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大型機の外部点検時間をドローンで1/8に [米空軍]

ボーイングと無人機企業がAI活用でC-17用披露
外部故障発見率は人間整備員を凌駕
ドローンカメラ情報を記録し機体毎の時系列記録も

Near Earth C-17.jpg6月27日、ボーイング社とドローン製造企業「Near Earth Autonomy」が、通常約4時間必要なC-17の飛行前外部点検を、ドローンに搭載したカメラなどセンサーとAI技術を活用して行うことで、点検時間を1/8の約30分に短縮可能なAI活用システムを開発したとお披露目し、米空軍が試験中だと明らかにしました

両企業関係者は同システム開発の目的を、「このシステムは人間整備員に取って代わるものではなく、機体に何が起こっているかの予備情報を提供することで、人間整備員に何に注目すべきで、どんな検査用具が必要になりそうかの準備を効率アップし、整備技量全体の向上に貢献する事も目的としている」とヴァージニア州で行われた記者会見で説明しています

Near Earth C-173.jpgまた開発者たちは性能について、人間による手間のかかる大型機の外部点検では故障発見率が約50%だが、同システムによる機体外部点検では故障発見率が75-76%だったとアピールしたようです

システム開発のポイントについて企業関係者は、検査用ドローンが機体との位置関係を常に把握する事で、ドローン搭載センサーを最適活用可能にしていると説明し、将来的には機体毎に機体全体の映像を3D形式で時系列的にデータベース化し、整備員がいつでもどこからでもオンライン上で、各機体の見たい部位の過去からの経年変化を確認できるようしたいとも語っています

Near Earth C-172.jpgまた同システム開発はC-17を対象として開始し、現在はC-5輸送機にも対応可能なプログラムまで準備したが、今後は空中給油機であるKC-135や KC-46にも拡大していく予定だと会見で明らかにしています

更に、ドローン搭載器材を大型化・高性能化することで、機体外部表面の検査だけでなく、機体の「Subsurface(機体表面の内部!?)」のチェックも可能になるように取り組んでいくと関係者は語っています
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Near Earth C-174.jpgこの大型機の外部検査ドローンシステムを、米空軍が現時点でどのように評価しているかや、人間整備員による点検との組み合わせをどのように考えているのか不明ですが、米空軍が対中国で取り組むACE構想(Agile Combat Employment)で追及している分散運用先での作戦活動の省人化に貢献できるとも関係者はアピールしています

高所作業を伴う危険な大型機の点検作業を、ドローンと搭載センサーとAIを組み合わせて安全かつ効率的に行う技術は、民間旅客機分野だけでなく、橋や道路や建物など様々な分野への応用が考えられます。既に多くの欧米企業が参入している分野の様ですが、官民の技術を結集しての発展を期待したいと思います

無人機関連の記事
https://holylandtokyo.com/?s=%E7%84%A1%E4%BA%BA%E6%A9%9F

ACE構想関連の記事
https://holylandtokyo.com/?s=ACE%E6%A7%8B%E6%83%B3 

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ボーイングがKC-46や輸送機の防御システム開発発表 [米空軍]

最近話題のAurora Flight Sciences社の技術で
つなぎ給油機「KC-Y」の確保狙いの新戦術か・・・

Boeing Aurora.jpg6月20日、パリ航空ショーでボーイング社と同社傘下で多彩な新技術開発で話題の「Aurora Flight Sciences」が、KC-46や将来給油機&輸送機に搭載する新型の先進防御システム開発計画を披露した模様です。

結局発表イベントでは、企業秘密を理由に開発計画の細部や投資額についてボーイング報道官は言及しませんでしたが、「KC-46Aは既に空中給油機として比類なきレベルの防御能力を装備しているが、ハイエンド紛争での生存性と有効性をさらに向上させるため、また次世代プラットフォームに将来必要な能力を付与するため、米空軍等と共に開発に臨んで必要時に提供できるよう準備していく」と同社は説明しています

Boeing Aurora 5.jpg言うまでもなく背景には対中国を念頭に置いた、強固に防御された「Contested Area」で活躍できるアセット開発能力のアピールですが、喫緊の課題として、米空軍が避けたいボーイングKC-46VSロッキード&エアバスLMXTで「ドロ沼」機種選定を避けるための取り組みとも解釈できるでしょう

米空軍は元々、KC-46(KC-X)を179機、つなぎ給油機(KC-Y)を150機、ステルス機想定とも言われる「KC-Z」を75機調達する構想を持っていたと言われていますが、既につばぜり合いが始まっている「遺恨山盛り」のつなぎ給油機(KC-Y)選定が、ボーイングKC-46VSロッキード&エアバスLMXTで「ドロ沼」化必至と見られていることからKC-Y機種選定は行わず、

