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次の米海軍トップ確定者が急きょ辞退退役へ [ふと考えること]

5月に議会承認もクリアしていたのに・・・
8月1日に就任する予定だったのに・・・
現職が任期を延長して次の後任探しへ

Moran3.jpg7日、次の米海軍人トップの海軍作戦部長(CNO:chief of naval operations)へ8月1日に就任する予定だったWilliam Moran海軍大将(現在はNo2の副作戦部長)が5月に上院の承認を得ていたにもかかわらず、米海軍トップ就任を辞退し、海軍も退役すると明らかにし、米海軍長官もこの判断を尊重すると述べました

Moran海軍大将は対潜哨戒機P-3のパイロットで、過去31名の海軍作戦部長の中にパイロットは9名いますが、いずれも空母艦載戦闘機のパイロットでしたから、過去に例を見ない異例な職種からの作戦部長選出として大きな話題となり、マイナー職域出身でありながら米海軍トップに推挙されたMoran大将の業績や人柄が、あらためて高く評価され、まんぐーすも4月に取り上げたところでした

「P-3パイロットが初の米海軍トップに」
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-12

Bill Moran.jpgそんな期待の新星だったのに、なぜ突然の辞退に退役なんでしょうか? どうやら・・・よろしくない勤務態度(セクハラ)で米海軍司令部勤務から外された中佐から、引き続き仕事上のアドバイスを受けていたことがメール調査で発覚した模様です。その中佐は「public affairs」担当で、仕事面では有能だったようです

非常に残念ですが、議会承認手続き途中で辞任したShanahan臨時国防長官の記憶が生々しい中またもやトランプ大統領ご推薦の人事がとん挫した形となり、独立記念日のイベント関連で批判を受けている政権に、新たな負の話題を提供した形となりました

米海軍は、7月末で退役予定だった現在のRichardson作戦部長を引き続き勤務させ、9月の同作戦部長退役までに別の後任者を推薦し議会承認を得るよう頑張るようです

8日付Military.com記事によれば
Spencer海軍長官は声明で、「Moran大将は、過去2年間に渡り、海軍人としての基準も満たさなかった人物と仕事上の関係を続けていたと申し出た」、「Moran大将の米海軍への真摯な姿勢を称賛する一方で、彼の当該人物との関係には疑問を持たざるを得ず、同大将からの退役の申し出を受理することにした」と説明した
Moran2.jpg●海軍長官は細部に触れなかったが、匿名の関係筋は本件に関し、2017年に現作戦部長らの Public affairs担当だったChris Servello中佐はセクハラで職を解かれ、2018年5月に退役していたが、そのServello氏から職務上のアドバイスを引き続き受けていたことが明らかになったためだと説明した

●Servello中佐(当時)は、2016年の米海軍クリスマスパーティーでサンタ役を務めていたが、酒に酔って若手(女性)士官に「unwanted sexual passes:体を触った」ことでけん責処分を受けていた。
●このセクハラで海軍司令部のPublic affairs担当職をServello中佐は追われたが、その後も、2018年5月に同中佐が退役したのちも引き続き、Moran大将は同元中佐からPublic affairs上のアドバイスをメールでのやり取りで受けていた模様である。

●なおメール上では、Chris Servelloとの名前に言及せずやり取りが行われており、意図的にChris Servello氏との関係を隠そうとしたようにも解釈できる状態だったようである
●匿名の関係者によれば、Spencer海軍長官がこの関係の存在を知ったのは、5月の上院での承認手続きが終了した後であったようだ

Moran4.jpgMoran大将は声明で、「退役願を提出することは痛恨の極みであるが、米海軍人とそのご家族が国家に忠誠を尽くすべく日々を過ごされるに際し、私の進退が何ら障害となることはない」、「私が不適切な人物との関係を維持していたことが、ハラスメントや脅迫のような行為がない職場を醸成すべきとの米海軍の姿勢を否定することでは全くない」と述べている

●Chris Servello氏はMoran大将退役の方を受けメディアに対し、「信じられないし、残念でならない。米海軍にとってteriribleなニュースであり、それ以上申し上げることはない」とコメントした
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厳しいと言えば厳しい判断です。「Public affairs」関連は、細部の事情や経緯を知る専門スタッフの助言が無ければ、将軍や提督レベルが自身の経験だけでは対応できない分野で、米軍外の関係団体やメディアとの関係など、陰で支えるスタッフが極めて重要な役割を担います

セクハラ野郎のChris Servello元中佐ですが、恐らく社交的で、米海軍外の様々な人種の人たちと巧みに関係を気づくのが得意だったのでしょう。皆さんの周りにもそんな人いますよねぇ・・・。人間は紙一重ですから・・・

それにしても・・・トランプ政権では有能な人が次々と・・・

Moran大将の次期海軍トップ推薦を強く支持する報道
「P-3パイロットが初の米海軍トップに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-12

惜しまれつつ去った有能な武人たち
「マティス国防長官:最後の言葉」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-01
「男の辞表:マティス長官に学ぶ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-22
「Willson空軍長官が最後に語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-18
「マクマスター大統領補佐官が露を語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-18

