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中国が先行する超超音速兵器をどうすべき [Joint・統合参謀本部]

中国がHypersonics兵器で優位だと認める米軍幹部

Hypersonic4.jpg24日付米空軍協会web記事が、米空軍兵器開発のまとめ役で全体を把握している空軍副参謀総長Seve Wilson大将へのインタビュー記事を掲載し、次世代「Game Changer兵器」の有力候補である超超音速兵器(Hypersonics兵器) で中国が優位で、米国内でバラバラに行われている研究を束ねる必要があるとの危機感を伝えています

超超音速兵器は大気圏内を音速の5~10倍で飛翔する兵器で、米軍は通常兵器を搭載して「世界即時攻撃CPGS」構想を打ち出し、大陸間弾道弾ICBMのように核戦争を引き起こさず、世界中の目標を1時間以内に攻撃できる体制構築を描きました

そして米空軍や国防省研究機関が複数の開発を行い、2012~2013年頃には「X-51 Waverider」「米陸軍のAHW(Advanced Hypersonic Weapon)」「米空軍のHTV-2」などの名前を本ブログでも取り上げました。

Hypersonic3.jpgしかし2013年に「X-51」がマック5.1で約6分間飛行に成功して以来、予算不足を訴える国防省や米軍関係者の声をお伝えしましたが、具体的な開発や実験の話を取り上げた覚えがありません

ただ、中露の追い上げに危機感を持った米国関係者が、「第3の相殺戦略」議論と共にこの兵器開発に注目し、 2016年11月には「技術ブレークスルー:米空軍がロッキードと180億円契約」との記事でご紹介し、水面下で何らかの動きがある雰囲気をお伝えしました

今回の空軍副参謀総長Seve Wilson大将発言は現状を端的に表現したものと考えますが、米軍の技術優位がどんどん浸食されていく現状レポートのような雰囲気の記事です・・・

24日付米空軍協会web記事によれば
(Wilson大将のインタビューでの発言)
Wilson3.jpg中国がいかに多くの勢力をつぎ込んでこの兵器開発に取り組んでいるか、いかに多くの研究レポートを発表しているか、いかに多くのインフラ投資を行っているか、いかに多くの試験を行っているか・・・彼らは本当に超超音速技術実現に取り組んでいることを知るべきだ
米国はこの分野で世界をリードしてきた。誰よりも進んでいた。1960年代からラムジェット、スクラムジェット、ロケット航空機など米国は取り組んできた。しかし今やその当時のスピードや規模で取り組んでいな

●しかし現状として、誰か超超音速兵器について多様な米国内の努力を取りまとめる任務や責務を持つ個人や組織が存在しているだろうか? 私はそのような取りまとめ責任者を知らない。統合参謀本部や米軍、DARPA、SCOなどが並行して取り組んでいることは承知しているが、誰かが取りまとめなければならないと国防省で話をしている
●超超音速兵器に関し、米軍や産業化や学会で進展もある。AIでも、機械学習でも、量子コンピュータでもだが、すべての動きを束ねる大きく大変だが重要な仕事をする人が必要なのだ

hypersonic5.jpg●超超音速兵器に関して取りまとめる候補者としては、開発担当国防次官の下の次官補が考えられるが、まだ任命されていない(doesn’t exist yet
●我々は取りまとめ機構の全体を検討しており、どのような仕組みが良いか形がよいか考えている。専門家の知恵も借りて考えている

2013年の「X-51 Waverider vehicle」試験成功をうけ、2020年には兵器としての誕生も見据えたが、米空軍では2013年以降に大きな進展はオープンになっていない。
●米国防省関係者は、2019年度予算案で超超音速兵器が大きな予算を確保する方向だと語っているが
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米国防省機関や米軍を横断的に束ねて一つのベクトルに向かわせる必要性・・・古くて新しい議論ですが、しっかりやっていただきたものです

Hypersonic2.jpgしかしこの記事でご注目頂きたいのはWilson大将の最初の発言部分、「中国がいかに多くの勢力をつぎ込んでこの兵器開発に取り組んでいるか、いかに多くの研究レポートを発表しているか、いかに多くのインフラ投資を行っているか、いかに多くの試験を行っているか・・・彼らが本当に超超音速技術実現に取り組んでいることを知るべきだ」の部分です

中国がどの程度進んでいるのか語れませんが迎撃の難しい(地対空ミサイルでは追随できない)超超音速兵器を中国が手にする時が迫っているということです

超超音速兵器の関連
「米空軍が180億円契約」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-11
「超超音速兵器の脅威が大きな話題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-19
「あのLM社も積極投資」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「中国が優位なのか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-14
「ロシアも取り組み表明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-11

PGS関連の過去記事
「PGSに少し光り??」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-18
「パネッタ長官はPGSに期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-16
「X-51Aは初期実験段階」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-23

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CSISが時代遅れの米国IAMDに提言 [Joint・統合参謀本部]

日本にとってはもっと重大な課題のはずです!
  
CSIS IAMD.jpg25日、シンクタンクCSISのミサイル脅威分析チームからDistributed Defense: New Operational Concepts for Air and Missile Defense」とのレポートが発表され、米国に学んだ中露が急速に軍事力を強化する中、旧体然とした縦割りIAMDでは話にならないと幾つかの提言を行っています

米国(前方展開する米軍部隊も含め)のIAMDを、「あまりにも撃たれ弱く、敵の攻撃に制圧されるだろう:far too susceptible to suppression、too vulnerable to exploitation」と喝破し、弾道ミサイル防衛だけにあまりにも集中している現状を嘆き、1990年代から問題認識はあったものの、すべて放置されたままだと指摘しています

このレポートは米国を対象としたものですが、中露に近距離で対峙している日本はもっと深刻なはずです。
「言うは易し、行うは難し」の提言内容ですが、まず事実に向き合い、さび付いた頭をリフレッシュすることが重要ですから、基本に立ち返って研究者の提言を見てみましょう。

26日付米空軍協会web記事より
PAC-3 Saudi.jpg●CSIS「Missile Threatチーム」のメンバーであるThomas Karako上級研究員らによってまとめられたレポートは、中露などを指す「near-peer adversaries」との対峙に備えたIAMD議論が全く置き去りにされていると指摘し、いくつかの提言を行っている
●そして「distributed AMD operations」等の新しい作戦運用コンセプトを提案し、中露が米国に学んだように、米国が彼らに学ばなければならないとも述べている

米国のIAMD分野が革新的な思考を求めているのに、縦割りに分割されたレーダー覆域で、弾道ミサイル防衛にあまりにも絞った現状は、あまりにも脆弱で敵攻撃に弱い状況を生み出し、1990年代から指摘されている課題を放置したままである
●提言の一つである「distributed defense」では、現有または近未来の装備で新たなネットワーク枠組み構築に集中すべきと主張し、「全てのセンサー情報を融合して、すべての発射機で対処:any sensor, best shooter」との思想を打ち出している

●これにより既存装備を結び付けて対処範囲を拡大し、それらをカバーする指揮統制システムと共に地域の指揮官に提供し、地域情勢にあった柔軟な運用を可能にすることが重要
●またレポートは、発射機を多様なミサイルが搭載可能(more interceptor-agnostic launchers)とし、「any shooter, any launcher」との表現で、柔軟な運用と多層的な防御網攻勢を可能にする必要性も提言している

CSIS IAMD2.jpg●更にレポートは、攻撃と防御ミサイル部隊の融合して同一舞台にすることを提言し、「any-launcher, any-mission capability」との表現で、攻防を柔軟に一体化するコンセプトも提言している
●また現有ミサイル部隊も新たな攻撃目標と任務に対応させ、低コストで多様な任務に柔軟に対応する方向を目指すべきとしている。併せて、カモフラージュの重要性を改めて指摘し、また分散配備により残存性を高める基本の重要性も指摘している

●レポートはこれら複数の提言により、「より打たれ強く、モジュラー性も持ち、攻防部隊の融合」を追及するものとなっている
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CSISの関連webページ
https://missilethreat.csis.org/distributed-defense-new-operational-concepts-air-missile-defense/

米国が危機感を覚えるなら、中露により近接する日本は、「真っ青」になって「昼夜も分かたず対策に奔走」「皆で激論」「試行錯誤にまず一歩」・・・・なんだと思うのですが、そうではありません。

THAAD2.jpg相変わらず脆弱で有事に役立ちそうもない戦闘機への投資ばかりが議論され、IAMDなど言葉だけが踊っているのが日本の現状です。
最も深刻なのが「戦闘機パイロットが支配する中で、戦闘機以外で事業を進めようとすると、途方もない労力を要する」とあきらめムードが他職域にあることです。日本はどうするんでしょうか・・

米軍内では、陸軍と空軍の連携協議や演習が具体化しているようですが、日本では・・・シェア争いに血眼なんでしょうねぇ・・・・

米海軍NIFC-CAと関連装備
「日本もNIFC-CAに参加?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-11
「Baseline 9 :イージス艦の進歩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09
「米海軍のNIFC-CAとは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26

