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謎のX-37Bの謎が少し解けた!? [サイバーと宇宙]

X-37B 2017.jpg7日、約2年間の宇宙空間滞在試験を終え、「謎の宇宙飛行船X-37B Orbital Test Vehicle」が地球に無地帰還しました。戻ってきました。
2010年4月に最初の打ち上げ(アトラスVロケットの先端に搭載されて宇宙へ)が行われ、今回がこれが4回目の宇宙滞在試験で、合計約2300日も宇宙空間で何か試験をしていたことになります

この「謎のX-37B」は9m×4.5m×3mとそれ程大きくなく、低コストで再使用が可能な宇宙への運搬手段を目指し、1990年代半ばからNASAが研究を始めたものです。
しかし計画が遅れてスペースシャトルの貨物室に搭載する方向はキャンセルとなり、その後NASAがスペースシャトル後の人員輸送にも本モデルの使用を止めたため、2004年から国防省が主導する引き継ぐ軍事プロジェクトになりました

国防省では米空軍の緊急能力造成室(Air Force Rapid Capabilities Office) が担当していることから、その目的を、軍事衛星や通信衛星が機能喪失した際の緊急代替衛星や装置の宇宙投入用とか、宇宙空間で軌道を柔軟に変更して敵衛星を無効化する任務を担うのではとか、貨物室に新素材を載せて宇宙空間で試験しているのではとか等々、様々な憶測を呼んでいます。

X-37B 17.jpg例えば、2011年3月の2回目の打ち上げ後は、アマチュア天文家まで巻き込んで軌道監視が行われ、中国の実験宇宙ステーション「Tiangong-1」と似た軌道だった事から、密着監視しているのではと軍事メディアで騒ぎにもなりました。結局は、細かく見ればその任務は不可能との結論でしたが・・・

そんなこんなの「謎のX-37B」ですが、今回の帰還を紹介する米空軍協会web記事が、イオンエンジンの一種と考えられる「Hall Effect thruster」も試験の一つだと解説していますので、久々に「謎のX-37B」を取り上げます。
よく調べれば、既に「謎の」では無いかも知れませんが、まんぐーすにとっては謎なので・・・。帰還した機体を確認する完全防備の作業員3名の姿が物々しい、左上の写真が色々想像をかき立てます。

9日付米空軍協会web記事によれば
X-37B-2Taxiing.jpg2015年5月21日に打ち上げられた4回目のX-37B OTV(Orbital Test Vehicle)宇宙飛行は、5月7日に終了した。、宇宙滞在間は、高度190 and 225 milesに在空していた
1回目の宇宙滞在が224日間、2回目が468日間、3回目が675日、そして今回の4回目は718日間だった。ちなみに、フロリダ州の同宇宙センターへの着陸は初めて

●宇宙滞在期間の長さは、「Hall Effect thruster」と呼ばれる電磁式推進システムの試験とも関係している。同推進装置は、同量同重量の燃料でもより効率よく推進力を得られることが特徴で、将来の宇宙船をより軽量にし、打ち上げコスト削減を狙いとしている。
●一方で同推進装置は、立ち上がりがスローで(thruster is slow to start up)で、米空軍は宇宙空間で長期間をかけて試験することを望んでいる。

●実験を仕切っている米空軍の緊急能力造成室は、X-37Bの宇宙滞在試験を通じ、同装置のリスク低減と、再利用可能な宇宙船の作戦運用コンセプト開発に取り組んでいる
●次の5回目の打ち上げは、2017年末に予定されている
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X-37B 17-3.jpg他にも絶対「ナイショ」の実験や任務を行っているはずだと妄想しているのですが、宇宙で2年間も活動させておいて、遠隔操作でちゃんと大気圏に突入し、滑走路にプログラム通り着陸して戻ってくるのですから、その面での技術の蓄積だけでも大したものだと思います

5年間も放置しておいた話題ですが、また楽しませて頂こうと思います
日本のアマチュア天文家の皆様もいかがですか?

X-37B関連の記事
「中国版X-37B?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-15
「X-37Bは中国衛星を追跡?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-07
「X-37BがSシャトルの代替?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12

「米が宇宙アセット防護計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-16
「X-37B関連小ネタ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-04
「X-37Bをご存じですか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-20

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数字で見るF-35計画の状況(2017年5月時点) [亡国のF-35]

だからどうした・・・言いたいところですが・・・

F-35 luke AFB2.jpg本日は5月5日に公開された映像「数字で見るF-35計画」をご紹介し、普段は冷たく接しているF-35と戦闘機命派の皆様に捧げたいと思います。

映像の中では、「数字」が1から2,3,4,7,8,60・・・・・1000・・・10000・・・最後は90000まで取り上げられ、それぞれの数字で表現されるF-35計画の現状が紹介されます

ちょっとよくわからない「数字」と説明も出て来ますが、ぼんやりとご覧ください!

映像「数字で見るF-35計画」約2分間


1→最初に製造されたF-35は垂直離着陸型の原型「BF-1」だった
2→現時点で、B型(2015年6月)とA型(2016年8月)が初期運用態勢IOC宣言
3→最終組み立て施設FACOが3か所に(Fort Warth,Cameri,Nagoya)

4→4か国の配備先にF-35到着?(米、イスラエル、岩国、英国?)
7→B型とC型の艦艇での海上試験回数7回
8→8か国(の操縦者)がF-35を飛ばしている
(米、英、豪、イスラエル、伊、蘭、ノルウェー、日本)

F-35 luke AFB.jpg11→11か国でF-35部品製造中
12→12か所の基地でF-35運用中
60→当初価格から60%価格低下

200→製造機数は既に200機
400→訓練終了操縦者400名
1000→2022年には製造機数が1000機に

4000→訓練終了整備員4000名
10000→空母艦載型C型の総飛行時間10000時間
25000→垂直離着陸B型の総飛行時間25000時間

55000→空軍用A型の総飛行時間55000時間
90000→全タイプの総飛行時間90000時間
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F-35 N.jpg計画の総コストが最後に加わってもいいのかな・・・と思いますし、「11か国でF-35部品製造中」では国別の額の違いも興味あるところです。それと、せめて米軍全体での調達予定数2800機ぐらいの数字も出して良いかな・・とは思いますが、自信がないのかも・・・

また、「当初価格から60%価格低下」とのアピールですが、「予定価格」から現時点で何%アップかも気になるところです。50%アップぐらいでは・・・

おまけでF-22戦闘機のイメージ映像も(約2分半)
最初の第5世代戦闘機で、ステルス性とそのセンサーや兵器システムから、「First Look,Shoot & Kill」が可能な戦闘機とのキャッチフレーズ
●最高速度マック2、最高高度5万フィート、行動半径2000NM
アフターバーナー無しで、音速飛行が可能
実戦デビューは比較的遅く、2014年9月23日の対ISIS攻撃


映像で5つの視点から学ぶ
「カモフラージュ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-16
「米海軍空母」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-25
「核兵器」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-05
「米海軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-27
「米海軍潜水艦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-26
「火炎放射器」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-11-2
「負傷者救出ヘリ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-07

「B-2爆撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-01
「AK-47ライフル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-28
「原子力潜水艦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-07-1

映像で見るシリーズ
「12㎏の兵器搭載地上ロボット」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-09
「防空&ミサイル防衛の融合IAMD」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27-2
「威力強烈:AC-130」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-06
「CASの歴史を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-19

「イメージ中国軍の島嶼侵攻」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-06
「泣ける:帰還兵士と犬との再会」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-05
「レーザー兵器試験@ペルシャ湾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-13

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米海軍真っ青?トランプ「デジタル(EMALS)はだめ」 [Joint・統合参謀本部]

お笑いインタビュー!?!?
35機のF-35が日本上空を探知されず飛行?
トランプ氏が、海軍の夢:電磁カタパルトEMALSを嫌う!?

Trump-Time.jpg8日、Time誌がトランプ大統領とホワイトハウスで夕食(4品のコースディナー)を共にしながら約100分間のインタビューを行い、その様子をそのまま文字に起こして11日付電子版に掲載しています

Time誌が記事冒頭で補足しているように、話題が行ったり来たり(Trump weaved between topics)し、しばしば「オフレコ」になったりのインタビューだったようですが、ペンス副大統領と2名の政権幹部も同席した取材なのに、F-35と最新カタパルト部分がぶっ飛んでますので、とりあえずをご紹介しておきます

安倍総理が登場したり、アインシュタインが登場したり、ご紹介でしない部分では中国やISISや外交やNATOなどなどについても語っています

F-35を値切ってやった!
trump5.jpg●日本から安倍が来たとき、最初に彼が歩み寄ってきて「有難う、有難う」と言うので、「何のお礼?」と聞いたら、あなたのお陰でF-35購入費を約100億円得したと言うんだよ。
日本も90機を買うF-35購入国(正確には42機)で、だいぶ助かったはずだ。日本に100億円も節約させてやったんだ。交渉時間は合わせて1時間ほどだったが、それで価格を下げさせたんだ

●米国は2500機も購入することになっているから、誰も書いてくれないけど、数千億円~数兆円を節約したんだ
●F-35計画は安定し、価格は下がり続けると言うが、俺がそうさせたんだ。F-18の価格を持ち出して、1機35億円まけろと交渉したんだ

●知ってるか? マティス国防長官が日本を訪問したとき、35機のF-35を日本上空で飛ばしたが、レーダーで捕捉されなかった。突然頭上を飛ばれて、どこから来たんだと驚いたんだ。ステルス機だからさ。クールだろ?

