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グアム南西900㎞のヤップ島飛行場整備に600億円 [米空軍]

グアム、テニアン、パラオ、比のBasa飛行場に続き
ミクロネシア3国との協定COFA予算がピンチな中
太平洋戦争の日本軍基地跡の飛行場に

Yap island2.jpg3月14日付米空軍協会web記事は、米空軍がミクロネシア連邦ヤップ島(Yap島)飛行場の滑走路延長や誘導路や飛行場設備整備のための総額600億円のプロジェクトの初年度として、2025年度予算案に予算130億円を盛り込んで、グアム、テニアン、パラオ(陸軍が主導)、比のBasa飛行場に続くACE(Agile Combat Employment)構想の分散運用先として活用しようとしていると報じています

ヤップ島(Yap島)は4つの島で構成され合計面積約100平方キロの大きさで、グアム島の南西920㎞、パラオの北東470㎞に位置し、比のマニラまで1900㎞、台湾まで2350㎞の位置にあるミクロネシア連邦の島で、太平洋戦争時は日本軍の飛行場が置かれた場所である西太平洋戦域での要衝です

yap airport.jpg先日の記事でミクロネシア3国(パラオ共和国、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国)と米国の自由連合協定(COFA:Compacts of Free Association)延長に関し、米議内での予算承認が難航している件をご紹介しましたが、COFAで3国の国民は「米国に住み、働き、米軍に入隊することができ、米国政府が米国民に提供している様々なプログラムとサービスを受けることが可能な」特権を享受できる代わりに、米軍が自由に出入りできる権利を確保している極めて重要な西太平洋の拠点です

yap airport3.jpg繰り返しご紹介してきたように、ACE構想では、戦力を分散配備して敵攻撃を難しくすると同時に被害を局限し、強靭な我の態勢を確保して本格的な敵と戦おうとしており、米空軍は兵士の教育訓練から作戦コンセプトから演習に至るまで、全てをこの構想に沿ったものに変革しようとしています。

例えば昨年の「Cope North 23」演習では、グアム、ヤップ、テニアン、サイパン、パラオのほか、ロタ島や硫黄島などの島々でも作戦行動訓練を行って、大規模基地との比較で各種支援体制や設備が不十分な場所からの作戦発起能力向上を目指していることです

2025年8月工事開始計画の予算説明資料には・・・
Yap island4.jpg・ヤップ空港は、インド太平洋戦域で活動する航空機にとって、重要な展開先となる可能性を持つ
・そのためには大型機の離着陸が必要だが、滑走路が短すぎ、航空機停止装置(arresting systems)など重要な設備が不足。
・滑走路延長は大型航空機の迅速かつ安全な離着陸を可能にし、航空機駐機能力の追加や滑走路へのアクセス改善は、飛行場能力全体の拡大に不可欠
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yap airport2.jpgミクロネシア3国と米国との自由連合協定(COFA)の20年延長に必要な約1兆円の米議会承認と、このヤップ飛行場の整備費用約600億円の確保がうまくいきますよう、祈念申し上げます

でもですねぇ・・・戦力を分散して敵の攻撃を困難にすると言っても、両手の指で十分にカウント可能な程度の数の飛行場ですから、それぞれに数発弾道ミサイルを撃ち込めば、それなりの期間機能停止にすることは容易でしょうし、分散に必要な輸送力や人員配置を考えるとなかなか厳しい戦いです

ミクロネシア3国とのCOFA協定延長難航
https://holylandtokyo.com/2024/03/13/5623/

米空軍のACE構想関連記事
「初のACE構想統合&多国間演習」→https://holylandtokyo.com/2024/02/13/5529/
「PACAFはACE運用態勢未確立」→https://holylandtokyo.com/2023/09/19/5048/
「生みの親が現状語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE確認演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「GuamでF-35等が不整地離着陸訓練」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/

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更にKC-46 給油機とT-7 練習機開発は遅れます [米空軍]