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米空軍が人工知能シム訓練アイディア募集 [米空軍]

12月に提案中小企業を集めイベントを
主要軍需産業との仲介役を空軍が

AI learning.jpg米空軍が12月に開催予定の「Simulators Pitch Day」なるイベントに向け、AIを兵士教育やシミュレーターに活用するアイディアを持つ中小企業(small businesses)からの提案を募集しています

提案した中小企業のアイディアを2段階で評価し、12月のイベントの最後に、主要軍需産業やベンチャーキャピタルに対するプレゼンの機会を与え、新たな血を軍需分野に取り込もうとの意気込みの取り組みです

軍事分野での人工知能AIと言えばいろんな方向から各種ミサイルが飛び交い、強固な電子戦が常態となる戦場に、サイバーや宇宙アセットへの攻撃も混ざった複雑な環境での意思決定支援をイメージしがちですが、ますます複雑化する兵器システムや戦場に対応できる人の養成にも大きな可能性を秘めています

米空軍がどこまで大企業や資本家との仲立ちに介入するのか等、いろいろ不明な点も多い記事ですが、ただでさえ中国に後れを取っていると危機感のあるAI分野に、中小企業のアイディアを取り込もうとの必死の取り組みですのでご紹介しておきます

24日付米空軍協会web記事によれば
AI learning2.jpg12月4日に開催予定の「Simulators Pitch Day」担当のPatrick Kawonczky少佐によれば、7月1日締め切りのアイデア募集の対象エリアは、「ネットワークシミュレーターの相互運用性」、「クラウド活用のシミュレーター」、「performance-based訓練」、「データ収集と分析」などのエリアである
●同少佐は教育訓練への人工知能AIの活用について、「教育状況のモニター&管理において、受講者の習熟度に応じた教育手順、手法、技術を提案・提供してくれる」と期待を示した

●また同少佐は、AIが(受講者の)データ分析、事前分析、コンセプト案出を手助けしてくれるだろうと説明した
●別の担当大佐は「AIが人間と機械との橋渡しをしてくれる」、「受講者との間のやり取りを整理し、受講者の理解度に応じた教材を選択提供してくれことから、各受講者の特性に応じた教育のより良いカスタマイズにつながる」とその効果を説明している

●7月1日に提案受け付けを締め切り、その後、まず第1段階で選定された企業に資金を提供し、第2段階のより詳細な提案を行ってもらう
AI learning3.jpg第2段階を経た提案は、12月4日にオーランドで開催されるイベントで米空軍関係者へのプレゼンに招待され、後に軍需産業幹部やベンチャー資本家を対象とするメディア公開プレゼンの機会が得られる

12月のイベントを統括するMargaret Merkle女史はプレスリリースで、「我々は中小企業に新たな発明を求めているのではない。彼らが既に保有している技術の中に、米空軍が必要としているアイディアがあるのではないかと問いかけているのだ。最終的には、そのアイディアを軍需産業と結び付けて迅速な技術革新世界で活用したいと考えている」と説明している
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軍需産業の合併統合が相次ぎ、寡占体制が加速する米軍需産業ですが、そうなると競争意識が低下し、コスト増と納期遅延、技術革新意欲の停滞など、大きな独占組織の弊害が出てくるのですが、最近のロッキードやボーイングを見ているとつくづくそう感じます

EW Cognitive4.jpg新たな血の導入は、カーター国防長官が副長官だったことから取り組んでいた分野で、Work副長官時代にも力を入れていた分野だと思うのですが、成果のほどはどうなんでしょうか? なかなか聞こえて来ませんねぇ

逆に、グーグルが米国産のAI技術を中国に開発センターを作って流出させていると、Dunford統合参謀本部議長がグーグル幹部に怒鳴り込む騒ぎになっているくらいですから、中小のAIベンチャーは米軍の方を見てない気もしますが・・・

「Dunford統参議長がグーグルに怒り」
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-23

軍需産業のすそ野拡大&新陳代謝
「DIUxで優秀中小企業を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-12
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1
「AIに中小企業を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-13
「G-N法改正の主要論点にも」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-05
「Tech Outreach」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-28

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中国が米軍需産業を標的にレアアース禁輸へ [安全保障全般]

人民日報「Don’t say we didn’t warn you」
警告してあげたことは忘れないでね
この言葉、1979年以来初、史上4回目の使用とか・・

rare earth5.jpg3日付Defense-Newsが、米中貿易摩擦への中国側からの報復措置として一般社会への影響が少ない点でメディア上のインパクトは少ないが、米政権に短刀を突き付けるような効果がある「米軍需産業へのレアアース輸出規制」が持ち出されていると報じています

話の発端は、中国の経済計画を審議するNDRC(National Development and Reform Commission)が、6月17日に行った「米国の軍需産業は中国からのレアアース輸出制限を受けるだろう」との発表で、その数週間前に「レアアース輸出制限」を米国への報復措置として検討しているとの中国メディア報道が具体的になったとことにあります

記事は、様々な対策により直接的な影響はそれほど大きくないような雰囲気で書かれていますが、地球上での採掘量と産地に偏りがある元素17種類を指す「レアアース:希土類」の、リサイクル利用の活性化など同盟国を巻き込んだ取り組みの必要を訴えています

