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中国陸軍の取り組みと課題 [中国要人・軍事]

parade.jpg10日付Defense-News記事が、複数の中国軍研究者の中国陸軍研究成果を取りまとめ、その取り組みと課題を紹介しています。

それぞれに「分厚い」中国陸軍関連の研究成果を、手短に紹介しているため、かなり省略されたり単純化された記事になっているとは思いますが、中国陸軍についてご紹介した記憶がないので、これを機にご紹介します

恐らく、未だに訓練などほとんどせず、農業が本業のように自給自足したり、工場で何らかの製品を製造したりする「名ばかり陸軍部隊」も残っているのでしょうが、以下で紹介されているのは、まっとうな進歩を目指している陸軍部隊の様子です

10日付Defense-News記事によれば
中国は陸軍訓練の現実性を高め、弱点の克服や、即応態勢や相互運用性の向上に努めている。これは従来の台湾シナリオだけでなく、多様な場面で任務遂行が可能な陸軍への変革を図る方向への取り組みを示している

Li Xiaobing.jpg●Roy Kamphausenによれば、2006年以来、中国軍は軍管区をまたぐ訓練を増加させており、部隊が多軍管区へ機動展開することも増えている。現在中国は7つの軍管区に分割されているが、将来5つに統合される予定である
●鉄道による部隊移動が依然主力ではあるが、軍管区をまたぐ訓練増加により、車両による移動にも力点が置かれるようになっている

●「A History of the Modern Chinese Army」の著者であるLi Xiaobingによれば、中国陸軍演習には3つの変革が確認できる
第1に、訓練場所が単なる演習場から、実際に紛争が起こっているチベットや神鏡ウイグル自治区等にも広がりつつある

第2に、演習自体が実戦的な環境設定になり、指揮、通信、長距離兵站等々に取り組んでおり、「ロシアまで長距離機動展開しての演習まで行っている」
第3に仮設敵を演ずる部隊がより高度で強力な設定となり、中国陸軍より強く設定されており、「中国陸軍側の勝利が約束されておらず、懸命に賢く戦わなければ成果が得られない設定に変化しつつある」

他の専門家は別の視点で
●「The Chinese Army Today」の著者であるDennis Blaskoによれば、演習をより実戦的にするため、中国が既に攻撃を受けている状況下で、移動中の演習部隊の状況も敵部隊が偵察で承知している設定にし、長距離精密誘導兵器で攻撃を受ける状況付与も準備されている
機動展開直前や移動中にも状況の変化が付与され、展開先に到着直後から強力な敵と対峙する場の設定が準備されていたりする。レザー射撃判定装置等も活用されている

Richard Fisher.jpg●Richard Fisher によれば、20年前から中国軍が主張している「情報化された戦い」や「機動化された戦い」への投資は、前線部隊にも届き始め、C3I装備や第3世代車両、新型戦闘車両、訓練センター、陸軍航空部隊等を組み合わせ、軍管区演習や複数軍管区が関与する演習にも発展している
C3Iの発展によりフラットな指揮統制機構を実現し、多様な部隊の組み合わせによる、より現実的で実戦に則した訓練を可能にしている。

中国陸軍の弱点や課題に関する指摘
●Li Xiaobingによれば、最近の陸軍演習は、中国軍自体の弱点を改めて思い知らせる事になっている。「政治が演習に依然介入している。演習場所、指揮官の任命、戦いのやり方等に対してである」、「部隊によっては耐用年数が来るまで旧装備を使用せよと言われたり、旧弾薬をまず撃てと言われたりしている」

Chinese Army.jpg●Dennis Blaskoによれば、複雑な電磁環境を想定し、電子戦やサイバー戦も過去よりも取り入れられている。これにより中国陸軍の現状の統合や他軍種との協力面での問題点がより明らかになっている

●最近の演習では、モジュラー形式で歩兵部隊に必要な砲兵や施設や防空部隊等を増強する事が増えているが、大隊レベルに司令部要員の配置がないことが問題となっている。
●これは旧ソ連方式で中国陸軍が部隊編成されているからで連隊司令部レベルが詳細な計画を作成して隷下部隊に指示する事を前提としているからである。このような演習を通じ、自身の欠陥に気づくことになっている

●また同氏によれば、UAV等の新装備の導入に伴う問題として、一度に導入が進まないため、部隊間で装備や運用法に差があり、全体として統制のとれた運用が出来なくなっている
●「中国陸軍は訓練演習で絶えず問題点を明らかにしており、それが演習の主要目的の一つでもある。結果を受け、対策検証演習や自然の演習に反映させる
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Chinese Army2.jpg冒頭でも触れたように、中国陸軍の全体像も把握したいものです

上記で紹介されている「先頭を走る部隊」以外はどうなっているのか・・・。
中国海空軍や第2砲兵(弾道ミサイル専任部隊)への、人事や予算や活躍の場の傾斜配分が目立ってきた最近の情勢の中で、中国陸軍の皆様がどんな事を考えておられるのかが気になります

ご参考:中国陸軍関連の記事
「イメージ映像:島嶼占領作戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-06
「米陸軍だけは中国と交流継続」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-05
「米中陸軍が豪州で共同訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-18


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