「kill chainからkill webへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-15
「SM-6でBMD対処に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-05
「NIFC-CAとSM-6連携」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27
「NIFC-CAで空軍と協力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-23

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トランプに打撃?米加航空機貿易戦争は加に軍配 [安全保障全般]

C series.jpg26日、米国の貿易問題を裁定する独立機関ITC(International Trade Commission)が、カナダの航空機製造企業をダンピングで訴えていたボーイングの申し立てを満場一致で「却下」し、併せてボーイングを支持してダンピング課税292%を命じた米商務省決定の執行停止を命じました

本件は、カナダの航空機企業Bombardierが政府補助金を受け、不当な低価格で米デルタ航空に中型旅客機CS100を75機売却したとボーイングが訴えたものですが、ボーイングがCS100クラスの旅客機を販売しておらず競合関係にないことから、トランプ大統領の保護主義姿勢を示す典型的事例として話題になっていた案件です。

また、当該カナダ機が英国内(アイルランド)の工場で製造されていたことから、英国首相も米国に課徴金見直しを働きかけるなど、トランプ保護主義の象徴として国際的な反対運動に繋がり、欧州企業エアバス社がBombardier社のCS100部門を配下に置き、エアバス社の米国内工場で製造して課徴金を免れる「ウルトラC」対抗策まで打ち出していました

Bombardier-C.jpg更にボーイングの訴えを契機に、ボーイング製FA-18購入を検討していたカナダ政府が検討見直しを公言し、中古のFA-18を豪州かの購入を検討すると打ち上げ、一枚岩の同盟関係だった米カナダ関係の泥沼化を招いていました
そんなこんな中で、ITCによる「4-0」満場一致裁定ですので、興味本位でご紹介しておきます

26日付Defense-News記事によれば
●26日のITC裁定を受け、Bombardier社は直ちに、「法治制度、競争、革新における勝利である」とのコメントを発表した。
●CS100機購入を予定していたデルタ航空も、「ITCの裁定を喜びを持って受け止めている。この裁定は、米航空会社と米国民による素晴らしいCS100旅客機へのアクセスを妨げようとした、ボーイングの反競争主義を拒絶したものである」とコメントを出している

Bombardier-C2.jpg●一方のボーイング社は、「落胆している」とし、「不正な補助金とダンピング価格」から受ける被害を今後とも取りまとめていくと声明を出した
●ただし約150名乗りのCS100旅客機の競合機種をボーイング社は製造しておらず、何の影響も受けないはずだとデルタ航空は主張している

●ちなみに昨年10月、Bombardier社はCS100シリーズ計画の株式をエアバス社に提供し、関連本部機能はモントリオールに残しながら、第2の製造ラインをアラバマ州モービルにあるエアバス社の工場に設置する(これで米国内生産にして課徴金を逃れる)事にしていた
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トランプ大統領就任後、米カナダ関係はNAFTA(北米貿易協定)や木材輸入を巡って悪化し、旅客機ダンピング認定問題が「火に油」だったのですが、先日のダボス会議におけるTPP復帰を示唆するトランプ発言以降、バノン氏がホワイトハウスを出てから風向きの変化が・・・との見方もあります

FA-18&F-35.jpgITCによる裁定が最終決定なのか、まだまだボーイングが粘って泥沼が続くのか不明で、カナダのFA-18購入もどうなるのか関連も不明ですが、トランプ保護主義の今後も含め興味深いところです

FA-18に関しては、F-35に対する疑念から「時間稼ぎのために」購入検討を開始した経緯がありますので、F-35の泥沼がある限りどうしようもありませんが・・・

米国とカナダの航空戦争
「カナダが中古の豪州FA-18購入へ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-10
「米加の航空機貿易戦争に英が参戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-16-1
「第2弾:米カナダ防衛貿易戦争」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-04
「5月18日が開戦日!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20
「痛快:カナダがF-35購入5年延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-23

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米空軍:下士官パイロット拡大に向けた動き [米空軍]

RQ-4 Pilot.jpg現在、約2000名のパイロットが不足し、その流出が止まらない米空軍は、昨年から約70年ぶりに下士官の操縦者要請を開始し、攻撃能力を持たない無人偵察機RQ-4のパイロットにしようと訓練を行っていますが、そんな中で2年目を迎える下士官パイロット要員選抜と、更なる下士官操縦者拡大を目指す動きについてご紹介します

米空軍の操縦者不足は、十数年にわたって継続する実戦への繰り返し派遣への疲れ、また旺盛な民間パイロット需要(軍に比し楽で高収入)を受け軍人パイロットの流出が止まらないことが大きな原因です

米空軍は対応策として、給与ボーナスの増額、司令部業務の免除など、様々な優遇策で操縦者の引き留めを図っていますが、流出に歯止めがかかったとの話は聞いたことがありません

そうとなれば、士官クラスに限定してきた有人機パイロットを下士官に拡大したくなるのは自然の流れで、実際多数の操縦者を必要としたWW2時代は、米国も日本も他の欧州諸国も、下士官操縦者が活躍していたわけです

後はプライドが高い現在の士官操縦者の考え方をいかに変え、下士官有人機操縦者を受け入れる判断をするかですが、その日に向けた動きは着実に進んでいるように見えます

下士官操縦者選抜:2年目の動き
RQ-4 Misawa3.jpg●1月15日の週、テキサス州の基地で、2回目を迎える下士官操縦者候補要員の選抜会議が開催される
●米空軍教育訓練コマンドは、これまでに134名の下士官の操縦者志願者から申請書を受け取っており、この中から操縦者養成コースに入ることが出来る40名を選抜する

●2月末までには40名の選抜者が人事ルートで所属部隊等に通知される予定だが、2019年の下士官操縦者募集は今年4月から開始される
●この選抜プロセスを担当する中佐は、応募者を様々な視点から分析するとともに、昨年から始まっている下士官操縦者コースの状況も参考にして選抜に生かしたいと語っている

操縦者教育の短縮と下士官受け入れ拡大検討
airman.jpg●米空軍教育訓練コマンドは、最新の技術を活用し、操縦者教育における学習効率を向上させ、養成コースの短縮につなげられないか検討を開始する
●そしてこの検討は、下士官のデータを活用して行われる

●この検討を成功させるため、担当者は異なる教育的背景を持つ多様な下士官グループのデータを活用して行われ、基礎課程を修了したばかりの下士官の中から操縦者に適した候補者を選抜する基準作成に活用する
●そこでは、そのような資質や心理特性が操縦教育コースでの成功につながるかを見極める
現時点で米空軍は、下士官操縦者を友人機に拡大することを検討していないが、将来の可能性はある
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このように、下士官の有人機パイロット誕生に向け、少しづつ、着実に、心理的壁を取り除く布石を打っている・・・ということでしょう。

USAF pilot.jpg車の運転技術がそうであるように、ある程度のレベルの人間であれば、士官でも下士官でも、適正のある人間を選抜すれば、操縦者として任務を果たす事は十分可能です。

いつ米空軍が正式に下士官有人機操縦者を受け入れるか、その時、他の同盟国等はどうするのか・・・実に興味深い人間観察の機会です

米空軍のパイロット不足
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10
「世も末:幕僚勤務無し管理検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-20

「トップが操縦者不足と軽攻撃機を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-17
「18年ぶり飛行手当増額」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-28
「戦闘機パイロット2割不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-22
「航空業界は今後20年人手不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29

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米空軍省の次期調達担当次官:F-35維持費を懸念 [亡国のF-35]

次期空軍調達担当次官:F-35の維持が最大の懸念

Roper5.jpg18日、次の米空軍省の調達担当次官候補であるWilliam Roper氏が、上院軍事委員会の承認を得るため同委員会で質疑応答に登場し、同氏が同次官職に就任した場合の一番の懸念事項がF-35の維持計画とその経費だと証言し、同次官に就任したらまず再確認したいと語りました

William Roper氏の名前に覚えがある方は相当の「通」だと思いますが、国防省の鳴り物入り組織である(あった?)「戦略能力緊急造成室:Strategic Capabilities Office」の初代室長を現在務めている人物です。

このSCOは鈍重な国防省官僚組織の調達システムをすっ飛ばし、最新の技術を生かした装備品を迅速に実現して前線に投入する特別組織で、カーター前国防長官の肝いりで発足した組織です。
Roper44.jpgつまりRoper氏は、国防省調達の問題点を知り尽くした人物というわけです。

国防長官直属のSCO室長として、同じ国防長官直属であるF-35計画室の状況は「反面教師」として自然と耳にしてきたと考えられますが、そんな中でのF-35維持体制と維持経費への問題意識です。是非拝聴しておきましょう。

