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磯田道史氏が指摘する日本軍事組織の弱点 [ちょっとお得な話]

司馬遼太郎で学ぶ.jpg気鋭の歴史学者でメディアでも話題の磯田道史氏が、5月に発表した新書「司馬遼太郎で学ぶ日本史」は日本人の歴史観に大きな影響を与えていながら、歴史学者が議論を避けてきた司馬遼太郎を正面から取り上げ、「体系的に戦国時代から昭和までを学ぶ珍しい本です」と著者自身が表現する書籍です

磯田氏が平易に伝えようとした狙いは、「司馬氏さんは日本が誤りに落ちて行くときのパターンを何度も繰り返し示そうとした」、「国民性というものは百年二百年でそう簡単に変わらない」、「20世紀までの日本の歴史を描いた司馬氏を、21世紀の私たちが見つめ、鏡として未来に備えることが大切」とのあとがきが表現しています

そして書籍では、信長、秀吉、家康やその周辺の人々を描いた戦国時代、幕末の準備・実行・絶頂過程を描いた「竜馬がゆく」「飛ぶがごとく」「坂の上の雲」を踏まえ、著者が最も完成された好きな作品とする大村益次郎を描いた「花神」へと視点を展開し、その過程でそれぞれの時代を描いた様々な作家との対比も行われています

司馬遼太郎2.jpg磯田氏の着目点の一つが、司馬氏自身が「走る棺桶」と描いた時代遅れの兵器と精神論で命を失いかけた暗い青春時代であり、司馬氏が「鬼胎」「異胎」と呼んだ異常な昭和前期(日露戦争後1905年から終戦までの40年間)がなぜ日本に訪れたかを考察することです。ちなみに司馬氏はこの時代を小説で取り上げることはありませんでした

いわば、日本の軍事組織が受け継いでいる「誤りに落ちて行くときのパターン」を探ろうとする一面を持った書籍の性格も帯びています。
多くの歴史上の有名人物と司馬氏以外の作家の見方も紹介しつつ比較していく、読み手を飽きさせない新書ですが、本日は、日本の軍事組織への「警鐘」部分をピックアップして一部をご紹介します。

分析のアプローチが全く異なるのに、以前ご紹介した書籍「失敗の本質」の結論と非常に接点のある指摘に、驚くやら納得するやら・・・

『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』より抽出
司馬遼太郎.jpg●(自らも戦車将校として参戦した)ノモンハン事件で、ソ連軍らと対峙した最強なはずの関東軍は死傷率70%との大敗北を喫したが、ソ連のBT戦車との戦いにおいて、日本軍は性能と装甲において艇的な欠陥を持った戦車で戦いを余儀なくされていた
なぜ当時の陸軍では、「深く考えない」不条理がまかり通ったのか、明治の日本軍は最新で強力な兵器を追及する精神があったのに、いつから日本はその精神を失った国になってしまったのか。その問いこそが、司馬さんの創作活動の原点でした

私の教え子が自衛隊に入るときに言ったことを思い出します。「日本の軍隊は伝統的に、物事がいつまでも同じ形であり続けると思いやすい。軍事組織というものは、入社した時には自動車会社でも、勤務している数年数十年の間に航空会社いなっているような組織のはずなだから」と
WW1の時代の数年間でも既に、当初の歩兵戦から戦車戦に、気球で偵察していたものが複葉機の空中戦にまで変化しています。軍事組織に入った以上、変化に対応できる柔軟な頭であるべきなのに、歴史家の私から見ると、そういう人がほとんどいない

磯田道史.jpg合理主義の権化であった小村益次郎が作った日本陸軍が、誕生時には持っていた合理性はどこへ行ったのだ・・・この怒りで司馬さんは「花神」を描いたのでしょう、
●司馬さんは他者と軋轢を生みかねない、大村益次郎の「他の日本人と違っているところ」を「花神」で書くことによって、合理主義者が時代を変革する力を描き出すのです

●激動期には合理主義的な人物が現れて変革を導くが、静穏期に入ると日本人は途端に合理主義を捨て去る・・・この繰り返しであると司馬さんは言外に訴えています
●司馬さんが言いたかったのは、「死んでも戦います」というリアリズムを失った自殺ではなく、格調高い精神に支えられたリアリズムと合理主義を併せ持たなければならない・・・・まさにそこだと思います
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ちなみに、書籍「失敗の本質」が指摘した旧日本軍の失敗の本質は、本当に今の自衛隊を描写したような分析です。

