って、機械学習と人工知能技術を総合して開発してきた、近代戦を想定した無人機用の空対空と空対地AIアルゴリズムが、今すぐにでも無人ウイングマン機計画(CCA計画:Collaborative Combat Aircraft)に転用可能なことが公式に示された」と語り、今年2023年に基礎技術開発段階から本格開発段階に入ったCCA計画の順調さをアピールしました

XQ-58A 3.jpg7月25日の3時間の飛行試験内容や具体的な成果は不明で、今後のCCA計画の具体的予定も良くわかりませんが、今年3月末に米空軍のHunter調達担当次官とMoore戦略計画部長が下院軍事委員会で、1000機から2000機導入する前提で検討と3月に空軍長官が語ったCCAを2020年代後半には導入したいと説明し、2030年代初頭導入イメージの次期制空機NGADより先行して導入したいとのスケジュール感を明らかにしていたところです

以下では7月25日を一つの節目と捉え、CCA計画の前段階として米空軍内で行われてきた、無人機用AI開発「Skyborg計画」と、無人機の群れ技術開発「Golden Horde計画」について、簡単に過去記事等からご紹介させていただきます

無人機用AI開発「Skyborg計画」は・・・
XQ-58A 4.jpg●無人機が、戦闘空域でISRや攻撃を、有人戦闘機や他の航空機に随伴し、有人機からの任務割り当て指示を基礎に、無人機自身で状況を判断して任務を遂行可能とする人工知能AIの開発
●(2022年11月にKirsten J. Baldwin米空軍担当次官補は、)これまでXQ-58 ValkyrieやUTAP-22 Mako無人機で自立型AI飛行ソフトのテストを行ってきたが、2023年に別の機体で応用デモ試験を行い、センサー、兵器運用、電子戦攻撃、飛行訓練パターン飛行を確認し、教訓をCCAプログラムに提供したい

無人機の群れ技術開発「Golden Horde計画」は・・・
●敵を混乱させるための、既存兵器を群れとして使用する自立制御(autonomy)の検討。あくまで人が事前に指定した目標群にのみ対処する「交戦規程を徹底させたセミ自立」を狙うもの
Gremlins swarming.jpg●群れがネットワーク化され、共同して機能し、敵をリアルタイムで把握して対応し、敵の反応に応じて最大の効果を発揮して任務遂行を可能にする群れ制御技術開発

●(2022年11月にKirsten J. Baldwin米空軍担当次官補は、)例えばSDB(Small Diameter Bomb)の群れ実験を通じ、無人機単独ではなく群れとして、相互に機体が連携して任務を遂行可能かを検討し、様々に変化する状況にいかに対応するかを煮詰めてきた
●それら成果を「Golden Horde Colosseum」との仕組みで取りまとめ、テストした以外の兵器や新兵器に成果に取り込むため、設計環境やデジタルモデリング環境を提供している
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Kendall NGAD2.jpgCCA導入を、当初の2030年代初めから2020年代後半に前倒しすると、今年3月にKendall空軍長官が明らかにし、前述のように「1000機から2000機導入」を各種見積もりや計画の前提条件にして検討を開始していると述べていますが、対中国が一番強く念頭にあるであろうこの「CCA」の運用を考える時、

有人機も同様の問題にぶち当たっていると思いますが、西太平洋の限定的な航空機展開基盤基地に、「如何にCCAを持ち込み、如何に運用可能な状態を維持し、如何に必要とされる最前線まで到達させ、指揮統制するか」の課題には、未だ解決策らしきものが見つかっていない・・と認識しています。大陸続きの欧州戦線ならまだしも・・・

2022年末のAI無人機と「群れ」研究の状況&方向性
基礎技術確認を終え、2023年度から本格開発へ
2024年度予算案で具現化の方向をより明確に
「同技術を作戦機で装備化へ」→ https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/   

無人ウイングマンCCA関連
「CCAを2020年代後半導入へ」→ https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「空軍長官:NGADが200機、CCAは1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/

Skyborg計画関連
「2機種目MQ-20 Avengerで成功」→https://holylandtokyo.com/2021/07/08/1983/
「Skyborg構想の頭脳ACSで初飛行2時間」→https://holylandtokyo.com/2021/05/17/1489/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holylandtokyo.com/2020/05/24/679/
「豪州もXQ-58に参画」→https://holylandtokyo.com/2020/05/06/664/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
Golden Horde計画関連
「優先項目の無人機の群れ苦戦」→https://holylandtokyo.com/2020/10/12/430/
「SkyborgとGolden Horde計画を優先に」→https://holylandtokyo.com/2019/12/06/2838/

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最近「Power On」試験をB-21が実施した模様 [米空軍]

2022年12月の初披露後の動静不明
年末までに初飛行と低レート生産契約締結予定に変化なしと
インフレ対処費用として国防省から85億円とNG会長

Warden CEO.jpg7月27日付米空軍協会web記事が、米空軍次期爆撃機B-21の開発製造を担当するNorthrop Grumman社・Kathy Warden会長の第2四半期定例会見発言を取り上げ、2022年12月2日の機体披露セレモニー以降、全く動静が不明な「2023年に初飛行予定」の同機について、「最近(第2四半期内)、初のPower On試験を実施し、引き続き初飛行に向け予定通り」との言葉を紹介しています

昨年12月の初披露式で同会長は、「まもなくエンジン稼働や地上走行試験のために、Palmdale工場建物の外に出ることになろう」とスピーチしていましたが、その後7か月経過した今まで、工場外で目撃されたとの報道はなく、様々な憶測が飛び交っているところでした

B-21 Cerem.jpgB-2爆撃機が1988年に初飛行を行った際は、機体の初披露から9か月後の初飛行でしたが、既に明らかにされているB-2と同じルート(Palmdale工場から近傍のEdwards空軍基地まで)をB-21が何時初飛行するのかは全く不明です

米空軍関係幹部は以前、「B-21初飛行の時期を事前に発表することはないだろうが、屋外での各種試験頻度が増加する等の状況から、初飛行が近づきつつあることが推測可能となるだろう」と述べていたところです

Warden2.jpgなおB-21の初飛行時期については、2021年初頃は「2022年中頃」とされ、2022年5月には「2023年に後ろ倒し」と明らかにされ、今年3月になってKendall空軍長官が「更に数か月遅れるが、2023年中には初飛行を実施予定」と語っているところです

