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NZは引き続き米海軍原子力船を拒否 [ヘーゲル国防長官]

NZは1987年から米軍空母等の入港拒否、今後

New Zealand 2013.jpg28日、ヘーゲル国防長官はニュージーランドのJonathan Coleman国防相と会談し、昨年パネッタ前長官が約30年ぶりに同国を訪問して「雪解け」ムードを作った流れを受け、軍事関係の再開を宣言しました
ヘーゲル長官は、昨年から両国軍事関係が大きな進歩を遂げたと語り、アデン湾での海賊対処活動を讃え、来年のRIMPACへのNZ艦艇の参加とハワイ寄港を許可する発表を行い友好ムードを装っていますが、、なぜか米国防省web記事は短く淡泊で、奥歯に物が詰まったような・・・

共同記者会見では、NZ国防相がヘーゲル長官にラグビーチーム「All Blacks」のユニフォームを送るパフォーマンスもあったのですが・・・
この不完全燃焼感の理由は、Defense-News記事を読んで判りました。NZは、1987年から米NZ関係が中断した原因となっている、米海軍の原子力推進艦艇のNZ入港に関し、全く態度を変えなかったからです

28日付米国防省web記事は
New Zealand 2.jpg●ヘーゲル国防長官は、共同記者会見で両軍関係の再開を発表し、1984年以来約30年間ぶりにNZ艦艇が来年RIMPAC参加のため米国港湾施設(ハワイ)に入港することになると語った
●また長官は、昨年来の両国関係の進展を記者団に語り、その一環として30年ぶりの軍事政策協議を近くホノルルで開催し、アデン湾での海賊対処活動にNZ艦艇が参加し、更にNZが主催する最大の多国間演習に米軍が参加するとも説明した

●米豪NZの3ヶ国で結んでいるANZUS同盟は、NZが米海軍の原子力推進艦艇の入港を拒否したことで1984年から一部が中断し、米側もNZ艦艇の入港受け入れを拒否した。
●これに関し昨年30年ぶりに国防長官としてNZを訪問したパネッタ氏が、今後は海軍や沿岸警備隊港湾施設へのNZ艦艇の入港をケース・バイ・ケースで判断すると緩和する発表を行ったところ。

●NZのColeman国防相は会見で「両国の軍事関係はこの2年間で大きく進展した。NZ艦艇の入港禁止措置の解除に感謝する。30年ぶりの軍事協議再開をうれしく思う」と語った

米原子力船拒否については触れず
(28日付Defense-News記事)
ヘーゲル長官は、アジア太平洋リバランスの一環として豪州オセアニア周辺で海軍や海兵隊が活動を増加させていることも踏まえ、NZ国防相と昼食を共にして協議を行った
しかし、NZ艦艇のRIMPACへの参加やハワイ入港許可の件を合意したと発表したが、NZが米海軍艦艇の入港を拒否していることには全く触れなかった。26年間継続している米空母等の入港拒否に関し、何ら進展の兆候は見られなかった
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NZ.jpgNZ軍は総勢約8600人(陸軍4,400名、海軍1,900名、空軍2,300名)で、海軍はフリゲート艦2隻、空軍は輸送機やヘリ等5個飛行隊のみで実質戦力としてカウント出来ないのですが、薄っぺらな正義感を振りかざす様子には腹立たしいモノがあります

NZはちょっと特異な国で、その周辺環境から、冷戦終了後の1998年に戦闘機を廃止する決定をし、2003年を最後に輸送機と海洋監視航空機のみを保有する軍となっています。朝鮮戦争やベトナム戦争に参加した経験はあるようですが・・・

捕鯨に対する態度など、豪州にも似たようなところがありますが、これらオセアニアの国との関係を担う皆様のご苦労を思わずにはいられません。

パネッタ前長官による突破口
「対中へ:米NZ関係30年ぶり改善」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-22

「米と豪が被害想定演習を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-02
「米豪が60周年同盟強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-17

米国がエジプトへの軍事援助一時停止 [ヘーゲル国防長官]

Egypt-al-Sissi3.jpg9日、米国務省と国防省関係者が、エジプトへの戦車や戦闘機や攻撃ヘリの引き渡しと約260億円の軍事援助を一時停止(withhold)したと述べました。9日付Defense-Newsによれば、8日夜に本情報がリークされたため、慌てて政府が発表したとのこと

本件は、「選挙で選ばれた」モルシ前エジプト大統領が軍により追放され、軍が政権を掌握する事態になった7月以降の状態を、米国政府が「クーデター」と認めるか等の「核心」に関わることもあり、数ヶ月にわたって内部議論が続いていたようです
依然、エジプト軍事政権の扱いは「玉虫色」のようですが、米軍事援助は「とりあえず当面停止」になるようです

9日付Defense-Newsによれば・・・
SASCApril.jpg軍事援助の一時停止は数週間前に決まっていたようだが、シリア情勢への対応で実行が遅れていたようだ。
9日午後、ヘーゲル国防長官がエジプト軍トップのAbdel Fatah al-Sissi将軍に電話し、米国の決定が伝えられた。政府関係者は、電話会談は丁寧でフレンドリーなモノだったと語っている。具体的には、F-16、アパッチ攻撃ヘリ、ハプーン対艦ミサイル、M1A1戦車の提供が停止された

●政府高官は報道陣に対し「これは恒久的な提供停止ではない。継続的に見直されるモノで、今時は本夏の状況から判断された。両国が協議している一定の成果が見られるまでの措置である」と語った
●8月にオバマ政権は、F-16戦闘機4機の出荷を停止し、攻撃ヘリ10機と戦車125台について検討中と説明していたモノである

国防省は各装備の製造企業に対し、引き続き契約に基づいた経費を支払うことになっており、製造されたり調達した部品は各企業で保管されることになる
対テロに関する軍事援助や現にエジプト軍が保有する装備の部品提供も引き続き行われる

民主党のPatrick Leahy議員(法制と予算配分委員会)はこの決定を厳しく非難しており、「オバマ政権は、一部を止め、一部を生かすことにより、混乱したメッセージをエジプトに発している。米国の法律は明確だ。軍事クーデターの場合には米国の援助は停止である」と訴えている

Egypt-al-Sissi.jpg●エジプトは米国からの軍事援助を既に十分なほど受けている。既に1000両以上の戦車と224機のF-16戦闘機、アパッチヘリ、数千の装甲車、ミサイルや通信装置等々も提供されている
●しかし、エジプト軍の貧弱な兵站組織と整備能力により、多くの装備品関連作業は米企業が行っている実態がある。例えば2012年に、General Dynamicsはカイロの戦車組立て工場での技術支援を約50億円で請け負っている

●「米国からはエジプト政府にこうするべきだと伝えており、エジプト側は聞いている。しかし重要なのは実際に実行されることだ」と米政府高官は述べている
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米国はエジプトに対し、イスラエルとの和平交渉が結ばれて以降、30年以上にわたり影響力行使のため軍事援助を続けています
しかし、選挙で選ばれたモルシ前大統領は、米国内で「米国を同盟国と呼ばない」大統領として問題視されていたところでした。

obama.jpg米国予算を巡る国内問題で、外国や海外問題に目を向ける余裕がないと見られている米国政府ですが、中間選挙を前にした段階で早くも「レイム・ダック」との表現が各種論評に見られるようになりました。
強制削減対処→年度予算不成立対処→更に債務不履行対処・・判っているのに深みに落ち込んでいく米国です

経済の相互依存が進んでいるから、大規模な軍事衝突は想定しがたい時代になった」と言う方がいらっしゃいますし、勿論そうとも言えましょう。
しかし、判っていても感情で突き進むのが人間の性ですから・・・頭に置いておきましょう。

ヘーゲル&ケリー長官が千鳥ヶ淵で献花:日米安全保障協議委員会2+2 [ヘーゲル国防長官]

Japan2013-1.jpg3日、ヘーゲル&ケリー長官が、米国の閣僚として初めて千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、献花しました。

靖国神社を避けたことから、読売は「安倍総理に靖国参拝を控えよとのメッセージだ」との見方を報じています。


3日、外務省の飯倉公館で日米安全保障協議委員会(2+2)が開催され、共同発表が行われました。
既に「2+2」に関しては、記事「先読み:日米安全保障協議委員会2+2」でご紹介したところですが、共同発表に関し、要補足部分や気になったところを「つまみ食い」でご紹介します

防衛省webサイト関連リンク
http://www.mod.go.jp/j/press/youjin/2013/10/03_2.html
米国防省web関連リンク
http://www.defense.gov/home/features/2013/0913_hagel1/
Japan2013-2.jpgJapan2013-8.jpg








●安倍総理のこだわり
読売によれば、「中国に対し・・急速に拡大する軍事面・・開放性及び透明性を向上させるよう引き続き促していく」の部分の、「急速に拡大する軍事面」は安倍総理の強い意向で、米国を押し切って入れ込んだ表現だとか

●日本が妥協した部分
読売によれば、「敵地攻撃能力」との言葉を日本側は入れたかったが、米側が「中国や韓国の反対を招く」として拒んだ

ガイドライン見直し期限
米側は期限を切らない方向だったが、日本側の強い要望で「2014年末まで」との表現が

●那覇基地の自衛隊部隊を嘉手納に移設の件
明確な表現は見当たりません。「同盟の柔軟性及び強靱性を向上させ、日本の南西諸島を含む地域における自衛隊の態勢を強化するため、閣僚は、共同使用に関する作業部会の取組を歓迎」との表現ぐらい
Japan2013-4.jpgJapan2013-9.jpg








●強靱性・抗たん性強化
「二国間の計画を精緻化するための取組・・・自衛隊及び米軍による日本国内の施設への緊急時のアクセスを改善することが含まれる」 代表例として、米軍や自衛隊の基地が被害を受けた際、日本の民間飛行場を使用できるような準備が想定されます

●宇宙関連の協力&サイバー関連
宇宙に関しては、「宇宙航空研究開発機構(JAXA)による宇宙状況監視情報の米国への提供の早期実現への両国のコミットメントを歓迎」との記述有り
サイバー関連では、「サイバー空間の安全で確実な利用に対する挑戦に対処するに当たり、民間部門と緊密に調整する必要があることを強調」との記述

●三カ国協力の強化
韓国と仲良くせよと釘を刺されました→「特に豪州及び韓国との間で定期的に実施されている三か国間の対話の成功に留意」、「三か国間協力の取組を一層拡大するため、作戦、計画、演習及び能力に関する情報を含め、地域の同盟国の間での情報共有の強化を」

グアム・北マリアナへの日本の資金提供
グアム及び北マリアナ諸島連邦における訓練場の整備に対する日本の資金提供の重要性に留意」 この表現は、海兵隊のグアム移転関連でもありますが、もっと重要なのは、中国の攻撃を受けた際の米軍の代替活動基盤確保のための資金提供との意味でしょう。

●日本への「高度な能力」提供の言質
2014年春から、米空軍の無人機グローバル・ホークのローテーションによる展開を開始」、「米海兵隊F-35Bの米国外における初の前方配備となる、2017年の同機種の配備の開始」
RQ-4は三沢? F-35Bは岩国でしょう
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Japan2013.jpg日本での主要日程が終了した3日夕刻、ヘーゲル国防長官の誕生日(10月4日)のお祝いが、米国関係者間でささやかに行われたようです。
ケリー国務長官からケーキを手渡されるへーゲル長官の様子です

両長官とも、米予算不成立の件で来日中も本国とのやりとりで大変だったようです。これからも大変でしょうが・・

Japan-yokota.jpgケリー国務長官は2+2共同会見で「共通の利益と価値に根付いている日米関係は、過去最高の状態にある」と語ったようですが、「負担の分担又は移譲」の観点でそのような状態との認識なのでしょうか?

