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空軍長官:高価な極超音速兵器は少数保有で [米空軍]

技術開発担当次官が全力開発を推進し
国防省が空軍に開発ノウハウを陸海軍に学べと言う中

AGM-183A2.jpg2月15日、米空軍協会ミッチェル研究所のイベントでKendall空軍長官が講演し、米空軍の極超音速兵器開発は開発物につきものの課題と格闘中だが、コストダウンには今後も注力するものの、完成してもその高価格や役割から保有兵器数は「small」になると発言しました

米国防省が最優先開発案件としている極超音速兵器開発に陸軍と海軍は協力して取り組んでいますが、空中発射型2タイプを追求している空軍は、空軍長官自身が「米国を遠ざけるために必要としている中国と、抑止力として考える米国とでは、同兵器の重要性が異なる」と以前から主張しており、米国防省から空軍の同兵器開発が不調な点に関し「陸海軍に学べ」と言われても、どこ吹く風の姿勢です

HAWC.jpgまた空軍長官は15日の講演で、米空軍の同兵器開発が不調でも「(比較的同兵器開発が順調な)陸軍をうらやましいとは思わない。空軍を助けて敵の防空網を攻撃してくれたり、敵の攻撃目標を増やして敵を混乱させてくれれば喜ばしい」と余裕を示しているほどです

また、同兵器のコストについては、15日に調達担当次官室が「同兵器開発は企業の寡占化が進み、競争原理が働かず、技術革新の停滞や価格高騰につながる恐れがある」とのレポートを出して、空軍長官の「高価格高止まり」主張を裏付ける結果となっているようです

Kendall空軍長官の発言映像(約44分)


2月15日米空軍協会web記事で空軍長官は
AGM-183A.jpg●極超音速兵器は近い将来価格が低下する見通しはなく、私は同兵器を保有するにしても「比較的小規模になろう」と考えている。もちろん価格低下に空軍としても取り組んでいくし、価格動向を注視することに変わりはない
●米空軍は2タイプの同兵器開発に取り組んでいるが、どちらが有望かについて言及する段階にはなく、成否について言及する段階にもない
---ARRW→B-52搭載をイメージ。ロケットで加速され自ら推進力を持たず射程が長くないたARRM(Air-launched Rapid-Response Weapon:AGM-183A)
---HACM→戦闘機クラス搭載をイメージ。推進装置を持ち射程の長いHACM(Hypersonic Attack Cruise Missile)2021年9月に3度目の試験で基礎試験成功

HAWC5.jpg●2タイプ両方を装備化する可能性もあるが、空軍の空中発射型は航空機に搭載して発射地点まで運搬する必要があり、その点で前方基地や前方配備艦艇から発射可能な他軍種の同兵器より不利な位置にある。(比較的同兵器開発が順調な)陸軍をうらやましいとは思わない。空軍を助けて敵の防空網を攻撃してくれたり、敵の攻撃目標を増やして敵を混乱させてくれれば喜ばしい
●しかしいずれにしても、高価な兵器であり、費用対効果や他の要素からも、慎重に評価して同兵器への投資を検討しなければならない

●米国を遠ざけたい中国と、中国抑止用に同兵器を考えている米国とでは、同兵器の位置づけは異なり、中国と同様に米国が追求する必要は必ずしもない。米国は多数の移動目標に対処する必要があり、少なくとも初期型の同兵器は固定目標に適している点も注意を要する
AGM-183A3.jpg●極超音速兵器は有効な手段だが、米空軍が攻撃する必要のある目標を攻撃する唯一の手段ではなく、低速度の巡航ミサイルは安価であり、ステルス性や敵防空網への妨害と組み合わせれば有効であり、総合的に将来の兵器体系を考える必要がある

●(空軍の同兵器開発試験がトラブルに直面している点への質問に対し、)どの開発案件もすべてが順調だとは限らず、トラブルや経験を積んで成熟していく。空軍は最近の失敗を調査中で、調査結果に応じ必要な判断を下して前進する
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まんぐーすは剛腕Kendall空軍長官「推し」ですが、深いデータに基づく判断ではなく、感覚的で直感的な見方です。

Kendall 7.jpg米陸軍や海兵隊が長射程攻撃に投資するのはある程度必要だとしても、攻撃対象全体を見積もり、必要な兵器ポートフォリオを費用対効果を見極めて検討することは極めて重要だと考えます

空軍長官は同講演で、今後の兵器開発投資は「前線で違いを生み出せること」、「実験室レベルの成功だけでなく、前線配備可能なレベルであること」が大前提となり、以前のように可能性だけで突っ走る余裕はないと明言して「取捨選択」を徹底するとも語っており、極超音速兵器もその視点で同列に吟味するのでしょう。国防省の最優先指定にもかかわらず

15日公表の調達担当次官「軍需産業基盤」レポート
https://media.defense.gov/2022/Feb/15/2002939087/-1/-1/1/STATE-OF-COMPETITION-WITHIN-THE-DEFENSE-INDUSTRIAL-BASE.PDF

米軍の極超音速兵器開発
「国防省が空軍に極超音速兵器開発の改善提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-30
「技術担当次官:同兵器は最優先事項だ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-23
「空軍長官:重要性は中国と米国では異なる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-21
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16

「米海軍潜水艦への極超音速兵器は2028年」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-19
「米陸軍の極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-14
「米空軍が3度目の正直でHAWC成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-28
「最近の状況整理&米海軍が2段目ロケット試験成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-27
「米艦艇搭載は2025年頃か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-24
「豪州とも協力」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-01
「今頃学会と情報収集枠組み」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-28
「3月の極超音速兵器テストは誤差20㎝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-14
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31

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