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泣き面に蜂:耐震強度不足で米海軍の4ドック使用停止 [Joint・統合参謀本部]

アジア太平洋戦力を支える西海岸の潜水艦修理拠点で
昨年10月の調査で判明し、約100名の専門家動員し対応検討へ
当面影響ないと説明も、潜水艦修理は2倍の待ち行列中

Puget Sound3.jpg1月27日、米海軍が主に潜水艦の定期修理を行う西海岸北部ワシントン州の4つのドライドックで耐震強度不足が見つかり、緊急措置は行ったものの、同日から無期限で同ドックの使用を停止し、米国防省や米海軍や関連企業の専門家約100名のチームによる対策検討を行うと明らかにしました。

これまでも定期的に耐震強度調査は行われてきたとのことですが、地震の発生頻度が高い西海岸施設に対し、新たな大地震想定を盛り込んだモデル分析を新技術も導入して行ったところ、これまで気づかなかった「ドライドックの設計や構築に直接関連する懸念」が見つかり、

Trident Refit.jpg「地震によるドライドックの崩壊により、ドック内の潜水艦や労働者や海軍兵士に危険が及ぶ可能性」や「周辺地域社会の安全や環境への影響」が懸念されるとの指摘が、調査を行ったWSP USA社から昨年10月の調査報告書で明らかにされたとのことです。関係者は「直ちに大きなリスクがあるわけではないが、長期的な視点に立って予防的な措置行う」と強調しているようですが・・・

具体的には、攻撃原潜や空母の修理するPuget Sound Naval Shipyardの4-6ドックと、BangorのTrident Refit Facilityにある戦略原潜用のドック一つに懸念事項が見つかったとのことです。

Puget Sound2.jpg現時点で修理中の潜水艦はなく、当面の使用予定もなかったと米海軍は説明していますが、米海軍全体では現時点で長期計画の2倍の18隻もの潜水艦が整備中か整備待ちの状態にあり、戦力全体の老朽化と修理施設の疲弊が問題となっていたところに降ってわいた「泣き面に蜂」的な事案です

関係者は、上層部の理解&支援を得て2023年度予算から関連費用を捻出し、国防省・海軍・関連企業の専門家約100名からなるチームが今週編成され、どのような対策をどのような計画で実施し、そのコストがどれほどかを検討することになるが、「現時点で結果を推測するのは時期尚早だ」とコメントしています

Trident Refit2.jpgまた海軍関係者は、同施設の残ったドックや埠頭で可能な修理作業を行うことにより、当面は従業員規模を縮小したり、修理計画を修正する必要はないと説明し、現在別ドックで実施中のオハイオ級巡航ミサイル原潜修理にも影響はないと強調していますが、専門家チームの調査や検討を通じ、長期的な影響が見極められるだろうと微妙な説明ぶりにもなっています
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ドライドックが全体で何個あるのか把握しておらず、4個の活動停止の影響を邪推することもできませんが、計画想定の2倍の潜水艦が修理中か修理待ち行列の現状で、調査結果判明から10週間後に100名規模のチームで対応検討開始ともなれば、ただ事ではなさそう・・・と考えるのが自然でしょう

Puget Sound5.jpg2年半前時点で「米空母と潜水艦修理の75%が遅延」状態で、その後のコロナや原材料の高騰で、米海軍の艦艇建造やメンテ部署は更なる混乱と混迷度を深めていると何度も報じられており、アジア太平洋の海軍戦力維持に直結するであろう、西海岸北部ワシントン州の4つのドライドック運用停止の今後が気になるところです

米海軍の艦艇建造や修理能力が危機的状況
「米空母と潜水艦修理の75%が遅延」→https://holylandtokyo.com/2020/08/27/534/
「空母故障で空母なしで出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-16
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24

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米国務省が露のNew START条約不履行を非難 [安全保障全般]

コロナで2020年3月から両国合意で現地査察中断も
2022年夏に査察再開要望も露が継続拒否
両国による条約協議委員会開催も露が拒否
2011年の同条約発効以降で初の不履行訴え

New START4.jpg1月31日、米国防省が米議会に戦略兵器削減条約(New START treaty:2011年発効、2021年1月に26年までの延長に期限ぎりぎり露が合意)の状況に関すレポートを提出し、同条約締結以来初めて、ロシア側が現地査察に応じず、かつ同条約に関する協議委員会(Bilateral Consultative Commission)開催を拒否し、同条約不履行状態にあると訴えました

現地査察に関しては、2020年3月にコロナ感染を受け、米露両国の合意に基づき当面中断することになっていましたが、米国が2022年夏に査察再開を提案してもロシア側がコロナを理由に引き続き拒否している状態で、米国務省はこれを露のウクライナ侵略に対する西側制裁への反発に過ぎないと非難しています

New START6.jpgまた、米側が査察問題をロシアと協議するため、条約が規定する「Bilateral Consultative Commission」の開催を露に要請したところ、2022年11月には一端同意する姿勢を示したものの、後に拒否して現在に至っており、更なる条約違反だと米国務省は訴えています

米国務省報道官は、「米国は完全に同条約を履行すべく、いつでも建設的にロシアと行動する用意がある」と述べ、ロシアが同条約維持のため、違反状態を解消するよう促しています

