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中国産軍用航空機エンジン続々も合金調達に課題 [中国要人・軍事]

WS-19とWS-20開発に目途もサプライチェーンに
その他のエンジンについても少し整理

WS-19 China.jpg3月17日、中国の国産軍用航空機エンジンを担う研究機関「Beijing Institute of Aeronautical Materials」のZhang Yongプロジェクト責任者が天津市で講演し、次世代エンジンWS-19とWS-20開発が困難を克服して成功したが、大量生産を開始するにはエンジン生産に必要な合金関連のサプライチェーン問題解決が必要だと語りました。サプライチェン問題の細部には言及していませんが・・・

不動産バブル崩壊で中国経済の足元が揺らいでいると見られる中、「開発完了」とか「量産準備よし」の話をどこまで真に受けてよいのか半信半疑ですが、27日付Defense-Newsが次世代エンジンと呼ぶWS-19やWS-20エンジンの他、WS-15やWC-10シリーズについても断片的にZhang Yong氏が語ったようなので、頭の整理のためご紹介しておきます

開発完了の次世代エンジンWS-19やWS-20は・・
WS-20 China2.jpg・WS-19はアフターバーナー付きターボファンエンジンで、次世代空母艦載機であるJ-35への搭載を目指しているもの
・WS-20は高バイパスターボファンエンジンは、中国製大型輸送機Y-20への搭載を狙っているエンジン。現在同機はロシア製D-30KP-2ターボファンエンジン(H-6爆撃機H-6J/K/Nにも搭載)を搭載している

スパークルーズ可能なWS-15が量産可能に
WS-15 China2.jpg・WS-15は現在国産のWS-10Cエンジンを搭載しているが、スパークルーズ可能と言われるWS-15が完成して量産可能となったので、最近製造された(今後生産される?)J-20に搭載する

WC-10Cが98%自国産に
・ステルス戦闘機攻撃機J-20に現在搭載されているWS-10C(181キロニュートン)が98%自国産(98% localization)を達成。残り2%については語らず。

以下は関連報道情報ですが、
WS-15 China.jpgWS-10シリーズは、10年ほど前から陸上基地配備で双発の「J-11B要撃機」や「J-16攻撃機」、最近では「J-20ステルス機(攻撃機)」の量産型に搭載開始とのニュースが伝えられるようになってきた中国製戦闘機エンジンの本流

その中でWS-10B形に注目が・・・
WS-10B China.jpg・WS-10Bは排気ノズル構造等からステルス性が高いと言われ、J-10Bに試験搭載される様子が確認されていましたが、2021年5月に中国国営ラジオwebサイトが、中国空軍の単発J-10C戦闘機に同エンジン搭載の映像を公開し、米軍事メディアが「ついに中国製エンジンが信頼性を高め、量産型単発戦闘機に搭載された」と配信。単発機エンジンには特に高い信頼性が求められるが、WS-10Bがそのレベルに達したとの証左

中国輸送機と空母艦載機エンジン関連の最近の記事
「中国空軍がY-20U空中給油機を量産開始か?」→https://holylandtokyo.com/2021/02/24/268/
「国産エンジンを空母艦載機J-15に搭載か」→https://holylandtokyo.com/2022/12/07/3999/

WS-10エンジンが登場する過去記事
「単発J-10CにWS-10B搭載」→https://holylandtokyo.com/2021/05/14/1497/
「中国航空ショーでのJ-20を評価する」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-10-1
「J-20が初の海上行動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-05-12-1
「報道官が戦闘能力発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-1

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米空軍が極超音速兵器ARRW導入を断念 [米空軍]

3月13日の試験失敗を受け
データ蓄積のため計画通りあと2回試験は行うが
戦闘機クラス搭載のHACM開発に絞り込み

HAWC3.jpg3月29日、米空軍のAndrew Hunter調達担当次官が下院で、3月13日に部隊導入を想定したプロトタイプ発射試験に失敗した爆撃機搭載型の極超音速兵器ARRW(AGM-183A Air-launched Rapid Response Weapon)について、残る2つのARRWプロトタイプを使用した試験は予定通り実施するが、あくまで将来の他方面への応用を想定したデータ収集試験だと述べ、作戦用に本格調達はしないと決断したと明らかにしました