フォード級空母の電磁カタパルトは良くない
trump7.jpg空母にとってカタパルトは非常に重要だ。でもフォード級のカタパルトはデジタルカタパルトだと言うんだ。最新の技術を使用したやつで行くと言うんだ。
●蒸気式カタパルトはもう使わないのかと聞いたら、もう使わないと言うじゃないか。どんな仕組みか聞いたら、良くないんだこれが。パワーが無い。蒸気の力のすごさを知ってるだろう。だから飛行機を空中に放り投げられるんだ。

俺はデジタルは良くないと思うぞ。だけどデジタルで行くと言うんだ。なんだそれ? 複雑すぎてアインシュタイン先生でないと上手く行かないぞ! 
●それでもって、もっと空母が欲しいと言うから、どうするのか聞いたら、デジタルで行くと言うんだ。ダメだと言ってやったよ。蒸気式で行けと! デジタルは高価だし、良くないと言ってやった
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トランプ大統領の「ご発言」にはお付き合いしたくありませんが、副大統領も側近の皆様も、米海軍の皆さんも大変だと思います。ご愁傷様です安倍首相の名前が、他の外国首脳に先んじて、登場したことを喜びとしておきますか・・

他の部分はそれなりに「当たり障り無く・・・」なのに、F-35とEMALSだけ「ぶっ飛んだ」感があります。
Trump-NATO.jpg英語訳には自信がありませんが、大統領は「You know they had the F-35s, they had thirty-five of them fly over Japan when Mattis was there, and they were not detected by the radar.」と発言しています。ここで「they」が誰か不明確ですが、米軍かロッキード社を指しているように見えます・・・

大統領の言う「デジタル」は、1番艦が4月に進水して試験が始まったフォード級空母に初めて搭載される、従来の蒸気式カタパルトに代わる電磁式カタパルトEMALS(Electromagnetic Launch System)のことです。「デジタル」と言うより、電力による磁力で飛行機を押し出すシステムです

ご立腹の大統領に対し、今後海軍は以下の様な説明を試みるのでしょう
Ford-Class-Carrier.jpgEMALSは蒸気式より効率性や維持整備経費を大幅削減するカタパルト。50年間の空母運用期間全体で、約4000億円の維持整備運用費を削減可能と見積もり
●フォード級空母は必要な大電力をまかなうため、2つの新設計原子炉を装備し、これまでの空母の約2.5倍の発電量を確保している
(ただし・・・フォード級空母は約9万トンと史上最大で、他の最新装備等と併せ、価格もニミッツ級空母の倍近い1隻約1兆4千億円 搭載航空機を除く)

2010年12月のEMALS解説記事によれば
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

EMALSの概要は・・・
●従来型カタパルトが蒸気を利用するのに対し、電磁力を活用したリニアモーターで動力を得るカタパルト
●空母自体の供給容量を超える電力を数秒間で消費するため、4つの回転式のロータに運動エネルギーとしてエネルギーを蓄え、カタパルト駆動時に電気エネルギーに変換して使用する。

EMALSの特長は・・・
Ford Class CV.jpg蒸気式に比べ、装置の重量が軽くて、装置の容量も小さい。また信頼性が高く整備の手間も少ない
●エネルギー効率が良く、蒸気式と比較して少ないエネルギーで、約3割増の推力を得ることができる。

●電気的に操作するためカタパルト駆動時のスピードを制御しやすく、駆動開始時に滑らかな加速が可能で、発進航空機へ負担が少ない。また、大型の飛行機から比較的軽量の無人機等に応じた適切な打ち出し推力を選択できる。
●蒸気式と異なり、電力を使用して生成する真水を必要としない。また海軍が目指す、蒸気を使用しない全電化艦艇の方向にも合致。

●蒸気式より、システム全体として静粛性に優れている(航空機の騒音が激しいので、艦内の居住性が改善されるかは不明)
●地上に設置されたEMALSは、2010年12月18日にFA-18の離陸試験に成功
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かなり意訳してますので、気になる方は是非Time誌電子版をご確認下さい
http://time.com/4775040/donald-trump-time-interview-being-president/

それにしても、ホワイトハウスや政府や国防省は大丈夫でしょうか???

EMALSとフォード級空母
「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「解説:電磁カタパルトEMALS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

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戦闘機世代間データリンクに新たな一歩 [米空軍]

F-15 Talon HATE4.jpg8日付ボーイング社発表によれば、米空軍が目指すより高度にリアルタイムで作戦状況を共有する将来戦において、大きな課題となっている第4世代と第5世代機間のリンク連接を解決する装置の試験が、F-22とF-15C間で期待された成果を上げたようです

リンクの細部に不案内ですが、「networked family of systems」で任務を果たすイメージを持つ米空軍は、従来の「Link-16」レベルの速度と質のデータ共有では戦えないと危機感を持っており、F-22の「IFDL:Intra-Flight Data Link」とF-35の「MADL:Multifunction Advanced Data Link」を、第4世代機と結びつけたいと取り組んできたところです

ボーイング社はこの課題に、「Talon HATE airborne networking system」を開発して挑んでおり、今回2機のF-15Cに搭載してネリス空軍基地を拠点に試験を行ったようです。

同社によれば、今年後半には更に目標照準能力を高めるため、「先端センサー」を試験に取り込んで装置の能力を確認するとのこと。F-35との試験も今後必要なのでしょうが、頑張って頂きましょう。

8日付ボーイング社発表によれば
F-15 Talon HATE.jpg米空軍とボーイング社は、同社が開発した「Talon HATE airborne networking system」を使用する事で、複数航空機間と地上ステーションが、効率的に保全された通信が可能である事をデモンストレーションする事が出来た
●試験飛行に参加した「Talon HATE pods」搭載の2機のF-15Cは、「Link-16」と「Common Data Link」と「Wideband Global SATCOM」を通じ、情報共有を図ることができ、更にF-22の「IFDL:Intra-Flight Data Link」機能も有効に活用できることを確認した

●米空軍「Talon HATE」計画責任者であるBradley中佐は、「開発試験は終了した。本装置を前線に投入し、作戦行動に直結する情報をより迅速に高品質で提供するだけでなく、空軍が本装置を通じて重要な教訓を得ることを楽しみにしている」と述べた
●ボーイング社の担当副社長Paul Geery氏は、「F-15CとF-22の情報をリアルタイムに融合し、状況認識を保全された環境で共有することを実現出来ことを証明できた」と喜びを語った

昨年7月ACC司令官は世代間リンクを訴え
F-22Hawaii2.jpg米空軍は、F-22とF-35が相互に情報共有でき、更に他の作戦機とも情報通信できるハードウェアのプロトタイプ開発を急いで進めている
2~3年のうちには、何らかの新装備が前線に投入されているだろう。敵情に関する高い質の情報を迅速に意志決定サイクルで共有するこの装備は、敵を撃破する能力の基礎であり、敵に対処を強要するものである

●F-22は「IFDL:Intra-Flight Data Link」を、F-35は「MADL:Multifunction Advanced Data Link」を使用し、この分野にあまり取り組んでこなかった。しかし両機種ともLink-16を使用することから何とかしようとしている
プロトタイプ開発は、IFDLとMADLの間の「翻訳の箱:a box that translates」と、米軍機と同盟国機の間を結ぶ新型データリンクに焦点が置かれている。状況認識を共有するためだ

産業界とパートナー国との精力的な強力で、更に研究機関の努力もあり、期待できる成果が見えてきている。また「翻訳の箱」にも極めて重要な進展が現れている。皆が共通の情勢認識を持てる将来に向けて進んでいる
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この分野では、依然として米空軍と米海軍がどのように協力しようとしているのかよく分かりません
特に対中国正面では、海空軍の航空戦力連携が極めて重要と考えられますが、具体的な話が全くと言って良いほど聞こえてきません

F-15 Talon HATE2.jpg「networked family of systems」で任務を果たし、過去の空中戦アセットのイメージでは無く、「sensor node」のようなイメージで戦闘機や攻撃機を捉えるイメージは海空軍とも似ていると思うのですが、連携の話は聞いたことがありません。中東や欧州の対露正面で忙しいからでしょうか?

