米核兵器運用部隊の暗部 [米空軍]
米国時間10月23日の朝に約50分間発生したと伝えられる「50発の核弾道ミサイルとの通信途絶事案」を受け、28日、チャンドラー空軍副参謀総長(Vice Chief of Staff Gen. Howie Chandler)が記者会見を行い、ハイレベルの核戦力レビューが行われている、と述べました。
本件に関し我々が承知しているのは、APが伝える「ワイオミング州ワーレン空軍基地(Warren Air Force Base in Wyoming)の50発の核弾道ミサイルと発射管制センターの通信が、装備の不具合により約50分間途絶した」との報道と、土曜日に発生した事案が大統領に報告されたのが火曜日の朝だったとの事実だけです。
チャンドラー大将は会見で・・・
(※同大将は前職の太平洋空軍司令官時にAir-Sea Battle関連のウォーゲームをCSBAや同盟国関係者と共に数回実施し、その結果報告が国防省レベルでのAir-Sea Batle検討のきっかけとなりました。まもなく退役予定)
●空軍司令部、戦略コマンド、国防長官室主要幹部等を含むメンバーにより、数ヶ月かけて見直しを行う。
●我々は指揮統制について厳正に調査する。
●本事象間も、国家指導者による弾道ミサイル発射管制機能は決して途絶えなかった。
●空軍兵士は、核戦力の運用や即応態勢について語ることは許されていない。現場の兵士は良く問題を発見し、問題を修復した。(以上会見記事概要)
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昨年何回か取り上げたように、米軍、特に米空軍の核戦力管理は施設や装備の老朽化、及び兵士の士気低下(訓練のみで、じっとその時を待つだけの士気の上がらない仕事)により、大きな問題となっています。
主要な事案
●2007年 B-52が核爆弾搭載しながら、誰も気づかないうちに米本土を横断した事案発生
●2008年5月 同事件を引き金とした空軍長官と空軍参謀総長の同時首切り(真の理由は無人機導入とF-22生産打ち切りに反対した為、と言われているが・・)
●2009年夏 空軍の核戦力運用部隊(B-2,B-52,ICBMミニットマンⅢ)立て直しのため、空軍の3ツール(B-2,B-52,ICBMミニットマンⅢ)を一つの新コマンド(GSC:Global Strike Command)へ再編すると同時に部隊点検や監視を強化 編制完結は2010年2月
装備や施設の老朽化関連
●核弾頭全体の老朽化が進み、信頼性に自信が持てない状況(改修延命計画は議会との間で議論が紛糾)
●70年代に導入のミニットマンⅢの誘導装置、ロケットモーターの改修・延命措置が必要(2020-30年まで延命か)
●GSC司令官「核関連施設の状態は、使い古され、疲弊し、骨董品状態である」(09年9月)
深刻な現場兵士の士気
●「核戦力の運用に当たる兵士や部隊の指揮は著しく低く、人事上も低い扱いを受けていた。このため核爆弾を扱う専門能力を持つ兵士の離職が相次いでいた」(07年B-52事案の調査報告書)
●「我々は、率直に言えば『無視されてきた』この分野に、約4000億円を投資する。しかし仕事が終わったとは考えていない。継続的にフォローが必要である」(09年9月シュワルツ空軍参謀総長)
「しかし仕事が終わったとは考えていない」・・・との言葉通り、問題の根本は根が深いようです。
でも・・米空軍でこの状態なら、ロシア軍はどこまで。。中国に至っては・・・心配の種は尽きません。
関連記事
「米軍核戦力は大丈夫か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-28-1
「米空軍核専用コマンド創設へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-08-08
(おまけ)長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)システム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃(LRS)システム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃(LRS)システム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1
本件に関し我々が承知しているのは、APが伝える「ワイオミング州ワーレン空軍基地(Warren Air Force Base in Wyoming)の50発の核弾道ミサイルと発射管制センターの通信が、装備の不具合により約50分間途絶した」との報道と、土曜日に発生した事案が大統領に報告されたのが火曜日の朝だったとの事実だけです。
チャンドラー大将は会見で・・・
(※同大将は前職の太平洋空軍司令官時にAir-Sea Battle関連のウォーゲームをCSBAや同盟国関係者と共に数回実施し、その結果報告が国防省レベルでのAir-Sea Batle検討のきっかけとなりました。まもなく退役予定)
●空軍司令部、戦略コマンド、国防長官室主要幹部等を含むメンバーにより、数ヶ月かけて見直しを行う。
●我々は指揮統制について厳正に調査する。
●本事象間も、国家指導者による弾道ミサイル発射管制機能は決して途絶えなかった。
●空軍兵士は、核戦力の運用や即応態勢について語ることは許されていない。現場の兵士は良く問題を発見し、問題を修復した。(以上会見記事概要)
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昨年何回か取り上げたように、米軍、特に米空軍の核戦力管理は施設や装備の老朽化、及び兵士の士気低下(訓練のみで、じっとその時を待つだけの士気の上がらない仕事)により、大きな問題となっています。
主要な事案
●2007年 B-52が核爆弾搭載しながら、誰も気づかないうちに米本土を横断した事案発生
●2008年5月 同事件を引き金とした空軍長官と空軍参謀総長の同時首切り(真の理由は無人機導入とF-22生産打ち切りに反対した為、と言われているが・・)
●2009年夏 空軍の核戦力運用部隊(B-2,B-52,ICBMミニットマンⅢ)立て直しのため、空軍の3ツール(B-2,B-52,ICBMミニットマンⅢ)を一つの新コマンド(GSC:Global Strike Command)へ再編すると同時に部隊点検や監視を強化 編制完結は2010年2月
装備や施設の老朽化関連
●核弾頭全体の老朽化が進み、信頼性に自信が持てない状況(改修延命計画は議会との間で議論が紛糾)
●70年代に導入のミニットマンⅢの誘導装置、ロケットモーターの改修・延命措置が必要(2020-30年まで延命か)
●GSC司令官「核関連施設の状態は、使い古され、疲弊し、骨董品状態である」(09年9月)
深刻な現場兵士の士気
●「核戦力の運用に当たる兵士や部隊の指揮は著しく低く、人事上も低い扱いを受けていた。このため核爆弾を扱う専門能力を持つ兵士の離職が相次いでいた」(07年B-52事案の調査報告書)
●「我々は、率直に言えば『無視されてきた』この分野に、約4000億円を投資する。しかし仕事が終わったとは考えていない。継続的にフォローが必要である」(09年9月シュワルツ空軍参謀総長)
「しかし仕事が終わったとは考えていない」・・・との言葉通り、問題の根本は根が深いようです。
でも・・米空軍でこの状態なら、ロシア軍はどこまで。。中国に至っては・・・心配の種は尽きません。
関連記事
「米軍核戦力は大丈夫か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-28-1
「米空軍核専用コマンド創設へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-08-08
(おまけ)長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)システム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃(LRS)システム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃(LRS)システム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1
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