前日の28日にKendall空軍長官が下院で、3月13日の試験は失敗だったと初めて公式の場で認め、「ARRWは開発段階で少し苦労している」、「もう一つの空軍用極超音速兵器である戦闘機タイプ搭載型のHACM(Hypersonic Attack Cruise Missile)により注力していく」と述べていましたが、Hunter次官は更に踏み込み、ARRW型の部隊導入は無いと言い切りました

ロッキード開発担当のARRWは
HAWC4.jpg・爆撃機B-52から発射され、ロケットブースターで加速して音速の5倍以上に達した後、推進装置の無い弾頭のみが分離され目標を攻撃する兵器で、比較的射程が短いことから、固定の高価値目標を比較的近距離から攻撃することを想定した兵器と言われている
・2021年には3回連続試験に失敗していたが、2022年は5月7月12月の試験に3回連続成功しており、特に12月の試験は「大変よくできた成功」と評価されていたが、空軍長官はARRWに懐疑的で「ARRWは自身でその成熟度を証明する必要がある」とも言及していた

残ったレイセオン担当のHACMは・・・
HAWC5.jpg・HACMは、弾頭と極超音速飛行用スクラムジェットが一体化しており、戦闘機クラスから発射する方式で、戦闘機で一刻を争う高価値の標的を狙うオプションを提供することを狙いとしている。
・2021年9月に3度目の正直で基礎試験に成功し、2022年11月末にレイセオン社とプロトタイプ開発契約を約180億円で締結したところ

米空軍は今後、HACM開発に資源を集中していく事になりますが、これまでにもご紹介してきたように、米国防省や米議会は既にロシアや中国が極超音速兵器開発に成功していると言われることから国産兵器開発を急いでいますが、Kendall空軍長官は極めてクールな目線でこの開発を見ています

2022年2月の同長官発言を振り返ってみると
Kendall SASC.jpg●同兵器が完成しても、その高価格や役割から保有兵器数は「small」になる
●米国を遠ざけたい中国と、中国抑止用に同兵器を考えている米国とでは、同兵器の位置づけは異なり、中国と同様に米国が追求する必要は必ずしもない。
●空軍の空中発射型は航空機で発射地点まで運搬する必要があり、前方基地や前方配備艦艇から発射可能な米陸海軍の同兵器より不利な位置にある

AGM-183A2.jpg●極超音速兵器は有効だが、米空軍が攻撃すべき目標を攻撃する唯一の手段ではない。高価で費用対効果や他の要素からも、慎重に投資を検討する必要あり。低速度の巡航ミサイルは安価で、ステルス性や敵防空網への妨害と組み合わせれば有効で、総合的に将来の兵器体系を考える必要がある
●少なくとも初期型の同兵器は固定目標対処用になるが、米国は多数の移動目標に対処する必要があり、同兵器の必要程度は慎重に見極める必要がある
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米陸軍は2023年に2回の発射試験を行った後、2023年末にも地上発射型を部隊配備しそうですので、米軍全体としての今後の動向を「生暖かく」見守りたいと思います

米軍の極超音速兵器開発
「Zumwaltへの極超音速兵器契約」→https://holylandtokyo.com/2023/02/22/4313/
「バカ高い極超音速兵器:米議会が試算」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/
「陸軍はあと2回試験」→https://holylandtokyo.com/2023/01/17/4107/
「3回連続ARRW試験に成功」→https://holylandtokyo.com/2022/12/16/4061/
「高価な兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「空軍長官:重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「潜水艦へは2028年」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-19
「3度目の正直でHAWC成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-28
「米艦艇搭載は2025年頃か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-24

迎撃兵器システム開発関連
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

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今度は空軍F-35が嘉手納基地に展開 [米空軍]