ところで・・・航空自衛隊は、なんか考えているのでしょうか? 恐らく、対領空侵犯措置で戦闘機機数や飛行隊数やパイロット数を死守することしか考えていませんから、リンクなど後回しなのでしょうけど・・

米空軍による高度なネットワークへの取り組み
「NCCT活用をレッドフラッグで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-25
「世代間リンクが鍵」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-18-1
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08

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新装備でFA-18も空母着艦精度大幅アップへ [Joint・統合参謀本部]

「魔法のじゅうたん」がFA-18とEA-18Gにも

FA-18EF.jpg8日付Defense-Techが、新しく空母艦載機FA-18とEA-18Gに導入された着艦誘導装置「PLM」が素晴らしく着陸精度を5割向上させていると現場の驚嘆と喜びの声を伝えています。

同種の着艦誘導装置を当初から組み込まれているF-35C型機の着艦精度は、昨年8月時点で米海軍航空部隊司令官が、「100回着艦して失敗が一度も無い。100回のうち80回が理想的着艦」と表現するほどで、空母艦載機の運用を大きく変える可能性まで示唆されていた素晴らしさでした

現時点で「PLM」搭載のFA-18とEA-18Gが搭載されているのは、現在任務展開中の「George H. W. Bush」と話題の「Carl Vinson」だけのようですが、米海軍は2019年には全てのFA-18とEA-18Gに搭載する計画のようです

まだ改善の余地もあるようですが、操縦者が諸手を挙げて歓迎し、空母艦載機パイロットの資格要件や空中給油機需要を大きく変える可能性のある新技術の最新状況をご紹介します

8日付Defense-Tech記事によれば
FA-18-Bush.jpg●このMAGIC CARPET技術(Maritime Augmented Guidance with Integrated Controls for Carrier Approach and Recovery Precision Enabling Technologies)は、F-35C型機では「Delta Flight Path」と呼ばれていたが、FA-18とEA-18Gでは「PLM:Precision Landing Modes」と呼ばれている
●PLMを搭載したFA-18とEA-18Gは、共に1月から海上任務に就いている中東派遣の空母「George H. W. Bush」と、朝鮮半島周辺に所在する空母「Carl Vinson」に搭載されている

●これら主力のニミッツ級空母は、通常滑走路の1/10の長さの着陸甲板しかなく、特に夜間の着艦は大変難しいが、エンジン出力の調整と精密な機体コントロールを同時に行うところに難しさがある
PLMはエンジン出力調整操作の必要性を削減し、この代わりにフラップで下降ペースを(自動)調整するする事で、操縦者の手動操縦の負担を軽減する

●空母Bushの空母航空団司令官James McCall大佐は、空母に着艦寸前でエンジン出力を下げて下降レートを早めると、機体の操作が難しくなり、やり直しがより困難になるジレンマにパイロットは苦労してきたと語り、
●同航空団の訓練幹部は、PLMの導入で着艦の正確性が「ロケット打ち上げ並みに急上昇している」と語り、理想の着艦が繰り返されることで、3本ある着艦ワイヤーの2番目ばかりが摩耗して交換頻度が上がっていると説明してくれた。

今後の課題と取材陣の印象
FA-18EF3.jpg●昨年8月に米海軍航空部隊司令官が、同種の装置が設計段階から搭載されているF-35Cの着艦精度を、「空母甲板の同じ箇所ばかりが着艦で摩耗する」ので修理に追われていると嬉しい悲鳴で紹介していたが、空母Bushでも着艦精度は5割も向上している
2019年に全ての米海軍FA-18とEA-18GにPLMが搭載される予定である事から、今回の経験をMcCall大佐は他の艦載機航空団司令官と共有し、ノウハウの蓄積に努力している。

●ただしMcCall大佐は、現PLMの唯一の欠点として、システムの完全2重化(full redundancy)が図られておらず、システムに故障が発生した際に操縦者が手動着陸を迫られる確率がまだ高いことを指摘し、そのため若い操縦者に完全な手動着陸技術を要求する必要がある点を上げた
●そして同大佐は、早急にPLMのシステム完全2重化を実現し、操縦者の資格要件を緩和したいと語った

●前出の訓練幹部は、同航空団の操縦者の中でPLMを好まないのはPLM使用経験が少ない1名だけで着艦技量を競ったノスタルジアに浸るモノはおらず、着艦の安全と容易性を確保し、作戦任務に集中できる環境を与えてくれる同装置を最高だと語った
一方で、取材陣が5月3日と4日に空母Bushで確認した中でも、PLMを使用しながら着艦に失敗してやり直す場面を見ており、PLMが安全な着艦を保障してくれるモノではないとも感じられた
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FA-18EF2.jpg昨年8月にF-35C型機の着陸精度をご紹介した際は、「本装置導入により空母艦載機の着艦ミスが減少すれば、緊急用に空中で待機している空中給油機を削減することが出来、結果として作戦機の搭載を増加できる可能性がある」と期待効果を説明しました

そして具体的には、航空部隊司令官の「現在は空母に、6機から8機の空中給油機仕様のFA-18等を搭載しているが、この機数を削減できれば、攻撃機の搭載機数を柔軟に増やすことが可能だ。例えば、電子戦機EA-18Gや早期警戒機E-2Dの増加も考えられる」と夢を語っています

この装置で夜間着艦訓練NLPの回数が減れば、厚木などの騒音問題も軽減が期待できますし、操縦者養成短縮できそうで操縦者不足に悩む米海軍には朗報ですし、何よりも安全面での改善向上は前線部隊にとって素晴らしいことです。

ただ最後の一文「PLMが安全な着艦を保障してくれるモノではない」には要注意です。人間の慢心や注意散漫があっては、安全は確保できませんから・・。

「F-35Cの着陸精度が素晴らしい」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-22

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脅威の変化を「東アジア戦略概観 2017」で学ぶ [安全保障全般]

east-asia-2017.jpg遅ればせながらGW連休を利用し、3月末に発刊されていた防衛研究所の「東アジア戦略概観 2017」に目を通しました。シンプルに素晴らしいと思いました

「日本政府あるいは防衛省の見解を示すものではない」との大前提ですが、公的機関から出る出版物ですから、米国や日本政府を正面切って批判するような表現はなく、その点は物足りないかも知れませんが、これだけまとまった情勢解説書は他に見当たりません

特に「東アジア」を国際情勢と切り離して論じられないとの問題認識から、第1章に「欧州戦略環境の変動 東アジアへの影響」、第2章に「インド洋地域の安全保障 中国の進出への域内諸国の対応」を設け、より広い視点から論点を提示している姿勢に感心しました。同「概観」編集長である兵頭慎治・地域研究部長のリーダーシップを讃えたいと思います。

個人的には第2章第3節のパキスタンと中国関係(P52~)や同第4節のスリランカと中国関係(P60~)、更にオホーツク海から北方領土周辺のロシア軍事プレゼンスを分析した第6章ロシア第3節(P176~)が大変勉強になりましたが、本日は「脅威の変化」を学ぶ意味で最重要と考える第7章米国の第3節「(2)ロシアの軍事力に対する脆弱性の認識」(P209~)の概要をご紹介します

これまで断片的に、ロシア軍のウクライナでの電子戦やハイブリッド戦を「すごい」とご紹介し、米軍幹部の危機感を取り上げてきましたが、執筆担当の防衛研究所・菊池茂雄氏がしっかりと整理し、日本も決して無視できない、対中国に並ぶ米軍全体の大きな課題として問題提起しています。

McMaster.jpg特に、現在トランプ政権の安全保障担当大統領補佐官を務めるマクマスター陸軍中将(以下、M中将)が、前職の陸軍能力統合センター(ARCIC)長としてロシア軍脅威分析の中心人物だったこともあり、米国の対露認識を考える材料としても興味深い所です

まんぐーす的には、米国がアフガンや中東で対テロ作戦に忙殺されている10数年の間に、中国だけで無く、ロシアもしっかり対米軍戦略・戦術を練り、具体的装備を準備してきた事が明示されており、日本の従来の装備体系への疑問がますます高まりました。戦闘機なんかに投資している場合では無いですよ・・・

第7章米国の「露軍事力に対する脆弱性の認識」より
East-Euro22.jpgロシア軍に対し、懲罰的抑止ではなく拒否的抑止を追求する変化の中で、ウクライナ東部への軍事介入で示されたロシア軍の能力と比べ、米軍の能力は明らかに不足し脆弱であることが認識され、危機感を持って議論されている
●米陸軍は2016年4月、上院軍事委員会に「陸軍がアフガニスタンとイラクに関与している間、ロシアは米国側の戦力と脆弱性を研究し、野心的な軍近代化努力に乗り出し、おおむね成功させた」と評価する文書を提出している

具体的分野の第1は電子戦である。露軍はウクライナの指揮通信だけで無く、GPSや無人機誘導電波を妨害し、砲弾の電子信管を無効化するだけで無く、ウクライナ側の電波(無線、味方識別装置、Wi-Fi、携帯電話)を探知し、砲撃目標発見に使用したと分析された。
●そして米軍の電子戦能力の遅れへの懸念は国防省全体で共有されるに至り、「米国が、その情報を収集、配布、調整し、それに基づき行動する能力を弱めるために、敵対者が相当の時間、努力、そして資源を費やした」結果、「電子戦における優位は厳しく脅かされている」と結論付けられた

第2の問題はM中将が「地上からウクライナ上空で航空優勢を確立した」と指摘するロシアの「階層化された防空能力」問題である。
第3 に露軍火砲の能力向上である。これは露軍のミサイルや火砲が「米陸軍の火砲システム・弾薬より射程が長く、威力も上回っている」ことだけでなく、露軍がSNS情報や「ウ」側の通信電波、更には無人機偵察で目標と特定し、集中砲火を浴びせるなどその「高度な技術的洗練」にも米陸軍は脅威を感じている。