既に3年以上遅れている両機種ですが、更に1年遅れが確実に
共にB社が前CEO時代に契約獲得のため背伸び提案した案件
共に固定価格契約で、ボーイング社の自腹開発費 1兆円に近付く

KC-46 RVS.jpg3月11日に2025 年度の国防予算案が米議会に提出され、要求予算説明のため、米国防省&米軍高官による説明が様々な場所で始まっていますが、契約時に画期的な固定価格契約や、デジタル設計など最新技術を利用した効率的かっ開発リスクの低い新機種開発を大宣伝していた 2機種が、どろ沼から抜け出せずボーイング社を苦しめています (身から出た錆ですが・・・)

T-7 練習機の運用体制確立は更に1年遅れ 2028年に
T-7A 8.jpg米空軍が老朽化が進むT-38 練習機の後継機として、当初計画では 2024 年に初期運用態勢 IOC を確立するはずだった T-7 練習機は、デジタル設計を取り入れ開発期間や経費を抑制する手法で話題を集め 2018 年に契約が結ばれましたが デジタル設計は「万能ではなく」、ロックウイング問題、射出座席の不具合、部品の欠陥等が次々と露呈し、一度I0Cを2027年に遅らせましたが、諸問題の改善が進まず、更に2028年までずれ込むことが明らかになりました

この開発の遅れにより、2025年度に14機導入を予定(計 351機購入計画)していたところ、予算案では7機にまで削減されています。

米空軍の悩みパイロット不足がさらに悪化
T-7A 7.jpg●T-7 開発の遅れにより、稼働率低下が著しい T-38 練習機を使用した米空軍パイロット養成計画は大きく後れ、パイロット不足を加速させています。
●パイロット養成を担当する第 19空軍司令官は、「エンジン維持整備問題からT-38 飛行時間が制限され、年間 1500名の操縦者養成計画がとん挫している。900人以上が飛行訓練に入る前に立ち往生していると述べ、200 人以上が飛行訓練開始までに 9 カ月以上待つことになっている」と厳しい状況を訴えています

KC-46 の給油操作システム RVS 改修がさらに遅延
KC-46 RVS 2.0.jpg3月12日に下院議員の質問に対応した米空軍ハンター調達担当次官補は、KC-46 の改良型RVS (Remote Vision System:RVS2.0 と呼ばれる)の導入が、米空軍とボーイング社が 2022年に約束した2025年10月には間に合わず、「恐らく2026年にずれ込むことになる。詳細な計画は後ほどお知らせする」と述べ、遅延要因として「スケジュールのプレッシャー(意味不明!)」と「FAA 承認手続き」を挙げ説明しました。

この問題を2020 年ころから延々と取り上げていますが、2020 年にボーイングと米空軍が合意した 2024年3月の提供開始が、サプライチェーンや FAA 承認遅れで25年10月まで再延期され、更に今回延期された「ドロ沼」案件です

KC-46 RVS 2.0 2.jpg米空軍は2022年9月、米空軍輸送コマンド司令官が男気を見せ、「我々が明日の戦いに敗北すれば 10年後はない。私には今KC-46 が必要なのだ」とリスク覚悟で運用制限付きで作戦投入開始宣言を行っていますが、そんな現場の苦労を知ってか知らずか、ボーイングは我が道を進んでおり、連保航空局 FAA の信頼も失って承認手続きに時間がかかる悪循環に陥っています(ボーイング製民間機の各種トラブルも含めた悪名が轟いている状態です)
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Calhoun Boeing.jpgDavid Calhounボーイング現CEOは、前CEOが契約獲得のため無理な価格や納期条件でKC-46とT-7を固定価格で引き受けたつけを払わされ、すでに1兆円近い開発遅延費用を自腹支出している状態にあることから、E-3 早期警戒管制機の後継 E-7 契約に関し極めて慎重な価格見積もり(高めの設定)で、米空軍と折り合えない状態が続いています