Boeing Aurora 4.jpgKC-46改良型で乗り切ろうと空軍長官は考えている模様で、加えて、75機予定していたつなぎ給油機(KC-Y)の調達機数を半減し、NGAS(next-generation aerial refueling system)とも呼ばれる生存性の高い性能を狙う「KC-Z」を、2030年代後半に投入時期を早める方向に転換したと2023年初に報じられています

なおKC-46が既に装備している防御システムについてボーイングは、電磁パルス防御、生物化学兵器防御、赤外線防御、特定周波数への警報、操縦席エリアの装甲などを上げていますが、このような発表イベントを通じて新たな技術開発をアピールしつつ、つなぎ給油機(KC-Y)がKC-46近代化改修型で落ち着くように「場の設定」に余念がないと理解してよいでしょう

Boeing Aurora 3.jpgまたボーイングが2017年に買収し、今回の計画にも参画している「Aurora Flight Sciences」は、DARPAと協力して「動翼の無い新型期待制御機X-65」開発や「無人機に搭載するAI空中戦パイロット」開発のほか、無人機対処兵器開発にも関与している革新的技術に特化した話題の新興企業で、目が離せない印象です。

ただ、KC-46給油機にしろ、T-7A練習機にしろ、大統領専用機にしろにしろ、何をやってもうまくいかないボーイング社に買収され傘下に入ったことが、唯一にして最大の懸念事項だと申し上げておきましょう

Aurora Flight Sciences社関連記事
「大型水上離着陸機の候補」→https://holylandtokyo.com/2023/02/15/4268/
「動翼の無い航空機X-65イメージ公開」→https://holylandtokyo.com/2023/05/18/4644/
「小型無人機対処装備を求めオプション試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「8企業がAI空中戦でF-16人間操縦者に挑む」→https://holylandtokyo.com/2020/08/19/528/

最近のKC-46関連記事
「36時間連続飛行飛行運用」→https://holylandtokyo.com/2022/12/12/3974/
「KC-46を操縦者1人で試行運用」→https://holylandtokyo.com/2022/11/02/3881/
「不具合抱えたままKC-46運用開始宣言」→https://holylandtokyo.com/2022/09/21/3688/
「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤り」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/

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米空軍気象部隊が対中国に備えIWOSを [米空軍]

重量90㎏のTMOSから20㎏弱の太陽光利用装備へ
でも基本は前線の一等兵が大佐の質問に対応する世界

IWOS.jpg6月28日付米空軍協会web記事が、対中国などに備えて米空軍が取り組むACE構想(Agile Combat Employment)に対応するため、米空軍気象予報部隊が、現状の携行型気象観測装置TMOS(約90kg)を、より軽量で太陽光発電利用可能なIWOS(Integrated Weather Observation System 20㎏弱)へ換装する等に取り組むなどの様子を紹介しています

同記事は米空軍気象部隊の軍曹クラスへのインタビューを元に構成されており、気象部隊全体をカバーする大きな構想への言及はありませんが、「救難救助部隊」や「患者空輸部隊」などと並び、観測網がまばらな西太平洋でカギとなる部隊であり、米空軍だけでなく米軍全体を支えるその部隊の活動の一端を伝えている点で興味深かったのでご紹介しておきます

6月28日付米空軍協会web記事によれば
Weather Sq.jpg●現在の米空軍気象部隊が展開先の気象観測に用いるTMOS(Tactical Meteorological Observing System)は、気温、風速、露点等々の気象観測装置だが、関連の付属装置や接続ケーブル等を含めると90㎏以上の重量となり、航空アセットの離着陸先である様々な場所の気象観測に飛び回る気象部隊兵士にとって相当な物理的な負担となっている
●飛行部隊の要求に応じ、TMOSを様々な展開先に運搬して組み立て設置し、気象観測と予報を行う気象部隊兵士は約9割のケースで軍経験3年程度の一等兵クラスであり、彼らが展開先の飛行運用指揮官である少佐から大佐パイロットに気象情報を提供し、質問に答えることになる

