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早くもファーストレディーとBrown大将夫人が家族ケアで協力へ [Joint・統合参謀本部]

バイデン夫人の「Joining Forces」とBrown夫人の「Five and Thrive」で
環境は異なれど、日本の自衛隊家族ケアの参考に

Brown.jpg5月29日付米空軍協会web記事は、次の米軍統合参謀本郡議長にバイデン大統領が推薦しているBrown空軍参謀総長とSharene Brown同夫人が、空軍参謀総長夫妻として米空軍人家族の福利厚生や生活の質改善のため取り組んできた2021年12月開始の「Five and Thrive」取り組みと、バイデン夫人が2021年4月から開始している軍人家族や退役軍人等支援の取り組み「Joining Forces「が、今後連携して全米軍を対象に推進される事になったと報じています

Brown空軍参謀総長が上院の承認を得て統合参謀本部議長に就任することを織り込み済の「先走った」お話ですが、Brown空軍大将を次期統合参謀本部議長に推薦すると、ホワイトハウスの庭で発表会見(5月25日)を行った際にバイデン大統領がスピーチで、

Brown3.jpg「シェレーン(Brown大将の夫人のファーストネーム)とCQ(Brown大将の愛称)は、米軍人とその家族の健康と福利厚生に献身的な貢献をしてきた真のパートナーです。私とJill(大統領夫人のファーストネーム)は、この課題についてより緊密にBrown夫妻と取り組んでいきたい」、

更に「もし軍人家族や退役軍人や軍人を支える人々に、彼らの繁栄・発展のために必要なものが提供されなければ、米軍の精強さを維持することは出来ない」、「Brown夫妻の「Five and Thrive」取り組みは軍人家族が影響を受けている大きな5つの問題に取り組むものであり、(志を同じくする)大統領夫人と次期議長夫人が協力を深めるのは自然なことである」と語って連携協力が発表されています

five and thrive.jpgBrown空軍参謀総長夫妻が空軍内で取り組む「Five and Thrive:5つの繁栄発展」の5つは、軍事家族が世界中を転勤しながら直面する課題「Childcare, Education, Healthcare, Housing, and Spouse Employment」の5分野を対象とし、末尾に紹介する専門webサイトでは、各分野ごとに最新の空軍の取り組みや軍人家族が利用できるサービス等を紹介しており、

更に月刊雑誌「Spouse Situation Report」を発行し、webサイトの情報をより身近な事例や具体的な家族を例に分かりやすく紹介する取り組みが行われているようです

Brown2.jpgSharene空軍参謀総長夫人は、2022年の米空軍協会航空宇宙サイバー会議にもBrown大将とともに登壇して家族ケアの重要性を扱うパネル討議を行っており、その中で「我々軍人家族がどこかに赴任した際、誰かが助けてくれるだろうとの思いがあれば、より心地よいし不安が少なくなるでしょう」と空軍各級指揮官や参加者に語っています

バイデン大統領は5月25日にBrown大将夫妻を紹介した際、「Brown夫妻は常に家族第一を念頭に将官勤務を含む軍人生活を送ってこられたが、制服を着ている軍人だけでなく、家族全体で国に奉仕していることをよく理解してこの問題に取り組んで来られた」とも語り、米軍家族の苦労や貢献が国の安全を支えていることに改めて敬意を表しています
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five and thrive2.jpgファーストレディーと軍事トップ夫人(候補)がタッグを組むやり方は如何にも米国式ですが、人材育成や組織活性化のため転勤が多い自衛官家族も似たような悩みを抱えていますので、以下の紹介するサイトの内容を参考にしていただき、様々なレベルで国防に携わる家族を支えていただきたいと考え、本記事をご紹介しました

米空軍の「Five and Thrive」取り組みwebサイト
https://www.fiveandthrive.org/

Jill Biden大統領夫人の「Joining Forces」webサイト
https://www.whitehouse.gov/joiningforces/ 

パイロットの子弟教育環境が定着率に影響
「コロナ沈静後のパイロット不足や争奪戦に備え」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「5年連続で米空軍はパイロット養成目標未達成」→https://holylandtokyo.com/2020/02/27/838/

