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同盟国とのMD情報共有の課題はサイバー [Joint・統合参謀本部]

新しい太平洋空軍司令官の初海外視察は、横田基地の弾道ミサイル防空システムだったとか

BMD.jpg8月6日から7日にかけ、新しい太平洋空軍司令官Charles Brown大将が初海外視察で横田基地でBMDシステムを確認し、小野寺防衛大臣や統合幕僚長や空自トップと会談した同じ7日、米アラバマ州でミサイル防衛関連イベントが開催され、米陸軍パトリオットでのBMDを担当する大佐が、BMDの充実の鍵は同盟国システムとの迅速な情報共有だが、サイバー脆弱性が他国システムとの連接の懸念だと吐露しています

同大佐の念頭にあったのは、イエメン国内にはびこる武装勢力Houthiが繰り返すミサイル攻撃を、サウジ軍がパトリオットミサイルで迎撃している一連の作戦があるようですが、今年に入ってから欧州3か国(ポーランド、ルーマニア、スウェーデン。スイスも前向き検討中)が新たにパトリオットPAC-3ミサイルシステムの導入を決定していることからも、相互運用性(インターオペラビリティー)悩みの範囲は急拡大している模様です。

8日付Defense-News記事によれば
PAC-3 Saudi.jpg●ハンツビルで開催されたDefense-News主催の「Missile Defense Networking Reception」でパネル討議に参加した新旧の米陸軍パトリオットミサイルBMDシステム担当幹部は、同盟国等への同システム導入が進み、相互運用性強化の望ましい方向に進みつつある中、依然として課題も多いと語った
●そして相互運用性向上の鍵である迅速な情報シェアリングの重要性を強調しつつ、迅速な情報共有のためのシステム連接に容易でない部分が残されていると表現した

現役のパトリオット担当幹部であるFrancisco Lozano陸軍大佐は、システム連接がなくとも緊密な協力関係で対応していると強調し、イエメンからのミサイルに対処しているサウジ軍との関係を念頭に、「連絡を密にし、24時間体制で長時間連続運用を続けているパトリオットシステムへの影響をモニターし、実脅威の実態と合わせて多くの教訓を学ぶ機会を得ている。教訓は戦術・技術・手順の見直しに反映し、運用コンセプトの見直しにも生かしている」と語った
PAC-3 MSE.jpg一方で、パネル討議に参加した元ミサイル防衛コマンド司令官であるDavid Mann退役中将は、米軍と同じパトリオットシステムを使用している同盟国軍との間でも、情報共有に関しての努力は継続していると表現し、「他国システムとの融合に当たり、躊躇する要因がサイバー脆弱性である。システム連接を判断するまでには、この問題に関連する多くの検討と利害判断が求められる」と表現した

●同退役中将は更に、「この問題検討には大変労力を要するが、他国システムを連接することでサイバー面で脆弱になることは受け入れがたい。我がシステムの情報が危険にならされることには耐えられない」と述べている
●ただ米軍だけで世界の隅々までBMDを展開することは不可能であるので、引き続き同盟国等にBMDシステム導入を働き掛けていくことになる。全てのシステムを1国で導入することが難しければ、例えば、オランダがBMDセンサーだけを導入し、ベルギーが迎撃ミサイルを分担して配備するといった方式も考えられる

BMDシステムの配備拡大と、システム連接の脆弱性克服は両立しなければならない課題である
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Brown2.jpg新太平洋空軍司令官Charles Brown大将が、日本のBMDシステムのサイバー脆弱性をどの程度懸念しているか気になるところですが、着任後の最初の海外訪問先に日本を選択した戦略眼に敬意を表しておきましょう。

そして豊富な中東経験と薄いアジア太平洋経験の同司令官の今後のご活躍に期待いたしましょう.

しかし・・・サウジとの連接も躊躇するようだとすれば・・・いろいろ難しいですねぇ・・・

関連の記事
「PACAF司令官は黒人パイロット」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19
「PAC-3生産増でウハウハ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-14
「米武器輸出:上半期で昨年越え」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21-1

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空軍トップが運用開始2年のF-35を語る [亡国のF-35]

もちろん空軍トップが批判するはずはありませんが・・・

Goldfein space.jpg20日付米空軍協会web記事がGoldfein空軍参謀総長へのインタビュー記事を掲載し、F-35に関する空軍トップの現時点での評価を紹介しています

F-35計画を、2012年までは病んだプロジェクトだったが、それ以降は性能面でコスト低下面でも安定したプロジェクトとなっていると強調しつつ、自身が操縦していたF-16との比較でF-35の優れた性能をアピールしています

また課題として、今後は機体の単価と共に、維持費と運用コスト削減が課題であり、他軍腫や同盟国と共に全力で対処すると決意のほどを述べています

一方で回答の歯切れが悪いのは、能力が不十分で、維持整備でも手間や費用が掛かる初期型機体を今後どうするかに関してで、「個人的には・・・」といった具合です。

20日付米空軍協会web記事によれば同大将は Goldfein1-1.jpg
Game-ChangerとしてのF-35を迎え入れられ、これほど幸せなことはない。
F-35には悪い評価が与えられすぎている。皆が考えているよりもはるかに優れた能力をF-35は持っており、単に爆弾を投下したり敵機にミサイルを発射したりする機体ではない

●F-35は情報をフュージョンする装置だ。ISR情報を集約し、指揮統制機能も発揮できる高性能マシンだ。これらすべてが実施可能で、全ての場面で活躍できる
F-16操縦者は、任務や訓練飛行の後のブリーフィングで、気づいたいなかった脅威が存在したことや他の状況を知ることになるが、F-35操縦者は、それがたとえ操縦者になりたての中尉であっても、任務空域の全体状況を飛行中に把握可能で、地上滑走中でも上空の状況が入手できる
●言い換えれば、操縦者は戦いを望ましい環境でマネジメント可能で、チャンスを逃したり危機を見逃すことがなくなる。つまりF-35は根本的にGame-Changerなのだ

F-35 fix.jpg●F-35の最新ソフト「3F」搭載機の稼働率は80%で、他の空軍機標準より高いし、運用開始2面目の期待と比較すれば格段に高い。海兵隊司令官とも情報交換しているが、海兵隊の同機も同じような状態だと聞いている
海外で既に使用されているF-35について、イタリアとイスラエルの操縦者から直接聞く機会があったが、作戦運用面では「absolutely magnificent」だとの反応だった

●世界中で最も多くのF-35を導入する空軍として、他軍腫や他のF-35使用国と協力し、飛行コストや維持整備コストを低下させていく役割を負っていると考えている
●既にアラスカや日本、欧州へも展開経験を積み、現在は英国のRAF Lakenheathに新たな展開基地を設ける準備を進めている

整備性や維持の面で課題を抱える初期型F-35を改修して能力向上するかについて、個人的には全機そうしたいと考えているが、予算配分が可能かどうか検討する必要がある。予算の問題なのだ
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F-35 Front.jpgイタリアやイスラエル空軍の操縦者のF-35評価を語る場面の発言は、「what they’re telling me is, operationally, the airplane is absolutely magnificent」で、注目は「作戦運用面では」と限定している点です。

つまり、維持整備面では苦労しているということです。稼働率80%のソフト「3F」搭載機が何機程度どのような環境で運用されているか不明ですが、過保護で理想的な環境での数値でないことを祈ります。

もう一つ、コスト面での他国評価を聞いてみたかったです

最近のF-35関連記事
「主要装備の再選定開始」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-15
「トルコが抜けたら大変」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-24
「再びGAOが警告」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-10
「世界各国で暗雲」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26
「米国防省がF-35受け取り拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-14

「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1
「2Bソフト機は稼働率4割台」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-1
「世界中のF-35稼働率は5割」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-3
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
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米空軍の整備員不足は今年中に解消!? [米空軍]

数字の上では・・・質は伴わず・・・
将来に向け、異なる整備方法を検討

maintainers.jpg20日、Goldfein空軍参謀総長が米空軍協会機関紙のインタビューに答え2016年半ばから問題となっていた航空機整備員不足について、2018年末までには数的な不足は穴埋め可能だろうと述べました

