米海兵隊司令官「基本的な防御手段を復習せよ」

9日、米海兵隊司令官のRobert Neller大将がCSISで講演し、イラクやアフガンでの対テロ戦争の環境に慣れ過ぎ、またITやネットワーク技術に依存しすぎている現在の米軍地上部隊の現状に警鐘を鳴らし、ローエンドと呼ばれるような基本的技術の修得や、ハイテク装備の使用が拒否された環境下でも戦える備えが極めて重要だと訴えました

作戦拠点となる基地が敵から攻撃されることを心配する必要が無かった過去15年間の対テロ戦や、通信やネットワークが使用不能になることなど想定しなかった前提から脱却する必要性は、最近しばしば米軍指導者から発せられており、その一環の発言です

朝鮮戦争を最後に空襲を受けたことが無い米軍は部隊のカモフラージュも忘れ、電子戦分野でもロシア軍の優秀さにウクライナで唖然とする状況のようですが、15年の空白を埋めるのは容易ではありません。

9日付「Military.com」記事によれば
●最近実施されたある海兵隊部隊の演習で、展開先で司令部施設を設置する訓練が行われ、仮設の指揮所施設に大きなカモフラージュ用ネットが被せられた。敵の航空攻撃を想定する必要が無かった最近の実戦では、あまりやらなかった手法である。
●ネットの偽装効果を確認するため上空からの映像で検証すると、仮設指揮所の周りに張り巡らされた様々な通信ケーブルやワイヤーが太陽光を反射し、重要な施設が中心に隠されていることが手に取るように明らかだった。敵なら容易に発見できる状態だった

●CSISで講演した米海兵隊司令官Neller大将は、自虐的にこの様な部隊の現状を紹介しつつ、「（これまでの敵とは異なる相手と対峙しなければならない現実を直視し、）自分自身の姿を見直せ。考え方を変えなければダメだ」と部隊を教育していると語った
●同司令官は、将来のハイエンド紛争に備え、ハイテク装備を備えた手強い相手に備え、偽装のようなローテクでも基礎となる技術を再教育する必要性を語った

●また司令官は「イラクやアフガンでは、聖域的な位置づけの整った拠点から出動し、拠点から動き回ったり機動展開することもなく、ダイニングホールで食事し、挽き立てのコーヒーを飲むことが出来た環境だった」と振り返った
●そして、ヘルメットを偽装したり顔面に保護色に塗ったりと言った基本的スキルを復習すると同時に、位置を相手に特定される可能性があるGPSやスマホに頼らない方法を学び、あわせてデジタル世界での自己防御を検討しているとも説明した

●また、自らが運搬可能な装備や食料で生き延びることや、穴を掘ったり偽装して身を守ること、また全ての装備の電源をオフにし、その場で休息や睡眠を取ることをが重要だと再教育しているとも述べた
●海兵隊司令官は前海軍トップの施策も紹介し、ハイテク航法装置が使用不能になる事態に備え、海軍士官学校で星の位置から自らの位置等を割り出す「天文航法」の授業を復活させたことや、艦艇運用でもレーダーや無線封止で活動する訓練を増やしていることに言及した

●ハイテク技術の活用とその利用が不可能になった場合への備えのバランスが重要だと主張し、「戦いに於いては全てが不透明で不確実だ」と説明した
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いかにも海兵隊の指揮官らしい、ネット上でも笑顔の写真が無いRobert Neller大将ですが、脅威の現状に鑑み、現状への危機感が溢れているのでしょう。

なんと言っても、少尉だった若者が中佐に、大尉だった中堅幹部が将軍になる期間に相当する時間、ずーーーーっと対テロ戦をやって来たのですから。「過去の戦いに生きる」のが常の軍人には、その頭の切り前は容易ではありません

日本だって当然例外ではありません。猛暑の毎日ですが、夏休みを利用し、改めて「脅威の変化」と「戦い方の変化の必要性」を考えてみては如何でしょうか。
これら変化に備え、訓練や演習の変化についても考えるときに来ているでしょう。

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