3日付Defense-News記事によれば
rare earth.jpg●もう何年も前から、米国材料サプライチェーンの専門家は、米軍やその同盟国を支える重要な兵器(第5世代戦闘機や精密誘導兵器)に不可欠な希少材料へのアクセスが絶たれる懸念について警告してきた。そして、例え僅かでも入荷量が減少すれば製品価格が急騰し、入荷制限が長引けば、国家安全保障を根本で支えるシステム製造企業を脅かすと主張してきた
だが、多くの人は自由貿易に相互依存するこの世界で、そのような過激な手段に中国が出るとは考えなかった。しかし6月17日の中国当局の発表は、中国が如何に巧妙に米側の緊要な部分に牙を突きつけ、貿易戦争を戦おうとしているかを示すものだ

中国側の戦略は冷徹な計算に基づいている。米国の軍需産業だけを標的にすることで米軍装備のコストを引き上げ、製造リードタイムが伸びることは、米国政府中枢に影響を与えるが、一般民衆には大きな影響えず反発を招かないとの目算である
クラウゼビッツを学んだものなら誰でも、これが米国の「重心」を突く攻撃だと理解できるだろう

rare earth4.jpg●報道によれば、中国NDRC当局はレアアース措置に関し3回会議を開き、これは習近平主席がレアアース採掘場を視察し、中国メディアが冒頭紹介した「Don’t say we didn’t warn you」との言葉を30年ぶりに発した数週間後に行われている。これらすべては偶然に重なったわけではない

●幸いにも、米国政府はレアアースや他の緊要な材料物質の安定確保に向けた対策を進めており、7月4日発表の「Federal Strategy to Ensure Secure and Reliable Supplies of Critical Minerals」もその点に触れ、2019年度の国家授権法でも、米軍需産業が中国など非同盟国からのレアアースに依存することを制限しており、
国防省も軍需産業にサプライチェーンの再構築とレアアース再利用の能力を確認しているところである。またレアアース改修と再利用の検討の予算増額を議会に働きかけている
●また議会では、外国資源への依存を減らすため、米国内でのレアアース等の採掘を制限していた法律の改正しようとする議員たちの動きがみられる

rare earth3.jpg中国は数十年にわたる努力で、レアアースを戦略物資として各国のサプライチェーンに供給するルートを固め、米国軍需産業もその中に組み込まれている
●中国NDRCの6月17日の発表は、最後の手段だと考えるべきではない。米国は現状を良く分析し、長期的視点で議会と協力して戦略や政策文書に示された課題や対策を具体化していかなければならない
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本当に米国政府として安心していられる状況なのか、記事を読みながら不安になってきましたが、そこは見守るしかないのでしょう・・・

日本の商社が、簡単に横流しできるものではないでしょうし・・・。 米国内で採掘を可能にするためと解釈した「Mine-permitting reform」ですが、環境団体とかがうるさいのでしょうか?

いずれにしても、レアアースは「レア」なので、目が離せない展開になってきました・・・

米中関係を考える記事
「CSBA対中国戦略レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「2019年アジア安全保障会議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-31-1
「2019年中国の軍事力レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-06
「グーグルからAI技術流出」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-31-1

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参院選と終戦の日を前に「戦争と平和」を考える [ふと考えること]

昨年8月の記事の再掲載です

オバマ大統領(当時)は「核なき世界」ビジョンでノーベル平和賞を受賞した際、2009年12月の受賞スピーチで「核なき世界」には一切触れず、冷徹な国際社会の現実を語り、そして地道な努力の重要性を訴えた・・・

Peace2.jpg最近、国政選挙の時期なると、ニュース番組を消したくなります。また毎年、広島や長崎に原爆が投下された日、そして終戦の日が近づくと日本のメディアから目をそむけたくなります

垂れ流される浅薄な平和一番メッセージや薄っぺらな戦争や軍事力批判、「平和」と叫べば平和になると言わんばかりの平和教信仰、そんな大人の作った作文を読まされる子供達・・・そんな洪水のような情報にさらされたくない思いでいっぱいになります

今日の日本の礎を築くため、尊い犠牲をはらわれた方々を思い、英霊に祈りを捧げるなら、冷徹な世界の情勢に目を向けつつ、以下でご紹介するスピーチが言う「人間の制度の漸進的な進化」への取り組みを誓うしかないでしょう
そんな思いで2010年正月の記事から取り上げます

以下は、2009年12月10日、オバマ大統領がノーベル平和賞の授与式で行ったスピーチの、まんぐーすの勝手なつまみ食いアウトラインです

より詳しくはこちらを(これも全文ではありません)
その1→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-31 
その2→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-01
その3→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-02

あくまでも個人的解釈の概要です。上記の詳しいバージョンを是非ご確認ください

obama nobel2.jpg●我々は厄介な真実を認めることから始めなければならない。我々は我々の生きている間に暴力的な紛争を根絶することはできないだろう
●わが国家を保護し、守ると誓った国家の元首として、私はガンジーやキングを模範としただけで、国家を導くことはできない。私はあるがままの世界に向き合っており、米国民に対する脅威を前に何もしないでいるわけにはいかない