一時は4000名の整備員が不足するとも言われた厳しい状況に直面していましたが、現時点で数の面では99%穴埋めが完了したと説明しています。しかし、若年兵士を急増した付けは小さくなく、質の面では厳しい状況が続くようで参謀総長も率直に認めています

maintainers2.jpg米空軍パイロットの民間航空会社への流出や退職増によるパイロット不足には歯止めがかからず、米空軍の操縦者不足に明るい兆しは全く見えないようですが育成期間が短く、育成も比較的容易で、引き留め策が効きやすい整備員は、つずつま合わせが容易なのかもしれません

そもそも整備員不足の原因には、パイロットと同様に、民間航空業界の活況があり、転勤や家族と離れる海外派遣がなく、一般に給与水準も高い民間航空会社に整備員が流出するのは市場の法則でしょう

しかし整備員特有の背景もあります。米空軍はA-10 攻撃機を早期退役させ、急増するF-35に経験豊富な整備員を振り替えようとしていましたが、対テロ作戦の継続を受け米議会等の激しい反対で実現できず、整備員不足を招いているのです

21日付米空軍協会web記事によれば
maintainers3.jpg●Goldfein参謀総長は、2016年当時には整備員不足の解消には早くとも2019年まで必要だろうと言われていたが、2018年末には数的には解消可能だろうと述べ、既に前線部隊に配置が始まっており、現場の問題を癒しつつあると語った
●整備員不足への対策は人事管理政策の基本手順で通りに、まず整備員により多くの新人兵士を割り振り、更に一定の勤務経験を積んだものには、継続勤務決断時のボーナスを増額する等して人材流出に努めた成果だと同大将は説明した

●一方で参謀総長は、問題が完全に解決できたわけではないとし、「我々に残された挑戦的な課題は、(穴埋めに増員された)整備員が若いことである」と述べつつ、新人整備員は整備員としての資格に必要な教育訓練を受けているが、多くの経験を積んだ熟練の整備員ではないと認めた
●そして同大将は、現場での整備員不足数が一時の4000名から400名レベルに低下した様に見えても、熟練整備員は不足しており、整備部隊の技量保有者アンバランス状態解消には時間が必要だとも説明した

米空軍アセットは維持整備上2つの課題に直面している。一つは航空アセットの老朽化が進んでいる事(機体の維持に技術を要する)、もう一つはF-35のような最新アセットの導入に際しても熟練の整備員が必要だという点である
●このような航空アセットの維持整備環境を前にし、米空軍は「伝統的な今採用している整備要領に挑戦するつもりで、将来に向かって異なった整備要領を検討しなければならない」と表現し、

maintenanceF15.jpg●「我々は真剣に新たな整備方式を求めている」と語り、民間分野ですでに実証されている最適整備方式や技術を導入(to bring industry best practices and technology)する方法を探求しており、可能なら整備員の削減や整備時間の短縮、更に即応体制の向上につなげたいと参謀総長は語った
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米空軍整備部隊が直面する2つの課題(老朽機種の増加と新装備の多数導入)は、日本も切実に直面する課題ではないでしょうか・・・

ある日突然、米空軍が民間航空会社の整備手法を導入し始め、大幅に整備方式を変更したら・・・。機体毎の整備員所要数を大胆に見直し始めたら・・・。日本の整備員の世界にとっては激震ですねぇ・・・
何せ、外部の人間は一切口出しできず、アンタッチャブルな世界のようですから・・・

一方で、最近米空軍で航空機事故が増加しているように思うのですが、整備員の質と事故との関係(維持整備予算の削減もありますが・・)が気になります

米空軍整備員不足の苦悩
「嘉手納整備員は若手ばかり」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03
「整備員3400名が不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-11-1
「米空軍機の稼働率が異常低下」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-02

「整備員不足対処案も苦悩続く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-03
「F-35整備員確保の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-14
「A-10全廃は延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-22

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ミサイル防衛見直しMDRはまだなのか? [安全保障全般]

Markey.jpg21日、米上院議員がマティス国防長官に書簡を送付し、ますます複雑になる多様なミサイル脅威と関連する新たな技術への投資を判断するためにも、取りまとめが遅れに遅れているミサイル防衛見直し(MDR:Missile Defense Review)作成を急ぐよう要求しました。

元々MDRは、トランプ政権の国家安全保障戦略NSSや国家防衛戦略NDSが発表されたことを受け、2017年末までには取りまとめると国防省が述べていたものであり、8か月発表が遅れているものです

そもそもMDRは従来BMDR(弾道ミサイル防衛見直し)と呼ばれていたものですが、弾道ミサイルだけでなく、最近は高度な巡航ミサイルや超超音速兵器の開発が進んで大きな脅威となってきたため、弾道ミサイル防衛に限定せず、広くミサイル対処を考えようと「ballistic」との限定用語を取り除くことにすると今年3月に国防省が明らかにしていました。

GBI-KV.jpg当初はその概念拡大も一つの理由に発表を先延ばししていたのですが、5月13日に国防省報道官が「数週間後に発表する」、「国防長官が最終確認中」と発言した後、何の音沙汰もなく、今日に至っているものです。

北朝鮮騒ぎを取り上げるまでもなく、中国やロシア、更にイランなどに急速に拡散するミサイル技術とその脅威(イエメンからサウジにミサイルが撃ち込まれる時代です!)を受け、また前述の巡航や超超音速Mの開発拡散も受け、トランプ政権の軍事政策の大きな宿題の一つがMDRと言われて久しく、多くの国防省や米軍幹部が、「その課題についてはMDRの中で検討しているので今はコメントできない」等の問題先送りに利用してきたのがMDRです

最近では、宇宙にMD用のアセットをとの主張も強まっており、ますます予算厳しき中で取りまとめが困難になりつつあるのは関係者周知の事実ですが、あまりにも「音沙汰無し」なので、Edward Markey 上院議員(D-Mass.)もしびれを切らしたというところでしょう

24日付米空軍協会web記事によれば
Aegis FMS.jpg●Markey上院議員はレターの中で、敵対的な国がミサイル能力を強化して進化を見せる中、米国もミサイル防衛への投資が急増しており、更に新たに注目すべき技術革新があり、また宇宙ドメインで優位性が重要になりつつあると情勢を分析している
そしてこのような時代にこそ国防省はミサイル防衛を取り巻く情勢と基本的考え方を整理したMDR(ミサイル防衛見直し)を早急に取りまとめるべきだと上院議員はレターで訴えている

space-based 2.jpg●更に同上院議員は、最近国防省関係者から米国ミサイル防衛政策を大幅に変更することもやぶさかではなく、宇宙配備のアセットでのミサイル防衛用迎撃システムに前向きともとれる発言が出ていることからも、考え方を早期にまとめてほしいと主張している
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米国内での最近のミサイル防衛関連の議論の流れは以下の記事で退役陸軍中将が表現しているように思います
「米ミサイル防衛の目指す道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12  

space-based.jpg
ミサイル技術の進歩拡散の中、圧倒的に攻撃側優位な方向に更に傾いており、どこまでミサイル迎撃に投資すべきかは、極めて難しい課題です。

米国防省内でも、MDRにどのような内容を盛り込むかについて、激論が交わされているのかもしれません。強力な推進者が戦略担当次官補に就任したということですが・・・

関連の記事
「米ミサイル防衛の目指す道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「MD協力推進者が戦略担当次官補に」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-1
「BMDRはMDRに変更し春発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24-1

「超超音速ミサイルに防御無し」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-21-1
「2倍のICBM防衛ミサイルが必要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-18-1 
「宇宙配備のミサイル防衛センサーが必要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31 
「露の巡航ミサイルへの防御無し」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

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女性戦闘機パイロットに幸あれと願いつつ・・・ [ふと考えること]

「男女関係なく、後輩たちの手本となるパイロットになりたい」

松島美紗.jpg航空自衛隊は24日、松島美紗2等空尉(26)を女性で初めての戦闘機(F-15)パイロットに正式任命しました
松島2尉は横浜市の出身で、2014年に防衛大学校を卒業後、航空自衛隊の操縦者養成コースに進んでいました。2016年にパイロットのライセンスを取得するとF-15戦闘機操縦課程へ進み、同課程を修了したようです。

今後は宮崎県の新田原基地の第5航空団に配属され、より部隊作戦運用に直結する半年から1年間の実戦的訓練と資格審査を経て、中国機に対応するスクランブル発進なども行うF-15パイロットになるとのこと。活躍を大いに期待いたします

