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湾岸戦争で活躍のJSTARS E-8Cが引退へ [米空軍]

最後の2機が11月末には完全引退へ
これも後継機なく多様なセンサーネットワークで対応
旅客機B707ベースの地上移動目標探知追尾機

E-8C Desert storm3.jpg10月2日付Defense-Newsが、残り2機となったJSTARS E-8Cが、ラストフライトなど最後の時を迎えつつある様子を伝えています。なおE-8C後継機計画は2019年に断念され、先日ご紹介した特殊情報収集機RC,WC-135シリーズと同様に、同アセットの脆弱性や維持整備費の削減等を理由に、衛星や地上センサーや多様なアセット情報のネットワーク融合情報で対応する方針となっています

E-8Cは胴体腹部に搭載した全長の長いセンサーで広範囲の地上移動目標を継続追尾し、その動きをリアルタイムで他の航空戦力や地上部隊と共有して、敵地上部隊の阻止や友軍相撃防止に活躍しました。

Desert storm.jpg同機の実戦デビューは衝撃的で、まだ機材の試験段階だった1991年に湾岸戦争に投入され、クウェートから砂漠の中を撤退するサダムフセインのイラク地上部隊の敗走状況をリアルタイムで把握&伝達し、米軍を中心とした多国籍軍戦闘爆撃機が攻撃したイラク地上部隊は、道路上に延々と列をなす破壊された残骸へと変わり果てました

その後も様々な場面で投入され、2014年や2022年にウクライナ国境付近を移動し終結するロシア軍の動向や、軍事以外でも麻薬組織の密輸行動対処にも力を発揮しました。また、2001年から18年間にわたり中東域に連続展開を行い、2019年に撤退するまで対テロ戦争の最前線で活躍しています

E-8C Desert storm.jpg16機製造されたE-8Cは2022年2月から退役を開始し、現在残る2機のうちの1機が9月21日に最後の任務飛行を行ったとのことですが、ドイツのRamstein空軍基地を離陸した当該機の任務については「南欧州を中心に任務を遂行した」とだけ公表され、細部は非公開となっています

E-8C Desert storm2.jpg残る別の1機は、11月の最終週にアリゾナ州Davis-Monthan空軍基地の退役航空機置き場に向け最後のフライトを行い、この時点でJSTARS E-8Cの完全退役となりますが、それまでの間も緊急の作戦命令に備え、乗員たちは技量維持飛行を続けるとのことです

2002年から2023年までの間に16機で積み上げた総飛行回数は14000ソーティーを超えたということですが、まんぐーすのような世代の人間には、とてもさみしい「JSTARS E-8C」とのお別れです

E-8C関連の記事
「中東地域から18年ぶり撤収」→https://holylandtokyo.com/2019/12/10/2840/

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米空軍が電動ヘリ初号機を受領し本格試験開始 [米空軍]

トヨタも約600億円出資のJoby Aviation社から
米空軍は他にも複数の企業と電動ヘリ(eVTOL)購入契約済
空軍研究所AFWERXチームの「Agility Prime」計画で

Joby Aviation.jpg9月25日、米空軍が4月に契約したJoby Aviation社から、6つの回転翼を持つ電動ヘリ(eVTOL)初号機を受領し、加州Edward空軍基地でお披露目されました。全米で初の「電動空中タクシー:electric air taxi」機体の「納入」だと同社CEOがアピールしています

米空軍が推進するACE(Agile Combat Employment concept)構想では、部隊の分散運用を追求しているため、米空軍の電動ヘリ導入プロジェクト「Agility Prime」計画(国防省DIUと米海兵隊も協力&出資)では、施設不十分な分散基地や被害を受けた施設での移動に使用したり、作戦準備や初期段階の物資人員輸送や、その静粛性で偵察任務も期待されている模様です。

Joby Aviation2.jpgそのほか、その静粛性から、従来型ヘリでは危険な特殊部隊員の侵入・帰還輸送や敵領域での救難救助のほか、Edward空軍基地周辺の試験場や演習場での人員移動用など、66項目の任務がアイディアとして米空軍プロジェクトチーム内では検討されているとのことです