空中給油機は対中国本格紛争対処のカギであり、パイロット不足は航空機運用だけでなく組織運営面(司令部やペンタゴン等での幕僚不足)で大きな足かせとなっており、両機種の度重なる納期遅延は米空軍に重くのしかかっていますが、加えて同じく米空軍最優先案件 E-7 でもボーイングが「悪目立ち」しています

KC-46A 関連記事
「RVS2.0導入2025年まで更に遅延」→https://holylandtokyo.com/2022/10/14/3741
「ゴール動かして運用開始宣言」→https://holylandtokyo.com/2022/09/21/3688/
「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤り」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/31511
「RVS 改修案に合意」→https://holylandtokyo.com/2022/04/27/31811
「恒久対策は今も未定」→https://holylandtokyo.com/2022/01/13/2605/
「50機目受領も恒久対策未定」→https://holylandtokyo.com/2021/11/22/2424

T-7練習機(T-X 計画)関連の記事
「デジタル設計の優等生 T-7が3年遅れに」→https://holylandtokyo.com/2023104/24/4539/
「1年遅れ:女性意識の射出座席が」→https://holylandtokyo.com/2022/12/19/4065/
「デ設計技術で審査短縮や新規参入促進」→https://holylandtokyo.com/2022/08/23/3550/

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バクテリアで簡易滑走路舗装を4日間で [米空軍]

大量のセメントや舗装用機器の輸送不要
西太平洋の島々へのインフラ整備に
既にへり離着隆パッドで試行使用が

Biocement.jpg2月29日付米空軍協会 web 記事が、2月中旬開催の AFA Wartare Symposium で展示された風味深い最新技術から、大量のセメントを持ち込んで使用することなく、自然の大地に「農業用噴霧器」である種のバクテリアを撒くことで、4日間以内(整地の時間は除く)に航空機や重量車両が滑走や走行可能な硬い表面を構築可能な技術を紹介しています。

記事によれば、民間企業は従来のセメント製造で排出される CO2 を削減する方法として、数十年前からバイオセメント(Biocement)を研究しており、今回展示されたのは自然発生細菌である「S. バストゥリ菌(S. pasteuri)」を活用した手法で、空輸で持ち込み、または現場増殖させた菌を土壌に噴霧することで地表を強固にすることが可能とのことです。

Biocement6.jpg具体的には、「S. パストゥリ菌」を地表に蒔さ、人が塩化カルンウムと有機化合物である尿素を追加すると、菌がこれらの成分を炭酸カルシウムに変換し、土壌粒子を結合させて硬化した表面を形成し、航空機や重量車両が滑走や走行可能な硬い表面を構築するそうで、上記全プロセスに必要な時間はわずか96時間未満だとのことです。

もちろん土壌の性質やバクテリアに「餌を与える」頻度等々によって、完成表面の状態に違いが生まれ、今も様々な条件でより良いバイオセメントを求めた研究が官民を挙げて続いているとのことですが ちなみにセメント舗装の場合は、大量のセメントを現場に持ち込み、セメント製造施設を現場に構築し、更に工事用の重機を持ち込み、作業員の宿泊施設などのインフラを整えるなどして、少なくとも数か月は工事が必要とのことです。

Biocement2.jpgまた、バイオセメントは恒久的な飛行場施設構築を目的としたものではなく、あくまで一時的な施設用と考えられていますが、撤去する際は耕転機等でバイオセメント舗装を砕くことで自然に還り、塩化カルシウムは溶解しませんが、撤去に多くの労力を要しない点でも優れています。一方でコンクリート舗装の場合だと、完成した施設を砕し、地面から掘り返し。 その場所から「セメントくず」を搬出輸送+処分する必要が生じます。