19日付米空軍協会web記事によれば
●18日、上院軍事委員会に次の米空軍調達担当次官候補として証言に臨んだWilliam Roper氏は、もし承認されたら、米国防省最大の購入装備品であるF-35とB-21爆撃機について、その計画と維持計画を詳細に吟味する必要があると所信を述べた
●そしてWilliam Roper氏は、最大の懸念事項はF-35の維持コストであり、仮に米空軍が維持コストを管理できずに低下させられなかったら、押し寄せる維持コストの荒波に次ぐ次と襲われ、米空軍保有の装備体系をも脅かしかねず、最終的にはF-35を計画調達数を下げなえればならなくなると述べた

Roper2.jpgまたB-21爆撃機についてRoper氏は、まず必要機体数について再検証したいと語り、昨年末に発表された国家防衛戦略NDSや2月に発表予定の核態勢見直しNPRを踏まえた精査が必要だと語った
●そして上記2つの戦略文書を踏まえ、米空軍は爆撃機戦力全体の構成を再検討すべきだと語り、現在3機種(B-1、B-2、B-52)で175機保有している体制の将来像検討が必要だと主張した

●ちなみに、米空軍の元情報部長で退役中将のDave Deptula氏(ミッチェル研究所長)は、120機のB-21爆撃機を含め、爆撃機全体は282機必要だと主張している ●Roper氏は調達担当次官の業務の進め方として、「human-driven」アプローチを提唱し、組織の前線レベルや下層レベルに決定権限を委譲し、プロトタイプによる検証を求めていくと語った。しかし同時に、特定の装備品調達には従来のやり方が必要だとも語った

おまけ:米国防省がベルギーへのF-35輸出承認 (まだベルギーが購入を決定もしていないのに・・・)
F-16 Belgium.jpg●19日、米国務省はベルギーに対し、34機のF-35A型を約7500億円で売却することを承認すると発表した。ただしベルギー政府は正式にF-35購入を決定していない
相手国が購入を決定していないのに輸出を承認するのは極めて異例だが、最近ではカナダへの18機のFA-18輸出を、カナダが決定すする前に承認している。ただ、カナダのケースでは、貿易紛争からカナダ側が米国の輸出承認を無視する姿勢を見せている

ベルギーは54機保有するF-16戦闘機の後継機を検討しており、F-35のほかにも仏のRafaleや、Eurofighter Typhoonを候補機として検討が行われている
●しかし、既にグリペンやボーイングはこのレースから撤退を表明しており、業界関係者の中には「実質上F-35で決定している」と語る者もいる
●欧州のF-16保有国は相次いでF-35を後継機にする決定を行っており、既にオランダ、デンマーク、ノルウェーが決めており、ベルギーが採用を決めれば4か国目となる
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無人機の群れ活用を強く主張し、SCO室長として精力的に動き回ってきたWilliam Roper氏に期待いたしましょう

F-35 fix.jpgなお同氏は無人機の群れに関し、米空軍が極めて消極的であると強く批判していたことを紹介しておきます

近く、三沢基地に航空自衛隊のF-35が到着し、部隊建設が本格化するようですが、ため息の出るような労力と人材が投入されるのでしょう・・・戦術で勝っても戦略で負けることが見えているのに・・・

William Roper氏の関連記事
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26 
「国防省幹部:空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30
「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1

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陸空の無人機の群れを都市戦で活用研究 [Joint・統合参謀本部]

swarm autono.jpg8日付Defense-Newsは、米国防省最上位の研究機関であるDARPAが無人機の群れ研究において、きわめて複雑な都市戦を念頭に空中と地上の無人機両方を組み合わせて活用するプロジェクトを研究の焦点の一つにして推進していると報じています

無人機の群れについては、2016年春頃に行われたFA-18から103機の無人機を投下し、群れとして制御する実験をエポックメイキングな実験としてご紹介しましたが、中国も昨年6月に地上発進の無人機119機で「群れ制御」に成功したようで、本分野での米中の技術争いが過熱しているようです

「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1

なんといっても「無人機の群れ攻撃」への対処法が確立されていないことから、米中は陸海空の全ドメインで技術優位を目指しているようです
本記事が紹介する技術開発は、陸軍の歩兵部隊が、約250台の多様な自立型無人装置を活用し、複雑な都市戦を有利に進めることを狙いとしています

8日付Defense-News記事によれば
swarm autono2.jpg2017年末にDARPAが発表したプロジェクトは、レイセオンと Northrop Grummanが中核となり、多様な競い合う参画者が無人機の群れ技術の設計デザインを競い合う環境を提供し、オープンアーキテクチャー環境でバーチャルと現実の無人機の群れ技術を発展させることを狙っている
●中核企業と参画企業は群れ技術を実現するために大きな枠組みの実験を行い、競い合う参画企業は大きな枠組みの中で、以下の5つの分野の一つに集中して取り組むことになる。5つの分野は「swarm tactics, swarm autonomy, human-swarm teaming, virtual environment and physical testbed」である

5つの分野は半年単位で集中期間が指定され、それぞれの分野の最後には試験と技術融合のアセスメントが行われる。また時には、半年単位のインターバルとは別に、特定分野への集中期間が設けられることもある
Roper2.jpg●例えば最初の半年集中期間には、「市街地2ブロックを15-30分間孤立させる」事を目標として、約50の地上と空中無人機を群れとして使用する戦術を昨年11月までの期間で集中検討している。

●本検討は、無人機がエリアを偵察し、進入退出ポイントを見極め、エリアを認識することから始まる。そしてその過程で、無人機に都市空間を以下に認識させ、何ができるかを検証することになる
●DARPAの研究担当責任者は、この集中検証を定期的に繰り返すことで、また小さなベンチャー企業でも解決法を案出できる企業を歓迎することで、革新的な解法を探求していく姿勢を強調している
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昨年6月に中国で119機の「群れ」実験を行ったのは、「China Electronics Technology」との国営企業のようですが、サイバー攻撃部署も社内に保有しているような企業かもしれません

Swarm Chall2.jpgいや・・・米国の先端企業に潤沢な資金を投入し、赤入りに染めているのかもしれません

先日は「巡航ミサイル」を「群れ」で運用する研究開発契約の話をご紹介しましたが、あらゆる分野で「群れ」が流行りのようです。

無人兵器・&装備の群れ関連
「群れ巡航ミサイル開発へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-02
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26 
「3軍の士官学校が群れ対決」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-26

「国防省幹部:空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30
「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1
「無人艇の群れで港湾防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-19
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10

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国家防衛戦略:対テロから中露対処へ [マティス長官]

公表部分は11ページ足らずですが・・・

NDS.jpg19日、マティス国防長官が国家防衛戦略(NDS:National Defense Strategy)を発表しました。
12月19日に発表された国家安全保障戦略NSSを受け、NSSを遂行するための米国防省としての戦略を語るのがこのNDSであり、統合参謀本部議長がNDSを受け、軍事面での展開を示すのがNMS(国家軍事戦略)で、NMSは今年後半に公表が予期されています

非公開部分を含めて約50ページで全体の分量が大幅に縮小された模様で、少なくとも公開部分には具体的な数値目標はなく、全体としても「まず戦略」の姿勢で作成されたようですが、強制削減法案下で政府機関閉鎖が話題の米国で、具合的な姿を数字で示せない現実が背景にあるとも言われています

「対テロから中露対処へ」、「アジア、欧州、中東を重視」「同盟国等の育成、破壊力強化、国防省の業務要領改革を重視」等々が打ち出されているようですが、背景には「過去の教訓を踏まえ、厳しい選択を行いつつ、生存のために必要な投資を行う」と国防長官が表現する予算制約が重い縛りのNDSとなっているようです

全文を見てはいませんが、コンパクトにまとまっているDefense-News記事でNDSの概要をご紹介します

19日付Defense-News記事によれば
NDSM.jpg●19日にJohns Hopkins大学でマティス長官はNDSの発表会見を行い、 世界における米国の軍事的位置づけを「曇りのない目で評価したものだ」とNDSを表現した。
●そして、「過去の教訓を踏まえ、米国が生存のためになしうることを、厳しい選択をして絞り込むことをもとめる文書である」と語った

●NDS発表に先立ち、Elbridge Colby戦略担当国防次官補代理は、「中心的な国防省の課題は、中露に対しての軍事的優位性が失われつつあること」、「ただし対立のための戦略ではなく、現実を認識し備えるための戦略だ」と語っている
●また「決して対テロから離れるわけではなく、対テロは長いスパンで対応すべき課題である。また費用対効果が重要だとの共通認識が必要だ」と説明した

●マティス長官が打ち出したNDSは、3つの重視事項「同盟国等の育成、破壊力強化、国防省の業務要領改革を重視」を打ち出し、鍵となる地域を「アジア、欧州、中東」の3つと打ち出している。
●当然Colby次官補代理は、アフリカや南米を見捨てるわけではないと事前説明していたが、現実として最も必要としている地域に資源を重点投入することになると語っている。