NG社のWarden会長は更に、「初飛行後に低レート初期生産(LRIP:low-rate initial production)契約を結ぶことになろうが、昨今の物価高騰もあり、LRIP契約期間中に儲けが出るとは考えていない」、「インフレ対策費として国防省から、2023年用の約85億円を追加予算として提供を受ける予定」と語り、

B-21 B-2.jpg更に、「Digital Thread手法(開発当初からの関連デジタルデータを追跡可能な形で整理管理して製造やトラブル対処の効率性向上につなげる方法)導入により、製造段階では15%の効率性向上を見積もっている」、「インフレ状況については、引き続き国防省と緊密にい意思疎通を図っていく」とも説明しています
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KC-46 solo3.jpg開発の最終段階まで「優等生だった」KC-46が、完成まであと少し段階からのトラブル連続で4年以上も遅れ、第一級不具合を抱えたまま空軍輸送コマンド司令官のリスク覚悟の決断で、2022年9月に無理やり「初期運用体制確立IOC」を宣言した負の記憶がどうしても頭から離れません

米国防省の主要開発プロジェクトの中で、唯一残された「順調」「計画通り」と表現できるB-21爆撃機開発の安寧を、改めて祈念申し上げます

最近のB-21関連記事
「豪州もB-21購入検討していた」→https://holylandtokyo.com/2023/05/15/4588/
「B-21導入による米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/ 
「初披露のメディア扱い」→https://holylandtokyo.com/2022/12/14/4027/
「映像で紹介:B-21初披露式典」→https://holylandtokyo.com/2022/12/05/4015/
「10の視点でご紹介:NG社事前リリース」→https://holylandtokyo.com/2022/12/01/4004/
「12月2日に初披露」→https://holylandtokyo.com/2022/10/24/3796/

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米空軍が搭乗員用新型CBRNマスクを近々投入 [米空軍]

従来装備より格段に快適で装着も迅速に
ただ依然としてCBRN汚染機体への対応は棚上げ

M69 Joint.JPG7月6日付米空軍協会web記事は、米空軍が数十年更新されてこなかった大型機搭乗員用の新型CBRN対処用マスク&スーツ(化学、生物、放射能、核兵器汚染対処マスク&スーツ)を6月に空軍内に披露し、7月に入ってメディア発表したと紹介しています

新しいCBRN対処マスク&スーツは正式名称が「M69 Joint Service Aircrew Mask Strategic Aircraft assembly」と長いので、マスクと全身スーツ等を合わせて「M69 system」と略して記事では紹介されています。

M69 Joint2.jpg従来の「Unit-19P Aircrew Eye and Respiratory Protection (AERP)」が正確に何時から使用されているのか確認していませんが、「数十年前:decades ago」から使用されていたようで、匿名のC-17パイロットによれば、「分厚いゴミ袋を全身にかぶせられて飛行機を操縦しているようなものだ」「暑く霧が立ち込め、状況認識が大幅に低下し、飛行中に使用するのは非常に危険だ」との代物だったようです

2018年からHH-60W救難ヘリやC-130H輸送機で試験使用が始まり、現在では約2万セットが米空軍部隊に配分されて最終運用確認が行われており、2024年までには初期運用態勢確立IOCが宣言される予定だそうですが、試験着用した輸送機搭乗員は「装備更新の遅れが気になっていたが、M69は素晴らしい。この装置は従来の AERP よりも何光年も先を行っている」と大喜びで感想を語っています

M69 Joint5.jpg新旧マスクシステムの具体的な性能差は公開されていませんが、従来マスク全体の着用には約10分必要だったところ、M69システムでは全身スーツを含めても2分強程度で着用可能で、着用感も涼しく、視界も良好で、かさばらないことから狭い機内での活動にも適しており、対中国など強固に防御された厳しい空域での作戦活動にも対応できる部隊レベルでも高評価な模様です

CBRN汚染された機体の扱いは?
ただ、搭乗員を守るマスクシステムが改善されてみると、CBRNで汚染された機体の扱いについて進展がないことが、改めて課題として米空軍内で再認識され始めているとのことです

C-17 R11.jpg例えばB(生物兵器)対処には、配備数は限定的ながらもコロナ対策で活用され高評価だった、大型機全体を大型シェルターに入れ、湿度管理した60-80度の高温空気を送り込んで、機体装備には影響を与えずにウイルスや細菌を消毒する「Joint Biological Agent Decontamination System (JBADS)」が存在しますが、「CRN」対処は手つかずの状態が現実のようです

米空軍の基本マニュアルには、「大型機の除染が完了するまで、他の航空機から隔離したエリアで駐機させ、空輸任務から除外する必要がある」と記されているようですが、汚染された飛行場に着陸した機体に搭載された乗員と貨物の具体的な扱い方や、極めて緊急度の高い辞任や貨物の場合の対応など疑問は尽きない状態だそうです。

M69 Joint4.jpgまた、汚染された輸送機等の上空通過は、国際的な基準のない現状では同盟国であっても拒否する可能性があり、着陸となると不可能と考えざるを得ないのが現状であり、移動そのものが困難な可能性がある点でも根本的な課題が残っています

それにも増して、1機300億円近いC-17輸送機をCBRN環境で作戦させ、「汚染機体」とする判断が米軍指揮官に可能なのか・・・との意見が、匿名のC-17操縦者から聞かれたと記事は伝えています

救難や患者空輸や気象観測の課題
「気象部隊が対中国に備えIWOSを」→https://holylandtokyo.com/2023/07/04/4807/
「対中国に備える患者空輸医療チーム」→https://holylandtokyo.com/2023/06/27/4772/
「救難救助検討は引き続き迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/

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空飛ぶレーダーE-7の今後の能力向上開発を米英豪共同で [米空軍]

ロンドンに3空軍トップが集まり合意署名式
米空軍への2027年初号機納入の前倒し策か
豪6機運用中で、英3機と米26機が導入予定のE-7
日本のE-767の今後の維持整備懸念がさらに加速

