その3:米空軍改善提案コンテスト最終候補 [米空軍]
軍曹2名の提案が国防省全体を巻き込むインパクト
空軍士官候補生1名による提案にもご注目
3月4日に開催された毎年恒例「米空軍改善提案コンテスト:Spark Tank competition」でプレゼンされた最終候補6件をご紹介するシリーズの第3弾で最終回。
米空軍の前線部隊で勤務する中堅クラスをリーダとして提案される改善提案から、米軍部隊が直面する課題やそれに立ち向かう動きや考え方を知ることで、米軍の今を考えます
本日ご紹介するのは、前線部隊の軍曹2名がチームリーダーの「不便な展開地での燃料と水輸送負担の軽減アイディア」と、士官候補生1名による提案「無人機を輸送機で空中けん引して航続距離拡大」です。
軍曹2名のチームのアイディアはシンプルですが、その基本コンセプトがDARPAや各所を巻き込み大きなプロジェクトになろうとしているとの興味深い事例です
辺鄙な前線部隊での燃料と水輸送負担を軽減する提案
●Brent Kenney上級軍曹とMatthew Connelly2等軍曹(ドイツ第52戦闘航空団)がチーム長の「Project Arcwater」
●米空軍では本格紛争に備え、戦力を分散運用するACE構想を推進しているが、分散展開先への装備品、燃料、水、食料等の輸送備蓄が大きな問題。どれも削減不能な要素であるが、特に燃料と水の輸送所用が大きく課題となっている
●「Project Arcwater」のアイディアは極めてシンプルな改革案。まず高性能の太陽光発電パネルの導入(月の光でも発電が継続可能なレベル)、次に高性能な除湿器による前線での水確保(展開先の自然水と合わせて必要量確保)、そして前線部隊の規模に応じた小型発電機の導入による燃料消費量の削減
●軍曹2名は市販品レベルで改善効果を試算し、高性能の除湿器で1日に100リットル以上が確保でき、自然水を合わせれば1日に1000リットル確保もそれほど困難でないと試算した。また部隊規模に応じた小型発電機導入で燃料消費量を1/15に削減可能と提案した
●この「コロンブスの卵」的提案は大きな反響を呼び、DARPAをはじめ多くの組織が協力を申し出たり独自検討を深化を進めている。軍曹2名は「Spark Tank」でのプレゼンで資金確保を求めているのではなく、この取り組みを米空軍や米軍のしかるべき組織のしかるべき士官の下で発展させる体制づくりを希望している
無人機を輸送機で空中けん引して行動範囲拡大
空軍士官候補生1名による提案
WW2当時のけん引輸送グライダーにヒントを得て
価値特許も申請中
●空軍士官学校のGrant Schlichting候補生単独での提案「Aerial Tow Rehookup—Novel Range Extension」
●無人機の用途拡大が様々に検討される中、その行動範囲の拡大は重要な課題だが、現在の空中給油は複雑な作戦運用や計画が必要であり、1回の給油量も2000ポンド程度に限定される
●そこで、飛行中の輸送機から伸ばしたけん引ロープの先に取り付け、無人機がロープと結合できるフック「Aerial Tow Rehookup」の制作を思いついた。空軍士官学校の風洞や研究施設を利用して2年間をかけて開発し、仮特許も申請している
●同候補生は更なる半年間の研究と試験実施のため、約1.4億円の資金提供を求めている。ただ申請が認められなくても、彼は米空軍の開発拠点の一つであるエドワーズ空軍基地で同フックの開発と試験を続け、その後に卒業後はパイロットコースに進みたいと考えている
●なお、「Spark Tank」の最終候補に士官候補生が残るのは2019年以来で、その際は気象予報を支援するソフト開発を提案していた
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これまで2022年「米空軍改善提案コンテスト:Spark Tank competition」でプレゼンされた最終候補6件をご紹介してきましたが、無人機や3DプリンターやGameやスマホアプリ開発技術など、民生技術を軍事の世界に取り込んで有効に活用する提案が評価されています
カーター国防長官時代から、国防省主導で民間スタートアップ企業の技術を軍事利用する試みが始まっていますが、民間組織の管理や対象の見極めが難しく、なかなかうまくいっていない中、草の根の提案が組織を活性化させることを期待したいと思います
でも個人的には、本日ご紹介した軍曹2名の「Project Arcwater」に魅力を感じます。兵站支援分野の細かな効率性は、前線で汗を流す兵士しか肌間隔でつかんでおらず、そんな中から生まれた提案が「コロンブスの卵」とは痛快です
なお3月4日の発表会では、外部有識者による審査チームが「Project Arcwater」を最優秀提案に選出したようです。
どの提案の紹介も十分ではなく、読者の皆様も消化不良気味かもしれませんが、細部については「https://www.afwerx.af.mil/spark-tank.html.」をご覧ください
米空軍改善コンテスト最終候補6件をご紹介
「無人機で血液輸送&操縦者酸素マスク改善を3Dで」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-25
「Gameでリーダー教育&戦闘機ソフトをスマホ手法で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-26
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