松島美紗2.jpg冒頭の言葉は、23日に 報道陣の取材に答えた松島2尉が、小学生のころに映画「トップガン」を見て以来、ずっと戦闘機のパイロットにあこがれていたと明かしつつ、将来の目標について聞かれた際に口にした言葉です。

初の女性の戦闘機パイロットとして、様々な形で注目され(既に恐らく空自内でも皆が大注目)、プレッシャーもある中で、人々の期待に応えられるよう努力し、自分を見てより多くの人がパイロットを目指すようになってほしいとの真摯なその思いに、大いに応援激励したいと素直に思います。

しかし併せて1990年代半ばから女性戦闘機パイロットを採用している米空軍の現実もこれを機に再確認し、本音と建前の乖離が著しい現代社会の実態を角度を変えて見る中で、松島美紗2等空尉の道のりが単純でないことにも思いをはせつつ彼女やその後に続く後輩の将来がより実り多いものになることを祈念したいと思います

2018年5月女性議員が米軍に訴えて
Murkowski2.jpg共和党のLisa Murkowski議員はマティス国防長官とダンフォード議長に対し、「女性兵士用の装具品提供が遅々として進んでいない」、「現時点では、米陸軍のみが女性兵士専用の大きさや形状の防弾チョキを導入しているが、それも前線派遣兵士にのみ提供され、陸軍入隊時の訓練や母基地での訓練時には使用できる数量が準備されていない」と現状を厳しく批判した

ダンフォード議長は質問に対し、「2016年に職種開放を開始した時点から、歴史的に女性を受け入れてこなかった職域での装具品が女性の体形等に適合していないことは問題として把握し、改善を図る必要性を感じていた」と答え、「全ての軍種で装具品の改善に着手しており、女性の様々な体型を考慮して取り組んでいるが、少し時間が必要だ。ただ全軍が本件に真摯に取り組んでいると申し上げる」と議会で述べた

●更に、米空軍でも女性パイロットの飛行服の改善に取り組んでいると付け加えたつつ、同時に「改善には時間が必要だとも把握している」と答えた

「今になって・・女性兵士にフィットした飛行服等に改良へ」
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07

日本の女性戦闘機パイロット導入について
米空軍女性パイロットの反応
F-15J.jpg●(航空自衛隊幹部が米空軍女性戦闘機操縦者に意見聴取した際の発言) 「日本まで人寄せパンダのように女性を戦闘機に乗せて話題集めに走るの・・。馬鹿じゃないの? 女性に男性用のヘルメットやジャケットを無理やり着せ、フィットしないから女性用を作ってくれといっても、私の時代は実現しなかった。所詮広告塔だった」と激怒しながらまくしたてた・・・とか。

関連の記事
「女性兵士の装具改善に時間必要」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-13
「今頃・・女性兵士にフィットした飛行服等に改良へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07
「女性初のF-35操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-08
「女性だけの編隊で攻撃」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-04

軍での女性を考える記事
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19

「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11

「性犯罪対処室が捜査対象」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-04
「性犯罪は依然高水準」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-06-1

女性と徴兵制
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

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英国防相:いまこそ大戦略が必要な時 [安全保障全般]

中国を見習え
戦略議論がなされない現状に危機感

williamson.jpg7日、米国を訪問中のGavin Williamson英国防相がワシントンDCのAtlantic Councilで講演し、聴衆からの大戦略の必要性や重要性に関する質問に答え、回答が難しい質問だが素晴らしい質問だとし、NATOや西側諸国の首脳や関係者間で行われている議論が、あまりに日々や目の前の事象にとらわれすぎており、もっと時間をかけて大戦略(grand strategy)を議論すべき時だと訴えました

特に同国防相は大戦略の面で中国が優れていると評価し、「彼らは大戦略を持ち、将来に対する計画を持っている。我々もそういう形にもっていかなくてはならない」と表現し、トランプ政権と欧州諸国やNATO諸国との最近の乖離傾向にまでは言及していませんが、その課題を示唆しています

williamson3.jpg同時に英国防相は、中国が国際社会の中で、その規範やルールを乱すのでなく、その中で繁栄する事が中国のためであることを理解させるように導くことが重要で、中国の大戦略をそのように導くことが大切だと語りました

まだ42歳の若々しいWilliamson英国防相で、一般的な議論をしたまでかもしれませんが、大戦略の必要性は強調しても強調したりないことだと思いますので、これを機会にご紹介させていただきます

9日付Defense-News記事によれば
●英国防相はワシントンDCのシンクタンクで、西側諸国はより大きな視点で考えることを始めるべきで、NATOや西側首脳の会談で、昼間の会議の時間に日々の細かなことばかり議論し、夕食会ぐらいになってやっと大きな話題になってる現状を逆転させて良いのではないかと語った
williamson2.jpg●そして、現状の西側社会では、ロシアや中国の脅威に対応する長期的な取り組みや計画が不十分であると間接的に警告した

●同国防相は会場からの質問に答え、「ご質問のあった大戦略に関し、NATO加盟国間、西側主要国間、我が同盟国等の間では十分な話ができていない」と述べ、「我々はそのような話し合いを行わねばならない。なぜなら、もしそのような議論を行わず、将来計画を持たなければ、我々は将来事態に十分備えることができないからだ」と語った
●更に「これが西側の弱点であり、何とかしなければならない。そして早急にかつ迅速に対応しなければならない課題である」とも表現した

大国との競争や紛争は、トランプ政権が国家防衛戦略で、ロシアと中国を基準として米国の成否を測る基準と表現してから、避けて通れない話題となっている。
williamson4.jpg●一方で識者の間では、大戦略実行の観点からすると、米中ロの3か国の中で中国が最も優れていると評価されており数十年にわたる方向性を示し、全政府機関を挙げてその遂行を追及する姿勢が認められている

●しかし対中国の戦略に関して同国防相は、中国と対峙するだけでなく、中国を取り込み協同する方向性の戦略を推奨している
●「我々は、中国が世界の部隊で重要で価値があり肯定的な役割を果たすための方策を考えなければならない。恐らくこれは中国側も望んでいることで、そのような役割を果たしたいと考えていると思う。なので我々の大戦略の一部は、中国が世界の中で役割を果たすよう仕向けることである」と語った
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49分30秒くらいから関連する質問と回答


中国を国際秩序に取り組むことが容易ではないことは十分認識しつつも、大戦略の元、硬軟の策を組み立てることで、弱点もある中国に方向転換を図らせようとの考え方は重要です。

英国防相は質疑の別の部分で、抑止がまず第一番に重要なことを語っていますが、中国を組み込むことで不測の事態拡大を抑止する必要性も念頭にあるのでしょう

各国が協調すれば、できることはまだたくさんあるはずです!

思いつきで関連の記事
「NATOの将来に保証なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-23-1
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ウクライナの次はセルビア」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-2
「独潜水艦が全艦運行不能に」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-22

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報道:次の統合参謀本部議長が空軍から!? [Joint・統合参謀本部]

Goldfein1-1.jpg19日付Wall Street Journal電子版が、来年退役予定のDunford統合参謀本部議長の後任候補2名の空軍大将(他にMark Milley陸軍参謀総長も)が上がっていると報じ、その二人をGoldfein空軍参謀総長(1959年生)とHyten戦略コマンド司令官(1959年生)だとしています

最後に空軍人で統参議長についていたのが2001年9月から2005年9月までのマイヤーズ空軍大将で、干支が一回りするくらい(間に4名の同議長)空軍幹部にポストが回ってきませんでした
なにしろ、戦闘機にばかり拘る戦闘機パイロット出身がほとんどの米空軍参謀総長などの空軍幹部は、視野が狭くて統合参謀本部議長には不適とまで囁かれ、噂にも上らない期間がここ最近です。

Hyten7.jpgまた、現在のDunford海兵隊大将が議長候補者として噂に上った頃には、F-35計画の評判が最悪だったことに加え、米空軍は軍内で大きな問題となっている性的襲撃(sexcial assult)への対応が不十分との理由でWelsh空軍参謀総長(当時)は候補者レースから早々に脱落・・・などと報道されていたところです