●また兵器面でも、ラスター弾やサーモバリック弾、散布型地雷などの面制圧兵器の集中使用は、米軍がクラスター弾の調達を中止した中で脅威でアリ、更に露軍のT-90などの新型戦闘車両や、対戦車ミサイル等から車両を防護する「米軍がまだ研究段階」のアクティブ防御システム(APS)の導入なども、米軍装備を「旧式化」させるモノと認識されている

大前提である航空優勢が成り立たない危機感
McMaster3.jpg●M中将等は、冷戦後、米陸軍が戦力組成から火砲を大幅に削減したのは、ソ連脅威の消滅と、常に航空優勢が確保され、航空支援を得られるという前提があったためであるが、「我々には偉大な空軍がいるが、ここ1、2 年の間、その前提そのものを疑わなければならなくなった」と指摘している
●また2016年5月のCSIS講演でM中将は、米軍部隊が大出力の電波を全方向に発信しており、「我々はある能力を持った一部の敵にはほとんど丸見えになっている」と指摘し、米軍の「脆弱性評価」を行っているが、「どのように能力を開発していくかについて、我々を異なる方向に導こうとしている」と述べ、ロシアの動きが米軍の戦力整備の方向性に影響を与えつつあることを示唆している

●この様な脆弱性認識の元、米国防省はFY2017 予算要求のロシア抑止関連投資として「地上配備防空・ミサイル防衛」を挙げ、また陸軍の戦力組成の見直しの検討報告書は、「重大な能力欠落」「受け入れ難いほど後れている」例として短距離防空(SHORAD)能力を挙げ、「冷戦後、陸軍は潜在的な敵対国空軍の脅威をほとんど感じていなかった」が、「最近のウクライナおよびシリアでの戦闘は、脅威環境が変化したことを示している」と述べている
●そしてM中将は、露によるNATOへの侵略を抑止するには、オフショアバランスや懲罰的抑止は有効でなく、「合理的なコストによって目標を達成することは不可能であると納得させる」という「拒否的抑止に沿った抑止へのアプローチ」を取ることが必要であると主張している。この様に、2014年3月の露によるウクライナ併合から2年、米国防省の対露脅威認識は深刻になっている
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McMaster2.jpgもちろん米陸軍は、海空軍に押されて予算的に厳しい中、巻き返しを図りたい、何とか巻き返しの材料が欲しい、と考えているのでしょうが、欧州米陸軍司令官をして「涙が出るほどすごい」と言わしめたロシア軍の脅威は、正当に評価されていると認識すべきでしょう

ロシアの「階層化された防空能力」で米空軍のステルス攻撃機が無効になるとは言いませんが、明らかにリスクは高まるでしょうし、東シナ海の中国正面はそれ以上かも知れません。

実際、最近になってステルス命だった米空軍幹部が、次世代制空機PCAより、次世代エスコート型電子戦機PEAを優先すべきと発言し始めていることからも、その脅威度が高まっていると認識すべきでしょう

弾道・巡航ミサイル、サイバー&宇宙戦に加え、最近になって電子戦が脅威のセットで米国防省関係者から語られるようになっている背景は、こんな所にあるのでしょう。
そして日本の装備体系において、「戦闘機命派」による「戦闘機投資聖域化」により、上記分野への対応が、外圧部分を除いては、ほとんど手つかずになっていることを改めて注意喚起したいと思います

ATACMS5.jpg追伸→→→第7章米国の第3節「リバランス追求」の「(3)アジア太平洋での軍事態勢」で、中国A2ADへの対処策として、米海兵隊が高機動ロケット砲システム(HIMARS)と陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)ミサイルを組み合わせ、LCACで機動輸送して対艦・対地攻撃を繰り返す構想と試験演習が紹介(P196下~)されており、この部分も興味深いです

いずれにしても、まんぐーすの思いつき&細切れ紹介よりも遙かに体系的に整理された資料として、特に対領空侵犯措置のスクランブル回数が史上最高になった事だけにしがみつき、広く全体を見て投資優先を考えない「戦闘機命派」の皆さんにご覧頂きたい素晴らしい資料です。

まぁ相変わらず、米国の「アジア太平洋リバランス」政策の「空虚さ」や「言うだけ番長」スタイルへの突っ込みは不足(皆無)ですが来年度はトランプ政権の対中国姿勢を中心に、しっかりと突っ込んで頂きましょう!!!

何せ、北朝鮮関連で中国の刺激しないよう、米軍が上申した「航行の自由作戦」に待ったをかけたらしい(CNNが5日報道)ですし、トランプ大統領得意の「ディール」で、今後の1年でどれだけ対中姿勢が「転進」するかが注目点ですから

それでも、なんと言っても、ネット上で全文(英語訳も)無料公開ですから・・・

ウクライナや電子戦の教訓
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02 

「副長官が国防省として検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-19
「米陸軍電子戦失われた15年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16
「米軍の電子戦の惨状と取り組み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1

PCA型電子戦機PEA関連
「PCAよりPEAを先に導入へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27
「20年ぶりエスコート電子戦機?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-20

過去の東アジア戦略概観
「2016年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-25
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13-1
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-10
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-03

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民間依存高まる米軍輸送力に危機感 [Joint・統合参謀本部]

朝鮮半島有事を30日間は支えられるが・・・

McDew6.jpg2日、米輸送コマンドのDarren McDew 司令官が上院軍事委員会で証言し、米軍輸送力の民間依存がここ20年余りで急増したことで、制空や制海が完全でない厳しい環境下(contested environment)での輸送力確保が大きな問題となっていると語りました

McDew 司令官は最近の「war game:机上演習」でさらに危機感を強くしたようで、「驚くべき量の教訓を得た」と表現し、「今や我々の任務遂行上の課題のすべてである」と語りつつ、民間業者のサイバー防御問題や厳しい環境下での行動可能性に言及しています

C-17-2.jpg「長い間、我々が経験してこなかった厳しい環境下」での机上演習が、どのエリアを想定したものかに言及はありませんが、冒頭の言葉通り、西太平洋地域や朝鮮半島にも頭は向いているようです。
当然と言えば当然の課題ですが、これまであまり取り上げてこなかった有事兵站輸送の課題ですので、これを機会にご紹介します。

3日付米空軍協会web記事によれば
●上院軍事委員会のMike Rounds議員(共和党)は、第1次湾岸戦争を戦った1990年代と比較し、米軍の大型輸送機は50機も減少して民間依存度が高まっていると危機感を示した
●そして今紛争が発生したなら、人員空輸の9割は民間依存(Civil Reserve Air Fleet)となり、物資空輸は4割依存となる。湾岸戦争当時は、人員6割、物資25%の依存度だったのに・・・と同上院議員は分析した

McDew4.jpg●McDew 司令官は、米軍が依存度を高めている民間輸送に、有事の厳しい環境下で依存できないと述べ、サイバー脆弱性と対空脅威下での行動制約に言及した。そして、紛争初期はA2AD環境に備えた軍輸送力が支えられるが、民間輸送力への依存を高めている輸送コマンドは第2波からの輸送問題に直面すると同司令官は語った
●司令官は委員会で、「机上演習が如実に示した驚くべき脆弱性と教訓を、我々は吸収し始めている。戦術や手順や技術を見直しつつあるが、やるべきことは多く残されている」と危機感を示した

民間輸送企業のサイバー脆弱性について同司令官は、「輸送企業のCEOの中には、攻撃を現在も受けていることに気づいていない人がいる」、また「全てのCEOは十分なサイバー防御対策を取っていると認識している」との認識を示した
●しかし一方で、企業にサイバー防御強化を強制する力は国防省にはないと同司令官は述べた。

Cyber-new.jpg●この状況への対策として同司令官は、国防省の権限を強化するのではなく、国土安全保障省やFBIと協力しつつ、企業の意識を高めて対処基準を高めてもらうような取り組みを検討していると語った。
●この取り組みでは、「明確なサイバー安全保障基準」を最低限設け、脅威の変化に応じて見直していくことを検討しており、第3者機関が企業の対処レベルを評価することも考えられており、「少なくとも厳しい環境の淵(エッジ)で任務可能なレベルに強化できるよう協力している」と述べた

●輸送力の現状について同司令官は、民間企業による米軍支援の比率はここ20~30年増加の一途で、陸海空軍に並ぶ第4の勢力となっており、民間輸送企業なくして任務遂行は考えられないと語った
●そして朝鮮半島有事を例に、在韓米軍司令官が輸送コマンドの輸送力だけでの作戦遂行を必要とした場合、最初の30日間は可能だろうと述べ、その後はよく吟味する必要があると表現した。そして民間輸送力への移管を進めると、6か月まではそれなりの見積もりができるが、それ以降は挑戦だと語った
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朝鮮半島有事の場合、対中国ほど脅威環境が厳しくはないでしょうが、それでも米軍輸送力では「30日間」しか持たないとの証言です。