なお、同機は上昇高度11000フィート、速度時速200マイル以上、行動半径100マイルの性能を持つとJoby Aviation社は説明しています

Joby Aviation3.jpg2024年初には2機目が納入されるJoby Aviation社の機体は、今後同社とNASAも空軍と協力して試験を行う計画で、NASAのテストパイロットは「各協力機関は異なった任務使用を念頭に異なった視点で同機を吟味していくが、重なる部分も多く、効率的に協力して試験を進める」と語っています

この他に米空軍は、4月にArcher Aviation社と別の6機の電動ヘリ購入契約を結んでおり、また9月にはBETA Technologies社と同社製電動ヘリ購入契約のほか、1時間以内での機体フル充電が可能な同社製急速充電設備の工事をフロリダ州Duke Field基地で開始しています

Archer Aviation.jpg電動ヘリ各種の空軍内試験を担当する第412試験航空団の司令官は、「航空世界の電動化は、疑いなく大きなエネルギー変革の一部分である。誇りをもって人類の将来のために試験に臨みたい」と語っています
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昨年時点では、米空軍の担当部署は、「まず空軍内の皆に電動ヘリを見てもらって、その特徴を肌で感じてもらうことが重要」と語っていましたが、今の米空軍内の雰囲気はどうなんでしょうか?

BETA Technologies.jpg2020年初にトヨタ自動車が同じJoby Aviation社に約600億円の投資を明らかにし、当時の豊田章男社長は「トヨタは、自動車事業に加え、今回、Jobyという力強いパートナーとともに、新たに“空”のモビリティ事業にチャレンジします」と言い切っており、

都市部の渋滞や環境負荷の低減、また過疎地域の輸送手段の確保など、様々な交通課題の解決に向け、電動ヘリ(eVTOL)の移動手段としての可能性追求に大きく踏み出しています

電動ヘリ導入検討「Agility Prime」計画の状況
「米空軍が電動ヘリeVTOL導入検討に始動」→https://holylandtokyo.com/2022/06/29/3370/
「電動ヘリeVTOLでACE構想推進へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/13/105/

米空軍の救難救助体制の再検討
「対中国救難救助検討は引き続き迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/
「米空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/

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台湾の新型国産潜水艦が西側支援を受け完成&進水 [安全保障全般]

老朽4隻に代わるディーゼル電気潜水艦を8隻導入計画
2500トン規模で浅い海での活動を想定した特徴
米国潜水艦搭載の各種装備を搭載

taiwan Hai Kun.jpg9月28日、台湾海軍の新型国産ディーゼル電気潜水艦(diesel-electric attack submarine)の1番艦が、中国神話の海中生物にちなんで「ハイクン:Hai Kun」と命名され、台湾南部の高雄市にあるCSBC造船所で、蔡英文総統も臨席する形で進水式を迎えました。

台湾海軍は現在4隻の潜水艦を保有していますが、第二次世界大戦中に建造された旧米海軍の潜水艦2隻と、1980年代後半に取得した旧オランダ海軍の潜水艦2隻で構成されており、老朽化が大きな問題となっていましたが、「ハイクン」は海上試験を経て2025年に台湾海軍で任務就役する予定となっています

taiwan Hai Kun2.jpgこの「ハイクン」型ディーゼル電気潜水艦(推定排水量は約2,500トン、長さは70メートル)を台湾は8隻導入する計画ですが、9月29日付Defense-News記事によれば、進水式の写真から、浅海での作戦用にX舵構成を持ち、一対の小さな水平フィンが追加されていることが確認できたということです。

また同記事は、同潜水艦部品の4割は国産であるが、多大な外国援助を受けており、支援には米海軍原潜で使用されているAN/BYG-1潜水艦戦闘管理システムの台湾版や、デジタルソナー、統合戦闘システム、潜望鏡などの補助装備が含まれている模様です

taiwan Hai Kun3.jpg更に、英国政府は(英国)企業に、約300億円相当の潜水艦技術と部品を台湾に輸出する許可を与え、日本の三菱重工業と川崎重工業の退職技術者が技術支援を行ったと言われています。またロイターによれば、2021年11月に、台湾が米国、英国、オーストラリア、韓国、インド、スペイン、カナダから技術者と退役した潜水艦乗組員を採用し、潜水艦の建造と運用について台湾海軍に助言していると報じています
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進水式典の様子(3分40秒)


taiwan Hai Kun4.jpg潜水艦についても素人に近いまんぐーすですが、海上自衛隊の潜水艦が2750~3000トンで全長80m前後であり、今回進水した「ハイクン」型(約2,500トン、70m)と同規模です。なお米海軍攻撃原潜のバージニア級は、7800トンの115mです