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残り数機のKC-10空中給油機運用は2024年10月まで [米空軍]

NJ州McGuire基地での運用は6月22日まで
KC-135より導入が後のKC-10が先に退役へ

KC-10 McGuire4.jpg5月12日付米空軍協会web記事は、KC-46空中給油機の部隊導入に伴い、1980年代から運用開始した総計60機のKC-10空中給油機(旅客機DC-10がベース)が残り数機の部隊配備機を残し、実質的な作戦運用を終了しつつある様子を伝えています

米空軍は現在、1957年運用開始のKC-135給油機(B-707ベース)を約380機、1981年運用開始のKC-10を数機、そしてRVS等に第1級不具合を抱えつつも実戦投入を開始したKC-46給油機を約70-80機程度(計177機調達予定)を運用していますが、導入開始がKC-135(計800機調達)よりも遅いKC-10(調達機数60機)の方が、保有機数や原型機の運用状態等から機体の維持整備がより困難で高価となり、2024年10月に完全早期退役を迎える予定となっています

KC-10 McGuire.JPGKC-10は、NJ州のMcGuire基地と加州Travis基地に残されているようですが、先にMcGuire基地配備機体が6月22日に「ゼロ」になるようで、5月11日に最後の訓練飛行を同基地から行ったと記事は伝えています。細かく説明すると、15日の週にエアショーでの展示飛行を行った後、6月21日に基地でのお別れ式典を行い、6月22日にアリゾナ州のDavis-Monthan基地「通称Boneyard」にMcGuire基地最後の機体が移管されるとのことです

McGuire基地は2021年11月からKC-46給油機を受け入れ始め、現在同機を11機保有し、2026年度には23機体制を整える予定になっているようです。

KC-10 last.jpg米空軍の説明では、KC-46はKC-135の後継機であり、KC-10後継機は「KC-Y」として検討中となっていますが、米空軍は「KC-Y」の機種選定を行うとドロ沼化必至(ボーイングVSロッキード&エアバスの再燃)と恐れており、KC-135後継「KC-X」に続き、「KC-Y」もKC-46で軟着陸させたい意向がにじんでいる昨今の雰囲気です

McGuire基地での最後の訓練飛行となった5月11日のフライトは、女性大尉が機長で実施された様で、クルーの記念撮影写真が公開されています

KC-10 McGuire2.jpg米空軍では最近、爆撃機でも戦闘機でも、古い機体からではなく、維持が困難になった機体から退役する傾向にあり、爆撃機であれば老体B-52が残ってB-2やB-1が先に退役予定で、戦闘機でもF-16が改修を重ねつつあと2-30年以上飛びつ付ける計画の一方で、F-22初期型の退役が近く始まろうとしているところです

KC-135よりも大型で貨物搭載スペースがあり輸送能力が高かったKC-10ですが、McGuire基地所属機が亡くなると2-3機が加州Travis基地に残るだけになるようです。お疲れさまでした・・・

「KC-Y」をKC-46に軟着陸させることができるのかが気になるところですが、退役するKC-10の様子を静かなうちにご紹介しておきます

空中給油機体系の検討関連
「ステルス給油機検討開始」→https://holylandtokyo.com/2023/02/13/4281/
「長官がステルス給油機に積極発言」→https://holylandtokyo.com/2023/01/25/4156/
「空軍がKC-YとKC-Zの検討予定に言及」→https://holylandtokyo.com/2022/08/26/3558/
「BWB機の技術動向調査」→https://holylandtokyo.com/2022/08/05/3508/

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米海兵隊の次期司令官候補は改革推進派 [Joint・統合参謀本部]

現在の副司令官で現改革構想とりまとめ人物
改革案への山のような批判もろともせず今日まで
第1海兵師団長をいじめ問題で解任された辛酸も
陸軍・空軍に続き、海兵隊も軍人トップが夏交代へ

