米海軍が日本海でも「航行の自由作戦」 [安全保障全般]
竹島でも大和堆でもなく「ピョートル大帝湾」で
1984年に旧ソ連が「内水」と主張し始めた係争地
11月24日、米海軍第7艦隊は、ロシアが領海と主張する日本海北西部ウラジオストク周辺の「Peter the Great Bay:ピョートル大帝湾」の海域付近で、米海軍のイージス駆逐艦「USS John S. McCain」が「航行の自由作戦:freedom of navigation operation」を実施したと発表しました。
ロシア国防省は米海軍発表に先立ち、米海軍の駆逐艦がロシアの「領海に侵入した」と発表してところです。 ロシア国防省は、米駆逐艦が24日、ロシアの領海に約2km「違法侵入」したと指摘し、ロシアの対潜駆逐艦「Admiral Vinogradovアドミラル・ビノグラドフ」が発見し警告、米駆逐艦はロシア艦艇からの警告を受けてただちに公海に出たと主張しています
これに対し米海軍報道官のJoe Keiley大尉は、「ロシア側の主張は誤りで、駆逐艦マッケインは如何なる国の領海からも排除されてはいない」、「同駆逐艦は国際法に基づき、航行の自由作戦を引き続き公海上で継続する。米海軍は決して脅迫に屈することなく、またロシア連邦が主張するような不当な領海主張を受け入れることはない」との声明を出しています
第7艦隊は2017年以来、中国による南シナ海や黄海における不当な領海主張のような行為に対し「航行の自由作戦」を増加させてきており、今年も中国が領有を主張する海域に少なくとも6隻の艦艇を派遣していますが、「ピョートル大帝湾」へのロシアの主張に対する同作戦の実施は2018年12月以来となります
24日付Military.com記事によれば
●旧ソ連邦は1984年、通常の領海(海岸など領海基線から12海里)を超え「ピョートル大帝湾」の入り口に約106nmのラインを設定し、その内側を国際法上の「歴史的湾」との解釈で艦船の無害通航権を認めない「内水」だと主張をはじめ、ソ連邦崩壊後のロシアでも同様の主張を引き継いでいる
●米国は、ロシアによる「歴史的湾」との解釈からくる「内水」主張は、国際法を反映した海洋法条約に違反しているとし、それを示すために航行の自由作戦を実施している
ピョートル大帝について
●ピョートル大帝はピョートル1世の呼び名で、ロシアのロマノフ朝の繁栄を出現させた皇帝(在位1682~1725年)。ロシアの専制君主政治であるツァーリズムの体制を完成させた
●1967年から2年間、皇帝でありながら欧州各国の視察を自ら行う。その旅行で刺激を受けて積極的な西欧化政策を推進、西欧の技術者を多数招聘し、産業の近代化を行った。オランダとイギリスでは造船所で一職工として働き、ハンマーをふるって造船技術を習得、博物館、病院、裁判所、砲弾工場なども見学した
●南方では、オスマン帝国とその属国であるハン国が領有する黒海沿岸に進出し、さらに黒海から地中海方面に勢力を拡大する、いわゆる「ロシアの南下政策」の端緒をつくった。
●北方では、バルト海の覇権をめぐってスウェーデンのカール12世との北方戦争を戦った。バルト海の制海権を得たロシアは1712年に新都ペテルブルクを建設して西欧への窓口とし、バルトの覇者としての地歩を確保した。軍備では特に海軍の育成に努め、ペテルブルク近郊を拠点にバルチック艦隊を創設した
●また東方ではシベリア進出を推し進め、清との間で1689年にネルチンスク条約を締結し、ロシアと清朝の間での最初の国境を画定した。これは清(中国)がヨーロッパ諸国と結んだ最初の条約であった。また部下にカムチャツカ探検を命じ、日本との通商路を探った。晩年にはベーリングを派遣してカムチャツカ、アラスカ方面を探検させ、ベーリングは1728年にアラスカに到達した
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駆逐艦マッケインは、2017年8月21日、マラッカ海峡シンガポール沖でリベリア船籍の石油タンカー Alnic MC と衝突して乗組員10人が死亡する大事故を起こし、乗組員寝所、機関室、通信室などの区画が浸水する被害を受けた艦艇です
2019年10月末に復帰し、第7艦隊横須賀に配属されており、汚名返上の任務遂行ですが、今後の活躍にも期待いたしましょう。
めっきり減った南シナ海の話題
「航行の自由作戦活発化というけれど」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-06
「初のASEANと米国の海洋演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-03
「次期米軍トップが中国脅威を強調」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14-1
「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「F-35搭載艦艇がFONOP」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-07
「アジア安全保障会議2019」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-31-1
「中国艦艇が米艦艇に異常接近」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-10-06-1