McDew5.jpg米軍輸送コマンドは、民間輸送企業への依存度を高める過程で、業務効率化のためIT化を進め、業務発注等をネット上で行うようになった結果として「サイバー脆弱性」を高め2012年時点で「最もサイバー攻撃を受ける主要コマンド」の栄誉を獲得しています

当時の記事によれば、すぐさま統合サイバー対処センター(JCC:Joint Cyber Center)を立ちあげ、民間企業と連携して脆弱性克服に取り組み始めている・・・となっていますが、脅威の変化が優っているというのか、危機感が不足しているのか・・・厳しい状況に変化ないようです。でも深刻です・・・

「最もサイバー攻撃を受けている米コマンド」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-22

最近?のサイバー関連記事
「トランプ政権:約束のサイバー戦略は?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25
「イスラエルと協力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-01
「米軍サイバー機関の問題や対策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-14

「自ら創造したサイバー空間に苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-20
「サイバー脅威の変化と対処を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-21
「装備品のサイバー脆弱性に対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-02

「対ISサイバー作戦で大きな教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-23
「日本とイスラエルが覚書へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21
「成果Hack the Pentagon」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-20-1

「組織の枠を超えた情報共有を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-07
「中国には君らも脆弱だと言っている」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-23

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ロシア軍需産業の輸出見通しは悲観的!? [安全保障全般]

Denisentsev.jpg4月17日、CSIS客員研究員で露シンクタンク研究員のSergey Denisentsevが講演し、ロシア軍需産業の海外輸出動向について説明し中国やインドの国内軍需産業の成長や、原油価格低迷による顧客購買力の低下、兵器輸出国の増加等により、ロシアの兵器海外輸出が横ばいもしくは低下傾向だが、国内需要は少なくとも今後2年間は堅調だと語りました

そもそも、武器輸出額は把握が困難で、非公開部分や賄賂の存在により正確な統計が難しいとの前提付ですが、同研究員の説明は諸情勢からすると一理ある説明となっていますので、国際情勢を理解する上での一助としてご参考まで紹介します

ロシア軍需産業の海外輸出全般
ロシアの武器輸出額は、ロシアの統計によれば2011年以降ほぼ横ばい傾向にあるが、これを米国やスウェーデンの統計で見ると下降している。Denisentsev研究員によれば、集計する機関毎に統計方法が異なったり、掌握範囲が異なったり、非公開部分があったりで、正確な数値把握が難しいのがこの分野である

Russia arms-EX.jpg●一方で全般には、1990年代からロシア軍需産業の主要な顧客であった中国やインドの国内軍需産業が成長し、自国生産を始めた事は伸び悩みに直結している。また、リビアのカダフィー政権崩壊やベネズエラ経済の混乱の影響も大きい
●また原油価格の低迷により、アルジェリアやイラクやシリアからの兵器購入力が低下していることもマイナス要因である。更に、韓国や中国の軍需産業や、規模はまだ小さいながら南アフリカ、トルコ、シンガポールの同産業が、アフリカや中東で販路を拡大していることも、ロシアの足を引っ張っている

●同研究員は、ロシアはより「ニッチ」な、軍事ロボットや潜水艦市場に活路を見いだすべきだと主張した。またこれまでの歴史とは異なるが、自国市場を優先してニーズに応じた製品開発に取り組むべきだと提言した
●更に、ロシア兵器は「安価だが破壊力があり」「操作が容易」との評価で市場を伸ばし、技術移転にも柔軟に対応したことでも顧客を満足させたが、先進航空機の輸出により熟練の技術者を相手側にも求めることとなり、方針に変化があった。

SU-35戦闘機の例では、エクアドルやペルーやコロンビアへの輸出の際は、財政支援や長期ローンを組んだ上で売却していた(が、今は財政事情からその様な支援は難しい)

中国とインド向けの輸出等について
Russia china.jpg●中印両国にとって、特にロシアが技術移転に柔軟であったことが、国内軍需産業育成を狙っていた両国のニーズと合致した。中国はロシア輸出の22%を、インドは31%を占めており、依然として両国に依存する比率は高い

中国は天安門事件以降に海外から経済制裁を受け、それを契機にロシアからの兵器輸入が増えた。ロシアにとっては、ソ連崩壊直後の経済混乱時期を、中国からの需要で生き延びた関係である
●一方インドは、90年代後半の核実験強行により制裁を受け、ロシア製武器の輸入に頼った経緯がある。しかし特に中国は、90年代とは全く異なり(ジェットエンジンを除いては)、駆逐艦も潜水艦も空母まで自国製造が可能となってきた。インドも中国と同様の道を歩んでいるように見える

Russia India.jpgロシア産業はそれでも、第5世代戦闘機、超音速の対艦ミサイル、ミサイル防衛システム&対衛星兵器を自国用に開発しており、中国にとっては魅力的な共同開発分野となり得る
●一方でインドは、先端航空機、レーダー、光学装置で米国やフランス製品のライセンス生産等に傾きつつある

ロシアのシリアでの軍事活動は、輸出にはあまり貢献しないだろう。ロシアは長距離巡航ミサイルの輸出を禁じられているし、高性能防空ミサイルも自国軍の防衛にのみ使用している。大型爆撃機の市場も見当たらない
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以下の過去記事では、ロシアの軍需産業関係者やアナリストが、かなり明るい未来をロシア軍需産業に描いていますが、感覚的には今日ご紹介したような、決して容易ではない厳しい市場競争が待ち構えているのではないでしょうか?

これ以上コメントしようにも、基礎知識が不足しており不可能です。詳しい方のコメント等を募集致します。

なお防衛研究所の「東アジア戦略概観2017」の第6章ロシアでは、ロシア軍需産業の見通しは「右肩上がり」の雰囲気で書かれています
http://www.nids.mod.go.jp/publication/east-asian/j2017.html

ロシア軍需産業とロシア製品
「露軍需産業トップが未来を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-21
「露の専門家が自国軍需産業を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-13

「中国がSu-35輸入開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10
「インド検査員が露製艦載機を酷評」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11-1
「露が戦略核魚雷開発?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-06

ロシアに関する記事
「露軍の電子戦に米軍驚嘆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02
「また、6機目の大事故」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-15
「航空事故多発の露軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13
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驚嘆!最初からF-35に搭乗するパイロット養成 [亡国のF-35]

米空軍の操縦者不足、ここに極めり!?
本当に大丈夫か? そんなに操縦が簡単な飛行機なの?

F-35 luke AFB.jpg4日付Defense-Techが、米空軍のアリゾナ州Luke基地を取材し、空軍パイロット養成コースで最初からF-35に搭乗するという驚くべき「F-35 B-Course」の様子を紹介しています。

一般に世界の空軍では、戦闘機操縦者養成の場合、最初にプロペラの初級練習機で航空機の「いろは」と航空交通のルールを学び、次にシンプルなジェット練習機で航空機による作戦活動の基礎を学び、そしてその後に実戦で使用する各機種の部隊に配属されて腕を磨いていきます

ですから、最初の初級プロペラ機訓練開始から、戦闘機の基礎的技量取得まで、少なくとも3年程度は必要です。普通はプロペラ機搭乗訓練前に、航空機の基礎や法規を学ぶ地上教育期間も半年くらいはあり、これを合わせると3.5年から4年は必要です

F-35 Hill AFB2.jpgしかし今日ご紹介する「F-35 B-Course」では、なんと20か月で最も基礎的なレベルながら、F-35操縦者を養成するというのです。

背景には、米空軍の操縦者離職率が高止まりし、またA-10全廃ができずにF-35操縦者が確保できない事情もあるようですが、F-35が空対地任務を主とする作戦機と割り切ることで、操縦者を確保しようとの考え方があるようです

それにしても・・・大丈夫なんでしょうか? 技量不足で民間人を誤爆したり、事故続発・・・なんてことにならないことを祈るばかりです・・・

4日付Defense-Tech記事によれば
●アリゾナ州のLuke空軍基地の第62戦闘飛行隊の「F-35 B-Course」は、1年間の(地上準備)通常訓練を受けた6名の少尉から中尉の操縦学生を昨年12月に受け入れ、今年2月に空軍機での初飛行をF-35で実施させた
●昨年12月に同コースを開始以来、基礎的なF-35構造や兵器システムを教え、シミュレーションでF-35の搭載アビオニクスへの理解を深めさせ、2月の初飛行につなげた

F-35 fix.jpg8月まで続く実質141日間の同訓練コースは、300時間の教室授業、46回のシュミレータ訓練計80時間、F-35による48回の飛行訓練計80時間から構成されている
●同コースを担当するflight commanderであるOsterreicher大尉は、2010年からA-10で空軍操縦者をスタートした士官だが、A-10からF-35に転換して教官のリーダーを務めている。教官チームには4名の豪空軍操縦者が含まれている

第62戦闘飛行隊のほかに、第61戦闘飛行隊も同様のコースを9月に開始する。この2つの飛行隊の養成コースにより、今後5年間で約60名のF-35操縦者を養成したいと空軍は考えている
●Osterreicher大尉は「私の任務は、8か月間のコースで操縦学生をcombat readyにし、運用態勢にある飛行隊に送り込むことである」とインタビューに答えた

