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ウへの弾薬や兵器提供で米軍に問題は生じていない! [米国防省高官]

調達担当国防次官がきっぱりと言い切る
将来のニーズ変化と必要量見積りに苦心と語る
「オンライン装備メンテ指導」などの新手法もアピール

LaPlante8.jpg8月28日、元米空軍副長官で現在はウクライナへの武器弾薬支援に奔走するWilliam LaPlante調達担当国防次官が軍需産業連合会(National Defense Industrial Association)イベントの基調講演を行い、「メディアは、ウクライナへ○○ミサイルや××弾薬を提供しすぎて、米軍用備蓄が不足している」等々と報道しているが、「事実ではない」とキッパリ否定し、

約6兆円相当の弾薬や装備品提供等を行った現在でも、「米軍用の装備が不足する状況には全くない」、「我々は全てを管理下に置いており、米軍の態勢維持に必要な兵器や装備数や調達可能数を念頭に、国防長官と統合参謀本部議長が、ウからの要望事項リストを完全に精査して対応している」、「許容範囲を超える要望には応じていない」と主張しました

LaPlante7.jpg開戦当初に「ウ」へ大量提供した「Stinger携行対空ミサイル」や「Javelin対戦車ミサイル」の備蓄数穴埋めに、10年以上が必要等々の報道や専門家の分析が相次ぎ、米議会からも懸念の声が高まっていることを意識した発言ですが、LaPlante次官は、軍需産業界の支援を得て弾薬等の調達次官の大幅短縮を成し遂げつつあるとアピールし、

更に本当に同次官らが苦心しているのは、戦況や戦いの推移に応じて変化する「ウ」のニーズの変化とその必要量を予測して備え、必要時に調達方法や輸送手段を含めた兵站支援を完遂することだと語り、開戦当初から現在の反転攻勢フェーズでは「ウ」のニーズが変化し、そのニーズに対応するため米議会に特別措置を依頼したり、同盟国等からの提供を要請するなど多方面の検討&調整を同時並行で進めている様子を改めて紹介しています

LaPlante6.jpgまた弾薬等の消費量予測において、約1年半の実績からWW2のデータが参考になっている一方で、過去のWarGameの結果で、近代戦での精密誘導兵器の消耗は極めて激しいことや、戦いが長引いた場合の備えが不十分であることが指摘されていながら、「十分に予算対処してこなかった」ことを率直に認めつつも、

米議会への様々な状況説明や軍需産業界との意見交換などを経て、米国防省や米軍内を含め関係者の「考え方:mindset」が変化してきており、例えば「多年度にわたる調達計画方式導入」により、企業側も安心して生産能力拡大投資に踏み切れる環境が整いつつあると説明しています

LaPlante9.jpg米軍内においても、例えばM-1戦車の提供に際し、ロシア側に見られたくない機微な装備品取り外しを想定の1/3の期間で完了したり、ウへ輸送した戦車の現地での整備支援に、新たなオンライン活用の整備支援方式「tele-maintenance」を考案して米軍人や米軍契約企業要員のリスク低減に工夫していると紹介しています
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LaPlante次官を責めるつもりは全くありませんが、「ウに提供しすぎて米軍用が不足との報道は事実ではない」、「許容範囲を超える要望には応じていない」と主張しても、ご本人も「十分に予算対処してこなかった」と率直に認め、Hicks国防副長官らが「ウの教訓は弾薬確保など兵站支援分野だ」と明らかにしており、西側もロシア側も弾薬装備の枯渇は明らかです

LaPlante5.jpgただ同次官が語る、「苦心しているのは、戦況や戦いの推移に応じて変化する「ウ」のニーズの変化とその必要量を予測して備え、必要時に調達方法や輸送手段を含めた兵站支援の完遂」、「弾薬等の消費量予測において、約1年半の実績からWW2のデータが参考になっている」との細かな点は貴重なお話ですのでご紹介しました

弾薬量の圧倒的不足問題
「英軍も不足深刻」→ https://holylandtokyo.com/2023/03/23/4395/
「空軍は弾薬調達の効率性優先を変更」→https://holylandtokyo.com/2023/02/24/4304/
「CSISも弾薬調達&提供問題レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/
「上院軍事委員長:弾薬が最大教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/02/10/4288/
「米空軍の弾薬ロードマップ検討」→https://holylandtokyo.com/2023/02/09/4208/
「初の対無人機の防空消耗戦に直面するウ」→ https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「米軍は弾薬にもっと予算配分を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/

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寒冷地での攻撃ドローン試験とニーズの高まり [安全保障全般]