E-7 statement.jpg7月17日、英国西部のFairford英空軍基地で開催中の航空ショー「Royal International Air Tattoo」の会場で、米・英・豪の3か国空軍トップが一堂に会し、E-7早期警戒管制機の「今後の能力向上開発、試験評価、相互運用性向上、維持整備協力、教育訓練及び安全情報の共有」を3国が緊密に協力して行う旨を文書化した「Joint Vision Statement」に署名しました

E-7 statement3.jpgE-7早期警戒管制機については、豪空軍が既に6機を導入済運用中で、英空軍は2024年運用開始予定で3機発注済、米空軍は今年2月末にボーイング社と2027年に初号機を受領し、計26機を導入する契約を結んだところですが、前述の内容に3か国が協力して取り組むことで、米空軍の導入を少しでも前倒しさせ、3か国全体で同機の能力向上を円滑かつ少しでも安価に進める事を狙った取り組みと見られています

「Joint Vision Statement」の詳細は明らかにされていませんが、今年2月にはKendall米空軍長官が英国訪問時に英国防大臣と本件を協議し、最近ではBrown米空軍参謀総長が豪州に米空軍関係者を派遣し、豪が運用中のE-7で訓練に参加させたりの実質的協力が始まっており、空軍省幹部も米英間でE-7試験飛行データの共有を開始していると語り、ボーイング幹部も米国への機体提供を早める可能性に言及し始めていたところでした

E-7 statement2.jpgそれにしても、軍種レベルで特定の既存機種の能力向上に共同体制を構築する事例は珍しく、米軍事メディアは「画期的」とか「ground-breaking declaration」との表現で17日の英国での合意署名を報じています

この3か国は、2022年にAUKUSを結成して豪州への攻撃型原子力潜水艦提供を確約し、極超音速兵器や最先端技術開発での協力にも同枠組み拡大発表して「蜜月関係」を内外に示していますが、この「E-7」案件がAUKUS案件扱になるかは不明です。

E-7 statement4.jpgもしかしたら、日常業務ベースで当たり前に行われてきた情報共有を、わざわざ「Joint Vision Statement」にして署名式でアピールしただけかもしれませんが、仮にそうであったとしても、「不動産バブル崩壊」を契機に、経済面での負のスパイラルが加速している中国の「傷に塩を刷り込む」効果抜群の合意署名式典だと思います

E-767.jpgただし、E-7導入加速とE-3退役の前倒し可能性に関連して気になるのが、航空自衛隊が運用する早期警戒管制機E-767(E-3と同種のレーダーを搭載)の今後の維持整備問題です。 E-3が早期退役することで、E-767の部品入手がますます困難になったり、ボーイングに部品価格を吊り上げられて「ぼったくられる」可能性を危惧しています。

E-7関連の記事
「E-7とE-3違いを概観」→https://holylandtokyo.com/2023/03/30/4447/
「初号機を2027年納入契約」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/4358/
「導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「E-3は2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711/

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米空軍史上最大の空輸演習が初めて西太平洋で [米空軍]

「Mobility Guardian」演習が初めて海外で
Five Eyes(米英加豪NZ)と仏と日本が参加
ハワイ・グアム・豪州・日本の基地に展開訓練

Mobility Guardian.jpg7月5日、米空軍輸送コマンドが今回で4回目となる隔年開催の空輸&空中給油演習「Mobility Guardian 2023」を初めて海外(西太平洋地域)で開始し、参加同盟国(Five Eyes(米英加豪NZ)と仏と日本)空軍と共に、過去最大規模だった2019年の約3倍の規模で、対中国のためのACE構想(Agile Combat Employment)や多能力兵士養成(Multi-Capable Airmen)を支える実験的な訓練を7月21日までの予定で実施しています

Mobility Guardian2.jpg米空軍輸送コマンドからの参加は兵士約3000名と輸送機・空中給油機あわせて70機と公表されていますが、実際には関連航空機が展開するハワイ・グアム・豪州・日本の基地等々で、同盟国兵士等も含め15000名が関連する史上最大の米空軍空輸給油演習となっているようです

3日付空軍輸送コマンドの演習紹介記事も、6日付Defense-News記事も、具体的な演習の設定や予定や同盟国軍の参加規模等について触れていませんが、輸送コマンド記事は空輸や空中給油のほかに「患者空輸」「グローバル空輸支援システムGAMSS」「指揮統制」「人道支援・被害復旧」を主要な演習項目として挙げ

Mobility Guardian4.jpgDefense-News記事は参加兵士の声として、「空軍輸送部隊の新しい展開モデル「AFFORGEN」を実際に試すことに興味を持っている。発電機を抱えて展開し、通信を確立してテントを設営し・・・と言った環境に応じた対処を迫られるが、将来の戦いを考えればこんな訓練機会がもっと必要だ」とのC-17搭乗員の言葉を取り上げ、演習の雰囲気を伝えています

Mobility Guardian3.jpgまた空軍輸送コマンドのMike Minihan司令官は、「Mobility Air Force(MAF)」との言葉を用い、対中国作戦でのACE構想実現に必要な空輸&空中給油所要に対応可能なレベルに空輸能力を高めるため、同盟国アセットを巻き込んだ関連体制強化を図りたい、と本演習に向け抱負を述べています

過去3回の「Mobility Guardian」演習がどのようなものだったか把握していませんが、今回の演習計画担当の中佐は「歴史的にこれまで輸送コマンドは、中東地域での輸送任務に焦点を当ててきた」、「西太平洋地域は全く異なる環境であり、演習の焦点も全く異なる。TTP(戦術・技術・手順)全てでシフトを求められている」と語っており、

Mobility Guardian5.jpg対中国念頭の本演習は初めてなのかもしれません。(前回2021年演習はコロナの渦中で、今年の1/7規模だったようですので、対中国を具体的にイメージできるレベルの設定が困難だったのかも・・・)

今後「Mobility Guardian 2023」で検索いただくと、様々な画像や映像が公開されていくと思いますので、ご興味のある方はご自身でご確認ください。

Mike Minihan司令官関連の記事
「2025年に中国と戦う」→https://holylandtokyo.com/2023/01/31/4241/
「KC-46A空中給油機が36時間連続飛行」→https://holylandtokyo.com/2022/12/12/3974/
「KC-46を操縦者1人で試行運用」→https://holylandtokyo.com/2022/11/02/3881/
「不具合抱えたままKC-46運用開始宣言」→https://holylandtokyo.com/2022/09/21/3688/