統合参謀本部議長は、現在の議長が19代目で、歴代では陸軍9名、海軍と空軍が4名、海兵隊が2名の配分で努めており、兵員数比率で考えると「美しい調和」を見せていますが、少なくともまんぐーすの知るここ10年間ほどは、空軍幹部の評価には厳しいものがあります

gatesMarine.jpg特に2008年6月5日、当時のゲーツ国防長官が核兵器の不適切な管理を理由に、当時のワインj空軍長官とモズレー空軍参謀総長が同時更迭した事案が象徴的ですが、B-52爆撃機が核兵器搭載を知らないまま米本土を横断飛行していた事案のほかに、強い伏線として、無人機導入に反対しF-22大量調達に固執していた両名が、国防長官から「愛想つかされていた」との見方が一般的です。

マイヤーズ空軍大将以降、ペース海兵隊大将(2年のみ)、マレン海軍大将、デンプシー陸軍大将、Dunford海兵隊大将と続いてきた中、順番で空軍大将にお鉢が回ってきたとの見方もできましょうが、Wall Street Journal誌は別の理由を一番に挙げています

20日付Military.com記事によれば
Dunford1.jpg●WSJ]報道によれば、Milley陸軍参謀総長を含む3名は、Selva副議長の後任候補としても考えられている
ホワイトハウスの報道官も、米国防省の報道官も、WSJ報道にはコメントを避けている

Hyten戦略コマンド司令官(前空軍宇宙コマンド司令官)は、中国やロシアが米国や西側同盟国に敵対的な行動を強めていることから、核兵器の近代化や宇宙作戦への投資を強く訴えている指揮官である
●トランプ大統領が宇宙軍創設を指示し、米国防省が準備を開始したことについてHyten大将は特段コメントを出していないが、(空軍宇宙コマンド司令官時代から)宇宙が厳しい環境になってきていることを訴え、「宇宙を戦いのドメインとして考えるべき」「スピードや、敵対行為への対処を考えておくべき」と繰り返し述べている

Dunford AFA.jpgGoldfein参謀総長は就任以来統合での指揮統制における空軍の重要性を訴えてその変革に取り組んでいるほか、他軍腫や同盟国との協力強化を重視し、海外作戦を効率的かつ効果的に実施する改善に取り組んでいる
●最近では、同盟国の能力強化を念頭に置いた軽攻撃機選定にも取り組み、米国の負担移管ではないかとの問いには「リードする役割の放棄ではなく、我が勢力の成長のための取り組みだ」と説明している
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Milley.jpg陸軍参謀総長も候補らしいことを忘れずにいましょう・・・

それと、来年の人事を今決められるはずもなく、あくまでも噂レベルと考えたほうが良いかもしれません・・・

過去の統合参謀本部議長人事の記事
「ダンフォード噂の記事」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-02
「デンプシー大将の課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-13

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米国務省高官が怪しげな露衛星を指摘 [サイバーと宇宙]

なぜ外交官が最初に公にしたのか???

Poblete.jpg14日、スイスのジュネーブの国連本部で行われた軍縮会議で米国務省のYleem Poblete軍縮担当次官補が、2017年10月に確認されているロシア衛星の奇妙な行動を取り上げ、「明らかに問題となる展開だ」と発言しました

ペンス副大統領がトランプ大統領の6月18日の指示に従い、8月9日に宇宙軍を2020年に創設すると具体的な計画を発表したばかりのタイミングであることもそうですが、恐らく秘密情報であるはずの具体的なロシア衛星の情報を、外交官である国務省高官が初めて公の国連の場で取り上げたことに注目です

まぁ・・・今後米国防省や米軍幹部がこの発言をどのようにフォローしてゆくかに注目なので、とりあえずご紹介しておきます

14日付C4isrnet記事によれば
Pence.jpg●米国務省のYleem Poblete軍縮担当次官補はジュネーブの「Conference on Disarmament」で、2017年10月にロシア側が偵察衛星と称している複数の衛星が見せ動きを「予期された行動は異なる行動」や「very troubling development」と表現して懸念を表明した
●また同次官補は「その行動が何を意味しているのか実証する手段を有しない」としつつも、「ロシア宇宙軍司令官の主張と比較しても、それら衛星行動の意図不明で疑念を招く動きだ」と非難した

●更に同次官補はロシアが衛星破壊のための対衛星兵器を準備しているとの懸念を強調し、「プーチン大統領が世界に向け3月1日に発表したように、最近ロシア国防省は移動式レーザーシステムを受領したと明らかにしたが、ロシア指導者は宇宙兵器を政治的にも軍事的にも既成事実化しようとしている」と警鐘を鳴らした
●Poblete軍縮担当次官補は、昨年10月のロシア衛星の特異な行動の目的は不明だとしつつも、米国関係者は、ロシア宇宙軍による新型兵器の宇宙配備重視の方針との関連で警戒ししているとも表現した

Poblete2.jpg今年4月には、相次いで2つの米研究機関がロシアと中国の宇宙活動に警戒感を示すレポートを発表しているが、その一つであるCSISレポートは、ロシアの対衛星兵器の脅威と、ロシアが得意とする「RPO:rendezvous and proximity operations」作戦に懸念をしている
●またSecure World Foundationが発表したレポートは、CSISと同様に、他国の衛星に接近するような軌道変化を示すロシア衛星のRPOを警戒感を示しているが、それらの行動が情報収集用の行動とくbつすることは難しく、衛星破壊行動の訓練だとの証拠はないとしている
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とある米議員が宇宙軍の必要を訴え、「中国やロシアは既に宇宙を自分たちのものにしようとしている。是非非公開の情報ブリーフィングを聞きに来てくれ」と危機感を訴えていましたが、軍縮ぢひょう次官補が公にした事実は氷山の一角かもしれません・・・

宇宙アセットへの脅威分析
「別のレポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-15
「CSISレポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-14-3

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トルコとの現場レベル共同は継続中 [Joint・統合参謀本部]

本日の写真は、F-22の欧州展開関連です

F-22 German.jpg13日、トランプ大統領が2019年度予算(10月1日から使用)に署名し、改めて2020年度宇宙軍創設に意欲を示してその重要性を訴え、併せてF-35のトルコへの輸出を一時停止する条項にも触れて「トルコとの関係は良くない状態にある」と言及する一方、トルコのエルドワン大統領は同日、「米国に背中から刺されたようなものだ:」と反応するなど、不穏な空気が漂っています

そんな中ですが、中東シリア正面の米軍幹部からは「これまで通りの連携を行っている」との発言が出ていますので、13日の週の動きとしてご紹介しておきます

あわせてそんな中、米本土から久々にF-22が欧州に展開し、ドイツを拠点に、ギリシャやポーランドやノルウェーに展開し、各地でプレゼンスを強調しています。

15日付米空軍協会web記事によれば
Turkey USA.jpg●13日にトランプ大統領が、トルコの最近の行動が与える影響に関する報告書がまとまるまで、トルコへのF-35提供を停止する条項を含む2019年度予算案に署名し、「米トルコ関係は今良くない」と発言する中になっても、現場での米トルコ協力は淡々と継続している模様である
●14日、生来の決意作戦(OIR)多国籍軍の戦略部長Felix Gedney米陸軍少将は、トルコのインジュリック空軍基地からの航空作戦は多国籍軍の作戦を支え、シリア北部における共同パトロールは日常的に問題なく日々行われていると状況を会見で説明した

●更に同少将は、他の多国籍軍部隊とトルコ軍部隊の共同作戦訓練も一つの部隊活動として行われているところである。この訓練は各国軍が別の担当分野を連携して行うタイプではなく、統合して有機的に一つの作戦を行う高度な訓練であるとも説明した
●そして同少将は、トルコ軍との同盟国としての関係には、前線レベルで何の変化もないと強調し、「トルコは極めて重要な世界の中のパートナーである」と表現した

5機のF-22から米本土から欧州へ展開中
F-22 US F-35 N.jpg●フロリダ州のティンダル米空軍基地から飛来した5機の第95戦闘飛行隊のF-22が、8日ドイツのSpangdahlem米空軍基地に到着した
10日はそのうちの2機がギリシャのLarissa空軍基地に展開して訓練を行った。欧州米空軍は「米空軍による当地域への関与と作戦能力を示すための展開だ」と声明を出している

