徐才厚将軍CSIS講演を再確認 [中国要人・軍事]
オバマ大統領の訪日・訪中を控え、中国軍の主張を再確認すべく、久々にゲーツ長官のカウンターパートとして訪米した中国共産党中央軍事委員会副主席の徐才厚(Gen. Xu Caihou)によるCSIS(戦略国際研究所:10月26日)での講演を再吟味したいと思います。CSISのサイトよりhttp://csis.org/event/statesmens-forum-general-xu-caihou
冒頭の紹介で、CSISのハレム所長が「これまで何度も機会をうかがってきたが、やっと実現することが出来た」と感慨深げに紹介を開始し、「中国は偉大な文明国でライジングパワーだ。一方米国は偉大なパワーだがライジング文明国だ」とのジョークで中国を持ち上げています。会場は月曜日の朝にもかかわらず、超満員だったようです。
ワシントンのシンクタンクでは、90分のセッションでは半分が講演で、残りの半分が質疑応答の時間になりますが、徐才厚将軍は40分講演し、次に約20分間のビデオ(地震対処に活躍する中国軍の記録)を見せた後、僅か4問限定で質問を受けています。この辺りはさすがに慎重な対応で、ハムレ所長も淡々と進めているほか、終了後もすぐにエレベーターに乗るから道をあけてくれ・・・と気を遣っています。でもシンクタンクの講演で敬礼する人も珍しいですね・・
講演の概要は10月28日に紹介しましたが、胡錦濤主席は11月6日に北京で各国空軍トップに同様に語ったほか、今後12月の習近平の来日の際も繰り返されると思われますので、再確認したいと思います。講演のタイトルは「中国軍:多様な軍事任務のための軍(The Chinese Military: A Force for Multiple Military Tasks)」でした。
国防政策
●我々は、多様な任務を遂行し、情報化時代の戦いを勝ち抜く「情報化」した軍を作ることを戦略目標と定めたが、(その前段階の)「機械化」も未だなしえていない。
●国際環境と国家安全保障や開発戦略の要求を受け、科学技術、有能な人材のためのプロジェクト、軍事訓練の改革、完全な兵器システムや装備品の研究開発に重点をおいて中国軍の強化をはかる。
●国際平和協力活動の重要性が増している。対テロ、災害対処、平和維持、権利と権益の保護、国際援助にも取り組んでいる。
●北京五輪では武装警察4.6万人が勤務し、上海万博に向け準備している。四川大地震では生命の危険を冒して兵士は出動した。一人あたりGDPが100位以下の中国では、軍が地域経済支援のため、天然ガス、送電、鉄道、植林、井戸掘りにも活躍している。学校建設や教育支援も。PKOには述べ1.3万人、現在も2千人が参加している。津波、台風、海賊対処にも出動している。大雪対処に活躍した兵士の記念碑は人民が建てた。
対外的な姿勢
●中国は平和に価値を置く国家である。胡錦濤主席が60周年記念行事で述べたように、「中国は揺るぎなく平和外交政策を維持する」。今の中国の国防政策は防衛的なものである。戦略的に、相手が攻撃を始めてからのみ対応する。
●しかし、中国は未だ統一をなしえていない。台湾、東トルキスタン、チベットで依然分離独立運動が進行している。
●中国は他国を挑発したり脅かしたりはしない。勿論米国に対しても。中国は、覇権、軍備拡張、軍備競争を決して追求しない。
●明確にしておきたいのであるが、中国の限定的な兵器や装備は国家安全保障の最低限の要求を満たすものである。我々は貧弱なレベルからスタートしているのである。60周年パレードの装備品は、最低限度の要求を満たすものに過ぎない。
●約600年前、鄭和が率いる当時世界最大の艦隊がインド洋から中東・アフリカ方面にまで遠征したが、領土拡大の野心は全くなかった。これが歴史が示す中国の平和思考の証。
中米関係
●オバマ大統領就任以来、中米関係は円滑に変革している。米国との軍事交流には肯定的である。ジョージ・ワシントンは言った「真の友情という植物はゆっくり育つ。そして真の友情は大きな不運・苦労のショックを経験し、それに耐えなければならない」。 (協力関係の)成長には我々相互の連携した献身が求められる。
以下質疑応答
●(両国海軍は災害対処のためより緊密に訓練すべきでは?)既に始めている。ソマリア沖でも協力している。国際観艦式には世界中の国々の艦艇を招待しているところである。
●(中国による対艦ミサイル開発は友好的とは言い難いが?)同様の疑念や誤解にしばしば耳にするが、全ては国家安全保障の最低限の装備である。中国は未だ統一をなしえていないのである。中国は世界最大の発展途上国である。中国の軍事費はGDPの1.4%だが、米国のそれは4.8%である。最近の米海軍艦艇による中国の排他的経済水域(EEZ)での活動は主権の侵害だ。再発があっては成らない。両国は話し合いを続けなくてはいけない。
●(武器輸出、地雷・小火器・携行ミサイルの管理問題で中国国防省はなぜ協議に応じない?)その件についてはよくわからない。中国軍は武器輸出に関与していない。従って米国務省と中国軍が接触する必要はない。中国外務省が担当しているからである。
●(米国がアルカイダにねらわれているが、中国もそうなると思うか?)中国もテロにねらわれており、五輪前後にも発生している。テロ対策に米国と協力していく準備がある。またアフガンやパキスタンの支援にも米国と共に協力していく準備がある。
何が最低限ミニマムな国防力なのか、国家間で容易に結論のでない話ですな・・・