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大型機の外部点検時間をドローンで1/8に [米空軍]

ボーイングと無人機企業がAI活用でC-17用披露
外部故障発見率は人間整備員を凌駕
ドローンカメラ情報を記録し機体毎の時系列記録も

Near Earth C-17.jpg6月27日、ボーイング社とドローン製造企業「Near Earth Autonomy」が、通常約4時間必要なC-17の飛行前外部点検を、ドローンに搭載したカメラなどセンサーとAI技術を活用して行うことで、点検時間を1/8の約30分に短縮可能なAI活用システムを開発したとお披露目し、米空軍が試験中だと明らかにしました

両企業関係者は同システム開発の目的を、「このシステムは人間整備員に取って代わるものではなく、機体に何が起こっているかの予備情報を提供することで、人間整備員に何に注目すべきで、どんな検査用具が必要になりそうかの準備を効率アップし、整備技量全体の向上に貢献する事も目的としている」とヴァージニア州で行われた記者会見で説明しています

Near Earth C-173.jpgまた開発者たちは性能について、人間による手間のかかる大型機の外部点検では故障発見率が約50%だが、同システムによる機体外部点検では故障発見率が75-76%だったとアピールしたようです

システム開発のポイントについて企業関係者は、検査用ドローンが機体との位置関係を常に把握する事で、ドローン搭載センサーを最適活用可能にしていると説明し、将来的には機体毎に機体全体の映像を3D形式で時系列的にデータベース化し、整備員がいつでもどこからでもオンライン上で、各機体の見たい部位の過去からの経年変化を確認できるようしたいとも語っています

Near Earth C-172.jpgまた同システム開発はC-17を対象として開始し、現在はC-5輸送機にも対応可能なプログラムまで準備したが、今後は空中給油機であるKC-135や KC-46にも拡大していく予定だと会見で明らかにしています

更に、ドローン搭載器材を大型化・高性能化することで、機体外部表面の検査だけでなく、機体の「Subsurface(機体表面の内部!?)」のチェックも可能になるように取り組んでいくと関係者は語っています
///////////////////////////////////////

Near Earth C-174.jpgこの大型機の外部検査ドローンシステムを、米空軍が現時点でどのように評価しているかや、人間整備員による点検との組み合わせをどのように考えているのか不明ですが、米空軍が対中国で取り組むACE構想(Agile Combat Employment)で追及している分散運用先での作戦活動の省人化に貢献できるとも関係者はアピールしています

高所作業を伴う危険な大型機の点検作業を、ドローンと搭載センサーとAIを組み合わせて安全かつ効率的に行う技術は、民間旅客機分野だけでなく、橋や道路や建物など様々な分野への応用が考えられます。既に多くの欧米企業が参入している分野の様ですが、官民の技術を結集しての発展を期待したいと思います

無人機関連の記事
https://holylandtokyo.com/?s=%E7%84%A1%E4%BA%BA%E6%A9%9F

ACE構想関連の記事
https://holylandtokyo.com/?s=ACE%E6%A7%8B%E6%83%B3 

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ボーイングがKC-46や輸送機の防御システム開発発表 [米空軍]

最近話題のAurora Flight Sciences社の技術で
つなぎ給油機「KC-Y」の確保狙いの新戦術か・・・

Boeing Aurora.jpg6月20日、パリ航空ショーでボーイング社と同社傘下で多彩な新技術開発で話題の「Aurora Flight Sciences」が、KC-46や将来給油機&輸送機に搭載する新型の先進防御システム開発計画を披露した模様です。

結局発表イベントでは、企業秘密を理由に開発計画の細部や投資額についてボーイング報道官は言及しませんでしたが、「KC-46Aは既に空中給油機として比類なきレベルの防御能力を装備しているが、ハイエンド紛争での生存性と有効性をさらに向上させるため、また次世代プラットフォームに将来必要な能力を付与するため、米空軍等と共に開発に臨んで必要時に提供できるよう準備していく」と同社は説明しています

Boeing Aurora 5.jpg言うまでもなく背景には対中国を念頭に置いた、強固に防御された「Contested Area」で活躍できるアセット開発能力のアピールですが、喫緊の課題として、米空軍が避けたいボーイングKC-46VSロッキード&エアバスLMXTで「ドロ沼」機種選定を避けるための取り組みとも解釈できるでしょう

米空軍は元々、KC-46(KC-X)を179機、つなぎ給油機(KC-Y)を150機、ステルス機想定とも言われる「KC-Z」を75機調達する構想を持っていたと言われていますが、既につばぜり合いが始まっている「遺恨山盛り」のつなぎ給油機(KC-Y)選定が、ボーイングKC-46VSロッキード&エアバスLMXTで「ドロ沼」化必至と見られていることからKC-Y機種選定は行わず、

Boeing Aurora 4.jpgKC-46改良型で乗り切ろうと空軍長官は考えている模様で、加えて、75機予定していたつなぎ給油機(KC-Y)の調達機数を半減し、NGAS(next-generation aerial refueling system)とも呼ばれる生存性の高い性能を狙う「KC-Z」を、2030年代後半に投入時期を早める方向に転換したと2023年初に報じられています

なおKC-46が既に装備している防御システムについてボーイングは、電磁パルス防御、生物化学兵器防御、赤外線防御、特定周波数への警報、操縦席エリアの装甲などを上げていますが、このような発表イベントを通じて新たな技術開発をアピールしつつ、つなぎ給油機(KC-Y)がKC-46近代化改修型で落ち着くように「場の設定」に余念がないと理解してよいでしょう

Boeing Aurora 3.jpgまたボーイングが2017年に買収し、今回の計画にも参画している「Aurora Flight Sciences」は、DARPAと協力して「動翼の無い新型期待制御機X-65」開発や「無人機に搭載するAI空中戦パイロット」開発のほか、無人機対処兵器開発にも関与している革新的技術に特化した話題の新興企業で、目が離せない印象です。

ただ、KC-46給油機にしろ、T-7A練習機にしろ、大統領専用機にしろにしろ、何をやってもうまくいかないボーイング社に買収され傘下に入ったことが、唯一にして最大の懸念事項だと申し上げておきましょう