4日、ヘーゲル長官は横須賀停泊中の米艦艇ステザムを訪問、後に横田基地を訪れた模様です。横田では自衛隊の「Air Defense Command 」を訪問したようです(↑写真上↑)


先読み:日米安全保障協議委員会
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-29

不自然な米韓BMD協力:米韓コミュニケより [ヘーゲル国防長官]

Korea-sign.jpg2日、ソウルで45回目の米韓Security Consultative Meetingが開催され、ヘーゲル国防長官と韓国のキム国防相が協議し、共同声明(communiqué:tailored deterrence strategy against North Korean nuclear and other WMD threats)に署名した後に共同会見を行いました。
会談にはデンプシー統合参謀本部議長やロックリア太平洋軍司令官、更には同日在韓米軍司令官に就任したCurtis Scaparrotti陸軍大将も協議に参加しています

米国防省web記事が伝える会見は、北朝鮮の脅威にしっかり協力して立ち向かうとの従来の姿勢を「再確認」する内容となっていますが、本分野に素人のまんぐーすが引っかかるのが、米韓ミサイル防衛協力に関する部分です
思いっきり邪推ですが、日米がBMD協力で緊密度を増す中で、韓国側がその枠組みに入ることに「強烈な拒否反応」を示しているように思えてなりません

会見では、まず対北朝鮮協力の再確認
●「tailored deterrence strategy」の枠組みは、特定脅威を抑止する同盟の戦略的で政策レベルの枠組みである。両国がともにシームレスに抑止効果を最大限にする事を促すモノであり、より未来志向で包括的な戦略同盟の必要性で合意したモノである
●また共同声明は、米国が韓国への抑止力提供と強化に関し、米国の核の傘、通常兵器、更にミサイル防衛能力を最大限に使用することにコミットすることを再確認している。

Korea-salute.jpg●更に共同声明は、北朝鮮に核兵器の全廃を促し、現存の核開発計画の完全に不可逆的な停止やウラン濃縮の停止等を促すモノしている
●また、へーゲル長官は特に北朝鮮の化学兵器に関し「北朝鮮による如何なる化学兵器の使用も、受け入れがたいモノである事に疑いはない」と発言した

●(戦時作戦統制権の移管については・・)移管のタイミングと条件については、「Strategic Alliance 2015」に基づき、継続的に両国で協議することに合意した。本件に関し、本協議後直ちに共同作業部会を立ち上げ、議論を行うこととした

疑念のミサイル防衛協力に関しては
●キム韓国国防相は「共同声明は、包括的なミサイル対処戦略を提供し、北朝鮮兵器からの脅威をdetect, defend, deter and destroyする事を目的とするものである」と述べ、
●更に「韓国は継続して信頼できる相互運用可能な対処能力の構築を行い、韓国は韓国の防空及びミサイル防衛システムを開発する」と共同声明の内容に言及した
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会見のトランスクリプトは
http://www.defense.gov/transcripts/transcript.aspx?transcriptid=5316

Scaparrotti.jpg新しい在韓米軍司令官(国連軍司令官と米韓連合軍司令官も兼ねる)のScaparrotti大将は、アフガンでISAF司令官や在アフガン米軍の副司令官を経験した陸軍の王道「歩兵」士官で、2012年7月からはデンプシー議長の側近(Director of the Joint Staff)として、直々にデンプシー大将の薫陶を受けてきた期待の人物です

ところで米韓ミサイル防衛ですが、北朝鮮と韓国が接していることから、韓国が独自に短距離ミサイル対処を考えなければならない点は考慮するとしても、あえて共同声明で「信頼できる相互運用可能な韓国の防空及びミサイル防衛システムを、韓国が継続して開発する」と米国に署名させるほどの独自路線への「こだわり」に注目です

「日本は信用できない」とヘーゲル長官に言い放った朴大統領の下、日米間で確立しているシステム、つまり間接的にでも日本のシステムとの連接や情報共有など「絶対いや」姿勢を明確に打ち出したものと「邪推」します

韓国と協力を:デンプシー議長が訴える@防衛研究所
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-28
同じ北朝鮮の脅威に直面しているながら、(日本と韓国の)2つのピクチャーは融合されていないではないか!
日本と韓国が、直面する北朝鮮の脅威に対し、相互運用可能な関係になるべきではないか

「日韓共通戦略目標を提案する」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-02-1

先読み:日米安全保障協議委員会「2+2」 [ヘーゲル国防長官]

10月3日、17年ぶりに日本で日米安全保障協議委員会「日米2+2」(両国の外相と国防相が4人で協議)が開催されますが、27日に米国防省でヘーゲル国防長官の日韓訪問レクチャーがあり、その前後で「日米2+2」についてかなりの情報が明らかになったようです

複数のメディア報道を総合すると
hagel3.jpg南西諸島にある日米両国の施設の共同使用推進などを合意する見通し。ただし、共同発表では、具体的な地名は挙げない方向
●共同使用は沖縄を念頭に置き、那覇基地内の自衛隊の一部を米軍嘉手納基地に移転する案や、米軍による下地島の滑走路利用などの構想
●1997年改定の日米防衛協力のための指針:ガイドライン再改定に関しては、「2+2」の下にある防衛協力小委員会に「変更を指示する」と明記する。再改定の終了目標期限は示さない

共同発表は、日米2国間の防衛協力、地域への関与、米軍再編などの項目で構成。これまでに日米当局間でおおむね合意した細目をまとめ、今後の方向性も表明
John Kerry.jpg●具体的には、ミサイル防衛やサイバー安全保障問題での協力強化、宇宙ごみ監視での情報共有、ISR活動での連携などを打ち出す。宇宙監視では、自衛隊のレーダーの利用を想定
●米軍再編については、今年12月までにP8対潜哨戒機、2014年春に無人偵察機グローバルホークを日本に配備する方針を盛り込むことを検討

在沖縄米海兵隊9千人のグアム移転については、「現行計画では20年代前半に開始することになっている」と記す方向で調整

サイバーに関する報道は
Cyber5.jpg防衛当局間で作業部会を設置し、両軍がサイバー攻撃を受けた場合の共同対処要領を策定する方針。審議官級をトップに年に数回開催。共同対処要領の策定のほか、情報共有、最新の防衛技術、人材育成の協力−−などを定期的に協議
●新たな共同対処要領は、両軍基地の情報通信システムが攻撃を受けるなどの事態を具体的に想定。自衛隊の「サイバー防衛隊」と、米軍がサイバー空間で共同演習を実施

共同演習の場はここ?
「サイバー演習場が本格運用へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-25


まんぐーすが思うことあれこれ
まんぐーすは交渉の背景や経緯を知らず、公開情報をぼんやり眺めているだけですが上記の報道を見て思うのは?

RQ-4.jpg●「MDやサイバー協力強化」はこれまで通り。「宇宙監視」は、これまでも時々報道されてきた、空自がBMD機能強化のために開発した監視レーダー「FPS-5の活用」のことでしょう
●「地域への関与」は、PKOに代わって最近「突然」使われるようになって来た言葉で、米軍が推し進めるASEAN諸国等の「能力構築」支援共同訓練強化でしょう

米軍の「P-8やグローバルホーク」はどこに配備されるのでしょうか? 自然に考えれば、中国の弾道ミサイル等の脅威が比較的少ない北日本の三沢辺りが有力でしょう
●「米軍による下地島の滑走路利用」は、中国のミサイル攻撃に備え、少しでも代替飛行場を確保しておきたい米軍の意向に沿ったものでしょうが、米軍を正面に押し立て、自衛隊も使用する腹でしょう

kadenaRWY.jpgちょっと「?」なのが「那覇基地内の自衛隊の一部を米軍嘉手納基地に移転」です。那覇基地にはF-15やヘリやP-3が所在し、F-15を増やす計画がありますから混雑を避け、更に中国の攻撃に備えた戦力の分散対処なのでしょうか? 防衛省・自衛隊からの要望なのか?

●それとも、自衛隊の防空ミサイル部隊を嘉手納に移転し、嘉手納の防空を強化する案なのでしょうか?
●はたまた・・・米空軍は中国の攻撃が切迫した場合、F-15や空中給油機やAWASCを避難させるはずですから、「留守番よろしく」とのメッセージなのでしょうか?
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Gates-2p2big.jpg左の約2年前の「2+2」写真のように、米国防省webサイトのトップページに「国防長官の思いっきり不満顔」の写真が掲載されないよう、会談の成功を祈ります・・・

10月3日は、このあたりを視点に各種報道等に注目いたしましょう。
更に、まだまだアジア太平洋地域の問題に馴染んでいない、又は中東問題で手一杯のヘーゲル長官とケリー国務長官から、「韓国と仲良くしろ!」発言が出るかにも注目です

なお、ケリー国務長官は4日と5日にインドネシア・バリ島で開催されるAPEC閣僚会合に出席を予定しており、そっちでの「立ち回り」にも注目です
おまけで、ヘーゲル長官の訪韓で、F-15が除外されて振り出しに戻ったらしい「韓国F-X選定」に動きがあるかも注目です。

ゲーツ長官が不機嫌だった2年前の2+2について
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-22

完結!全てをカバーASEAN国防相会議とADMM+plusも:ヘーゲル長官の東南アジア4カ国歴訪 [ヘーゲル国防長官]

Malaysia.jpg22日木曜日から30日金曜日までの間、ヘーゲル国防長官が東南アジア4カ国歴訪を行います。

特に、ブルネイで開催されるASEAN国防相会議とADMM-Plus会合に出席し、中国を取り囲む地域の国防相と様々な形で協議を行う予定となっています。
なおADMM-Plusの「plus」には、米、中、日、韓、豪、印、露、NZの8ヶ国が含まれます。

米国防省web特別サイトは
http://www.defense.gov/home/features/2013/0813_hagel1/

行動の概要は・・・
22日DC発:ハワイで太平洋軍幹部と協議
24日から26日:マレーシア
26日から27日:インドネシア
27日から29日:ブルネイ
(この間、28日はASEAN国防相会議、29日はADMM-Plus会合に参加)
29日から30日:フィリピン
30日夜にワシントンDCに到着
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25日、マレーシアでは首相と国防相会談+アジア政策講演

25日、国防相会談後の会見では
Malaysia-DM.jpg●マレーシアによるアデン湾での海賊対処活動を讃え、国連PKOへの1000名以上の貢献を賞賛、更にアフガンへの軍医療隊員派遣に謝意
●マレーシア軍の能力向上に支援を継続する。HA/DRやPKO活動や対テロや海洋安全保障活動等への支援である。本年だけで、米マレーシア間で75件モノ交流案件がある。全てがマレーシア軍のプロ能力と柔軟性向上に繋がるモノ

両国防相は、多国間の協力強化やその拡大、また地域の協力枠組みの強化が、地域の安定に不可欠であることを再確認した。更に国家をまたぐ脅威、武器密輸や拡散、将来の技術協力や兵器貿易や情報共有分野での協力の方法について議論した。

25日、産業界を含む関係者にアジア政策講演
米国のアジア政策全般を、軍事関係だけでなく、外交・経済施策からも強調
Malaysia-PM.jpg●オバマ政権誕生以来、米国は外交、経済、安保の面でリバランスを進めており、ASEANがその中心にあると認識。また国防相としては、これに米、中、日、韓、豪、印、露、NZの8ヶ国を加えた「ADMM-Plus」の枠組みを重視
●外交・経済の面では、マレーシアも参加しているTPP交渉がある。貿易や投資を通じ、社会や文化面での繋がりを強化し、教育や革新を進め、地域の健康やエネルギー問題や環境問題にも取り組んで繁栄につなげたい

●安全保障面では、米軍との共同訓練や交流強化により、関係国の脅威への対応能力を高めることを米国の戦略としている。そのような演習では参加国の拡大も一つの取り組みである
●タイとの2国間演習として1980年に始まった「Cobra Gold」は、今や13000名が米、タイ、日、韓、Indonesia, Malaysia, Singaporeが参加する演習に発展した
RIMPAC海軍演習も、艦艇45隻と25000名が参加する演習となった。2014年にはブルネイと中国も参加する

●米国は装備品貿易を増やし、共同生産や共同開発を目指し、米国技術のシェアにつとめて地域国との関係強化を進めている
多国間の協力とその拡大が、今後の国家をまたぐ安保問題対処には不可欠。米の同盟国の他にも、新興著しい中国やインドを積極的に地域枠組みに取り込むことが不可欠である
ADMM-Plusの様な枠組みに、我々は新たな投資を行っていく。このような枠組みへの米国の貢献を推進することが、当地域のおける米国戦略の柱である。
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3年前の米マレーシア関係と比較:格段の進歩です
国防省高官や報道官が「まさに成長のさなかにある両国軍事関係」と表現していた
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-10

国防予算が不透明な中、米国防省として、アジアリバランスと米国の地域関与を主張できる「ネタ」が無いため、外交や経済やTPPを持ち出しているところが「もののあわれ」を感じさせます。
このような国防長官の辛い様子は、6月のシャングリラ・ダイアログから加速しているように見えます

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26日、インドネシアで大統領と国防相と会談
国防相共同会見と米国防省高官の話より

Indonesia-Pre.jpg●26日、まずユドヨノ大統領を表敬した後、Yusgiantoro国防相と会談して共同記者会見を実施。
●ヘーゲル長官は共同記者会見で、インドネシアに8機のApache AH-64E攻撃ヘリを兵器管制用レーダーLongbow付きで約500億円で売却すると発表。「世界最高峰のヘリを提供するのは、インドネシア軍事能力向上への米国関与の証である」と説明。

●また米国防省関係者は、米軍がインドネシアのヘリ操縦者を訓練し、戦術や技術、更には東南アジアの環境にあった運用手順を伝授すると語った。ヘリ提供や要員教育の具体的日程は検討中とのこと。
●同関係者は更に、新型ヘリが多様な緊急事態、例えば海賊対処作戦や海洋情勢把握の能力向上に繋がると考えていると述べた。