記事:書籍「失敗の本質」から今こそ学べ! より
失敗の本質.jpg●旧日本軍は、官僚的組織原理と属人ネットワークで行動し、学習棄却(知識を捨てての学び直し)による自己革新と軍事的合理性の追求が出来なかった
●戦略志向は短期決戦型で、戦略オプションは狭くかつ統合性が欠如し、戦略策定の方法論は科学的合理主義というよりも独特の主観的微修正の繰り返しで、雰囲気で決定した作戦には柔軟性はなく、敵の出方等による修正無しだった

●本来合理的であるはずの官僚主義に、人的ネットワークを基盤とする集団主義が混在。システムよりも属人的統合が支配的。人情を基本とした独自の官僚主義を昇華
●資源としての技術体系は一点豪華主義で全体のバランス欠如
学習が、既存の枠組み内でのみ強化され、かつ固定的

秋の夜長に気軽に読める一冊として、磯田道史氏の『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』(NHK出版新書)をお勧めします。

書籍のご案内記事
「失敗の本質」から今こそ学べ!→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-12-31
「宇宙戦を描くGhost Fleet」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-08
「イスラエル起業大国の秘密」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-20

「証明完了ポアンカレ予想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-24
「長谷部誠:心を整える」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-01
「究極のインテリジェンス教科書」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-22

「婚活したらすごかった」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-30
「51歳の左遷から始まった」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-22

 
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マティス長官が情報漏洩に警告文書 [マティス長官]

米国防省までこんなことに・・・
漏洩を見つけた者に通報義務があることも強調

Memo leaks.jpg5日付Defense-Newsが、マティス国防長官が3日付で前国防省職員(もちろん全軍人を含む)に対し発出した情報漏洩に対する警告文書を入手してその概要を伝えています。

本文書発出に至った特定の事案に文書は言及していませんが、トランプ政権誕生以降、ホワイトハウス周辺で大きな問題となっている情報漏洩問題が、ついに最後の砦と期待していた国防省にも波及したのか・・・と人々を驚かせ、そして落胆させています

そして更に、情報漏洩を見つけた者には当局に通報する義務があること文書は強調しており、このあたりにも読者の危機感を更に高める要因があるようです。

記事は、国防長官が秘密情報のみならず「取扱注意」や「部内限り」と言った「グレーゾーン」領域の情報にまで漏洩警告を発していることを問題視し、巷の「知る権利」や「報道の自由」を訴える活動家の視点で書かれており、あまり国益の視点で書かれていませんが、とっても気になる米国防省の内部事情ですので、概要をご紹介します

5日付Defense-News記事によれば
Mattis7.jpg●Military Timesが入手した、3日付のマティス国防長官署名入りの米国防省内部文書である「MEMO」は、「それが秘密情報であろうとなかろうと、任務に必要のない者やセキュリティー資格のない者に、国防省の情報を漏らすことは宣誓への違反である」と警告してる

●そして同MEMOは更に、「全ての国防省勤務者は肝に銘じなければンらない。それが意図的なものであろうともなかろうとも、いかなる理由があろうとも、非公開の情報を許可なく漏洩することは禁じられている」と厳しく指摘している
●更に「誤った行為には厳しく対処せねばならず、漏洩や漏洩が疑われる行為は直ちに通報されなければならない」とも注意喚起している

●同MEMOが言及している「Non-public, but unclassified:秘密情報ではないが非公開の情報」には、内部の業務用メモ、出張日程、行政指針などの、秘密には該当しないが公開を望まない情報が含まれる
●これら情報には「取扱注意:sensitive but unclassified」や「部内限り:for official use only」と言った表示がなされるが、政府職員はこれら情報の公開を禁じられている

Mattis8.jpg●同MEMOの背景について国防省報道官は、2017年5月に英国マンチェスターで発生した銃乱射事件の容疑者リストがリークされ、一時英国が米国との情報共有を停止した事案など一連の漏洩事件が背景にある示唆した
●しかし同報道官も、情報漏洩により前線の米軍兵士らが危険にさらされた事案の有無等については語らず、単一の漏洩事案が同MEMOに繋がったのではないと述べるにとどまった