●また15日、ドイツに展開中の米空軍F-22と、ノルウェー空軍のF-35が、ノルウェー上空で初めて共同訓練を行い、編隊飛行する写真が公開された
●更に15日、欧州米空軍は5機のF-22がポーランドのPowidz空軍基地に展開したと発表し、同基地に滞在中、ポーランド独立100周年記念祝賀行事のためワルシャワ上空で展示飛行を行うと明らかにした
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F-22 Poland.jpgロシアやトルコが、「ラプター5機で夜も眠れず・・・」状態になったとも思えませんし、米会計検査院GAOから「そんな風にばかりF-22を使用しているから、第5世代機の能力発揮に必要な訓練が十分できず、米納税者の期待に反している」と指摘されているところですが、これも13日の週の動きとしてご紹介します

OIR幹部である米陸軍少将の発言は、マティス国防長官の姿勢や発言をそのままのようにも感じられ、何とか国防省としての一体感は保たれているようです。

しかし・・・トランプ大統領は、辞めた側近や閣僚からの暴露話で引き続き炎上中で、それが常態となって世間はあまり何も感じなくなってきているような気がしますが、政権としての行く末が懸念されます。やっぱりマティス長官が最後の砦でしょうか・・・

関連の記事
「マティス長官がトルコF-35を擁護」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-24
「6月に1番機がトルコに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-15
「GAOがF-22運用法を批判」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21-2
「F-22アフガンで初出撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-25-1
「F-22初飛行20周年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-12

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2018年「中国の軍事力」レポート発表 [中国要人・軍事]

長らく夏休みをいただきました・・・

2018 china report.jpg16日、米国防省が議会報告を義務付けられた中国の軍事力に関する報告書「Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2018」を発表しました。
2014年版までは発表会見があったのですが、2015年以降は短いコメントがwebサイトに掲載されるだけとなり、2018年版は2ページの「Fact Sheet」と現物レポートがwebサイトに掲載されるだけの公開手法です

正確には、議会に報告する「非公開版」から公開可能な部分をまとめた「公開版」が発表されたということです。昨年の同レポートのフォローをさぼっていたので厳密な比較はできないのですが、公開版と非公開版の区別がいつからできたのか・・・このあたりが中国に対する警戒感の高まりを示すものと考えます

ただ、まんぐーすが知る2016年版でも記述内容の大きな変更の兆しが感じられたのですが、2018年版では中国軍事力の狙うところを端的に表現した部分が根こそぎ省略され、大きな中国の大戦略部分と細かな現場の活動部分をつなぐ、軍事力強化の目的や狙いを説明した「重要なつなぎ部分の記述」が、少なくとも「公開版」からは削除されているように感じました

この「重要なつなぎ部分削除」が、あまりにも厳しい現実だから削除なのか、中国を刺激しすぎるからなのか、中国周辺の同盟国国民(例えば日本国民)を投げやりにさせてしまうからなのか・・・は良くわかりませんが、消化不良になること間違い無しの報告書となっています

まず、まんぐーすの独断で「公開版」記述内容の概要をご紹介すると

戦勝70周年.jpg中国の大戦略
21世紀の最初20年間は「戦略的機会」の期間なので、この間に「包括的な国家パワー」を増進し、「中国の夢の再興:China Dream of national rejuvenation」に向け国力をつける期間

中国の具体的な動き
●経済や政治や軍事的影響力を駆使して勢力を伸ばす。「一帯一路」(One Belt, One Roadから、今はBelt and Road Initiativeと呼ぶらしい)の推進
スリランカの港を99年間借り上げ(Piraeus, Greece, and Darwin, Australiaと同様に)たり、ジブチに初の海外基地を設置して海兵隊を駐留させる

嫌がらせや圧力行使(失敗例も)
南シナ海埋め立て島での軍事施設拡充や中国軍の活動活発化、尖閣諸島周辺での武装漁民も交えた既成事実化活動
韓国へのTHAAD配備に圧力も結果的に失敗、インドと中国国境近くのブータンに大規模道路建設画策も、インド軍との緊張が高まり断念、

共産党中央軍事委員会2.jpg中国軍の改革
陸軍の兵站分野を中心に30万人の削減。また引き続き、近代戦に対応できる組織改革を推進中
●より実戦を想定した演習の高度化統合化、ISRデータの共有やターゲティングチームからの情報の統合軍内での共有
●引き続き汚職体質の改革・取り締まり

●着上陸作戦能力強化を狙った中国海軍陸戦隊(海兵隊:PLAN Marine Corps)を、現在2個旅団1万人規模を、2020年には7個旅団3万人に拡大
●中国空軍長距離爆撃機が東シナ海や台湾周辺に留まらず、第一列島線を超える飛行訓練が急増し、米国や日本を標的に想定した訓練を行っている。また、中国空軍が核攻撃任務を再び付与され、ICBM、SLBMと並ぶ核の3本柱体制が確立した
ステルス長距離爆撃機の研究開発が開始され、10年後の実戦配備を目指している
装備近代化の手段として、「外国企業への直接投資による技術獲得や、サイバー攻撃による技術窃盗も用いている」とも記述
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理由は不明確ながらまんぐーすが「削除された」と考える、2015年版までは(2016年版では部分的に)残っていた読者の理解促進に必要な大戦略と具体的な年度事象を結びつける「重要な中国軍事戦略の記述」、つまり報告書サマリーの冒頭に必ず記述があった事項とは・・・

parade.jpg中国軍事力近代化の目的は「高列度紛争に短期間で勝利:winning of short-duration, high-intensity regional conflicts」である。台湾が主方向ながら東や南シナ海にも広がりつつある
●具体的には弾道・巡航ミサイルを増強強化、サイバー戦や宇宙戦や電子戦に注力、高性能航空機、統合防空、情報作戦、着上陸・空挺作戦等の改善も・・・・・
●これら装備で、有事の際に米国を含む敵対戦力を押し返すことを試みている。中国はまた、対宇宙、サイバー攻撃作戦、電子戦能力にも焦点を置き、敵対者の近代的な情報戦を拒否する備えを行っている
●そして個々の変化を数字や名称を上げ、各種ミサイル、電子戦、サイバー、航空機、艦艇、着上陸能力では・・・と順番に説明する流れ・・・

2016年版にはかろうじて「short-duration, high-intensity regional conflicts」能力追求との表現は残っていましたが、後は国務省の外交白書ではないか・・・と感じるような抽象的な表現の報告書となってしまい、2018年版に至っているように感じます。

共産党中央軍事委員会3.jpg改めて申しますと中国軍の近代化は、台湾を中心に周辺の米軍基地や日本を念頭に、「高列度紛争に短期間で勝利」することを狙いとしたものだ・・・ということを再度肝に銘じるべきですここを外しては大局を見失います!

補足ですが、読売新聞の解説記事で目に留まった表現は、中国海兵隊の増強の解説で、ある中国軍の動向に詳しい関係筋が
●「習近平主席が軍の2大戦略目標である台湾統一と南シナ海島嶼支配に本腰を入れた証拠」と語っている部分です

中国の軍事力 全文145ページ
https://media.defense.gov/2018/Aug/16/2001955282/-1/-1/1/2018-CHINA-MILITARY-POWER-REPORT.PDF

同レポートの要旨(2ページ)
https://media.defense.gov/2018/Aug/16/2001955283/-1/-1/1/2018-CMPR-FACT-SHEET.PDF

過去の「中国の軍事力」レポート関連記事
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1

最近の中国関連記事15本
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2300801487-1

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平和教信仰から距離を置きたいあなたに [ふと考えること]

オバマ大統領(当時)は「核なき世界」ビジョンでノーベル平和賞を受賞した際、2009年12月の受賞スピーチで「核なき世界」には一切触れず、冷徹な国際社会の現実を語り、そして地道な努力の重要性を訴えた・・・

Peace2.jpg毎年、広島や長崎に原爆が投下された日、そして終戦の日が近づくと日本のメディアから目をそむけたくなります

垂れ流される浅薄な平和一番メッセージや薄っぺらな戦争や軍事力批判、「平和」と叫べば平和になると言わんばかりの平和教信仰、そんな大人の作った作文を読まされる子供達・・・そんな洪水のような情報にさらされたくない思いでいっぱいになります