具体的な訓練の内容は・・・
F-35 N.jpg最近の数週間の訓練では、要撃戦術、戦闘機動、空中戦機動に焦点を当てた訓練を行っており、「機体システムを使いこなせるよう、より困難な状況下での訓練に今後進んでいく」、「空中戦はさほど重視していないが、そのような場面で生き残る術を教えるのが我々の役目」と同大尉は説明し、F-16との空中戦訓練も含まれていると語った
●また同コースの終盤では、A2AD環境でF-35操縦者が期待される見通し外での戦い(beyond visual range)に進んでいくと説明し、「今後は本コースのハイライトである空対地支援、航空阻止、敵防空網制圧の技術習得に取り組んでいく」と同大尉は述べた

●同コース終了後、同コース修了者は、Hill空軍基地で立ち上げられる作戦可能飛行隊の要員として配属される
●同大尉は、他の機種の操縦経験が全くない訓練生は「フレッシュで、新品のスポンジのように教えられたすべてを吸収している。そこには明確な未来があるからだ」と表現した

●一方で、他機種の経験がない中で戦技を学びながらコースを進めているが、安全確保との兼ね合いが大きな挑戦であると同大尉は語り、安全に関する基準を満たさないことが、コースアウトになる一番の原因だと述べた
●そして「例えば、彼らにとって着陸が困難な課題だが、離着陸を安全にできなかったら落第することになる。また教官機や他機と1000フィート以内に接近しないとの約束を守れないようだと落第させることになる」と語った
////////////////////////////////////////////////////////////////////

F-35 luke AFB2.jpg教官が後席に座る「複座機」がないF-35を、空軍機として初めて操縦するパイロットの卵たち・・・日本ではちょっと考えられないですねぇ・・・

米国では、民間の操縦学校でセスナ機等の免許を取得することが比較的容易ですから、空軍機以外である程度操縦経験がある者を「直接F-35コース」に入れている可能性はありますが・・・

しかしそうだとしても、いきなり単座のジェット戦闘機ですか??? よほど適性検査や「動物の勘」試験で成績の優秀な人間を選んでいるのでしょうか??? 今後に注目ですねぇ・・・。くれぐれも事故等無いようにお願いします

米空軍と操縦者不足
「米空軍の戦闘機パイロット2割不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-22
「機種別操縦者数で無人機がトップに!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-09
「今後20年の操縦者不足は深刻」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29

「60年ぶり下士官が単独飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-10
「RQ-4操縦者の7割が下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13-1
「米空軍よ、使い捨て無人機を考えろ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30

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お久しぶり!Work副長官が議会証言 [米国防省高官]

1月18日の送別式典以来のご発言
式典の様子→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-17
お声が聞けてうれしいです!!!

work AFA.jpg3日、Work国防副長官が上院予算関連小委員会で証言し、担当している調達技術兵站担当次官(AT&L)の分割検討と、サイバーコマンドの格上げに関する検討状況を説明しています。

何回かご紹介したように、国防省ではマティス長官以外の政治任用ポストが全く埋まっておらず、副長官や陸海空軍長官も空席のまま5月を迎えています。
そして「後任者が決まるまで留任する」ことになっているWork副長官は、山のような課題を背負って頑張っているわけですが、前政権で最も力を入れていた「第3の相殺戦略」について話を聞けず残念です。

それにしても・・・、対ISISや北朝鮮も大事なんですが、本格紛争に備え、米軍の技術優位を将来にわたって確保しようと、米国防省が1月19日まで取り組んで来た「第3の相殺戦略」はどうなったんでしょうか? 個々の部品事業は、各担当部署でそのまま進んでいるような気もしますが・・・。まぁ、その話題はまた別の機会に・・・

本日は断片的ながらお話が聞けるので、4日付米空軍協会web記事から久しぶりにWork副長官の議会証言を取り上げることにします・・。

調達技術兵站担当次官(AT&L)の分割検討
Work-Atlantic3.jpg●国防省は、調達技術兵站担当次官(AT&L)ポストを、研究開発担当と調達維持担当に分割するよう議会から命じられており、2018年2月1日が期限となっている。本件に関し、マティス国防長官に案を説明して了承を受け、前進できることになった
●国防省として、議会に提示できる調達技術兵站担当次官(AT&L:undersecretary of defense for acquisition, technology, and logistics)を2つのポストに分割する案が出来上がり、「10日以内」に議会と議論が開始できる

●研究開発担当の仕事は、「国防省におけるchief technology officerのような仕事」で、「迅速な要求装備の実現:rapid prototyping」を主に期待されるポストである

サイバーコマンドの格上げ 他のメジャーコマンド並みへ
Work-Reagan.jpg●2017年度国防授権法により、国防省はサイバーコマンドを(戦略コマンドや輸送コマンドや太平洋コマンドのような)フル・コマンドに格上げするよう命ぜられおり、2018年9月までに格上げ態勢で任務遂行が開始できるよう準備を進めている
●格上げ改編で焦点となっているのは「defensive」と「offensive」部門を設けることで、両者を機構に組み込むことで、我々のネットワークを監視しつつ、必要時に命ぜられれば、国家がその力を活用できるように編成する

●米軍が直面しているサイバー脅威に対処するには、人間の能力だけでは不十分であり、人工知能や「learning machines」の力を借りて撃退する必要がある。
●なぜなら我々には、我がネットワークを全ての脅威から防御するだけの十分な人員がいないからだ
/////////////////////////////////////////////////////////////////

読んでいくと、自らに与えられた10数個の特別任務に取り組みつつ、しっかり持論である「第3の相殺戦略」の主要要素である人工知能や「learning machines」をアピールしています。

work farewell2.jpg早くてもあと1か月くらいは後任者決定まで時間が必要でしょうから、ネーミングはとともかく、しっかり「第3の相殺戦略」の神髄を各種施策に編み込んでいただきたいものです

しかしAT&Lポストに至っては、実際の人が配置承認されるまで、どれだけ時間が必要なんでしょうか? それまでどうするんでしょう・・・

追 伸
5月8日に空軍長官候補に対する承認投票が上院で行われます
空軍士官学校の女性3期生の元下院議員のこの方が候補者
「空軍長官候補」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-24

追 伸2
陸軍長官候補者の2人目も5日に自ら撤退
http://www.militarytimes.com/articles/army-sec-mark-green-drops-out

関連の記事
「副長官の膨大な課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-18
「Work氏退任式典の様子」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-17

「米軍サイバー機関の問題や対策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-14
「サイバー脅威の変化と対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-21

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EU離脱で英ポンド下落し英国防計画ピンチ [安全保障全般]

May UK.jpg4月25日に英議会の予算監査委員会PACがレポートを発表し、英国防省が2015年に作成した国防計画SDSRは、英国のEU離脱Brexitや新装備開発&導入を巡るコスト不透明性などから、実行可能性が危ぶまれる状態にあると警鐘を鳴らしています

また、英国防省が約束したはずの自助努力による予算削減への取り組みが未達成で、これも2015年の国防計画SDSRの将来を危うくしていると主張しています

英国も多くのNATO諸国や欧州諸国と同様に、冷戦終結後の平和の配当を享受する為、国防費を大幅に削減した経緯があり、最近のロシア軍やイスラム過激派の活発化を受け、米国から国防費をGDP比2%に戻せと厳しく迫られているところです

そんな環境下、米国の一番の同盟国として、国防強化の方向性を明確にした2015年国防計画SDSRを打ち出したのですが、早くも暗雲が立ち込めています。
欧州諸国では、ドイツもフランスも国防テコ入れを迫られているのですが、経済もそんなに順調ではない中、厳しい状況にあるのが現状です。そんな典型的な例として、また英国F-35の購入がピンチだとのお知らせのため、26日付Defense-News記事の概要をご紹介します

26日付Defense-News記事によれば
p8.jpg●4月25日に英議会の予算監査委員会PAC(Public Accounts Committee)が発表した報告書は、英国防省が2015年国防計画SDSR(2015 strategic defense and security review)などで打ち出している装備品調達計画が、予算面から実行可能性が危機に直面していると明らかにした
●そしてPACが2012年に誕生以来、国防計画は裁断の危機に直面していると表現し、「予算面での実行可能性を保つには、国防省が未だに約束を果たしていない、希望的観測に基づく自らの効率性向上による予算捻出に努力してもらうほか無い」と表現している

●例えば英国防省の計画によると、F-35とP-8購入予算がピークとなる2020/21予算年度には、両機種購入だけで「£150 million:2.5兆円」必要だが、2016年度国防予算全体が「£178 billion」であることを考えれば「unaffordable」である
●またPACは、英国防省が5年前から大規模プロジェクト管理を見直していることは認めつつも、2015年国防計画SDSRが打ち出した「£24 billion国防予算増額」を飲み込むことは容易でないと指摘し、国防省が「新たな脅威対処」に準備した「£10.7 billion」も既に底を突いている

May UK3.jpg●今後5年間で英国防省が計画している新装備導入には、P-8対潜哨戒機、アパッチ攻撃ヘリ、MQ-1無人偵察攻撃機、F-35戦闘機、新型フリゲート艦(2隻)、Dreadnought級戦略原潜(4隻)、戦術通信衛星、補給艦、装甲車、新型ミサイル等々がある