●ヘーゲル長官は、9月には両国が、ADMM-Plusの枠組みで行われる対テロ演習を共催すると述べた。
Indonesia-DM.jpg●また長官は、両国が第2次大戦中の米軍行方不明者の捜索・帰国に協力することで合意したと発表した。米国籍の約1800名がインドネシアで不明となっており、我々の「誰も置き去りにしない」との責務を果たさねばならない

本年10月にオバマ大統領がインドネシア訪問することを楽しみにしていると述べた(マレーシアも訪問予定)
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3年前の米インドネシア関係の状況
(90年代のインドネシア軍特殊部隊Kopassusによる東チモール市民への発砲射殺や東チモールでの破壊活動の「わだかまり」を乗り越え、軍事交流を再開)
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-23

イスラム諸国の中で最大の人口を持つインドネシアです。
数年ぐらい前までは、米国防長官の訪問自体が画期的だったとのですが、最新攻撃ヘリと要員の教育にまで関係が発展しています。

WW2の不明者捜索が今まで出来なかったぐらいの米インドネシア関係だったようですから・・・
全ては「国際社会のルールを無視する中国」のおかげです。
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ブルネイへ移動中の機内で仏へ、ブルネイのホテルで英国へ、シリア問題で電話中です
ASEAN-french.jpgASEAN-UK.jpg







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28日は、ASEAN国防相会議とバイの会談複数

ASEAN国防相会議は昼食会からスタートし、その後も会議が行われました。ヘーゲル長官は全体会議の合間を縫って、日本、韓国、ベトナム、ブルネイ、中国との2ヶ国バイ会談も行っています。
なお、バイ会談の中国部分については「会談を行った」との1行だけで、米国防省web記事は細部に全く触れていません。まあ、中国の国防部長とは先週19日にワシントンで会談したばかりですから・・

ASEAN国防相会議について
ASEAN-meet.jpg●会議は28日の昼食会からスタートし、その後も会議が行われた。メンバー間で、更なる実効的な協力推進の必要性と信頼の醸成、更に地域の緊張緩和が必要だと議論された
●ヘーゲル長官は6月のシャングリラ・ダイアログ時に、ASEANの国防相を2014年のハワイでの会議に招待していたが、全国防相が昼食時に参加の意向を示してヘーゲル長官を喜ばせた

●会議では、ASEANの国防相が全て、米国の継続的なアジア太平洋でのプレゼンスを支持した。米国の当地域への関与が平和と安定の鍵だとの見方を示し、当地域での積極的な米国の活動を支援するとの意見が表明された。

●今年はブルネイがASEANの議長を務めており、ヘーゲル長官はブルネイのリーダーシップを讃えた。来年は「Burma:ビルマ」が議長役を担う。(この米国防省web記事では「ミャンマー」との表記は一切使われていません。最近オバマ大統領がミャンマーとの呼称を用いて話題になったのですが。まだまだ凝り有りですね)
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28日のバイ会談について

日本との会談では・・・
Japan-ASEAN.jpg●小野寺大臣との会談では、来年の訪日招待を喜んで受けた。またヘーゲル長官は、10月に訪日して2国間関係を議論することを歓迎した。
●会談では、両国がサイバー防衛努力を「establish」することに合意した。多様なアクターによるサイバー脅威と窃盗、また両国政府や産業ネットワークへの侵入に、両国は協力し情報共有等で対応する必要がある
●地域情勢について両国防相は、北朝鮮の核や弾道ミサイル開発を含む課題について議論した。また強固な同盟関係を更に発展させるため、同盟関係の近代化の継続に両国が関心を示した

ちなみに読売新聞は日米会談を
Japan-by.jpg●両氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発を念頭に、ミサイル攻撃を受ける前に相手国の基地などを攻撃する敵基地攻撃能力を日本が保持することに関し、日米で検討していく方針で一致した。
●小野寺防衛相は会談で、敵基地攻撃能力について、「日米の役割分担の一つで、慎重に検討することが大事だ」と述べた。「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」改定の議論を通じて検討することになりそうだ。
●ヘーゲル氏は会談で、今秋をメドに日本で開催する外務、防衛担当閣僚の「日米安全保障協議委員会」(2プラス2)が念頭に、訪日を示唆した。

韓国との会談では・・
Korea-Asean.jpg●韓国のキム国防相は、ヘーゲル長官が永続的な韓国防衛と拡大抑止を再確認したことに感謝の意を表明した。ヘーゲル長官は、緊張の高い半島情勢を注意深く監視するのは両国の責務であると述べた
●両者は、北朝鮮の核開発と弾道ミサイル開発を制限した国連決議の重要性を再確認し、ヘーゲル長官は北朝鮮を導く外向的努力がまず基礎であると述べた
●ヘーゲル長官は10月に韓国を訪問し、恒例の「Security Consultive Meeting」に参加予定。朝鮮戦争停戦60周年を記念する訪問ともなる

ベトナムとの会談では・・
Vietnam.jpg●ヘーゲル長官は2014年にベトナムへ招待したいとの申し出に感謝し、これを受けた。併せて9月2日のベトナム「National Day」の祝いを述べた
●長官は発展を続ける2国間関係に継続的にコミットする旨を表明し、海上安全保障やHA/DR、更にベトナム戦争時の行方不明者捜索にも共に取り組んでいこうと述べた

●またヘーゲル長官は、2011年に両国が結んだ「Memorandum of Understanding for Advancing Bilateral Defense Cooperation」への継続コミットメントを表明した。
●南シナ海での論争について両者は、平和的解決の重要性に言及し、ASEANによる「行動規範」作成への取り組みを歓迎した

ご参考
●●●ゲーツ長官の歴史的ベトナム訪問
「ASEAN+plusをベトナムで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-11
●●●パネッタ長官のカムラン湾歴史的訪問
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-04
●●●対中国にがんばるベトナム
「頑張れベトナム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-18

「Burma:ビルマ」との会談では・・
Brunei-DM.jpg●両国の国防相会談は20年ぶりであり、オバマ政権のビルマへの積極関与姿勢と、ビルマの改革と人権問題への対応への認知を示す一つのサインであると国防相関係者は述べた。
来年ASEANの議長職を引き受けるビルマに対し、ヘーゲル長官は支援を表明し、ビルマ主催のASEAN国防相会議等の行事を楽しみにしていると述べた
●ヘーゲル長官は更に、軍による政府の民主的改革への支援を讃え、継続的な改革の重要性と、北朝鮮との軍事関係を立つことの重要性を表明した
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29日、ADMM+plusに参加
ASEAN国防相に加え、米、日、韓、露、中、豪、印、NZ国防相が参加

ADMM+plus.jpg今年はロシアから副国防相が参加した
ヘーゲル長官2回目となる本会合の重要性を会議で語り、更に「2010年にゲーツ国防長官が参加し、ADMM+plusを行動指向の組織にしていくことに関与したが、その方向に進んで3つの分野の演習を行うまでになっている。米国がこのメンバーであることを誇りに思う」と述べた
●また「海賊、テロ、拡散、疫病、自然災害、サイバー犯罪は国境を超えて影響を与えるもので、皆が共に行動しないと事態を悪化させる」と訴えた。そして「共に地域の能力向上に取り組み、現代の複雑な問題に協力して当たる習慣を付けたい。この過程で信頼や相互理解が進み、紛争のリスクを低下できる」と述べた

●共同宣言に各参加者が署名した後、議長であるブルネイ国防相は主要な成果を紹介し、5つの作業部会が各国軍間の政治的協力に尽力したと述べた。
●具体的には「昨年6月、ADMM+plus枠組みで初めて実施したHA/DRと軍医療演習は画期的だった。次は海上安全保障、対テロ、PKO演習を予定している」と説明した
●また、これまで3年に一度開催だったADMM+plusを、今後は2年に一度開催する事に昨年決定した事を確認した

●議長は、ADMM+plus活動の中心はあくまでもASEAN諸国であるとした「ASEAN centrality」の原則を再確認した。「Amity and Cooperation」条約の原則に基づき、特に自制と武力による脅威の放棄を強調した
●また議長は、平等、相互尊重、相互利益、国際法の尊重の原則を基に、ADMM-Plusの国防協力推進に加盟国がコミットし、演習や訓練を通じ、協力運用や相互運用性を高めて能力構築を推進すること、更に効果的対処のメカニズム構築に合意したと述べた。

ADMM+plus2.jpg●議長は更に、海上での望ましくない事象に関する誤解や誤算を避けるための実効性ある手段を確立することで参加者が合意したと述べた。
●人道的見地からの地雷対処についての専門家作業部会と、共同議長に関する専門家作業部会の設置について合意したと議長が発表している。

●5月に開催されたASEAN首脳会合での方向性を再確認し、ARFを含む枠組みのシナジー効果推進を確認した。
●メンバーは、世界及び地域の安全保障や防衛問題を広範に議論し、次回会合を2015年にマレーシアで行うことで合意した

同会議で小野寺防衛大臣は敵基地攻撃に言及
小野寺大臣はADMM+plus会議で演説し、尖閣諸島での日中対立を念頭に離島防衛を強化すると強調した。中国をけん制した形だ。敵基地攻撃能力の保持をめぐる議論にも言及したが、具体的内容には踏み込まなかった
●大臣は、離島防衛は自衛隊の海兵隊機能の充実などが柱とした上で、安倍政権の安保政策について「周辺諸国の挑発的行動を抑止し、予期せぬ紛争を防ぐ上で最低限必要な措置だ」と語った。同時に「地域諸国に誤解がないよう丁寧に説明する」とも述べた
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3年前の第1回ASEAN+plusの様子は・・・
「ASEAN+plusをベトナムで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-11

もう完全に疲れてきて、「へろへろ」の会議紹介になっていますが、ご勘弁下さい。フィリピンもがんばります!

「敵基地攻撃」や「策源地攻撃」が急激に盛り上がってきました
北朝鮮をネタに議論をしているようですが、本命は中国ですからしっかり考えて頂きたいものです。
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最終日の30日、フィリピン宮殿で大統領、国防相、外相と

Filippin2.jpgアキノ大統領をマラカニアン宮殿で表敬した後、ヘーゲル長官はGazmin国防相と外相と同時に会談し、国防相と共同記者会見を行った。8月30日は記念すべき日付である。1951年の同日に以前の米比相互防衛条約が締結された日だからである
●ヘーゲル長官は「米国とフィリピンの強い絆は、共通の目的の基で多くの犠牲を共に出した歴史を通じて培われたものである」と語り、「米国のアジアリバランスにとって、両国間の緊密なパートナー関係を強化し続けることは、極めて重要な位置づけを持っている」と訴えた

大統領、国防相、そして外務大臣とも協議した重要な話題は、フィリピン軍の海上安全保障分野における能力向上のため、米軍のフィリピン軍基地とフィリピン領土領海での活動許可を与える合意枠組みに関するものであった
●上述した1951年の条約に代わる新たな枠組み合意は、同行の米高官によれば、米軍のローテーション派遣とその活動に関するものである。
●ヘーゲル長官は「アキノ大統領と私は、本日62周年を迎えた1951年条約の精神を持って、枠組み合意に関する進捗を再確認した」と議論の様子を語った

Filippin3.jpg●ヘーゲル長官は更に「両国の合意枠組み検討チームが、懸命に取りまとめのために活動している」と現状を説明し、「永続的な米軍の駐留を意味するものではない」と強調した。
●そして「シンガポールや豪州で開始したローテーション方式によるプレゼンスは、訓練や作戦能力を高めて、アキノ大統領の軍近代化策をも支援するもであり、両国の利益になる」と述べた。

南シナ海で沿岸各国の主張が対立している件についても議論がなされ、米国はASEANが取り組む「行動規範」作成を支援し、領土領海問題から生ずる課題の平和的処理を推奨すると長官は述べた
●更にこの際、論争の解決が国際的に受け入れられる枠組みを通し、海洋法を含む国際法に沿って行われるよう促進すると呼びかけた。

●午後遅く、第2次大戦で亡くなった17,202名の兵士を祭る「Manila American Cemetery」を長官は訪問した。緑に覆われた152エーカの施設で、長官は戦没者の冥福を祈った
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Filippin1.jpgフィリピン大統領は、先日「空軍再建宣言」を行ったように、フィリピン軍近代化を推進しています。
「合意枠組み」の着地点がどこになるのか注目ですが、旧クラーク基地やスービック湾は絶好の立地であることは間違いありません。

またフィリピンは日本に大きな期待を寄せており、海上保安庁の船の提供話が進んでいます

「8月14日に第1回米比協議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-16
比大統領の「空軍再構築」宣言!→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-02
「米比関係に飛躍の予感」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-27-1