今日の日本の礎を築くため、尊い犠牲をはらわれた方々を思い、英霊に祈りを捧げるなら、冷徹な世界の情勢に目を向けつつ、以下でご紹介するスピーチが言う「人間の制度の漸進的な進化」への取り組みを誓うしかないでしょう
そんな思いで2010年正月の記事から取り上げます

以下は、2009年12月10日、オバマ大統領がノーベル平和賞の授与式で行ったスピーチの、まんぐーすの勝手なつまみ食いアウトラインです

より詳しくはこちらを(これも全文ではありません)
その1→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-31 
その2→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-01
その3→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-02

あくまでも個人的解釈の概要です。上記の詳しいバージョンを是非ご確認ください

obama nobel2.jpg●我々は厄介な真実を認めることから始めなければならない。我々は我々の生きている間に暴力的な紛争を根絶することはできないだろう
●わが国家を保護し、守ると誓った国家の元首として、私はガンジーやキングを模範としただけで、国家を導くことはできない。私はあるがままの世界に向き合っており、米国民に対する脅威を前に何もしないでいるわけにはいかない

●世界には悪が存在する。非暴力の運動はヒトラーの軍を止めることはできなかった。交渉はアルカイダの指導者にその武器を置くように説得できない。力が時には必要であるということはシニシズムへの呼びかけではない。それは歴史、人間の不完全さ、理性の限界の承認である
●戦争は平和の維持において果たす役割を持っているしかし今ひとつの真実、すなわち戦争はいかに正当であろうと、人間の悲劇を約束するものだということと共に理解しなければならない。だから我々の挑戦の一部は、すなわち戦争が時には必要であるが、戦争はあるレベルでは人間の愚かさの表現である、を両立させることにある

obama nobel3.jpg●ケネディー大統領が呼びかけた努力が必要なのだ。つまり「人間の本性における突然の革命にではなく、人間の制度の漸進的な進化に基礎を置くもっと実際的でもっと達成可能な平和に我々の焦点を合わせよう」。人間の制度の漸進的な進化がそれである。

●実際的な取り組み(3つの視点)
●公正で永続する平和を作る方法3つ
●今そこにある現代の紛争

●わたしはあきらめない
ガンディやキングが実践した非暴力はすべての状況において実際的あるいは可能でなかったかもしれない。しかし彼らが説示した愛、人間の進歩への基本的な信仰、それは常に我々の旅路で我々を導く北極星でなければならない
何故ならば、もし我々がそれを馬鹿げたこと、あるいはナイーブなことと捨てるならば、その時には我々は人間にとり何が最善なのかを見失う。我々は我々の可能性の感覚を失う。我々は我々の道徳的コンパスを失う

obama nobel4.jpg●彼らを模範に生きよう
今日、今どこかで、あるがままの世界で、兵士は自分が武力で圧倒されていることを知るが、それでも平和を保つためにしっかりと立っている
今日どこかで罰するかのような貧困に直面しつつも、母親はその子供に教える時間をとり、彼女の持つ数少ない貨幣をかき集め、その子を学校にやろうとしている。何故ならば彼女はこの残酷な世界にその子供の夢のための場所がまだあると信じているから

彼らの模範によって生きよう。明確な目で戦争があることを理解しつつ、まだ平和のために努力し得る。我々はそれをすることが出来る何故ならばそれが人間の進歩の物語であり、すべての世界の希望であり、この挑戦の時期において地上における我々の仕事でなければならないからである
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Peace.jpgオバマ大統領は、2009年4月にプラハで行った「核なき世界」演説でノーベル平和賞を授与されることになったのですが、受賞決定後に各方面から様々な意見が寄せられ、「核なき世界」論を夢物語として批判する声も多くありました

そんな中での授賞式スピーチは、冷徹に現実を見つめつつ、なお遠き道のりを目指す決意を格調高く訴え、受賞を巡る様々な声に思いを語るものとなっています。オバマ大統領の評価とは別に、素晴らしいスピーチだと思います

より詳しくはこちらを(これも全文ではありません)
その1→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-31 
その2→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-01
その3→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-02

受賞を謙遜する冒頭の言葉も好みです・・・
「世界には、正義を求めたために牢屋で殴打された人々、苦悩を和らげるために人道的組織で働く人々、その静かな勇気と共感の行為でシニカルな人をも動かす数多くの無名の人々がいる。これらの人々、一部の人と彼らが助けている人以外には知られていない人々、が私よりもずっとこの賞にふさわしいと考える人々に、私は異議を唱えることはできない。」

終戦の日に考える記事
「玉音放送を読む」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-16-1
「未だ公式名称無き『先の大戦』」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-26
「歴史認識3つの首相談話」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-02-20
「靖国首相参拝3名の視点」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-07

上記3本のまとめ記事
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-14

8月20日までは、ブログの定期更新は致しません
お休みをいただきます・・・

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宇宙に物資を保管し必要時に迅速配布 [サイバーと宇宙]

Everhart.jpg2日、米空軍輸送コマンド(AMC)のCarlton Everhart司令官が記者団に対し、 将来のAMCの在り方を考える一環として、必要時に迅速に物資を世界各地に届けるため、宇宙空間に物資を保管して直接提供する方式を関連企業と議論し始めたと語りました。

まだまだ「コンセプト段階」、「infancy stages:0-2歳児段階」の話だと同司令官は強調しているようですが、軍の方から構想や要求事項を先行的に示しておかないと、民間企業の最新技術や柔軟な発想が官僚機構の壁で埋もれてしまう・・・との危機感から表に出して議論しようとの興味深い発想に注目です

Everhart司令官と言えば・・・先日、禁じ手である「幕僚勤務しなくていいよ」操縦者の募集を開始した話題でご紹介したところですが、将来を見据えた取り組みにも目を向けておられるようですのでご紹介します。

3日付米空軍協会web記事によれば
space-based 4.jpg●Everhart大将は記者団に、「もし宇宙空間に物資を事前集積できればどんなに便利だろう。地上で物資輸送の際に必要なものがいらなくなるし、海上を船で輸送することも不必要になる。宇宙空間の保管施設に補給物資を運搬する手段を確保して」と語った
●そして「宇宙に物資を運搬できればそこに人を配置する必要はない。自動で積み下ろし作業などは可能だろう」と説明し、目的は世界各地に可能な限り迅速に物資を運搬するためで、装甲車両から食料水に至るまで宇宙空間で保存可能な期間一杯保管したいとも語った

既に輸送コマンド幹部や司令官自身が打ち上げ企業とのミーティングを開始していると明らかにし、Everhart司令官自身も先週(7月23日の週)SpaceXやVirgin Orbit関係者と面談し、例えば「SpaceX社のBFR super-heavy launch vehicle」 を物資打ち上げに使用したり、関連企業のシステムで必要時に宇宙空間の物資を地上に提供することの可能性を話し合ったと述べた
●同司令官はこの構想の利点について、現在空輸で10時間必要な物資輸送が、宇宙空間からだと30分で可能になると説明した

space aware2.jpg●同大将は今後Blue Origin社幹部とも話し合ってみたいと希望を語り、AMCの将来構想を担当部署の士官も関連企業を訪問する計画だと述べた
●AMCはまた、米空軍宇宙コマンドとも協議を開始しており、相互に交換幹部を差し出して輸送と宇宙の連携要領を深めたいとも語った

関連企業は「Civil Reserve Air Fleet」との位置づけで契約を結ぶことを前提に参画を促し、有事における活躍も期待する方式を考えている模様
●Everhart司令官はまだ計画自体が「infancy stages:よちよち歩き段階」 にあることを強調したが、民間企業の革新的アイディアを国防省官僚機構の壁で埋もれさせることが無きよう、またAMCが空ドメインだけに留まって取り残されないように(become irrelevant)するために必要な取り組みだと説明した
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Everhart4.jpg宇宙空間に大量の重量物を運搬するコストは???・・・と問いたくなる発想ですが、そんなことは承知の上でのEverhart司令官の発想でしょう。

それにしても、宇宙のことを基礎から学ぶ必要性をつくづく感じる次第です・・・数年前からそんなことをつぶやいているような気もしますが・・・

Carlton Everhart大将・・・興味深い人物です。輸送機一筋の経歴で、大佐昇任直後(2003年1月)から横田基地の輸送機部隊指揮官として日本勤務経験があります