●昨今の情勢を受け、保守党政権は国防費増額圧力を受けるだろうが、国防省内の効率化によりその経費を捻出することになっている実態だ。しかし2015年に国防省と財務省が約束した「£7.3 billion」の経費節減でさえ、2015年国防計画SDSR発表後1年経過した今でも「£2.5 billion」しか達成されていない状態だ
更に懸念されているのが「Brexit」による英ポンドの下落だ。2016年予算案が編成された当時の「$1.55 to the pound」から既に30セントも下落しているが、特にF-35とP-8購入に必要な英ポンド下落に伴う追加経費をどのように今後まかなうかについて、何の話し合いも行われていない
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女王陛下の名を冠した英海軍新型空母の艦載機F-35B予算が確保されていない惨状を以前ご紹介しましたが、毅然とした頼もしそうなメイ首相ではあるものの、実態は寂しい限りです

May UK2.jpg国防省の自助努力で効率化して経費捻出とか言っても、6~7年前には国防費大幅削減で「士気崩壊」状態にあった英国軍ですから、「今更何を・・・」と白けたムードだと思います

フランスの大統領が誰になろうとも、ドイツのメルケル首相が如何にがんばろうと、欧州は全体として極めて厳しい歴史の流れの中にあるような気がします。日本だって偉そうに言えた状態ではないのですが・・・。

英国軍を考える記事
「米軍F-35Bを英空母に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16
「英軍新空母を南シナ海に!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06
「新空母の艦載機が不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

「予算減で英軍の士気崩壊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-18
「英軍が戦闘機半減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-13-2
「大なた:英軍の大軍縮」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19-1

ドイツ軍の増強関連
「ドイツ軍が対露で増強へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-12
「ドイツとオランダが連合部隊へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-05
「今後5年間国防費6%増へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-21-1
「ドイツ軍の人材確保策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-09-1
「2011年時には大軍縮計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-30

NATOがトランプ大統領を懸念
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-15-1

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再び:米会計検査院VS国防省F-35計画室 [亡国のF-35]

F-35 GAO.jpg24日、議会から提出を求められている米会計検査院GAOによる今年2回目のF-35計画評価レポートが発表され、何時ものように厳しいF-35計画の現状が報告されており、「ソフト3F」開発の遅れ、「Block IV」開発への警告&提言、そして「まとめ買いによる単価軽減策への注文」など、様々な視点で問題点が暴露されています

これに対し、国防省F-35計画室が直ちに反論を展開していますので、何時ものようにご紹介します。国防省側の基本的なスタンスは、指摘された問題点は全て把握して対処しており、これまでの問題解決実績が示す通り大丈夫だ・・です。

ただし、会計検査院や国防省試験評価局の問題点指摘と、F-35計画室の反論合戦はこれまで何度もご紹介してきましたが、結局F-35計画室側の見積もりが甘いケースがほとんどでしたから、今回も偏見一杯にやりとりを眺めることをご推薦申し上げます

米会計検査院のF-35レポート
http://www.gao.gov/products/GAO-17-351?utm_medium=email&utm_source=govdelivery

27日付米空軍協会web記事によれば
F-35 fix.jpg●まずGAOは、現在実施中の「ソフト3F」の開発試験終了が約1年遅れるだろうと指摘し、これにより、米海軍用F-35C型の初期運用態勢確立時期やフル稼働生産開始が遅れると指摘し、遅れによるコスト上昇が1900億円程度になると予想している
●これに対しF-35計画室は、現時点で同ソフト開発試験は計画通りで、2018年2月までには終了する予定に変化は無いとし、今後の試験期間についても過去の経験データに基づき進捗を予想して大丈夫だと見積もっていると反論した

●(しかし同時に言い訳がましくF-35計画室は、)ソフト3F開発のある程度進んだところで、再度計画全体の進捗やコストと時程の調整が必要かどうかを再評価すると説明し、「(現時点では)米海軍F-35の2018年IOC宣言や、他軍種や同盟国等のF-35計画に影響が出るような遅れは無いと見積もっている」と反論している
●また、遅れによる経費増についてF-35計画室は、現在の予算約2500億円でF-35開発計画は終了できると予想していると説明し、仮に遅れが出ても2018年5月までの延長経費約110億円は、その後の能力向上予算を充てることでカバーするよう議会から命ぜられていると訴えた

「Block IV」開発や「まとめ買い」について
F-35-test.jpg会計検査院GAOは不安定な「ソフト3F」開発状況を警戒し、完成した「ソフト3F」を更に発展させる「Block IV」開発を、完全に「ソフト3F」が完成するまで待つべきだと提言している
●これに対しF-35計画室は、敵の脅威が日々深化する中で、次の近代化施策である「Block IV」開発を後送りすることは、米軍の能力確保上重大な問題でアリ、3月に要求性能がまとめられた「Block IV」開発は予定通り進めるべきと反論した
●そして「Block IV」開発は透明性を確保して進め、コストやスケジュール管理状況を適宜報告すると説明した

更にGAOは、国防省が企てている複数年度に渡る調達要求を一括して行い、単価削減効果が期待されると宣伝されている約440機の「まとめ買い:block buy:economic order quantity(EOQ) purchase」発注に関し、その内容を精査して明らかにするよう求めている
●この要請についてはF-35計画室も理解を示し、議会に理解を得られるよう、関係国や企業や価格等等の詳細を含む全体計画を提出するよう計画していると説明し、約440機のまとめ買い発注で約2200億円の節約効果が期待できるとの見積もりを明らかにした

●(間もなく退役する)F-35計画室長のBogdan中将は、「GAOのレポートは読者に誤解を与える可能性がある」「指摘の内容は全て把握しており、関係国も始め承知の事項である」「計画全体には依然課題もあるが、これまで課題を解決してきた実績もアリ、自信を持って取り組んでいく」と述べた
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開発計画が進んだ時点で「計画を再精査」し、やっぱり会計検査院や国防省試験評価局のご指摘が正しかった(とは決して認めないが)・・・との幕切れを何度も見てきましたので、「現時点では大丈夫」は「タイミングが来たら遅れや経費超過」を認めます・・に聞こえます

F-35 luke AFB.jpgまた試験遅延の場合の経費増対処についての「反論」は、3ヶ月遅れまでは自分でカバーするが、それ以上についてはお願いしますと宣言しているようなモノで、GAOが指摘の1年遅延なら「また血税投入」なわけです

米空軍がF-35Cを早期退役させ、「Buy American」圧力で日本がF-35を買わされることがないよう、国防装備が犠牲にならないよう、切に願うばかりです・・・

「最終試験は1年遅れでも計画通りは不可能」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-17

会計検査院関連の記事
「ALISにはバックアップが無い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-01
「核戦力維持には10年36兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「空軍の無人機操縦者処遇を非難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-16

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映像:SpaceXが偵察衛星打上げと1段目回収に成功 [安全保障全般]

reusable-Falcon.jpg米国東部時間の1日朝、Space-X社が「Falcon 9」が初の国家安全保障関連の衛星打ち上げに成功し、売り物である第1段目の垂直着陸回収にも成功しました。
快晴の中で行われた見事な垂直着陸の映像が世界中に配信されていますので、ご紹介します

米国の政府関連事業打ち上げ(軍事衛星など)は、2006年12月にロッキードとボーイングの衛星打ち上げ部門が合併して誕生したULA(United Launch Alliance)が独占し、打ち上げ価格の高止まりなど、競争相手が無いことの弊害が指摘されて来ました。

そこに有名企業家Elon Musk氏が率いるSpace-X社が「Falcon 9」ロケットで参入し、打ち上げ失敗と鈍重な官僚的手続きを乗り越え、2015年5月に参入承認を獲得して大きな期待を集めていました。
しかし2015年6月の国際宇宙ステーションへの物資輸送と、2016年9月のイスラエル商用通信衛星打ち上げに失敗し、米国当局が政府関連事業に備えた安全性確認を再度行っていたところでした

そんな中でもSpace-X社は、打ち上げコスト削減の鍵であった「第1段目ロケット」の「垂直着陸回収」に挑戦し、何回かの失敗を乗り越え、2015年12月に回収に成功しています。
その他、民間宇宙飛行ビジネスや大型打ち上げロケットにも同社は挑戦しており、その元気な動向が注目されています

5月1日「第1段目の垂直着陸回収」映像(約1分半)

1日付軍事メディア報道によれば
●打ち上げは当初、4月30日の日曜日に予定されていたが、センサーに異常が見つかり、5月1日に延期されていた。
●同社CEOのElon Musk氏は、1日も上空の風が強く限度いっぱいの98.6%だったが、ぎりぎりのコンディションを苦にせず、打ち上げは成功したとツイッター上で振り返っている

reusable-Falcon2.jpg打ち上げはフロリダ州のケネディー宇宙センターで行われ、国家偵察局NRO(National Reconnaissance Office)の非公開衛星衛星を打ち上げた。衛星の細部は一切明らかになっていない。
●「第1段目の垂直着陸回収」は「Cape Canaveral空軍基地」で打ち上げ数分後に行われた。成功の様子を伝える映像に、カリフォルニアの同社本部は歓声に包まれた

陸上で「第1段目の垂直着陸回収」に成功したのは4回目で、海上も何回か成功している
●同社はまた、回収した「第1段目ロケット」の再使用発射を4月に成功している
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「Falcon 9」ロケットの第1段目を再利用可能となったとして、重要性が高く代替衛星の確保が簡単ではない「政府関連事業衛星」を、まだ実績が十分でなくリスクがある「再利用ロケット」で打ち上げるかとの問題が指摘されており、すぐさま打ち上げコスト削減につながる状況ではないようです

Elon Musk.jpgまた「Falcon 9」ロケットは打ち上げ可能重量が小さく、大型の衛星や物資運搬には使えません。

そんなこんなのSpace-X社「Falcon 9」ですが、失敗を乗り越え、着実に実力と実績を積み重ねています。今後も応援したいです!!!