●世界には悪が存在する。非暴力の運動はヒトラーの軍を止めることはできなかった。交渉はアルカイダの指導者にその武器を置くように説得できない。力が時には必要であるということはシニシズムへの呼びかけではない。それは歴史、人間の不完全さ、理性の限界の承認である
●戦争は平和の維持において果たす役割を持っているしかし今ひとつの真実、すなわち戦争はいかに正当であろうと、人間の悲劇を約束するものだということと共に理解しなければならない。だから我々の挑戦の一部は、すなわち戦争が時には必要であるが、戦争はあるレベルでは人間の愚かさの表現である、を両立させることにある

obama nobel3.jpg●ケネディー大統領が呼びかけた努力が必要なのだ。つまり「人間の本性における突然の革命にではなく、人間の制度の漸進的な進化に基礎を置くもっと実際的でもっと達成可能な平和に我々の焦点を合わせよう」。人間の制度の漸進的な進化がそれである。

●実際的な取り組み(3つの視点)
●公正で永続する平和を作る方法3つ
●今そこにある現代の紛争

●わたしはあきらめない
ガンディやキングが実践した非暴力はすべての状況において実際的あるいは可能でなかったかもしれない。しかし彼らが説示した愛、人間の進歩への基本的な信仰、それは常に我々の旅路で我々を導く北極星でなければならない
何故ならば、もし我々がそれを馬鹿げたこと、あるいはナイーブなことと捨てるならば、その時には我々は人間にとり何が最善なのかを見失う。我々は我々の可能性の感覚を失う。我々は我々の道徳的コンパスを失う

obama nobel4.jpg●彼らを模範に生きよう
今日、今どこかで、あるがままの世界で、兵士は自分が武力で圧倒されていることを知るが、それでも平和を保つためにしっかりと立っている
今日どこかで罰するかのような貧困に直面しつつも、母親はその子供に教える時間をとり、彼女の持つ数少ない貨幣をかき集め、その子を学校にやろうとしている。何故ならば彼女はこの残酷な世界にその子供の夢のための場所がまだあると信じているから

彼らの模範によって生きよう。明確な目で戦争があることを理解しつつ、まだ平和のために努力し得る。我々はそれをすることが出来る何故ならばそれが人間の進歩の物語であり、すべての世界の希望であり、この挑戦の時期において地上における我々の仕事でなければならないからである
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Peace.jpgオバマ大統領は、2009年4月にプラハで行った「核なき世界」演説でノーベル平和賞を授与されることになったのですが、受賞決定後に各方面から様々な意見が寄せられ、「核なき世界」論を夢物語として批判する声も多くありました

そんな中での授賞式スピーチは、冷徹に現実を見つめつつ、なお遠き道のりを目指す決意を格調高く訴え、受賞を巡る様々な声に思いを語るものとなっています。オバマ大統領の評価とは別に、素晴らしいスピーチだと思います

より詳しくはこちらを(これも全文ではありません)
その1→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-31 
その2→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-01
その3→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-02

受賞を謙遜する冒頭の言葉も好みです・・・
「世界には、正義を求めたために牢屋で殴打された人々、苦悩を和らげるために人道的組織で働く人々、その静かな勇気と共感の行為でシニカルな人をも動かす数多くの無名の人々がいる。これらの人々、一部の人と彼らが助けている人以外には知られていない人々、が私よりもずっとこの賞にふさわしいと考える人々に、私は異議を唱えることはできない。」

終戦の日に考える記事
「玉音放送を読む」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-16-1
「未だ公式名称無き『先の大戦』」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-26
「歴史認識3つの首相談話」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-02-20
「靖国首相参拝3名の視点」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-07

上記3本のまとめ記事
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-14

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SIPRIが核兵器数などの年次報告 [安全保障全般]

世界の90%を占める米露の削減で総量減少
しかし、中、英、パキ、恐らくNKは増加

SIPRI 2019.jpg6月16日付Defrense-Newsは、SIPRIが発表した世界各国の核兵器保有数を含むレポート(SIPRI Yearbook 2019)を紹介し2019年初時点で、米露が保有する核兵器数は新START条約に沿って削減(米が265発、露が350発削減)されましたが、中、英、パキ、NKは増加(イスラエルも恐らく増加)、印と仏は変化なしと取り上げています。

また全体数は減りましたが、全ての国で兵器の近代化がすすめられているとSIPRIはしています

世界全体の核兵器数13865個(2018年初時点では約14465個)が前年より減少したのは、全体の約90%を保有する米露が新START条約の規定弾頭数まで2018年中に削減した結果ですが、2021年までにこの条約が延長されなければ、この減少傾向はどうなるかわかりません。現在の米露関係を考えると悲観的な見方が広がっています

nuclear bomb.jpgまた、2018年にトランプ政権として発表した核体制見直しNPRで、オバマ政権の核兵器削減方針を転換し、現有兵器の近代化と低出力核兵器を潜水艦発射巡航ミサイルに搭載する方向を打ち出しており、この低出力核弾頭開発が他の核保有国に影響を与えているとSIPRIは見ています