F-22とF-16とF-35とF-15が同時に嘉手納に
周辺地域に小規模展開でACE訓練や対中国示威活動へ
展開機数は全ての機種で非公開だそうですが・・・

F-35 kadena2.jpg3月30日付米空軍協会web記事は、28日にアラスカのEielson基地第355戦闘飛行隊所属のF-35が、嘉手納基地に展開したと米空軍が発表と報じました。展開機数を米空軍は「作戦上の非公開事項」として明らかにしていませんが、既に展開しているF-22やF-16は今も機数非公開ながら嘉手納に所在しており、外からの派遣戦闘機が3機種揃う豪華ラインナップとなりました

この戦闘機派遣は、2022年10月28日に突然米空軍が、嘉手納基地に約40年間展開してきた48機のF-15C型戦闘機を今後2年間で段階的に米本土へ撤退&退役させると発表し、12月に第一弾として8機のF-15が米本土に帰還したことを受けた対応で、最終的な後継機は検討中ながら、当面の間は第4&第5世代戦闘機ローテーション派遣で「戦力の空白」は作らないと説明していることを受けたものです

F-35 kadena.jpg穴埋め戦力ローテーション派遣として、昨年11月5日にアラスカからF-22が8機展開(現機数は不明)し、今年1月17日にはドイツの米空軍基地から16機のF-16が展開(現機数は不明)したところです。

米太平洋空軍報道官は「4月以降にF-15の第2弾撤退が行われる」、「F-15帰還は、戦闘機プレゼンスに空白ギャップが生じないよう、十分な展開戦力が確保された後に行う」とF-35展開に際して説明声明を出しています

F-35 stand-down2.jpg嘉手納基地に展開した5世代戦闘機を米空軍は柔軟に活用しており、F-22は今年既にグアム島周辺のテニアン島やフィリピンに初展開してACE構想成熟と対中国同盟国との連携強化に貢献し、F-35も「人員や装備をローテーションしつつ複数の場所に展開することを計画している」と同報道官は説明しています

また米空軍は、2024年度予算案に嘉手納基地の最新戦闘機運用態勢整備費を約110億円を盛り込み、アジア太平洋軍の対中国態勢整備強化を図ろうとしています

Moore.JPGなお、嘉手納基地に残っている年齢40歳以上のF-15C戦闘機の状態は相当悪い模様で、3月29日に下院軍事委員会で証言したRichard G. Moore米空軍計画部長は、「2022年時点で飛行不可能な機体が2機と米本土への期間飛行1回のみ可能な機体が2機あったが、現時点では飛行不可能機体が3機と1回のみ機体が4機の状態で、状況は日々悪化している。定期分解修理して状態を確認すると、10機の内2機しか飛行可能にならないのが現状だ」と証言しています
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F-22とF-16とF-35が同時に所在して存在感を示す米空軍嘉手納基地ですが、台湾有事の際に作戦根拠基地として機能維持可能かどうか危うい同基地に、軍事的緊張が高まった際にいつまで航空戦力を残しておくかは政治的に極めて難しい判断です

F-35.jpg軍事的合理性からすれば、早めに航空戦力を分散や後方基地へ「転進」し、地上で「座して死を待つ」状態を脱したいところですが、このタイミングは対中国面でも、同盟国との関係面でも、大きなものとなるはずです。作戦計画にはどのように表現されているのか気になります???

嘉手納基地F-15撤退と代替戦力派遣
「ドイツからF-16展開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/19/4178/
「第1陣の8機米へ帰還」→https://holylandtokyo.com/2022/12/06/4021/
「米空軍幹部発言から大きな流れを学ぶ」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/
「衝撃、11月1日から段階的撤退」→https://holylandtokyo.com/2022/10/31/3817/
「嘉手納でelephant walk」→https://holylandtokyo.com/2022/11/25/3981/

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「嘉手納で統合の航空機避難訓練」→https://holylandtokyo.com/2020/01/24/873/
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13

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無人ウイングマンCCAを2020年代後半導入 [米空軍]