米軍輸送関連の記事
「禁じ手:幕僚無し操縦者募集へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28-1
「民間輸送力依存に危機感」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-03
「今後20年の操縦者不足は深刻」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29
「タンカー将来計画見直しへ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-22
「渡り鳥に学ぶ輸送機の燃費向上」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-26

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米空軍が新ISRロードマップ決定 [米空軍]

PEDの時代ではない、SIASに向かう

Jamieson4.jpg2日、米空軍情報部長のVeraLinn Jamieson中将らが空軍協会ミッチェル研究所で会見し非公開の米空軍ISRロードマップ「Next Generation ISR Dominance Flight Plan」が空軍長官や参謀総長の承認を得たと語り、2020-2030年を対象としたものだと説明しつつ、技術や脅威の変化により柔軟に変化しうるものとも説明しました

会見では様々な視点から今回の「ISR Flight Plan」検討の背景が語られており、秘密の部分もあり断定的な話はできませんが、根本には18年間続けた来た対テロ戦争に集中しすぎているのではないか、本格的な戦いに通用しないのではないか、公開情報やSNS上の情報活用をどうする、老朽装備の将来をどうする、商用ベース情報の活用法は・・・等の問題意識が背景にあるような気がしました

またより個別な話題として、大量に米空軍が保有するMQ-9やRQ-4の将来や後継、U-2の今後について記者団から質問が相次いだようですが、これについては今後検討するとして言及を避けており、目の前の予算状況の厳しさも伺わせています

断片的な会見の様子ですが、「Next Generation ISR Dominance Flight Plan」の方向性を把握するためご紹介しておきます

2日付米空軍協会web記事によれば
ISR Flight Plan.jpg●同中将の会見から、非公開のISRロードマップが、商用衛星を有効に活用して最新で多様な角度からの画像情報を迅速に入手する必要性や、センサーを搭載するプラットフォームに超超音速飛行や逆の超低速長期在空能力の両方を求める事、更には「群れ技術」の必要性を求めていることが明らかになった
●また、人工知能やディープラーニング等のキーワードで語られる「machine intelligence」や、公開情報をビックデータ技術で処理して活用することや、SNS上の情報を処理して信頼できる主要な情報源として活用する必要性も主張している

長期間使用している航空ISRセンサーについて情報部長は、E-8 JSTARSの退役について議会の理解が徐々に進んでいると述べ、MQ-9の後継についての質問については、同機が直面する大国との対峙の脅威をNSSやNDSを引用して語るにとどめた
●一方で、現在その稼働率低下が問題視されているRC-135シリーズの今後については、「現在このような写真、電磁波、テレメトリー、放射能など単一センサー任務に特化したアセットは下降気味な状態だが、これら航空アセットをreverseさせる」と表現した

ISR Flight Plan3.jpg●また、最新の情報技術や前述の「machine intelligence」が急速に発達する中従来のPED(processing, exploitation, and dissemination of intelligence)との考え方は既に死に体であり、今後はSIAS(sense, identify, attribute, share)との考え方で取り組んでいくと表明した
●将来は、PEDのプロセスのPE部分をセンサー自身が担い、Dまでもこなすことになり、人間が情報の解釈や意思決定に専念できるようにすべきとの考え方を示した

●更に情報部長は、米空軍は「publicly-available media」情報への姿勢を改め、スマホなどを通じたSNS上で流通するデータを最新技術で処理して活用する方向に舵を切る
●具体的なスケジュールについて言及しなかったが、AI技術については国防省レベルで既に取り組みが始まっており、また情報インフラの基準を他機関や軍需産業と両立可能なものとし、「commercial standards」を空軍の基準とする
/////////////////////////////////////////////////////////

ISR Flight Plan2.jpgまぁ・・・いずれも先立つものがなければ実現できないもので、その先行きは油断を許しませんが、米空軍の危機感や脅威感を感じていただければ幸いです

この手の各種「Flight Plan」はしばしば発表されますが、その効力や影響力をあまり感じたことはありません・・・背景に流れているのかもしれませんが・・・

米空軍ISR関連の記事
「情報部長が中露のAI脅威を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28
「RC-135シリーズがピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-08-1
「ISR無人機の急増」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-21
「無人機要員の削減を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-25

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米軍の士官昇任システム大幅変更へ [Joint・統合参謀本部]

階級昇任の時間経過縛りを緩和
一定期間で昇任しなくても退役の必要なし
高いスキルを持つ民間人の相応階級での採用可能に

promotion.jpg1日、米上院が2019年度の国防授権法(defense authorization bill)を可決したことにより、長らく改正の必要性が叫ばれてきた米軍士官の昇任システム規定(1980 Defense Officer Personnel Management Act, or DOPMA)が変更可能になるようです。

報道によれば、現在の米軍士官昇任システムの多くはWW2当時の軍隊や社会を背景としたもので、サイバーや宇宙といった新たなドメインの出現や、民間企業との人材獲得競争が激化する中、今のままでは有能な人材を引き付けられず、また有能な人材を組織内に留めることが難しくなっているとの危機感が引き金です

専門家が長らく待ち望んだ(long overdue)改革と表現する一方で、通過した法律は各軍腫に履行を強制するのではなく、柔軟に取捨選択可能としており、サイバーや宇宙分野と、伝統を重んじる陸軍や海兵隊や特殊部隊の相違にも配慮したものとなっており、この部分も専門家の高く評価する所以となっているようです

2日付Military.com記事によれば
(報道されている主要改正点は・・・)
promotion2.jpg能力の特に優れた士官は、当該階級での勤務経験年数(最低5年等の縛りがある)に拘わらず、昇任させることが可能
 例えば・・サイバー分野や先端技術に携わる優秀な人材を、民間企業からの引き抜きから守るため、せめて階級昇任面で配慮して処遇や給与面で厚遇する

大佐までの階級であれば、能力の高い民間人を相応の階級で採用可能
 例えば・・サイバー分野や先端技術に携わる優秀な人材を、民間から採用して士官とし採用して即戦力としたいとき、相応の階級で迎え入れることで民間人を引き付ける

当該階級で一定期間勤務しても昇任しない場合の強制退役制度を廃止
中尉以上の階級の士官は、勤務期間40年間までの限度で勤務延長が可能
 例えば・・・現代の若者の価値観で、昇任して指揮官になるより、専門分野で極めた能力を生かして長く同じ仕事で国に貢献したいと考える有能者を処遇したり、中佐に昇任できない少佐で早期退役期限が近づいているが、彼の特定分野での経験や知識は他で代替が効かないので勤務期間を延長させたい・・とかのニーズに対応する
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promotion3.jpgこの法律成立により、具体的にどの軍腫でどのような変化が現れるのかが興味深いところです。

サイバーや先端ぎ技術分野の専門家採用や引き留めが頭に浮かびますが、メンタル治療の専門家や特定語学専門家の迅速採用にも応用が利くかもしれません。

また、複雑な規則や手続きやシガラミが絡み合っている米国防省や米軍の世界ですから、FMS手続き迅速化のベテランとか、同盟国等との関係を担当する人材の延長雇用とか、撤退が合い次ぐ零細軍需産業との関係を取り持ってきた業界の信望が厚いベテランとか、新兵教育や部隊規律立て直しの名人とかも視野に入っているかもしれません・・

しかし反面・・・、これまで時期が来れば辞めていってくれた「役たたず者」が、法律を盾に権利ばかりを主張し、勤務延長や昇任を要求したりして、指揮官達の悩みの種が増えるような気もしてなりません

カーター前長官の人材管理改革
「人材確保・育成策第2弾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-10
「追加策:体外受精支援まで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-29
「全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「企業等との連携や魅力化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「施策への思いを長官が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25

ペンタゴンのプラット組織検討
「マケイン議員の提案」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-30
「階層縮小で人員削減」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-26-1

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RIMPACでバンドウイルカが機雷探知に成功 [Joint・統合参謀本部]

8匹のイルカが参加、全ての訓練用機雷を発見したとか・・

dolphin.jpg7月30日付Military.comは、実施中の世界最大の海洋演習であるRIMPAC2018において米海軍が訓練してきたバンドウイルカ(Bottlenose dolphin)が、海底に敷設された機雷を発見する演習を行い、演習で準備されたすべての機雷を発見したと報じています