イスラエル企業が北欧東欧諸国の要望を受け
「Uvision」社が「Hero」シリーズの極地試験を

Hero-120.jpg8月16日付Defense-Newsは、イスラエルの無人攻撃ドローン企業「Uvision」社が北欧及び東欧諸国の要望を受け、今年に入って北極圏環境下で同社製攻撃ドローン「Hero-120」の運用試験を行っていると紹介し、気温マイナス20度Cでの運用や保管&輸送に耐えられるか確認したと報じています

具体的な試験の場所や関心を持っている国名は明らかになっていませんが、「極地での運用に関心を持つseveral defense forces」が試験に立ち会い、画像撮影や赤外線センサーなどを搭載して性能確認試験が行われたとのことで、北極圏国家だけでなく広く厳しい冬での運用が必要となる「北欧や東欧のニーズ」が高まっていると記事は紹介しています。

Hero-120 4.jpg記事は、北欧諸国で現在イスラエル製の無人機「Hero」シリーズを使用している国はないが、同地域とイスラエル軍需企業の関係は深く、例えばフィンランドは最近、独イスラエル共同開発の対戦車ミサイルをEurospike社から導入し、防空&ミサイル防衛システム「David’s Sling」の購入許可を得たところで、ノルウェーも小型戦術無人機の導入協議を1月に開始したところだとも紹介しています

「Uvision」社関係者は、「わが社はHero-120だけでなく、様々なタイプの無人機で構成される「Hero」シリーズ全体の北極圏寒冷地への適応を研究開発計画の中に組み込んでいる」と語っており、またドローン本体だけでなく「ドローンの保管や輸送」など兵站分野に至るまで具体的導入を想定した確認を並行して行っており、顧客の要望に対応できる態勢を整えているとアピールしています
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Hero-120 2.jpgウクライナでの戦いで、2022年から23年にかけての「冬の戦い」を経験したことから、寒冷地への装備品適応確認に注目が集まっているのかもしれません。ロシアの脅威を目の当たりにした北欧や東欧諸国にとっては切実な問題でしょうから。

イスラエルは、ロシアとの関係に配慮し、ウクライナへの防空システム「アイアン・ドーム」提供を拒んでいるようですが、直接の紛争当事国でない北欧や東欧諸国への無人機提供については柔軟な姿勢を見せているようです。

イスラエル関連の記事
「アイアン・ドームをウに提供せず」→https://holylandtokyo.com/2023/08/01/4880/
「米イが8500名規模の巨大統合演習」→https://holylandtokyo.com/2023/01/30/4216/
「なぜ露とウの仲介をイスラエルが?」→https://holylandtokyo.com/2022/03/09/2802/
「4機のKC-46給油機導入発表」→https://holylandtokyo.com/2022/09/06/3629/
「イが中央軍管轄に」→https://holylandtokyo.com/2021/01/19/301/

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米陸軍がパトリオット防空ミサイル部隊増強へ [Joint・統合参謀本部]

現在の15個部隊から数不明ながら増強へ
採用難で人員確保が課題。他職域からの転職期待

Patriot missile2.jpg8月8日、米陸軍の宇宙&ミサイル防衛コマンド司令官が、アラバマ州で開催された「Space and Missile Defense Symposium」で記者団に対し、米陸軍保有のパトリオット防空ミサイル部隊への派遣需要が極めて高い事を米陸軍長官から陸軍参謀総長に至る全ての米陸軍首脳が認識しており、現在保有の15部隊からの増強方向で動いていると語りました。

現在の15個部隊から、既に追加で1個部隊増強する予算措置は完了しているようですが、米議会からも更に追加が必要なはずだから必要数を見積もるレポートを提出するよう、2023年度国防授権法で既に米陸軍は正式に命じられているところです。

Karbler 2.jpg同日の会見で同コマンド司令官のDaniel Karbler陸軍中将は、(予算措置が完了している+1個部隊増強に加え、)さらに何個部隊を増強する方向なのかについて具体的には言及せず、陸軍指導者に尋ねるべき質問だとかわしたようです

米陸軍の中でも、パトリオット防空ミサイル部隊は前線への派遣頻度が過去10年以上に渡り最も高い部隊で、更に、通常の陸軍部隊が設定されている6-9か月間派遣期間よりも長い派遣期間を命ぜられていることから、部隊所属兵器への負担の高さが問題となっています

Patriot missile.jpgこのため、新兵募集が厳しい米軍全体の中にあって、厳しい勤務環境が災いして、部隊増強を支える人員確保が年々難しくなっていることが、パトリオット装備増強のネックとなっている模様です