次世代制空機NGADの2030年初め導入より早く
価格はF-35の25~50%で大量調達可能を狙う
とりあえずお手頃価格で迅速導入の危うさも

CCA NGAD.jpg3月29日、米空軍のAndrew Hunter調達担当次官とRichard G. Moore戦略計画部長が下院軍事委員会で証言し、1000機から2000機調達する計画だと言われている無人ウイングマン機CCA(Collaborative Combat Aircraft)に関し、2020年代後半には導入したいと説明し、2030年代初頭導入イメージの次期制空機NGADとは異なるスケジュール感で進めると語りました

また両名はCCAについて、3つの任務「shooters」「electronic warfare platforms」「sensor-carrying aircraft」遂行を期待すると説明する一方で、手頃な価格での迅速な導入を最優先にすると述べ、米空軍側が要求性能を出して企業側に提案させて精査する流れとは異なり、前述の手頃な価格と「put a priority on contractors’ ability」を念頭に、可能な限り迅速に企業側に何が出来ると問いかけて進めていると説明しました

CCA NGAD2.jpgまた並行して米空軍内では、CCAをどのように空軍内で部隊編成するか、例えば有人機と同じ飛行隊に置くか独立飛行隊を編成するか、作戦時には当初から有人機とCCAが編隊飛行で進出するか、別の拠点から離陸して現地で合流するか等の検討を含む「TTP:tactics, techniques, and procedure」固めが検討課題だとし、TTP等を煮詰めるための試験飛行隊創設予算を2024年度予算案に盛り込んでいると説明しました

前日の28日にはKendall空軍長官が同じ下院で、CCAの想定価格はF-35の25~50%で大量調達可能な価格を想定とし、具体的に1機26億から52億円との数字を出して説明しており、CCAに関する議論が2024年度予算案審議に併せて急速に具体化しつつあります

CCA NGAD3.jpgCCAに関してはKendall空軍長官が3月7日にAFA総会で、「200機のNGADと1000機のCCA調達を借り前提として2024年度予算案を編成」、「CCA1000機の積み上げは、200機の各NGADにCCAを2機づつ割り当て、300機の各F-35に2機づつ・・・とのざっくり計算から来ている」と説明しましたが、約1週間後には「今後の検討によって、CCAは2000機の可能性もある」と大ぶろしきを広げていたところです

CCA NGAD4.jpgここに来てCCAに関し、急速に具体的な話が出てきましたが、とりあえずの「任務設定」と「価格設定」と「導入開始時期」を打ち出し、「機数イメージ」を持ちつつ、あとは「企業に何が出来るか」と持ち掛けて空軍全体で突っ走るがごとくのやり方に、大いなる疑問を感じざるを得ません

CCAに関する最も大きな問題は、如何に中国最前線に発進基地を確保して展開させ、敵の基地攻撃を逃れて無事離陸させ、更に航続距離を確保(空中給油?)して如何に作戦空域に到達させるかにあり、有人機の展開拠点や地上支援体制も危うい中で、1000機ものCCAを運用できる余裕がどこにあるのか・・・との点にあります。

Wigston.jpg英空軍参謀総長が2022年7月に、過去5年間に渡る成果として敵防空網を混乱&飽和させる「(CCAより遥かに小型の)無人機の群れ」研究に手ごたえを感じていると発表しましたが、依然として「無人機の群れを攻撃対象となる敵防空網内に運搬&投入する能力開発は、現在も継続中」と語り、CCAより遥かに小型の無人機でも前線投入が大きな課題だと語っていたところです。

CCAに関しては、部隊編成とか、前線に到達してからの有人機との関係よりも、どこに展開させ、どうやって前線まで飛行させるのかを最初に語るべきだと思います

無人ウイングマンCCA関連
「空軍長官:NGADが200機、CCAは1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
「研究機関がCCAに関する提言」→https://holylandtokyo.com/2022/12/15/4056/
「2機種目MQ-20 Avengerで成功」→https://holylandtokyo.com/2021/07/08/1983/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「豪州もXQ-58に参画」→https://holylandtokyo.com/2020/05/06/664/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27

関連の記事
「NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/
「NGADの無人随伴機開発は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-20
「無人機の群れ前線投入が課題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/28/3474/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
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ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

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