Smith5.jpg5月31日付でバイデン大統領が、現在のDavid Berger海兵隊司令官の後任候補として、米海兵隊副司令官で海兵隊改革構想「Force Design 2030」を実質的に取りまとめたEric Smith海兵隊大将を推薦しました

5月24日には米陸軍参謀総長James McConville大将の後任候補に、同様にNO2である陸軍副参謀総長のRandy George陸軍大将が推薦され、米空軍でも下馬評では現副参謀長長のAllvin大将が最有力とされており、トップの仕事を横で見て把握している「手堅い」No2を後任に押す流れがこの夏は顕著です

Smith.jpgSmith海兵隊大将は、Texas A&M大学卒業で1987年入隊の推定59歳で、歩兵士官としてキャリアを積んだ人物です

最近ではイラクへ2回とアフガニスタン1回の従軍経験を持ち、特にアフガニスタンでは死闘が繰り広げられた「Helmand province」で、自らが旅団を率いて戦っています

その際の経験を踏まえてか、海兵隊兵士が背負う最前線での責任が急激に増しており、その負担を軽減する必要があると、海兵隊の中や議会だけでなく、記者団にも熱弁することが最近増えていると関連報道は伝えています

Smith2.jpg一方で、第1海兵師団長を務めていた際には、部隊内の「いじめ問題:hazing」に関連しSmith少将(当時)のメールが暴露され、軍法会議で「いじめ問題:hazing」への管理責任を問われて2018年に師団長を解任された経歴も取っていますが、一度レールを外れながら現在の位置にいる点で、真の実力者との声もあるようです

Smith大将が今回海兵隊司令官に推薦された背景には、現在の海兵隊改革構想である「Force Design 2030」を、副参謀総長になる前のポスト「deputy commandant for combat development and integration」として実質的に取りまとめていた点があげられています

Smith3.jpg「Force Design 2030」は、従来海兵隊の中心であった戦車や大砲部隊を削減し、無人機や対艦ミサイルを中心に据えて沿岸から敵艦艇を攻撃して統合作戦に寄与する方向を打ち出し、海兵隊内部や海兵隊OBから激しい非難を受けましたが、現在のBerger海兵隊司令官とともに正面から批判非難に立ち向かい、

2022年の海兵隊関係者が一堂に会する恒例の会議では、「海兵隊の信念、戦いの精神、攻撃姿勢、空対地専門部隊、部隊内連携等々は何も変わっていない」、「もし海兵隊の基礎が変わったと考える者がいるなら、Parris Island(海兵隊の新兵教育部隊)に行って確かめてきてほしい」と熱く語ったことが、Smith大将の評価を高めたと報道されています
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Smith4.jpgいずれにしても、バイデン政権が米海兵隊の改革方針継続に「GO」を出したと広く米国では認識されており、沖縄海兵隊の実質削減と後退の動きは、このまま継続すると見るべきでしょう

依然として米軍高官人事は、「米本土での妊娠中絶を希望する女性兵士への旅費支給」に反対するTommy Tuberville上院議員(共和党)によって停滞が続いており、軍内外からブーイング状態が続いていますが、現在の米軍の対中国対処方向が維持される流れです

Eric Smith海兵隊大将の公式経歴
https://www.marines.mil/CM/Biographies/Bio-Display/Article/2478637/gen-eric-m-smith/

米海兵隊の改革
「沖縄海兵隊4千名転進先グアム基地設置式」→https://holylandtokyo.com/2023/02/01/4230/
「沖縄にMLR設置で日米合意」→https://holylandtokyo.com/2023/01/13/4148/
「ハワイで創設のMLR部隊」→https://holylandtokyo.com/2022/08/19/3546/
「米海兵隊のstand-in force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「MLRを日本にも」→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/726/
「Force Design 2030構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

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ゲーツ国防長官時の米中軍事関係(2009-11年) [ゲーツ前国防長官]

アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアログ)を機に振り返る
「両国関係者が対話の重要性を確認する」過程で相手を探る
対テロ作戦でドロ沼の中、中国と相互訪問交流を行いつつ・・・

gatesShan2.jpg6月2日から4日にかけ、アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアログ)が開催され、米中関係に注目が集まっているとNHKなどが適当な報道を行っていたところですが、本日は普段と趣向を変え、オバマ政権誕生当時の2009年から11年頃の間に、当時のゲーツ国防長官が行っていた「両国軍事関係者が対話の重要性を確認する」ための会談や相互訪問から、中東に足を取られながらも、中国の出方を探っていた当時の様子を振り返ります

今や習近平政権は、中国経済大混乱の中、米国との対立姿勢を鮮明にするしかない危機的な状態に立ち至っていますが、2009年から11年頃は、中央軍事委員会副主席の徐才厚(Gen. Xu Caihou)が訪米してCSISで講演(2009年)まで行い、2011年1月にゲーツ長官が訪中して胡錦濤主席、Yang Jiechi外交部長、徐才厚と会談までしていた時代がありました

US China2.jfifゲーツ国防長官が訪中するくらいですから、マレン統合参謀本部議長や各軍種参謀総長の訪中なんてのもあった時代ですが、結局「両国軍事関係者が対話の重要性を確認する」するまでには至らず、中国側は中国が世界の中心との「中華思想」から抜け出ず、南シナ海を始め世界各地で好き放題・盗み放題行為を繰り返し、今や世界の主要国から「総スカン状態」になりつつあるのですが、本日は、たまには・・・と言うことで昔を振り返ります

2009年10月中央軍事委員会副主席の徐才厚の訪米CSIS講演より
Gen. Xu Caihou1.jpg●中国は平和に価値を置く国家である。胡錦濤主席が60周年記念行事で述べたように、「中国は揺るぎなく平和外交政策を維持する」。中国の国防政策は防衛的なものである。戦略的に、相手が攻撃を始めてからのみ対応する。
●しかし、中国は未だ統一をなしえていない。台湾、東トルキスタン、チベットで依然分離独立運動が進行している。

●中国は他国を挑発したり脅かしたりはしない。勿論米国に対しても。中国は、覇権、軍備拡張、軍備競争を決して追求しない。
●約600年前、鄭和が率いる当時世界最大の艦隊がインド洋から中東・アフリカ方面にまで遠征したが、領土拡大の野心は全くなかった。これが歴史が示す中国の平和思考の証

2009年10月ゲーツ長官と徐才厚会談
Gen. Xu Caihou2.jpg●「もう、再開、中止の繰り返しは止めにしましょう」とゲーツ長官が先方に語りかけ、1時間以上会談し、以下を提案
●高官相互訪問の促進:ゲーツ長官は来年早々に訪中 マレン統合参謀本部議長は中国カウンターパートが訪米した後に訪中

●人道・災害対処での協力推進:海上での共同捜索救難訓練に合意
●医療協力:特にパンデミック対処部門、専門家の交流促進
●各軍種レベルでの交流促進、陸軍同士、中下級士官の交流強化(中国側からの提案の模様)

2010年11月&12月フロノイ政策担当次官
Flournoy4.jpg●米国は経済や外交関係と同様に、軍事部門でも関係を維持したいと考えている。しかしその代わりに、両国の軍事交流は彼らがスイッチを握っているようにオン・オフを繰り返している。
●台湾へ防衛的な武器を売却したり、大統領がダライ・ラマをホワイトハウスに招くとスイッチがオフになる。

●既に米中軍事関係者はハワイで、海上の安全保障と安全航行に関する議論のテーブルに付いた。喜ばしいことだ。来年1月にゲーツ長官が訪中する
●南シナ海問題に関し、“We don’t take any sides in those disputes,”(米国はどちらにも付かない)