米空軍は少なくとも 2019 年からバイオセメントの活用に向けた検討を行っており、担当少佐が「基本的に必要なのは農業用噴霧器と貯水タンクだけなので、現場に持ち込む資材はほとんど不要」と語る利便性を追求し、CV-22や海軍 MH-60Sへり用の着隆バッドがすでに設置され、実用性確認が行われているようです。
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Biocement3.jpg記事は担当少佐が、「私がよく聞かれる質問の一つは、このバクテリアを地面に撒くと、(バクテリアが自然増殖して制御不能になり)島全体がセメントになってしまうのでは? 世界がバクテリアに征服されてしまうのでは?、との問いです」とインタビューで述べ、「(バクテリアは「餌を与える」等の世話を必要としており、自然増殖して世界を征服することはない」と回答しているとのことです。皆様、ご心配なく・・・

米空軍の ACE(Agile Compat Employmen)構想など、「分散展開地や輸送能力や複数の技量を保持する人員や機材や弾薬の確保等々の観点から実戦での活用は困難だろう・・・」と斜に構え、「生暖かく」見守っているつもりのまんぐーすですが、実際に一歩でも半歩でも前進しようと努力されている現場の姿を見聞さすると、背筋が伸びる思いがいたします。

米空軍の ACE構想関連記事
「初の ACE 統合&多国間演習」→htps:holylanatokyo.com/2024/02/13/5529/
「PACAFはACE運用態勢未確立」→https://holylandtokyo.com/2023/09/19/5048/
「生みの親が現状語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397

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中国軍機が早ければ今年中にも米ADIZ接近飛行を [Joint・統合参謀本部]

2月就任の北米コマンド司令官が下院軍事委員会で証言
他にバールーン米本土横断事案への対策や
米本土防空強化施策の重要性を語る

China Bomber Tanker2.jpg3月12日、2月に北米コマンド司令官(兼ねて北米航空宇宙防衛コマンドNORAD司令官)に就任したばかりのGregory M. Guillot空軍大将が下院軍事委員会で証言し、発言の流れや背景等の詳細は不明ながら「幸いにも中国軍機が米ADIZ(防空識別圏:Air Defense Identification Zone)への接近飛行を行ったことはないが、早ければ今年中にも飛来する可能性がある」、「航空機だけでなく中国の艦艇や潜水艦も米沿岸への接近能力を獲得しつつある」と語った模様で、米軍事メディアで話題となっています

Guillot3.jpgまた同司令官は、少なくとも5回に渡り中国製バルーンの米本土侵入を許しながら見失う等の失態を犯し、2023年1月には米本土を横断された後に大西洋上で撃墜することになってしまった反省を踏まえた3つの対策を議会で説明し、更には弾道ミサイルや巡航ミサイルや中露が既に保有している対処困難な極超音速兵器からの米本土防衛の難しさと重要性を語り、必要な予算配分への理解を求めています

12日の同大将議会証言を報じる12日付米空軍協会web記事は、冒頭に引用したGuillot司令官の発言しか取り上げておらず、空中給油機を伴った長距離爆撃機の遠洋飛行を頻繁に行うようになってきた中国空軍が、どのようなルートでどのあたりの米国ADIZに接近することを想定しているのか不明ですが、北米コマンド司令官としての発言ですから、ハワイやグアムへの接近ではなく、ロシア爆撃機と同様にアラスカぐらいへの接近飛行は意識しているのかもしれません

China Bomber Tanker.jpgちなみに防空識別圏は、領土から12マイル程度の領空とは異なり、「その国に出入りする航空機の国籍や役割をそのエリア内に進入する航空機に関してしっかり識別し、怪しい航空機には戦闘機等を緊急発進して対応するぞ」と各国が宣言しているエリアであり、領土から数百㎞沖合に拡大した領域で、

例えばロシア軍機は米国の領空を侵犯することはありませんが、定期的に米国ADIZに進入し、Guillot司令官が指揮する北米防空司令部NORADの指令で米空軍戦闘機の対処対象になっており、2月だけでアラスカ周辺ADIZ内を3回もロシア軍機が飛行しています。本件についてはこれ以上の情報はなく、今後の中国軍機の米国ADIZ接近に注目したいと思います