SIPRI(Stockholm International Peace Research Institute)が核保有国として取り上げた国は9か国で、保有数が多い順番で露、米、仏、中、英、パキ、印、イスラエル、NKとなっています。

めったに目にしない数字ですので、各国ごとにご紹介します。米英仏は数を公表していますが、その他は核実験や核分裂物質の利用状況などからSIPRIが推計したもので、他にもいろいろな推定数が出回っているのでしょうが・・・

16日付Defrense-News記事はSIPRI分析を紹介し
米国は現在6185発の核弾頭を保有しているが、その中の約1000発の低出力弾頭を搭載する重量投下爆弾と空中発射巡航ミサイルに加え、潜水艦発射巡航ミサイル用の低出力弾頭を加えようとしている
nuclear bomb3.jpgロシアは現在6500発の核弾頭を保有しているが、この規模と非戦略型弾頭の構成は、米国の通常戦力優位に対抗するためのもので、米国の非戦略弾頭やその総トン数に対抗するものではない

●しかし米国が長射程戦略核の増強に併せ、潜水艦発射巡航ミサイルに低出力核弾頭を搭載し、欧州やアジアでの非戦略核のプレゼンスを追求することで、ロシアは非戦略型核兵器への依存傾向を強め、中国にも同様の兵器導入を考えさせる契機となるだろう
●なおロシアは現在、約1830発の非戦略型核弾頭を保有しているとみられる

ロシアは引き続き核戦力搭載可能な長距離航空部隊の長距離展開を北極海、大西洋、太平洋地域で行っており、2018年12月には大統領を巡る混乱が続くベネズエラに2機のTU-160派遣を行っている。
中国も核戦力拡大に努めており、約290弾頭を保有していると見積もられている。核の先制使用をしないと宣言しているが、核による報復能力の改善に努力している

nuclear bomb2.jpgインドとパキスタンについては情報が少ないが、両国ともそれぞれ弾頭数を10-20個増やし、インドが130-140、パキスタンが150-160個と見積もられている
北朝鮮についてはさらに情報が乏しいが、20-30弾頭を保有すると推定され、2018年時点の推定から10個程度増加と見積もっている
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2011年2月5日に米露間で批准書が交換され新START条約が発効しましたが、有効期限は10年間(最大5年の延長が可能)であり、2021年2月の期限に向け、核兵器が注目を浴びることになります

ICBM James.jpg北朝鮮が少数でも核保有を宣言して世界を振り回し、イランの件でも世界の原油市場を巻き込んだ不安材料となっています。

サイバーだ宇宙だと言っても、やはりその御威光が衰えることがない核兵器の基礎データでした

昨年のSIPRIレポート
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-20

新STASRT条約は延長の危機
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-21

NPR(核態勢見直し)関連
「リーク版NPR」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13
「次期ICBMと核巡航ミサイルの企業選定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-27-1
「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1
「トランプ政権NPRの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09

「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「NPR発表3回目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-02
「バイデンが大幅核削減を公言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-19

米国核兵器を巡る動向
「今後10年の核関連予算見積が23%増」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26
「核兵器輸送がNo2任務」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-11
「ついにINF条約破棄へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「サイバー時代の核管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02
「リーク版:核態勢見直しNPR」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13
「議会見積:今後30年で140兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02-1

21世紀の抑止概念を目指す
「3本柱はほんとに必要か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03
「相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25

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もう3週間、イスラエルでGPS妨害つづく [安全保障全般]

イスラエル航空局が妨害確認し公表
シリア内ロシア軍拠点からだと専門家指摘も露は否定
世界で最も激烈なEW環境にある地域で

Israel Lebanon.jpg2日付C4ISRNETは、6月25日に国際エアライン操縦者協会が、テルアビブ空港を利用する民間航空機が過去3週間に渡りイスラエル周辺空域でGPS妨害を受けていると発表し、イスラエル航空局もこのような状態にあることを26日認めました

また27日に英国BBCはイスラエル軍ラジオ局「Galei Tzaha」がこの妨害がロシアによる仕業だと報じていると伝え、C4ISRNET自身もテキサス大学の専門家Todd Humphreys教授からロシアの仕業だとする情報を得たとしています

一方で現時点では西側専門家も、シリア領内のロシア軍拠点がGPS妨害電波の発信源らしいが、ロシアはイスラエル向けにGPS妨害を企図しているわけではなく、自軍防御のために強力な電波妨害を行っているため、イスラエルに出入りする航空機が副次的なトバッチリ影響を受けている・・・との見立てになっているようです

2日付C4ISRNET記事によれば
GPS III 2.jpg●テキサス大学のHumphreys教授は、「昨年からシリア駐留ロシア軍が、ユニークな組み合わせの妨害電波を発射していることが判明しており、我々はsmart jammingと呼んでいる」、「イスラエルで発生している状況に関しては、イスラエルが攻撃目標になっているわけではなく、単に副次的な被害(collateral damage)を受けているのである」と説明している
●この3週間に及ぶ影響について地域に展開する米軍指揮官たちは、正確な位置や航法情報や時刻情報が入手困難になっていることに懸念を強めている