Space-X社の参入とULA
「イスラエル通信衛星失敗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-06
「ロケットの着陸回収に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-25
「混迷の米衛星打ち上げ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-24
「10年ぶり米軍事衛星打上げに競争導入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-03
「軍事衛星打上げにSpaceX参入承認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-27

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ボーイングが米空軍のF-15C退役案に反撃 [米空軍]

F-15C3.jpg4月17日、F-15を製造維持するボーイング社の同機担当副社長が、Defense-Newsのインタビューを受け、米空軍幹部が盛んに言及するようになったF-15C/D退役案を厳しくけん制しました。

同副社長の主張は、F-15の高い能力、既に延命措置を一部機体に開始しており税金の無駄、延命&能力向上オプションには多様な価格の選択肢があり慎重な検討が必要などです。

また別の視点でDefense-Newsは、F-15退役策がライバルであるF-16とF-35製造のロッキード独り勝ちを招き、軍需産業政策上の問題になることも示唆し、政治レベルの寝技抗争に持ち込む可能性をにおわせています

21日付Defense-News記事によれば
Parker Boeing.jpg●ボーイングのF-15担当副社長であるSteve Parker氏は、米空軍が制空用F-15C等の退役検討について、すでに2030年代まで使用可能にする延命策を開始している中で困惑している様子を示した
●同副社長は、同機の縦型構造材(longerons)を1機1億円で交換するだけで、2030年代まで延命させることも可能だと説明し、「納税者視点でも費用対効果のオプションであり、米空軍が戦力不足を訴える中、周知のF-15能力を提供できる」と訴えた

米空軍軍側は、例えば調達担当のArnold Bunch中将が「老朽作戦機を考えるとき、予算をかけて改修しても、それほど延命できないのであれば改修に値しない」と述べ、新ACC司令官が1機30~40億円の延命策の採否を検討する必要があると語っている
しかしこの金額は最も包括的で高価な改修案で、ボーイング社には他の改修オプションもあると同副社長は語った

F-15C2.jpg●また副社長は、延命改修の一部である同機の縦型構造材(longerons)交換は既に米空軍により開始されており、飛行時間8800時間時点で確認実施され、2026年まで実施されることになっているとも明らかにした
●更に副社長は、F-15がF-16より優れていると主張し、「より早く、より多く搭載し、より遠くで活動でき、長時間空中待機が可能である」と語った。そして「なぜF-16に小さなAESAレーダーを搭載するのか? すでにF-15に搭載した改修費用はどうなるのだ?」と訴えた

●なおボーイング社は来年から、米空軍F-15の 新型電子戦システムであるEPAWSS(Eagle Passive/Active Warning and Survivability Syst)の飛行試験を開始することになっており、また2か月以内に最初の新型演算処理装置を搭載コンピュータに提供開始することになっている
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米空軍はこの副社長の指摘を十分承知しながらも、F-15退役を検討しているのだと思いますが、F-15退役策がF-16とF-35製造のロッキード独り勝ちを招き、軍需産業政策上の問題になる可能性は重い話で、軍事の世界を離れた紆余曲折もありえる課題となりそうです

F-15 JASDF2.jpg繰り返しになりますが、日本にとって米空軍F-15Cの退役は、兄弟機である航空自衛隊が約200機保有するF-15J戦闘機の「維持」に直結しかねない問題でアリ、「America First」で「Buy American」主張前面押し出しのトランプ政権を考えれば、他の日本の産業を守るため国防装備購入で妥協する可能性の高さを思えば、「F-35の追加押し売り」にも容易に発展する事態です

米空軍F-15の関連記事
「ACC司令官:F-15退役やむなし!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-22
「米空軍がF-16延命へ:F-15C退役に弾み?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
「衝撃:制空用F-15全廃検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-23

「現実的で低価格なF-15能力向上案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15
「米メディア:心神よりF-15改修」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-16
「F-15全機の電子戦機材換装へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-05

「米空軍がF-15と16の延命検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-25
「F-15の寿命を2倍に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-27
「F-16の延命措置300機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-31-1

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ロシアが北極圏の新しい軍の基地公開 [安全保障全般]

Trefoil 3.jpg4月29日付Military.comが、ロシア国防省がweb上で公開した新しい北極圏の基地「Arctic Trefoil military base」を紹介し北極圏での活動で「遥かにロシアに劣る」現状を嘆く元米沿岸警備隊司令官などのコメントを引用しています

地球温暖化が原因と言われる北極海の「氷の減少」により、北極圏の地下資源や「第2のスエズ運河」と言われる北極航路の開拓を巡り、沿岸のロシアや北欧諸国だけでなく、中国までが乱入して熱いエリアとなっている北極圏の様子を久々に取り上げます

ちなみに北極圏の原油の埋蔵量は41兆バレル以上で、サウジアラビアのそれ以上と言われているようです。

4月29日付Military.com記事によれば
Trefoil.jpg●4月17日付でロシア国防省webサイトに、新たな北極圏の軍基地「Arctic Trefoil military base」のバーチャルツアーが掲載された。同基地はロシアが北極圏に構築した基地の中で最も北に位置し、「Franz Josef Land列島」に設けられた
約14,000平方マイルの敷地を持つ同基地は、ロシア国旗の色をあしらった塗装がなされ、150名の兵士が外部からの支援なしで18ヶ月生活できる施設だとロシアはアピールしている

前海兵隊司令官で現在国務省の北極問題特別代表であるRobert Papp退役大将は、「プロパガンダに満ちたwebサイトだ」と述べつつ、3月にプーチン大統領が同基地を訪問するなど、ロシアの一貫した北極圏への取り組みに危機感を訴えた
●Papp特別代表は「米国は世界中の様々な地域を気に掛けているが、北極圏にはそれが無い」、「一方でロシアは、それが文化の一部であるかのように北極に関与し、地下資源や原油や天然ガスを我が物とすべく取り組んでいる」とFox Newsで語った

●そして同特別代表は、北極圏で実際の戦争が起こる可能性は低いが、新たな冷戦と捉えるべきで、米国は早く目を覚まし、北極圏での活動に早急に備えるべきだと訴えた

Trefoil 4.jpg●アラスカ選出のDan Sullivan上院議員も、「ロシアは着実に北極圏で戦略的能力を蓄えている」「プーチンは北極航路を新たなスエズ運河と呼んで力を入れている」と危機感を訴えている
●同上院議員は長年、米国が北極圏でプレゼンスを示すように訴えてきたが、この結果として、オバマ政権が廃止を決定していた第25歩兵師団の第4旅団(米軍で唯一極地での活動ノウハウを保持する部隊)の存続させることになった

しかしロシアや中国の勢いには及ばないのが現状である。中国の調査船が北極航路調査のために同海域で活動する様子が複数確認され、ロシアは米国を遥かに上回る砕氷船団で北極航路の活用を目指している
●Sullivan上院議員は「ロシアは砕氷船を40隻保有し、更に原子力推進を含む13隻を追加建造しようとしているが、米国は僅か3隻でその中の1隻は故障中である」と圧倒的な能力差を訴えている

ロシア国防省の関連webページ http://eng.mil.ru/en/structure/okruga/north/news/more.htm?id=12118973@egNews
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Trefoil 5.jpg米国の砕氷船は、実質1隻のみが活動可能な状態にあるようです。

新たな建造には時間が掛かり、予算も必要なことから、「とりあえずリースで穴埋めしよう」との案も出ているようですが、小型で旧式な砕氷船しか市場には存在せず、ガッツリ武装した大型のロシア砕氷艦とは比べるのも哀れな話だそうです・・・

ちなみに、ロシアが北方領土に配備した地対艦ミサイルは、北方での活動を活発化する中国艦艇を意識したものとの見方があります

北極&極地関連の記事
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02
「ロシアが鉄の壁構築」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-07

「露軍が北極に部隊増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04-1
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09
「米軍C-17が極地能力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-02

「ロシア軍が北方領土に地対艦ミサイル配備へ」 http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-26 

北極海を巡る米国防省と米軍の動き
「北極海での通信とMUOS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-25-1
「米国防省の北極戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-23-1
「米海軍が北極対応を検討中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20

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