以下では同司令官が語ったバルーン事案を受けた監視の強化対策3つと、米本土防衛のため議会の理解を求めた米本土防空監視強化策についてご紹介いたします

バルーン事案を受けた監視の強化対策3つ
spy balloon5.jpg●対空監視レーダーの感度調整→バルーンのようにレーダー反射面積が小さく、高高度を低速で移動する目標を見落としがちだったが、雲などを要対処目標と誤認識する可能性は増加するものの、レーダーの感知・探知基準を修正し、きめ細かな監視を行う
●レーダー監視員は、雲やその他の自然現象を要対処目標として誤認識する可能性を踏まえた上で、怪しい探知目標の場合は注意深く追尾を継続して必要な措置を取るように徹底する
●電磁波情報など、他の米軍コマンドが保有する目標探知につながる情報を積極的に収集&共有し、米国ADIZに接近する前段階からの待ち受け態勢がとれるように、米軍全体で連携を密にする

航空機や巡航ミサイルや極超音速兵器対処
oth radar2.jpg●見通し線以遠を監視するOTHR(over-the-horizon レーダー)やLRDR(Long-Range Discrimination Radar)の導入推進が「最優先事項」である
●まだ態勢を整える初期段階であるが、1月にはミサイル防衛庁が建設したLRDRがアラスカでほぼ完成し、また米軍とカナダ軍が協力して4つのOTHR建設を目指している。LRDRの一つはアラスカに設置される予定である
●上記計画を軌道に乗せることが北米コマンドの最優先課題であり、これにより弾道&巡航ミサイルより遥かに対処が困難な、低空を音速の5倍以上で機動を伴って飛翔する極超音速兵器への対処の基礎とすることにつながる
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spy balloon2.jpg米本土を中国のバルーンが横断するのを5回も見逃し、最後の昨年1月事案では、しっかり大陸横断されてから安全な大西洋上で撃墜する判断に至っており、雲や鳥等との識別が難しい低速目標への対処が難しいのは理解できるにしても、訪米コマンドやNORADとして大失態であることは間違いありません。Guillot新司令官の前任者Glen D. VanHerck大将は、事実上の更迭&退役だと理解してよいのでしょう

中国軍機の米国ADIZへの接近飛行がどのような形で行われるのか、興味津々で続報を待ちたいと思います

バルーン事案や米本土防空の関連記事
「米本土横断の中国気球は米商用ネット利用」→https://holylandtokyo.com/2024/01/10/5403/
「史上初:4コマンド参加の米本土防空演習」→https://holylandtokyo.com/2020/05/31/685/
「巡航ミサイルから米本土を守るため3つの提言」→https://holylandtokyo.com/2019/11/07/2969/

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米空軍が人手不足に退役者の限定期間再雇用 [米空軍]

1000名を元の階級で4年間限定
士官も下士官も。2017-21年以来の措置
募集重点職域は士官23職種、下士官11職種

VRRAD3.jpg2月7日付米空軍協会web記事は、webサイト上で入手した資料(米空軍に真偽を確認の後、米空軍が後追いで公式発表)を基に、米空軍が2月8日から2026年1月31日までの約4年間、募集難や退職者増が原因で生じている人手不足に対処するため、除隊者を元の階級で4年間限定で約1000名採用するVRRAD(Voluntary Retired Return to Active Duty Program)計画を開始すると報じています

VRRAD.jpg米空軍は2023年度、募集目標を24年ぶりに達成できず、11%も目標を下回ったことを受けた「苦肉の策」ですが、記事によると末尾に示す士官23職種、下士官11職種を「重点募集職種」とし、以下の様な募集要項で2月8日から応募を受け付けるようです

●士官は除隊時に大尉から中佐、下士官は最上級軍曹(E-9)から二等軍曹(E-5)の経験者を、除隊時と同じ階級で採用
●採用する場合は、応募から4-6か月後に採用

●航空ボーナスや昇任の対象外。SkillBridgeや除隊後の民間への移行を支援するプログラムは対象外
●VRRAD応募者は、自主的に志願するか、戦闘準備態勢にある部隊に配属された場合にのみ、前線に展開する可能性があるが、その際は配属基地や任務が変更される可能性があ

