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主要研究者38名が国防予算改革を要求 [カーター国防長官]

open-letter2015.jpg4月29日、主要な政策シンクタンクの国防問題研究者38名が連名で国防長官と上下院軍事委員会主要メンバー宛の「公開書簡」を発表し、政治や議会による「対応放置」が原因で国防予算の不均衡是正が進まず、米軍事力の有効性や健全性を脅かしていると訴えています

同様の「公開書簡」は2013年6月にも発表(25名の連名)されていますが、2年前から主要研究者の懸念は変わらず、むしろ当時より変革の必要性は強まっていると訴えています。

「研究者25名が国防改革を要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-06

「個人的に」主旨に賛同して署名したメンバーには国防分野の主要な研究者が含まれており、CNASのフロノイ、CSBAのKrepinevich、AEIのイーグレン、Brookingsのオハンロン、StimsonのGordon Adams、CAPのLawrence Korb、CFRのDavidsonの他、CSISやAmerican University、Third Way等々からもお馴染みのメンバーが集まっています

他の国防政策に関しては意見の相違もあるが、この部分だけは皆の意見が継続して一致している」との分野は具体的に、「基地の再編整理:BRAC」、「文民職員の削減」、「福利厚生(compensation)予算の改革」で、その道の「通」ならではの指摘です

Open-let20152.jpg要求の中身は、予算案の大きな部分を占め固定経費化している部分の改革で、議員による地元への利益誘導を断ち切ったり、有権者の不評を買う「痛みを伴う改革」を求めるものです。

つまり、「大統領選が近づくと無視されるだろう問題点」と皮肉たっぷりに書簡が表現する代物で、繰り返しますが、最も根本的かつ本質的な部分で米国防省予算の課題となっている部分であり、是非頭に置いておきたい現実です

まず、基地の再編整理と閉鎖
過去5回実施されているのに、最後にBRACを行った2005年以降実現していない課題。最初の4回で年間約9000億円の経費節減を生み出し、2005年時には民主共和両党の支持を得て、年間4200億円の経費削減に貢献したのに・・。
Marine-okinawa.jpg●国防省の試算では、米軍基地の86%の面積を占める国内基地の内、約2割が余剰施設となっている状態が10年以上放置されている。国内の基地が放置されている中で、海外の米軍基地が大きな議論を呼びながら縮小されている中でである
●議会は早急に国防省と本課題に真剣に向き合い、過剰な国内施設の整理統合閉鎖を実行し、その分の予算を前線に配分すべきである

次に、文民職員の削減
●2001年から14年の間に正規兵は3%減少させられているが、文民職員は同期間内に、10%の76万人増となっている。昨年だけで3%も増加しているのだ。
●文民職員は重要な仕事も行っているが、2001年からの急増が増加分は、不必要な職員を生み出しているはずだ。更に指摘すべきは、同期間に外部委託会社の職員が70万人も増加している現実である

Medevac.jpg●国防省は部分的に文民職員の削減を行っているが、その削減が適切なものかどうかが不明確である。これは2014年に8兆円以上を文民職員に支払っている政策担当者に向けられるべき極めて重要な疑問である
●本件は会計検査院GAOも注視している。しかし、文民職員数の妥当性を検証するデータ提供に国防省が非協力的なことをGAOは厳しく批判している
●調査に協力するだけでなく、国防省は率先して組織の階層削減に取り組み、不必要な官僚機構を廃して最適な権限の領域を追求し、効率的な組織運営を目指すべきである

そして、福利厚生(military compensation)の改革
●現在の米国防省の福利厚生(military compensation and benefits)は、1970年代からほとんど変化していない。この間に対象者の年齢構成や学歴は上昇し、より低コストで満足度を向上出来る施策案も指摘される中でである
●福利厚生評議会も最近、時代の変化に対応した改革案で、移ろいやすい若者向けにアピールする施策や多様化する価値観に対応する手法を提言している

Pentagon.jpg●ただし本件に関しては、急増する負担も喫緊の課題である。1998年から2014年の間に、一人あたりの関連経費は76%も増加しているからだ。
国防省も経費上昇率を抑える「小手先の微修正」案を持ち出しているが、それさえも議会は取り上げようとしていない。議会は最低限、福利厚生評議会の提言を今年中に採決実行すべきである
●そして更に、米国の納税者にとって負担の少ない方法で、現役と退役者とその家族に、よりよいサービスが提供出来る最善の提案を吟味実行すべきである
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研究者達の書簡は最後に、上記3つの改革は、痛みを伴う不人気な分野で容易ではないと認めています。

しかし、「今年動かなければ、2017年の大統領選挙を控えて対処が遅れることは目に見えている」との危機感を持つべきだ・・・とも表現しています
そしてこの改革に取り組まなければ、又は失敗すれば、そのコストは計り知れなく大きくなり、前線兵士が将来の課題に対峙する備えを損なうと結んでいます

ちなみに、2013年6月の「公開書簡」に対し
下院軍事委員会の主要メンバーであるJim Cooper議員(民主党)は
Jim Cooper.jpg→「組織の枠組みを 超えた研究者たちの提言を賞賛する。しかし、この提言が実行される可能性はほとん ど無い。大多数の議員は、国家レベルの課題よりも偏狭な利害で行動しているからだ。また、軍事関係委員会のメンバーの多くは(選挙区に)軍の大きなプレゼンスが有ることを望む人間である」と語っていました

なお福利厚生「military compensation」については、
「研究者25名が国防改革を要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-06
に解説があります

関連の記事
「研究者25名が国防改革を要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-06
「4大研究機関が強制削減対処案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-30

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