最善でも暫定予算CR、最悪は政府機関閉鎖の危機の中
NDS3.jpgNDS発表の同日、議会は政府機関閉鎖を回避するため、土壇場の議論が行われていた。それでも、期待できる最善対応でも昨年ベースの暫定予算CR確保で、最悪は政府機関閉鎖の危機である
●こんな予算状況の中でのNDSについてCSISのTodd Harrison研究員は、「資源の裏付がない戦略など実行不可能な戦略だ」と切り捨て、「多くの文字を並べ、全く具体的数字を含まず、何がどれだけできるのかも不明確で、コストにも触れない、疑問が疑問を呼ぶものだ」と厳しく評価している

●一方で同盟国等への要求は増しており、NDSは「共通の防衛責任をシェアするため資源をプールする」よう求めている。
●最近国防省幹部が、同盟国に対して装備品を迅速に提供できるようにとか、優先順位をつけて迅速な事務手続きで米国製品を輸出し、同盟国等の早期軍備近代化に加速しようとも合致している

技術革新や装備導入の迅速化
NDS2.jpg国防省の業務要領改革や、最新技術を前線兵士に迅速に提供する取り組みもNDSに含まれている。
●このため国防長官は、従来のように飛躍的画期的な新装備を長時間かけ高価格で許容する仕組みから脱却し、優先順位をつけ迅速に提供し、頻繁で継続的に能力向上で最新技術を取り込む達への変革を掲げている

●装備品開発の設計段階で、価格と性能のトレードオフを吟味し、前線と情報機関の最新情報を調達過程に生かし、新たな企業参入を歓迎し、プロトタイプや実験で要求性能を洗練し、費用対効果に優れた市販品を活用することも追及するとしている
●また国際的な協力関係を装備開発や投資に生かし、米国製ばかりを売り込むと不満を持っている関係国も協力関係に招き入れる。
技術的な焦点としては、「抗たん性残存性がある強固なネットワーク」、「中央集中型のインフラや弾薬保管ではなく、小型分散強固な兵站システム」、「人工知能への投資」などがうたわれている
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NDS3.jpg非公開部分に何が書かれているのか気になりますが、恐らく具体的な装備数や数値目標ではなく、日本にはこれを要求するとか、この任務は日本に圧力をかけて引き受けさせるとか、外交上の機微な情報も書かれているような気がします

予算的な見通しが全く立たない(夢が描けない)中、米国の負担を各国に振りまくことが唯一の具体的な目標設定になりそうですから・・・

NDSの原文
https://news.usni.org/2018/01/19/2018-department-defense-national-defense-strategy

NDSの上位戦略となるNSS
「国家安全保障政策を概観」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23-1  

NDSの下位戦略となる
「リーク版NPR」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13 
「露が長射程核魚雷」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13-1

NMS関連記事
「見込み2016年NMS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06
「2015年版の国家軍事戦略発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-02
(何と2011年以来4年ぶりの発表)



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空自がついに発狂か?外圧か?現状維持策か? [安全保障全般]

空自が戦闘機部隊増強を持ち出しへ!?

F-35B-2.jpg21日付産経新聞は、防衛省が航空自衛隊が保有する戦闘機部隊を、平成25年「防衛計画の大綱」レベルから1個増強し、14個飛行隊とする検討に入ったと報じています。

そして増強する1個の飛行隊は、垂直離着陸型F-35であるF-35Bを新たに導入する部隊で、宮崎県の新田原基地への配備が有力視されていると紹介しています。
なお航空自衛隊が既に導入を決定し、間もなく三沢基地に初号機が到着するF-35は通常離着陸のA型で、B型は米海兵隊が導入を開始して岩国基地にも配備が始まっているタイプです

この戦闘機部隊増強計画は、平成25年「防衛計画の大綱」の年内見直しの焦点の一つだと記事は述べ、中国軍航空機の活動活発化やパイロットの訓練時間確保を戦闘機部隊増強の理由に防衛省は上げているとしています

どこまで記事が本当か不明ですが、ため息が出ます・・・。狭い日本に脆弱な戦闘機を増やしてどうするのでしょうか? 何を考えているのでしょうか航空自衛隊は・・・

まず21日付産経新聞記事の紹介から
JASDF FI.jpg●航空自衛隊は平成25年に策定した防衛計画の大綱で、戦闘機部隊を現行の12から13に増やすことを打ち出した。
●空自が導入を決めている空軍仕様のF35Aを42機調達し、F2戦闘機の飛行隊を1個だけの三沢基地(青森県)にF35Aの2個飛行隊を配備することで1個部隊を増強し、現在の12飛行隊から13個にする計画が既に決まている

●ただ、この計画のままでは、全国7カ所の戦闘機部隊拠点のうち、新田原基地だけがF15飛行隊を1個しかない態勢が続く。
●戦闘機部隊は対領空侵犯措置(緊急発進=スクランブル)の任務にあたりつつ、訓練時間を設けてパイロットの技能を向上させることが不可欠だが、拠点基地に置く飛行隊が1つだけだと訓練時間を捻出しにくい弊害がある。

新田原基地に2つ目の飛行隊を置く場合、空自が新たに導入を検討するF35Bの配備を視野に入れる。
F35Bは短距離の滑走で離陸し、垂直着陸も可能なため短い滑走路での運用に適している。新田原基地に配備すれば中国による南西方面の離島侵攻に迅速に対応でき、滑走路の短い離島の民間空港を拠点に運用できるほか、平時の警戒監視にも活用しやすい。

防衛省は海自最大のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」をF35Bの離着艦可能な「空母」に改修することも検討している。いずもが新田原基地から飛来するF35Bを搭載して東シナ海に展開し、離着艦訓練を行えば中国への抑止力と対処力の一層の強化につながる。

米空軍の西太平洋での動きを確認
●米国防省高官が昨年10月、一箇所に戦闘機を集中配備する現状から、第5世代戦闘機を分散して運用する新コンセプトACE(Agile Combat Employment)を西太平洋で進めていると記者団に語り、
O'SHAUGHNESSY2.jpg●「在日本の米軍最新戦闘機は、(有事に)地域の島々の10-15の未整備な緊急展開基地に分散させる」、「このコンセプトでは、分散した不便な展開場所でも最新戦闘機が作戦可能なように、迅速に兵たん支援も分散支援体制を整える必要がある」、「米空軍は最近のArctic Ace演習などで、燃料の緊急配分訓練をすでに開始している」と説明

●また昨年12月には太平洋空軍司令官も、戦力を分散して柔軟性と強靭性を確保するACEコンセプトに言及し、従来の巨大基地が敵攻撃に対して脆弱だと背景を語っていたところです
●またその背景を同司令官は、、「太平洋空軍の作戦環境は信じられないペースで困難さを増している」と語り、米側が想定していたよりも遥かに速いペースで周辺国の軍事力強化が進んでいると危機感をあらわに語っていたところです
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F-35 luke AFB.jpg米軍は、第一列島線上の航空基地など有事に敵攻撃により一瞬のうちに機能を喪失するから、膨大で複雑な地上インフラに依存する戦闘機の運用など不可能だと判断し、グアム周辺のサイパンやテニアン、豪州北部の基地などを含めた航空戦力分散を前提としています

そして分散した航空戦力への燃料支援や整備力支援の態勢をどうするかを検討し、演習を通じて確認を進めています。完全には不可能でも少しでも何かしなければの姿勢で・・・

日本が今更戦闘機を増加することは、税金の無駄遣いと申しあげておきましょう戦わずして、飛び上がる前に戦力として去勢されてしまうのが落ちでしょう。今まだ散々訴えてきたのですが、こんな方向に進むのでしょうか?

china DF-15B.jpg対領空侵犯措置(緊急発進=スクランブル)など、既に中国やロシアに足元を見られており、何の効果もないと申し上げても過言ではないでしょう空自パイロットが飛行手当を維持するための「お手盛り」とも言えましょうか・・・
4世代機レベルの低価格なお手頃戦闘機で形だけやればよいでしょう。5世代機を導入しても、有事に役に立たなないでしょうから・・・

トランプ政権による「米国製装備買え圧力」もあるのでしょう・・・でも米国装備を買うのなら、日本の脆弱な軍事環境を踏まえ、非対称能力強化や泥くさい戦術に役立つ投資に向かうべきです。戦闘機投資は愚の骨頂です

逆にもしかして、防衛省内でも心ある官僚が戦闘機の無駄を指摘し始めたため、空自の戦闘機命派が13飛行隊体制維持を「落としどころ」に見据え、とりあえず14個飛行隊を打ち出したとの深読み邪推も提示しておきます

米空軍の西太平洋対策
「担当空軍司令官がACEを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「岩田元陸幕長の発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09 

関連の多様な記事
「広中雅之は対領空侵効果に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1
「小野田治も戦闘機に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05
「織田邦男の戦闘機命論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-06 

