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RAND:米空軍のidentity crisisをレポート [Joint・統合参謀本部]

これは国防省の委託研究レポートです
膨大な関係者インタビューに基づく実態レポート
まんぐーすより辛辣です。米国は懐が深い・・・

RAND ID Crisis.jpg25日、国防省Net Assessment室が依頼した米軍(陸海空海兵隊と特殊作戦群)文化を描写したレポートMovement and Maneuver: Culture and the Competition for Influence Among the US Military Services」をRAND研究所が発表し、米空軍は「identity crisis」と悪戦苦闘していると分析している模様です

タイトルからは内容がピンときませんが、匿名の現役とOBの軍関係者多数へのインタビューを主な情報源とし、上記各軍種の考え方や組織文化や思考パターンを分析し、米空軍については、戦闘機パイロット中心の階層社会、航空優勢確保の重要性を訴え予算を確保、他軍種からの不満と戦い方の変化を前に「identity crisis」に直面などなどの側面から描いているようです

依頼元の国防省Net Assessment室(数年前まで国防省のヨーダ、Andrew Marchall氏が率いてきた戦略研究室)は、1986年のGoldwater-Nichols法により各軍種の資源争い行動パターンが変化してきたか、今後の特に対中・対北の緊急事態にどう対応してかを「問い」として提示したようで、その点からして興味深いのです

残念ながら、パターンの変化や緊急事態対応に部分まで細部をご紹介できませんが、同レポートを紹介するメディア記事やRANDの概要紹介分から、4軍の予算獲得文化の概要に触れた後、米空軍部分をご紹介します

まず、陸海空海兵隊と特殊作戦群を端的に表現すると
Milley.jpg米陸軍は自身をリーダーシップと指揮の達人だと位置づけ、予算等確保のため、資源削減は国家にとって受け入れがたいリスクだと主張する。通常地上戦力の中心との位置づけ確保を追求し、全ての事態への参加を追求する
米海軍は綿密に練られた戦略と、統合への執拗な抵抗を通じ、予算確保を狙っている。前方展開戦力や戦力投射能力を維持して他軍種との競争力を維持し、海軍独自の任務を国防省に受け入れさせる

米空軍は成績優秀者に早くから優先投資して昇任させ、また上級者の能力管理開発で優位性を確保しようとしている。技術開発やイノベーションに精力を注ぎ、航空優勢確保を米軍戦略の中で中心に据えることで、他軍腫支援やサイバーや宇宙任務に埋没しない事を目指している
Neller4.jpg海兵隊は議会や一般国民にアピールし、その選ばれしものとしてのブランド維持によって地位を確保しようとしている。

特殊作戦軍は作戦面での信頼性、戦闘コマンドと軍種のような位置づけの間を戦略的に浮遊、議会からの強い支援を基に資源確保に当たっている

米空軍に関しての分析では
米空軍の主目標は航空優勢獲得を米軍戦略の中核に据えることで、国防省首脳や議会に対し、空軍は他軍種のサポート役ではなく、それ以上の存在であることを認識させて予算等を確保することにあり、空軍にとっての義務である
Goldfein1-1.jpg●2002年以降の対テロ作戦においても、空軍が直接的な戦闘力であるように見られることが重要であった。しかし統合作戦立案において、空軍人の存在感が薄いことを現空軍参謀総長は問題視し、統合レベルで活躍する人材育成を重視している

●米空軍内では主要なポストを戦闘機パイロットが支配しており、戦闘機以外の職域やサイバー宇宙への資源配分や注目が疎かになる。そして戦闘機パイロットが一番で、爆撃機が2番、その他はその下・・・との階層を組織内に生み出している
その階層社会文化を変えたいとの希望はほとんどなく、ある退役将軍は「現職の空軍参謀総長が任期途中で更迭されない限り、他職種の将軍が参謀総長になる可能性は低いし、他職の将軍は参謀総長になりたがらない」と言い切っている

F-35 luke AFB2.jpgしかし全体として、米空軍指導層の間には劣等感があり、今後も継続して他軍種よりも予算を確保していくために必要な任務をアピールしていく難しさを感じている。またこれまでの予算獲得争いで、他軍種から怒りを買っているとも感じている
空軍外部の者は米空軍を、技術偏重で、予算獲得争いには強いが、組織内部の「identity crisis」に直面していると見ている
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6名の同レポート著者は結論部分で各軍種の特性は根強く生き残っており、1986年のGoldwater-Nichols法以降も各軍種は強い力を維持しているが、状況や情勢に応じ緩やかに変化しつつあり、国防長官室、メジャーコマンド、統合参謀本部が力を強め、また海兵隊や特殊作戦軍の活躍場面の増加に伴いに、予算獲得競争は複雑さを増していると記しています

F-22Hawaii3.jpg用意周到・動脈硬化、伝統墨守・唯我独尊、勇猛果敢・支離滅裂・・・等と自虐的に表現される自衛隊の描写と似ているとの第一印象ですが、何せ267ページの膨大なレポートですので、対中国や対北朝鮮有事対応への影響部分など、ご興味のある方は、是非ご覧ください


RANDの関連webサイト
→ https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR2270.html 

RANDのレポート記事
「中国空軍戦力に新たな視点でアプローチ」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-30
「朝鮮半島統一のためには」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-03-1
「必要な米空軍戦力量は」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-02
「中国の核抑止の変化」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-19
「台湾よ戦闘機を減らせ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-07
「女性特殊部隊兵士の重要性」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「RAND:米中軍を10分野で比較」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-18

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