●Humphreys教授はまた、在シリアのロシア軍が発信器を改良し、その結果として妨害に繋がっていると語り、GPSに頼っている軽易な航空機は大きな影響を受けると述べた
●同教授は「GPSをサーバーにまで遡って妨害しようとしているのではなく、シリアから発進されている過去18か月間にわたる妨害は、彼らの防御対象エリアの空域での無人機運用や空域管制を阻害することを狙ったものである」とも述べた

GPS III.jpg●また同教授は、国際宇宙ステーション搭載のセンサーによる分析等から、シリアのKhmeimim空軍基地内から妨害電波が発信されていると説明したが、ロシア側は「fake news」だと主張しているとBBCは伝えている
●しかし、これまで3週間の間、どこからもこの妨害電波に対処する動きはなく、解決法もないのが現状である

●報道では、民間航空機への妨害だけが報じられているが、専門家はロシアが軍事装備への妨害能力も保有していると指摘し、米軍がシリアで運用している無人機も妨害を受けていると報道されている
●米軍の前特殊作戦軍司令官Raymond Thomas大将は2018年に、米軍はシリアにおいて、世界で最も激しいEW環境での作戦運用を強いられていると語っている
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今も世界のどこかでEWを駆使して国益を確保しようとする、激しい戦いが繰り広げられていることのご紹介です。

Israel US2.jpgイスラエル軍に、また米軍に、どのような影響が出ているのかも公になっていないので気になりますし、既に行われているであろうロシア側への対処も不明で気になります。

対テロに注力している間に、ロシアや中国は一歩先を行っていると考える事も重要です。

「GPSが30日間中断したら」
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-18

EW関連の記事(最近の動き)
「米空軍がサイバーとISRとEwを統合」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3
「電子戦検討の状況は?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-13
「エスコート方を早期導入へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27

EW関連の記事(米空軍の苦境)
「米空軍電子戦を荒野から」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1
「ステルス機VS電子戦攻撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「緊縮耐乏の電子戦部隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-29-1
「MALDが作戦可能体制に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-29-1

EW関連の記事(米空軍は海軍に依存)
「EA-18Gで空軍の電子戦を担う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-08
「空軍用に海軍電子戦機が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-09
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12

EW関連の記事(ロシア軍に驚嘆)
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

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英海軍と英空軍共有のF-35Bが初任務 [亡国のF-35]

キプロスから発進しシリアで警戒飛行
今秋には空母クイーンエリザベスで試験へ

cyprus.jpg6月25日付英国防省発表によれば、英海軍と英空軍が共有するF-35B型が、6月16日に地中海キプロス島の地上基地を2機で発進しタイフーン戦闘機と共にシリア上空で対IS作戦の一部である警戒飛行を行い、英軍F-35として初の実戦任務を遂行しました

6月16日から発表があった25日までの間に、既に12ソーティーの任務飛行をこなしたと併せて発表されており、攻撃任務や空中戦を遂行したとの発表はありませんが、タイフーン戦闘機と並ぶ戦力として地上発進態勢は確立されたということでしょう

これまでのF-35初任務遂行を整理すると・・・
イスラエル空軍 2018年5月
米海兵隊    2018年9月
米空軍      2019年4月
英空軍      2019年6月

F-35B-2.jpg今後の英海軍の焦点は、垂直離着陸可能なF-35Bの特徴を生かし、英海軍の新空母エリザベスでの運用態勢を確立することです

そのための大事な秋の訓練を、米東海岸沖で行わなければならない悲しい背景は先日ご紹介しましたが・・・、今日はお祝いですので、英軍の発表をご紹介しておきます

Tony Radakin英海軍参謀総長は25日の発表の中で
●我が軍が17機保有するF-35Bが、導入後の早い段階で、その優れた能力を発揮して証明してくれたこと素晴らしいと思う
●秋には空母エリザベスが米東海岸に戻り、F-35Bを搭載しての「作戦能力試験:Operational Trials」に臨み、第5世代機の能力を更に海から発揮できるレベルに引き上げる

今後数十年間に渡り、空母エリザベスとF-35Bのペアは、世界中に展開可能な攻撃能力と通常抑止力の担い手として、英国派遣部隊の中核をなすことになる
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Queen Elizabeth.jpg英国政府は各タイプを合計して138機のF-35を購入する計画を持っていますが、誰もその数を購入できるとは考えていない現実があります

米東海岸まで移動して空母の最終能力チェック「作戦能力試験」を行うのも、保有するF-35が空母の最大搭載能力35機に足りず、米軍の支援を受ける必要があるからです。

F-35Bを空軍と海軍で共有するとの素晴らしいアイディアの英軍ですが、「EUからの合意なき離脱」が現実味を帯びる中、明るい経済見通しはなく、苦しい台所事情です

空母エリザベスの悲しき現実
「米海兵隊F-35が英空母へ展開へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-09
「米軍F-35Bを英空母に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16
「英空母が航空機不足で米軍にお願い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

英国軍を考える記事
「EU離脱で英国防計画ピンチに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-01
「英軍新空母を南シナ海に!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06
「新空母の艦載機が不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

「予算減で英軍の士気崩壊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-18
「英軍が戦闘機半減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-13-2
「大なた:英軍の大軍縮」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19-1