正面切って、中国の大規模艦艇群や大量の対艦ミサイルと、台湾海軍が対峙するのは無茶な話であり、このように隠密性の高い潜水艦戦などで対抗していくのが「あるべき道」だと思いますが、1番艦が今進水とは、気の長い話です・・・

台湾関連の記事
「2024年台湾総統選挙の情勢」→https://holylandtokyo.com/2023/08/28/4987/
「台湾製のドローン探知レーダーが話題」→https://holylandtokyo.com/2023/03/13/4335/
「CSISが台湾軍に非対称戦術迫る」→https://holylandtokyo.com/2023/01/16/4160/
「台湾有事のWargame結果を異例公開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/
「徴兵期間を4か月から再び1年間に」→https://holylandtokyo.com/2023/01/04/4103/
「台湾が統合強化と権限分散の軍改革へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/26/1705/
「台湾軍の対中国体制に危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/08/155/

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18年ぶりに空軍から米軍人トップ誕生 [Joint・統合参謀本部]

黒人としてパウエル議長以来2人目のBrown空軍大将
「変化を加速せねば敗北する」との信念を統合世界へ

Brown Milley.jpg9月29日、2019年から米軍の統合参謀本部議長を務めたMark A. Milley陸軍大将の退役式典と、Charles Q. Brown Jr.空軍大将の同議長就任式が、バイデン大統領やオースチン国防長官出席のもと開催され、10月1日からBrown空軍参謀総長が米軍人最高位の統合参謀本部の議長として、米国大統領に軍事面での助言を行う責務を引き継ぐことになりました

Brown Milley2.jpgMilley陸軍大将は、当時のGoldfein空軍参謀総長が下馬評でダントツ候補No1だった中、トランプ大統領の好みによる「どんでん返し推薦」で2019年に同議長に就任したものの、2020年の大統領選挙のゴタゴタの中でトランプ大統領から敵視&公然と非難された不遇の議長ですが、退役式で「我々は特定の個人に宣誓して任務についているのではなく、米国憲法に宣誓し、米国の理念を守るため軍務に服している」と述べ気概を示しています

Brown milley5.jpgISISを崩壊に導く軍事作戦を成功に導いた米軍人トップであり、また一方でバイデン政権による突然のアフガニスタン作戦からの撤退と、それに起因するタリバン復活によるアフガニスタン大混乱を「戦略的失敗:strategic failure」と言い切る「歯に衣着せぬ」議長として知られ、任期最後までロシアのウクライナ侵略対応に紛争するなど「海外軍事危機と連続して向き合ってきた議長」と米メディアは伝えています

Brown milley4.jpg新議長に就任するBrown空軍大将は18年ぶりの空軍人議長となりますが、Milley氏とは対照的に「慎重な」姿勢と物言いで知られています。ただ強く熱い信念の持ち主で、末尾の過去記事にあるように、空軍トップ就任直前に、自らが黒人として軍内で感じてきた人種差別について発言したり、

「変化を加速せねば敗北する:Accelerate Change or Lose」との信念の下、Kendall空軍長官と一体となり、強力に現有装備の早期退役と戦力体系更新をセットで推進する姿勢は突出しており、29日の式典でも「私の信念は揺らいでいない」と、変革を追求する姿勢を静かに力強く強調しています

Brown Milley3.jpgなお、バイデン大統領は同式典で、「軍を指導者する者として、我々の決断がもたらす直接的影響と、世界の人々に与えるインパクトから、決して目をそらしてはならない」と語ったということです

ところで、某共和党議員による将官級軍人の人事案への抵抗で、引き続き米議会での軍人人事案承認が遅れており、Brown大将が空軍人トップを離れた後の後任人事は、David W. Allvin副参謀総長が引き続き代理として勤める状態が続いています