情報開示を要求する団体はしかし、これら曖昧な定義の取り扱い区分は「グレーエリア」を生むことになり、職員を委縮させ、この情報をどう扱ってよいのかとの疑問を抱かせることになると主張している
●また同団体幹部は、オバマ政権からトランプ政権にかけ、この「Non-public, but unclassified」情報が増加する傾向にあり、より頻繁に定義があいまいなまま使用頻度が増えていると指摘している
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オバマ政権時代から「グレーエリア」情報が増加しているのは、SNSの発達普及であっという間に情報が拡散する時代に、何でもかんでも情報公開すればすべて解決・・・みたいな風潮がはびこる中で、国益を(私益もあるでしょうが・・)を守ろうとした結果の役人の知恵でもあります

Tillerson.jpgなので「・・オンブズマン」みたいな情報開示要求団体の動きには感心がありませんが米国防省内に、政権や上司のやり方に不満を募らせ、または身勝手な面白半分で情報をリークする輩が増えることには危機感を覚えます

ティラーソン国務長官の進退がにわかに話題となり、マティス国防長官が率いる国防省と米軍だけが最後の頼りなんですから・・・

マティス国防長官関連の記事
「インド訪問でアフガンを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-26
「核兵器禁止条約で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-02
「全職員と兵士へのメッセージ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-23
「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1

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SpaceX:失敗場面を集めた映像を明るく発信 [ふと考えること]

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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この明るさとたくましさを学びたい!
「宇宙飛行で世界中どこへでも30分」を打ち出した男の苦闘史

SpaceX.jpg9月14日、SpaceX社のCEOであるElon Musk氏が、ロケットブースター回収成功までの失敗場面を集めた約2分半の映像「How NOT to land an orbital rocket booster」を公開しました。

軽快な行進曲で知られる「マーチの父」スーザの行進曲「自由の鐘:The Liberty Bell」をBGMに、2013年の爆発シーンを皮切りに、陸上や海上への垂直着陸の失敗場面が、期待を裏切らない派手さで紹介されます

Elon Musk.jpgそして最後は、2015年に初めて陸上への着陸回収に成功した映像と、2016年に海上の無人プラットフォームに着陸成功した映像で閉められています。

つくづく・・・、この短期間に、これだけの失敗にめげず、画期的な1段目回収技術の獲得に成功した力量と執念に感心します。公的機関がやってたら、15年、いや絶対に途中で中止されていたと思います

映像「How NOT to land an orbital rocket booster」


現時点でSpaceX社は、16回の垂直着陸回収に成功しており、最近では9月7日に、これまで老舗ULAの「Atlas Vロケット」が担ってた極秘無人宇宙船「X-37B」の打ち上げを圧倒的価格優位で奪い取り、見事に成功させています(1段目回収にも成功)

X-37B 2017.jpgまた、回収した1段目の再利用も、既に数回成功させています

この映像が公開された同日、Elon Musk氏は、「(今は回収できていない)ロケット上部と貨物室部分を回収できれば、打ち上げコストは更に大幅に削減できる(drop by a factor of more than 100)」とツイートしており、その今後が期待されます

Space-X社の参入とULA
「偵察衛星打上げと1段目回収」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-02
「イスラエル通信衛星失敗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-06
「ロケットの着陸回収に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-25

「混迷の米衛星打ち上げ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-24
「10年ぶり米軍事衛星打上げに競争導入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-03
「軍事衛星打上げにSpaceX参入承認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-27

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衝突事故のイージス艦マッケインを横須賀で修理 [Joint・統合参謀本部]

フィッツジェラルドは米本国で修理も、マッケインは優秀な横須賀の施設で修理へ

USS McCain.jpg4日、米太平洋艦隊司令部は、8月21日にシンガポール沖でタンカーと衝突事故を起こしたイージス艦USS John S. McCain (DDG-56)の修理を、日本の横須賀基地で行うと発表しました。
現在シンガポール港に係留されている同艦艇に対する修理見積の結果、コストや運用再開までの期間、更に搭乗員の訓練等を総合的に勘案し、横須賀での修理が最適と判断されたそうです。

一方で、6月17日に日本の沖合で商船と衝突事故を起こしたUSS Fitzgerald (DDG-62)は現在横須賀に係留中ですが、より衝突の被害が大きいため、12月にミシシッピ州の造船所に輸送されて修理を行う模様です。

もちろん、McCainとFitzgeraldの間には被害の大きさに差があるのでしょうが、アメリカ国外では唯一空母の母港として機能している横須賀基地の海軍修理施設を優秀さをあらためて示すことになりました。
ここで重要なのは、米海軍の修理施設といえども、修理最前線の作業を担っているのは米軍に雇用されている日本人だということです