馬暁天.jpg●馬曉天・人民解放軍副参謀総長(General Ma Xiaotian)との協議は前向きな議論であった。全ての問題で双方が合意したわけではないが、意見を異にする分野で、我々は率直で飾らない生産的な意見交換を行った。今時の議論は、米中間や米中軍間のより生産的な関係へ向けての基礎を形作る物である。

2011年1月ゲーツ長官訪中での会見
(訪中で胡錦濤主席、Yang Jiechi外交部長、徐才厚・中央軍事委員会副主席と会談)
gatesHuJintao.jpg●J-20(中国製ステルス戦闘爆撃機)の初飛行を私の訪問に併せて行ったのか、と胡錦濤主席との会談で直接質問したが、主席は関係ない偶然だと答えた。
●胡錦濤主席を含め、同席の中国側文民関係者は誰一人初飛行の件について知らないようだった

●現代社会において、純粋に軍事と政治を切り分けることは難しい。このような時代に中国内部で軍と政府の間の意思疎通が不足しているのでは、との懸念を以前から持っていた。
gatesFM20YangJiechi.jpg●これが今回の訪問で、軍人と政府の両方と会談した一つの理由である。軍人と文民が共にテーブルを囲む戦略対話の必要性が高い。
●戦略対話の焦点は、核兵器、ミサイル防衛、宇宙、サイバーの4分野であるべき。

●胡錦濤主席は、米側の対話への提案を真摯に受け止めると述べた。中国側との訪中間の会談は、全て大変丁寧で親しみやすいものであった。
●しかし、関係構築には時間が掛かる。この分野はドラマチックな展開や大きな見出し期待するような分野ではない。むしろ徐々に進化成長する種類のモノである。

2011年1月ゲーツ長官の訪日講演@慶応大学
gatesKeio.jpg●(中国との軍事交流再開について)特別な合意を生み出さなくても対話は相互理解を促進し、誤解や誤認識の教訓を学ぶ機会を与える。冷戦時のソ連とは環境が異なるが、対話の重要は変わらない
●中国の文民と軍人の間には結節の兆候がある。数年前のインペカブルへの対応や3年前の衛星破壊実験を中国文民指導者は事前に知らなかったようだし、J-20の初飛行の件も

2011年6月ゲーツ長官シャングリラ講演
gatesShan1.jpg●2008年のこの集まりで、大統領選挙後に国防長官(ゲーツ氏)は交代すると考えていたから、正直に政権が変わってもアジア政策や関与は変化無いと述べた。実際私が留任した様に米国政策に変化はなく、むしろ関係は強化発展してきた。同様のことが後任のパネッタ新国防長官の元で起こることを確信している。
●米国の経済や財政状況、2つの戦い(アフガンとイラク)や米国民の忍耐が切れてきたことを見て、米国のアジアへの関与の信頼性や継続性に疑問を持つのは自然なことである。しかし太平洋国家として、貿易等でアジアと関係が深い米国にとってアジアへの関与に変化はない。これは米国政府や議会の共通の認識である。

gatesShanla.jpg●我々は今後も米軍のプレゼンスを維持強化するために努力を続けるが、今後は展開兵力数(boots on the ground)のみをコミットメントの尺度とすべきではない。今後は艦隊訪問、海軍活動、多様な訓練の実施により、同盟国等との関係を強化し、同盟国等の能力を強化する
●(中国側代表の梁光烈(General Liang Guanglie)国防部長(国防大臣)と同会議内でバイ会談し、繰り返し対話の重要性を語り、戦略対話(核兵器、ミサイル防衛、宇宙、サイバーの4分野)推進を提案するも、曖昧な中国側の姿勢変わらず)
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gatesChinaDM4.jpgその後、米国が2020年頃まで中東での対テロ作戦に足を取られている間に、米国の足元を見た中国は、台湾への武器供与問題や南シナ海問題への米国の批判をネタに、米中関係の「オンとオフ」を繰り返しながら時間を稼ぎ、南シナ海埋め立てや要塞化を完成させ、強大な軍事力を構築し、世界各地に「アメとムチ」で拠点やシンパを確立することになります