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米艦艇の建造修理施設の人員不足に危機感 [Joint・統合参謀本部]

米艦艇修理施設の勤務者平均年齢55歳
変動激しい仕事量に若者が寄り付かず
355隻体制どころか現状維持も困難に

shipyard2.jpg20日、米海軍艦艇建造技術関連のイベントで造船修理施設関係者が艦艇建造&修理施設での勤務者の高齢化が急速に進み、熟練層の退職が進む中、米海軍からの業務発注量に上下動が大きく、また若者層をこれら業務に引き付けることが難しく米海軍を支える基盤が危機に瀕していると訴えています

現在米海軍は、現在の290隻レベルから、355隻体制への拡大を多方面で訴えていますが、造船修理施設関係者からは現状態勢の維持さえも困難になるとの悲観的な見通しが示され、国や地方政府の支援を含めた対策の必要性を訴えています

業界団体では、同一地域にある関連企業が協力して労働者を融通し合い、需要の上下動に対応したり、協力して基礎的技能のトレーニングを新人労働者に行うなどに取り組んでいるようですが、相当厳しい状況にあるようです

21日付米海軍協会web記事によれば
shipyard4.jpg●20日、American Society of Naval Engineersの年次総会で演壇に立ったフロリダ州ジャクソンビルBAE Systems修理工場のTodd Hooks事業所長は同事業所の労働者の平均年齢が55歳で、熟練した現場作業員の定年退職が相次いでいると危機感を訴えた
●また、米海軍からの委託仕事量の上下動が激しく、例えば2200名を雇用していた数か月後には、仕事量の減少で1500名しか雇用を維持できなくなる現状の問題を同事業所長は訴えた

●Hooks事業所長は「このような状態では、我々が必要としているある程度の技量を有する労働者を安定的に維持することが難しい」、「今後さらに高度な構造や装備品を搭載した艦艇が増え、従来とは異なる高度な技術者がその維持に必要となる中で、人材確保問題は厳しさを増すばかりだ」と語った

高卒の新卒採用の難しさにも同事業所長は触れ、高校側はなるべく卒業生を大学に進学させたいと考えており、地元の有力産業で給与面でも優れ、重要な国家に貢献できる仕事であるにもかかわらず、我が事業所の採用担当者の高校生へのアプローチが阻害されていると指摘した
●一方で同事業所側の問題として、業務閑散期に自宅待機を命じた若者は、再雇用を持ちかけてもほとんど戻ってこない現状を明らかにした

shipyard.jpgノーフォーク周辺の艦艇修理業界団体のトップを務めるWilliam Crow氏は、団体を構成する286企業間の協力とバージニア州からの財政援助を得て、熟練作業員不足問題に対応していると述べ、地域で約4万3000名が関連産業で働く同産業の地域への貢献と、地域政府の理解の必要性を主張した
一方で米海軍からの仕事量の上下動の激しさを問題として指摘し、「米海軍にだけ問題を投げかけるつもりはないが、不均一で激しく上下動する業務量は、我が業界の大きな問題で、ひいては米海軍が望んでいる艦艇数拡大方針の阻害要因になる」、「海軍が望む355隻体制への拡大はおろか、現有艦艇の維持問題が大きくのしかかることになる」と表現した

●Crow氏は業界団体としての問題への取り組みとして、代表的企業からの資金援助を受け、現場作業員の能力向上教室を開催し、オンラインでの教室を含めて1075名を2017年に育成したり、新入社レベルの労働者を対象とした教室を開設したりしていると説明した
海軍産業基盤研究所長のDavid Architzel退役中将は、同研究所として、新規採用に関する問題の実態調査や、将来どのような人材が必要になるかの分析を行うと明らかにした

●同イベントで登壇した関係者は一同に、ヴァージニア州が行っているのと同様の同産業への支援を他地域や国レベルに拡大する必要性を訴え、また同産業界は仕事の重要性とやりがい、また給与水準の高さをアピールしていく必要がある点で一致した
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関係者は、「good-paying jobs」や「well-paying career」と艦艇建造や修理の仕事を表現していますし、ネット上の求人案内にも当然給与水準は明記しているはずですから、それでも人が集まらないのは「不安定さ」が大きな理由かもしれません

shipyard3.jpgただ推測ですが、恐らく事故災害も他の業種に比べれば多いでしょうし、長い歴史を持つ地元産業だけに、勤務者のイメージが地域の根付いており、親が子供である若者を入れたがらないのかもしれません。

勝手なイメージで申し訳ないですが、現場中心の男社会ですから、酒・賭け事・喧嘩・ドラッグなんかのイメージが共有されているのかもしれません。しかし米海軍の基盤を支える仕事ですから、イメージアップしてほしいですねぇ・・・

艦艇の修理や兵たんの課題
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09
「米軍需産業の課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-1
「優秀な横須賀修理施設」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-05
「米海軍トップが文書「将来の海軍」を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-18
「国防長官を無視:米海軍が艦艇増強プラン」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-17

グダグダの米海軍装備
「ズムウォルト級ミサイル駆逐艦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-22
「沿岸戦闘艦LCSがF-35化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-09
「空母建造費の削減検討に30億円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-07

