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イラン核合意で中露が最大利益で勢力拡大 [安全保障全般]

Iran-Nuc6.jpg9月8日付岡崎研究所評論集「世界潮流を読む」は、8月4日付の米WSJ紙に掲載のハドソン研究所上席研究員による、イラン核合意がもたらす「露中イラン枢軸」との論説を紹介し、「イラン核合意により中東に大パワーシフトが起き、中露はイランとの関係を全面的に拡大強化して地域での重要プレイヤーになり、米国の影響力を削ぐ」との分析を支持し、当面の対策を提言しています

「安保法制」を巡る「井の中の蛙」議論で視野が狭まっている間に、世界はめまぐるしく動いています。
故岡崎久彦氏は、「イラン核合意」を米イラン関係改善の突破口と期待し、希望を持って論評していましたが、米が引っ込み思案になっている間に、中露が「漁夫の大利益」を得る構図になってしまっているようです

8日付岡崎研究所評論集web記事は
china Russia2.jpg●ハドソン研究所のハーマン上席研究員は、イラン核合意から最大の利益を得る国は中露で、両国は既にイランを通じ(中東で)影響力を確実に拡大していると指摘。「露中イラン枢軸」は今や確実で、これはスエズ動乱以後中東の最大のパワーシフトだと主張
中露はイランの核開発を支援してきたが、国連等で非難されず、反対にオバマ政権は、安保理制裁決議のため両国に便宜を図り、中国は石油の輸入規制からの例外まで認められた

中露は制裁解除を全面利用するだろう。中国はイランのエネルギー部門に既に210億ドル以上の投資をしており、解除後は2倍になる可能性も。中国のイラン原油輸入は現在60万BDであるが、100万BD以上になる可能性も。
兵器輸入規制も解除され、イランは資産凍結解除で約12.5兆円の資金を手にし、中露から兵器を大量購入するだろう。ロシアはSu-30戦闘機やS-400等の防空ミサイル、中国はJF-17戦闘機やJ-20ステルス戦闘機、ソン級潜水艦や巡航ミサイルをイランに供与する可能性がある。潜水艦や巡航ミサイルはホルムズ海峡の支配に役立つ。

Iran-Nuc4.jpg●重要なのは、今後イランが中露の戦略的利益の増進を図るだろうということ。露海軍力の地中海での増進を助けるシリアのアサド大統領へのテコ入れもするだろう。
中国はイランを戦略パートナーに格上げし合同軍事演習を拡大し、上海機構へも加盟させるだろう。また、イランは中国のシルクロード経済圏構想の前進基地になるだろう。

●合意がイラン核兵器開発を阻止しようとも、合意の地政学上の影響は極めて大きい
●三国枢軸ができ、中露が中東の重要プレイヤーになることは、米国の影響力を確実に侵食し、影響は計り知れない。


岡崎研究所のコメント
●イラン核合意により、核兵器開発を実際に阻止できるかどうかとは別として、中東の地政学への影響という側面に注目した論説で、極めて興味深い直截な分析で、相当の説得力があり賛同できる。
Iran-Nuc3.jpg●中露両国がイランを通じて影響力を拡大し、米国の影響力は確実に低下すると主張しており、特にイランが中国のシルクロード構想推進の前進基地になるとの見方には現実味がある

●イラン核合意は今後米国議会で審議されるが、オバマ政権が議会説得に動くも、イスラエルは逆の議会工作に動いている。オバマは、議会が合意を拒否しても拒否権を行使する姿勢だが、議会が大統領の拒否権を覆す2/3の確保は困難な模様
しかし、議会が拒否の意思表示を突き付けることになれば、今後の手続きが一層複雑化する

現時点でのとりあえずの対処案
Iran-Nuc5.jpg●日米欧諸国も、中露に負けないように、経済や政治分野でイランとの関係を思慮深く強化する。これ以上のイランと中露接近を可能な限り抑える
米国は国交の無いイランとも、何らかの政策協議を設けるべき日本もイランとの協議の強化を検討すべき

米国が中心となって、(イランの台頭に強い警戒心を持つ)サウジなどアラブ諸国との結束を強めること。5月のCD山荘での会談や、8月の国務長官GCC会議参加等の努力継続
●早い時期に中東全域を巻き込む何らかの会議を構想し、イランとアラブの信頼を醸成。湾岸戦争後の米露共同主催の「中東和平マドリッド会議」のようなイメージ
中露の影響力拡大をバランスするため、米国は中東でのプレゼンスを維持、強化。無論、アジアリバランスへの影響を局限しながら
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Iran-Nuc2.jpgロシアも中国も経済が傾きかけている中、7000万人の人口を持つイランへの中露の経済的・政治的攻勢は、死活問題として加速するのでしょう。
それにしても、中露の悪知恵は尽きるところがありません。しっかり監視し、対応が求められましょう

「安保法制」を巡る「井の中の蛙」議論で安全保障の視野を閉ざし、中国経済乱気流で欲ぼけに拍車がかかり、所得隠し税金逃れの吉本芸人がマイナンバー制度を批判して財政基盤を危うくしている日本は、大自然の怒りに触れ、大きな自然災害に見舞われるのでは・・・と心配になります。

岡崎研究所が中国西方拡大を評論
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-15
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