長々とお付き合いいただき、ありがとう御座いました

中国国防部長の訪米と共同記者会見 [ヘーゲル国防長官]

China-2013Aug.jpg米中関係は、6月に米中首脳が長時間マラソン懇談を行っても進展せず7月の米中経済安保対話でも「本題」に踏み込めない「行き詰まり」状態ですが、8月は米中国防相会談がメニューに載るようです。

かねてより、米国防長官の中国側カウンターパートは誰なのか? との疑問があり、米国防省も複数の人物を国防長官の「カウンターパート」の位置づけで扱ったことがあります。
今回の国防部長は英語で「China’s Minister of National Defense」と表記されており、正に国防長官の「相手」なのですが、党中央軍事委員会のメンバーではなく、国務委員に過ぎないとの見方も出来るからです。

新たな展開や画期的な成果が期待できるとは到底思えず、訪問日程を報ずる国防省web「建前」記事の「色気の無さ」にも冷ややかなものを感じますが、一応新しい(3月16日就任)国防部長の訪米ですのでフォローいたします

「色気の無き」国防省webの「訪問告知」
http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=120641

各種報道は訪米スケジュールを
chinaFlag.jpg16日金曜日ハワイに到着した常万全(Gen. Chang Wanquan)国防部長(1949年生)は、ロックリア太平洋軍司令官と会談する。中国が来年のRIMPAC海軍演習への参加招待を受けたこともあり、米中軍事交流の更なる進展が期待されている
●週末間に国防部長一行は、中国要人として初めて米本土防衛の中心であるNORADを訪問し、北米軍司令官と会談するほか、シャイアンマウンテンにある核戦争時の代替指揮所も見学する。
●米軍人が中国の防空指揮所への立ち入りを許可されたことは無いが、「より深い相互理解に寄与する」と判断されNORAD訪問が計画された

chang wanquan.jpg19日月曜日にはヘーゲル国防長官等との会談がペンタゴンで行われ、その後共同記者会見が予定されている。
●米国防省筋によれば、米中国防相会談では多様な話題が取り上げられる模様で、サイバー問題、米国のアジアリバランス、日本との尖閣諸島を巡る問題等が取り上げられる。

12日にはインド国産空母が進水し、日本ではヘリが12機も搭載できる空母のような形状の護衛艦「いずも」が完成披露を行ったばかりである。中国は「いずも」を実質的な空母だと非難しており、話題に上ると考えられる
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19日の共同記者会見で両者は
米国防省web記事によると、極めて初期レベルの軍事交流メニューが少し追加された・・といった印象です)

China-2013Aug2.jpg19日、ヘーゲル国防長官と常万全国防部長は共同記者会見を実施し、両国の軍事交流を改善する一連の行動を行うと発表した。両者は、両国の緊密な関係が、アジア太平洋地域と世界の安定と安全保障をもたらすと述べた
●ヘーゲル長官は、責任ある中国の発展を歓迎し支持し、そのような中国が地域や世界の問題解決に資すると述べた。またヘーゲル長官は、中国側からの招待を受け、来年訪中すると述べた

●両国の代表団は両国軍事交流の具体的方向について議論し、例えば、中国海軍の士官候補生が米海軍士官学校で開催される多国間交流行事へ参加すること、19日にハワイでHA/DRに関するMilitary Maritime Consultative Agreement Working Group会議が実施されること、週末にアデン湾で海賊対処訓練が実施されるとヘーゲル長官は説明した
●更に、中国軍参謀本部の戦略計画部と米軍統合参謀本部のJ-5が交流メカニズムを立ち上げることで合意したと両者は述べた

●両者は最近設置された「U.S.-China cyber working group」と、その活動強化について議論した。また、北朝鮮問題や東シナ海及び南シナ海問題を含む、地域の安全保障問題について議論した
●国防部長は、これまでに確立されている対話枠組みを活用し、両軍の主要軍事活動を通知し合うメカニズム構築や、海上や航空における行動規範の検討を継続することに合意したと語った。

China-2013Aug3.jpg●常万全国防部長は会見の中で、「私の任務は主要国たる両国関係の新たなモデルを確立することである。相互の尊重に基づく、win-winな関係を構築することだ」と繰り返し述べた。
●更に「中米関係は新たな時代に入りつつあり、新たな軍事関係構築が戦略的信頼を増し、戦略的リスクを減じ、世界の平和と地域の安定維持に貢献する」と述べた
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読売の報道によると・・・
常国防相は会見で、対話解決の重要性に言及する一方、「中国が核心的利益を手放すと夢想すべきではない。我々の領土、主権、海洋での権利を守る決意を過小評価すべきでない」と述べた。
●オバマ政権のアジア重視政策についても、アジア太平洋地域で米国が参加する合同軍事演習が増加していると指摘、「特定の国を標的にしないことを望む」とけん制した

朝日の報道では更に・・・
●常国防相は、アジア太平洋の地域情勢について「いくつかの問題は過熱し、繊細な問題はより繊細になっている。不適切な対応は地域の安全保障に深刻な打撃をもたらす」と警告
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「U.S.-China cyber working group」の活動、北朝鮮問題や東シナ海及び南シナ海問題に関しては、両者の主張が平行線をたどり、特に会見で発表する成果は無かった・・・と解釈しておきましょう。

具体的なメニューとして、会談前に既に決まっていたであろう「ハワイでのHA/DR協議」や「アデン湾での海賊対処訓練」まで持ち出して語るのはちょっと興ざめです

中国軍首脳と米国防省の関わり
「パネッタ長官2度目の訪中」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-19
「米中国防相会談」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-08
「久々に米中軍事協議」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-09

「ゲーツ氏シャングリラで米中」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「中国軍トップ訪米と美人通訳」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-18
「1月ゲーツ長官の中国訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-09-1

「米中対決シャングリラ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-10
「徐才厚のCSIS講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-09

ヘーゲル長官SCMR結果会見 [ヘーゲル国防長官]

SCMR4.jpg31日、ヘーゲル国防長官とウィネフェルド統参副議長(デンプシー議長は8人目の孫の出産のため欠席)記者会見を行い、3月に同長官がカーター副長官に命じていた強制削減対処方針の検討SCMR(Strategic Choices in Management Review)の結果概要を語りました

今後10年間での予算削減幅を3段階で仮定し、まだ何も決断されていないと強調しつつ、それへの対応のためにどのようなオプションがあるかを例示しています。
今後更に4軍と細部のオプションについて検討を進化しつつ、最終的には大統領の決断を待つとの姿勢ですが、政府や議会が選挙民からの反発を予想して同意しない基地の統廃合や、軍人や退役軍人の福利厚生施策(military compensation)削減を「大前提」とするような案となっており、「真っ向対決案」とも言えるでしょう

また、同長官が「経費の急激な削減と戦略的な削減は両立しない」と繰り返し主張しているように、多くの削減は今後10年の後半に先送りする形になっており、この辺りも国防省側の巧妙な作戦です

オバマ政権が、ケリー国務長官を筆頭に中東シフトを強め、前国務長官が基礎を固めた中国包囲網の強化を放置する中、アジア太平洋諸国が唯一望みをつなぐ米軍の動向ですが、国防省側の「脅し」を込めた削減案が大統領や議会の関心を得られるかは大きな疑問符です

検討に当たっての4原則は
-- Prioritizing DOD’s missions and capabilities
-- Maximizing the military’s combat power by reducing other spending first
-- Preserving and strengthening military readiness
-- Honoring the service and sacrifice of DOD’s people.

まず前提となる3パターンの削減規模は・・
●強制削減がそのまま決行される10年間で約50兆円削減
●10年間で約25兆円の中間案
●2014年度予算案ベースが10年間で約15兆円削減

最も軽易な15兆円削減対応でも・・・
SCMR3.jpg●国防長官室を筆頭とする各レベル司令部予算の2割削減
●国防長官へのレポートや報告書の削減でスタッフやポストの削減や統合の促進
●要求している基地の統合と部隊再配置の推進
これらの「効率化」も全て議会の支持を得られてはいないが、合計しても10年で約6兆円の削減に過ぎず、他の削減分野をまだまだ探す必要がある

軍人や退役軍人の福利厚生施策(military compensation)削減で5兆円
---これには、退役軍人の医療保険補助削減、住宅購入費用助成の削減、海外赴任間の手当削減給与の上昇凍結が含まれる

戦略抑止や本土防衛、アジアリバランスを維持しつつ戦力削減も
---地上兵力の削減
現役49万と予備役等55万人を、現役45万人以下と予備役53万人以下へ
---戦術空軍部隊の削減
戦術飛行隊を5個削減し、C-130部隊も削減する

ヘーゲル長官は、これまで説明した約15兆円の削減規模なら、国防や世界での責務を果たしながら上記説明の対策で達成できるが、このレベルを超えるとより大胆な戦力の削減が必要になると警告し、約25兆円削減だと国防戦略を「ねじ曲げ」、強制削減フルの50兆円削減だと戦略は「破綻」すると表現した。

15兆円以上の場合は2つのアプローチ・・・
つまり「戦力規模」を切るか、「戦力の質」を切るかのアプローチが考えられると述べ、以下を説明・・・

●「戦力規模」を切る場合
---陸軍を45万から38万人の間まで削減、空母を現在の11隻態勢から8~9隻に削減海兵隊は現18万人から15万下限で削減、空軍の老齢爆撃機の削減
---上記の削減により質の維持、つまり長距離攻撃システム群、潜水艦発射巡航ミサイル、F-35、サイバー能力、特殊作戦能力を特に高優先度で維持する
---技術的に優れるが小規模になるため、活動場所や任務は限定される。

●「戦力の質」を切る場合
---多くの装備近代化を中止か削減し、サイバー対策を減速し、特殊部隊を削減することになる。軍需産業へのインパクトも出てくる
---結果として、約10年の「装備近代化の休日」を迎えることになる。我々の主要装備は多くが使用限度年数に近づいており、敵の優れた近代装備に対して有効性が低下することになる

結びに代えて・・・
Pentagon.jpg今後数ヶ月間をかけ国防省内で更に検討を進化し、最終的には、大統領に極めて厳しい財政状況下で如何なる戦略的方性で国家安全保障を守るか決断をお願いすることになる。
決断の結果、今説明したような姿とは全く異なる可能性もある。我々の任務は大統領に影響も十分説明した上でオプションを提供することである。特定の選択しに拘ることなく。

「経費の急激な削減と戦略的な削減は両立しない」と繰り返し主張しているように、効率化や福利厚生や戦力削減の効果には時間がかかる。従って10年の削減期間の初期には削減程度は低くなる。
仮に議会が2014年度予算案で提案している福利厚生(military compensation)や施設削減を拒否すれば、削減は更に困難になる。

既に今年は飛行時間の削減や艦艇の派遣中止、無休強制休暇などの大きな影響が出ている。このままだと2014年度も影響が続いてしまう。
議会強制削減を避けることに力を尽くすと共に、仮に強制削減が続く場合は、我々が示した戦略レビューSCMRに沿った効率化や福利厚生や戦力削減を助けてダメージを押さえるべきである
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同会見を報じるDefense-News関連記事は
carter1.jpg●国防省高官は、現法制下では戦力削減のリミットが定められており、2014年と15年はフルレベルの強制削減対処できないと語った。
空軍の作戦飛行隊5個削減は、合計55個あるF-15、F-16、又はA-10飛行隊からの削減であり、各飛行隊は18~24機を保有している

●ヘーゲル長官がミニマムリスクの削減に言及したC-130は、現在400機以上保有している
●カーター副長官とウィネフェルド副議長は、8月1日下院軍事委員会にてSCMRの説明を行う予定である

発表ステートメント
http://www.defense.gov/speeches/speech.aspx?speechid=1798

強制削減対応の国防省web特別ページ
http://www.defense.gov/home/features/2013/0213_sequestration/

まだまだ最終的な方針決定には時間が必要なようですが、「世界の煩わしいことに関わりたくない」と決め込まれてしまっては、どれだけ安全保障上のリスクを訴えても「・・に念仏」で効果は期待できないのかもしれません。
強制削減が完全に実施される場合の50兆円削減対策に注目すべきでしょう。

孫の誕生で仕事を休む文化もすごいけど・・・
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アジア軽視のオバマ政権の様子をご紹介
(岡崎研究所:8月1日:アジア軽視はオバマ政権の課題

Obamacere2.jpg●ケリー国務長官の問題は、アジアを軽視し、かつ、対中宥和的であると見られる点です。しかしアジア軽視は、ケリーの個人的問題というより、第二期オバマ政権自体の問題というべきでしょう。それは、アジア軽視の懸念が出ている時に、アジア太平洋とは縁遠いスーザン・ライスを安全保障担当補佐官に起用したことからも窺えます
●第二期オバマ政権は、中国との新しい関係の構築を軸にアジア政策を遂行しようとしたものの、6月初めの米中首脳会談でその期待がはずれ、その一方で、ヒラリー・クリントンが敷いた、事実上の対中包囲網形成戦略を継続する意思は無く、方向を見失っているように思われます