「次期SSBN基礎技術要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-27
「攻撃潜水艦SSNの将来」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-28
「あと25年SLBMを延命!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13
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本当か?米空軍パイロット流出が鈍化? [米空軍]

パイロット不足が「leveled off」したと表現
5年以内に改善方向を期待と・・・

Goldfein Pilot.jpg11日、Goldfein米空軍参謀総長がパネル討議に登壇し米空軍パイロットポストの約1割に当たる2000名が不足し、2016年頃の1500名不足から悪化し続けてきた件について、「不足数の増加は抑えられた:leveled off」と表現し、今後5年間で不足数が減少に転ずる見込みだと語りました

給与面や海外派遣な長期化していることなどで民間航空会社への流出が止まらず一方で民間航空会社の操縦者需要は拡大が見込まれている中、ありとあらゆる手を打ってきた米空軍ですが、参謀総長によれば、米空軍での継続勤務を希望するパイロットが増えてきたとのことです

具体的な統計数値には言及せず、「leveled off」とか「slightly uphill」との極めて微妙な表現を使用しての参謀総長の語りで、そんなに楽観視してよいのか・・・つい最近も民間航空会社幹部に直談判して、「引き抜きするな」とお願いしていたのに・・・と突っ込みたいところですが、これまで言及がなかった視点の対応にも言及していますのでご紹介しておきます

11日付米空軍協会web記事によれば
Goldfein space.jpg●11日、Goldfein米空軍参謀総長は「Association for Defense Communities conference」の演壇に登り、インタビューを受ける形で操縦者不足について語った
●同大将は「パイロット不足の状況は悪化が止まり、より多くの操縦者が継続勤務の方向にある」と語り、更に「今後5年間のうちに、不足が改善に向かうと予想している」とも述べた

●参謀総長は、継続勤務のボーナスなど様々な対策が効果を発揮してきたと述べながらも、現場パイロットからの直接の聞き取りで最大の問題と同大将が感じている「quality of service:勤務の質」改善が不十分との認識を明らかにした
●「quality of service:勤務の質を如何に改善し、パイロットの期待にこたえられるかにかかっている」、「パイロットは飛ぶために空軍に所属しているが、軍の航空部隊に所属する要員にふさわしい戦う能力と、最大限に能力を伸ばし鍛える場を如何に与えるかを考えねばならない」と同大将は語った

●また参謀総長は、「各飛行隊が部隊のメンバー一人一人を巻き込んで活動し、各構成員が組織内で役に立っているとか、存在意義を感じられるような組織になるよう取り組んでいる」とも表現し、飛行隊長クラスのリーダーシップの重要性を強調した
●そして、この点は、パイロットだけに限らず、サイバー要員、整備員、ISR要員など全ての職種職域の兵士に関しても言えることだと強調した

USAF pilot.jpgまた家族の視点から子弟の教育に大きな影響を与える空軍基地内の学校や基地近傍の学校の質改善が、極めて大きな課題で懸念材料だと言及した
●仮に空軍での仕事に満足し、海外派遣にも意欲的であったとしても、一般に地方に所在することが多い基地内の学校や基地周辺の教育レベルに問題がある場合、家族の選択として空軍外の道を考える可能性が高まると同大将は述べた

基地周辺の学校の質も問題に関しては、最近、各軍種統合の形で基地所在の州知事に書簡を送り、今後の基地の統廃合や新設を検討する際は、基地周辺の教育の質を評価要素とすると記し、州政府の基地周辺学校教育改善に注力するよう要請したところである
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米空軍パイロットの「quality of service:勤務の質」改善を問題に上げていますが、不足分の7割を占める戦闘機パイロットが満足するような飛行時間の不足があるのかもしれませんが、前線での「戦闘機の役割」がなくなってきており、単に空中で待機や哨戒して爆撃機や偵察機を援護する退屈な任務ばかりになっていることも大きな背景ではないでしょうか

Rethinking Seminar.jpg戦闘機パイロットが夢を追いかける空中戦は、ベトナム戦争が最後で、あとは偶発的な事案程度です。

安価な長射程巡航ミサイルや弾道ミサイルが拡散する中、また米国に戦闘機VS戦闘機の戦いを挑む無謀な国が現れる可能性が極めて低い中、特に戦闘機パイロットの「quality of service:勤務の質」を満足なものにするこては、彼らの考え方や、戦闘機の必要性から考え直さなければ解決不可能な問題に感じます

米空軍パイロット不足関連
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
「下士官パイロット任務拡大?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10
「世も末:幕僚勤務無し管理検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-20

「トップが操縦者不足と軽攻撃機を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-17
「18年ぶり飛行手当増額」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-28
「戦闘機パイロット2割不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-22
「航空業界は今後20年人手不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29

米空軍整備員不足の苦悩
「整備員不足は今年解消?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-24
「嘉手納整備員は若手ばかり」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03
「整備員3400名が不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-11-1
「米空軍機の稼働率が異常低下」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-02

「整備員不足対処案も苦悩続く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-03
「F-35整備員確保の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-14
「A-10全廃は延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-22
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