Brown太平洋空軍司令官の関連
「18年ぶり空軍から統参謀議長候補」→https://holylandtokyo.com/2023/05/09/4618/
「行動指針を小冊子で」→https://holylandtokyo.com/2020/09/02/471/
「Brown大将が次期空軍トップ候補に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-03
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21

黒人としての空軍勤務経験を赤裸々に語る
「空軍へ来たれ!募集映像が話題」→https://holylandtokyo.com/2021/08/10/2087/
「Brown大将が人種問題を経験から語る」→https://holylandtokyo.com/2020/06/07/617/

次の空軍人トップはAllvin副参謀総長
「次の米空軍トップ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/

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米議会で共和党が国防長官の年俸1ドル提案の泥仕合 [ふと考えること]

国防省の多様性やジェンダー政策担当幹部にも1ドル要求
2024年度予算の成立瀬戸際に時間無駄提案を連発の愚行

Gov shutdown4.jpgこの記事を公開したタイミングで、10月1日から始まる米国の新年度用の2024年度予算が成立しているのか、とりあえずの暫定予算でお茶を濁しているのか、それとも1日の日曜日から米政府機関閉鎖が始まっているのか定かではありませんが、日本が偉そうに言える状態ではないものの、米議会の状況は混迷の度を深めています

今日取り上げる9月27日付Defense-Newsは共和党の動向を伝えるのみで、民主党の問題には触れておらず片手落ちな点には目をつぶって頂くとして、最近行われた共和党大統領立候補者によるTV討論会に、支持率50%を超えるトランプ氏が一度も姿を見せず、その他の2位争い候補だけで「動物園状態のののしりあい」を見せられては、ため息も出ません

Gov shutdown2.jpg記事タイトルに挙げた「(年俸約3200万円の)国防長官給与を1ドル」に削減する提案を行ったのは、共和党のジョージア州選出Marjorie Taylor Green下院議員で、同議員は「アフガニスタンからの米軍の無秩序な撤退」や「軍の最近の兵員不足」等々を取り上げて政府や国防長官を激しく非難して国防長官給与削減を求め、

このほかにも国防省で「ダイバーシティやジェンダー問題」を担当する複数の幹部の給与を1ドルにする予算案提出し、27日に下院共和党案としての本議会提案を承認させており、その他にも別の共和党議員が大統領令で示されている気候変動対策の国防省による履行を禁じる法案を共和党案に仕立てているほか、海外で妊娠した女性兵士が米本土に帰国する旅費支給規則を停止する改正案も提出されています。

Gov shutdown3.jpg「ダイバーシティやジェンダー」との言葉にきな臭さを感じるまんぐーすは、これら共和党下院議員の気持ちも分からないではないですが、上記のような共和党下院提出法案は、民主党が多数を占める上院で通過する可能性はゼロに近く、10月1日(日)からの政府機関閉鎖や兵士への給与未払いが発生する土壇場において、適切な行動とは考えられません

この記事を書きながら横目で見ている9月30日夜7時のNHKニュースは、共和党内の内部抗争で、投票を14回行っても議会内の委員長さえも決定できない「グダグダ」を報じていますが、ロシアや中国が「瀬戸際」にある千載一遇のチャンスを、みすみす逃しているような気がしてなりません。

Gov shutdown.jpg中国やロシア独裁政権の限界や腐敗を、「メシウマ」のネタにYouTubeで見て楽しんでる間に、西側の柱となる国の土台が揺らぐ事態が差し迫っています。ため息も出ず、顔を伏せたくなるような状況です

民主党のリベラル政策にも「ついていけない危うさ」を感じるまんぐーすですが、共和党にはもう少し何とかして頂きたいものです。立派な議会提案もたくさんありますから。

米議会から国防省や米軍への要求
「無人機防御策を米軍に要求」→https://holylandtokyo.com/2023/06/29/4761/
「バカ高い極超音速兵器価格を試算」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/
「希少アンチモンの備蓄要求」→https://holylandtokyo.com/2022/06/21/3379/
「レーザー兵器開発に懸念」→https://holylandtokyo.com/2021/09/24/2223/

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