Aurora Flight Sciences社関連記事
「大型水上離着陸機の候補」→https://holylandtokyo.com/2023/02/15/4268/
「動翼の無い航空機X-65イメージ公開」→https://holylandtokyo.com/2023/05/18/4644/
「小型無人機対処装備を求めオプション試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「8企業がAI空中戦でF-16人間操縦者に挑む」→https://holylandtokyo.com/2020/08/19/528/

最近のKC-46関連記事
「36時間連続飛行飛行運用」→https://holylandtokyo.com/2022/12/12/3974/
「KC-46を操縦者1人で試行運用」→https://holylandtokyo.com/2022/11/02/3881/
「不具合抱えたままKC-46運用開始宣言」→https://holylandtokyo.com/2022/09/21/3688/
「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤り」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/

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米空軍気象部隊が対中国に備えIWOSを [米空軍]

重量90㎏のTMOSから20㎏弱の太陽光利用装備へ
でも基本は前線の一等兵が大佐の質問に対応する世界

IWOS.jpg6月28日付米空軍協会web記事が、対中国などに備えて米空軍が取り組むACE構想(Agile Combat Employment)に対応するため、米空軍気象予報部隊が、現状の携行型気象観測装置TMOS(約90kg)を、より軽量で太陽光発電利用可能なIWOS(Integrated Weather Observation System 20㎏弱)へ換装する等に取り組むなどの様子を紹介しています

同記事は米空軍気象部隊の軍曹クラスへのインタビューを元に構成されており、気象部隊全体をカバーする大きな構想への言及はありませんが、「救難救助部隊」や「患者空輸部隊」などと並び、観測網がまばらな西太平洋でカギとなる部隊であり、米空軍だけでなく米軍全体を支えるその部隊の活動の一端を伝えている点で興味深かったのでご紹介しておきます

6月28日付米空軍協会web記事によれば
Weather Sq.jpg●現在の米空軍気象部隊が展開先の気象観測に用いるTMOS(Tactical Meteorological Observing System)は、気温、風速、露点等々の気象観測装置だが、関連の付属装置や接続ケーブル等を含めると90㎏以上の重量となり、航空アセットの離着陸先である様々な場所の気象観測に飛び回る気象部隊兵士にとって相当な物理的な負担となっている
●飛行部隊の要求に応じ、TMOSを様々な展開先に運搬して組み立て設置し、気象観測と予報を行う気象部隊兵士は約9割のケースで軍経験3年程度の一等兵クラスであり、彼らが展開先の飛行運用指揮官である少佐から大佐パイロットに気象情報を提供し、質問に答えることになる

IWOS2.jpg●気象部隊の展開支援先は様々で、米空軍部隊の支援だけでなく米陸軍ヘリ運用支援のため、1か月間にわたる演習場生活を陸軍部隊と共にすることもあり、「ペットボトルを活用したシャワーやウェットティシューで体を拭く生活を30日過ごす貴重な経験」や、
●アラスカの氷河地域に展開し、「70年以上前に墜落した空軍輸送機の残骸と搭乗者約50名の収容ヘリ運用を支援した経験」など、特殊部隊さながらの多様な環境での任務遂行を、軍曹指揮官で担当することも珍しくない部隊である

Weather Sq2.jpg●欧州や米本土であれば、前線展開部隊の観測装置がなくても、官民が設置している様々なセンサーや気象レーダー情報の活用が可能だが、中東やアジア太平洋地域では一般に流通している気象情報が限定的なケースが少なくなく、「Limited Data Forecasting Techniques」手法を総動員しての対処が求められる
●また本格紛争を想定した場合、活動の命脈となる「通信確保」が安定しない環境も考慮する必要がある。組織の現場レベルへの判断の権限移譲が米空軍の大きな方針であるが、必要な現地の気象情報を通報するには「情報の伝達」が不可欠で、全ての職種共通の課題として残されてい
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IWOS3.jpg台湾有事の際、第一列島線上の気象情報が最低限必要だと思いますし、日本にも気象情報データや観測上の努力が求められることも想定すべきでしょう。

米軍の「救難救助部隊」や「患者空輸部隊」の支援と同じように、気象情報のような作戦の基礎を支える面での活動も、日本が備えるべき分野でしょう

救難救助や患者空輸の大問題
「対中国に備える患者空輸医療チーム」→https://holylandtokyo.com/2023/06/27/4772/
「救難救助検討は引き続き迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/

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対中国に備えた患者空輸医療チームの取り組み [米空軍]

負傷者空輸量の多くなかった中東20年から意識転換
患者トリアージなど厳しい選択を迫られるケース増に備え
中東からの空輸の2倍以上の飛行時間も課題

911thAE.jpg6月16日付米空軍協会web記事が、過去20年間の中東での戦いとは異なる対中国本格紛争に備え、米本土を拠点とする第911患者空輸医療隊が部隊レベルで取り組む様子を報じ、アジア太平洋での戦いの厳しさを改めて紹介しています

第911患者空輸医療隊は、多くの場合C-17に応急措置を施した負傷兵を乗せ、前線基地から欧州や米本土の大規模医療施設に移送する役割を担っている部隊で、最大60名患者用担架ベッドを設置できるC-17輸送機を、

911thAE2.jpg通常は患者空輸を2名の看護師と3名の衛生技術兵(medical technicians)、又は3名の看護師と4名の衛生技術兵で担当が基準ですが、これを対中国では1名の看護師と2名の衛生技術兵で担当せねばならない可能性が見積もられているようです。

また、患者の空輸準備や飛行中の様態急変時に、この看護師と医療技術兵は無線等を通じて医師・救急ケア専門の看護師・呼吸器専門家から編成されるCritical Care Air Transport Teams (CCATTs)に助言を求めるますが、本格紛争時には通信途絶も予想されることから、より厳しい判断を患者空輸医療隊の搭乗員が求められる事も想定されています

911thAE6.jpgこのような厳しい場面を想定し、同部作戦担当幹部であるFoster中佐は、月に2回以上「不足事態対処」の訓練を組み込み、例えば、離陸した後に、追加の患者輸送を命ぜられて引き返して対処したり、症状の軽い患者に重症患者の「止血」措置支援を「同意を得た上で」お願いする訓練等々を行っていると語っています