4日付米海軍協会web記事によれば
Yokosuka.jpg●米太平洋艦隊は米海軍協会に対し、「既に米海軍の前方展開海軍の拠点である横須賀で修理を行うことは、艦艇の乗員とその家族に対しても、安定と継続性を提供できる」との理由も説明している
●また米太平洋艦隊は、「艦艇修理に加え、第7艦隊内で、乗員の任務復帰に向けた訓練や資格維持に集中できる」とも説明している

●イージス艦マケインへの被害は大きかったが、被害の大部分が乗員の居住区域と機械室であり、電気系統にほとんど被害がなかったこともこの決定に影響している
●米海軍協会が入手した情報によれば、米海軍は同艦の修理費を約250億円と見積もり、約1年間必要と考えている模様

Yokosuka3.jpg●米海軍は、同艦艇を10月末までに「heavy-lift transport」により横須賀に移送する準備を進めている
●イージス艦McCainとFitzgeraldは、ともに空母ロナルド・レーガン空母戦闘群を構成する艦艇で、ミサイル防衛能力を提供する艦艇である
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米海軍の横須賀基地内には大型艦船用ドックがあり、各艦艇の日々の点検及び修理業務は横須賀基地内で行われます。

横須賀基地が機能しなければ、艦船の点検及び修理などは往復におよそ半月から1か月を要するハワイ・オアフ島の真珠湾、またはアメリカ本土の基地内の修理施設で行う必要があるため、米海軍の西太平洋でのプレゼンスを示すには、横須賀基地の修理能力は欠かせません

更に・・・弾薬の補給(トマホークとかSM-3とか)の観点からしても、極めて重要と言わざるを得ません。

Yokosuka2.jpg1865年に江戸幕府により設立された横須賀製鉄所を基に、1871年に横須賀造船所として設立され、その後1903年以降は大日本帝国海軍により横須賀海軍工廠として利用されていますが、ドックの中には幕末に建設された日本最古でありながら、いまだ現役で使用されている施設もあるようです。


米海軍関連の話題
「無人機で対艦ミサイル照準」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-27
「レールガンの現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-30  
「無人給油機で艦載機行動半径倍増へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-03

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ロシアの演習監視団排除と移動式ICBM演習 [安全保障全般]

Topol ICBM.png色々な話題が世界を駆け巡る今日この頃ですが、「東京の郊外より」は最近忘れられがちな、ロシア関連の話題を2つお届けします

一つは、東西陣営の接点にあるベラルーシで、ロシア軍が先月行った大規模演習に関する欧州米陸軍司令官のコメントで、もう一つはロシア西部全域を範囲とする移動式ICBM演習についてです。

米軍事メディアも、短い簡単な事象を伝えるだけの報道で紹介しているだけですが、コソ泥のような動きが得意なロシアのことですから、ご紹介しておきます

9月中旬の「Zapad 2017」演習に関し
Zapad 2017-2.jpg●2日、欧州米陸軍司令官であるBen Hodges中将がNATO司令部で会見し、ロシアが先月ベラルーシで行った「Zapad 2017」演習に関し、ロシアは演習を分割することで演習の規模を小規模に見せかけ、ロシア側が主張する12700名との参加人員をはるかに上回り、欧州OSCEが定めた軍事監視団の視察を受け入れるべき兵員数を超えた規模の演習を行っていたと訴えた。
●そして同中将は、「我々の推測では、4万人以上の兵士が演習に参加していたはずだ」と主張した

●更に同司令官は、「細かに分割されていたものの、すべての演習は政治的に関連づけられていた」と説明した
●本演習に関しロシア国防相は、ロシア軍とベラルーシ軍を合わせて12700名と、航空機70機、戦車250両、10隻の艦艇が参加すると発表していた

60台以上の移動式ICBM発射機が演習
Topol ICBM 2.jpg3日、インターファックスがロシア国防省の発表として、ロシア軍の移動式ICBM発射機60台以上が参加する演習が実施されていると報じています

●演習に参加しているのは、ロシア軍が保有するICBM(Topol, Topol-M and Yars)を搭載した60以上の移動式ミサイル発射機で、大型トラックにICBMを搭載し、敵の偵察衛星や航空偵察による把握を極めて困難にするものである