VRRAD4.jpg2023年度の募集目標を達成できないと判明した際、米空軍省の人的戦力計画担当次官補のAlex Wagner氏は、「(2024年度の募集目標達見通しについては、米国全体の労働市場の状況から見て、)注意深く見守る必要があるが、楽観的に見ている」とコメントしていましたが、「募集難や退職者増」で現場に穴が開いており、「4年間限定」ながら応急措置が必要な状態とのことです

VRRAD計画の開始に関し、米空軍司令部人事計画部長のCaroline Miller中将は、「同計画は、経験を有する退役者人材を正規兵として受け入れ歓迎することで、本格紛争に備えて準備に取り組む部隊に生じている「ギャップ」を埋めるための戦略的な戦力増強策(strategic enabler)である」と説明しています
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VRRAD2.jpg記事は、VRRADに対する「初動における評判」が「低い:unimpressed」とし、原因は応募に対するボーナスや特典がないからだとしており、前途多難な模様です。下に示す「重点職域」は広範にわたっており、民間でも通用しそうな「職域」が並んでいることから、さもありなん・・・です

下の過去記事でご紹介しているように、最近空軍は「募集対象年齢上限を39歳から42歳に引き上げ(5軍で最高齢)」、「下士官の勤務期間機会を2年延長」、「搭乗員への新ボーナス試行」等を行っていますが、「とりあえず何でもやってみよう」的な状態にあるようです。この状態は世界の軍隊で同様でしょうし、少子化の進む日本でも「対岸の火事」ではありません

士官の「重点募集職域」
• 11X – Pilot
• 12X – Combat Systems
• 13B – Air Battle Manager
• 13H – Aerospace Physiologist航空宇宙生理学者
• 13M – Airfield Operations
• 13N – Nuclear and Missile Operations
• 14X – Information Operations/Intelligence
• 15X – Operations Analysis and Weather
• 16X – Operations Support
• 17X – Cyber Operations
• 18X – Remotely Piloted Aircraft
• 19Z – Special Warfare
• 21X – Logistics
• 31P – Security Forces
• 32E – Civil Engineering
• 35P – Public Affairs
• 38F – Force Support Officer
• 61X – Scientific/Research
• 62X –Developmental Engineering
• 63X – Acquisition
• 64P – Contracting
• 65X – Finance
• 71S – Special Investigations

下士官の「重点募集職域」
• 1C171 – Air Traffic Control航空交通管制官
• 2G071 – Logistics Plans
• 2T377 – Fleet Management & Analysis
• 3F071 – Personnel
• 3P071 – Security Forces
• 4A271 – Biomedical Equipment生物医療機器
• 4E071 – Public Health
• 4N071 – Aerospace Medical Service航空宇宙医療サービス
• 4R071 – Diagnostic Imaging
• 7S071 – Special Investigations
• 8R000/8R200 – Recruiter

新兵募集難&離職者増への対応
「海軍が募集で高卒資格撤廃」→https://holylandtokyo.com/2024/02/07/5522/
「空軍が募集年齢上限を42歳に」→https://holylandtokyo.com/2023/10/31/5184/
「空軍が24年ぶりに募集10%未達へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/25/5035/
「入隊学力試験に電卓持ち込み可へ」→https://holylandtokyo.com/2023/08/29/4976/
「募集難に合法移民へ猛烈アプローチ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/16/4743/
「兵士慰留に職種変更容易化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/12/4608/
「米空軍が体脂肪基準緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/
「歩きスマホやポケットハンドOK」→https://holylandtokyo.com/2021/12/16/2519/

米空軍パイロット不足関連
「コロナ後の操縦者争奪戦に備え」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-06
「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
「Fly-only管理の募集中止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-15
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-19
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18

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