他面、中東は動いています。イランの新大統領は、イランの核開発問題の交渉解決の天与のチャンスと捉えられているでしょうし、米国内で選挙が無くユダヤロビーに配慮しなくて良い今年は、パレスチナ問題を含む対イスラエル交渉を進展させる好機でもあります
●シリアに火が付き、スーザン・ライスのような人道介入主義者を擁する第二期政権としては、放置もできないのでしょう。オバマ第二期政権の関心が、アジアよりも、中東に向かうのは自然な流れと理解すべきでしょう
●日本としても、アジア政策に関する日米提携を考えるにあたっては、まず、米国の軍と国防当局との連携を密接にするのが正攻法かもしれません
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ご参考:ヘーゲル長官SCRMの基本的考え方
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-04

ヘーゲル長官:予算で訓練可能な部隊のみ保持 [ヘーゲル国防長官]

久々のヘーゲル長官スピーチです・・・

veteran.jpg22日、退役軍人の集会に参加したヘーゲル国防長官は、10年以上にわたったイラク・アフガンでの活動の縮小を踏まえ、将来の戦略的及び財政的困難に適応するため「(国防省・米軍を)根本的にreshape」しなければならないと講演しました。

まず国防長官は、大統領の示した新戦略DSGを限られた資源で遂行するため、同時に過去戦後の軍備縮小で「装備があっても訓練が不十分な空虚な軍」を生み出して苦労した朝鮮戦争等の反省を踏まえ、以下の4原則を念頭に置いて歴史的な国防省と米軍の「reshape」を推進すると説明しました

4原則(principles)は・・・
-- Prioritizing DOD missions and capabilities around the core responsibility of defending the country
-- Maximizing military combat power;
-- Preserving and strengthening military readiness; and
-- Honoring the service and sacrifices of DOD personnel

ヘーゲル長官は施策の方向性を語り
veteran2.jpg●大統領のDSGを限られた資源と財政の現実の中で遂行するため、明確に戦略的な優先順位を設定しなければならない
●(3月の強制削減発動以降)長引いている即応体制の危機や国防関連組織全体へのダメージを回避するため、各軍種には明確な指示を出した。十分な訓練や即応体制が維持できないような人員、装備、施設等は保有するな、との指示である

●先週私は、国防長官室、統合参謀本部や各軍種司令部の人員を2割削減すると発表した。これらにより直接的な経費が削減できるほか、より効率的で効果的、かつ機敏で多様な能力を備えた組織への変革を期待している。
●そしてこれらの削減を含む余分なスタッフや大きな司令部組織や不必要な施設等により、前線部隊の態勢維持や装備品の近代化が犠牲にならないようにしたい。しかしこれだけでは全く不足している。

●前線での戦闘能力を最大限にするためには、我が予算構造に深く根付いている不均衡に対処しなければならない。特に規模が拡大している支援インフラへの支出である
●取り組むべき大きな問題の中には、支えきれなくなりつつある予算の半分を占める人件費の増加も含まれる。

●また、多くの国防省任務や能力は、我が国やその国益を守るために必要不可欠だが、そうでないモノもある。2ヶ月をかけて行った削減項目を検討するSCMR(strategic choices and management review)の結果を踏まえ、どの任務にどの程度の資源を配分するかを優先順位を付けて検討する
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veteran3.jpg久々にご紹介するヘーゲル長官スピーチですが、ほとんど前進がないような気がします
「2ヶ月かけて行った削減項目を検討するSCMR」の結果についても聞こえてきませんし、「必要不可欠でない任務の削減」に関しても・・・・。

そろそろ何か飛び足すのでしょうか? 
10日にはヘーゲル長官が上院の主要議員宛にレターを出し、軍需産業と繋がりのある議員(大多数)への「脅し」として、研究開発や新装備調達予算の2割削減をほのめかしていましたが、しばらくは「腹の探り合い」が続くのでしょうか・
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-11

スピーチ原稿は
http://www.defense.gov/speeches/speech.aspx?speechid=1796

次は政府と議会に要望:シンクタンクの国防改革案 [ヘーゲル国防長官]

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letter-all.jpg3日、主要な政策シンクタンクの国防軍事問題研究者25名が連名で、国防長官と上下院軍事委員会主要メンバー宛の「公開書簡」を発表し、政治や議会による「対応放置」が原因で改革が進まず、前線兵士の装備や訓練に影響を及ぼし始めている諸問題を訴えました。

5月29日には、主要4大シンクタンクが主に国防省と米軍の「旧来思考」を批判して「投資優先転換提言」を行いましたが、今回は主に政治家の「不作為」を指摘して国防改革を求める内容となっています
いずれの提言も、議員による地元への利益誘導を断ち切ったり、有権者の不評を買う「痛みを伴う改革」を求めるもので、実現は容易ではないようですが・・・。

「4大シンクタンクの削減提案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-30

提言1:基地の閉鎖促進・維持費の無駄削減
●国防省自身の見積もりでも、軍施設の建物の面積は約2割が余剰となっており、その維持費は部隊の装備購入や訓練経費を犠牲にして捻出されている。
●国防省側が無駄をなくすため、部隊の統廃合により基地の閉鎖を提案しているが、議会や行政が(地元の雇用喪失や交付金減を恐れ)対応せず放置している
●予算削減対応で兵力も縮小される中、議会は国防省と連携をとり、施設の余剰を正確に把握し、基地閉鎖を進めるべきである

提言2:文民職員の削減
●過去12年間で、兵士の数が3.4%しか増加していないのに対し、文民職員の数は17%も増加している。実に5倍の増加率である。過去4年間だけで見れば、文民職員はなんと10%も増加しており、軍人の削減を補完したり戦略の変更に伴うものなのか、その必要性や増加の理由をほとんど誰もチェックしていない
2013年度は強制的に無給休暇(furloughs)を取らせて支出を抑制しているが、一時的な対策に過ぎない。国防省は文民職員を適正な数まで恒久的に削減すべきである

提言3:military compensation(補償金・報償金)削減
letter-up.jpg●実質的に40年間そのままで、現代の米国社会や若者の価値観とマッチしていない軍人の報奨金や手当制度を見直すべきである。21世紀の国民のニーズに適応したシステムへの変革が理由であるべきだが、同時に支出の増大抑制も重要である
過去12年間に本支出は56%も増加しており、物価上昇率を差し引いても年4.1%もの勢いで増加し続けている。国防省は過去5年連続で改定を提案しているが、議会はそのたびに拒絶している
●国防費全体が縮小する中で本経費が増加し続ければ、兵士の訓練や装備費を食いつぶすことは明らかである。両党の指導者はこの問題に真剣に取り組むべきである

以上に代表される要改革事項は、いずれも容易な課題ではない。しかし長期的に国防力を維持するには必要不可欠な改革項目である。
我々25名の研究者は、国防政策に関しそれぞれ異なる意見を持つが、上記の課題については全員が強く一致している。

アイゼンハワー大統領風に表現すると、全ての不必要な基地維持、全ての余剰文民職員、全ての誤った行き先の軍人補償費は、現場兵士から訓練や装備品を奪い、ひいては我が国民の安全を脅かすことに繋がる。
議会とオバマ政権は行動すべき時を迎えている
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政治と軍の双方に異なった多様な視点で財政危機を乗り越える提案を行うシンクタンク機能を改めて「うらやましく」感じると共に、細部の意見が食い違ってを乗り越え、「公開書簡」の形にまとめ上げた各シンクタンク研究者の「心意気」にも拍手を送りたいと思います

letter-down.jpgしかしこの提言に対し、下院軍事委員会の主要メンバーであるJim Cooper議員(民主党)は「組織の枠組みを超えた研究者たちの提言を賞賛する。しかし、この提言が実行される可能性はほとんど無い。大多数の議員は、国家レベルの課題よりも偏狭な利害で行動しているからだ。また、軍事関係委員会のメンバーの多くは(選挙区に)軍の大きなプレゼンスが有ることを望む人間である」と3日語っています

恥ずかしながら「military compensation」が具体的にどのようなものを指すのか把握していません。恩給のようなものなのか、退役後の医療費補助の話なのか、退役後の失業保険のようなものなのか、ご存じの方が有ればご教授ください
ちなみに、研究者の一人は「イラクやアフガン勤務兵士の半数は5年以内に退役するが、彼らはcompensationの恩恵に浴しない」と現制度を批判しています。
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読者の方から、以下ご教授いただきました!

「military compensation」には広範なものが含まれています。すなわち、

1.給料
(安定度・危険手当などの諸手当の充実などから、軍の給与水準は同世代の同程度の教育水準の民間人の80%よりも高い水準にある、と、この書簡の署名者の一人であるマイケル・オハンロン氏が、書簡が公開された3日に議会で行われた記者会見で言っていました)

2.退役後の軍人恩給
3.傷痍軍人に対する補償

4.健康保険
(←軍人およびその家族はTricareという健康保険制度の対象となり、この制度の下で、保険料を世間一般の標準から比べると格安(たしか1995年以来、保険料個人負担分の金額は据え置きになっていると思います)に設定されています。)

5.米軍病院へのアクセス
6.各軍の保養所へのアクセス

7.米軍敷地内の売店(PXやカミサリー)
←もともとは「いつでもどこでも米本土並み」の生活水準を提供するために発足したものですが、これだけ流通が活発化した今でも、どうみてもそのような施設が必要ないと思われる交通の便の良い米軍基地にもカミサリーは引き続き置かれており、この運営経費がばかになりません)

以上の諸項目が少なくともmilitary compensation というカテゴリーには含まれていると思われます。もちろん、このうちの退役軍人分のコストについては国防省ではなく退役軍人省の予算に含まれていますが、国防省予算に含まれている部分だけでもかなり予算を逼迫している、というのが現状のようです。
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研究者25名一覧(日本や本ブログで馴染みの名前が並びます)
David Barno, Lieutenant General USA (Ret.), Center for a New American Security
Nora Bensahel, Center for a New American Security
Shawn Brimley, Center for a New American Security
Robert Work, Center for a New American Security

David Berteau, Center for Strategic and International Studies
Nathan Freier, Center for Strategic and International Studies
Maren Leed, Center for Strategic and International Studies
Clark Murdock, Center for Strategic and International Studies
Kim Wincup, Center for Strategic and International Studies
Dov Zakheim, Center for Strategic and International

Barry Blechman, Stimson Center
Gordon Adams, Stimson Center
Russell Rumbaugh, Stimson Center

Thomas Donnelly, American Enterprise Institute
Mackenzie Eaglen, American Enterprise Institute

Michael O’Hanlon, Brookings Institution

Eric Edelman, Foreign Policy Initiative
Christopher Griffn, Foreign Policy Initiative

Andrew Krepinevich, Center for Strategic and Budgetary Assessments
Jim Thomas, Center for Strategic and Budgetary Assessments
Mark Gunzinger, Center for Strategic and Budgetary Assessments
Todd Harrison, Center for Strategic and Budgetary Assessments

Lawrence Korb, Center for American Progress
Paul Eaton, Major General USA (Ret.), National Security Network
Christopher Preble, Cato Institute

2013シャングリラ・ダイアログ(Shangri-La Dialogue:第12回アジア安全保障会議:12th Asia Security Summit)特集 [ヘーゲル国防長官]

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中国軍の副参謀総長による質疑応答

China crop.jpg6月2日、中国人民解放軍の副参謀総長Qi Jianguo(戚建国:中将)が、講演の後に質疑応答に対応しています。遅くなりましたが、ご紹介します

講演自体は「中国は平和を愛する国である」とのフレーズで始まる、会場を「しらけさせる」ほどの「綺麗ごと」に満ちた「中身なし:完全にゼロ」の内容だったのですが、質疑応答では合計16もの質問に「立て板に水」の回答で、「さすが国際問題担当」と思わせる中身でした。

トランスクリプトはこちら
http://www.iiss.org/en/events/shangri%20la%20dialogue/archive/shangri-la-dialogue-2013-c890/fourth-plenary-session-0f17/qa-57d8
カナダ国防大臣等と並んでの質疑応答です

興味ある部分をつまみ食いでご紹介
●核兵器の先制使用に関する質問に感謝する。まず第一に、中国政府は半世紀にわたり維持してきた「policy of no first use of nuclear weapons」を決して放棄することは無い。これは中国にとっての利益だけでなく、全人類の生存のためである。
●中国の国防白書に関しては、今回は形式を変えた初めての「テーマを絞った白書」であり、中国国防政策の全てをカバーするものではない。今回の新タイプ白書に核兵器の先制不使用への言及が特別に無いだけで、第2砲兵に関する記述で、どのように核兵器の先制不使用を遂行するかの原則が記載されている

China-SDL-2013.jpg●琉球列島と沖縄が中国に帰属すると主張する中国研究者の論文が中国紙掲載されたが、これはある研究者の見方であり、中国政府の見解に変化は無い
●ただし、明確にしておきたいが「Diaoyu Islands:尖閣列島」は琉球列島や沖縄とは異なる。尖閣諸島については中国の立場は明確である

中印の国境問題は50年以上にわたる問題である。しかし、両国政府は2国間でこの問題を解決しようとしているし、もちろん平和的にである。
●両国の国境警備部隊間で衝突があるのは特別なことではなく、両国間の関係全体に影響を与えるものではない

●中国国防大臣(国防部長)の参加要請に関してであるが、私はこの会議が公正で、透明性が高く、開放的で、友好的な雰囲気のある優れた場だと考えており、帰国後国防部長にそのように報告するつもりだ。
●またお誘いがあったことも伝える。国防大臣は、この場を意思疎通と議論と研究に相応しい場と考え、参加するだろう

●講演の中で、「中国の核心的利益」に変化があったは一切述べていない。変化は全く無い

尖閣問題の「棚上げ発言」
IISS研究者と打ち合わせ、この質問を仕組んだ可能性大

William-Choong-IISS.jpg質問者は「Dr William Choong」
(Shangri-La Dialogue Senior Fellow for Asia-Pacific Security, IISS-Asia)

Q質問:・・・in the East China Sea where we could see, like my colleague Christian Le Mière has said, joint development, and perhaps a reversion to the 1970s-era agreement between China and Japan to actually defer the terriotorial dispute for later generations?