●ロシア国防省によれば、演習はモスクワ北西の「Tver region」からシベリア東部の「Irkutsk region」におよぶ、広大な地域を範囲として実施されている。
本演習は、ベラルーシでの「Zapad 2017」演習に続けて実施されており、NATO諸国をいら立たせている
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Zapad 2017.jpgこれだけで何かを結論付けることはできませんが、米国が揺れている間に、欧州NATO諸国に着実にプレッシャーを与えていることは間違いありません

トルコがロシア製の長射程高性能SAM導入を明らかにしたり、化学兵器の全面破棄完了を発表して米国を皮肉ったり・・・、特に東欧NATO諸国にとっては、眠りの浅い日々が続いているのでしょう

最近のロシア関連記事
「化学兵器の完全破棄宣言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-28
「トルコが露製SAM導入発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-14
「ベラルーシで大演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-31

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米空軍:予算不足で約100機のF-35能力向上せず? [亡国のF-35]

Winter2.jpg19日、米国防省F-35計画室のMat Winter室長(海軍中将)が、早い段階で米空軍へ納入された最初期ソフトウェア「2B」を搭載した約100機のF-35について、今後完成版ソフトでF-35の最大性能を発揮し、要求性能にある武器を全て搭載可能になる「3F」導入への改修を行うかどうかを検討していると語りました

ソフト「2B」から「3F」搭載に変更するには、スマホアプリのように画面をタップしてボンヤリ待つだけでなく、F-35の機体に少なくとも「150」の修正や改修を行う必要があり、その予算を他に使用したほうが有効ではないか・・・との検討です

たしかソフト「2B」では、アムラームと2000ポンドJDAMくらいしか搭載できず、本当に何とか操縦者の機種転換&養成訓練ができる程度で、旋回性能や最大Gの制限も受け、赤外線空対空ミサイルや小口径爆弾などなどの搭載も出来ないなど、高額な投資をして獲得した作戦機ながら、空対地能力を実戦で発揮するには厳しいレベルです

F-35 luke AFB.jpgそんな「ソフト2B」機をそのまま放置し、試験や訓練だけに用途を限定するとは、なんともさみしい話ですが、米空軍参謀総長が「そんな気にする話じゃないよ・・・」と懸命に火消しの言い訳をしていますので、それもご紹介します

なおF-35の搭載ソフトは、「2B」→「3I」→「3F」と進化していく計画ですが、「3I」が中途半端ながら遅れて納入され、昨年夏に米空軍が初期運用態勢確立を宣言しましたが、「3F」はいつものように遅れており、国防省の評価局は「少なくとも1年遅れ」と早い段階から繰り返し警鐘を鳴らしているのに、F-35計画室は「まだそう決まったわけではない」と歯切れの悪い発言を繰り返した挙句、春頃にやっと遅れを認めたところでした

22日付Defense-News記事によれば
●Winter室長は、米空軍が保有する108機の「2B」搭載機をソフト「3F」に改修するか、もしくは、その改修費用を新造機購入費に充てるか、ソフト「3I」搭載機の改修費に回すべきかどうかの、比較検討分析を行っていると語った

F-35 luke AFB2.jpg●この件に関し Goldfein米空軍参謀総長は19日、そんなに大げさなことではなく、他の機種にもあることだと釈明し、F-15でもF-16でもそうだったし、F-22も149機は最新の「Block 30/35」だが、36機は「Block 20」バージョンだと説明した
●また同参謀総長は、同じくF-35を購入する米海兵隊や米海軍、更に海外の購入国空軍トップとも、どのような方向が良いか連携をとっているとも語った

このような課題が生じることは、国防省の試験評価局が2015年のレポートで早くから指摘し、「厳しい予算環境の中でF-35調達機数を今後増加させる必要が生じるが、そんな中で、初期型ソフト搭載機体の高価な改修費をねん出することは恐らく不可能(unaffordable)である。その結果、作戦能力上で大きな制限を受ける機体を、長年にわたって置き去りにすることになる」と完全に予想していた
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108機だけじゃすまないでしょうね・・・。「少なくとも2019年末までに完成する約490機の機体で、完全なものは1機もない」と当時のF-35計画室長が明言したF-35ですから、少なくとも約500機が要改修機体となります
そしてその多くが、置き去りにされるのでしょう・・・・
「2019年末まで完全な機体無し」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-10-1