空軍士官候補生1名による提案にもご注目
3月4日に開催された毎年恒例「米空軍改善提案コンテスト:Spark Tank competition」でプレゼンされた最終候補6件をご紹介するシリーズの第3弾で最終回。
米空軍の前線部隊で勤務する中堅クラスをリーダとして提案される改善提案から、米軍部隊が直面する課題やそれに立ち向かう動きや考え方を知ることで、米軍の今を考えます
本日ご紹介するのは、前線部隊の軍曹2名がチームリーダーの「不便な展開地での燃料と水輸送負担の軽減アイディア」と、士官候補生1名による提案「無人機を輸送機で空中けん引して航続距離拡大」です。
軍曹2名のチームのアイディアはシンプルですが、その基本コンセプトがDARPAや各所を巻き込み大きなプロジェクトになろうとしているとの興味深い事例です
辺鄙な前線部隊での燃料と水輸送負担を軽減する提案
●Brent Kenney上級軍曹とMatthew Connelly2等軍曹(ドイツ第52戦闘航空団)がチーム長の「Project Arcwater」
●米空軍では本格紛争に備え、戦力を分散運用するACE構想を推進しているが、分散展開先への装備品、燃料、水、食料等の輸送備蓄が大きな問題。どれも削減不能な要素であるが、特に燃料と水の輸送所用が大きく課題となっている
●「Project Arcwater」のアイディアは極めてシンプルな改革案。まず高性能の太陽光発電パネルの導入(月の光でも発電が継続可能なレベル)、次に高性能な除湿器による前線での水確保(展開先の自然水と合わせて必要量確保)、そして前線部隊の規模に応じた小型発電機の導入による燃料消費量の削減
●軍曹2名は市販品レベルで改善効果を試算し、高性能の除湿器で1日に100リットル以上が確保でき、自然水を合わせれば1日に1000リットル確保もそれほど困難でないと試算した。また部隊規模に応じた小型発電機導入で燃料消費量を1/15に削減可能と提案した
●この「コロンブスの卵」的提案は大きな反響を呼び、DARPAをはじめ多くの組織が協力を申し出たり独自検討を深化を進めている。軍曹2名は「Spark Tank」でのプレゼンで資金確保を求めているのではなく、この取り組みを米空軍や米軍のしかるべき組織のしかるべき士官の下で発展させる体制づくりを希望している
無人機を輸送機で空中けん引して行動範囲拡大
空軍士官候補生1名による提案
WW2当時のけん引輸送グライダーにヒントを得て
価値特許も申請中
●空軍士官学校のGrant Schlichting候補生単独での提案「Aerial Tow Rehookup—Novel Range Extension」
●無人機の用途拡大が様々に検討される中、その行動範囲の拡大は重要な課題だが、現在の空中給油は複雑な作戦運用や計画が必要であり、1回の給油量も2000ポンド程度に限定される
●そこで、飛行中の輸送機から伸ばしたけん引ロープの先に取り付け、無人機がロープと結合できるフック「Aerial Tow Rehookup」の制作を思いついた。空軍士官学校の風洞や研究施設を利用して2年間をかけて開発し、仮特許も申請している
●同候補生は更なる半年間の研究と試験実施のため、約1.4億円の資金提供を求めている。ただ申請が認められなくても、彼は米空軍の開発拠点の一つであるエドワーズ空軍基地で同フックの開発と試験を続け、その後に卒業後はパイロットコースに進みたいと考えている
●なお、「Spark Tank」の最終候補に士官候補生が残るのは2019年以来で、その際は気象予報を支援するソフト開発を提案していた
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これまで2022年「米空軍改善提案コンテスト:Spark Tank competition」でプレゼンされた最終候補6件をご紹介してきましたが、無人機や3DプリンターやGameやスマホアプリ開発技術など、民生技術を軍事の世界に取り込んで有効に活用する提案が評価されています
カーター国防長官時代から、国防省主導で民間スタートアップ企業の技術を軍事利用する試みが始まっていますが、民間組織の管理や対象の見極めが難しく、なかなかうまくいっていない中、草の根の提案が組織を活性化させることを期待したいと思います
でも個人的には、本日ご紹介した軍曹2名の「Project Arcwater」に魅力を感じます。兵站支援分野の細かな効率性は、前線で汗を流す兵士しか肌間隔でつかんでおらず、そんな中から生まれた提案が「コロンブスの卵」とは痛快です
なお3月4日の発表会では、外部有識者による審査チームが「Project Arcwater」を最優秀提案に選出したようです。
どの提案の紹介も十分ではなく、読者の皆様も消化不良気味かもしれませんが、細部については「https://www.afwerx.af.mil/spark-tank.html.」をご覧ください
米空軍改善コンテスト最終候補6件をご紹介
「無人機で血液輸送&操縦者酸素マスク改善を3Dで」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-25
「Gameでリーダー教育&戦闘機ソフトをスマホ手法で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-26
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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