くたばれ戦闘機命派
「F-3開発の動きと日本への提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
「戦闘機の呪縛から脱せよ」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
「大局を見誤るな:J-20初公開に思う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02 

「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2

「ACC司令官も電子戦機を早期に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27
「20年ぶりエスコート電子戦機?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-20

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13

グアム島の抗たん化対策
「被害復旧部隊を沖縄から避難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-28-1
「テニアンをグアムの代替に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16-1
「グアム施設強化等の現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-1

「グアムの抗たん性強化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30-1
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1
「グアム基地を強固に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12

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画期的な軍事衛星用太陽光発電パネル [サイバーと宇宙]

IMM Solar.jpg3日付米空軍webサイトは、米空軍研究所AFRLを中心とした開発チームが衛星搭載の太陽光発電パネルの効率性・耐久性・軽量化・省スペースを画期的に向上させる技術IMM(Inverted Metamorphic Multi-Junction)を開発し、現在宇宙空間で試験中で、今年には衛星搭載の使用承認が得られるだろうと紹介しています

米空軍研究所が発信元の記事は極めて技術的な内容で、専門用語の理解がほとんどできないのですが、地上で広く使用されるシリコン製太陽光パネルのエネルギー交換比率が最大で25%程度のところ、IMM太陽光パネルは32%を達成し、従来の衛星用パネルよりも15%交換比率を向上させるとのことです

IMMの日本語訳は、「反転変性多接合太陽光パネル」との用語が当てられているようですが、AFRLを中心に2000年代中旬から研究が始まった技術の様です

3日付米空軍webサイト記事によれば
IMM Solar2.jpg●近年、衛星への搭載機器の高度化で使用電力が増えており、衛星の電力需要は増加の一方であることから、太陽光発電パネルの技術開発が期待されていた
●米空軍研究所AFRLは、米国防省関係機関や関連企業と協力し、軍用衛星用の低コストで効率性の良い多接合太陽光パネル(multi-junction cells)の開発を進めていた。ただ放射線の影響や温度変化の激しい宇宙空間で、耐久性を求める太陽光発電パネルの開発は容易ではなかった

従来比で15%も変換効率を向上させるIMMにより、空いた衛生の表面スペースに他の装置を搭載したり、増加した供給電力でより高度な装備を衛星に搭載可能となる
●地上で多く普及しているシリコン製の太陽光パネルとは異なり、層状になった多接合太陽光パネルは、層により異なった太陽光周波数を電気に変換する仕組みとなっており、より広帯域の太陽エネルギーを活用可能である

●今回開発されたIMMは、この多接合太陽光パネルの形成を「Inverted:反転変性」する点が画期的で、より効率的に軽量で柔軟性がある太陽光パネルを形成できる
●現在、56枚のIMM太陽光パネルがそれぞれ搭載された2個の箱型衛星が宇宙空間にあり、太陽光パネルの試験が行われており、「S-111基準」を今年中には取得できる模様である
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IMM Solar3.jpgこの技術が中国等に流出しないことを願うのですが、反対に日本にはぜひ開発に貢献してほしいものです

自然エネルギー開発には世界のマネーが流れ込んでおり、世界中がお世話になる宇宙アセットですから、官民の力を合わせ良いものを生み出したいものです

宇宙関連の記事
「米陸軍が安価な小型衛星で前線兵士支援へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-16
「下院が宇宙軍独立案を承認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-14-1
「宇宙コマンド太平洋域での課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-10-1

「副長官がJICSPOCを高評価」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
「衛星小型化は相殺戦略でも」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-01
「米空軍の宇宙姿勢を改革」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-19-1
「F-15から小型衛星発射試験へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-09

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冬季五輪に向け米軍戦力が極東へなびく [Joint・統合参謀本部]

PyeongChang.jpg2月9日開幕の平昌オリンピックに向け、同期間に例年行われていた米韓演習は中止されましたが、「弱みは見せないぞ」「ひるんでないぞ」の姿勢を見せるため、米軍が各種戦力の極東派遣に動き始めています

先週、B-2爆撃機がグアム島に飛来し、16日には史上2度目の米空軍大型爆撃機3機種が勢ぞろいし、垂直離着陸型F-35Bを搭載可能な海兵隊の強襲揚陸艦が佐世保に到着し、追加の空母が西太平洋に向け米本土を出航し、3隻目の派遣を北朝鮮がけん制するなど、立て続けにニュースが入ってきましたので整理したいと思います

追加で、戦闘機や偵察機や情報収集機もやってきそうな気がしますが、「モランボン楽団」が韓国にやってくれば、米軍戦力の話題が(少なくとも日本では)吹き飛んでしまいそうなので、早めにご紹介しておきます。

米空軍爆撃機の動き(17日付報道)
B-52 Guam4.jpg●現在、グアム島にローテーションで爆撃機を派遣するCBP(Continueous Bomber Presence)の枠組みでは、B-1爆撃機6機が1月末までの予定で展開しているが、この交代として6機のB-52爆撃機が約300名の兵士と共にグアム島に向かっていると、太平洋空軍が発表した
●これに先立ち、先週、B-2爆撃機3機が「抑止任務を支援するため」グアム島に展開している

16日太平洋空軍は、先行してグアム島に到着したB-52爆撃機の写真を公開し、既にグアムに所在していたB-2及びB-1爆撃機とあわせて、「史上2度目の爆撃機3機種そろい踏み」、「2016年8月以来初の3機種そろい踏み」との解説付きで配信した
●なお1月末でいったん帰国するB-1爆撃機だが、B-52がCBP任務を担当している間も、米韓日豪による演習参加のため、複数回にわたり朝鮮半島に飛来する予定である

米海軍と海兵隊の動き
USS Carl Vinson4.jpg●3日から4日にかけ、空母カールビンソン戦闘群がサンディエゴを出港し、「計画通りのいつもの作戦行動」のため西太平洋に向かった。これ艦艇群出航の数日後に、B-2爆撃機がグアム島に飛来した
●現在、西太平洋エリアには、横須賀を母港とする空母ロナルドレーガンが配備されているが、空母カールビンソンはこれに追加するものである。

●一方で北朝鮮は、米国が3隻目となる空母ステニスを西太平洋に派遣する計画を持っていると非難し、南北会談が行われている雰囲気に冷や水を浴びせるものだ威嚇している
●更に米海兵隊は14日、F-35Bを搭載可能に改修した強襲揚陸艦「USS Wasp」が佐世保に到着したと発表した。なお「USS Wasp」には30機以上のF-35Bが搭載可能で、現在岩国基地には12機のF-35Bが配備されている
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Korea-P.jpg最近、北朝鮮に負けないぐらいのインパクトで、日本国民の反面教師として、日本国民の団結を促す方向に貢献している韓国大統領ですが、ここは「モランボン楽団」との笑顔の記念写真まで極めて頂きたいものです

予算や兵員のやりくりが厳しい中でも、爆撃機3機種、空母3隻、F-35搭載の強襲揚陸艦などを西太平洋に派遣する米軍や米国関係者は、韓国をどのように眺めているのでしょうか・・・

まぁ・・・ホワイトハウスはいろんな火消しに忙しいとしても、国防省や米軍関係者の心情を察するに・・・部下をなだめるのに、部下に納得させるのに・・大変でしょうねぇ・・・

2016年8月に爆撃機3機種をグアムに史上初めてそろえた時は、写真付きだったのですが、今回は刺激を抑えてB-52の写真だけの様です。細かな配慮か・・・

「2016年8月の3機種勢ぞろい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-12

北朝鮮関連の記事
「NK弾道弾に対処する米国を露が誤解の恐怖」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-03
「北朝鮮は生物兵器を保有するのか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-16-1
「地上部隊侵攻しかない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-07

「グアムの弾薬10%増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-21
「米陸軍が対北朝鮮に緊急準備開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-12

「米軍事メディアが北朝鮮騒ぎを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-14
「グアムで住民に核攻撃対処要領」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-15
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リーク版NPRが露の大陸間核魚雷開発に言及 [安全保障全般]

露の射程11000㎞の核魚雷開発を公式?に初言及

STATUS-6 5.jpg先日ご紹介した、12日付Huffington Postによる核態勢見直しNPR案リーク記事ですが、トランプ政権下での大きな核戦略変更の背景の一つとして、ロシアが長射程核弾頭搭載魚雷を開発しているとの情報も掲載しているようです

ロシアによる核魚雷開発は、2015年11月に、ロシアの国営放送がロシア国防省での会議映像を放映した際、偶然映り込んでいた一枚の資料を英国BBC放送が発見し、軍事関係者の間で大きな話題となり、「東京の郊外より」でも取り上げました。意図的なリークだったのではとの見方も多くありました