まんぐーすは、当時のゲーツ長官の取り組みを「無駄だ」と言いたいのではなく、対ソ連の戦略対話がそうであったように、議論が実を結ぶ可能性が低いことを十分に想定しつつ、対話の中に垣間見える相手側の内部事情や変化を「偵察」する高等手段としての「戦略対話」のようなものが存在し得ると申し上げたかっただけです。

gatesChinaDM3.jpgもちろんそのためには、たたき上げ分析官からCIA長官にまで上り詰めたゲーツ国防長官のような、冷徹な視点と頭脳を持ち合わせたリーダーの存在が不可欠であり、それなりに成熟した国民や議会が必要ですが・・・・

皆さんは2009年のオバマ政権誕生から2011年頃まで、どのような日々をお過ごしだったでしょうか?

安全保障を考える「体幹」を鍛えるために
ロバート・ゲーツ(Robert M. Gates)語録100選
https://holylandtokyo.com/2022/03/26/2046/

2010-11年頃の米中軍事交流
「2011年のアジア安全保障会議」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2011-06-01
「中国軍トップ訪米と美人士官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-18
「1月ゲーツ長官の中国訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-09-1
「フロノイ次官の会見」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-12
「米中軍事交流の今後」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-23
「米中軍事交流再開へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-10
「米中激論:シャングリラ演説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05
「ゲーツ長官と軍事委員会副主席会談」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2009-10-28
「徐才厚の訪米CSIS講演」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2009-11-09

アジア安全保障会議(Shangri-La Dialogue)関連記事
「2021年は中止」→https://holylandtokyo.com/2021/06/04/1783/
「2019年」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-31-1
「2018年」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-2
「2017年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-01-3
「2016年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
「2015年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-28
「2014年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
「2013年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「2010年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05

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米会計検査院:米国防省はF-35の部品管理がでたらめ [亡国のF-35]

米国防省一括管理の世界50か所以上に分散保管の部品
各部品の状態や価値を管理把握できていない状態
F-35使用国は米国防省管理の部品を発注するのに

GAO F-35.jpg5月23日に米会計検査院GAOが、価格高騰高止まりが問題となっているF-35の維持整備問題に焦点を当てた特別監察レポートを発表し、世界50か所以上の関連企業や各国軍基地等に分散保管されている数十万から数百万個のF-35部品の保管場所、品質状態、現在価値等の把握不十分で、特に部品状態や現在価値については「現状未把握」で、管理責任を持つ米国防省が説明責任(accountability)を果たせない状態にあり、F-35維持整備に関わる現在の諸問題の根源となっていると厳しく指摘しました

F-35 Greece4.jpg米国防省F-35計画室はこの指摘に対し、「GAOの改善勧告に同意する」、「約15億円をかけ、正確な部品在庫に関する記録を確立するための第一歩を開始している」、「F-35部品の大部分について、米国防省が世界中のサプライチェーンの何処に所在しているかを把握している事を、米国民とF-35使用同盟国には理解いただきたい」、「今後継続して部品管理の説明責任能力と即応体制向上に努めていく」と、ずさんな実態を認める声明をメディアに出しています

F-35では、F-35機体を購入した同盟国等は部品を各国で購入保管するのではなく、米国防省が部品の調達・生産・保管・管理をグローバルサプライチェーンを束ねて一元管理し、迅速に効率的に全世界の使用国をサポートするとの「大宣伝を打って」世界中に売り込んでいますが、

GAO F-35 2.jpgそんな理想とは程遠い「デタラメ状態」で、ロッキード社の持つ部品在庫情報に依存する「業者の言いなり」状態で、維持費高騰高止まり状態を垂れ流している実態を検査員に指摘され、国防省も「改善の第一歩」「大部分の位置は把握」との驚きの言い訳言葉で白状したということです