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1984年に旧ソ連が「内水」と主張し始めた係争地
11月24日、米海軍第7艦隊は、ロシアが領海と主張する日本海北西部ウラジオストク周辺の「Peter the Great Bay:ピョートル大帝湾」の海域付近で、米海軍のイージス駆逐艦「USS John S. McCain」が「航行の自由作戦:freedom of navigation operation」を実施したと発表しました。
ロシア国防省は米海軍発表に先立ち、米海軍の駆逐艦がロシアの「領海に侵入した」と発表してところです。 ロシア国防省は、米駆逐艦が24日、ロシアの領海に約2km「違法侵入」したと指摘し、ロシアの対潜駆逐艦「Admiral Vinogradovアドミラル・ビノグラドフ」が発見し警告、米駆逐艦はロシア艦艇からの警告を受けてただちに公海に出たと主張しています
これに対し米海軍報道官のJoe Keiley大尉は、「ロシア側の主張は誤りで、駆逐艦マッケインは如何なる国の領海からも排除されてはいない」、「同駆逐艦は国際法に基づき、航行の自由作戦を引き続き公海上で継続する。米海軍は決して脅迫に屈することなく、またロシア連邦が主張するような不当な領海主張を受け入れることはない」との声明を出しています
第7艦隊は2017年以来、中国による南シナ海や黄海における不当な領海主張のような行為に対し「航行の自由作戦」を増加させてきており、今年も中国が領有を主張する海域に少なくとも6隻の艦艇を派遣していますが、「ピョートル大帝湾」へのロシアの主張に対する同作戦の実施は2018年12月以来となります
24日付Military.com記事によれば
●旧ソ連邦は1984年、通常の領海(海岸など領海基線から12海里)を超え「ピョートル大帝湾」の入り口に約106nmのラインを設定し、その内側を国際法上の「歴史的湾」との解釈で艦船の無害通航権を認めない「内水」だと主張をはじめ、ソ連邦崩壊後のロシアでも同様の主張を引き継いでいる
●米国は、ロシアによる「歴史的湾」との解釈からくる「内水」主張は、国際法を反映した海洋法条約に違反しているとし、それを示すために航行の自由作戦を実施している
ピョートル大帝について
●ピョートル大帝はピョートル1世の呼び名で、ロシアのロマノフ朝の繁栄を出現させた皇帝(在位1682~1725年)。ロシアの専制君主政治であるツァーリズムの体制を完成させた
●1967年から2年間、皇帝でありながら欧州各国の視察を自ら行う。その旅行で刺激を受けて積極的な西欧化政策を推進、西欧の技術者を多数招聘し、産業の近代化を行った。オランダとイギリスでは造船所で一職工として働き、ハンマーをふるって造船技術を習得、博物館、病院、裁判所、砲弾工場なども見学した
●南方では、オスマン帝国とその属国であるハン国が領有する黒海沿岸に進出し、さらに黒海から地中海方面に勢力を拡大する、いわゆる「ロシアの南下政策」の端緒をつくった。
●北方では、バルト海の覇権をめぐってスウェーデンのカール12世との北方戦争を戦った。バルト海の制海権を得たロシアは1712年に新都ペテルブルクを建設して西欧への窓口とし、バルトの覇者としての地歩を確保した。軍備では特に海軍の育成に努め、ペテルブルク近郊を拠点にバルチック艦隊を創設した
●また東方ではシベリア進出を推し進め、清との間で1689年にネルチンスク条約を締結し、ロシアと清朝の間での最初の国境を画定した。これは清(中国)がヨーロッパ諸国と結んだ最初の条約であった。また部下にカムチャツカ探検を命じ、日本との通商路を探った。晩年にはベーリングを派遣してカムチャツカ、アラスカ方面を探検させ、ベーリングは1728年にアラスカに到達した
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駆逐艦マッケインは、2017年8月21日、マラッカ海峡シンガポール沖でリベリア船籍の石油タンカー Alnic MC と衝突して乗組員10人が死亡する大事故を起こし、乗組員寝所、機関室、通信室などの区画が浸水する被害を受けた艦艇です
2019年10月末に復帰し、第7艦隊横須賀に配属されており、汚名返上の任務遂行ですが、今後の活躍にも期待いたしましょう。
めっきり減った南シナ海の話題
「航行の自由作戦活発化というけれど」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-06
「初のASEANと米国の海洋演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-03
「次期米軍トップが中国脅威を強調」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14-1
「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「F-35搭載艦艇がFONOP」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-07
「アジア安全保障会議2019」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-31-1
「中国艦艇が米艦艇に異常接近」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-10-06-1
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