「露が戦略核魚雷開発?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-06

2015年12月の記事概要は
2015年11月ロシア国営放送で、誤って戦略核魚雷(Status-6 or Kanyon)の概要資料を放映してしまったと見せかけ、同魚雷の存在を世界に意図的にリークした
●リークされた「Status-6」資料の画像によると、戦略核魚雷は長さ約25mの原子炉推進魚雷で、射程距離は数千マイル、100メガトンの弾頭が搭載可能

Status-6.jpg●同核魚雷の「概要資料」の中身を英国BBCは、「沿岸地域に存在する敵の政経中枢を破壊し、放射性物質によって広大なエリアを確実に壊滅的打撃を与え、敵国の軍事や政経活動を長期間にわたって不可能にする」と翻訳して紹介している
●戦略核魚雷のリーク資料は、昨年明らかになったロシアのSevmash造船所で建造されていた謎の潜水艦「Project 09851 nuclear submarine Khabarovsk」の「謎」を解明するのではと考えられている

●海軍専門家のH I Sutton氏によれば、謎の潜水艦「Project 09851」はボレイ級戦略原潜に似ているが、全長が短く戦略ミサイル発射管が無い。Sutton氏は、この潜水艦は戦略核魚雷6発を搭載するのではないかと考えている

リーク版NPRはこの核魚雷について
(12日付Defense-News記事によれば)
●「ロシアは従来の核兵器3本柱の近代化に加え、新たな核兵器の開発と発射母体の開発に取り組んでいる」、「ロシアは少なくとも2種類のICBM、超超音速飛翔体、そして核弾頭搭載魚雷の開発に取り組んでいる」とリーク版NPRは記載している
●そして同NPRは、「Status-6」との名称でロシアが開発している「AUV:autonomous underwater vehicle」を紹介している。また国防省では「Kanyon」とのニックネームと、公式名称「Ocean Multipurpose System Status-6」で呼んでいる

Status-64.jpg●過去に1回、2016年11月27日、米国の情報機関は試験用潜水艦として2007年に出現した「Sarov級潜水艦」から、「Status-6」が発射される試験を確認した。同試験は国防省筋の話として同年12月に報道された
●「Status-6」はロシア最大の潜水艦製造企業「Rubin Design Bureau」によって製造され、ロシアTV報道によれば、射程6200nm(約11200㎞)、最大速度56ノット、最大深度3280フィート(約1000m)である
●また「Status-6」は、4発搭載可能な「オスカー級」潜水艦を含め、2種類の潜水艦から発射可能だと考えられている

●最終的なNPRが「Status-6」を記載するかは不明だが、米国として公式に「Status-6」の存在を認めたと考えられる
●リーク版NPRは、ロシアが新START条約に違反することなく、通常弾頭と核弾頭の両方を搭載可能な運搬アセットを増強していると分析しており、地上発射の巡航ミサイル、多様な原子力潜水艦、ICBMや空中発射巡航ミサイルがこれらに該当する

●そしてリーク版NPRは、ロシアが多様な核戦力を増強していることと、核攻撃を紛争鎮圧の手段としてモスクワがとらえていることを懸念しており、誤解やエスカレーションにつながることを懸念している
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Status-63.jpg恐ろしいものが完成しつつあるような気がします。
ちょっと気になるのは、水中だと、途中で攻撃を中止させたり、方向転換させたりする指示信号が魚雷に届けることが可能かどうか・・・

本当に射程10000㎞で使用する場合、発射から目標到達までに最低4~5日間必要な気がしますが、どのような運用が想定されているのでしょうか?
いろいろ気になります・・・

「露が戦略核魚雷開発?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-06

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ロシア軍基地@シリアを無人機の群れが襲撃 [安全保障全般]

これは実に興味深いミステリー・・・

DroneRussia.jpg11日付各種報道が、最近ロシア軍が拠点としているシリア国内の基地に対し、所属不明の無人機による攻撃が連続して発生しており、ロシア国営メディアが米国やトルコの関与を疑う報道を行っていると伝えています

1月5日の夜には、13機もの爆発物を搭載した無人機の群れが、ロシアが使用するシリア北西部の空軍基地を襲撃する事態まで発生しており、緊張が高まっているようです

米露の軍トップが直接電話会議をして緊張緩和を図り、米側は関与を否定していますが、無人機飛来の方向で米軍偵察機が活動していたとか、トルコ軍活動地域の方向から無人機が飛んできたとか、噂が乱れ飛んでおり、正確なところは不明です

上の写真は、シリア内ロシア空軍基地攻撃に使用された無人機を、11日にロシア国防省がモスクワで報道陣に公開したものですが、手作り感いっぱいの印象です
兵器技術の拡散を強く印象付ける「謎の事案」ですので、とりあえずご紹介しておきます

11日付Military.com記事によれば
Khmeimim.jpgロシア国防省は8日、露空軍が使用しているシリア北西部の「Khmeimim(またはHmeimim)空軍基地」に対し、最近連続して小型爆弾搭載の無人機による攻撃があり、少なくとも1回は「群れ」による攻撃だったと発表した
●また、ロシア海軍が使用しているシリアの「Tartus港」も無人機の対象となったと明らかにした

●同群れ攻撃について、「無人機の群れは50㎞以上離れた場所から発進し、GPS誘導装置により制御されていた。テロリストの仕業だ」とロシア国防省は発表した
●10日に同国防省は、無人機は空軍基地北の「Idlib県」から発進し、同地域は反アサド政権を掲げる武装勢力の活動地域だとも説明している

●一方でロシア国防省は、直接的に非難しなかったが、無人機による攻撃があった時刻に、米海軍哨戒機P-8が周辺を飛行していた「奇妙な偶然」も指摘している。更ににロシア側は、無人機飛来した方向で、トルコ軍が活動していたとも指摘し、「トルコ政府は敵対行動の中止を順守する必要がある」と述べている
●同国防省は、「群れ」による攻撃は1月5日夜にあり、計13機による群れの7機を撃墜し、3機を「電子的に」無効化したと発表し、残りは基地内に落下したが被害はなかったと述べた

米軍の反応は・・・
Khmeimim2.jpg●米統合参謀本部のMcKenzie海兵隊中将は、11日にダンフォード統合参謀本部議長とロシア軍参謀総長が電話会談を行ったと明らかにした。
●電話内容の細部には言及せず、ロシア国防省が本件に関し米国の関与を疑っているとの見解を明らかにした後の最初の電話会談で、「率直に丁寧に双方が意見交換した」と紹介するにとどまった
●しかし同中将は、「これだけは明確にしておくが、本件に米国は一切関与していない。ロシア国防省の懸念は全くの誤りだ」とはっきり語った
///////////////////////////////////////////////////////////////

ロシア軍基地を攻撃する「肝の据わった猛者」の出現に拍手喝采したい心境ではありますが、無人機の群れ攻撃技術が拡散していることには恐怖を感じます

年末には同空軍基地に迫撃砲が撃ち込まれ、ロシア兵士2名が死亡する事件もあったようです

ISISの勢力は急激に衰えているようですが、残党が破れかぶれで行った攻撃だと想像する事も出来ましょう。それにしてもロシアをターゲットのするとは・・・背景が知りたい・・・

無人機の群れ関連記事
「米空軍が群れ巡航ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-02
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26 
「3軍の士官学校が群れ対決」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-26
「国防省幹部:空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30

「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1
「無人艇の群れで港湾防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-19
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10

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リーク版NPR核態勢見直しが示す新方針 [安全保障全般]

NPR.jpg12日、2月に公式発表が予定されている米国防省の「核態勢見直し:NPRNuclear Posture Review」報告書がリークされ、Huffington Postのwebサイトに掲載されました。

国防省は、リーク版が作成途上にあるNPRの一案であることを否定せず、「段階を踏んだ議論が行われており、多くの検討案が存在している」、「NPRはまだ完成しておらず、検討中の案についてあれこれ外部と議論する習慣はない」、「国防長官や大統領の了解を得て初めて完成するものだ」とコメントしています

トランプ大統領は大統領選挙期間から、米国の核戦力を少なすぎると主張して規模と能力両方の増強を主張していますが、マティス国防長官ら軍幹部はこのNPRで総合的に検討すると慎重な姿勢を示していたところでした

もちろんあくまでも「案」であり、2月の正式発表で変わる必要もあるのですが、「本当のリーク」か、「世間の反応を見るリーク」か不明ながら、注目すべき新方針が打ち出されていますので、識者のコメント共に簡単にご紹介します

12日付Defense-News記事によれば
NPR2.jpg●12日付のHuffington Postに掲載されたリーク版NPRが、核兵器の3本柱維持を打ち出していることに驚きはないが、いくつかの点でトランプ大統領のこれまでの主張を反映した形跡が確認できる
小規模核弾頭(lower-yield nuclear weapons)の潜水艦への搭載を打ち出していることや、潜水艦に核搭載巡航ミサイルを再び搭載すること、更には核兵器の使用に関する米国のスタンス変化を示唆していることが新たな方向性として注目されている

