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やっと国防省の政策担当次官決定 [米国防省高官]

国防省NO3ポストが1年間空席の後・・・
このポストも軍需産業から直配で懸念の声

Rood2.jpg3日、米議会上院が賛成81票VS反対7票で、米国防省No3ポストと言われる政策担当国防次官にJohn Rood氏をつけることを承認しました。前任者が政権交代に伴い辞任し、1年もの空白期間を経て政治任用の重要ポストが埋まることになります

トランプ政権の政治任用ポストが埋まらないことは過去にも取り上げましたが、この重要ポストも副長官ポストと同じく、マティス長官が希望した人材がホワイトハウスの横やりで複数排除され、結局、軍需産業界の重役ポストにある人間が就任することになりました。

このJohn Rood氏の人物像を把握しているわけではありませんし、2代目ブッシュ政権時に国務省で国際安全保障や軍備管理担当の代理次官や次官補を経験した人物であり、素人ではありませんが、相次ぐ軍需産業界重役からの人材登用は気になるところです

国防省主要ポストへの軍需産業幹部登用リスト
国防副長官(Patrick Shanahan)  前ボーイング副社長
陸軍長官(Mark Esper)      前レイセオン社重役
調達開発担当次官(Ellen Lord)  前Textron重役
陸軍省次官(Ryan McCarthy)   前ロッキード重役

まぁ・・・マティス長官も、トランプ大統領の下でよく国防長官を引き受けたものだと思いますが、政治任用ポストに人気があるとは思えず、軍需産業関係者が何らかの利益誘導を狙って入り込んでいると勘繰られても仕方ない状況です

3日付Defense-News記事によれば
Rood.jpg●昨年10月に大統領からノミネートされたJohn Rood氏だが、 上院軍事委員会での質疑でロッキード社事業との関与に関する質問に明確に回答しなかったこと等からマケイン上院議員(軍事委員会の委員長)が不満を示し、審議が紛糾していた。
●政治任用ポストの承認権限を持つマケイン委員長は、トランプ政権下での軍需産業幹部の政権要職投入の多さに以前から不満を示しており、Shanahan就任時にこれで最後にしてもらうと発言していた

軍事産業幹部の国防省入りへの懸念を端的に表現し、上院での承認投票で反対票を投じた民主党のElizabeth Warren上院議員は、「米国民が、国益よりも、特定の装備品の売り込みや海外への輸出を国防省幹部が優先するのではとの疑念を持つようではいけない」 と反対理由を述べている
●また同議員は、「国防省政治任用幹部が、国家の利益か、5大軍需産業の利益か、どちらのために働いているのかとの疑問を、米国民が持つようではいけない」とも訴えている

●これまで政策担当国防次官の代理として勤務してきたDavid Trachtenberg氏は、John Rood氏のDeputyとしての本来任務に戻ることになる
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Rood3.jpg1月末には「国家防衛戦略NMS」が発表され、2月には「核態勢見直しNPR」や「ミサイル防衛態勢見直しBMDR」が公表される段階にある今頃になって、政策担当次官が決まる状態が既に異様なのですが、前政権の「アジア太平洋リバランス」に変わるキャッチフレーズくらいは早く打ち出していただきたいものです

まぁ・・中国も北朝鮮のやりたい放題の中、今頃キャッチフレーズを打ち出しても「空虚」に響くだけかもしれませんが・・・

関連の記事
「トランプが政治任用諦めツイート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-30
「国防副長官の承認手続き」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-29
「副長官候補にボーイング重役」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-17

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米空軍が群れ運用巡航ミサイル開発へ [米空軍]

Gray Wolf.jpg昨年12月28日付Military.comによれば、米空軍研究所AFRLとロッキードとNorthrop Grumが、2014年開発終了に向け、ミサイルが相互連携しながら群れとして行動して敵防空網に対処する新型巡航ミサイル契約を結んだと報じています

正確には、ロッキード社が12月27日に、群れ巡航ミサイル「Gray Wolf」に関しAFRLと5年間約130億円の契約を結んだとのリリース文書を発表したということです。
また、20日付米国防省リリースには、同じ金額でNorthrop Grumとも、「新しい低コストの、敵防空網を群れで攻撃することができる巡航ミサイルを開発する契約」を結んだと発表されていたそうです

「群れ」コンセプトは小型の安価な無人機で検討が進められていることをご紹介してきましたが、巡航ミサイルにも導入されつつあるとは知りませんでした・・・
細部に言及はありませんが、興味深いのでご紹介しておきます

昨年12月28日付Military.com記事によれば
Gray Wolf2.jpg●27日付ロッキード社発表によれば、同巡航ミサイルは「ネットワークで結ばれ、相互に連携して群れを形成し、世界中のIAD(Integrated Air Defense)システム脅威に対処する」コンセプトを持っている
●4段階で構成される開発段階の第1段階は2019年後半までの期間で行われ、最終的には20124年後半に開発が完了する計画となっている

