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若手中尉が論文:世界的気温上昇で輸送機効率ダウン [米空軍]

2039年にはC-17輸送機の搭載量が約9%ダウン
2099年には同機搭載量が約3割ダウンの可能性も

C-17 Climate4.jpg米空軍大学が発行している2023年夏号の「Air & Space Operations Review」が、C-17パイロット訓練生である女性中尉の論文「Barriers to Force Projection」を取り上げ、世界的な気候変動による気温上昇により、最悪シナリオでは、2039年までにC-17輸送機の最大搭載量が多くの地域で8.5%減少し、2099年までを想定すると約3割減少する恐れがある、との同中尉の分析を紹介しています

筆者のKaitlyn Benton中尉は、戦闘機パイロット希望もあったものの、修士論文で空軍による戦力輸送にも関係が深い「空間地理情報:geospatial intelligence」を取り上げるためにC-17操縦者の道に進路を変更した人で、「Air & Space Operations Review」掲載論文は、修士論文作成時に浮かんだ疑問に挑んだもののようですが、内容はあくまで個人的な意見と断ったうえで、米空軍協会機関誌に論文概要を語っています

C-17 Climate.jpg航空機が飛行する空間大気温度が「気候変動:climate change」により上昇すると、同じ高度を飛行しても空気密度が薄くなり、浮力やエンジン推力や燃費効率が低下して、輸送機に搭載可能な貨物重量や輸送機の航続距離が低下する現象を、地球温暖化の最悪シナリオを想定して分析した結果を、同中尉は論文にまとめています

論文の結論部分を要約すると、気候変動による気温上昇度合いは各地で異なりますが・・・

2020年時点と比較して2039年時点では、
●最大搭載重量が8.5%減少する範囲
(8.5%減小は1.45万ポンドでUH-60ヘリ1機に相当)
・中央軍とアジア太平洋軍エリアの約50%の範囲 
・米南部軍とアフリカ軍エリアの約85%の範囲

●最大離陸重量への影響
(29.3%減少は約5万ポンドでBradley戦闘車両1台分)
・米アフリカ軍担当エリア全域で17%減少、
・同軍担当エリアの3/4のエリアで29.3%の減少

2020年と2099年の比較
(最大離陸重量減少29.3%の範囲は)
・米中央軍とアジア太平洋軍エリアでは36%
・南米軍エリアでは69%
・米アフリカ軍エリアでは73%

C-17 Climate3.jpgなお、北米軍や欧州軍エリアでは、最大搭載重量が8.5%も減少する影響は出ないが、最大搭載重量や離陸重量の減少量の増加率が、他の地域と比較して高くなっているようです

将来輸送機の検討&導入は、気候変動に伴う気温上昇による飛行効率低下の影響を緩和すると期待され、今年8月にBWB(blended-wing body)機のプロトタイプ作成契約が締結され本格始動し、2027年の飛行試験開始が予定されていますが、C-17後継機として入れ替えが完了するには長期間を要することから、気温上昇に迅速な対応は期待できません

C-17 R11.jpgまた同様の気温上昇による飛行効率低下は、輸送機だけでなく、爆撃機、空中給油機、回転翼機や戦闘機にも一定程度予期される現象であり、小さな影響が積みあがることで、展開基地や中継基地の配置や選定、必要燃料量や空中給油ポイントの見積もり、また空輸限界を見据えた可能な展開戦力量など、作戦計画の様々な分野に修正を迫るものとなり、より大規模な検討が必要な分野と考えられています
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同中尉は、「私の研究論文の対象範囲はほんの一部であり、様々な課題や要検討事項への対応を開始している国防省や各軍種レベルの気候変動対処部署が存在する」、「中国やロシアの脅威のように、広く認識され議論されている脅威ではないが、その影響が決して小さくない課題であり、私も微力ながら引き続き問題に取り組んでいきたい」と論文を締めくくっているようです

C-17 Climate2.jpg気候変動に対処するため、C02排出量の削減だ、太陽光や風力や地熱発電設備の導入だ、2050年までにカーボンニュートラルだ・・・とまで言われると、なんとなく「うさん臭い」印象を受け、中国の裏工作などを疑ってしまうまんぐーすですが、この夏の日本や欧州の猛暑など、世界的な気候の変化は顕著であり、米国防省各レベルで推進中の「気候変動対処計画」が避けて通れないことは認めざるを得ません

2023年夏号の「Air & Space Operations Review」96ページ
https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/ASOR/Journals/Volume-2_Number-2/ASOR_Volume_2_Number_2..pdf

国防省内の気候変動対処
「空軍のCAP気候変動対処計画」→https://holylandtokyo.com/2022/11/07/3747/
「国防省が気候変動対処構想発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/
「海軍と海兵隊が対処演習強化」→https://holylandtokyo.com/2022/09/28/3666/
「米陸軍が前線電力消費増に対応」→https://holylandtokyo.com/2022/04/25/3138/

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