IWOS2.jpg●気象部隊の展開支援先は様々で、米空軍部隊の支援だけでなく米陸軍ヘリ運用支援のため、1か月間にわたる演習場生活を陸軍部隊と共にすることもあり、「ペットボトルを活用したシャワーやウェットティシューで体を拭く生活を30日過ごす貴重な経験」や、
●アラスカの氷河地域に展開し、「70年以上前に墜落した空軍輸送機の残骸と搭乗者約50名の収容ヘリ運用を支援した経験」など、特殊部隊さながらの多様な環境での任務遂行を、軍曹指揮官で担当することも珍しくない部隊である

Weather Sq2.jpg●欧州や米本土であれば、前線展開部隊の観測装置がなくても、官民が設置している様々なセンサーや気象レーダー情報の活用が可能だが、中東やアジア太平洋地域では一般に流通している気象情報が限定的なケースが少なくなく、「Limited Data Forecasting Techniques」手法を総動員しての対処が求められる
●また本格紛争を想定した場合、活動の命脈となる「通信確保」が安定しない環境も考慮する必要がある。組織の現場レベルへの判断の権限移譲が米空軍の大きな方針であるが、必要な現地の気象情報を通報するには「情報の伝達」が不可欠で、全ての職種共通の課題として残されてい
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IWOS3.jpg台湾有事の際、第一列島線上の気象情報が最低限必要だと思いますし、日本にも気象情報データや観測上の努力が求められることも想定すべきでしょう。

米軍の「救難救助部隊」や「患者空輸部隊」の支援と同じように、気象情報のような作戦の基礎を支える面での活動も、日本が備えるべき分野でしょう

救難救助や患者空輸の大問題
「対中国に備える患者空輸医療チーム」→https://holylandtokyo.com/2023/06/27/4772/
「救難救助検討は引き続き迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/

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米海兵隊は次の事前装備集積船を小型化へ [Joint・統合参謀本部]

対中国の西太平洋での分散&機動運用に備え
大規模な輸送よりも日々の作戦を支える役割を
Force Design 2030の最新改定版で方向決定

MPS-X.jpg6月28日付Defense-Newsは、米海兵隊が西太平洋での対中国本格紛争に備え、3年半前作成の海兵隊将来構想「Force Design 2030」を5月にアップデートし、分散運用構想「Distributed Maritime Operations Concept」を支える装備品の海洋事前集積や輸送船のあり方見直しに着手したと伝えています

同日行われた海兵隊イベントで関係海兵隊幹部は具体的に、現在の海兵隊輸送の主力である「Large, Medium-Speed Roll-on/Roll-off ships」を、より小型で小規模な島々の港湾施設で利用可能なMPS(X)「next-generation maritime pre-positioning ship」に置き替えるため2030年前後の運用開始を目指し、

MPS-X2.jpgまた、最近まで将来の小型の補給艦「Next-Generation Logistics Ship」と呼称されていたものを、「Light Replenishment Oiler」として具体化し、2026年に調達フェーズに入る計画に着手していると語っています

米海兵隊は26日の週にハワイで関連の机上演習を実施し、西太平洋で日々の分散&機動作戦構想を兵站面で支える「Global Positioning Network」構想やMPS(X)の運用について検討した模様で、大型輸送&備蓄艦艇より、小回りが利き貧弱な港湾施設しかない分散運用先での部隊支援に、現在より小型の艦船が不可欠だと改めて確信した模様です

MPS-X3.jpg小回りが利き、小さな港湾施設でも利用可能なほかに、小型艦艇による小分け輸送は、敵の攻撃部隊の目標照準を困難にし、輸送任務成功確率向上に貢献するとも分析されており、今後1年以内にMPS(X)要求性能を固め、2030年前後に運用開始したいと関係者が28日に語った模様です

米海兵隊のMPS(X)担当者によれば、従来の「海洋事前集積船」のイメージと、前線部隊への日々作戦で必要な物資を直接輸送する海洋輸送力を併せ持ったアセットがMPS(X)だそうで、この辺りも我々傍観者に発想の転換を迫るものとも言えます

Light Replenish.jpgまんぐーすにとっては、MPS(X)や「Light Replenishment Oiler」は初めての言葉ですが、その狙いとすることは明確で当然であり、米海軍艦艇の稼働率低下で海兵隊の作戦運用が制約を受ける厳しい現状(スーダン脱出作戦での海兵隊派遣断念事例など)を打開すべく、スムーズな構想実現を期待したいと思います

米海兵隊関連の動向
「次期司令官は改革派」→https://holylandtokyo.com/2023/06/06/4711/
「沖縄海兵隊4千名転進先」→https://holylandtokyo.com/2023/02/01/4230/
「ハワイに新MLR部隊」→https://holylandtokyo.com/2022/08/19/3546/
「Stand-in Force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「Force Design 2030構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

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