●小規模核弾頭の導入は、現有の米国核弾頭の破壊力があまりにも大きすぎ、使用の敷居が高いことから、抑止力の点で疑問があるとの主張に対応したものである
破壊の範囲を限定できる小型核弾頭は使用の柔軟性があり、世界の破滅に直結する可能性がある大型核弾頭保有より抑止に有効だとの主張が背景にある
しかしこの小型核弾頭導入には根強い反対意見もあり、核兵器使用の「敷居を下げる」との懸念がその中核にある。また小規模な核弾頭使用を相手がどう受け止めるか予測が難しく、全面核戦争への導火線になるリスクが高まるとの懸念もある

●前回2020年のNPRの考え方を変え、潜水艦発射巡航ミサイルSLCMに核弾頭を搭載するアイディアには様々な方法がある。
●現有のトマホークを核搭載に改修する方法、検討中のトマホーク後継ミサイルの開発方針を変更する方法、全く新しいミサイルを開発する方法である。新型開発が最も高価だが、いずれの方法でも核搭載ミサイルを完成させるには多額の投資が必要である

政治的視点とコスト面の課題
GBSD2.jpg●リーク版NPRを政治的視点から見ると、最も注目すべきは、従来の「核兵器は敵の核攻撃に対する最終手段」との考え方を変え、「核兵器によらない重大な戦略的攻撃」に対する使用を示唆している点である
●これに対しする識者の反応は厳しく、「significant non-nuclear strategic attack」の定義が極めてあいまいで、意味を成しておらず、極めて危険な状況を生み出すと批判している
サイバー攻撃を受けた場合にも核兵器の使用可能性があるのか? 核兵器でサイバー攻撃が抑止できると考えているのか? このように核抑止の姿を拡大させることは、根本的な誤りであると主張している

●トランプ大統領が核軍拡を叫び始めてから継続している疑問がコストと予算の話で、リーク版NPRでもその疑問は解決されていない
●最近議会が警告の意を込めて公表した見積もりでは、リーク版NPR以前の国防省計画でも、実行するには今後30年間で約130兆円が必要となる。これは完全に実行不可能な額である
特に通常兵器大量更新時期を迎え、その更新さえも危ぶまれている中、新たに核兵器の新規開発を多量に組み込むことは不可能である。その点ではリーク版NPRは「プロパガンダの道具」に過ぎないし、このままでは2月発表予定のNPRも同類となる
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LRSO4.jpg小型核弾頭の導入や核兵器使用対象の拡大、更には「先制使用を否定しない」との表現もあるようで、トランプ大統領らしいところですが、上記の専門家の危惧を待つまでもなく、心配ですねぇ・・・

欧州や極東の「デカップリング」の危惧も再び話題になりそうな気もしますし・・・・うぅ・・・・ん。気になります。

日本では話題にもならないのかもしれませんが・・・・

Huffington Postのweb記事
https://www.huffingtonpost.com/entry/trump-nuclear-posture-review-2018_us_5a4d4773e4b06d1621bce4c5

NPR関連の記事 「国家安全保障戦略の発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23-1
「議会見積:今後30年で140兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02-1
「次期ICBMと核巡航ミサイルの企業選定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-27-1

「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1
「トランプ政権NPRの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09
「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07

21世紀の抑止概念を目指す
「3本柱はほんとに必要か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03

「相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25

戦術核兵器とF-35記事など
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ICBM後継に関する記事
「初のオーバーホールICBM基地」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-15
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1

オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

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米空軍情報部長が中露軍を語る [米空軍]

Jamieson2.jpg4日、米空軍情報部長(女性空軍中将)と作戦部長が米空軍協会で講演し、中国、ロシア、そして北朝鮮軍について米空軍としての視点で語りました。

中露が米空軍のイラクやシリア作戦から学び、ロシア軍はシリアを実戦的訓練場に位置付け、北朝鮮防空システムは米空軍が過去25年間戦った相手の中で最も手ごわいなどと言及しています

露やNK航空能力・防空能力を誇大評価しすぎのような気もしますが、確実に中露が米空軍レベルに追いついているという意識は共有しておきましょう

4日付米空軍協会web記事によれば
●4日、米空軍協会ミッチェル研究所で講演した米空軍情報部長VeraLinn Jamieson中将と作戦部長Chris Nowland中将は、ロシア軍と中国軍は、約30年間にわたり戦い続けている米軍作戦をよく観察して学んでいると語った
Jamieson.jpg●そして情報部長は「米空軍の航空優勢獲得維持能力は、以前ほど他を圧倒するレベルにはない」と表現し、過去のように航空優先を当然と考えて作戦可能な時代は終わりつつあると語った

●また情報部長は、ロシアは航空防衛に関し(air-to-air defense)で米空軍と肩を並べるレベルだと自身をみなしており、中国軍は米軍に約10年の遅れをとっていると認識してるとの分析を披露した
●そして、ロシア航空戦力によるシリアでの精密誘導兵器使用や、中露両軍による長距離航空戦力運用、更には空中指揮統制やISRや空中給油活動を例に挙げ、その能力進展を説明した

●このような中露の能力進展の背景には、「彼らが米軍によるイラクやシリアでの作戦を宝の山と見なし、米軍を観察してどん欲に学んでいる」ことがあると解説した
●そして中東作戦の枠を超え、より広範な宇宙アット配備やサイバーハッキング能力にも注力し、マルチドメイン能力を強化していると情報部長は説明し、特にサイバー作戦を作戦計画に組み込んでいると語った

SU-27.jpgロシアのシリアでの活動について情報部長は、精密誘導兵器を実戦で初使用し、作戦機搭乗員を全ロシア軍からローテーション展開させており、既に全搭乗員の85%がシリアで実戦を経験するに至っていると語った
ロシア軍はシリアでの航空作戦を、「搭乗員の気概を試すテスト」だと位置づけ、同時に兵器や航空機の実戦テスト場だとみなしており、「いわば初めての継続的な本格態勢展開でのアウェーゲーム」で自らを鍛えているとも語った

北朝鮮に関しては作戦部長が言及し、NKの統合防空システムは、米軍が過去25年間戦った他の地域よりもはるかに優れていると表現し、「米軍の支援がより必要になってる」と語った
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ロシア軍がシリアを「搭乗員の気迫見極め:test the mettle」に使用し、全搭乗員の85%がシリア作戦を経験しているとは興味深い話です。兵器の実験場との位置づけも、さもありなんです

Su-24 Russia.jpgこれまで米空軍幹部は、イラク戦争から継続して続く戦いを「more than a decade」とか「neary two decades」の戦いだと負担を訴えてきたように思いますが、この講演では「nearly three decades」と表現しています。湾岸戦争にまで遡ってカウントすることにしたのでしょうか???

また北朝鮮に関する、「a much more significant integrated air defense system」との言及は何を意味しているのでしょうか? ISRの結果として、弾道ミサイル発射だけでなく、防空部隊にも投資が流れているのでしょうか???

いずれにしても、女性情報部長に期待いたしましょう!

情報部長のご紹介記事 http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-02

VeraLinn Jamieson米空軍情報部長の経歴
http://www.af.mil/AboutUs/Biographies/Display/tabid/225/Article/108431/brigadier-general-veralinn-dash-jamieson.aspx

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米空軍:仮想敵機部隊も民間委託へ [米空軍]

Aggressor2.jpg9日付米空軍協会web記事は、米空軍が現在4個保有する仮想敵機飛行部隊を2個に削減し、その役割を民間企業に委託することを検討中で、10日に「industry day」を開いて要求事項を関係企業に説明するそうです。

航空自衛隊では「飛行教導隊」と呼ばれ、米空軍では「Red Air」とか「Aggressor」とか呼ばれる精鋭部隊で、米海軍航空部隊を取り上げた映画「トップガン」でも、老練なベテラン教官操縦者で編成されていた仮想鉄器飛行部隊ですが、民間委託するそうです

民間委託の理由を記事は詳細に伝えていませんが、予算不足や操縦者不足が背景にあるようです
しかし・・・敵機の役割を演じる「Red Air」は、秘密情報にもアクセス可能で、操縦技量的にも高度なレベルが求められると思うのですが、記事を読むと100機以上のジェット機を保有する企業が存在するそうです

9日付米空軍協会web記事によれば
Aggressor3.jpg●米空軍は、仮想敵機飛行部隊用の航空機と操縦者を他に転用し、同時にネリス空軍基地の「Weapons School」やRed Flag演習」で需要が高まっている仮想鉄器部隊の需要に答える方策に向け前進している
10日に、「57th Adversary Tactics Groupと99th Contracting Squadron」が企業説明会を実施し、年間最大約300億円で5600飛行時間を期待する仮想敵機飛行隊契約の契約を目指すことになっている