また、2021年8月のアフガニスタンからの脱出飛行の際に、数百人が押し込まれたC-17輸送機内をたった一名の医療技術兵で対処し、避難民の協力も得て「出産に成功した事例」等も教材に、予期せぬ事態での柔軟な対処や、原点に立ち返って最善を尽くすメンタル面での準備にも取り組んでいるとも説明しています

911thAE4.jpgもちろん部隊独自だけでなく上級司令部とも連携し、緊急事態での搭乗医療チームへの権限移譲をどこまで可能にするか等の協議や、有事に使用可能な輸送機が限定されることを想定し、他の搭載物資(兵員、弾薬、物資等)と「患者を混載」する要領等について検討も行っている模様です

またFoster中佐は、アジア太平洋からの空輸は、中東からの作戦に比して長時間フライトとなる事への難しさにも触れ、「例えば日本から米本土へ空輸する場合、(カタールからドイツへの空輸の2-3倍の)12-15時間フライトが予期されるが、これは搭乗員にも患者にも極めて厳しいフライトとなる」と述べています

911thAE5.jpg更に同中佐は、アジアの同盟国軍にも患者空輸組織が存在しているが、長距離をそれなりの規模で空輸可能な組織は米空軍のみであり、同盟国負傷への支援も考慮すべき課題だと触れています

その他、米空軍の輸送機不足が明白になっている中、同盟国の輸送機を使用した患者空輸訓練にも着手しているとし、例えばカナダ空軍保有のC-130より小型の「Twin Otter」輸送機で訓練した経験にも触れています
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911thAE3.jpg日本のメディアや専門家が取り上げることはありませんが、ウクライナでの戦いで表面化し、改めて重要性が顧みられることとなった対中国作戦での「弾薬不足」や「輸送能力不足」に加え、撃墜や撃沈された航空機や艦艇の乗員を救出する「救難救助体制」の不備や、今回ご紹介した「救急医療や負傷者輸送能力」の不足は、

有事になって表面化した場合、米国世論に大きな影響を与え、米国政府として戦いの継続是非の判断を迫られる極めて重要な要素だと思います。

同盟国の負傷兵空輸にまで頭を使ってくれている「第911患者空輸医療隊」に甘えることなく、日本もこれを契機に、何ができるか、何をすべきかをチェックすべき課題だと思います

関連で対中国作戦の「救難救助体制」不備
「救難救助検討は引き続き迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/
「米空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/

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インドネシアにもB-52が2機初展開 [米空軍]

Cope West演習に参加・中国から遠い場所ですが
中国とも近く、米国に塩対応が多いインドネシアですが・・・
天皇皇后両陛下のご訪問とスウェーデンB-1初展開と同タイミング

B-52 Indonesia2.jpg6月19日、インドネシアに米空軍のB-52戦略爆撃機が史上初めて展開し、12日から22日の間で実施されている米国との戦闘機メインの空軍演習「Cope West」に参加すると、米太平洋空軍報道官が発表しました。スウェーデンにB-1爆撃機が2機展開したのと同じ日の出来事でした・・・

インドネシアに展開(Kualanamu Airport)したB-52は、定例の爆撃機ローテーション派遣「BTF:Bomber Task Force」の一環として、6月14日に米本土(Minot Air force Base, N.D)からグアム島のアンダーセン基地に約200名の要員と共に展開した4機の一部で、乗員の時差解消もそこそこに、インドネシアに初着陸したようです

B-52 Indonesia.jpgインドネシアは、多数の島々を合わせると世界で10番目の面積を有し、人口では世界4番目で、世界最大のイスラム国家との位置づけにある国ですが、経済成長著しい東南アジア諸国においても、有望な市場として期待される国の一つで、日本企業の進出も盛んな国です。

難点は、対中国姿勢が不明瞭で、中国と米国など西側諸国を天秤にかけているような「イライラさせる国」である事で、日本との関係では新幹線導入を「どたキャン」し、金に目がくらんで中国製を選択して大後悔している様子が日本のSNSで「面白おかしく」報じられていましたが、突然のびっくり仰天、B-52展開と同じタイミングで日本の天皇皇后両陛下が久々の海外訪問先として選ばれ、現地での歓迎模様が大きく報じられたところです

B-52 Indonesia3.jpgB-52の初展開を報じた21日付米空軍協会web記事は、ハーバード大研究機関の「歴史的に西側と中国の両方との関係維持を目指してきた国であり、米中間の緊張が高まった際には、インドネシアの非同盟姿勢が試されるだろう」との分析を紹介し、

更に米空軍大学教授の「情勢緊迫時に米国と中国が軍事的対立状態に至った場合にも、似たような周辺国と共に米国側について参戦するとは考えにくいが、課題や懸案は存在しても、意志と創造的な努力で課題を乗り越え、関係を強化することが可能だ」との4月の論文の一節を紹介しています
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B-52 Indonesia4.jpg一方で5月11日には、同国を訪問した米陸軍参謀総長に対しインドネシア国防相が、「インドネシアは全ての国、特に全てのmajor powers国との関係維持を望んでいる」と強調するなど、「非同盟」を貫く同国の姿勢は、そう簡単には変わらない(変われない)のかもしれません

最近よくASEAN諸国の対米姿勢をご紹介していますが、フィリピンがマルコスJr大統領就任後、米政府報道官が「驚くべき:stunning」と表現したほど米国寄り姿勢を鮮明に打ち出したほかは、インドネシアもタイ(F-35購入希望を米が拒否)も動きが鈍いです。

blinken China.jpgただ、習近平や中国外交トップがブリンケン米国務長官との会談を6月21日に受け入れるなど、中国に毒された日本のメディアが報じない中で、「不動産バブル崩壊で中国経済大失速&大混乱」を受け、ひたひたと中国情勢のベースは変化しつつあるような気がします

最近の米インドネシア関係
「インドネシアは米国に塩対応継続」→https://holylandtokyo.com/2023/05/24/4640/
「戦闘機の機種選定」→https://holylandtokyo.com/2022/01/06/2581/
「米軍が活動拠点求め」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-16-1