このイルカの育成は、米海軍の「Space and Naval Warfare Systems Center Pacific」が担当し、「Marine Mammal Program」として南部カリフォルニアで行われており、現在はアシカ(sea lions)も育成しているようです。また過去には、「サメ、エイ、ウミガメ、海鳥」の能力チェックも行ったようです。

興味深いのは、今回のRIMPACでイルカ使用を含む機雷戦を訓練した約1100名から編成される「Task Force 177」は、米国、豪州、カナダ、英国、NZ、オランダ、そして日本を含む多国籍部隊だったということです。これをもって、日本もイルカ機雷戦に関与したとは言えませんが、訓練を終え帰国した海自の皆様にはぜひ聞いてみたいものです

7月30日付Military.com記事によれば
dolphin2.jpgサンディエゴ沖で実施された約10日間にわたる機雷戦の訓練に、8匹のバンドウイルカが参加し、海底に埋まった機雷(mines buried at the bottom of the sea)の発見に全て成功した
●同イルカを育成する「Space and Naval Warfare Systems Center Pacific」の報道官は、動物の生物センサーのみが埋まった機雷を探知する能力があると、イルカを活用した背景を説明している

●訓練されたイルカは、機雷を海底で発見すると飼育調教員に知らせるが、飼育員はもう一度確認のためイルカを海底の現場に戻す。再確認できた場合、今度はイルカに目印(marking device)を持たせて機雷場所に置かせ、その目印が海上に浮かんだ時点で人間のダイバーが機雷の最終確認に潜水する

以上の手順説明の原文は
[→]Once the dolphin found the mine, a Marine Mammal Program technician sent it back underwater to confirm its find, according to a Navy news release. When it did, the dolphin was given a marking device to carry down to the mine's location. Once that marker floated to the surface, a dive team swam underneath it to confirm.

●仮にイルカが正しく機雷を発見した場合は、飼育調教員がイルカを誉め、そして餌の魚を与える
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米海軍の「Marine Mammal Program」webサイト
https://www.public.navy.mil/spawar/Pacific/technology/Pages/mammals.aspx

Dolphin-uuv.jpg上記webサイトによれば、これらのイルカやアシカは機雷戦のためだけでなく、海中に水没した装置やモノの捜索や引き上げにも貢献しているようで、引き上げ用のフック付きロープを運び、対象物にひっかけたりできるよう訓練されているようです

ちなみにこのような作業の場合、動物の輸送費等を負担すれば、手伝ってくれるようで、無人潜水艇等を使用するより低コストで可能だと宣伝しています

まぁ、そうでも言わないと、動物愛護団体などが大騒ぎしそうですが・・・

「米露がイルカ兵器対決?」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-23

水中戦に関する記事
「米特殊作戦コマンドが大型?潜水人員輸送艇を」[→]https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-29
「水中戦投資への提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-28
「米軍の潜水艦優位が危機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13
「UUVの発進格納技術」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-29

「潜水艦射出の無人偵察機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-07-1
「機雷対処の水中無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-30-1

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新しい宇宙軍の国防省概要案 [サイバーと宇宙]

8月9日、ペンス副大統領が会見し発表
宇宙軍創設のため専従の次官補を置くとも
https://www.defensenews.com/space/2018/08/09/space-force-will-be-6th-military-branch-by-2020-vice-president-pence-announces/
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国防省独自で可能な宇宙担当メジャーコマンド、調達機関、そして統合部隊の編成に着手か

Shahahan.jpg7月31日付Defense Oneが、国防省が議会と最終調整している「宇宙軍」の概要と今後の動きに関する計画案を入手し2018年末までに議会承認が必要な新たな宇宙軍創設法案準備を行い、それに先立ち国防省独自に可能な宇宙専従の「new combatant command」と「new space-procurement agency」と「new Space Operations Force」 を数か月以内に立ち上げる計画だと報じています

本来、8月1日に国防省が会見して公表する予定だった14ページの計画は、Shanahan国防副長官の下でStephen Kitay宇宙政策担当国防次官補代理が起案したといわれるものですが、議会との最終調整に時間がかかり、発表会見が延期されているようです

7月24日に米議会の上下院軍事委員会が2019年度予算案への宇宙軍関連経費の計上を認めない「ゼロ査定」を決定し、同日退役軍人集会で宇宙軍構想を再び(6月18日に正式宣言)ぶち上げたトランプ大統領との対立構図が際立つ状況ですが、国防省発表案は相当に考えられたもので、特に調達関連で改革志向を垣間見る気がします。

Space domain.jpg冒頭ご紹介したように、1947年に米空軍が創設されて以来の新たな軍「宇宙軍」創設には議会による重い法律改正が必要ですが、宇宙軍の傘下に入ると思われる宇宙担当メジャーコマンド、調達機関、そして統合部隊の編成は国防省独自で可能なようで、「In coming months」に立ち上げるとの勢いです

米国防省の組織編成論についていけない部分があり、またこの記事が出るころには議会と調整した「修正版」なっている可能性もありますが、大きな方向に変化はないと信じ、とりあえずご紹介いたします

新しい宇宙担当Combatant Command
●現在ある米軍特殊作戦コマンド(Special Operations Command)のような、大将がトップの11番目のunified combatant commandで、陸海空軍および海兵隊からの人材で構成され、米軍の宇宙戦力全てを管轄する
●計画案では、2018年末までに新コマンド「U.S. Space Command」を立ち上げ、それまでに必要な追加の人材、責任や権限を整理する事となっている
●新コマンド立ち上げ時の指揮官は、現在のAir Force Space Command司令官が務める

新しいSpace Operations Force
space aware2.jpg●新コマンド「U.S. Space Command」の実動部隊となる「Space Operations Force」を、 陸海空軍および海兵隊、更に予備役や州軍で宇宙関連分野に従事する人材で立ち上げる
特殊作戦コマンドにおける各軍種の特殊部隊の様な位置づけで、米国防省全体で宇宙分野にかかわる人材を、「Space Operations Force」が一元的に管理し育成し運用する
●この「teams of space experts」編成を優先して迅速に進め、来年夏までに欧州コマンドと太平洋コマンド地域専従の組織を編成し活動を開始する

新しいSpace-Procurement Agency
space-based 4.jpg地殻変動的(seismic)な変革を期しているのが宇宙関連の物資調達、打ち上げ業務選定、技術開発研究等を担う新しい「Space-Procurement Agency」で、業務の迅速化や実験的挑戦を強調する改革に挑む。現在の関連機関はコロラド、加州、フロリダ、ハンツビル等にあるが、人材集めや民間企業との連携による技術開発に適した場所が検討される
●このAgencyはまた、民間宇宙企業を官民共通の目的達成にため、要求と規則と法令順守を基礎に向けて、より大きな役割を担う。ミサイル防衛分野を担う「Missile Defense Agency」のように、全軍種に関わる宇宙関連調達を監督する役割を担う

●このAgency組織の中核は「Space Development Agency」で、新型衛星の開発や打ち上げ契約を担う。現在進行中の調達案件は各軍種で引き続き担当し、徐々に新たな案件から新組織が行っていく
●国防省計画案が改革のスタート地点と呼び、新組織立ち上げで最も大きな影響を受けるのは、現在国防省の宇宙調達予算の85%分を担当する6000名規模の米空軍「Space and Missile Systems Center」(在ロス)で、最近組織改革を行い業務迅速化を図ったばかりの組織である。
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サイバーやAI分野と並び、中国やロシアの脅威が急速に顕在化している宇宙ですので、これを契機にこれまでの因習を断ち切る意気込みをこめ、改革志向での取り組みが確認でき喜ばしい限りです。

Shanahan4.jpgトランプ大統領が正式に命令する6月18日までは国防省も大反対論陣を張り、上下院の軍事委員会が予算「ゼロ査定」を決め、この計画案発表に至る議会との下調整段階が早くも難航している「宇宙軍」ですが企業からの転身組Shanahan国防副長官らの柔軟な発想に期待すべきなのでしょう

正式な発表を待ちましょう・・・

宇宙軍を巡る動向
「宇宙軍宣言に国防省内は冷ややか」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-21
「国防副長官が火消しに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-29
「トランプの宇宙軍発言に真っ青」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-17
「下院が独立法案承認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-14-1

「下院が宇宙軍独立案を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-22-1
「米空軍はA-11設置で対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-18
「米空軍が宇宙活動アピール作戦を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-24

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