ここ言う部品とは、エンジン、タイヤ、着陸用脚部などの大型部品から、ボルトやナットなどの細かな部品全てを含み、全世界50か所以上の保管場所には、ロッキー下請け企業の倉庫、米国内や海外購入国軍基地の保管庫など、F-35 supply chainを構成する米国内外の様々な施設が含まれています。

F-35 Hill AFB6.jpg米会計検査院GAOの検査で、米国防省は驚くなかれ5年連続で「不適合」の評価を受けており、今回のF-35部品管理など維持整備分野の問題についてGAOは、「米国防省の連続する検査不適格状態の象徴のような実態であり、責任遂行能力欠如のシンボル的事象である」と酷評し、更に検査官が聞き取りを実施した米国防省職員の言葉をGAOは目立つように報告書で紹介し、海外のF-35購入国からの外圧を期待しているようだと米メディアは報じています。

GAO F-35 3.jpgその国防省員の言葉とは、「F-35維持管理の弱点や課題は、(その量的規模や金額の大きさから)他の装備品の維持管理問題への米国防省の対応を一層困難にするだろう。なぜなら、F-35関連の部品数が途方もない規模で、現在は把握もできていないトータルな部品の現在価値が数千億円とも想定され、その把握掌握が管理責任能力が不足している米国防省に突き付けられているからだ」・・・だとのこと。

注・・・上に掲載した報告書の抜粋図は、とんでもない原始的で無駄が多いF-35部品管理手法を米国防省は世界各地で行っている(行わせている)・・・と説明するためのイラスト部分です
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4月にF-35導入を決定したルーマニアを含め、18か国(米国含む)が導入を決定したF-35ですが、最大顧客である1763機導入予定の米空軍は着実に調達数削減方向に向かっており、米海軍海兵隊(260と420機)、英国(138機)、イタリア(90機)も削減必至と予想いたしております

F-35C Carl.jpgこれら削減方向の国の機数の穴埋めは、欧州やアジアの国々では難しく、問題になっているF-35維持費は今後も「高止まり」どころか上昇必至と見るのが自然です。ウクライナとF-16関連に世間の目が向いている中で、「亡国のF-35」はその負の本領を発揮し始めています

米会計検査院GAOの当該報告書35ページ
https://www.gao.gov/assets/gao-23-106098.pdf

Defense-News記事は過去5年間だけで100万個以上の部品の所在が不明と報道
https://www.defensenews.com/air/2023/05/30/auditors-over-1-million-f-35-spare-parts-lost-by-dod-and-lockheed/

F-35調達機数削減の動き
「F-35削減派が空軍2トップか」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/
「米海軍が調達ペース抑制」→https://holylandtokyo.com/2022/07/07/3420/
「米海兵隊も削減示唆」→https://holylandtokyo.com/2022/01/17/2586/
「米空軍2025年に調達上限設定を」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「英国は調達機数半減か」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/
「民間監視団体がF-35改善なしと」→https://holylandtokyo.com/2022/03/25/2933/
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holylandtokyo.com/2021/06/25/1949/
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holylandtokyo.com/2021/03/10/157/

最近のF-35購入又は追加購入決定
「小国ルーマニアも」→https://holylandtokyo.com/2023/04/18/4519/
「シンガポール追加」→https://holylandtokyo.com/2023/03/10/4343/
「カナダがやっと決定」→https://holylandtokyo.com/2023/01/12/4134/
「チェコが東欧で2番目」→https://holylandtokyo.com/2022/07/25/3492/
「フィンランドが15番目」→https://holylandtokyo.com/2021/12/14/2520/

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寄稿:被撃墜事例相次ぐ極超音速兵器を過信するな [安全保障全般]

過去2週間で露軍Kinzhalが7回撃墜されたことを受け
飛翔最終段階で速度大減速が避けられない同兵器の限界
技術面で更なる改良は高価&困難で投資優先を再考すべき