フィリピンとタイの米国関係関連の記事
「米比が33年ぶりに比で空軍演習」→https://holylandtokyo.com/2023/05/08/4597/
「米比2+2とBalikatan演習」→https://holylandtokyo.com/2023/04/20/4524/
「タイがF-35購入拒否される」→https://holylandtokyo.com/2023/05/30/4702/

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米空軍輸送機がGPS障害に備え地磁気航法で飛行試験 [米空軍]

単なるコンパス飛行ではなく地磁気の誤差解析で
機体装備が発する電磁気ノイズ除去にAIを導入し

MagNav project3.jpg6月7日付米空軍協会web記事が、米空軍がMITや民間AIソフト会社等々と協力し、GPSシステムが妨害や被害を受けた際の航空機航法の代替として、地球の各地点が発する微妙に異なる磁気を探知して自らの位置情報を導く「Magnetic Navigation (MagNav) project」の状況を紹介し、5月11-15日に西海岸で「量子磁気センサー:quantum magnetic sensor」を搭載したC-17輸送機が飛行試験を行ったと報じています

MagNav project.jpg一般に現代の航空機は、外部からの信号に依存せず、機体搭載センサーで機体の進行方向や速度や加速度を感じて合算することで自分の位置を更新把握し続ける慣性航法装置(INS:inertial navigation system)を主に使用していますが、このINSは時間と共に誤差が大きくなることから、定期的にGPSでINSの誤差補正を行いながらナビゲーションを行います

ただGPSはGPS衛星の物理的破壊や妨害電波やサイバー攻撃に脆弱であり、対中国等の本格紛争に備えてGPSの代替を求め、「天体航法:celestial navigation」や「テレビ・ラジオ・WiFi等々の電波を利用する航法:signals of opportunity,」や「terrain-relative navigation」などが研究されていますが、「MagNav project」は各地点の地殻の相違が生む磁気の誤さを分析して位置を割り出す手法だということです。

MagNav project5.jpgこの手法を航空機で利用する難しさの一つは、現代の航空機が通常搭載しているコンピュータ、通信機、照明器具等々の電気器具が発する電磁気の中で、地表が発する僅かな磁気の変化を読み取ってリアルタイムに分析し続けることにありますが、「MagNav project」では機械学習(machine learning)で能力を高めたAIに機体電磁気ノイズを除去させ、微弱な地表の磁気とその変化を正確に抽出する仕組みに挑戦したとのことです。

5月中旬の「量子磁気センサー:quantum magnetic sensor」をC-17に搭載した飛行試験は成功したようですが、軍用航空機が「MagNav systems」を搭載して任務飛行を行うには、まだまだ長い道のりが待っていると米空軍の担当少佐が語っています
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MagNav project4.jpg「MagNav systems」の仕組みが記事からは良く把握できませんが、機体搭載の「量子磁気センサー:quantum magnetic sensor」が探知した情報から、AIの手を借りて機体の電磁気ノイズを除去し、事前に作成しておいた飛行したい地域の「magnetic mapping」と照合するような形で自分の位置を割り出す様なイメージを持ちました

記事はまた、「天体航法:celestial navigation」等々との並行&融合使用で航法制度を高めることも今後の課題のように表現しており、まだまだ成熟が必要な技術との印象ですが、地道にいろんな研究を米国はやってるんだなぁ・・・と感心した次第です

MagNav project6.jpgちなみに参画しているのは、「MIT’s Lincoln Laboratory」, 「the Air Force Research Laboratory Sensors Directorate」,「the Air Force Institute of Technology Autonomy and Navigation Center」「the Software-as-a-service company SandboxAQ」・・・だそうです

GPSなどの被害を前提に訓練せよ
「米陸軍兵士がGPS無しの訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
「なぜ露はウでGPS妨害しない?」→https://holylandtokyo.com/2022/07/26/3497/
「米海軍将軍:妨害対処を徹底」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-21
「空軍OBも被害対処重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23-1
「被害状況下で訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23

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米空軍が19年ぶりに空対空戦闘競技会復活へ [米空軍]

通称「William Tell」競技会が9月中旬に
アジア太平洋での戦い(VS中国戦闘機)を想定
F-35、F-22、F-15部門で「Top Gun」を争う
過去27年間で1回のみ開催の歴史の遺物ですが・・・

William Tell.jpg6月7日付Defense-News記事によれば、米空軍が戦闘機による空対空戦闘競技会「William Tell」を2004年以来19年ぶりに開催することを発表し、9月11-15日の間に南部ジョージア州の州空軍基地「Savannah Air National Guard Base」で開催されることになった模様です

空軍戦闘コマンドACC報道官等によれば、競技会はアジア太平洋での戦いを想定し、敵の防空兵器の脅威下で、敵の熟練操縦者が搭乗する最新鋭戦闘機との対戦が場として設定され、F-35、F-22、F-15部門で最優秀トロフィーと「Top Gun」の称号を目指して競技が繰り広げられるようです

William Tell 2.JPGチーム構成は大尉のパイロットをリーダーとする10名から14名で編制(機種毎に異なる)され、各チームは8名までの操縦者、2名の情報員、3名の兵器搭載整備員で構成され、戦闘機保有の航空団から指揮統制要員各3名も参加する模様で、空中戦闘競技以外に、兵器搭載部門、指揮統制部門、情報分析部門の競技会も同時に行われるようです

空中戦部門で誰が「敵機」を演じるのか明らかにされておらず、「第4及び第5世代機が対抗機を行う」とのみ同報道官は言及しており、F-16やミラージュF-1で仮設敵機役を行う民間会社「Top Aces」や「Textron subsidiary ATAC」の参加や、F-16を無人機に改修したQF-16の参加が噂されているようです

William Tell 4.jpgまた同報道官は、「敵機に対する攻撃と防御の技量が試される」「伝統的なバナー標的への空対空ガン射撃も行われる」「僚機と協力して既成概念にとらわれず最もよく考えたチームがfighter integration teamとして表彰される」「個人賞とチーム賞を設ける」と明らかにしています
///////////////////////////////////////////

同協議会は冷戦初期の1954年に第1回目が開催され、概ね隔年で開催されてきたようですが、1996年を最後に開催が見送られ、2004年に同競技会50周年を機に1回だけ実施されていますが、その後は再び休眠状態が続いていたものです