F-35 Hill AFB.jpg下に国防省の評価局や会計検査院のF-35計画への評価関連記事(一部)を載せましたが、これら客観性を保つ目的の組織がこれまで指摘してきた事項は、ほぼすべてが正しく(まんぐーすが知る限りでは完全に正しく)、F-35計画室や米空軍幹部の発言は、結論先送りや問題を過小評価する点で一貫してきました

そして、まだ結果は出ていませんが、これら評価機関に加え、退官した元国防次官や議会の有力国防議員、更に主要な研究者たちが、明確に(時には間接的に)予言しているのは、米空軍だけで1700機以上、米軍全体で2400機以上ものF-35調達は不可能だということです

国防省試験評価局のF-35評価
「F-35計画室がやっと遅れ認める」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-17
「システム試験は6割も残置」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-13
「試験と訓練を急いで火災事故」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-22-1

会計検査院GAOもF-35酷評
「再度警告:開発と製造の同時並行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-10
「F-35最終試験は1年遅れでも不可能」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-17
「ALISにはバックアップが無い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-01

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北朝鮮は米軍爆撃機を撃墜できるか [ちょっとお得な話]

Ri Yong Ho.jpg9月23日、米空軍B-1B爆撃機がF-15C戦闘機を護衛に従え、非武装地帯のラインを超えて北朝鮮沿岸を21世紀で最も北上する飛行を行い、プンゲリ核実験場(Punggye-ri)まであと90nm(160㎞)まで迫ったと米太平洋軍が発表しました

ちなみにこの距離は、北朝鮮が一方的に主張している沿岸から50㎞の軍事境界線よりも沖合の飛行だったことを示しています。

これに対し25日、北朝鮮の外相がNYで「たとえ米軍爆撃機が北朝鮮の領空外を飛行していても、北朝鮮は撃墜する権利を有していると記者団に語り、物議をかもしたところです

このやり取りを受け9月28日付Defense-Newsが、北朝鮮が現在保有する迎撃戦闘機と地対空ミサイルで、米軍長距離爆撃機を撃墜できるか吟味しています。
北朝鮮上空ではなく、北朝鮮の沖合を飛行するとのボンヤリした前提で話が進んでいますが、北朝鮮の通常戦力の実態を垣間見る機会ですので、ご紹介します

9月28日付Defense-News記事によれば
Mig-29 NK.jpg北朝鮮の防空ネットワークは、国連の禁輸制裁を受け、数は多いがいずれも時代遅れの代物で構成されている
ソ連時代のMig-23とMig-29をそれぞれ1個飛行隊で約30機保有しているが、1970年代後半から1980年代初期のもので、北朝鮮に提供されてから全く能力向上等を行っていないものと考えられている

●両タイプとも通常は、首都ピョンヤンの周辺に配備されているが、韓国と緊張が高まった際などは、南北の境界線付近に展開することもあった
●CNNは米国防省高官の話として、今週、少数のMig戦闘機が追加の燃料タンクを装着し、空対空ミサイルを搭載して北朝鮮の東海岸沿いの基地に展開したと報じており、米軍爆撃機の要撃が目的と考えられている

Mig-29 NK2.jpg●しかし、米軍爆撃機が戦闘機に援護され、AWASCなど空中レーダーに支援されていたとすれば、ソ連式の地上誘導に頼る北朝鮮戦闘機は沿岸を離れた洋上で不利な立場に置かれるだろう
●戦闘機による対処が難しいなら、地対空ミサイルによる邀撃に北朝鮮は頼ることになるだろう。この場合、北朝鮮が保有する最も長射程の地対空ミサイルはS-200(SA-5 Gammon)がその任に就くだろう

●このS-200は、1960年代の兵器で、高い高度をあまり激しい動きをせずに飛行する航空機を対象として開発されたSAMであり、射程距離はそのバージョンによって150~250マイルと言われている
S-200.jpg北朝鮮には1987年か88年に提供されたと見られており、24~40個発射機が存在する模様だが、通常はピョンヤンの南と東の部隊に配備されている

●S-200は、1980年代にリビアによって、また今年シリアで発射されたが、いずれも目標に命中していない
●またS-200は、電子戦下では有効性を失うであろうし、大きなミサイルは動きの激しい航空機を追随することが困難だろうと見られている