米陸軍は、パトリオット防空部隊に給与面でのインセンティブを提供したり、海外派遣期間に上限を設定して兵士への負担軽減に取り組み、新たな兵士確保や退職の防止に努めているようですが、今後は米陸軍兵士が勤務契約を延長するタイミング等で、他職域の兵士を防空ミサイル部隊要員に「転換」させる道にも注力する計画を持っているようです

また、防空兵器への需要急増の中にあって、海空海兵隊も合わせた統合枠組みでの防空能力強化や、同盟国の能力を融合することで、トータルの防空能力強化を図る方向にもより注力していくと同司令官は語ったようです
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PAC-3 5.jpg米陸軍をで言えば、歩兵や戦車部隊などの伝統的な「前線部隊」の規模を含め、トータルな人員の中で防空部隊に振り分ける比率を再検討してはどうかと思いますが、日本でパトリオット防空部隊を保有している航空自衛隊で考えれば、

脅威や兵器技術が激変する中にあっても、半世紀以上に渡り全く変化が無い「戦闘機部隊の10個態勢」も、メスを入れるべき対象と言えるでしょう・・・

パトリオットなど防空部隊関連
「欧州空の盾計画に中立億が続々」→https://holylandtokyo.com/2023/07/12/4828/
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦に直面」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「グアム防衛をMDA長官が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/

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初めてF-35を受領する米空軍予備役飛行隊 [米空軍]

来年F-35を受領し、30年使用のF-16は仮設敵部隊へ
予備役戦闘機部隊の訓練や作戦運用もご紹介

457th EFS3.jpg8月10日付米空軍協会web記事が、米空軍の予備役戦闘機部隊として2024年に初めてF-35を受領し、30年に渡るF-16運用に幕を閉じるテキサスの米海軍航空基地に籍を置く第301戦闘航空団の第457派遣戦闘飛行隊の様子を取り上げていますので、予備役戦闘機部隊の訓練や作戦運用を垣間見る機会としてご紹介します

第457派遣戦闘飛行隊(457th EFS: 457th Expeditionary Fighter Squadron)は、現在サウジのPrince Sultan Air Baseに派遣されており、8月末に帰国する予定ですが、その後にF-16からF-35への機種転換に本格的に取り組む模様です

457th EFS.jpg同飛行隊がF-35を受領するのが2024年となっていますが、現有F-16を手放す時期(ネリス基地でアグレッサー転換し、フロリダ州Homestead空軍基地で第93予備役戦闘飛行隊に移管される)は不明確ながら、過去の正規空軍飛行隊のF-16~F-35への機種転換の様子から、F-35到着の1年前にF-16を送り出すことになろうと考えられています

同飛行隊長の中佐はまず、現在の中東への展開が如何に過酷で、任務遂行を通じて部隊が逞しくなった様子を振り返り、「対ISISのOperations Inherent Resolveや、ロシアによるMQ-9への妨害が頻発する中での地域安定化警戒飛行作戦Spartan Shieldに備え、一般的な展開準備の他に、ACE(Agile Combat Employment)構想演習や近接航空支援訓練を短期間に精力的にこなし」

457th EFS4.jpg中東展開後は、「1回のフライトが7時間に及ぶ連続飛行の中で、様々な任務を緊張感を維持しつつ遂行する任務」や、「暑さ、強い風、砂嵐等の米本土とは異なる厳しい環境の中で、米本土での訓練フェーズに比べてはるかにテンポの速い、作戦→整備、任務の分析検討→休息→作戦準備→作戦のサイクル」を成し遂げてきた部隊の自信が、F-35受け入れに向けた様々な準備の基礎になろうと胸を張っています

また同飛行隊を有する第301戦闘航空団司令官の大佐は、「F-35はその機体特性からSEADへの専門性が高い機種だが、既に多くの正規空軍部隊に配備され、その優れた性能を多様な任務で発揮しており、F-16の後継機種として大いに期待されている」と語り、予備役部隊として最初のF-35を受け入れに万全を期すと決意を新たにしています
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457th EFS2.jpgF-35導入が進んでも、米空軍のF-16がまだまだ仮説敵部隊(アグレッサー部隊)で活躍すること、海外派遣部隊が展開前にACE構想演習を実施すること、中東派遣の戦闘機部隊が7時間もの長時間フライトを普通に行っている事、F-35の専門分野を問われれば、空軍内ではSEAD機として認識されていることなどを、この記事から学びました

まだまだ暑い夏が続きますが、皆さま、お体をくれぐれも大切に・・・

米空軍の戦闘機構成議論
「戦闘機の近未来体制は」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/

次世代制空機NGADの検討状況
「企業選定開始」→https://holylandtokyo.com/2023/05/22/4656/
「欧州型とアジア太平洋型の2タイプ追求」→https://holylandtokyo.com/2023/05/10/4604/
「NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

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https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

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