William Tell 5.JPG湾岸戦争頃からの航空戦の実態を踏まえ、1996年には「休眠状態」にして事実上葬ったはずの古式騒然とした「空中戦競技会」を、夏に退役予定の「戦闘機族のボス」Mark Kelly戦闘コマンド司令官が「置き土産」として強引に復活させたような気がいたします

米空軍のみならず米軍全体が中国の巡航&弾道ミサイル攻撃脅威を見据え、分散運用や機敏な機動展開を繰り返す作戦に力点を移そうと取り組んでいる最中に、「アジア太平洋での先端戦闘機との戦いを想定し」とか言われても、「バナー標的の戦闘機ガン射撃競技」と言われても、なんとなくすき間風が・・・の雰囲気です。開催場所も、各種評価装備や広大な空域確保が可能とは思えないローカルな州空軍基地ですし・・・

William Tell 3.jpgあくまで邪推ではありますが、最近若者に人気がなく志願者が急減し、コロナ沈静化で若手操縦者の民間航空会社への転職が増加する中、パイロット募集&パイロット引き留め策の一つと受け止めました。 ところで航空自衛隊は、今でも戦闘機の戦技協議会を実施しているのでしょうか?  いろんな意見があると思うので、

人工知能AIが人間パイロットを圧倒する現実
「DARPAがAI無人機空中戦試験」→https://holylandtokyo.com/2023/02/27/4326/
「企業AIが模擬空中戦でF-16操縦者を圧倒」→https://holylandtokyo.com/2020/08/19/528/
「米空軍研究所AFRLは2021年に実機で」→https://holylandtokyo.com/2020/06/10/620/
「無人機含む空中戦を支えるAI開発本格化」→https://holylandtokyo.com/2020/05/22/678/

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2機のF-35再発進(給油&給弾)を12名で [米空軍]

多能地上支援整備員MCAによる少人数チームの試行演習
同チームは機敏に移動し航空戦力の分散運用を支援する構想
「任務成功のため、より多くのリスクを甘受する」

Agile Flag 23-1 3.JPG6月2日付米空軍協会web記事は、ユタ州Hill空軍基地所在でF-35を運用している第355戦闘航空団が、12名の多様な能力を備えた地上整備員(Multi-Capable Airmen (MCA))で編成された特別チーム(mission-generating element)が、展開先の施設不十分な分散運用基地に展開した想定で、F-35戦闘機2機の再発進準備(給油&弾薬搭載)を行う訓練を、ACE(Agile Combat Employment)構想実現に向けた実験演習「Agile Flag 23-1」でこの初春に実施したと報じています

Agile Flag 23-1 2.JPGACE構想は、敵からの弾道・巡航ミサイル攻撃等で我の大規模作戦根拠飛行場が被害を受けることを想定し、戦力を施設不十分な地域内の基地に航空戦力を分散して柔軟に強靭に戦いを継続する考え方で、分散運用先の辺鄙な基地で、少人数で作戦機の再発進準備や燃料&弾薬の補給を行う体制が必要で、燃料弾薬の輸送や事前集積、必要な人員機材の輸送、少人数で対処するための多能力兵士育成、分散運用状態の迅速な把握と指揮統制などが求められる戦い方です

同演習では、ジョージア州の米陸軍Hunter航空基地を12名の整備員チームの母基地拠点とし、分散展開先に見立てたジョージア州や南カロライナ州の各所に12時間単位で限定的な装備と共に同チームを機動展開させ、2機のF-35の再発進準備(給油&弾薬搭載)を実施し、また装備をまとめてC-130輸送機などで母基地拠点に戻り、必要な補給の後、再び他の場所に展開して航空機の再発進を支援する活動を行ったようです

Agile Flag 23-1 4.JPG通常のこの再発進準備を何名の地上整備員で行っているのかは明示されていませんが、チームの機動展開を容易にするため省人化が図られ、例えば普段は弾薬運搬と機体搭載だけを行う要員がパイロットとの連携や指示伝達も行ったり、普通は専門の周辺警備要員を配置するところ、整備員全体を監督する整備員クルーチーフが同任務を兼務するなど、「兵士の多能化」を図って「12名」に絞り込んだとのことです

また今回は12時間シフトの派遣ローテーションでしたが、2-3日間の展開を想定した宿泊等装備の検討や検証も同演習内で行われているとのことです。もちろんまだまだ基礎的な検証で、展開先に弾薬や燃料の「事前備蓄」がある前提での訓練であり、また敵の脅威がある場合の対処や必要な装備など難しい課題もありますが、機敏に装備を移動して敵の攻撃を避け、敵の偵察能力に付加をかける発想が背景にあります

Agile Flag 23-1 5.jpg弾薬や燃料の「事前備蓄」や敵脅威への対応問題の他にも、例えば味方航空機が敵攻撃で被害を受けている場合、再び離陸を許可するには通常大佐レベルの承認が必要となりますが、十分な通信確保が難しい展開先の若手士官や軍曹レベルに権限移譲可能かなど、様々なレベルの課題が浮かび上がっているようです

更に根本には、このような再発進チームを機敏に展開先へ移動させる輸送力確保が可能か・・・との問題も未解決で、陸軍や海兵隊の輸送所用で空軍輸送機はフライトスケジュールが一杯なのに、米空軍の要請と言えども輸送機が少数の戦闘機のために確保可能とは考えにくい・・・との指摘もドッシリ存在したままのようです

Agile Flag 23-1 6.jpgそんな中の試験演習ですが、同航空団でこの試験演習に参加した整備部隊の隊長である少佐は、「リスクを冒してよい。それが任務遂行には必要なんだから:take more risks, because it is required for mission success」と、安全に留意しつつも、貴重な試行演習の中から様々な教訓を得ようと前向きな姿勢で臨んでおり、普段直接連携することがない人との関りや新たな役割を経験することで生まれる発想の転換に期待していると語っています

Agile Flag 23-1.JPG先にも述べたように、普段何名で行っている任務を「12名」の「Multi-Capable Airmen (MCA)」で行っているのか、「12名」のチームが何個ぐらい演習に参加しているのか、どの程度の地上支援機材を「12名」と共に機動展開させているのか等、色々と気になる演習ではありますが、「12名で2機のF-35再発進準備」との情報が開示されているだけで貴重なデータと考えておきましょう

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