Kinzhal6.jpg5月26日付Defense-NewsがMITのDavid Wright客員研究員の寄稿を紹介し、最近2週間でウクライナ軍運用のパトリオットミサイルに7回も迎撃されているロシア軍自慢の極超音速ミサイル兵器「Kinzhal」を事例として、極超音速兵器はその飛翔ルート全ての段階で「極超音速」を維持しているわけではなく、

特に目標に到達する最終段階では被撃墜を避けるための軌道変更や空気抵抗により速度が大幅に減速し、防空兵器に撃墜される可能性が相当程度あり、速度維持のための改良は技術的ハードルが高く更なる投資が必要で、これに伴う兵器の大型化は運搬等を困難にすると警告し、今後の防空兵器の能力向上も加味すれば、予算配分の最優先事項として同兵器開発に取り組んでいる米国防省は方針を再考すべきではないかと提言しています

Kinzhal3.jpg極超音速兵器は、既にロシア軍の「Kinzhal」や「Zircon」ミサイル、また中国軍が「DF-ZF」や「Starry Sky 2」として部隊配備を示唆し、これに脅威を感じた米国防省が最優先開発兵器として取り組み中で、早い順番で米陸軍の「Long Range Hypersonic Weapon (LRHW)」、海軍の「Conventional Prompt Strike (CPS)」、そして米空軍の「Hypersonic Attack Cruise Missile (HACM)」での導入に挑んでいるところです

極超音速兵器は、紛争初期段階において、敵の攻撃ミサイルや防空網を音速の5倍以上の飛翔速度で突破して無効化することを狙って優先開発されてきましたが、音速の5倍以上から10倍程度との初期飛翔速度では現在の防空システム突破が可能ながら、空気抵抗や進路変更により速度が低下し、パトリオットが迎撃担当する目標近傍の低高度域では大幅減速して「迎撃不可能ではない」ことが、7回の「Kinzhal」迎撃事例で証明されてしまいました

Kinzhal4.JPGまた、7回のロシア軍「Kinzhal」迎撃事例は、6回がパトリオットPAC-3の最新バージョンMSE型で行われていますが、1回は旧バージョンPAC-3で成功していると言われており、ロシア製「Kinzhal」の完成度の問題を加味しても、「極超音速兵器」無敵神話は脆くも崩れ去ったとの見方も出始めています

目標に命中する直前まで空気抵抗等に打ち勝って「極超音速」を維持するには、「スクラムジェット」等の推進装置をミサイルに組み込むこと等が技術的には考えられますが、極超音速飛行で生ずる大気との摩擦熱に耐える機体や推進装置の開発は容易ではなく、米国防省も長年苦闘を続けながら更なる投資が必要とされており、仮に完成してもミサイルの大型化は避けられず、その運搬や目標への接近が困難との見方があります

Kinzhal5.jpgDavid Wright氏は最近2週間で相次いだ、ウクライナでの極超音速兵器撃墜事例を良く検証分析し、極超音速兵器開発の目的や実現可能な性能レベルを費用対効果も踏まえて議論の俎上に載せ、今後の防空システムの更なる発展も考慮して、米国防省は極超音速兵器開発への投資優先度や投資額を、他の優先課題と比較して再評価すべきではないかと問題提起しています
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極超音速兵器の実態についてはよくわかっていませんが、終末にDefense-Newsが緊急掲載して読者アクセスNo1になっていた記事ですので取り上げました。

米軍の極超音速兵器開発
「米空軍がARRW断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「Zumwaltへの極超音速兵器契約」→https://holylandtokyo.com/2023/02/22/4313/
「バカ高い極超音速兵器:米議会が試算」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/
「陸軍はあと2回試験」→https://holylandtokyo.com/2023/01/17/4107/
「3回連続ARRW試験に成功」→https://holylandtokyo.com/2022/12/16/4061/
「高価な兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「空軍:重要性が中国と米国では違う」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「潜水艦へは2028年」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-19
「3度目の正直でHAWC成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-28
「米艦艇搭載は2025年頃か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-24

迎撃兵器システム開発関連
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

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