A回答:The ninth question is about whether China will shelve the dispute of the Diaoyu Islands and leave it to be solved by future generations. In my opinion, there is no doubt on this concept.

More than 20 years ago, our great leader Mr Deng Xiaoping proposed in his great political wisdom that since the issue of Diaoyu Islands could not be solved for the moment, and our future generations are more intelligent than us, we should be patient enough and leave the issue to be solved by the future generations.

This is a wise strategy selection. Actually, with regard to the East China Sea issue and South China Sea issue, there is no condition for a complete solution for the moment. We hope that the countries involved can be patient enough and believe that our future generations will do better than us.

Our future generations are surely more intelligent than us. Therefore, we agree to shelve the dispute, and leave it to be solved by future generations with wiser methods.

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ヘーゲル長官質疑応答のトランスクリプト公開
https://www.iiss.org/en/events/shangri%20la%20dialogue/archive/shangri-la-dialogue-2013-c890/first-plenary-session-ee9e/qa-f303

正直申し上げて、ヘーゲル長官はまだアジア問題を十分掌握しておらず、10名以上から繰り出された細かな質問に答える知識は持ち合わせていないとの印象を受けました。
回答として講演原稿をもう一度くり返す場面が頻発し、講演以上に新たな展開はありませんでした。

例えば、当然最初に出た質問は
Kato-Asahi NP.jpgQ:昨年パネッタ長官は「強制削減は起こらない。起こったら大変だ。新国防戦略の遂行は大変なことになる」と厳しい表現で講演したが、実際起こった。どうするのか?
Q:(お約束のスポンサー朝日新聞:加藤洋一記者)現下の財政状況で、何処まで中国のA2ADの力に対抗できるのか? 同盟国や友好国は米国に頼ることが出来るのか?

A:(要旨のみ)講演で述べたように、戦略レビューSCMRで優先順位を付けて戦略を遂行する。またオバマ大統領もケリー国務長官もアジアを訪問し、また米国内でも、アジアが重要で国益がかかっており、資源を投入すると明確に発言している
A:(要旨のみ)サイバーのような脅威が典型だが、我々全ての国は脅威を共有している。利害も共有している。非常に複雑な脅威で、どこから来たのかも判別が難しい。一国での対応は難しく、各国が協力し共通の脅威として、共通のアプローチを取ることが重要

面白かったのはジョーク部分です
2013SDL-2.jpgQ:(いきなり進行役のIISSチップマン理事長が5名から重い質問を受けつけ、あと2回はくり返すから皆さん待っていて下さいと聴衆に語った後で、ヘーゲル長官は元国防長官のコーヘン氏を会場内に発見し、)
A:正直に申し上げると会場にいるコーヘン氏に壇上に上がってもらい、私の横でどのように応えるべきか助言して欲しいのだが・・・。

Q:(ロシアとカンボジアの関係者からの質問で、)ここの国別に細かく言及があったのに、ロシアとカンボジアに言及がなかった。どう考えているのか?
A:私のスピーチライターが間違った・・・と言い訳するのが米上院での悪い習慣だが・・。(これは場内爆笑

以下の中国軍人からの質問には、場内も注目したようですが、回答の7割が講演原稿の繰り返しでした・・・

中国軍幹部がヘーゲル長官に噛み付く!
★質問by Maj. Gen. Yao Yunzhu
中国軍事科学院のChina-America国防関係部長
●あなたは講演で、米国の戦略は中国を封じ込めることではないと述べたが、実際行っていることは封じ込めではないのか?
中国封じ込めを狙いとしていないことを、どのように中国に納得させるつもりか?

★回答byヘーゲル長官
Hagel dinner.jpg●講演で述べたように、米国は強く発展する中国、責任感を持った中国を歓迎するインドやインドネシアにも同じことを希望している。(まんぐーす注:だからインドとインドネシアと中国を講演で同列に言及したんだ!)
●我々は申し上げたような多くの理由から中国の発展を望んでいる。しかし同時に、大国が担うべき責任を理解するよう期待している。なぜなら、強力な国家は地域の安定や平和への影響が大きいからである
●200年以上にわたって太平洋国家であり続けるわが国は、これを認識し、その一部でありたいと望んでいる。決して新しいことではない

●我々には、長期間この地域に利害があり、パートナー関係があり、諸関係が存在する。中国やロシアや他国が、世界中で同様の利害を抱えているように
●米国は誤解や誤認識や誤解釈を避けたいのだ。これらを防ぐ唯一の道は、対話を継続することだと思う
互いに率直で、相互の考え方を知り、双方を理解している状態になり、初めて歩調を合わせることができる。この点、我々は前進してきた。より前進することが出来るだろう
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速報!ヘーゲル長官講演の原稿と映像36分
https://www.iiss.org/en/events/shangri%20la%20dialogue/archive/shangri-la-dialogue-2013-c890/first-plenary-session-ee9e/chuck-hagel-862d


★★ヘーゲル講演の概要を速報!
まんぐーす的には、下線部分が「目新しい」言及です。
全般には「リバランスが順調だ、今後も続ける」とのメッセージを、中身はあまり無いものの必死で訴えている姿が印象的です。特に、予算も確定していない国防省計画段階の配備計画や、開発実験段階の装備まで持ち出してアピールするあたりは、ちょっと悲しささえ感じさせます。
厳しい評価の報道や専門化分析が予想される内容です。

質疑応答が公表されたら、フォローしたいと思います

★導入とアジア情勢認識
2013SDL.jpg私は第1回目のシャングリラ・ダイアログ(SDL)の参加者であるが、この会合がここまで発展したことを嬉しく思う。この10年でこの地域は、世界人口、世界経済そして安全保障の「重心」となった
●アジアへのリバランスは他の世界からの撤退を意味するものではない。米国は世界中に同盟国や国益や責任を持っている。

●アジアの課題
北朝鮮の核兵器、ミサイル、挑発
領土や領海を巡る資源に関連する紛争
自然災害、貧困、伝染病
環境悪化
違法な取引・・・人身、兵器、薬物、その他危険な物質
宇宙やサイバー空間における破壊的な行動

●米国は、地域の同盟国等と連携を強化し、新たな関係も構築し、共通の価値観を共有して地域が平和で繁栄することを確実にすることを目標にしている
米国のリバランスは、外交、経済や文化戦略が中心であり、米国は開発援助や水資源管理、公衆衛生、貿易協定や投資合意を進めている
●米国防省も重要な役割を担っており、2012年に発表したDSG:Defense Strategic Guidance(新国防戦略)に示した方針の通りで進めている

★リバランスを昨年言及どおり着々推進
2013SDL-2.jpg米国防省への資源配分が減少するからと言って、DSGが実行できないと考えるのは懸命でなく早合点である。米国は世界の国防費の4割を支出する国であり、適切な資源配分により対応して行く。
限定的な資源を優先事業に向けるため、米国防省は戦略レビューSCMRを実施中であり、DSGに沿って検討を行うように指示している。皆さんに約束できる。
●このSCMRで米国が継続してリバランスを実行し、アジア太平洋を優先した投資や活動を行うと確約できる。既に目に見える行動を起こしている

例えば、アフガン兵力削減後に第1及び第3回海兵展開軍、陸軍第25師団をアジア地域に戻した。陸軍第1軍をアジア用に改編している所である
●昨年表明した2020年までに海軍アセットの6割を太平洋地域に配備するように、空軍の海外配備戦力の6割をアジア太平洋に配分し、これには米本土からの戦術機や爆撃機を含まれている
●シンガポールへの沿岸戦闘艦LCS配備も1番艦が到着した。豪州での海兵隊ローテーション配備も継続中で、地域国との訓練強化も進めている

●米国防省が議会に提出した予算案では、戦力投射が容易な潜水艦、長距離爆撃機、空母戦闘群に力を入れている。将来は、日本へのF-22とF-35配備や、グアムへの4隻目のバージニア級潜水艦配備も計画している
2013SDL-3.jpg技術開発でも、無人機の空母初離陸、来年海軍艦艇へレーザー兵器配備:ミサイルや小型ボートや無人機対応用を進めている。

太平洋軍に演習費100億円以上を割り当てて、訓練規模を拡大。またハワイの安全保障研究機関での教育人数増加予算確保

★2国間関係の強化に努力
●2国間関係でも、継続して同盟やパートナ関係強化に投資して行く。例えば・・・
---日本とは、ガイドラインの見直しに合意。戦力再配置に実質的な進展。ミサイル防衛能力の協力向上
---韓国とは、新たなVision(more globally-oriented Alliance out to 2030)を議論中
---豪州とは、サイバーと宇宙状況認識強化の協力拡大。米空母機動部隊に豪艦艇を加えて訓練推進
---フィリピンとは、米軍のローテーション配備兵力増加を協議。海軍能力強化に向けた協議
---タイとは、半年前に50年ぶりに共同Visionを発表
●3カ国関係でも、米日韓、米日豪の枠組み推進。ジャングルでの訓練を米タイから韓国にも拡大。また米日印の関係確立に努力

●パートナー関係強化では
---マレーシアとは、初の米空母寄航を実現
---ベトナムとは、新たな覚書で強力拡大。これには海上安全保障、訓練強力、捜索救難、軍事医療、PKO、HA/DRを含む
---シンガポールとは、アフガンやアデン湾での協力も含むStrategic Framework Agreementの強力推進
---ビルマ(ミャンマーとは呼称せず)とは、軍事協力を特定の項目について慎重に開始。軍改革を支援し、人権に配慮する。

世界最大の民主主義国であるインドとは、装備品取引だけでなく、技術協力・共同開発に取り組む。インド洋と太平洋の通商拡大にインドの重要性を認識し、地域安全保障のためにインドの軍事力強化を歓迎する

●インドと並び、地域の安全保障に影響を与える「他のrising powers」とも協力し、共に責任を担いたい。このため、米国の長期的戦力として「rising powers」との強力な関係を構築したいインド、中国、インドネシアを含む国と
●インドネシアは、最大のイスラム国で民主的で多様な国家であり、鍵となる役割を担っている。HA/DR、海洋安全保障、PKO、脅威の移動阻止で共に協力を進めたい

★中国との関係について
2013SDL-China.jpg●中国との建設的で前向きな関係構築は、米国のアジアリバランスにおいて必要不可欠な部分である。他国も中国とそのような関係を持つよう推奨する
●最近の中国と台湾間の関係改善を強くサポートする。

●米国と中国には意見の相違もある。人権、シリア問題、地域の安全保障問題等に関してである。誤解や誤判断のリスクを低下させる関係の構築、特に軍隊間の関係を要望する
昨年は以下のように両国軍事関係に前向きな展開があった。前主席のペンタゴン訪問、前国防長官等の訪中、米比演習「Balikitan」を中国がオブザーブ、共同海賊対処演習@アデン湾、RIMPACへの招待、太平洋国家陸軍参謀長会議の共催同意、今年後半に国防部長を米国へ招待