米空軍は特定の機種を指定してはいないようだが、先週公開された要求事項によれば、最高速度マック1.5、高度35000フィート、45-60分の(作戦)飛行時間、火器管制システム、射程20nmのセミアクティブと45nmのアクティブミサイルのシミュレーション装備が期待されている
●また、1日に22ソーティー(1回90分間の平均飛行時間)を提供でき、目視外戦闘、作戦試験支援、異機種空中戦闘、目視内での攻防機動、多数機による作戦行動等々も求められている

米空軍が提供するのは駐機場所と格納庫スペースで、契約企業は航空機、操縦者、整備作業、関連支援装備と運用、品質管理の提供を期待される
AF-weapons.jpg関連企業は米空軍の動向を察知し、昨年から必要アセットの確保に動き出している。例えば現在ネリス基地で「aggressor役」を唯一行っている「Draken International」は、最近南ア製の「Cheetah超音速戦闘機」を12機入手して計109機体制を整えたと発表した

●また昨年9月「Textron Airborne Solutions」は、仏空軍のミラージュF1戦闘機63機を購入したと発表し、世界最大の超音速機保有の私企業になっている
●更に「Tactical Air Support」は、ヨルダン空軍のF-5戦闘機を21機調達し、同機を計26機保有する規模となっている

●昨年9月、米空軍戦闘コマンドのHolmes司令官は、「従来のように仮想敵機飛行部隊を維持するのが理想だが、予算的制約から4つのうちの2つの部隊を閉鎖しなければならない」と述べ、
●更に「次善の策として、民間企業に委託して必要な人材を確保し、同時に空軍操縦者等を他の任務に生かすことを検討する」と語っていた
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Aggressor.jpg民間に委託することで経費削減が可能な企業が存在するということです。早期退職や定年退官した空軍パイロットを再雇用している(引き抜いている)のでしょうが、その規模に驚かされます

米海軍の空母1隻に搭載される作戦機の規模は、世界の空軍の半分より強力だと聞いたことがありますが、戦闘機クラスを100機以上保有する民間企業って何なんでしょうか?

色々と奥が深い世界です・・・

米空軍のパイロット不足
「さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10
「世も末:幕僚勤務無し管理検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-20
「トップが操縦者不足と軽攻撃機を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-17

「18年ぶり飛行手当増額」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-28
「戦闘機パイロット2割不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-22
「航空業界は今後20年人手不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29

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マティス長官の苦悩:パキスタンを切れるか? [マティス長官]

afgan.jpg5日マティス国防長官は記者団に対し、4日に米国務省が発表したパキスタンへの軍事援助約2200億円をカットに関し発言しアフガンに駐留する米軍への補給ルートが絶たれることはないだろうと希望的観測を述べました

米国とパキスタンの関係は、パキスタン側が米国に対して持つ「恩讐」とも言える不信感に根付く複雑なものです。

1970年代にソ連がアフガニスタンに侵攻し、それへの対処のため米国はパキスタンに接近しましたが、ソ連が撤退後、アフガン国内が混乱してパキスタンが大きな負の影響を受ける中、米国はあっさりパキスタンを見捨てて去っていきます

911事案を受けてアフガンでの軍事行動を始めた米国は、補給ルートの確保や過激派がパキスタンに逃げ込むことを防止するため、再びパキスタンに接近します
しかしソ連のアフガン侵攻がらみで米国に道具として利用され、簡単に見捨てられた根強い恨みを持つパキスタンは、もみ手でやってきた米高官に罵声を浴びせます

gatesmullenclinton.jpgオバマ政権誕生直後の国務長官であったクリントン女史は、関係改善のためパキスタンを訪問しますが、反米感情の激しさに驚かされ、帰国後ゲーツ国防長官にその様子を伝えます

ゲーツ長官は2010年1月にパキスタンを訪問し、パキスタンで大きな力を持つ軍幹部との非公開討論会を設けますが、外交上あり得ないほどの「馬事雑言」を浴び、「例外的な寛容さ」を発揮して対応したと米報道官が説明したほどでした

「パキスタン国防大学で罵倒される」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-23

でも同年8月にパキスタン関係についてゲーツ長官は
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-15
gatesMarineUP.jpg我々は、ソ連がアフガニスタンから撤退するのを見届けると、パキスタンに背を向けるように振る舞い、そして課題を抱えたままのパキスタンを置き去りにした。我々は「信頼感の負債」を積み上げた責めを負わなければならない
1989年にアフガンにも背を向け、私がCIA長官であった時期にパキスタンの核開発もあり1992年にパキスタンとの国交を断った

今パキスタン政府は、米国が再びパキスタンを裏切るのではないかと懸念している。我々はこの「信頼感の負債」を減らす努力を続けている
●パキスタンは今、14万の兵士を動員してアフガン国境沿いのテロ組織と戦っている。我々に必要なのは、米国がパキスタンと長期的で安定な戦略的パートナー関係を構築しようとしている点をパキスタンの人々に確信してもらうことである

・・・と語り、アフガン作戦成功のため、両国の関係改善のため取り組みを継続する講演で語っています

その後も米はパキスタンとの関係改善を目指し、対テロ装備の提供や資金援助、両国高官の相互訪問による対話、パキスタン国内自然災害への支援等々を続けたわけですが、ビンラディンはパキスタン国内の隠れ家で発見殺害され、パキスタン北西部がアフガン過激派の温床となっていることも次第に明らかになってきます

trump7.jpgそしてトランプ政権誕生後、昨年8月に包括的なアフガン政策見直しが発表されますが、対パキスタン政策は大きな結節点を迎えます。

8月の新アフガン政策発表会見でトランプ大統領は
米国が戦っているテロリストをパキスタンがかくまう中、我々米国はパキスタンに対し多額の援助を行ってきた。しかし変化の時が来ている。直ちに変えなければならない」と明言し、

そして2018年元日最初のツイートでトランプ大統領は
パキスタンは嘘つきの詐欺師だ。米国がアフガンで追跡しているテロリストに、パキスタンは隠れ家を与え、米国を助けようなどとはほとんど考えていない。もうたくさんだ・・・」と発信し、

gateskayani.jpgその後4日に米国務省がパキスタンへの軍事援助約2200億円をカットを発表したわけです。米政権幹部によれば、カットした約2200億円には約1000億円の軍事援助や、900億円の対テロ作戦支援費が含まれるということです
国務省の声明は、「パキスタン政府に対し、パキスタン領内から活動する過激派(Haqqani Network and the Taliban等に)に断固たる対応をとるように圧力をかけるため」と理由を説明しています。

しかし、アフガンの現場に大規模な兵力を派遣し、パキスタンとの関係悪化が前線への補給やアフガン治安に直結するマティス国防長官の立場は複雑です。

5日付Defense-News記事によれば
mattis senate2.jpg5日パキスタン政府は、これまで同国が大きの犠牲を払って対テロ作戦を行ってきたことを強調し、併せて米国の支援中止決定により、米国の作戦が影響を受ける可能性を排除しなかった
●同日マティス国防長官は記者団に対し、より慎重に対応するとの姿勢を見せ、パキスタンが対テロに取り組んでいることを認めつつ、パキスタンの姿勢に変化があれば米国からの援助を再開する可能性があることも示唆した

●そしてマティス長官は記者団に、「多くの皆さんがご存知のように、パキスタンは全ての多国籍軍の犠牲者よりも多くの犠牲を払って対テロに取り組んでいる。」と表現した
●更に長官は、「国務省声明の文言を見ればわかるように、米国はパキスタンと協議を続けている。米国よりもパキスタンに対する脅威が大きい過激派対策に、パキスタン側の劇的な動きがあれば、援助再開もある」と慎重に語った

Mattis44.jpg●また長官は「アフガン駐留米軍への食糧や物資を輸送する地上ルートGLOCに対し、何らかの影響があるとのサインはパキスタン政府から受け取っていない」、「GLOCの代替ルートも米国は保有しておいる。空輸などで、はるかに高価な輸送手段であるが」とも語った
●そして4日の米国務省の発表は、(昨年8月発表の)新アフガン戦力に沿ったものであることを強調し、「全ては一つの戦略に基づいて総合的に推進されているものである」、「もちろん同時に、相互の協議も継続していく」と補足した
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少しパキスタンよりな書き方になってしまいましたが、パキスタン国内も様々な勢力がうごめき、特に同国北西部は多部族が入り乱れ、中央政府の統治が聞かない地域であることも確かです。 米国の援助中断の「脅し」が、効果的な手段なのかどうかも不明です。

しかし、マティス長官が懸命に「戦略に基づいてやっているのだ」と強調すればするほど、トランプの勢いで決まった方針のような気がしてなりません
そしてその判断が、現場兵士の命を案ずる国防長官に、重い課題を投げかけていると心配せずにはおれません

米国とパキスタン関係を振り返る記事
「パキスタンで罵倒される」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-23
「茂田宏が語る米パを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-30
「米のパキスタン援助」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-17
「パキスタンとの関係を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-15

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