New START3.jpgこれを受け米議会では、政権与党の民主党議員である上院軍事委員長、上院会合委員長、上院インテル委員長が「我々はNew START条約の初度締結時からロシアとの軍備管理を支持し、同条約の延長にもトランプ&バイデン両政権下で賛同応援してきた。ただし今般の状況に鑑み、同条約の順守が、将来のロシアとの戦略兵器軍備管理を上院で考察するにあたり極めて重要な意味を持つことを、明確にしておきたい」と訴えています

また共和党の有力議員(下院軍事委員長、同委員会委員2名、下院戦略兵器小委員長)はより厳しい姿勢の声明を出し、「ロシアによる査察拒否は条約のより大きな履行違反につながる可能性が高く、米国は戦略核増強に備えるべきだ」、「バイデン政権は国防省に対し、ロシアが条約上限を大幅に超える核弾頭を展開することに備えるよう、準備指示を出すべきだ」と主張しています
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putin russia.jpgいつものロシアのやり方ですが、2026年の同条約有効期限まで、のらりくらりと米側の核兵器強化の動きを封じつつ、ロシアは時間を稼いでコッソリ核弾頭や核兵器の増強を図る道を探るのでしょう。

ウクライナ侵略に伴う西側の制裁で瀕死状態のロシア経済ですから、核弾頭や核兵器の増強どころか、核兵器の管理事体がしっかりできているのかが心配になりますが、米議会内で温度差は多少あるものの、超党派でロシアに厳しい目が向いていることに安堵しておきましょう

新START期限切れ寸前延長
「露が土壇場再延長合意」→https://holylandtokyo.com/2021/01/23/305/
「ドタキャン後に延長表明?」→https://holylandtokyo.com/2020/10/19/435/
「延長へ米露交渉始まる?」→https://holylandtokyo.com/2020/04/20/730/
「中国は核兵器管理条約を拒否」→https://holylandtokyo.com/2020/07/13/570/

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沖縄海兵隊4000名の転進先グアム基地設置式 [Joint・統合参謀本部]

日本の防衛副大臣は「沖縄の負担軽減策」と挨拶し
米国防省は「太平洋に分散」と説明
2024年から沖縄からグアムへ転進開始へ
総額1兆円の移転費用の3700億円を日本負担

Camp Blaz4.jpg1月26日、沖縄海兵隊約4000名が「転進」する予定のグアム島米海兵隊基地「Camp Blaz」の設置式典が行われ、海兵隊にとって70年ぶりの新基地開設でもあることから、Berger海兵隊司令官が参加したほか、日本の木村防衛大臣政務官や吉川外務副大臣も式典に列席して挨拶しています

米海兵隊4000名の沖縄からグアムへの「転進」は、2006年に日米間で合意された在日米軍再編計画で大枠が合意され、転進先として2012年にグアムが米側により決定されていたもので、設置式自体は2020年に計画されていましたが、コロナの影響で延期され、2023年開催となったと報じられています

Camp Blaz2.jpgなおグアム島の米海兵隊拠点は、1899年に初めて設置され、1941年に日本軍によって占領されましたが1944年に海兵隊を中核とした米軍が奪還し、太平洋戦争後に海兵隊Campとして再開し、1992年にいったん閉鎖され現在に至っていたようで、再開にあったての新名称「Camp Blaz」は、グアム原住民チャモロ族出身で初めて将官に昇進したVicente Tomas Garrido Blaz海兵隊准将(退役後に下院議員も務める)にちなんで命名されたとのことです

米国防省副報道官は同基地に約5000名が駐留予定だと説明しましたが、これまでの日米合意から沖縄海兵隊からは約4000名が同基地に転身することになっています。2020年から工事が開始されているようですが、兵舎など基地施設の建設は今も続いており、また日本の各種報道機関は、2024年から兵士の移動が開始されると報じています

Camp Blaz3.JPGまた米側報道発表では、この基地開設や部隊移転に必要な経費約1兆円のうち、約3700億円が日本側負担で実施されることを強調しています

1月11日に開催された「日米2+2」で、在沖縄海兵隊で3200名規模の「第12海兵旅団」を縮小しつつも、対中国作戦により適合した2000名弱規模の「第12海兵沿岸旅団:MLR:Marine littoral regiment」に2025年までに改編で合意した件と関連の動きですが、

Camp Blaz.JPG同時に米海兵隊が歩兵や戦車等の重装備から、対中国を意識した敵艦艇や敵上陸部隊を攻撃する軽快な部隊編成を目指し、対艦ミサイル部隊や防空部隊やISR部隊を中核に据えた部隊編成に改革を進める一環でもあります。

いずれにしても、対中国の真正面の極めて脆弱な沖縄本島駐留米軍を削減し、豪州を含む西太平洋全体での分散運用を追求する「軍事的合理性追求」の米軍と、日本側の未だに「沖縄の負担軽減」との大義名分を持ち出さなければならない立場との奇妙な調和を見せつけられた「Camp Blaz」開設式となりました

米海兵隊の主力海兵旅団の改革
「沖縄にMLR設置で合意」→https://holylandtokyo.com/2023/01/13/4148/
「ハワイで創設のMLR部隊」→https://holylandtokyo.com/2022/08/19/3546/
「米海兵隊のstand-in force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「MLRを日本にも」→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/726/
「Force Design 2030構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

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