★地域の安全保障枠組み構築に向けて
3-Nations.jpg●ASEANは地域のネットワーク構築の基礎を提供し、「East Asian Summit」や「ASEAN Regional Forum」、更に新しい「ASEAN Defense Ministers Meeting Plus (ADMM+)」も重要な安保目的追求の枠組みである
●「ADMM+」の具体的な成果として、7月に中国、ベトナム、シンガポール、日本が共催してHA/DR演習をブルネイで計画し、米国も参加して中国と医療強力訓練を実施予定である。
●米国はこのような地域国間の強力拡大を支援して行く。本会同でASEAN国防相の皆さんに、来年ハワイで初の米国主催で国防相会議を開こうと提案したところである。

●皆が平和と安定を追求する中、この価値観を無視し、破滅の道を行く国がある。北朝鮮だ。核ミサイル開発を追求する北朝鮮を米国は支持しない。いかなる国も北朝鮮と通常の関係を持つべきではない。平和的解決には中国と米国の緊密な協力も必要だ

★朝鮮半島以外の懸念(中国を強烈に示唆)
2013SDL-many.jpg●当地域における数々の領土問題に起因する危険な誤解を懸念している。米国は領有権問題に関して特定の立場をとらないが、問題解決に関心が無い訳ではない。現状を強制的に変更しようとするいかなる行動にも強く反対する。平和的で安保環境を維持する手法での解決を信じている
●南シナ海での抑制的行動を求める。平和的解決を求め、中国とASEANがホットラインを開設に同意したことを支持する。また行動規範の議論開始に向けた努力を歓迎する

●新たなドメインであるサイバーでも共通のルールの必要性が認識されるべきである。米国はサイバー侵入の脅威、そのいくつかは中国政府や軍組織から、に懸念を表明してきた米中間にサイバーworking groupが設置されたことは前向きなことである。
●我々は中国や他の関係国と共に、サイバー空間での責任ある行動の国際規範を作るため、議論を進めたいと考えている

★締めのメッセージ
●我々の子供たちに、他の子供たちも含め、20世紀にこの地域を襲った残酷な現実を再び経験させたくない。平和と繁栄に満ちた21世紀に、皆さん一人ひとりと共に取り組みたい。これは我が世代の責務である。
複雑だが、同時に希望の時でもある。地域の多くの人々や国家が、共に犠牲を払った経験を共有しているからである。多くの可能性を多くの人々が持っているからでもある。我々に掛かっているのだ。
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Shangri-la-D.jpg5月31日夕刻からシンガポールで、シャングリラ・ダイアログ2013(Shangri-La Dialogue)が開始され、ベトナム首相の講演で幕を開けました。
中国軍事力の近代化と乱暴な海洋進出等で話題満載のアジア太平洋地域で開催される安全保障関連の一大イベントですので、今年もこの記事に随時追記する形で、ヘーゲル長官の講演や質疑応答をフォローしたいと思います。

ちなみに過去の様子は・・
「2012年シャングリラ会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年シャングリラ会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「2010年シャングリラ会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05

まずは主催者英IISSのプレスリリース30日付Defense-Newsより、今年の注目点をピックアップです

12回目にして最大の規模に
Hagel-Dinner.jpg31カ国から国防大臣や高官、軍幹部が参加予定。特に5月31日は2国間の国防相会談等が多数設定される。具体的参加国には、Australia, Azerbaijan, Bangladesh, Brunei, Cambodia, Canada, China, Columbia, France, Germany, India, Indonesia, Japan, Republic of Korea, Laos, Malaysia, Mongolia, Myanmar, New Zealand, Pakistan, Philippines, Russia, Singapore, Sri Lanka, Sweden, Thailand, Timor-Leste, UAE, UK, US, and Vietnam
アジアの国防大臣はAustralia, Burma, Brunei, Cambodia, Indonesia, Japan, Laos, Malaysia, New Zealand, Philippines, South Korea, Singapore, Thailand, Vietnam and the USから現時点で参加
●ベトナム首相がオープニング講演を行うほか、同副首相も分野別セッションで講演を行う予定。南シナ海で中国と対立するベトナムの積極姿勢が際立っている

ヘーベル国防長官が初登場
Hagel-Qi.jpg●就任後初めて本会合に出席であり、ベトナム戦争に参加した経験を持つ初の国防長官として大きな注目を集めている
●本人の経歴だけでなく、もちろん参加者の関心は、米国が予算の強制削減で国防費減を迫られる中、あいまいなアジア太平洋「PIVOT」や回帰戦略をどのように6月1日朝の講演で説明するかに有る。
●また、鳴り物入りで2010年QDRに登場し、関係国を神経質にさせているエアシーバトルのについても発言が期待されている。もちろんオフショア・コントロール論との関連も問われるであろう

国防省関係者はヘーゲル長官に関し
●28日、ヘーゲル長官の会同参加に関する「background briefing」で国防省関係者は、「昨年、パネッタ前長官がシャングリラで説明した新国防戦略(DSG)とアジア太平洋へのpivotについて、フォローアップする事になる」と語った
●また「今年は正に、昨年概要を説明した新国防戦略やリバランスが、実際どのように進行しているかを示す事になる」とも付け加えた。
●シンガポール滞在中、ヘーゲル長官は日本、韓国、豪州とバイの会談を予定している

中国は副参謀総長(中将:国際関係担当)が参加
Qi Jianguo.jpg●2012年は多忙なためとして高官の参加を見送った中国だが、2007年から11年までは国防部長(国防大臣)をトップに参加していた
●本年は昨年よりもランクアップしたが国防部長は参加せず、代わりに中国軍の軍事交流を実質仕切っている副参謀総長のQi Jianguo(戚建国:中将)が参加する
習近平が米国を訪問し、オバマ大統領と6日と7日に会談予定でもあり、今回はこれまでの主張を繰り返すだけとの見方もある。同中将は6月2日に講演予定。

欧州主要国の国防相も参加
EU-delegation.jpg英仏独の3カ国が国防大臣を派遣し、EUも外務安保担当代表が参加することになっており、これまでにないほど欧州のアジアに対する関心が高まっている
●IISSのHuxleyアジア部長は「欧州のアジアへのPivotである。これまでのシャングリラ会同にはなかった何かが起こっている」と変化を強調した。
●欧州の軍事費は低下を続けているが、アジアへの関心は低下していない模様だ。武器輸出相手先としても・・・。

その他の話題:井戸端会議
●この会合は、あくまで英国の民間研究所であるIISSが主催するもの。IISSチップマン所長は「がめつい商人」として知られ、極東では韓国と中国と日本に3又をかけ、この手の国際会議を誘致するようhたらきかけ、金儲けの機会を伺っているらしい。
スポンサー企業6社のうち2社が日本企業。朝日新聞と三菱商事。他は軍需産業が中心で、ボーイングやロッキード・マーチン等が。

Sponsar.jpg●ここ数年、朝日新聞の加藤洋一記者が米国防長官の公演後に質問の機会を与えられている。IISSチップマン所長直々の指名であり、恐らくスポンサー特権だと思われる
●確か2011年の会合で、先日参議院の環境委員長を解任された川口順子氏は、中国軍人の日本を誹謗する発言に毅然と挙手し、理路整然と日本の立場を主張、会場の識者一同から賞賛された

6月1日のヘーゲル長官講演をお楽しみに・・・このブログ記事に追記予定です。
目の弱体化と経済的理由で更新が厳しきなってきました。最後のシャングリラ・フォローになるかもしれませんが・・・

ちなみに過去の様子は・・
「2012年シャングリラ会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年シャングリラ会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「2010年シャングリラ会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05

速報:4大政策シンクタンクが国防費削減案を [ヘーゲル国防長官]

4-Tank.jpg29日、ワシントンDC所在の4大政策シンクタンクが共同発表会を行い、強制削減対応策を検討する国防省の戦略レビューSCMR(5月末期限)に対する事前提言を行っています。

参加したシンクタンクはCSBA、CSIS、CNAS、AEIで、それぞれに政党との繋がりや思想が異なる研究機関ですが、国防政策に関し盛んに提言を行っている点において「4大国防政策シンクタンク」と言っても過言ではありません

検討の土俵をそろえるためCSBA提供のツールを使用し、各シンクタンクチームが考える方向性を同一ツール上で表現して比較する事により、多少単純化した結果となっていますが、共通点を見いだし、差異を明確にした点で興味深い内容となっています

それにしても、競い合うシンクタンクが同じステージで堂々と政策を議論しあう「うらやましい」の試みです。タイミングもばっちり。週末のシャングリラ・ダイアログとの時間差も絶妙です!

まず手法の概要をご紹介
●予算削減の目標を今後10年間で2ケース設定(A:52兆円とB:24兆円)し、2通りの削減案を検討。Aでは10年間均等削減、Bは前半は緩やかで後半きつく削減のシナリオで。
CSBA提供のツール(Rebalancing tool)は、軍種別や組織別ではなく、機能や能力別に650個の削減オプションを準備しており、各チームは独自の思想に基づきオプションの中から選択して削減目標を達成する

4-tank-meeting.jpg結果は10項目に整理され提示される。10項目はAir、Sea、Land/Expedition、戦略抑止、サイバー宇宙C2、特殊作戦、兵站・基地、人件費、即応体制、科学技術
●国防省が昨年発表した新戦略(DSG)は出発点であり、各チームの考え方で展開する
●各シンクタンクの結果は参加研究者の考え方であり、各シンクタンクの考え方を代表するものではない

手法の概要、結果比較、各チームの分析結果はCSBAサイトに
http://www.csbaonline.org/publications/2013/05/strategic-choices-exercise-outbrief/

CSBA:Todd Harrison氏による総評を斜め読み
注意:プレゼンスライドの適当なまんぐーす解釈です
無人機
予算削減の中でもステルス無人機には大幅な投資の伸び確保。非ステルス無人機についてはケースやチームにより相違が
戦闘機と攻撃機
ステルス機も非ステルス機も大きく削減特に非ステルス機は4チームとも投資額激減
爆撃機
ステルス爆撃機への投資は強め。非ステルスも細々維持

水上艦艇
空母は2~4隻減、駆逐艦や巡洋艦も4~14隻減
陸軍部隊
最低でも4万人、最大で16万人削減

4-tank-full.jpgサイバー宇宙C2
削減の中でも1~3兆円増 Bケースなら宇宙分野は増額
弾道ミサイル防衛
Aケースでも投資額維持
ICBM部隊
Aケースなら現有150発から数十発削減


特殊作戦
Aケースでも投資額増
即応体制
Aケースならマイナス許容

基地閉鎖
基地閉鎖・統廃合を促進(そのために一時的な支出増を許容
人件費
文民の大幅削減(最低8万人、最高20万人削減)

科学技術
A・Bいずれのケースでも現状維持又は増加
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なんと言っても削減の矛先は人件費です。陸軍(地上部隊)と文民を併せて、最低でも12万人、最大で36万人の削減で強制削減に対処するのが4大シンクタンク共通の方向性です。
おそらく国防省案ではここまでドラスティックな人員削減案はでないと思いますが、これにより装備の近代化がかなり存続可能になるようです

4-Tank-Fighter.jpg戦闘機や攻撃機の削減も共通の結論です。4チームともミサイルや誘導兵器への投資は推進していますので、この辺りは中国やイランを見習って米国もA2ADの考えを導入しろ、との考え方です
空母の削減も多くのシンクタンクが提案しました。脆弱性が増す空母への投資を制限するのも自然な成り行きです

国防省が要求している人件費の中のcompensation(補償費)の伸び削減が、どれほど含まれるのかは細部を見ないとわかりません。また基地の統廃合を積極的に進めるため、一時的な支出増を受け入れる考え方は同じです

本当に適当に斜め読みして書いていますので、是非ご自身で真偽のほどはご確認ください

手法の概要、結果比較、各チームの分析結果はCSBAサイトに
http://www.csbaonline.org/publications/2013/05/strategic-choices-exercise-outbrief/

「国防省戦略レビューの状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-20

戦略レビューの状況&国防省VSシンクタンク [ヘーゲル国防長官]

ついに登場!「ゲーツ元長官語録100選」
http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19
ロバート・ゲーツ語録より→私がCIA長官の時、イスラエルが無人機を有効使用することを知った。そこで米空軍と共同出資で無人機の導入を働きかけたが1992年に米空軍は拒否した。私は3年前、今度は無人機導入のため牙をむいて4軍と立ち向かったhttp://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
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2014Budget.jpg19日付Defense-Newsが、5月31日の期限に向け、予算削減への対処方針を定めるため国防省内で検討作業が続いている戦略レビューSCMR(Strategic Choices and Management Review)の進行状況とその方向性について、国防省関係者からの情報を紹介しています

また、国防省によるSCMRに対抗するような形で、4つの主要シンクタンクが5月29日に議会で、それぞれの考える予算強制削減策等を発表することが明らかになっています。
予算を削減されたら軍の体制が維持できない、又は敵対者との本格紛争を戦えないと主張する国防省に対し、まだまだ無駄な部分がたくさんあると主張するシンクタンク案との激突が、更に議員を巻き込んだ議論が予想されます