(付録)QDR:対中国の新作戦構想に関する部分(Holyland推定)
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
冒頭の紹介で、CSISのハレム所長が「これまで何度も機会をうかがってきたが、やっと実現することが出来た」と感慨深げに紹介を開始し、「中国は偉大な文明国でライジングパワーだ。一方米国は偉大なパワーだがライジング文明国だ」とのジョークで中国を持ち上げています。会場は月曜日の朝にもかかわらず、超満員だったようです。
ワシントンのシンクタンクでは、90分のセッションでは半分が講演で、残りの半分が質疑応答の時間になりますが、徐才厚将軍は40分講演し、次に約20分間のビデオ(地震対処に活躍する中国軍の記録)を見せた後、僅か4問限定で質問を受けています。この辺りはさすがに慎重な対応で、ハムレ所長も淡々と進めているほか、終了後もすぐにエレベーターに乗るから道をあけてくれ・・・と気を遣っています。でもシンクタンクの講演で敬礼する人も珍しいですね・・
講演の概要は10月28日に紹介しましたが、胡錦濤主席は11月6日に北京で各国空軍トップに同様に語ったほか、今後12月の習近平の来日の際も繰り返されると思われますので、再確認したいと思います。講演のタイトルは「中国軍:多様な軍事任務のための軍(The Chinese Military: A Force for Multiple Military Tasks)」でした。
国防政策
●我々は、多様な任務を遂行し、情報化時代の戦いを勝ち抜く「情報化」した軍を作ることを戦略目標と定めたが、(その前段階の)「機械化」も未だなしえていない。
●国際環境と国家安全保障や開発戦略の要求を受け、科学技術、有能な人材のためのプロジェクト、軍事訓練の改革、完全な兵器システムや装備品の研究開発に重点をおいて中国軍の強化をはかる。
●国際平和協力活動の重要性が増している。対テロ、災害対処、平和維持、権利と権益の保護、国際援助にも取り組んでいる。
●北京五輪では武装警察4.6万人が勤務し、上海万博に向け準備している。四川大地震では生命の危険を冒して兵士は出動した。一人あたりGDPが100位以下の中国では、軍が地域経済支援のため、天然ガス、送電、鉄道、植林、井戸掘りにも活躍している。学校建設や教育支援も。PKOには述べ1.3万人、現在も2千人が参加している。津波、台風、海賊対処にも出動している。大雪対処に活躍した兵士の記念碑は人民が建てた。
対外的な姿勢
●中国は平和に価値を置く国家である。胡錦濤主席が60周年記念行事で述べたように、「中国は揺るぎなく平和外交政策を維持する」。今の中国の国防政策は防衛的なものである。戦略的に、相手が攻撃を始めてからのみ対応する。
●しかし、中国は未だ統一をなしえていない。台湾、東トルキスタン、チベットで依然分離独立運動が進行している。
●中国は他国を挑発したり脅かしたりはしない。勿論米国に対しても。中国は、覇権、軍備拡張、軍備競争を決して追求しない。
●明確にしておきたいのであるが、中国の限定的な兵器や装備は国家安全保障の最低限の要求を満たすものである。我々は貧弱なレベルからスタートしているのである。60周年パレードの装備品は、最低限度の要求を満たすものに過ぎない。
●約600年前、鄭和が率いる当時世界最大の艦隊がインド洋から中東・アフリカ方面にまで遠征したが、領土拡大の野心は全くなかった。これが歴史が示す中国の平和思考の証。
中米関係
●オバマ大統領就任以来、中米関係は円滑に変革している。米国との軍事交流には肯定的である。ジョージ・ワシントンは言った「真の友情という植物はゆっくり育つ。そして真の友情は大きな不運・苦労のショックを経験し、それに耐えなければならない」。 (協力関係の)成長には我々相互の連携した献身が求められる。
以下質疑応答
●(両国海軍は災害対処のためより緊密に訓練すべきでは?)既に始めている。ソマリア沖でも協力している。国際観艦式には世界中の国々の艦艇を招待しているところである。
●(中国による対艦ミサイル開発は友好的とは言い難いが?)同様の疑念や誤解にしばしば耳にするが、全ては国家安全保障の最低限の装備である。中国は未だ統一をなしえていないのである。中国は世界最大の発展途上国である。中国の軍事費はGDPの1.4%だが、米国のそれは4.8%である。最近の米海軍艦艇による中国の排他的経済水域(EEZ)での活動は主権の侵害だ。再発があっては成らない。両国は話し合いを続けなくてはいけない。
●(武器輸出、地雷・小火器・携行ミサイルの管理問題で中国国防省はなぜ協議に応じない?)その件についてはよくわからない。中国軍は武器輸出に関与していない。従って米国務省と中国軍が接触する必要はない。中国外務省が担当しているからである。
●(米国がアルカイダにねらわれているが、中国もそうなると思うか?)中国もテロにねらわれており、五輪前後にも発生している。テロ対策に米国と協力していく準備がある。またアフガンやパキスタンの支援にも米国と共に協力していく準備がある。
何が最低限ミニマムな国防力なのか、国家間で容易に結論のでない話ですな・・・
(付録)QDR:対中国の新作戦構想に関する部分(Holyland推定)
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
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