●このコンセプトは、メリーランド州の企業The Bethesdaが「Gray Wolfミサイル」コンセプトに沿ったもので、同社幹部は、強固な防空網に安価な対処ミサイルを提供するものだとアピールしている
●また同幹部は、「このシステムは部品のモジュラー化を追及し、より破壊力の強い弾頭や燃料効率の良いエンジンを組み合わせるなどが想定されている」と今後の開発の方向性を語っている

●開発初期段階で本巡航ミサイルはF-16から発射試験が行われる計画だが、ミサイル設計はF-15やFA-18、もちろんF-35のほか、爆撃機であるB-1、B-2、B-52にも搭載可能な設計が行われる
●Northrop Grumとの契約に関し米国防省の発表では、「敵の高度な防空網を破砕するため、先進で安価なネットーワーク型巡航ミサイルのプロトタイプを設計、開発、製造そして試験する契約」だと説明されている
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Gray Wolf3.jpg敵に負担を強要してコスト負担を押し付ける「課負担戦略」の発想の様でもあり、「maximize modularity」「fuel-efficient 」「affordable」で我のコスト面にも配慮した新時代の兵器開発です

巡航ミサイルを相互連携させて「群れ」としてどのような動きをさせるか気になりますが、そのあたりには言及はありません。団子になって侵攻し、ある時点で散開して敵防空網を混乱させるイメージでしょうか・・・

無人機の群れ関連記事
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26 
「3軍の士官学校が群れ対決」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-26
「国防省幹部:空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30

「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1
「無人艇の群れで港湾防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-19
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10

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NK弾道弾に対処する米国を露が誤解の恐怖 [安全保障全般]

Russia-Navy1.jpg2日付C4isrnetが、つい最近まで北朝鮮のICBMを正確に把握できていない様子だったロシアの弾道ミサイル早期警戒システムに疑念の目を向け、昨年12月に運用を開始したと宣伝している新レーダーでも、火星14号クラスは探知できず、米国の迎撃ミサイルをロシア向けの弾道ミサイルと誤解する恐れを指摘しています

もともとロシアは(他の世界の国もそうでしょうが・・)、北朝鮮の弾道ミサイル発射や探知を十分想定しておらず、小型の弾道ミサイル探知能力やレーダー覆域が十分でなかったのかもしれませんが、米国の対イランを想定したBMDシステムの欧州配備に強く反発したりしている様子等々から、露の早期警戒システムに疑念を向けるのももっともです

ロシアが北朝鮮の弾道ミサイルをICBM級だと認めたのは、昨年11月の火星15号になってからで、それ以前の火星14号等を中距離弾道ミサイルだと言い張っていたということです
推測が多分に入った記事ですが、ご参考まで

2日付C4isrnet記事によれば
NK-ICBM3.jpg昨年6月に北朝鮮が初めてICBM火星14号を打ち上げ、これを米国、日本、韓国そして北朝鮮が大陸間弾道弾ICBMだと確認したのに対し、一つの国だけがこれに不同意だった。その国がロシアである
当時ロシアは、火星14号は中距離弾道ミサイルに過ぎないと主張したが、この主張の背景を西側専門家は様々に推測した。

ロシアは観測の技術的ミスからそう判断したのか、政治的な意図からそう主張しているのか、単に探知追尾能力が劣っていいるから判断を誤ったのか・・・様々な憶測である
●そんな中、当時の「The Diplomat」は、「ロシアの早期警戒システムVoronezh systemsはUHF周波数帯を使用し、主に米国が発射するICBM探知追尾を目的としていることから、より小型の北朝鮮火星14号の第2段目を探知追尾する能力に劣っているのだ。またはレーダー覆域の末端に当たるため探知追尾精度が不十分なのだ」との分析を掲載した

●このようなロシア早期警戒システムの能力限界を指摘した専門家は以前から存在し、北朝鮮のICBM迎撃のために米国が発射するBMDミサイルを脅威と誤認する恐れを主張してきた
一方ロシアは、2016年12月に弾道ミサイル早期警戒システム強化のための施設工事を終了し、1年後の2017年12月に最後の3つのレーダーサイト運用開始を宣言している

NK kasei12.jpg●しかしそれでも、ロシアが北朝鮮のICBM発射を公式に認めたのは、昨年12月になってからで、それもラブロフ外相が昨年11月発射の火星15号に限って認めたに過ぎない
●これらの事象から専門家は、北朝鮮が火星14号クラスのICBMを発射した場合、ロシアはそれを探知できず、米国が迎撃のために発射するBMDミサイルを変に誤解する可能性を指摘している ●ロシアの新しい早期警戒システムの能力には、未だ多くの疑問が残されている
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弾道ミサイルとその迎撃システムについてはこれ以上語れないので、専門家の方のコメントをお聞きしたいところです

海国防衛ジャーナルのフォローを期待しつつ、今年も怪しげな動きを見せるであろうロシアを見ていきたいと思います

INF条約の経緯とこれまでを解説
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15

ロシアのINF条約破り
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

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