まずは国防省のSCMRについて
(国防省や関係者の話を総合して)
money.jpg●SCMRの中で国防省は、3種類のレベルの削減案、つまり$100 billionと $300 billionと$500 billionへの対応案を準備している。
●このレビューは特定の削減分野を決定するものではなく、優先順位やトレードオフの考え方の基礎を提供するもので、同時にどのように削減するかにも触れルもの。また、31日に完全な報告書が出るわけではない模様
●2ヶ月間にわたるレビューで国防省は、基地閉鎖や兵士への補償金が削減目標達成に重要だとの認識に至っているようだが、これらや他の制度改革や兵力組成や調達計画や任務に関する削減に、議会が同意するかについては悲観的に見ている

3つの削減案
$100 billion(10兆円)削減案は表面的な削減で対応可能で、かつ削減を後送りして対応を考慮する時間も稼げる。このケースでは陸軍が大きな削減負担を背負う。一般には、これ以上の削減を国防省は背負わされるだろうと考えられているが。
$300 billionのケースでは、すべての軍種が負担を分担して負うことになる
●強制削減がそのまま実行された場合の$500 billionケースでは、各軍種が大損害を受け、主要な装備品調達計画が中止や縮小に追い込まれる。このケースでは「near peer competitor」(中国をイメージ)との本格紛争ができなくなる

国防省高官等の発言
carterBuyingPower20.jpgカーター副長官は7日の講演で、「今後10年を見据えた主要な戦略的選択と制度的変更を明らかにしていく。しかし新国防戦略は守らねばならない」、「すべての選択肢が議論の対象である」と語り、「レビューの枠組みとして、任務・役割、戦争計画、業務慣習、軍の構成、人的経費、調達近代化経費、作戦及び態勢維持を考えている」と述べている
●少し具体的にカーター副長官は「軍の構成、投資、補償費、医療費、司令部機能経費について、我々が選択すべき方向を明確に示す」とレビューについて解説している

カーター副長官がデンプシー議長とレビューを行っており、国防省監査官のヘイル氏とコスト分析評価局長のフォックス氏も重要な役割を果たしている。
●ヘーゲル長官も司令部等の経費(overhead spending)が主要削減対象だと述べたことがあるが、米会計検査院によると、地域戦闘コマンドの司令部要員は最近5割・1万人増加している
研究者の中には「軍の構成や司令部等の人員や経費を見直せば、装備品調達を削減する必要は全くない」と主張するものもいる

4つの主要シンクタンクによる対案
5月29日に米議会で同時に、ワシントンDCの主要な戦略シンクタンクであるCSBA、CSIS、AEI、CNASは、強制削減に対応するための戦略や装備品調達の提案レポートを発表する
●4つの研究機関はそれぞれに政治的な指向が異なるが、共通の提案があれば非常に興味深いし、個性のある提案にも関心が集まっている。
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AEIcapital.jpg29日の発表聞かない時点で恐縮ですが、個人的なシンクタンクの好みでいくと、次の順序でその内容に注目しています
これまでの軍関連レポートで最もバランス感があるCNASが一押し、次が元気なCSBAで、安定感のCSISが3番。最後は、防衛省や自衛隊受けが良さそうな威勢のよいレポートが出そうなAEIです。

でもやっぱり、シンクタンクが独立してさまざまな案を競い合う米国のような仕組みが羨ましいです・・・。

31日からは、2013年のシャングリラ・ダイアログが始まります。ヘーゲル長官は、現地時間の6月1日午前9時から講演します。5月末は忙しいんです!
ShangriLa_2011.JPG


4つも一度に出されると、サマリーの書き出しだけしか読まない気がしますが、大新聞や日本の研究機関が紹介してくれることを期待して「果報は寝て待て」します

何となくモヤモヤするときは是非ご覧ください!
ついに登場! 「ロバート・ゲーツ元国防長官語録100選」
http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19

米韓同盟60周年の大パーティー [ヘーゲル国防長官]

hagelKorea6.jpg7日夜、米韓同盟60周年を記念した大夕食会がスミソニアンの肖像画館内で行われ、訪米中の韓国大統領がホストのような形で出迎える中、ヘーゲル国防長官ら国防省・米軍幹部が出席し、ヘーゲル長官がスピーチしています。
韓国大統領は7日昼間にオバマ大統領と会談し、夜パーティーを行い、そして8日に米議会で日本の歴史認識を批判する演説を行ったわけです。

本日ご紹介するのはヘーゲル長官のスピーチですが、「北朝鮮」との言葉は一度も使用せず間接的表現にとどめ、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン等でともに戦った絆を強調し、同盟のさらなる発展を祈り、韓国軍の海外での活躍に期待を寄せています。また最後に、本年末の韓国訪問に言及しています。

特別な内容はありませんが、為替変動等で陰りが見え始めた韓国経済情勢の中でも、スミソニアンの博物館を借り切り、大規模に夕食会を行う「韓国パワー」と民族衣装でホステスを勤める「韓国大統領の必死さ」をを写真でご確認ください。

約3分のスピーチでヘーゲル長官は
hagelKorea2.jpg●本日のオバマ大統領との会談では米韓の不朽の友情の絆が再確認された。今宵は同盟60周年を記念し、同盟が両国の国益に不可欠であり、北東アジア安定の「cornerstone」であることを確認したい
●韓国大統領はワシントン到着後、最初に朝鮮戦争記念碑を訪問されたと伺ったが、今宵参集の皆さんも何度となく同記念碑に赴かれたことだろう。朝鮮戦争に命を捧げた全世代の米国人にも思いをはせる場としたい

●朝鮮戦争後も、米韓両軍は無数の機会に固い絆を築いてきた。私自身もベトナムにおいて、韓国兵士が如何にタフで勇敢で頼りになる戦士であるかを目の当たりにした
アフガンでも、世界の安全のために前に出て役割を担ってくれた。過去も現在も、そして未来にも共に両軍は立ち上がるだろう

●80年代に私がUSO(米軍支援団体)会長時代に訪韓した際、米国から遠く離れて駐留する米軍兵士への温かいサポートを韓国民から頂いていることを感じた。その後私が上院議員として訪れた際もそう感じた。

hagelKorea.jpg●自由と民主主義の価値観を共有する同盟関係は、韓国を世界の経済パワーに押し上げる背景となった。米国は今後も、朝鮮半島の安全保障のために軍事力提供にコミットする
●我々はこの軍事関係を、より世界的同盟に拡大していくことにもコミットしている。共に協力し、アデン湾での海賊対処から南スーダンでのPKOなど、世界中で協力していきたい

本年後半に韓国を訪問し、アジア太平洋の平和と安定に寄与してきたパートナー関係をより進化させることを楽しみにしている。
●改めて、韓国大統領御一行を歓迎し、この困難な中での韓国大統領のリーダーシップに敬意を表する
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hagelKorea5.jpg恐らく韓国大統領は夕食会開催前の控室で、「ヘーゲル長官が参加されたベトナム戦争では、わが韓国兵士もともに戦い」とか、「ワシントン到着後、いの一番に朝鮮戦争記念碑を訪れて、米軍兵士の冥福(注:米兵3.3万人死亡)を祈りました」とか語りかけて、ヘーゲル長官と親密に話したのでしょう
ともに血を流した関係は深いものがありますが、チョゴリパワーもすごいです! でも韓国国民の目にはどう映るのかな? 北朝鮮が主張するように、ちょっと屈辱的なイメージに韓国人には映るのでは?

一方、現在でも韓国勤務を希望する米軍兵士は少なく、国防省と米軍は住居や生活環境の改善で韓国の不人気挽回を画策しています。勤務期間の延長や家族帯同での赴任促進も進めているようです。
関係ないですが、ワシントンDCの観光地には土産物販売の移動車両が多数出店しており、10数年前までは黒人運営が大半だったのに、最近は韓国系がほとんどで商品の質もガタ落ちです。嫌われないようにして下さいね・・。

カーター副長官とオディエルノ陸軍参謀総長も参加しています。

韓国を脅してアフガン出兵へ
「米国が韓国を恫喝アフガンへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-10-22-1
「涙。韓国、米国に屈す」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-10-30-1

米韓関係の色々
「在韓米軍は兵士に不人気?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-10-02
「韓国の米軍再編は順調」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-27

「米は韓に核燃料再処理を許さず」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-25
「韓国軍需産業は元気です」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-02-23-1
「韓国がRQ-4を米国に値切る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27-2
「F-35:韓国は強気」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-20-1

小野寺・ヘーゲル記者会見の概要 [ヘーゲル国防長官]

HagelJPDM1.jpg29日、米国を訪問中の小野寺防衛大臣が、日米国防相会談を終えた直後に共同記者会見を行いました。
諸外国の国防大臣が訪米した際は当たり前の光景ですが、民主党政権下ではついぞ見かけなかった「ツーショット会見@米国」です。(森本前大臣もなかったような・・・)

既に報道されている内容もありますが、「defense ISR working group」の設置、夏にオスプレイ2個目の部隊配備、Xバンドレーダー、ガイドライン見直しには2~3年必要等の話を含めご紹介します

なお、普天間関連はパス、また米記者質問の半分以上を占める「シリア化学兵器と情勢」関連質問もパスします。シリアに関しては、以下の過去記事から変化なしです
「もっと情報を:シリア化学兵器」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-23-2

まずヘーゲル長官は髪乱れ気味で
hagelJpDM3.jpg日米同盟が地域安全保障の「cornerstone」であることを再確認し、広範に全ての分野を話し合った。北朝鮮、尖閣を含む海上安全保障、更に21世紀の脅威に対応する体制と能力に関する協力について等である。
●焦点は国防問題だが、米国のリバランスに伴い、日米はTPPの例にあるように経済・外交分野でも大きく進展している

●北朝鮮が最も明白な脅威だが、本日2台目のXバンドレーダー(TPY-2)日本展開に計画に進展があった。これは北朝鮮ミサイルから両国を守るものである
●東シナ海での摩擦に関し、平和的・協力的に両国により解決されるべきであり、今日は米国が尖閣の主権に関しどちらの側にもつかないことを再確認し、しかし同時に日本の施政下にあり安保条約の範囲内である点も確認した

●日米のスタッフはガイドライン見直しに資する「roles, missions and capabilities」レビューを行っており、その一部として本日、「defense ISR working group」の設置を発表した。米軍再編についても再確認した
●また、オスプレイの2番目の飛行隊を本夏に配備することを確認した。

小野寺大臣は若干緊張気味に
hagelJpDM2.jpg北朝鮮情勢に関しては、日米間の緊密な協力継続と日米韓の3カ国の協力を再確認した
「defense ISR working group」の設置や、両国の平時における警戒監視活動の協力進展を歓迎する
●オスプレイに関しては、12機を2番目の飛行隊として、本夏に岩国経由で普天間に配備する。
へーゲル国防長官を本年中に日本にご招待した。日本では「2+2会合」を今年の適当な時期に開催する

●(質問に対し、)我々は、私は北朝鮮に対する警戒や監視レベルを低下させても良いと判断できるような情報に接していない
●(質問に対し、)ガイドラインのレビューには2~3年必要だろう。
(ヘーゲル長官も同意と回答、更に当地域のシーレーン確保、安全保障と安定確保がレビューの焦点であると発言。具体的な進行例として、今日申し上げたXバンドレーダー、オスプレイ、海兵隊の再編等だと補足)

会見トランスクリプト
http://www.defense.gov/transcripts/transcript.aspx?transcriptid=5230
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日本側が宣伝している「尖閣で踏む込んだ発言を引き出した」との見方は要注意です。
元外務次官・藪中氏の指摘http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-31
                         ↓         ↓         ↓
Yabu6.jpg米国は一貫してこの2つのポジションを持っている。領土問題は当事者間との立場の一方で、日米安保条約では沖縄の施政権を返還した際に尖閣が明示されているので、尖閣は範囲内と言わざるを得ない
●(質疑応答場面で・・)米国の持っている応答要領はかなり大ざっぱで、何が影響するかというと世界と米と中と日本の関係、国際的に見た見方、その辺が出てくる。
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その他、ねちっこく分析すると、北朝鮮関連で日本の大臣が「日米韓3カ国の協力を再確認」と言ったのは初めてでは??? 日韓関係の冷え込みに釘を刺されたのかもしれません

「衝撃:韓国と協力せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-28

「defense ISR working group」を設置して、具体的に何を日本に期待するのでしょうか? 日本での「2+2会合」までにどこまで煮詰まるか・・。
不満なのはF-35に関する言及がないことです。納入時期や価格や「技術移転」(日本企業の参画度合い)に関し、しっかり確認し議論したのでしょうか?

「戦闘機の呪縛から離脱せよ!」
http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
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