●さらに最近北朝鮮は、KN-06という国産で射程100nmの地対空ミサイルを披露しており、金正恩が量産を指示したとも報じられているが、中国産HQ-9やロシア製S-300と外観が類似している以外、細部は不明である
●いずれにしても北朝鮮の防空能力には疑問符がついている
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S-200 2.jpg昨今の弾道ミサイル乱れ撃ちのため、その方面に資金を集中しているでしょうから、通常兵器は押して知るべしの状態でしょうねぇ・・・

ゲリラ戦を展開する特殊部隊なんかは、優遇されていそうですけど・・・。無人機とかも・・・。

米軍もあらゆるセンサーを総動員して、北朝鮮の現状把握に全力を挙げているでしょうし、日本や韓国も協力しているでしょうから、移動式の弾道ミサイル発射期は別として、かなりの状況は把握できていると思います。たぶん

米軍事メディアが見た北朝鮮騒ぎ
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-14

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中国国防省がJ-20運用開始を公式宣言 [中国要人・軍事]

Wu Qian.jpg9月28日、中国国防省の報道官が記者会見で、公式にJ-20戦闘機が運用を開始した(commissioned J-20 into service)と発表しました。

しかし一方で、飛行試験は順調に予定通り進んでいるとも表現しており、以前にも米国防省高官の見方をご紹介したように、中国国防省での「運用開始」とは、最前線での任務に投入可能との意味ではなく、正式な作戦運用試験が可能になったとの意味で、今後は他の航空機との連携試験や運用コンセプトの検証試験が可能になる・・・程度の意味と認識したほうがよさそうです

それでも、今年3月9日に中国国営TVが「J-20が運用を開始した」と報道したのとは異なり、公式に中国国防省が中国的な「運用開始」を宣言したということなので、ご紹介しておきます。

9月28日付Defense-News記事によれば
J-20bank.jpg既に低レート生産体制に入っているといわれている中国空軍J-20は、少なくとも6機の試作機が、2016年からDingxin空軍基地(各種装備品の開発試験基地)の第176航空連隊で試験を行っている
中国空軍内では第4世代機に分類されているが、西側では第5世代機に含まれると解釈されるステルス性を持つ中長距離戦闘機である。ただし、ステルス性に関しては機体を正面から見た場合に限られる

台湾の専門家が最近外観の形状からJ-20のステルス性をレーダー反射面積から評価し、ステルス性は正面からののみとの一般的見方に同意する結果を得たようだが、機体の表面処理や塗装については評価できていない
●また中国空軍のJ-20操縦者の発言から、J-20があるレベルの「sensor fusion」能力を備えていることが確認されているが、細部は不明である

●ステルス性に配慮し、J-20は胴体内兵器庫に弾薬を格納し、中央のメイン兵器庫には空対空ミサイルPL-12(中国版アムラーム)なら6発、機体両側面の小型兵器庫に各1発の短射程空対空ミサイルを搭載可能とされている

今年3月の記事でJ-20をご紹介
J-20groundgrew.jpg現時点で、中国は9機から12機のJ-20を保有しているか考えられている。2016年11月に広東省珠海(Zhuhai)の航空ショーで初めて2機が飛行する様子を披露
エンジンを2基備え、米国製F-22そっくりだと言われる中国CAC(成都飛機工業公司)製のJ-20は、8つのプロトタイプで様々な形態の飛行試験を2011年から開始しているが、兵器搭載試験は今も継続している

中国国営メディアもかつて言及しているように、J-20は必ずしも空中戦闘能力を追求した設計にはなっておらず、F-22やF-35と直接的な同類ではない
●全方位のステルス性能を追求せず、前方からのステルス性を追求していることから、高価値目標(AWACS、 空中給油機、 作戦機の大規模編隊、水上目標)に一撃を加え、帰投するような運用構想も考えられる
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正面からのレーダー反射面積を減らし、ひたひたと高価値目標(AWACS、 空中給油機、 作戦機の大規模編隊、水上目標)に接近し、一撃を加えて帰投する独特の運用構想に注目いたしましょう。

Dingxin.jpg米軍や周辺同盟国の西太平洋地域での作戦基盤基地が少ないこともあり、上記「高価値目標」の価値が一段と高くなる戦域ですので、中国空軍の考え方は大いに理にかなっています

Dingxin空軍基地は中国内陸北方部の位置し、なかなか公開情報が出てこない場所ですが、「戦闘機命派」が喜びそうな話題でしょうから、生暖かくフォローいたします

J-20関連の記事
「中国報道:J-20が運用開始?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-14
「大局を見誤るな:J-20初公開に思う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02

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